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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049088
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】デジタルコンテンツ二次流通システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0601 20230101AFI20230403BHJP
【FI】
G06Q30/06 312
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158626
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100216677
【弁理士】
【氏名又は名称】坂次 哲也
(72)【発明者】
【氏名】牧野 哲也
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB50
5L049BB53
(57)【要約】
【課題】既存の出版社と電子書店との関係やシステム等に大きな変更や改修を要求することなくデジタルコンテンツの二次流通市場を実現する。
【解決手段】デジタルコンテンツの二次流通を支援するデジタルコンテンツ二次流通システム1であって、発行者による二次流通を許諾する第1のデジタルコンテンツの指定を受け付けて二次流通書籍DB132に記録する二次流通許諾処理部13と、第1のデジタルコンテンツを購入して所有する第1の利用者による第2のデジタルコンテンツの出品の指示を受け付けて出品DB141に記録する出品管理部14と、第2の利用者による第2のデジタルコンテンツの購入の指示を受け付けて出品DB141の情報を更新する購入処理部15とを有し、出品管理部14は、同一の第2のデジタルコンテンツの出品可能な回数を所定の回数以下に制限する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が購入して所有するデジタルコンテンツの、当該利用者による二次流通を支援するデジタルコンテンツ二次流通システムであって、
前記デジタルコンテンツの発行者による、前記発行者が発行したデジタルコンテンツのうち二次流通を許諾する第1のデジタルコンテンツの指定を受け付けて、二次流通書籍記録部に記録する二次流通許諾処理部と、
前記第1のデジタルコンテンツを販売者から購入して所有する第1の利用者による、所有する前記第1のデジタルコンテンツのうちの第2のデジタルコンテンツの前記販売者を介した出品の指示を受け付けて、出品記録部に記録する出品管理部と、
第2の利用者による、前記第1の利用者により出品された前記第2のデジタルコンテンツの購入の指示を受け付けて、前記出品記録部の情報を更新する購入処理部と、を有し、
前記出品管理部は、同一の前記第2のデジタルコンテンツの出品可能な回数を所定の回数以下に制限する、デジタルコンテンツ二次流通システム。
【請求項2】
請求項1に記載のデジタルコンテンツ二次流通システムにおいて、
前記出品管理部は、前記第1の利用者が前記第2のデジタルコンテンツを出品する際に設定可能な販売価格を、前記第1の利用者が前記第2のデジタルコンテンツを購入したときの価格に対して、前記第2のデジタルコンテンツの出品回数に応じて設定される所定の率の額を割り引いた額未満に設定できないよう制限する、デジタルコンテンツ二次流通システム。
【請求項3】
請求項1に記載のデジタルコンテンツ二次流通システムにおいて、
前記第1の利用者が前記第2のデジタルコンテンツを読了した時点で、前記第1の利用者が前記第2のデジタルコンテンツを購入したときの価格に対して所定の率を割り引いた額を販売価格に設定して前記販売者を介して出品する、デジタルコンテンツ二次流通システム。
【請求項4】
請求項1に記載のデジタルコンテンツ二次流通システムにおいて、
前記二次流通許諾処理部は、前記発行者が前記第1のデジタルコンテンツの二次流通を許諾することができる始期を、前記第1のデジタルコンテンツが発行されてから所定の期間経過後に制限する、デジタルコンテンツ二次流通システム。
【請求項5】
請求項1に記載のデジタルコンテンツ二次流通システムにおいて、
前記第2の利用者に対して、前記販売者からのデジタルコンテンツの購入に所定の期間利用可能なポイントを付与する、デジタルコンテンツ二次流通システム。
【請求項6】
請求項1に記載のデジタルコンテンツ二次流通システムにおいて、
