(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049125
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】電力制御装置及び電力制御方法
(51)【国際特許分類】
G05F 1/67 20060101AFI20230403BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20230403BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20230403BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20230403BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
G05F1/67 Z
H02M3/155 H
H01L29/78 655A
H01L29/78 657D
H01L29/78 657G
H01L29/91 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158681
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日永田 一大
【テーマコード(参考)】
5H420
5H730
【Fターム(参考)】
5H420BB03
5H420BB17
5H420CC02
5H420DD04
5H420EA11
5H420EA39
5H420EA40
5H420EA47
5H420EB13
5H420EB39
5H420FF03
5H420FF04
5H420FF08
5H420FF22
5H420FF23
5H420FF25
5H420KK10
5H730AS04
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB88
5H730DD03
5H730DD41
5H730EE57
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FD51
5H730FF09
5H730FG12
5H730FG26
(57)【要約】
【課題】電源の内部インピーダンス、或いは内部コンダクタンスを給電動作中に計測することにより、最大電力を供給可能な電力制御装置及び電力制御方法を提供する。
【解決手段】電力制御装置(10)は、電源(TMG)からの電力の供給、及び供給の遮断が可能な第1のスイッチ素子(Q1)、及び電源の両端間の短絡が可能な第2のスイッチ素子(Q2)を備えたコンバータ(1)と、入力電圧値を出力する第1の電圧検出器(5)と、入力電流値を出力する第1の電流検出器(7)と、出力電圧値を出力する第2の電圧検出器(6)と、出力電流値を出力する第2の電流検出器(8)と、入力電圧値、及び入力電流値を用いて、電源の抵抗値を算出する抵抗値算出部(31、32)と、出力電力の出力時に、抵抗値を更新する抵抗値更新部(38)と、第1のスイッチ素子、及び第2のスイッチ素子のオンオフ駆動を行う制御部(33~36)と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電変換モジュールから出力された電力を変換する電力変換回路及び前記電力変換回路を制御する制御部を備えた電力制御装置であって、
前記制御部は、
前記電力変換回路の入力電流及び入力電圧を用いて前記熱電変換モジュールの内部抵抗を算出し基準点抵抗値とする基準点抵抗値算出部と、
前記熱電変換モジュールから前記電力変換回路に電力が供給される間、前記電力変換回路の入力電流及び入力電圧を用いて前記熱電変換モジュールの内部抵抗の合成値を算出する動作点抵抗値算出部と、を有し、
前記動作点抵抗値算出部で算出された前記内部抵抗の合成値が前記基準点抵抗値算出部で算出された前記基準点抵抗値に近づくように前記電力変換回路での前記熱電変換モジュールから出力される電力の電力変換を制御し、
さらに、前記制御部は、
前記電力変換回路から出力される出力電力の値が最大となる動作点を特定し、前記基準点抵抗値を更新する抵抗値更新部を有し、
前記抵抗値更新部で更新された前記基準点抵抗値と前記内部抵抗の合成値が前記基準点抵抗値算出部で算出された前記基準点抵抗値に近づくように前記電力変換回路での前記熱電変換モジュールから出力される電力の電力変換を制御する、電力制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記内部抵抗の合成値と前記基準点抵抗値との差が予め定められた閾値より小さくなり、予め設定された設定時間を経過した後に、前記抵抗値更新部において前記電力変換回路から出力される出力電力の値が最大となる動作点を特定する、請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、予め設定された第1の設定時間と前記第1の設定時間より短い第2の設定時間とを有し、前記内部抵抗の合成値と前記基準点抵抗値との差が予め定められた閾値より小さくなり、前記第1の設定時間経過後、前記第1の設定時間前後での前記電力変換回路から出力される出力電力の差が予め設定された値より小さくなり、前記第2の設定時間を経過した後に、前記抵抗値更新部において前記電力変換回路から出力される出力電力の値が最大となる動作点を特定する、請求項2に記載の電力制御装置。
【請求項4】
前記基準点抵抗値算出部は、前記熱電変換モジュールからの電力出力開始時の前記熱電変換モジュールの内部抵抗を初期の基準点抵抗値とし、前記抵抗値更新部により前記初期の基準点抵抗値が更新される、請求項1から3のいずれか1項に記載の電力制御装置。
【請求項5】
前記電力変換回路は、前記熱電変換モジュールからの電力の供給、及び前記供給の遮断が可能な第1のスイッチ素子、及び前記第1のスイッチ素子のオン駆動時に前記熱電変換モジュールの両端間の短絡が可能な第2のスイッチ素子を備え、前記第1のスイッチ素子、及び前記第2のスイッチ素子のオンオフ駆動により、前記電力の電圧の昇圧、及び降圧が可能なコンバータを備え、
前記制御部は前記第1のスイッチ素子及び前記第2のスイッチ素子のオンオフ駆動を制御する、請求項1から4のいずれか1項に記載の電力制御装置。
【請求項6】
熱電変換モジュールから出力された電力を制御する電力制御方法であって、
前記熱電変換モジュールから電力変換回路に電力が供給されるとともに、前記電力変換回路の入力電流及び入力電圧を用いて前記熱電変換モジュールの内部抵抗の初期値を算出し基準点とする第1のステップと、
前記熱電変換モジュールから前記電力変換回路に電力が供給される間、前記電力変換回路の入力電流及び入力電圧を用いて前記熱電変換モジュールの内部抵抗の合成値を算出し、前記内部抵抗の合成値が前記基準点に近づくように、前記熱電変換モジュールから出力される電力の電力変換を制御する第2のステップと、
前記熱電変換モジュールの温度変化が安定したことを確認する第3のステップと、
前記内部抵抗の値を前記初期値から増加させながら、山登り法により前記電力変換回路の出力電力が最大となる内部抵抗の値を探索する第4のステップと、
前記第4のステップで探索された前記電力変換回路の出力電力が最大となる内部抵抗の値を更新された基準点とする第5のステップと、を備えた電力制御方法。
【請求項7】
前記第5のステップで更新された前記基準点をもとに前記第2のステップから順に各ステップを実行する、請求項6に記載の電力制御方法。
【請求項8】
前記第5のステップで更新された前記基準点をもとに前記第2のステップを実行し、その後前記第4のステップを実行する、請求項6に記載の電力制御方法。
【請求項9】
前記第3のステップにおいて、予め設定された第1の時間経過後に、前記電力変換回路からの出力電力の変動が予め設定された閾値内となり、予め設定された第2の時間経過することにより、前記熱電変換モジュールの温度変化が安定したと確認する、請求項6から8のいずれか1項に記載の電力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電力制御装置及び電力制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の熱電変換装置の制御方法としては、熱電変換装置からの出力を最大化させるために、山登り法を用いて任意の制御周期で熱電変換装置の出力電流を変動させて、最適動作点を探索するものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような熱電変換装置の制御方法においては、制御周期が熱電変換装置の熱時定数よりも短い場合、正確な熱電変換装置の最大電力点を取得することが困難となる。その結果、熱電変換装置の最大出力電力よりも取り出し電力が低下するという問題があった。
