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  • 特開-免震軽量壁 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049075
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】免震軽量壁
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/74 20060101AFI20230403BHJP
   E04B 1/98 20060101ALI20230403BHJP
   E04B 2/82 20060101ALI20230403BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
E04B2/74 541Z
E04B1/98 N
E04B2/82 511Z
E04B2/82 501Z
F16F15/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158598
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000156204
【氏名又は名称】株式会社淺沼組
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】古東 秀文
(72)【発明者】
【氏名】林 晃子
【テーマコード(参考)】
2E001
3J048
【Fターム(参考)】
2E001DH31
2E001FA07
2E001HA07
2E001HE01
3J048AA01
3J048BA04
3J048DA03
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】ひずみなどの外力が直接加わることがなく、壁面への左官塗りやその表面の描画に対する損傷を回避することができる軽量壁の構造を開示する。
【解決手段】この免震軽量壁は、上側の躯体と下側のスラブ天端の間に設けられる軽量壁である間仕切り壁において、この間仕切り壁の上下端面に対して、前記上側躯体との間、および下側スラブ天端との間に挟み込むように防振装置を設けたものである。防振装置は、円筒状の防振ゴムの平面部を金属板で挟み込んで設けた。軽量壁は、縦枠の両面に軽量ボードを張り付けたもの、またはALCパネルである。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側の躯体と下側のスラブ天端の間に設けられる軽量壁である間仕切り壁において、この間仕切り壁の上下端面に対して、前記上側躯体との間、および下側スラブ天端との間に挟み込むように防振装置を設けたことを特徴とする免震軽量壁。
【請求項2】
防振装置は、円筒状の防振ゴムの平面部を金属板で挟み込んで設けた請求項1記載の免震軽量壁。
【請求項3】
軽量壁は、縦枠の両面に軽量ボードを張り付けたものである請求項1または2記載の免震軽量壁。
【請求項4】
軽量壁は、ALCパネルである請求項1または2記載の免震軽量壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地震などの外力によって躯体に変形ひずみが生じた場合でも、このひずみによって損傷が生じることを軽減させる免震軽量壁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の軽量壁は、一般に構造躯体に連結されることが多い。その場合、地震などの外力が加わって層間変形が生じれば軽量壁に損傷を受けることがある。漆喰などのような通常の左官塗りの場合にはひずみなどの変形に追従しない仕上げであるから、仕上げ材に損傷が発生する。そして、仕上げ材の種類によっては損傷部分を簡便に補修したり、手直しをしたりすることができないことがある。特に仕上げとして例えばフラスコ画のような繊細な描画が施されているような場合の損傷は、多大な損害の発生になる。
【0003】
つまり、従来の間仕切り壁のような軽量壁20は図6図7に示すように、上下の天井躯体21とスラブ天端22にそれぞれランナー23を設け、このランナー23に対して軽量壁20を設けたものであり、軽量壁20はランナー23に対して拘束されている。したがって、地震のS波などのような急激な水平方向の力が加わった場合にはこれに追随することができず、軽量壁そのものが部分的に破壊されてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-173266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には免震構造を有する壁体の構造が記載されている。ただし、この発明における壁体は鋼製コイルバネを免震材として利用し、この免震材によって壁体を支持固定するものである。しかしながら、コイルバネが振動を吸収する構成ではバネの固有振動数と入力される外力の周波数によっては共振を起こしてしまうので、壁体が大きく運動するという問題を有している。
【0006】
本発明は従来のような例えば間仕切り壁として利用する軽量壁の構造を改良し、ひずみなどの外力が直接加わることがなく、壁面の外力によるたわみやひずみが発生することを防止し、損傷することがない軽量壁の構造を開示することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、上側の躯体と下側のスラブ天端の間に設けられる軽量壁である間仕切り壁において、この間仕切り壁の上下端面に対して、前記上側躯体との間、および下側スラブ天端との間に挟み込むように防振装置を設けるという手段を用いることとした。ここで間仕切り壁は軽量壁として機能する。そして、間仕切り壁は構造躯体に対して防振装置を介して施工されており、構造躯体の振動エネルギーは防振装置によって遮断、あるいは減衰されるので、間仕切り壁にはひずみやゆがみなどの応力がかかることを軽減する。防振装置は、円筒状の防振ゴムの平面部を金属板で挟み込んで設けており、振動エネルギーは金属板を介して均等に防振ゴムに付与される。