前記二次流通許諾処理部は、前記発行者による、前記第1のデジタルコンテンツの二次流通を取り扱う販売者の指定を受け付けて、二次流通書店記録部に記録する、デジタルコンテンツ二次流通システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルコンテンツの流通を支援し管理する技術に関し、特に、デジタルコンテンツの二次流通を支援し管理するデジタルコンテンツ二次流通システムに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
書籍等の紙媒体のコンテンツは、新刊の一次流通の市場に加えて、中古品の二次流通の市場が以前から十分な規模で存在している。一方、電子書籍等のデジタルコンテンツについては、一次流通の市場は近年成長しており、さらに新型コロナウイルス禍での巣ごもり需要も相まって急速に成長してはいるものの、二次流通については、一部で行われてはいるが市場規模は小さく、支配的なプレーヤーは存在しないという状況である。
【0003】
デジタルコンテンツの二次流通に関連する技術として、例えば、特許第6087469号公報(特許文献1)には、電子コンテンツ管理サーバ装置と、再販管理サーバ装置と、各々が電子コンテンツの販売サイトを提供する複数の販売サーバ装置と、複数のユーザ端末装置とを有し、再販管理サーバ装置が、電子コンテンツの市場流通量と再販在庫数による第1の係数の決定と、第1の係数を用いた買取価格及び再販価格の算出とを行う価格設定手段を有する電子コンテンツ流通システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6087469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術によれば、電子書籍等のデジタルコンテンツの二次流通の市場を実現することは可能である。
【0006】
一方で、デジタルコンテンツの二次流通の市場を広く普及させるには、既存の出版社や著者・作者(以下これらを総称して単に「出版社」と記載する場合がある)と電子書店との関係やシステム等に大きな変更や改修を要求することなく二次流通市場を実現することができ、出版社、電子書店、利用者それぞれが収益や利便性などの点で利益を得られるような仕組みが求められる。
【0007】
そこで本発明の目的は、上記のような仕組みを実現することができるデジタルコンテンツ二次流通システムを提供することにある。本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0009】
本発明の代表的な実施の形態によるデジタルコンテンツ二次流通システムは、利用者が購入して所有するデジタルコンテンツの、当該利用者による二次流通を支援するデジタルコンテンツ二次流通システムであって、前記デジタルコンテンツの発行者による、前記発行者が発行したデジタルコンテンツのうち二次流通を許諾する第1のデジタルコンテンツの指定を受け付けて、二次流通書籍記録部に記録する二次流通許諾処理部と、前記第1のデジタルコンテンツを販売者から購入して所有する第1の利用者による、所有する前記第1のデジタルコンテンツのうちの第2のデジタルコンテンツの前記販売者を介した出品の指示を受け付けて、出品記録部に記録する出品管理部と、第2の利用者による、前記第1の利用者により出品された前記第2のデジタルコンテンツの購入の指示を受け付けて、前記出品記録部の情報を更新する購入処理部と、を有し、前記出品管理部は、同一の前記第2のデジタルコンテンツの出品可能な回数を所定の回数以下に制限する。
【発明の効果】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0011】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、既存の出版社と電子書店との関係やシステム等に大きな変更や改修を要求することなくデジタルコンテンツの二次流通市場を実現することができ、出版社、電子書店、利用者それぞれが収益や利便性などの点で利益を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態であるデジタルコンテンツ二次流通システムの構成例について概要を示した図である。
図2】本発明の一実施の形態における全体の処理の流れの例について概要を示した図である。
図3】本発明の一実施の形態における出版社による二次流通の許諾処理の流れの例について概要を示した図である。