【0005】
本開示は、以上に記載されたような問題を鑑みてなされたものであり、熱電変換装置の取り出し電力を増大させるための技術であり、最大電力を供給可能な電力制御装置及び電力制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電力制御装置は、熱電変換モジュールから出力された電力を変換する電力変換回路及び前記電力変換回路を制御する制御部を備えた電力制御装置であって、前記制御部は、前記電力変換回路の入力電流及び入力電圧を用いて前記熱電変換モジュールの内部抵抗を算出し基準点抵抗値とする基準点抵抗値算出部と、前記熱電変換モジュールから前記電力変換回路に電力が供給される間、前記電力変換回路の入力電流及び入力電圧を用いて前記熱電変換モジュールの内部抵抗の合成値を算出する動作点抵抗値算出部と、を有し、前記動作点抵抗値算出部で算出された前記内部抵抗の合成値が前記基準点抵抗算出部で算出された前記基準点抵抗値に近づくように前記電力変換回路での前記熱電変換モジュールから出力される電力の電力変換を制御し、さらに、前記制御部は、前記電力変換回路から出力される出力電力の値が最大となる動作点を特定し、前記基準点抵抗値を更新する抵抗値更新部を有し、前記抵抗値更新部で更新された前記基準点抵抗値と前記内部抵抗の合成値が前記基準点抵抗算出部で算出された前記基準点抵抗値に近づくように前記電力変換回路での前記熱電変換モジュールから出力される電力の電力変換を制御する、ものである。
【0007】
本開示に係る電力制御方法は、熱電変換モジュールから出力された電力を制御する電力制御方法であって、前記熱電変換モジュールから電力変換回路に電力が供給されるとともに、前記電力変換回路の入力電流及び入力電圧を用いて前記熱電変換モジュールの内部抵抗の初期値を算出し基準点とする第1のステップと、前記熱電変換モジュールから前記電力変換回路に電力が供給される間、前記電力変換回路の入力電流及び入力電圧を用いて前記熱電変換モジュールの内部抵抗の合成値を算出し、前記内部抵抗の合成値が前記基準点に近づくように、前記熱電変換モジュールから出力される電力の電力変換を制御する第2のステップと、前記熱電変換モジュールの温度変化が安定したことを確認する第3のステップと、前記内部抵抗の値を前記初期値から増加させながら、山登り法により前記電力変換回路の出力電力が最大となる内部抵抗の値を探索する第4のステップと、前記第4のステップで探索された前記電力変換回路の出力電力が最大となる内部抵抗の値を更新された基準点とする第5のステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本願明細書に開示される技術の少なくとも第1の態様によれば、熱電変換装置から出力される電力(取り出し電力)を増大させることができ、最大電力を供給可能な電力制御装置及び電力制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る電力制御装置の構成例を示す図である。
【
図2】熱電変換モジュールの電圧-電流特性、及びペルティエ効果による電圧-電流特性の変化の例を説明する図である。
【
図3】熱電変換モジュールの電力-電流特性、及びペルティエ効果による電力-電流特性の変化の例を説明する図である。
【
図4】熱電変換モジュールの電力-抵抗特性、及びペルティエ効果による電力-抵抗特性の変化の例を説明する図である。
【
図5】本開示の実施の形態1に係る電力制御装置における合成値の更新方法例を説明する図である。
【
図6】前後の最大電力点の間で生じる電流量の相違を説明する図である。
【
図7】基準点探索処理の例を示すフローチャートである。
【
図8】最大電力点探索処理の例を示すフローチャートである。
【
図9】実施の形態1に係る最大電力制御の全体の流れを示すフローチャートである。
【
図10A】基準点探索処理の別の例を示すフローチャートである。
【
図10B】基準点探索処理の別の例を示すフローチャートである。
【
図11】最大電力点探索処理の例を示す別のフローチャートである。
【
図12】実施の形態1に係る制御部、ゲートパルス発生器のハードウエア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る電力制御装置及び電力制御方法の実施の形態を、図を参照して説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る電力制御装置の構成例を示す図である。この電力制御装置10は、供給する電力量が変動する電源に対応して、その電源から供給された電力の変換を行うものである。
図1では、その電源として、計n個の熱電変換モジュールTMG1~TMGnを直列に接続した熱電変換モジュール群TMGが電力制御装置10に接続されている。任意の1つの熱電変換モジュールには、符号として、「TMGz」を付すこととする。
【0012】
電力制御装置10は、
図1に示すように、コンバータ1、インバータ2、制御部3、ゲートパルス発生器4、2つの電圧センサ5、6及び2つの電流センサ7、8を備えている。制御部3は、例えばマイクロコンピュータである。
【0013】
コンバータ1は、電圧の昇降圧が可能な電力変換回路であり、
図1に示すように、2つの平滑用コンデンサCin及びCout、2つのスイッチ素子Q1及びQ2、2つのダイオードD1及びD2、インダクタLを備える。本実施の形態1では、スイッチ素子Q1は第1のスイッチ素子に相当し、スイッチ素子Q2は第2のスイッチ素子に相当する。2つのスイッチ素子Q1及びQ2は共に、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)にダイオードを逆向きに接続したものである。
【0014】
平滑用コンデンサCinは、熱電変換モジュール群TMGの両端の間に接続されている。それにより、熱電変換モジュール群TMGが発生させた電圧が印加される平滑用コンデンサCinは、その電圧の平滑化を行う。
【0015】
スイッチ素子Q1のコレクタは、平滑用コンデンサCinの正側の端子と接続されている。スイッチ素子Q1のエミッタは、ダイオードD1のカソード、及びインダクタLと接続されている。そのため、スイッチ素子Q1のオンオフ駆動により、熱電変換モジュールTMG群が発電により発生させた電力の供給、及び供給の遮断を行うことができる。スイッチ素子Q1は、主に、供給された電力の電圧を、その電圧よりも低い電圧に変換する降圧動作のためにオンオフ駆動される。
【0016】
2つのスイッチ素子Q1及びQ2の各ゲートは、ゲートパルス発生器4と接続されている。そのため、2つのスイッチ素子Q1及びQ2は、ゲートパルス発生器4が発生するパルスにより、オンオフ駆動するようになっている。
図1中に表記の「Q1_gate」及び「Q2_gate」は、それぞれ、スイッチ素子Q1及びQ2のゲートに供給されるオンオフ駆動用のパルス信号を表している。本実施の形態1では、PWM(Pulse Width Modulation)制御によりパルス信号をゲートパルス発生器4に発生させるようにしている。なお、2つのスイッチ素子Q1及びQ2は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等の別のパワーデバイスであっても良い。
【0017】
インダクタLの他方は、スイッチ素子Q2のコレクタ、及びダイオードD2のアノードに接続されている。スイッチ素子Q2のエミッタは、2つの平滑用コンデンサCin及びCoutの負側の端子、ダイオードD1のアノード、及び熱電変換モジュール群TMGの負側にそれぞれ接続されている。そのため、スイッチ素子Q2のオンオフ駆動により、スイッチ素子Q1のオン駆動期間中での熱電変換モジュール群TMGの両端の短絡、及び短絡の解除が可能となっている。スイッチ素子Q2は、主に、供給された電力の電圧を、その電圧よりも高い電圧に変換する昇圧動作のためにオンオフ駆動される。
【0018】
平滑用コンデンサCoutの一方の端子は、ダイオードD2のカソードに接続され、他方の端子は、スイッチ素子Q2のエミッタに接続されている。それにより、平滑用コンデンサCoutは、コンバータ1から出力として供給される電力の電圧の平滑化を行う。
【0019】
平滑用コンデンサCinの両端、つまり熱電変換モジュール群TMGの両端には、電圧センサ5が接続されている。そのため、電圧センサ5は、電圧の検出結果として、平滑用コンデンサCinの両端間の電圧値を示す信号を出力する。ここでは、その電圧値を「入力電圧値Vin」と表記する。便宜的に、入力電圧値Vinは、電圧センサ5が出力する情報の意味でも用いる。同様に、電圧センサ6が出力する信号が示す電圧値は「出力電圧値Vout」、電流センサ7が出力する信号が示す電流値を「入力電流値IL」、電流センサ8が出力する信号が示す電流値を「出力電流値Iout」と表記する。電圧センサ5は、本実施の形態における第1の電圧検出器に相当する。
