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  • 特開-空間浄化システム 図1
  • 特開-空間浄化システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049071
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】空間浄化システム
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20230403BHJP
   F24F 8/24 20210101ALI20230403BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20230403BHJP
   F24F 3/16 20210101ALI20230403BHJP
【FI】
A61L9/12
F24F8/24
A61L9/01 E
F24F3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158588
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】白田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真司
(72)【発明者】
【氏名】山口 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】水野 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】白井 伊久真
(72)【発明者】
【氏名】淵上 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】仲松 弥一
【テーマコード(参考)】
3L053
4C180
【Fターム(参考)】
3L053BD05
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA16
4C180AA19
4C180CA06
4C180DD09
4C180EA58X
4C180GG17
4C180GG19
4C180HH05
(57)【要約】
【課題】気液接触部を流通する空気に次亜塩素酸を含ませる場合に、次亜塩素酸を安定して付与可能な空間浄化システムを提供する。
【解決手段】空間浄化システム1は、次亜塩素酸水を供給する次亜塩素酸水供給装置2と、次亜塩素酸水供給装置2から供給される次亜塩素酸水を滴下して気化させる気液接触部26と、気液接触部26を通風する空気を対象空間Sに放出する送風機29と、を備える。そして、気液接触部26は、気液接触部26を構成する材料と次亜塩素酸水との反応が抑制されるように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸水を供給する次亜塩素酸水供給装置と、
前記次亜塩素酸水供給装置から供給される前記次亜塩素酸水を滴下して気化させる気液接触部と、
前記気液接触部を通風する空気を対象空間に放出する送風機と、
を備え、
前記気液接触部は、前記気液接触部を構成する材料と前記次亜塩素酸水との反応が抑制されるように構成されていることを特徴とする空間浄化システム。
【請求項2】
前記気液接触部は、ポリエステル繊維又はポリエチレン繊維を素材とした不織布を有する複数の加湿素材を組み合わせて構成され、
前記加湿素材は、互いに熱溶着によって接着されていることを特徴とする請求項1に記載の空間浄化システム。
【請求項3】
前記気液接触部は、抗菌剤又は防カビ剤として、イソチアゾリン系の前記抗菌剤又は前記防カビ剤を含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の空間浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次亜塩素酸を含有する除菌水を含侵させた加湿エレメントから気化した次亜塩素酸により空間を浄化する空間浄化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