図4】本発明の一実施の形態における利用者による電子書籍の二次流通市場への出品処理の流れの例について概要を示した図である。
図5】本発明の一実施の形態における利用者による電子書籍の二次流通市場からの購入処理の流れの例について概要を示した図である。
図6】本発明の一実施の形態における電子書籍販売システムにより利用者端末に表示される画面の例について概要を示した図である。
図7】本発明の一実施の形態における電子書籍販売システムにより利用者端末に表示される画面の例について概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。一方で、ある図において符号を付して説明した部位について、他の図の説明の際に再度の図示はしないが同一の符号を付して言及する場合がある。
【0014】
<概要>
本発明の一実施の形態であるデジタルコンテンツ二次流通システムは、電子書店に対して、利用者が購入した(すなわち閲覧権を有する)電子書籍等のデジタルコンテンツを出品(二次販売)し、また二次流通しているデジタルコンテンツを購入することができる機能をAPI(Application Programming Interface)として提供することで、当該利用者によるデジタルコンテンツの二次販売を実現し支援する情報処理システムである。
【0015】
これにより、電子書店にとっては、デジタルコンテンツの二次流通市場を容易に実現することができ、また、利用者に対してデジタルコンテンツを容易に割安で購入する機会を提供することができ、デジタルコンテンツの二次流通市場の活性化につなげることができる。また、二次流通市場に出品した利用者には、例えば、購入された場合にその対価としてポイントを還元し、一次流通市場でのデジタルコンテンツの購入に利用できるようにすることで、一次流通市場の活性化も図ることができる。また、二次流通の売上の一部を、例えばライセンス料として出版社に利益還元することで、一次流通市場で新たに販売されるデジタルコンテンツの創出を支援し、一次流通市場の活性化につなげることができる。
【0016】
なお、本実施の形態では、一次・二次流通されるデジタルコンテンツとして出版社が出版・発行する電子書籍を対象に説明するが、デジタルコンテンツの種類は特に制限されない。視聴や利用が閲覧権や利用権により制御され、コンテンツを購入することで閲覧権や利用権が付与されるという形で流通するものであれば、例えば、動画等の映像コンテンツや音楽コンテンツなどを対象とすることも可能である。そして、これらのコンテンツを販売する主体(販売者)は電子書店に限られず販売サイト等であってもよいし、これらのコンテンツを発行する主体(発行者)も出版社に限られず、他の企業や個人等であってもよい。
【0017】
<システム構成>
図1は、本発明の一実施の形態であるデジタルコンテンツ二次流通システムの構成例について概要を示した図である。デジタルコンテンツ二次流通システム1は、例えば、サーバ機器やクラウドコンピューティングサービス上に構築された仮想サーバ等により構成され、図示しないCPU(Central Processing Unit)により、HDD(Hard Disk Drive)等の記録装置からメモリ上に展開したOS(Operating System)やDBMS(DataBase Management System)、Webサーバプログラム等のミドルウェアや、その上で稼働するソフトウェアを実行することで、後述するようなデジタルコンテンツの二次流通に係る各種機能を実現する。
【0018】
出版社管理システム2は、各出版社が出版・発行している電子書籍の情報を管理する情報処理システムやWebサイトである。また、電子書籍販売システム3は、各電子書店が電子書籍を販売する業務を運営する情報処理システムやWebサイトである。電子書籍の利用者は、PC(Personal Computer)や、スマートフォン、タブレット端末等の携帯端末からなる利用者端末4を利用して、インターネット等のネットワーク5を介して電子書籍販売システム3にアクセスし、一次・二次流通している電子書籍を購入したり、電子書籍を出品(二次販売)したりすることができる。
【0019】
複数の出版社の出版社管理システム2や、複数の電子書店の電子書籍販売システム3が、ネットワーク5を介してデジタルコンテンツ二次流通システム1にアクセスし、電子書籍の二次流通に係る各種機能を使用することができる。本実施の形態では、上述したように、デジタルコンテンツ二次流通システム1は、各種機能をAPIとして提供するものとし、各出版社管理システム2や各電子書籍販売システム3は、これらのAPIをアドホック的に呼び出すことで電子書籍の二次流通に係る各種機能を利用する。