【0020】
平滑用コンデンサCoutの両端にも、電圧センサ6が接続されている。そのため、電圧センサ6は、平滑用コンデンサCoutの両端間の電圧値を示す信号を出力する。ここでは、その電圧値を「出力電圧値Vout」と表記する。電圧センサ6は、本実施の形態における第2の電圧検出器に相当する。
【0021】
電流センサ7は、インダクタLを流れる電流を検出し、検出した電流の値を示す信号を出力する。ここでは、その電流値を「入力電流値IL」と表記する。電流センサ8は、ダイオードD2を流れる電流を検出し、検出した電流の値を示す信号を出力する。ここでは、その電流値を「出力電流値Iout」と表記する。電流センサ7及び8は、それぞれ、本実施の形態における第1の電流検出器、及び第2の電流検出器に相当する。
【0022】
上記のような構成のコンバータ1は、直流-直流変換を行う電力変換回路である。インバータ2は、直流-交流変換を行う電力変換回路である。インバータ2は、
図1に示すように、平滑用コンデンサCD、及びインバータ本体21を備えている。
【0023】
平滑用コンデンサCDは、コンバータ1から印加される電圧の平滑化を行う。インバータ本体21は、平滑用コンデンサCDの両端に接続されている。このインバータ本体21は、例えば3つのハーフブリッジ、或いはフルブリッジを備えたものである。インバータ本体21によって交流に変換された電力が負荷に供給される。インバータ本体21の回路構成は、特に限定されない。
【0024】
本実施の形態では、上記のように、電力制御装置10は、コンバータ1及びインバータ2の2つの電力変換回路を備えている。しかし、電力変換回路としては、最低限、コンバータ1、つまり電圧の昇降圧が可能な電力変換回路を備えていれば良い。その電力変換回路は、電圧の昇降圧が可能なように、用途が異なる2種類のスイッチ素子をそれぞれ1つ以上、備えた構成となる。
【0025】
制御部3上には、
図1に示すように、機能構成として、基準点抵抗値算出部31、入力電力算出部32、制御状態判定部33、コンバータ状態判定部34、出力電圧制御部35、目標設定部36、動作点抵抗値算出部37、及び最大電力制御部38が実現されている。
【0026】
基準点抵抗値算出部31は、熱電変換モジュール群TMGの内部インピーダンス、つまり内部抵抗の合成値を算出する。内部抵抗の合成値の総称として「合成値r」を用いる。合成値rの初期値である合成値roの算出は、スイッチ素子Q1及びQ2を共にオンさせて、その状態で得られた入力電圧値Vin及び入力電流値ILを2点以上用いて行われる。この場合、合成値roは、ro =(Vin1-Vin2)/(IL2-IL1)-(Rq1+Rq2)、により算出することができる。Rq1、Rq2は、スイッチ素子Q1、Q2の各オン抵抗値である。これらオン抵抗値Rq1、Rq2は、合成値roと比較して十分、小さいことから、無視しても良い。本実施の形態では、便宜的に、オン抵抗値Rq1、Rq2を無視している。それにより、合成値roは、ro=(Vin1-Vin2)/(IL2-IL1)、により算出するようにしている。合成値roは、外部から入力したデータ、或いは制御部3に予め保存させたデータが示す値であっても良い。この基準点抵抗値算出部31は、本実施の形態1における抵抗値算出部に相当する。なお、算出対象は、内部インピーダンスの代わりに、その逆数である内部コンダクタンスとしても良い。初期値として算出される合成値roはペルティエ効果による温度差の低下が僅かな状態を計測しており、以降「初期値ro」と表記して区別する。基準点抵抗値算出部31は、算出した合成値roを基準点抵抗値として最大電力制御部38に出力する。
【0027】
入力電力算出部32は、入力電圧値Vin及び入力電流値ILを用いて、入力電力値Pinを算出する。入力電力値Pinは、例えばPin=Vin×IL、により算出することができる。入力電力算出部32は、算出した入力電力値Pinを最大電力制御部38に出力する。
【0028】
制御状態判定部33は、入力電力算出部32から入力した入力電力値Pinを参照し、コンバータ1の制御方法を判定する。入力電力値Pinが過大であった場合、制御状態判定部33は、コンバータ1を保護するために、制御方法として保護停止を選択する。
【0029】
本実施の形態では、コンバータ1の定格を考慮し、コンバータ1を制御する上での複数の設定値を設けている。目標設定部36は、設けた複数の設定値を反映した制御を実現させるための構成要素である。目標設定部36は、各種設定値を示すデータをコンバータ状態判定部34及び出力電圧制御部35に出力する。
【0030】
図1には、目標設定部36により設定される設定値として、「Vco」「Vch」「VH」を表記している。それら設定値は、それぞれ以下のようなものである。
【0031】
Vco、及びVchは、コンバータ1に生成させる電圧の制御に用いられる設定値である。Vchは、Vcoより大きい値であり、生成させる電圧の抑制制御を開始する電圧値を示す。以降、Vcoは「第1設定電圧値Vco」、Vchは「第2設定電圧値Vch」とそれぞれ表記する。
【0032】
VHも、例えばコンバータ1の定格を考慮して設定される電圧値であり、コンバータ1を保護する制御を開始する基準となる。それにより、熱電変換モジュール群TMGから供給された電力の変換は、その電力の電圧値がVH以下であることを条件に行われる。その電圧値がVHを越えた場合、コンバータ1に電力の変換は行わせない。つまり、コンバータ1は停止される。このようなことから、第1設定電圧値Vco、及び第2設定電圧値Vchを含め、それらの間の大小関係は、Vco<Vch<VH、となっている。以降、VHは「設定上限電圧値VH」と表記する。
【0033】
上記のように、コンバータ1は、熱電変換モジュール群TMGから供給される電力の電圧の昇降圧を行う電力変換回路である。そのため、各設定電圧値Vco、及びVchは、コンバータ1に生成させる電圧の目標値となると共に、供給される電力の電圧に対する昇圧、及び降圧のうちの何れを行うべきかを判定するうえでの基準ともなる。設定上限電圧値VHは、供給される電力によって電力制御装置10が損傷する恐れから、供給される電力を遮断するか否かの判定に用いられる。
【0034】
図1には示していないが、目標設定部36は、制御状態判定部33に対し、制御方法の選択のための各種設定値を設定する。制御状態判定部33は、これら設定値を参照し、制御方法を選択する。これら設定値は、例えば定格を考慮して設定される値である。具体的には、その設定値には、Pco1、Pco2、PH等がある。
【0035】
Pco1は、コンバータ1に供給される電力量から、制御方法を切り換えるために設定された閾値である。Pco2は、コンバータ1から出力させる電力量の上限として設定された閾値であり、例えば定格値である。PHは、過大な電力量の供給からコンバータ1を保護するために設定された閾値である。それらの間の大小関係は、Pco2<Pco1<PH、である。
【0036】
コンバータ1から供給させる電力の値は、例えば出力電圧値Voutに出力電流値Ioutを乗算することにより算出できる。以降、その値は「出力電力値Pout」と表記する。
【0037】
コンバータ状態判定部34には、制御状態判定部33の判定結果の他に、入力電圧値Vin、出力電圧値Vout、及び出力電流値Ioutが入力される。それにより、コンバータ状態判定部34は、制御状態判定部33が判定した制御方法のうちでスイッチ素子Q1及びQ2のオンオフ駆動用のモードを選択する。この選択結果は、出力電圧制御部35に通知される。出力電圧制御部35には、他に、入力電圧値Vin、入力電流値IL、及び出力電圧値Voutが入力される。
【0038】
出力電圧制御部35は、コンバータ状態判定部34が選択したモードでスイッチ素子Q1及びQ2を駆動する。制御状態判定部33、或いはコンバータ状態判定部34が保護停止制御を選択した場合、出力電圧制御部35は、スイッチ素子Q1及びQ2を共にオフさせる。保護停止制御が選択されていない場合、出力電圧制御部35は、スイッチ素子Q1及びQ2のうちの少なくとも一方をオン駆動させるか、或いはオンオフ駆動させるための指令を生成する。スイッチ素子Q1及びQ2のうちの少なくとも一方をオンオフ駆動させる場合、出力電圧制御部35は、入力電圧値Vin、入力電流値IL、出力電圧値Vout、第1設定電圧値Vco、第2設定電圧値Vch、設定上限電圧値VH、設定上限電流値IH、及び設定出力電力値Pco2を参照してオン期間を決定する。オフ期間は、オン期間により自動的に決定される。ゲートパルス発生器4は、この決定に沿って出力電圧制御部35により駆動され、各スイッチ素子Q1及びQ2のゲートに出力すべき信号を生成する。