除菌脱臭を行う手段として次亜塩素酸を含有する除菌水を活用することは有効な手段であり、除菌水を直接洗浄等に活用する、また、揮発噴霧等で空間を除菌する等、様々なシーンで活用されている。例えば、特許文献1に示すように、除菌水を加湿エレメント(気液接触部)に滴下して、加湿エレメントを通過した空気を除菌する給気装置(空間浄化システム)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-67245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の給気装置では、次亜塩素酸水が加湿エレメントに含まれる成分と反応して消費され、空気中に気化する次亜塩素酸が減少することがあり、対象空間に次亜塩素酸が目的の濃度で放出されなくなるという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、気液接触部を流通する空気に次亜塩素酸を含ませる場合に、次亜塩素酸を安定して付与可能な空間浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして、この目的を達成するために、本発明に係る空間浄化システムは、次亜塩素酸水を供給する次亜塩素酸水供給装置と、次亜塩素酸水供給装置から供給される次亜塩素酸水を滴下して気化させる気液接触部と、気液接触部を通風する空気を対象空間に放出する送風機と、を備える。気液接触部は、気液接触部を構成する材料と次亜塩素酸水との反応が抑制されるように構成されていることを特徴とする。これらにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、気液接触部を流通する空気に次亜塩素酸を含ませる場合に、次亜塩素酸を安定して付与可能な空間浄化システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る空間浄化システムの模式図である。
図2図2は、気液接触部の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る空間浄化システムは、次亜塩素酸水を供給する次亜塩素酸水供給装置と、次亜塩素酸水供給装置から供給される次亜塩素酸水を滴下して気化させる気液接触部と、気液接触部を通風する空気を対象空間に放出する送風機と、を備える。気液接触部は、気液接触部を構成する材料と次亜塩素酸水との反応が抑制されるように構成されている。
【0010】
こうした構成によれば、気液接触部を構成する材料に起因する次亜塩素酸水の消費が抑制されるため、気液接触部を流通する空気と接触する次亜塩素酸水の濃度を安定化させることができる。この結果、気液接触部を流通する空気に次亜塩素酸を設定濃度で付与することができる。つまり、気液接触部を流通する空気に次亜塩素酸を含ませる場合に、次亜塩素酸を安定して付与可能な空間浄化システムとすることができる。
【0011】
また、本発明に係る空間浄化システムでは、気液接触部は、ポリエステル繊維又はポリエチレン繊維を素材とした不織布を有する複数の加湿素材を組み合わせて構成され、加湿素材は、互いに熱溶着によって接着されていることが好ましい。このようにすることで、複数の加湿素材を組み合わせる際に接着剤を使用する必要がなくなり、接着剤との反応による次亜塩素酸水の消費を抑制することができ、気液接触部から放出される空気に設定濃度の次亜塩素酸を安定して付与することができる。
【0012】
また、本発明に係る空間浄化システムでは、気液接触部は、抗菌剤又は防カビ剤として、イソチアゾリン系の抗菌剤又は防カビ剤を含有していることが好ましい。このようにすることで、気液接触部での菌又はカビの発生を抑制しつつ、抗菌剤又は防カビ剤に起因する次亜塩素酸水の消費を抑制することができる。このため、気液接触部から放出される空気に設定濃度の次亜塩素酸を安定して付与することができる。
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、全図面を通して、同一の部位については同一の符号を付して説明を省略している。さらに、本発明に直接には関係しない各部の詳細については重複を避けるために、図面ごとの説明は省略している。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明の実施の形態1に係る空間浄化システム1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る空間浄化システム1の模式図である。
【0016】
<全体構成>
空間浄化システム1は、外部から得られる市水である原水により高濃度の次亜塩素酸水を希釈し、次亜塩素酸を含む除菌水を生成した後、気液接触により空気中に次亜塩素酸を放出し、対象空間Sの除菌又は殺菌を行うシステムである。この際、空間浄化システム1では、ユーザにより設定された加湿能力量に基づいて、気液接触させる次亜塩素酸水の通水を制御する。具体的には、空間浄化システム1は、図1に示すように、次亜塩素酸水供給装置2と、空気調和装置20とを備えて構成される。次亜塩素酸水供給装置2は、水供給部4と、次亜塩素酸水供給部7と、次亜塩素酸水制御部3とを備えて構成される。また、空気調和装置20は、還気ダクト22と、フィルタ23と、空気冷却器24と、空気加熱器25と、気液接触部26と、送風機29と、給気ダクト30と、ドレンパン31と、排水流路32と、熱源装置33と、複数の流路(流路34~流路37)と、加湿制御部21とを備えて構成される。