【0020】
すなわち、出版社管理システム2や電子書籍販売システム3により従来行われていた電子書籍の一次流通の仕組みに対して、大きな改修を加えることなく、独立したデジタルコンテンツ二次流通システム1が二次流通の機能を付加することを可能とするものである。利用者(利用者端末4)に対するインタフェース等のフロントエンド部分は従来どおり電子書籍販売システム3により実装される電子書店が受け持つ。なお、このようなシステム構成に限らず、例えば、電子書籍販売システム3の実装に用いられるCMS(Contents Management System:コンテンツ管理システム)にAPIとして組み込む形とすることも可能であるし、電子書籍販売システム3に一体的に組み込む形とすることも可能である。
【0021】
デジタルコンテンツ二次流通システム1は、例えば、ソフトウェアとして実装された書店管理部11、書籍管理部12、二次流通許諾処理部13、出品管理部14、および購入処理部15などの各部を有する。また、データベースやファイルテーブルとして実装された書店データベース(DB)111、書籍DB121、二次流通書店DB131、二次流通書籍DB132、および出品DB141などの各データストアを有する。
【0022】
書店管理部11は、書店DB111に記録されている、一次流通、二次流通を行う電子書店に係る情報を管理する機能を有する。書店DB111には、各電子書店のマスタ情報が記録されている。また、書籍管理部12は、書籍DB121に記録されている、一次流通、二次流通される電子書籍に係る情報を管理する機能を有する。書籍DB121には、各電子書籍のマスタ情報が記録されている。
【0023】
二次流通許諾処理部13は、出版社による電子書籍に対する二次流通の許諾に係る処理を行う機能を有する。出版社は、自身が出版・発行する電子書籍について、二次流通を許諾するもの、および二次流通する際の価格や期間等についての条件や制限を指定することができる。二次流通が許諾された電子書籍およびその条件の情報は、二次流通書籍DB132に記録される。また、出版社は、二次流通を許諾した電子書籍についてこれを取り扱う電子書店を指定することもできる。指定された電子書店の情報は、二次流通書店DB131に記録される。
【0024】
出品管理部14は、利用者による電子書籍の出品(二次販売)に係る情報を管理する機能を有する。また、購入処理部15は、出品されて二次流通している電子書籍に係る、利用者による購入についての情報を管理する機能を有する。電子書籍の出品および購入に係る情報は出品DB141に記録される。
【0025】
<処理の流れ(全体)>
図2は、本発明の一実施の形態における全体の処理の流れの例について概要を示した図である。まず、各出版社が、自身の出版社管理システム2にアクセスし、自身が出版・発行している電子書籍について二次流通の許諾を行う(S1)。そして、各電子書店の各利用者は、自身が利用する電子書店(電子書籍販売システム3)を介して、自身が既に購入している電子書籍のうち二次流通が許諾されているものについて、出品(二次販売)する(S2)。そして、各電子書店の各利用者は、自身が利用する電子書店(電子書籍販売システム3)を介して、出品されて二次流通している電子書籍を購入する(S3)。
【0026】
以下では、ステップS1~S3の各処理の内容について説明する。
【0027】
<処理の流れ(二次流通許諾(ステップS1))>
図3は、本発明の一実施の形態における出版社による二次流通の許諾処理の流れの例について概要を示した図である。まず、出版社が自身の出版社管理システム2(もしくはこれにより提供されるWebサイト)にアクセスし、これを介してデジタルコンテンツ二次流通システム1に対して、一次流通している電子書籍の情報の取得を要求する。デジタルコンテンツ二次流通システム1では、書籍管理部12により、対象の出版社により出版されている電子書籍の情報を書籍DB121から取得して、出版社管理システム2を介して出版社に提示する(S11)。
【0028】
出版社は、提示された電子書籍のうち、二次流通を許諾するものを指定して、許諾の条件を指定する。デジタルコンテンツ二次流通システム1では、二次流通許諾処理部13により、出版社管理システム2を介して指定された二次流通を許諾する電子書籍および許諾の条件の情報を受け付けて、二次流通書籍DB132に登録する(S12)。二次流通を許諾する電子書籍の指定方法としては、例えば、電子書籍のタイトル単位で個別に指定してもよいし、作者の単位や、新刊・旧刊の単位など、条件に合致する電子書籍を包括的に指定してもよい。なお、出版社管理システム2のようなシステム等を有さない出版社については、デジタルコンテンツ二次流通システム1の運用担当者等が出版社からオンラインもしくはオフラインでデータを受領して登録するようにしてもよい。