【0039】
スイッチ素子Q1及びQ2の各駆動内容は、モードにより変化する。スイッチ素子Q1は、保護停止制御の非選択時にはオンされるか、或いはオンオフ駆動される。スイッチ素子Q2は、保護停止制御の非選択時にはオン、オフ、或いはオンオフ駆動される。このようなことから、スイッチ素子Q1及びQ2は共に、保護停止制御の非選択時全体ではオンオフ駆動されることになる。スイッチ素子Q1及びQ2のうちでオンオフ駆動するスイッチ素子のオン期間、つまり各デューティ比は、出力電圧制御部35によって決定される。このようなことから、出力電圧制御部35、コンバータ状態判定部34、及び制御状態判定部33は、本実施の形態における制御部に相当する。
【0040】
動作点抵抗値算出部37は、給電動作中の動作点のインピーダンス、つまり動作点抵抗の合成値Rを算出する。動作点の合成値の総称として「合成値R」を用いる。合成値Rは、スイッチ素子Q1及びQ2がオンオフ動作している給電中に得られた入力電圧値Vin及び入力電流値ILを用いて、R=Vin/ILにより算出することができる。スイッチ素子Q1、Q2の各オン抵抗値であるRq1、Rq2は、合成値Rと比較して十分、小さいことから、無視しても良い。本実施の形態では、便宜的に、オン抵抗値Rq1、Rq2を無視している。この動作点抵抗値算出部37は、本実施の形態1における抵抗値算出部に相当する。動作点抵抗値算出部37は、算出した動作点抵抗の合成値Rを最大電力制御部38へ出力する。
最大電力制御部38は、後述する基準点制御において、動作点抵抗の合成値Rを基準点抵抗値の合成値rに近づけるようにΔVを考慮し、スイッチ素子Q1及びQ2の各オン期間を調整することで、熱電変換モジュール群TMGからの出力電力を最大にする。
【0041】
最大電力制御部38は、出力電力値Poutが最大となるように、出力電圧制御部35に対して動作点を設定する。ここでいう動作点は、最大電力制御部38が目標とする、出力電力値Poutを最大にするVinまたはILの値をいう。出力電力値Poutを最大にするには、入力電力値Pinを最大化することが必要であり、出力電圧制御部35に操作量ΔV、及びΔIを与えて、スイッチ素子Q1、Q2をオンオフ駆動させ、VinまたはILの値を目標値に近づける。
【0042】
基準点抵抗値算出部31は、熱電変換モジュール群TMGからの電力の供給を開始させる前に、スイッチ素子Q1、Q2をオンオフ駆動させ、電圧値、電流値を2点以上で計測させることにより、熱電変換モジュール群TMGの内部インピーダンスを含む抵抗値である初期値roを基準点抵抗値算出部31に算出させる。このときに基準点抵抗値算出部31が算出する初期値roは、スイッチ素子Q1をオフさせた状態で得られる入力電圧値Vinを開放電圧値として測定させ、仮の動作点として、開放電圧値の1/2を設定し、その設定時に測定された電圧値、電流値から算出された抵抗値としても良い。基準点抵抗値算出部31が算出した基準点抵抗値の初期値roは、最大電力制御部38に出力される。
最大電力制御部38は、動作点が基準抵抗値の初期値roとなるようΔV及びΔIを制御するよう出力電圧制御部35へ出力する。このように制御することにより、コンバータ1の内部インピーダンスを熱電変換モジュール群TMGの内部インピーダンスと一致させることができ、コンバータ1は熱電変換モジュール群TMGから効率よく電力が供給される。
【0043】
ここで、熱電変換モジュール群TMGのペルティエ効果による温度差の低下に対する従来の電力制御技術の課題について説明する。
まず、内部インピーダンス、或いは内部コンダクタンスを制御に用いる従来技術について説明する。従来は、内部インピーダンス、或いは内部コンダクタンスを算出する電源として、熱電変換モジュールを想定している。これは、熱電変換モジュールには、発電時の内部インピーダンスは常温より温度が高い分大きくなるが、その後の発電環境(動作環境)の変化、つまり高温側と低温側との間の温度差が変化しても内部インピーダンスは殆ど変化しないという特性があるからである。開放電圧は、温度差が大きくなるほど大きくなる。この特性から、算出した内部インピーダンス、或いは内部コンダクタンスを制御に利用することにより、コンバータから出力される電力が最大化するように、動作点を追尾することができる。
【0044】
しかし、熱電変換モジュールは、例え発電環境が一定であったとしても、給電時のペルティエ効果により、温度差が低下する。これは、ペルティエ効果は、熱電変換モジュールが給電する方向に電流を流すことで高温側を冷却し、低温側を過熱するように作用するからである。つまり、電流が多いほどペルティエ効果が強くなりモジュールの温度差が低下する。給電前のわずかな時間で計測できる電圧・電流から算出される内部インピーダンスには、このペルティエ効果による温度変化分は反映されない。そのため、算出した熱電変換モジュールの内部インピーダンス、或いは内部コンダクタンスを用いて動作点を追尾する制御では、コンバータに出力させる出力電力を適切に最大化させることが必ずしもできない。これは、給電前に算出される内部インピーダンスと、ペルティエ効果の影響が収まった後に最大電力が得られる動作点のインピーダンスとの間には差があるからである。このことから、給電前に算出された内部インピーダンスを用いて行う制御では、実際には、コンバータの動作点を最大電力点に維持させることが非常に困難である。
【0045】
ペルティエ効果は、熱電変換モジュールが接触する高温部、及び低温部の熱抵抗に依存して温度差の低下量が増加し最大電力が得られる動作点のインピーダンスは大きくなり、給電前に算出される内部インピーダンスとの差が大きくなる。また、ペルティエ効果による温度変化が安定するまでには、熱電変換モジュールの高温部、及び低温部の熱容量に依存する時間が必要である。その時間は、比較的に長い時間である。その時間を考慮し、開放電圧の再測定、その再測定結果から動作点を再設定しての電圧値、及び短絡電流値の再測定により、熱電変換モジュールの内部インピーダンス、或いは内部コンダクタンスを再度、算出することが考えられる。しかし、そのためには、コンバータからの電力供給を一時的に停止させる必要がある。電力供給の停止は、例え一時的であっても非常に望ましくない。
【0046】
従って、本実施の形態においては電源の内部インピーダンス、或いは内部コンダクタンスを給電動作中に計測することにより、最大電力をより確実に供給可能とする態様を説明する。
【0047】
次に、
図2~4を参照し、熱電変換モジュールTMGzの特性、及びペルティエ効果の影響について具体的に説明する。
図2は、熱電変換モジュールの電圧-電流特性、及びペルティエ効果による電圧-電流特性の変化の例を説明する図である。
図3は、熱電変換モジュールの電力-電流特性、及びペルティエ効果による電力-電流特性の変化の例を説明する図である。
図4は、熱電変換モジュールの電力-抵抗特性、及びペルティエ効果による電力-抵抗特性の変化の例を説明する図である。
【0048】
図2~
図4では、熱電変換モジュールTMGzの温度差が異なる複数の特性を示している。温度差は、温度差が最大のものを100とした温度差比(=対象の温度差×100/最大の温度差)で表すと、100%、95%、93%、90%、及び85%の計5種類である。符号の下2桁により、対応関係を示している。下2桁が01~05は、それぞれ温度差比が100%、95%、93%、90%、及び85%の特性である。例えば
図2の101は、温度差比が100%の電圧-電流特性であり、
図3の201は、温度差比が100%の電力-電流特性である。110、210、310は、温度差比が100%の場合に、給電動作中にペルティエ効果が影響している特性である。これは、
図5、及び
図6でも同様である。以降、温度差は「ΔTm」、温度差比は「ΔTm比」とそれぞれ表記する。
【0049】
図2、及び
図3に示すように、熱電変換モジュールTMGzから得られる電圧、及び電力は共に、ΔTmが高くなるほど大きくなる。電圧-電流特性、つまり電圧値V、電流値Iの関係では、
図2に示すように、V=-a×I+b、により近似できる関係となっている。ここで、aは、電圧-電流特性の傾きを示す係数、bは、電流値Iが0のときの電圧値Vを示す定数、である。
【0050】
図2に示した特性101~105において、傾きaの値は一定だが、定数bの値は、ペルティエ効果でΔTm比の低下とともに徐々に低下している。給電動作中に得られたペルティエ効果が影響した特性110の傾きaの値は、特性101~105の傾きaの値よりも大きくなる。つまり、ペルティエ効果による温度変化は、電圧-電流特性を近似する式において、傾きaの値がより大きくなるように作用する。特性101~105の傾きaは、上記基準点抵抗値算出部31で算出した初期値roに相当する。特性110の傾きaは、ペルティエ効果による温度変化を待つ必要があり、上記基準点抵抗値算出部31では算出できない。そのため、電力-電流特性は、