【0017】
<次亜塩素酸水供給装置>
次亜塩素酸水供給装置2は、次亜塩素酸水供給部7から供給される次亜塩素酸水に、水供給部4から供給される水を混合して希釈し、希釈された次亜塩素酸水を気液接触部26に供給する装置である。
【0018】
水供給部4は、外部の設備給水管(図示せず)から流入する市水を、空気調和装置20の気液接触部26に供給する部材である。水供給部4は、水道管5と、水道弁6とを有して構成される。水道管5は、外部の設備給水管と空気調和装置20の気液接触部26との間を連通接続する配管である。水道弁6は、水道管5に備えられている。水道弁6は、無線又は有線により次亜塩素酸水制御部3と通信可能に接続され、次亜塩素酸水制御部3からの信号により開閉される。これにより、気液接触部26に水道水を導入したり停止したりすることができる。水道弁6は、電磁弁を用いることができる。
【0019】
次亜塩素酸水供給部7は、内部に貯留する高濃度の次亜塩素酸水を、水供給部4の水道管5内に送出する部材である。次亜塩素酸水供給部7は、送水管8と、止水弁9と、送水ポンプ10と、次亜塩素酸水タンク11とを有して構成される。
【0020】
送水管8は、水供給部4の水道管5の所定の位置において、水道管5と次亜塩素酸水タンク11とを連通接続し、次亜塩素酸水タンク11に貯留される次亜塩素酸水を水道管5内に送水するための配管である。
【0021】
止水弁9は、送水管8に備えられている。止水弁9は、無線又は有線により次亜塩素酸水制御部3と通信可能に接続され、次亜塩素酸水制御部3からの信号により開閉される。止水弁9は、電磁弁を用いることができる。
【0022】
送水ポンプ10は、送水管8に備えられている。送水ポンプ10は、次亜塩素酸水タンク11から送水管8に次亜塩素酸水を送水する際に、止水弁9が「開」の状態で、送水管8に次亜塩素酸水を流通させる機器である。送水ポンプ10は、無線又は有線により次亜塩素酸水制御部3と通信可能に接続され、次亜塩素酸水制御部3からの信号により動作する。止水弁9と送水ポンプ10とが連動して動作することにより、送水管8内に次亜塩素酸水タンク11からの次亜塩素酸水を導入したり停止したりすることができる。
【0023】
次亜塩素酸水制御部3は、後述する加湿制御部21からの信号に基づいて、空気調和装置20への送水を行うように次亜塩素酸水供給装置2を制御する。次亜塩素酸水制御部3は、無線又は有線により加湿制御部21と通信可能に接続される。
【0024】
次亜塩素酸水供給装置2は、次亜塩素酸水制御部3からの信号に基づいて、次亜塩素酸水供給部7からの次亜塩素酸水の供給と、水供給部4からの水とを実行し、それぞれを配管内で混合して希釈し、設定された濃度の希釈された次亜塩素酸水を気液接触部26に供給する。この際、配管内で混合希釈された次亜塩素酸水における次亜塩素酸濃度は20ppmとしている。
【0025】
<空気調和装置>
空気調和装置20は、外部及び対象空間Sから取り込んだ空気の温度及び湿度の調節を行い、次亜塩素酸水供給装置2から送出される次亜塩素酸水を気化させ、対象空間Sに放出することにより、対象空間Sの除菌又は殺菌を行う。空気調和装置20は、上述した通り、還気ダクト22と、フィルタ23と、空気冷却器24と、空気加熱器25と、気液接触部26と、送風機29と、給気ダクト30と、ドレンパン31と、排水流路32と、熱源装置33と、複数の流路(流路34~流路37)と、加湿制御部21とを備える。空気調和装置20に導入された空気は、還気ダクト22、フィルタ23、空気冷却器24、空気加熱器25、気液接触部26、及び送風機29の順に通風され、給気ダクト30により、装置外の対象空間Sに排出される。
【0026】
還気ダクト22は、空気調和装置20内に空気を導入するための開口である。還気ダクト22により導入された空気から、フィルタ23により、塵及び埃等の不純物が除去される。
【0027】
フィルタ23は、導入された空気から塵及び埃等の不純物を除去する。フィルタ23を通過した空気は、空気冷却器24へと通風される。
【0028】
空気冷却器24は、通過する空気の冷却を行うユニットである。空気冷却器24は、流路34及び流路35により熱源装置33と連通接続されている。空気冷却器24には、熱源装置33から流路34を流通して冷水が流入し、冷水は、空気冷却器24内を通水する。流入した冷水と、空気冷却器24を通過する空気との間で熱交換が行われ、通過した空気の冷却が行われる。熱交換が行われた冷水は、流路34を流通し、熱源装置33へと送水される。この時、結露により発生する水は、ドレンパン31により回収される。空気冷却器24を通過した空気は、空気加熱器25へと通風される。空気冷却器24は、無線又は有線により加湿制御部21と通信可能に接続され、加湿制御部21により制御される。