【0029】
電子書籍はデジタルデータであることから、一次流通される新品と、二次流通される中古品との間で、基本的には商品の物理的な劣化を想定することができない。したがって、二次流通を自由に許容すると、新品の商品価値を毀損するなど一次流通市場にネガティブな影響を与え、その結果として一次流通市場を前提とした二次流通市場の活性化が阻害されることにもなりかねない。
【0030】
そこで、本実施の形態では、出版社による二次流通の許諾に際して制限を設け、また出版社自身が制限を設けることができるものとする。例えば、出版社が二次流通を許諾することができる始期に制限を設け、対象の電子書籍が新刊として一次流通市場にて販売されてから一定期間(例えば1ヶ月)経過後でなければ二次流通の許諾ができないよう二次流通許諾処理部13等により制御する。
【0031】
また、出版社が二次流通を許諾する際に、許諾の条件として最低出品価格を設定して当該価格未満での二次流通市場への出品をできないようにする。これらにより、新品の商品価値を維持して一次流通市場を保護するとともに、出版社や著者の出版意欲、創作意欲が減退しないよう配慮することができる。最低出品価格については、出版社に限らず電子書店が設定できるようにしてもよい。両者が個別に設定した場合にいずれを採用するか(高い方の価格を採用する、出版社が設定した方を優先する等)は、要件に応じて適宜設定してよい。
【0032】
その後、出版社管理システム2は、デジタルコンテンツ二次流通システム1に対して、二次流通を許諾した電子書籍を取り扱っている電子書店の情報の取得を要求する。デジタルコンテンツ二次流通システム1では、書店管理部11により、対象の電子書籍を取り扱っている電子書店の情報を書店DB111から取得して、出版社管理システム2を介して出版社に提示する(S13)。
【0033】
出版社は、提示された電子書店のうち、対象の電子書籍について二次流通を取り扱うことを許可する電子書店を指定する。デジタルコンテンツ二次流通システム1では、二次流通許諾処理部13により、出版社管理システム2を介して指定された二次流通の取り扱いを許可された電子書店の情報を受け付けて、二次流通書店DB131に登録する(S14)。二次流通の取り扱いを許可する電子書店は、原則として一次流通を許可する電子書店と同様とするが、場合によっては一次流通は許可するものの、二次流通は許可しないとすることも可能である。このように二次流通の取り扱いを許可する電子書店を出版社側で指定できるようにすることで、一次流通市場を保護することが可能である。
【0034】
その後、出版社管理システム2は、対象の電子書籍について二次流通の許諾がされた旨を画面表示する等により出版社に対して通知するとともに、デジタルコンテンツ二次流通システム1に対して、二次流通の取り扱いを許可した電子書店に対しても通知するよう要求する。デジタルコンテンツ二次流通システム1では、二次流通許諾処理部13により、対象の電子書店に係る電子書籍販売システム3に対して、対象の電子書籍について二次流通の許諾がされた旨を通知し(S15)、二次流通許諾の処理を終了する。
【0035】
<処理の流れ(出品(ステップS2))>
図4は、本発明の一実施の形態における利用者による電子書籍の二次流通市場への出品処理の流れの例について概要を示した図である。まず、自身が購入して保有する電子書籍を二次流通市場に出品しようとする利用者が、対象の電子書籍を購入した電子書店に係る電子書籍販売システム3にアクセスし、これを介してデジタルコンテンツ二次流通システム1に対して、自身が保有する電子書籍のうち二次流通市場への出品が可能なもの(出版社により二次流通が許諾されているもの)の情報の取得を要求する。デジタルコンテンツ二次流通システム1では、出品管理部14により、該当する電子書籍の情報を二次流通書籍DB132から取得して、電子書籍販売システム3を介して利用者に提示する(S21)。
【0036】
利用者は、提示された電子書籍のうち、二次流通市場に出品するものを指定して、その販売価格を指定する。デジタルコンテンツ二次流通システム1では、出品管理部14により、電子書籍販売システム3を介して指定された出品対象の電子書籍と販売価格の情報を受け付けて、出品DB141に登録する(S22)。
【0037】