図3に示すように、ペルティエ効果の影響を受けていない特性201より、ペルティエ効果が影響した特性210の方が、最大となる電力値は低くなり、電流が増えるほどペルティエ効果の影響による電力の低下量は大きくなる。電力-抵抗特性では、
図4に示すように、ペルティエ効果の影響により、ペルティエ効果の影響を受けていない特性301より、ペルティエ効果が影響した特性310の方が、最大電力値が得られるときの抵抗値はより大きくなる。
【0051】
図2~
図4に示すように、ペルティエ効果の影響を受けていない状態で計測して算出した熱電変換モジュールTMGzの内部抵抗値より、ペルティエ効果によって温度差が減少した状態で計測して算出した内部抵抗値のほうが大きくなる。そのため、ペルティエ効果の影響が生じることにより、最大電力点、つまり電源からの供給電力が最大電力となる動作点が変化する。このことから、本実施の形態では、ペルティエ効果による温度変化が安定、つまりその温度変化が無視できる範囲内に収まった後の最大電力点に相当する内部抵抗値である合成値rpを給電動作中に探索し、基準点制御に用いる合成値rを初期値roから合成値rpに更新することで、最大電力動作を可能にする。本実施の形態において、、基準点制御とは以下に説明するように、合成値rを基準点とし、合成値Rを合成値rに近づけるように操作量ΔVを考慮してスイッチ素子Q1及びQ2の各オン期間を調整し、最大電力の出力を可能とするものである。
【0052】
図1の説明に戻る。最大電力制御部38は、ペルティエ効果による合成値rの変化を確認するために、出力電力制御部35に対して、操作量ΔV、或いはΔIを与えることで動作点を設定することができる。操作量ΔVは、入力電圧値Vinに対する操作量であり、操作量ΔIは、入力電流値ILに対する操作量である。熱電変換モジュール群TMGから供給される電力は、その電力の電圧値、及び電流値のうちの何れが変化しても変化する。なお、操作量ΔVを正の値とすべき状況では、操作量ΔIは負の値となる。操作量ΔVが正の値の場合、入力電圧値Vinはより大きくする方向に操作される。
【0053】
出力電圧制御部35は、目標設定部36から設定電圧値Vcoを受け取り、出力電圧値Voutが一定になるように、入力電圧値Vinを昇圧、及び降圧動作のいずれかを行う。最大電力制御部38が操作量ΔV、及びΔIのうちの一方を0でない値に設定した場合、入力電圧値Vin、或いは入力電流値ILを操作し、操作後の値を用いて、スイッチ素子Q1及びQ2の各オン期間を決定する。それにより、最大電力制御部38は、ペルティエ効果による合成値rの変化に対応し、出力電力値Poutを最大化させる。以降は、合成値rの増減と正負が一致する操作量ΔVを用いる場合を説明する。
【0054】
合成値rの算出は、上記のように、コンバータ1からの電力供給を停止させた状態で行うことができる。しかし、ペルティエ効果による温度変化が安定した状態つまりその温度変化が無視できる範囲内に収まった後の最大電力点に相当する内部抵抗値である合成値rpの算出は、ペルティエ効果による温度変化が安定するまでコンバータ1からの電力供給を停止させることとなり非常に望ましくない。これは、コンバータ1を安定した電力変換装置として利用できないということの他に、熱電変換モジュール群TMGが発電した電力を無駄にするといった理由からである。そのため、本実施の形態1では、コンバータ1からの電力供給を停止させることなく、ペルティエ効果による温度変化が安定した状態の合成値rpを探索する。つまりコンバータ1からの給電動作時である電力出力中にペルティエ効果による温度変化が安定した状態の合成値rpを探索し、合成値rの値を更新するようにしている。このことから、本実施の形態では、ペルティエ効果による温度変化が安定した状態の合成値rpを給電動作中に探索し、基準点制御に用いる合成値rを初期値roから合成値rpに更新することで、最大電力動作を可能にする。
【0055】
図5は、本開示の実施の形態1に係る電力変換装置における合成値rの更新方法例を説明する図である。この
図5には、
図4に示すエリアXの拡大図を示している。
図5において、2つのライン510、520は、異なるタイミングで入力電圧値Vin、及び入力電流値ILから算出される抵抗値を示している。より具体的には、ライン510は最初、或いは直前に得られる最大電力点の抵抗値、例えばペルティエ効果による温度変化が安定する前に計測された入力電圧値Vin、及び入力電流値ILから算出される抵抗値を示し、ライン520はペルティエ効果による温度変化が安定した後にライン510よりも抵抗値が大きくなるように動作点を設定することで到達する最大電力点の抵抗値を示している。510、520は共に、最大電力点での抵抗値であることから、説明上、便宜的に、「最大電力点510」「最大電力点520」とも表記する。ライン510は初期値roに相当し、ライン520は探索した最大電力になる動作点の抵抗値であり合成値rpに相当する。つまり、入力電流値ILを減らした方がペルティエ効果は弱まりΔTmが大きくなることを利用する。
【0056】
本実施の形態1では、最大電力点の探索に山登り法を用いている。山登り法は、動作点を移動させながら、最大電力が得られる動作点を特定する方法である。山登り法としては、例えば最大電力点追従制御(MPPT:Maximum Power Point Tracking)が知られている。熱電変換モジュール群TMGから電力供給を開始した直後は、ペルティエ効果の影響は現れていないか、例え現れているとしても極僅かである。しかし、ペルティエ効果による温度変化が安定するまでの間、ペルティエ効果により特性は変化し、供給される電力は低下し続ける。本実施の形態1では、このことに着目し、ペルティエ効果の影響による温度変化が安定した状況に移行するまでの間、最大電力点の探索を待機している。矢印Aは、温度変化が安定するまでの間の移行を表している。待機時は、基準点と見なす抵抗値、つまり合成値rと合成値Rの差をなくすことで電力変換を行う基準点制御を行うようにしている。
【0057】
ペルティエ効果の影響による温度変化が安定した状況に移行した後は、上記山登り法を用いて、ペルティエ効果が影響した特性310に沿って最大電力点520が探索される。その探索により、最大電力点520が特定される。矢印Bは、その探索を行う方向を表している。ペルティエ効果は、最大電力点となる動作点のインピーダンスをより大きくすることが確認されていることから、最大電力点520の探索は、抵抗値が大きくなるように動作点を移動させながら、最大電力が得られる動作点を特定することで行われる。それにより、本実施の形態1では、最大電力点520の探索によって、合成値rpを徐々に大きくし、その増加に合わせ、操作量ΔVを増加することで行われる。そのため、最大電力点520の探索終了により、最大電力点520の合成値rpが確定する。この合成値rpは、本実施の形態1における更新対象抵抗値に相当する。
【0058】
このように、本実施の形態1では、コンバータ1からの電力供給を停止させることなく、ペルティエ効果による温度変化が安定した状態の合成値rpを探索し、合成値rを更新する。そのため、その電力供給を停止させることによる不具合は発生しない。また、コンバータ1からの電力供給は、ペルティエ効果の影響によるΔTmの変化が落ち着くまで待つ必要はない。電力供給の開始後から一定時間が経過するまでの間、ペルティエ効果の影響は比較的に小さいと云える。そのため、合成値rの更新が終了するまでの間も、最大電力か、或いは最大電力に近い電力をコンバータ1から供給することができる。このことからも、コンバータ1からの給電動作中に算出できる合成値Rと初期値roを一致させて最大電力点で動作を継続し、基準点制御を行い電力の変化でペルティエ効果による温度変化が安定したことを判断した後、合成値rpを探索した結果を合成値rに反映して、基準点である合成値rを徐々に大きく更新することは有効である。熱電変換モジュール群TMGが発電した電力のうちで無駄になる部分はより最小化できる。
【0059】
図6は、ペルティエ効果が影響する前後の最大電力点の間で生じる電流量の相違を説明する図である。ライン610は、ペルティエ効果が安定する前に到達した最大電力点であり初期値roに相当する値となる。ライン620は、ペルティエ効果が安定した後に探索した動作点であり、合成値rpである。ΔIL1は、ライン610の電流値とライン620の電流値の差分である。