【0029】
空気加熱器25は、通過する空気の加熱を行うユニットである。空気加熱器25は、流路36及び流路37により熱源装置33と連通接続されている。空気加熱器25には、熱源装置33から流路36を流通して温水が流入し、温水は、空気加熱器25内を通水する。流入した温水と、空気加熱器25を通過する空気との間で熱交換が行われ、通過した空気の加熱が行われる。熱交換が行われた温水は、流路37を流通し、熱源装置33へと送水される。空気加熱器25を通過した空気は、気液接触部26へと通風される。空気加熱器25は、無線又は有線により加湿制御部21と通信可能に接続され、加湿制御部21により制御される。
【0030】
<気液接触部>
気液接触部26は、内部に取り入れた空気を加湿するユニットであり、加湿の際に、空気中に次亜塩素酸水(次亜塩素酸水供給装置2から送出される次亜塩素酸水)を含ませる。気液接触部26は、水供給部4の水道管5を介して次亜塩素酸水供給装置2(次亜塩素酸水供給部7の送水管8)と連通接続されている。気液接触部26は、次亜塩素酸水供給装置2から送出される次亜塩素酸水を含有することが可能な構造(例えば、気化フィルタ)を有する。気液接触部26は、平板形状であり、多くの繊維を備え、繊維と繊維との間に水を保水することができる。気液接触部26は、還気ダクト22と気液接触部26の平面部(空気の流通面)が対向するように設けられている。そして、次亜塩素酸水供給装置2から送出される次亜塩素酸水は、気液接触部26の平面部の上方から供給される。そのため、気液接触部26を通過する空気に、次亜塩素酸水を含有させることが可能となる。つまり、気液接触部26は、次亜塩素酸水を平面部の上方から下方に流して気化させる。そして、次亜塩素酸水を含んだ空気が気化することにより、対象空間S内に次亜塩素酸が放出され、対象空間Sの除菌又は殺菌が行われる。なお、次亜塩素酸水供給装置2の動作中には、気液接触部26に次亜塩素酸水が常時供給されるため、気液接触部26が含有しきれなかった次亜塩素酸水は、下方に流れ落ちてドレンパン31によって回収される。
【0031】
次に、図2を参照して、気液接触部26の構造について詳細に説明する。図2は、気液接触部26の構成を模式図である。なお、図2は、気液接触部26を正面視した図であり、気液接触部26の平面部を示している。
【0032】
気液接触部26は、ポリエステル繊維又はポリエチレン繊維を素材とした不織布を有する複数の加湿素材27を組み合わせて構成され、加湿素材27は、互いに熱溶着によって接着されている。具体的には、図2に示すように、気液接触部26は、複数の加湿素材27と、加湿素材27を固定するフレーム28とを有して構成される。
【0033】
加湿素材27は、熱溶着性を有する合成樹脂(例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維)を含んだ不織布により構成される。加湿素材27同士は、接着剤を用いることなく、互いに熱溶着により張り合わされている。そして、加湿素材27は、不織布の内部に次亜塩素酸水を保水する。また、加湿素材27には、抗菌剤又は防カビ剤として、次亜塩素酸水との間での反応が生じにくいイソチアゾリン系の抗菌剤又は防カビ剤を含有している。イソチアゾリン系の抗菌剤又は防カビ剤としては、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、N-n-ブチル-1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3-オンから選択される1種または2種以上である。言い換えれば、加湿素材27は、次亜塩素酸水との間での反応が生じる抗菌剤又は防カビ剤(例えば、ジンクピリチオン)を含まないように構成されている。なお、熱溶着した複数の加湿素材27には、空気が流通するための隙間27aが形成されている。
【0034】
フレーム28は、熱溶着した複数の加湿素材27の外周全体を固定し、気液接触部26の外枠を構成する部材である。フレーム28の上端部には、次亜塩素酸水供給装置2における送水管8が接続される。そして、フレーム28は、フレーム28の上端部から加湿素材27の上部に次亜塩素酸水を滴下する。
【0035】
以上のように気液接触部26は構成される。
【0036】