二次流通市場に出品する電子書籍は、一次流通市場にて購入した新品である必要はなく、二次流通市場にて購入した中古品を再度二次流通市場に出品するものであってもよい。ここで、上述したように、電子書籍については転々流通しても商品の物理的な劣化がないことから、新品同様の流通を許容すると一次流通市場にネガティブな影響を与えかねない。そこで本実施の形態では、同一電子書籍の二次流通市場への出品可能回数(転々流通する回数)を、例えば3回などに制限し、それ以上は出品できないようにする。すなわち、二次流通市場にて転々流通する毎に出品可能残回数が減っていくことになり、この特性をもって商品価値の観念的な劣化として意味付ける。
【0038】
そして、出品回数に応じて販売価格に設定できる値引き幅に制限を設けることで、一次流通市場へのマイナスの影響を抑止する。例えば、一次流通市場から定価で購入した新品を二次流通市場に出品する一回目の出品の場合は、利用者が出品時に設定できる販売価格の値引き幅を、当該電子書籍の購入価格(この場合は新品の定価)の最大30%引きまでに制限する。この電子書籍を二次流通市場から購入した利用者が次に二次流通市場に出品する二回目の出品の場合は、設定可能な値引き幅を当該電子書籍の購入価格の最大50%引きまでに制限する。そして、この電子書籍を購入した利用者が次に二次流通市場に出品する三回目の出品の場合は、以降に二次流通市場に出品する権利がないことから、値引き幅を当該電子書籍の購入価格の最大70%引きまで設定できるものとする。
【0039】
なお、いずれの場合も、上述の図3のステップS12において出版社もしくは電子書店が設定した最低出品価格未満の販売価格は設定できないものとする。各電子書籍の出品回数(もしくは出品可能残回数)の情報は、例えば、出品DB141や二次流通書籍DB132に記録しておく。
【0040】
一方で、電子書籍の転々流通は、デジタルデータのやり取りでだけ完結するため、例えば、紙媒体が絶版・品薄となっている書籍や、人気の書籍など、需要の高いものを対象に、ソフトウェアプログラムを利用した自動取引などによりいわゆる「せどり」のみを目的とした取引が行われることも考え得る。したがって、本実施の形態では、二次流通市場への出品の際の販売価格として、購入価格以上の価格を設定することはできないものとし、「せどり」が行われるのを防止する。
【0041】
上記のような出品回数や出品価格の制限に該当するか否かの判断は、例えば、デジタルコンテンツ二次流通システム1の出品管理部14により行い、出品不可の場合は電子書籍販売システム3を介して利用者に通知するようにしてもよいし、電子書籍販売システム3側で、出品可能回数を超えた出品や、出品価格の制限に抵触する販売価格の指定がそもそもできないように制御してもよい。
【0042】
なお、本実施の形態では出品する電子書籍の選択とその販売価格の指定を利用者が行うものとしているが、例えば、利用者による電子書籍販売システム3への事前の設定等により、利用者が読了した電子書籍を所定の割引率で自動的に二次流通市場に出品することで、二次流通市場の活性化を促すようにしてもよい。
【0043】
二次流通市場に出品する電子書籍の情報が出品DB141に登録されると、出品管理部14は、対象の電子書籍販売システム3に対して、出品された電子書籍に係る当該利用者の閲覧権を停止するよう要求する(S23)。電子書籍販売システム3では、当該電子書籍の閲覧権の停止処理を行うとともに、これを利用者に購入可能とすることで出品処理が終了する。なお、閲覧権が停止されることにより、当該利用者は対象の電子書籍を閲覧することはできなくなるが、所有権は有している状態となる。
【0044】
利用者が電子書籍販売システム3を介して対象の電子書籍の出品を取り消した場合は、デジタルコンテンツ二次流通システム1の出品管理部14により、対象の出品を取り消す(出品DB141から削除する)とともに、電子書籍販売システム3に対して閲覧権を回復させるよう要求する。利用者が出品を取り消すことができるのに加えて、電子書店側も出品を差し止めることができるようにしてもよい。
【0045】
<処理の流れ(購入(ステップS3))>
図5は、本発明の一実施の形態における利用者による電子書籍の二次流通市場からの購入処理の流れの例について概要を示した図である。まず、利用者が、自身がアカウントを有する電子書店に係る電子書籍販売システム3にアクセスし、これを介してデジタルコンテンツ二次流通システム1に対して、二次流通市場に出品されている電子書籍の情報の取得を要求する。デジタルコンテンツ二次流通システム1では、出品管理部14により、出品DB141を参照して出品されている電子書籍の情報を取得して、電子書籍販売システム3を介して利用者に提示する(S31)。二次流通しているものに限らず、電子書籍販売システム3が一次流通されている新品の電子書籍の情報を書籍DB121から取得して利用者に提示していてもよい。