図6では、電流-抵抗特性により、前後の最大電力点の間で生じる電流量の相違を示している。ΔIL1は、最大電力点610でペルティエ効果の影響が生じる前の電流値と、最大電力点620でペルティエ効果の影響が落ち着いた後の電流値との間の差分である。
【0060】
電流-抵抗特性により、所定の抵抗値となるように制御することで電流値も変化する。電流値の変化に伴い、電力値も変化する。ここでは、ライン610の動作点から、電流値を小さくすることで、ペルティエ効果の影響が弱まり、ΔTm比が増加して、ライン620の動作点に移行する様子を示している。このことから、
図6に示す差分ΔIL1は、出力電力値Poutを最大化するうえでの誤差に相当する。この差分ΔIL1を最小化することで、出力電力値Poutを最大化することができる。合成値rの更新は、この差分ΔIL1を最小化し、0、或いは0に近い値とするために行われる。
【0061】
図7は、基準点探索処理の例を示すフローチャート、
図8は
図7中の最大電力点探索処理の例を示すフローチャートである。また、
図9は、実施の形態1に係る最大電力を出力するための制御全体の流れを示すフローチャートである。
まず、
図9の本実施の形態1に係る最大電力を出力するための制御の全体の流れを説明する。熱電変換モジュールTMGからの電力の供給が開始されると、まず制御部3は初期値roを算出し(ステップS1)、これを用いて基準点電圧制御を行うようゲートパルス発生器4を駆動する(ステップS2)。熱電変換モジュールTMGに電流が流れる始めると、ペルティエ効果よる温度変化が生じるが、ペルティエ効果が安定したことを、制御部3は出力電力の変動により確認する(ステップS3)。制御部3は、最大出力電力の得られる合成値rpを山登り法で探索する(ステップS4)。制御部3は、合成値rpに基づき、基準点を更新し、基準点電圧制御を行う(ステップS5)。以降最大出力電力が得られるように合成値rpを探索し、基準点を更新しながら基準点電圧制御を行うことになる。
【0062】
図7に示した、フローチャートは
図9の手順を具体化して示したもので、最大電力を出力するための基準点制御の基準点を探索する処理を中心に記述した例である。この基準点探索処理は、基準点となる電源の内部抵抗値である合成値rを探索し、動作点の合成値Rを一定値に保つ基準点制御の一種である。制御部3の起動時に、言い換えれば熱電変換モジュール群TMGからの電力供給の開始時に、つまり基準点となる初期値roを求める処理(ステップS1に対応)と、合成値Rが初期値roに一致するよう基準点制御する処理(ステップS2に対応)と、ペルティエ効果による温度変化が安定した後(ステップS3に対応)に最大電力点探索処理(ステップS4に対応)で得た合成値rpを用いて基準点を更新する処理(ステップS5に対応)からなる。基準点制御には電源の内部抵抗値と動作点の抵抗値が一致するとき、すなわち、合成値r=合成値Rのときに最大電力が得られる関係を利用している。次に
図7を参照し、基準点探索処理について詳細に説明する。ここでは、処理を実行する主体を制御部3として説明を行う。
【0063】
この基準点探索処理での初期値roの更新は、熱電変換モジュール群TMGに電流が流れることにより発生するペルティエ効果への対応を想定したものである。しかし、発電環境には、ペルティエ効果による影響と同等、或いはそれ以上の変化が生じることもある。基準点探索処理は、そのような発電環境の変化に対応することも想定している。
【0064】
先ず、ステップS11では、制御部3は、変数Mに0を代入する。次に移行するステップS12では、制御部3は、合成値roを算出し、算出結果を変数roに初期値として代入する。変数roは、初期値roの保持に用いられる変数である。
【0065】
制御部3の起動直後には、初期値roは存在しない。そのため、起動直後のステップS12の実行時には、上記のように、2点以上の測定値から、初期値ro=(Vin1-Vin2)/(IL2-IL1)を求めて、動作点を決定する。開放電圧値の測定、その測定結果に応じた動作点の設定、その動作点で得られた入力電圧値Vin、入力電流値ILを用いて初期値roの算出を行っても良い。基準点探索処理の基準点に用いる変数rに変数roを代入する。
【0066】
ステップS12に続くステップS13では、制御部3は、電力供給のために、変数rの値に対応する動作点、例えば開放電圧値の1/2を設定してゲートパルス発生器4を駆動する。次に移行するステップS14では、制御部3は、入力電圧値Vin、及び入力電流値ILを用いて合成値Rを算出して変数Rに代入するとともに、変数Rの値から変数rの値を減算した結果を変数ΔRに代入する。その代入後はステップS15に移行する。
【0067】
ステップS15では、制御部3は、変数ΔRの絶対値が設定値α未満か否か判定する。この設定値αは、変数ΔRが十分小さくなり、変数Rが変数rと一致したかを判定するための設定値である。このため、変数ΔRの絶対値が設定値α未満の場合は、変数Rが変数rと一致したと判断し、ステップS15の判定はYESとなってステップS16に移行する。変数ΔRの絶対値が設定値α以上の場合は、変数Rが変数rと一致していないと判断し、ステップS15の判定はNOとなってステップS14に戻り、合成値R等の算出を行う。このステップS15により、合成値Rの算出値を代入した変数Rが基準点である変数rとの差である変数ΔRが十分小さくなり、動作点の合成値Rが基準点である合成値rの値と一致したかの判定が行われる。ステップS15の判定がYESの場合、動作点の合成値Rはライン510上にあり、ステップS16からステップS20がYESになるまでの期間は、
図5に矢印Aで示す移行状態が生じている。
【0068】
ステップS16では、制御部3は、得られた出力電圧値Vout、及び出力電流値Ioutを用いて出力電力値Poutを算出し、算出した出力電力値Poutを変数Pout1に代入する。その代入後は、ステップS17に移行する。
【0069】
ステップS17では、制御部3は、出力電力値Poutを算出してから設定時間が経過したか否か判定する。この設定時間は、ペルティエ効果によって熱電変換モジュール群TMGに発生する温度変化、つまり特性変化を想定して決定された時間である。この特性変化を確認できるように、ステップS13で設定した動作点、言い換えれば変数rに代入された初期値roは、後述するステップS23で最大電力点探索処理が実行され、合成値rpを変数rに代入して基準点を更新する処理が行われるまで維持される。出力電力値を算出してから設定時間が経過した場合、ステップS17の判定はYESとなってステップS18に移行する。出力電力値を算出してから設定時間が経過していない場合、ステップS17の判定はNOとなり、再度、ステップS17に判定処理が行われる。上記ステップS14も、設定時間間隔で実行されるようになっている。
【0070】
ステップS18では、制御部3は、得られた出力電圧値Vout、及び出力電流値Ioutを用いて出力電力値Poutを算出し、算出した出力電力値Poutを変数Pout2に代入する。その代入後は、ステップS19に移行し、制御部3は、変数Pout1の値から変数Pout2の値を減算して得られる値を変数ΔPに代入する。ステップS20には、その代入後に移行する。
【0071】
ステップS20では、制御部3は、変数ΔPの値の絶対値が設定値β未満か否か判定する。この設定値βは、ペルティエ効果の影響による温度変化が安定したか否か、つまりその温度変化が無視できる範囲内になったか否かを確認するために定めた閾値である。ペルティエ効果による温度変化が安定したかを判定するための閾値として定められた値である。この設定値βは、上記設定時間と組み合わせて定められている。このことから、ペルティエ効果による熱電変換モジュール群TMGの温度変化が安定している場合、ステップS20の判定はYESとなってステップS21に移行する。その温度変化が安定していない場合、ステップS20の判定はNOとなってステップS26に移行する。
【0072】
ステップS21では、制御部3は、変数Mの値をインクリメントする。続くステップS22では、制御部3は、変数Mの値が設定値M1以上か否か判定する。この設定値M1は、ペルティエ効果による温度変化が安定した後、熱電変換モジュール群TMGの温度差に変化が生じたか否か、つまり温度変化が無視できる範囲内になったか否かを確認するために設けた時間の設定値である。この設定値M1も、上記設定値β、上記設定時間と組み合わせて定められたものである。本実施の形態1では、この設定時間に設定値M1を乗算して得られる時間、変数ΔPの絶対値が設定値β未満となっていることを、ペルティエ効果の影響による温度変化が安定したと見做す条件としている。そのため、変数Mの値が設定値M1以上となった場合、その条件が満たされたとして、ステップS22の判定はYESとなってステップS23に移行する。変数Mの値が設定値M1未満であった場合、その条件が満たされていないとして、ステップS22の判定はNOとなり、ステップS26で変数Pout1に変数Pout2の値を代入した後、上記ステップS17に戻る。なお、その条件が満たされたことは、