送風機29は、図1に示すように、気液接触部26の後段、且つ、給気ダクト30の前段に設けられる。送風機29は、空気調和装置20内の空気を外部に排出することにより、還気ダクト22から給気ダクト30へ向かう空気の流れを生成する。これにより、除菌又は殺菌のための空気を空気調和装置20内に流入させることができる。送風機29により、次亜塩素酸を含む空気が対象空間Sに放出され、対象空間Sの除菌又は殺菌を行うことが可能となる。また、送風機29は、加湿制御部21と無線又は有線により通信可能に接続され、加湿制御部21により制御される。
【0037】
給気ダクト30は、空気調和装置20内の空気を対象空間Sに放出するための開口である。給気ダクト30から、次亜塩素酸を含む空気が対象空間Sに放出され、空間の除菌又は殺菌を行うことが可能となる。
【0038】
ドレンパン31は、空気調和装置20内の水を集めるための受け皿である。ドレンパン31は、空気冷却器24、空気加熱器25、及び気液接触部26の下部に設けられ、少なくとも空気冷却器24及び気液接触部26から流出する水を回収する。
【0039】
排水流路32は、空気調和装置20内に溜まった水を排水するための流路である。排水流路32は、ドレンパン31と接続され、ドレンパン31により集められた水(次亜塩素酸水を含む)を装置外に排出する。
【0040】
熱源装置33は、水の冷却及び加熱を行い、空気冷却器24に供給するための冷水及び空気加熱器25に供給する温水とする装置である。熱源装置33は、無線又は有線により加湿制御部21と通信可能に接続され、加湿制御部21により制御される。
【0041】
流路34は、熱源装置33により冷却された水を、熱源装置33から空気冷却器24へ送水する流路である。
【0042】
流路35は、空気冷却器24に通水した水を熱源装置33へ送水する流路である。
【0043】
流路36は、熱源装置33により加熱された水を、熱源装置33から空気加熱器25へ送水する流路である。
【0044】
流路37は、空気加熱器25に通水した水を熱源装置33へ送水する流路である。
【0045】
加湿制御部21は、空気冷却器24、空気加熱器25、送風機29、及び熱源装置33の各動作を制御する。加湿制御部21は、無線又は有線により次亜塩素酸水制御部3と通信可能に接続される。
【0046】
<空間浄化処理>
次に、空間浄化システム1による空間浄化処理について説明する。
【0047】
空間浄化処理は、次亜塩素酸水供給装置2から送出された次亜塩素酸水を、空気調和装置20によって気化させ、対象空間Sに放出する処理である。
【0048】
まず、加湿制御部21は、空間浄化処理の開始に伴い、送風機29を起動する。これにより、空気調和装置20内の空気が対象空間Sに排出され、還気ダクト22から空気(例えば、対象空間Sの空気)が導入される。導入された空気は、フィルタ23により不純物(例えば、塵埃)の除去が行われる。その後、空気冷却器24及び空気加熱器25によって熱交換され、調温された空気となる。そして、気液接触部26を通過することにより、空気の加湿が行われる。加湿の際に、気液接触部26を通過した空気は、次亜塩素酸水供給装置2によって濃度調整された次亜塩素酸水を含有する。次亜塩素酸水を含む空気は、送風機29により給気ダクト30から対象空間Sに放出され、気化することにより、対象空間S内に次亜塩素酸が設定濃度で放出され、対象空間Sの除菌又は殺菌が行われる。
【0049】
以上のようにして、空間浄化システム1では、加湿制御部21によって、次亜塩素酸水供給装置2での次亜塩素酸水の供給処理の制御及び空気調和装置20での加湿処理の制御が行われ、空間浄化処理が実行される。
【0050】
以上、本実施の形態1に係る空間浄化システム1によれば、以下の効果を享受することができる。
【0051】
(1)空間浄化システム1は、次亜塩素酸水を供給する次亜塩素酸水供給装置2と、次亜塩素酸水供給装置2から供給される次亜塩素酸水を滴下して気化させる気液接触部26と、気液接触部26を通風する空気を対象空間Sに放出する送風機29と、を備える。そして、気液接触部26は、気液接触部26を構成する材料と次亜塩素酸水との反応が抑制されるように構成した。
【0052】
こうした構成によれば、気液接触部26を構成する材料(加湿素材27)に起因する次亜塩素酸水の消費が抑制されるため、気液接触部26を流通する空気と接触する次亜塩素酸水の濃度を安定化させることができる。この結果、気液接触部26を流通する空気に次亜塩素酸を設定濃度で付与することができる。つまり、気液接触部26を流通する空気に次亜塩素酸を含ませる場合に、次亜塩素酸を安定して付与可能な空間浄化システム1とすることができる。
【0053】