【0046】
電子書籍販売システム3では、二次流通市場に出品されている電子書籍を提示する際に、例えば、各電子書籍についてそれぞれ出品価格と出品回数(もしくは出品可能残回数)が把握できる形で一覧表示する。利用者は、ここで購入した電子書籍を後に二次流通市場にて売却することを考慮すると、出品価格だけではなく、同じタイトルの電子書籍が出品されている数や、各電子書籍の出品回数(出品可能残回数)も考慮した上で購入を検討することになるため、その参照情報としてこれらの情報を提供する。なお、電子書籍はデジタルデータであり、出品ごとに物理的な相違はないことから、出品者の情報については提示する必要はない。
【0047】
利用者は、出品されている電子書籍の中から購入するものを決定、指示する。デジタルコンテンツ二次流通システム1では、購入処理部15により、電子書籍販売システム3を介して指定された購入対象の電子書籍の情報を受け付けて、出品DB141に記録されている対象の電子書籍に係る出品情報に対して購入された旨を登録する(S32)。なお、同じタイトルの電子書籍について、出品回数(出版可能残回数)が同じものが複数出品されている場合、利用者が当該電子書籍を購入しようとする際に、例えば、出品価格が最も安いものが自動的に選択されるように制御してもよい。最も安い出品価格のものが複数出品されている場合は、最先に出品されたものが自動的に選択されるように制御してもよい。
【0048】
その後、電子書籍販売システム3において、購入した利用者に対する決済処理を行うとともに、対象の電子書籍を出品した出品者に対して、当該電子書籍の売却の対価として、当該電子書店において利用可能なポイントを付与する処理を行う(S33)。そして、対象の電子書籍に係る閲覧権を、出品者から購入者に移転する処理を行い(S34)、購入処理を終了する。なお、ステップS32からS34までの一連の処理は、不可分で排他的に行われるトランザクション処理とする。
【0049】
図示しないが、利用者は、任意のタイミングで、電子書籍販売システム3を介して自身が二次流通市場に出品した電子書籍の購入状況等を確認することができる。デジタルコンテンツ二次流通システム1では、出品管理部14により、当該利用者が出品している電子書籍の情報や購入されているか否かの情報を出品DB14から取得して、電子書籍販売システム3を介して出品者に提示する。このとき、当該利用者に付与されているポイントの情報についても合わせて提示する。
【0050】
なお、本実施の形態では、出品した電子書籍が購入されたことに対する出品者への対価は、購入者が金銭で支払ったかポイントで支払ったかに関わらず、上述したように、対象の電子書店で利用可能なポイントとする。そして、このポイントを、当該電子書店で一次流通されている新品の電子書籍を購入する際に限定して利用可能なものとし、その有効期限も一定期間(例えば6ヶ月)に限定する。これにより、対象の電子書店における一次流通・二次流通のさらなる活性化を促す。
【0051】
<画面例>
図6および図7は、本発明の一実施の形態における電子書籍販売システム3により利用者端末4に表示される画面の例について概要を示した図である。図6は、利用者が利用者端末4を使用して電子書籍販売システム3にアクセスし、当該電子書籍販売システム3に係る電子書店で取り扱われている電子書籍を検索したときの画面の例を示している。ここでは検索結果として「COMIC」というタイトルの電子書籍が表示されており、新刊の販売価格が462円であることが示されている。
【0052】
当該電子書籍が、出版社により二次流通の許諾がされており、かつ他の利用者により中古品が既に出品されている場合は、図示するように画面下部に「中古品を購入する」ボタンが表示され、これをクリックやタップ等(以下単に「クリック」と記載する場合がある)することで利用者は当該電子書籍の中古品を購入することができる。図6の例では、当該電子書籍について中古品が20件出品されており、その中で最も低い出品価格が400円であることを示している。
【0053】
また、当該電子書籍が、出版社により二次流通の許諾がされており、かつ当該利用者が新品もしくは中古品を既に購入して保有している場合は、図示するように画面下部に「出品する」ボタンが表示され、これをクリックすることで当該利用者は自身が保有している当該電子書籍を二次流通市場に出品することができる。
【0054】