図5に矢印Aで示す移行が終了したことを意味する。
【0073】
ステップS23では、制御部3は、最大電力となる動作点を探索するための最大電力点探索処理を実行する。最大電力点探索処理の実行により得られた合成値rpを変数rに代入することで、変数rの値、つまり基準点を更新する処理が行われている。その実行後、ステップS24に移行する。
【0074】
ステップS24では、制御部3は、変数rの値が、変数roの値に設定値γを乗算した結果よりも大きいか否か判定する。
図5に示すように、ペルティエ効果による変数rの変化は比較的大きくない。このことから、設定値γは、最大電力点探索処理の実行により、変数Rの値が異常と見なせる値に更新されたか否かを判定するために設定している。その具体的な値は、例えば1.5程度の値である。それにより、変数rの値が異常と見なせる程度に大きく更新された場合、ステップS24の判定はYESとなってステップS25に移行する。
【0075】
変数rの更新が適切と見なせる範囲内のものであった場合、ステップS24の判定はNOとなって上記ステップS13に戻る。このステップS13では、最大電力点探索処理で設定された内容に従って、ゲートパルス発生器4の駆動が行われる。この場合、探索された最大電力点で基準点制御した電力供給が行われることとなる。
【0076】
ステップS25では、制御部3は、変数rに、変数roの値に設定値Kpelを乗算した結果を代入する。その後、上記ステップS13に戻る。この場合、最大電力点を動作点として電力供給は行われない。しかし、設定値Kpelは、ペルティエ効果によって熱電変換モジュール群TMGに発生する特性変化を想定して定めた係数である。想定した特性変化とは、熱電変換モジュール群TMGからの電力供給の開始から、ペルティエ効果の影響が安定するまでの特性変化である。特性変化は、熱電変換モジュールが接触する高温側、及び低温側の熱抵抗に依存した温度差の低下に伴う動作点のインピーダンスの変化である。設定値Kpelは対象とする設備ごとに最適値が異なる値である。Kpelは1以上の値であり、対象とする設備が都度異なる場合あるいは最適値の特定が困難な場合は、Kpelは1で良い。上記乗算結果は、
図5において、最大電力点510よりも最大電力点520に近い値である。そのため、前よりも大きい電力が基準点制御で供給されることとなる。
【0077】
なお、設定値Kpelは、開放電圧値、或いは熱電変換モジュール群TMGの高温側の温度に応じて複数、用意しても良い。設定値Kpelを複数、用意した場合、より適切な設定値Kpelを用いることができることから、最大電力点の探索をより短時間で行えるようにするうえで有効である。係数である設定値Kpelの代わりに、固定値とする設定値Kpelを定めても良い。
【0078】
上記ステップS20の判定がNOとなって移行するステップS26では、制御部3は、変数Mに0を代入する。その代入後、上記ステップS27に移行する。ステップS26で変数Mに0を代入することにより、たとえステップS20の判定が一時的にYESとなっても、そのYESの判定は無視されることになる。ステップS20でのYESの判定が設定値M1だけ、連続しなければステップS22の判定はYESとはならない。
【0079】
図8は、上記ステップS23として実行される最大電力点探索処理の例を示すフローチャートである。この最大電力点探索処理は、設定値を徐々に変化させ最大電力となる動作点、すなわち最大電力点を探索する山登り法の一種である。制御部3は、合成値rpの値を徐々に大きくすることで最大電力点を探索する処理と、最大電力点探索処理で得た合成値rpを用いて基準点を更新する処理からなる。次に
図8を参照し、最大電力点探索処理について詳細に説明する。この最大電力点探索処理の実行により、
図5に矢印Bで示す最大電力点520の探索が実現される。
【0080】
先ず、ステップS31では、制御部3は、変数rの値が初期値roの値に上記設定値Kpelを乗算した値以上かを否か判定する。最大電力点探索処理は基準点制御を実行している間に継続して複数回実行される。このことから、1回目の処理の場合に設定値Kpelを乗算する処理が必要となり、2回目以降の処理の場合は設定値Kpelを乗算する処理が必要ない。変数rの値が初期値roの値に上記設定値Kpelを乗算した値以上の場合、更新処理が2回目以降と判定し、ステップS31の判定はYESとなってステップS32に移行する。変数rの値が初期値roの値に上記設定値Kpelを乗算した値未満の場合、更新処理が1回目と判定し、ステップS32の判定はNOとなってステップS33に移行する。
【0081】
上記ステップS31の判定がYESとなって移行するステップS32では、制御部3は、変数rの値を変数rp1に代入する。変数rp1は、基準点制御に用いる合成値rの更新に用いる。
【0082】
上記ステップS31の判定がNOとなって移行するステップS33では、制御部3は、初期値roの値に上記設定値Kpelを乗算した値を、変数rp1に代入する。
【0083】
ステップS32、ステップS33に続くステップS34では、変数rpに変数rp1を代入する。変数rpは、ペルティエ効果による温度変化が安定した後の最大電力点の合成値rpの探索に用いる。変数rp1は、最大電力点の合成値rpを探索した結果を記録しておき、基準点制御に用いる合成値rを更新する。上記ステップS31-33の処理により、変数rp1は、初期値roの値に設定値Kpelを乗算した値以上が初期値となる。2回目以降の処理では、変数r以上の値が初期値となる。この初期値は、
図5において、最大電力点510よりも最大電力点520に近い値である。そのため、最大電力点520は、変数rの値、とくに1回目の処理では初期値roを初期値とするような場合と比較して、より短時間で特定することができる。最大電力点520をより短時間で特定することは、出力電力値Poutの最大化をより迅速に行えることになる。
【0084】
ステップS34に続くステップS35では、制御部3は、変数rpの値に応じた動作点を設定してゲートパルス発生器4を駆動する。ここでの動作点の設定は、変数rから変数rpに増加したことに対して、最大電力制御部38が入力電圧値Vinをより大きくさせるような操作量ΔVを設定することで行われる。上記電源の特性より、入力電流値ILがより小さくなり、操作後の合成値R=Vin/ILの値が大きくなるので、変数rpの増加を反映していることとなる。
【0085】
次に移行するステップS36では、制御部3は、ゲートパルス発生器4の駆動によって得られた出力電圧値Vout、及び出力電流値Ioutを用いて出力電力値Poutを算出し、算出した出力電力値Poutを変数Pout3に代入する。その代入後はステップS37に移行する。
【0086】
ステップS37では、制御部3は、変数r1の値に設定値δを加算して得られる値を変数rpに代入する。この設定値δは、最大電力点を探索するうえで基準点制御に用いる合成値rの更新単位として定められた値である。続くステップS39では、制御部3は、変数rpの値に対応する動作点を設定してゲートパルス発生器4を駆動する。ここでの動作点の設定では、操作量ΔVを、設定値δに相当する電圧値分、増加させる操作が行われる。その操作により、入力電圧値Vinが大きくなり、入力電流値ILはより小さくなるように操作されることになる。
【0087】
ステップS37に続くステップS38では、制御部3は、変数rpの値に応じた動作点を設定してゲートパルス発生器4を駆動する。ここでの動作点の設定は、最大電力制御部38による操作量ΔVの設定に相当するものである。この操作量ΔVは、上記のように、入力電圧値Vinを対象にしたものである。この操作量ΔVの値は、変数rpの値と変数rの値との間の差分と設定値δに応じた値である。
【0088】
ステップS38に続くステップS39では、制御部3は、ゲートパルス発生器4の駆動によって得られた出力電圧値Vout、及び出力電流値Ioutを用いて出力電力値Poutを算出し、算出した出力電力値Poutを変数Pout4に代入する。その代入後はステップS40に移行する。
【0089】
ステップS40では、制御部3は、変数Pout4の値が変数Pout3の値より大きいか否か判定する。その大小関係が成立していた場合、つまり変数rpをより大きくするために、入力電流値ILをより小さく、入力電圧値Vinをより大きくさせる操作の結果、出力電力値Poutもより大きくなった場合、ステップS40の判定はYESとなってステップS41に移行する。その大小関係が成立していない場合、ステップS40の判定はNOとなってステップS42に移行する。