(2)空間浄化システム1では、気液接触部26は、ポリエステル繊維又はポリエチレン繊維を素材とした不織布を有する複数の加湿素材27を組み合わせて構成され、加湿素材27は、互いに熱溶着によって接着されるようにした。これにより、複数の加湿素材27を組み合わせる際に接着剤を使用する必要がなくなり、接着剤との反応による次亜塩素酸水の消費を抑制することができ、気液接触部26から放出される空気に設定濃度の次亜塩素酸を安定して付与することができる。
【0054】
(3)空間浄化システム1では、気液接触部26は、抗菌剤又は防カビ剤として、イソチアゾリン系の抗菌剤又は防カビ剤を含有するようにした。これにより、気液接触部26での菌又はカビの発生を抑制しつつ、抗菌剤又は防カビ剤に起因する次亜塩素酸水の消費を抑制することができる。このため、気液接触部26から放出される空気に設定濃度の次亜塩素酸を安定して付与することができる。
【0055】
(4)空間浄化システム1では、気液接触部26を、次亜塩素酸水との間での反応が生じる抗菌剤又は防カビ剤(例えば、ジンクピリチオン)を含まないように構成した。これにより、抗菌剤又は防カビ剤に起因する次亜塩素酸水の消費を確実に抑制することができるため、気液接触部26から放出される空気に設定濃度の次亜塩素酸を安定して付与することができる。
【0056】
(5)空間浄化システム1では、次亜塩素酸水供給装置2と気液接触部26とを、配管(送水管8)によって連通接続して構成し、水供給部4から供給される水と、次亜塩素酸水供給部7から供給される次亜塩素酸水とを、配管内において混合希釈して気液接触部26に供給するようにした。このようにすることで、空間浄化システム1では、配管内において混合希釈される次亜塩素酸水は、気液接触部26(加湿素材27)に到達するまで外部の空気と触れることが抑制される。このため、次亜塩素酸の空気接触による減衰を抑制することができ、気液接触部26から放出される空気に設定濃度の次亜塩素酸を安定して付与することができる。
【0057】
(6)空間浄化システム1では、配管(水道管5及び送水管8)を、次亜塩素酸水供給部7から供給される次亜塩素酸水に、水供給部4から供給される水によって希釈するように構成した。これにより、次亜塩素酸水供給部7から供給される次亜塩素酸水を希釈する際に、水供給部4から供給される水によってかき混ぜられる。これにより、気液接触部26に供給する際の次亜塩素酸水の濃度を安定化させることができる。このため、気液接触部26から放出される空気に設定濃度の次亜塩素酸を安定して付与することができる。
【0058】
以上、本発明に関して実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されているところである。
【0059】
本実施の形態1に係る空間浄化システム1では、次亜塩素酸水供給装置2から設定濃度に希釈した次亜塩素酸水を気液接触部26に供給するようにしたが、これに限られない。例えば、次亜塩素酸水供給装置2は、塩酸あるいはリン酸塩水等のpH調整剤を混合し、次亜塩素酸水のpH値を調整するように構成してもよい。これにより、気液接触部26から放出される空気に含ませる次亜塩素酸の濃度の制御範囲を広げることができる。
【0060】
また、本実施の形態1に係る空間浄化システム1では、次亜塩素酸水供給装置2は、水供給部4から供給される水と、次亜塩素酸水供給部7から供給される次亜塩素酸水とを、配管内において混合希釈するように構成したが、これに限られない。例えば、次亜塩素酸水供給装置2は、混合槽を設け、次亜塩素酸水供給部7から供給される次亜塩素酸水と水供給部4から供給される水とを混合槽内で混合希釈した上で、気液接触部26に混合希釈した次亜塩素酸水を供給するようにしてもよい。このようにしても、少なくとも上述した効果(1)~効果(4)を享受することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る空間浄化システムは、気液接触部を流通する空気に次亜塩素酸を含ませる場合に、次亜塩素酸を安定して付与可能な構成となっており、対象空間の空気を除菌又は殺菌するシステムとして有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 空間浄化システム
2 次亜塩素酸水供給装置
3 次亜塩素酸水制御部
4 水供給部
5 水道管
6 水道弁
7 次亜塩素酸水供給部
8 送水管
9 止水弁
10 送水ポンプ
11 次亜塩素酸水タンク
12 pH調整剤供給部
20 空気調和装置
21 加湿制御部
22 還気ダクト
23 フィルタ
24 空気冷却器
25 空気加熱器
26 気液接触部
27 加湿素材
27a 隙間
28 フレーム
29 送風機
30 給気ダクト
31 ドレンパン
32 排水流路
33 熱源装置
34 流路
35 流路
36 流路
37 流路
図1
図2