【0008】
軽量壁としては、縦枠の両面に軽量ボードを張り付けたもの、あるいはALCパネルを選択的に採用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では上記のような構成を採用したので、地震などの振動が建物の躯体に入力された場合でも軽量壁は防振装置によって支持されているので、この防振装置の振動吸収能によって振動は軽量壁には伝達されないか、軽減されてのみ伝達されることになる。したがって、軽量壁が不用意に損傷することを防止できる構造とすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の免震軽量壁である間仕切り壁の下地の正面図
図2】同、軽量壁を躯体に取付けたところを示す側面図
図3】防振装置の一例を示す斜視図
図4】軽量壁を躯体に取付けた別の実施形態を示す斜視図
図5】同、別の実施形態を示す斜視図
図6】従来例を示す正面図
図7】同、側面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面に従って説明する。図1はALCのような軽量壁を張り付けるための下地骨格を示したもので、1は縦枠、2は縦枠1の振れ止め、3・3は上下に設けられるランナーである。なお、4は上側の躯体である天井躯体、5は下側のスラブ天端である。6は上下のランナー3・3と天井躯体4あるいはスラブ天端5のそれぞれの間に設けられる防振装置であり、ランナー3・3に対して好ましくは均等間隔で設けられている。図2図1の下地に対して壁体となる軽量ボード7・7を張り付けた状態を示しており、防振装置6は上下のランナー3・3と天井躯体4あるいはスラブ天端5の間に挟まれるように設けられる。なお、軽量ボード7・7とランナー3・3が軽量壁ユニットを構成する。図3は防振装置6の詳細を示したもので、略円筒状の防振ゴム8の平面部を金属板9・9で挟み込み、それぞれの金属板9・9に対して支柱10・10を立設している。なお、防振装置6の設置を容易にするため、支柱10にはネジが切られてボルト状とすることが好ましい。11はボルトとしての支柱10に螺合するナットである。
【0012】
本実施形態において、防振装置6は上下のランナー3・3に取付けられ、それぞれが天井躯体4とスラブ天端5の間に設けられるが、ランナー3に設けられたボルト孔(図示せず)に支柱10を挿通してナット11にて固定する。また、天井躯体4とスラブ天端5に接する面は面圧によって支えることや、軽量壁全体の倒壊を避けるために天井躯体4とスラブ天端5の防振装置6が相当する位置にボス穴を形成して支柱10を支えるようにしてもよい。全体をこのように構成することによって、軽量壁ユニットは天井躯体4やスラブ天端5のような構造躯体とは縁が切られて防振装置6のみによって上下を支えられることになる。したがって、地震などの強い振動が付与された場合でもその振動は防振装置6によって吸収されるので、軽量壁ユニットには許容できない程度のひずみやゆがみが発生することを回避することができる。
【0013】
次に、図4は本発明の別の実施形態を示した斜視図であって、ALCパネル12を軽量壁として使用したものである。図中、13・13はALCパネル12の上下辺にそれぞれ設けられたアングル材であって、押え板14をALCパネル12にビス止めしてアングル材13が脱落しないように固定している。15はH鋼からなる梁などの構造躯体、16はスラブ天端である。そして、図5に示すように、ALCパネル12の上下に固定されたアングル材13と、上側は躯体15の間に、下側はスラブ天端16との間にそれぞれ防振装置17・17が挟み込まれるように設けられている。防振装置17の具体的な構成は、図3の防振装置から支柱を省略したものであるが、基本的な構成は変わるところがない。そして、この構成においても軽量壁であるALCパネル12は構造躯体に直接拘束されるのではなく、防振装置17を介して接合されるので、地震などの急激な加速度を持つ振動が入力された場合でも防振装置17がその振動エネルギーを吸収することになるの。したがって、ALCパネル12には減衰した振動が加わるのみであり、不都合なひずみやたわみによるALCパネルの損傷を防止することができる。
【0014】
なお、本発明における免震構造は、上下躯体である各階の天井躯体とスラブ天端の間に間仕切り壁などの軽量壁を挟み込むように支持する構造に適用することができるものである。つまり、軽量壁の上下方向に設けた防振装置によって建物躯体に地震などの振動が付与された場合にはこれを吸収し、あるいは軽減することができるものであれば、例えば移動式の軽量壁に適用することもできる。また、実施形態に示したように、軽量壁としては縦枠の骨格の両側にボードを張り付けた構造であっても、ALCパネルのように一枚物であってもよい。要は、躯体構造物の床と天井または梁の間に設けられる間仕切り壁の上下方向の端面に防振装置を設け、躯体構造物から伝達される外部応力を吸収または減衰できる構成は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0015】
1 縦枠
2 振れ止め
3・3 ランナー
4 天井躯体
5 スラブ天端
6 防振装置
7 軽量ボード
8 防振ゴム
9 金属板
10 支柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7