【0090】
ステップS41では、制御部3は、変数rp1に変数rpの値を代入し、変数Pout3に変数Pout4の値を代入する。その後、ステップS37に戻る。それにより、
図5に矢印Bで表す工程による最大電力点520の探索が継続される。
【0091】
ステップS42への移行は、出力電力値Poutが増大から減少に変化したことを意味する。このことから、ステップS42では、制御部3は、変数rp1の値を最大電力点の探索結果として変数rに代入し、基準点制御で用いる合成値rを更新する。その後、最大電力点探索処理が終了して基準点探索処理に戻る。
【0092】
基準点制御に用いる変数rに、最大電力点の探索で求めた動作点の抵抗値に相当する変数rp1の値を代入することで、基準点を更新する。つまり、ステップS36-S40が最大電力点の合成値rp1の探索に該当し、ステップS42が基準点である変数rの更新に該当する。このようにして、最大電力点の探索と基準点制御に用いる合成値rの更新は、最大電力制御部38によって行われる。そのため、本実施の形態1における抵抗値更新部は、最大電力制御部38が相当する。本実施の形態1に係る電力変換制御装置における制御部は、構成要素31~38の全てが相当する。
【0093】
なお、本実施の形態1では、ステップS17の設定時間、ステップS21、S22の変数M、及び設定値M1を用いて、
図5中の矢印Aに示す移行に対応しているが、対応方法は、特に限定されない。例えば電源からの電力の供給開始時、最大電力点を探索し、その探索後、ペルティエ効果の影響による温度変化が収まるまで待機し、再度、最大電力点を探索するようにしても良い。このようなことを含め、様々な変形が可能である。
【0094】
また、本実施の形態1では、ペルティエ効果による温度変化の安定確認を、設定時間を経過したことの確認(ステップS17)、及び変数Mと設定値M1を用いること(ステップS21からS22)の両方で行うことができる。変数Mと設定値M1を用いることは、第2の設定時間を設けること同義である。第1の設定時間(ステップS17)は、熱電変換モジュールを取り付ける排熱がある設備及び機器の熱容量で決まる温度変化が飽和する時間を待つことでペルティエ効果による温度変化が小さくなることを主目的とし、その後の第2の設定時間はペルティエ効果および発電環境による温度変化が小さいことを併せて判断する。つまり第2の設定時間は、第1の設定時間に比べて短くすることができ、温度変化が少ない場合により早く最大動作点探索制御に移行して発電量を大きくすることができる。
【0095】
なお、
図7では最大電力点探索処理が終了して基準点探索処理に戻る場合、ステップS13に戻っている。しかし、すでにペルティエ効果による温度変化の安定を確認しているので、ステップS17のペルティエ効果の安定確認の処理は不要となる。
図10A、10Bは、
図7とは別の基準点探索処理のフローチャートの例である。
図7とは
図10AのステップS125以降が異なる。すなわち、
図10Bに示すように、ステップS212において、最大電力点探索処理で求めた合成値rを新たな基準点rとして更新し、ステップS213からステップS215で基準点制御を行う。ステップS215で動作点の合成値Rが基準点である合成値rと一致した場合(YES)、ステップS223からステップS225で最大電力点探索処理を行い、更新すべき基準点rを探索し、ステップS212に戻る。すなわち、
図9において、ステップS5の後ステップS4に戻ることを意味する。
【0096】
また、基準点探索処理においてステップS22の温度変化が小さいことを判定する処理を省略して、最大電力点探索処理内で温度変化が少ないことを判断するステップを設けてもよい。
図11は、
図8とは別の最大電力点探索処理の例を示すフローチャートである。基準点探索処理においてステップS22を省略した場合、ステップS40の後にステップS40Aを加えた例である。前述したように、ステップS40では、制御部3は、変数Pout4の値が変数Pout3の値より大きいか否か判定する。ステップS40Aでは、その大小関係が成立していた場合、変数Pout4の増加量に発電環境の変化による影響が含まれていないことを判定する。変数Pout4と変数Pout3の差が、予め設定した閾値εより小さいことで、温度変化が安定していると判断し(YES)、最大電力点探索処理を継続する。閾値εより大きくなった場合発電環境による温度変化が大きいと判断し(NO)、最大電力点の探索を終了するようにする。
【0097】
このステップS40Aを設けることで、発電環境の変化で急激な温度変化が生じた場合、最大電力点探索処置中に抵抗値rpが急増することを防ぐことができる。また、基準点制御から最大電力点探索制御に移行する時間(ステップS22に対応)を省略できるので、早く探索制御に移行でき発電量が増える。ステップS40Aの閾値εは抵抗値rの加算量δによる発電量の増加量よりも大きい値に設定される。閾値εはより小さい方がよく、発電環境の変化による温度変化が多い場合でも抵抗値rpが適切な値に維持する効果が高くなり発電量は大きくなる。
なお、基準点探索処理においてステップS22の温度変化が小さいことを判定する処理を省略しない場合も、このステップS40Aを設けてもよい。
【0098】
上述したように、この基準点探索処理での初期値roの更新は、熱電変換モジュール群TMGに電流が流れることにより発生するペルティエ効果への対応を想定したものである。しかし、発電環境には、ペルティエ効果による影響と同等、或いはそれ以上の変化が生じることもある。例えば、熱電変換モジュールを取り付けた設備の起動停止が繰り返さて大きな温度変化が生じる場合がある。ペルティエ効果の影響以上の変化については、
図7のようにステップS13に戻る基準点探索処理の方がよい。あるいは発電環境の変化に対応するために、
図7及び
図10A、10Bの両方を組み合わせた処理を実行するようにしてもよい。
【0099】
本実施の形態1において、
図8に示される最大電力点探索処理においては、山登り法で探索していく。このとき、
図5において説明した通り、初期値roを徐々に増加させる一方向の山登り法となる。これはペルティエ効果の影響を受けると内部抵抗の実際の値よりも大きい電圧電流特性で動作し合成値rの大きい側に最大電力点が移動するためである。そのため、特性310上の抵抗値を上下させながら最大電力点を探索するよりも早く最大電力点に到達することができる。そして、基準点制御に戻った後、再度最大電力点探索処理に移行した場合であっても、合成値rを増加させる一方向の山登り法で最大点を探索することで、基準点制御の基準点を早く反映させる細やかな制御が可能となる。
【0100】
なお、制御部3及びゲートパルス発生器4は、ハードウエアの一例を
図12に示すように、プロセッサ1000と記憶装置2000から構成される。記憶装置は図示していないが、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを具備する。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を具備してもよい。プロセッサ1000は、記憶装置2000から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ1000にプログラムが入力される。また、プロセッサ1000は、演算結果等のデータを記憶装置2000の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。さらに、ハードウエアの構成として、制御部3及びゲートパルス発生器4のプロセッサ1000及び記憶装置2000を共用し、一体化されていてもよい。
【0101】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0102】
1 コンバータ、2 インバータ、3 制御部(電力変換制御装置)、4 ゲートパルス発生器、5 電圧センサ(第1の電圧検出器)、6 電圧センサ(第2の電圧検出器)、7 電流センサ(第1の電流検出器)、8 電流センサ(第2の電流検出器)、10 電力制御装置、21 インバータ本体、31 基準点抵抗値算出部(抵抗値算出部)、32 入力電力算出部(制御部)、33 制御状態判定部(制御部)、34 コンバータ状態判定部(制御部)、35 出力電圧制御部(制御部)、36 目標設定部(制御部)、37 動作点抵抗値算出部(抵抗値算出部)、38 最大電力制御部(抵抗値更新部、制御部)、Cin、Cout、CD 平滑用コンデンサ、D1、D2 ダイオード、L インダクタ、Q1 スイッチ素子(第1のスイッチ素子)、Q2 スイッチ素子(第2のスイッチ素子)、TMG1、TMGn 熱電変換モジュール、TMG 熱電変換モジュール群(電源)。