図7は、利用者が自身が保有している電子書籍を二次流通市場に出品する際の画面の例を示している。この画面は、例えば、上述した図6の画面例において利用者が「出品する」ボタンをクリックすることで表示される。利用者が当該電子書店での自身の購入履歴を一覧表示し、そこから対象の電子書籍を指定して出品する旨の指示を行うことで表示されるようにしてもよい。
【0055】
図7の上段の「商品の詳細」欄には、当該利用者が保有する「COMIC」というタイトルの電子書籍について、新品価格が462円であることが示されている。当該利用者が保有しているものが中古品である場合は、これと合わせて中古品の購入時の価格を表示するようにしてもよい。また、当該電子書籍の発売開始日と発売からの経過日数も表示されており、当該利用者が出品価格を設定する際の参考情報とすることができる。
【0056】
図7の下段の「出品価格」欄では、当該利用者が、対象の電子書籍について二次流通市場に出品する際の販売価格を設定することができる。このとき、例えば、過去に蓄積された取引データや、発売からの経過日数などの情報に基づく分析結果として「売れ筋」の価格帯をシステムが推奨するようにしてもよい。利用者が設定した販売価格に対して、所定の条件に基づいて計算された電子書店側が得る販売手数料の金額と、販売価格から当該金額を控除した利用者が得る販売利益の金額についても合わせて表示する。利用者が画面下部の「出品する」ボタンをクリックすることで、対象の電子書籍が設定された販売価格で二次流通市場に出品される。
【0057】
なお、電子書店側が得る販売手数料は、その一部を例えばライセンス料として出版社に利益還元することで、一次流通市場で新たに販売されるデジタルコンテンツの創出を支援し、一次流通市場の活性化につなげることができる。また、出品した利用者が得る販売利益は、上述したように、当該電子書店で新品の電子書籍を購入する際に限定して使用可能なポイントとして還元することで、一次流通市場の活性化も図ることができる。
【0058】
以上に説明したように、本発明の一実施の形態であるデジタルコンテンツ二次流通システム1によれば、電子書店にとって、デジタルコンテンツの二次流通市場を容易に実現することが可能となり、利用者に対してデジタルコンテンツを容易に割安で購入する機会を提供してデジタルコンテンツの二次流通市場の活性化を図るとともに、一次流通市場の活性化にもつなげることができる。
【0059】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0060】
例えば、上記の実施の形態では、デジタルコンテンツの保有者が出品してポイントを得る構成として説明したが、この構成に加え、各電子書店が電子書籍販売システムによりデジタルコンテンツの保有者から直接買い戻す構成を追加してもよい。この場合、買い戻す際の価格を十分に低く設定した場合でも、出品して売却される場合と比べ、買い戻す場合には一般利用者による購入というステップがないためその分のリードタイムがなく、すぐに売却したい保有者にとっては有益である。例えば、ある保有者が自分が欲しい電子書籍があるのに保有ポイントが足りないという場合には、出品した場合よりも低い金額となるが、電子書店が買い戻すことで迅速に売却し、すぐに自分が欲しい電子書籍を手に入れることが可能となる。
【0061】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、またはICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0062】
また、上記の各図において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも実装上の全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、デジタルコンテンツの二次流通を支援し管理するデジタルコンテンツ二次流通システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…デジタルコンテンツ二次流通システム、2…出版社管理システム、3…電子書籍販売システム、4…利用者端末、5…ネットワーク、
11…書店管理部、12…書籍管理部、13…二次流通許諾処理部、14…出品管理部、15…購入処理部、
111…書店DB、121…書籍DB、131…二次流通書店DB、132…二次流通書籍DB、141…出品DB
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7