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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049142
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】座屈拘束ブレース
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20230403BHJP
【FI】
E04B1/58 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158708
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 健
(72)【発明者】
【氏名】松田 誠樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 文久
(72)【発明者】
【氏名】西 拓馬
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA33
2E125AB08
2E125AB16
2E125AC14
(57)【要約】
【課題】定形のブチルゴムによるアンボンド材に代わり、拘束材が芯材から受ける押圧力に起因する局部破壊を防止する機構とアンボンド材としての機能を備えた部材を有する、座屈拘束ブレースを提供すること。
【解決手段】座屈拘束ブレース100は、鋼製でプレート状の芯材10と、芯材10の有する二つの広幅面に対向するように配設されている、角形鋼管からなる一対の拘束材30と、芯材10と拘束材30の間に介在する内挿板20とを有し、内挿板20の強度と硬度が、芯材10と拘束材30に比べて相対的に高い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製でプレート状の芯材と、
前記芯材の有する二つの広幅面に対向するように配設されている、角形鋼管からなる一対の拘束材と、
前記芯材と前記拘束材の間に介在する内挿板とを有し、
前記内挿板の強度と硬度が、前記芯材と前記拘束材に比べて相対的に高いことを特徴とする、座屈拘束ブレース。
【請求項2】
前記芯材及び前記拘束材と、前記内挿板がいずれもSS材、SN材、SM材のいずれか一種により形成され、該内挿板が相対的に高強度かつ高硬度の材料により形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項3】
前記芯材及び前記拘束材がSS材、SN材、SM材のいずれか一種により形成され、該内挿板がSC材により形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項4】
前記内挿板における、前記芯材もしくは前記拘束材への取り付け面と反対側には、前記芯材の座屈変形用の隙間が設けられていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項5】
前記芯材の両端には、前記広幅面に直交して他部材に接合される、一対の接合板が固定されており、
前記一対の接合板に対して補強板が固定され、前記広幅面と該一対の接合板と該補強板により形成される空間に前記拘束材の端部が収容されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項6】
前記芯材の側方において、前記一対の拘束材の両側を一対の補剛材が繋いでおり、
前記芯材が、前記一対の拘束材と前記一対の補剛材とにより包囲されていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座屈拘束ブレースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物架構(柱・梁架構、屋根架構等)を形成するブレースとして、座屈防止措置が講じられた座屈拘束ブレースが適用されている。座屈拘束ブレースとしては、鋼製の芯材の周囲を鋼板のみで補剛した形態、鋼製の芯材の周囲をRC(Reinforced Concrete:鉄筋コンクリート)で補剛した形態、鋼製の芯材の周囲を鋼材とモルタルで被覆した形態など、多様な補剛形態が存在する。
【0003】
ここで、特許文献1には、芯材が一対の角形鋼管により形成される拘束材にて拘束された座屈拘束ブレースに関し、芯材から押圧力を受けた拘束材に局部破壊を生じさせない座屈拘束ブレースが提案されている。具体的には、板状部の両端に他部材との接合のための接合部を有した芯材と、板状部の弱軸方向に直交する各面に対向して配置された拘束材とを備える座屈拘束ブレースである。
【0004】
この座屈拘束ブレースにおいて、板状部と拘束材との間には拘束材に接触する鋼板が設けられ、角形鋼管からなる拘束材はその各面部の交差箇所に曲面領域を有する角部を備えている。鋼板における拘束材と接触する側の面と拘束材の角部との間には、拘束材と鋼板を固定する溶接部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6445862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の座屈拘束ブレースによれば、既製の角形鋼管などの部材を拘束材として用いることが容易になり、高コスト化を招来することなく、芯材から押圧力を受けた拘束材の局部破壊を抑制することが可能になる。
【0007】
ところで、座屈拘束ブレースは、その両端部が建物架構の隅角部等に設けられているブラケットやガセットプレート等の接続治具に対してボルト接合等されることにより、建物架構に組み込まれることになる。そして、建物架構が地震時に変形した際には、地震時の水平力等の外力がブラケット等を介して座屈拘束ブレースの端部に入り、芯材の端部からその全域に外力が圧縮力等として伝達されることにより、芯材の全域が塑性変形することで地震時のエネルギー吸収性能が発揮されることになる。より具体的には、芯材に圧縮力が作用した際にその全域でその弱軸方向に高次モードの座屈(波状の変形)が生じることにより、芯材の全体を可及的均等に座屈させることで座屈拘束ブレースの全体の塑性変形性能を発揮することができる。
【0008】
特許文献1に記載の座屈拘束ブレースでは、上記する高次モードの座屈を生じさせるべく、ブチルゴム等の変形性能を有するアンボンド材を芯材の広幅面と拘束材の間に介在させ、アンボンド材の厚みをクリアランスとして、芯材が圧縮力を受けた際にこのクリアランス内で高次モードの座屈を生じさせるようにしている。
【0009】
上記するブチルゴムをアンボンド材に適用する場合、市販品である定形のブチルゴムでは、座屈拘束ブレースに対してそのまま適用できる寸法の製品が一般に存在せず、座屈拘束ブレースへの適用に際しては切断加工して寸法合わせをしているのが現状であることから、座屈拘束ブレースへの断面適応性が良いとは言い難く、例えば様々な形状及び寸法の角形鋼管(拘束材)に対応し難いといった課題がある。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、定形のブチルゴムによるアンボンド材に代わり、拘束材が芯材から受ける押圧力に起因する局部破壊を防止する機構とアンボンド材としての機能を備えた部材を有する、座屈拘束ブレースを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成すべく、本発明による座屈拘束ブレースの一態様は、
鋼製でプレート状の芯材と、
前記芯材の有する二つの広幅面に対向するように配設されている、角形鋼管からなる一対の拘束材と、
前記芯材と前記拘束材の間に介在する内挿板とを有し、
前記内挿板の強度と硬度が、前記芯材と前記拘束材に比べて相対的に高いことを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、芯材と拘束材の間に、芯材と拘束材に比べて強度と硬度が相対的に高い内挿板を介在させたことにより、内挿板が、拘束材が芯材から受ける押圧力に起因する局部破壊を防止するとともに、アンボンド材としての機能、すなわち、座屈拘束ブレースが組み込まれた建物架構が地震時に変形して芯材と拘束材が摺動した際の摩擦を防止することができる。
【0013】
ここで、「内挿板の強度と硬度が、芯材と拘束材に比べて相対的に高い」とは、それぞれの強度と硬度の関係が、内挿板>芯材=拘束材の関係や、内挿板>芯材>拘束材、内挿板>拘束材>芯材の関係を含んでいる。
【0014】
また、芯材において、その弱軸方向に高次モードの座屈を有効に生じさせるべく、芯材の広幅面にスリットを設けてもよい。そして、このように広幅面にスリットを設けたことにより、芯材の強軸方向の強度が弱くなることから、必要に応じて、広幅面のスリットにスペーサーを挿入してもよい。
【0015】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様は、
前記芯材及び前記拘束材と、前記内挿板がいずれもSS材、SN材、SM材のいずれか一種により形成され、該内挿板が相対的に高強度かつ高硬度の材料により形成されていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、芯材及び拘束材と内挿板がいずれも、一般に市販されて可及的に安価なSS(Steel Structure)材(一般構造用圧延鋼材)や、SN(Steel New)材(建築構造用圧延鋼材)、SM(Steel Marine)材(溶接構造用圧延鋼材)により形成され、芯材及び拘束材と内挿板の鋼種を変化させることで、それらの強度と硬度を異ならせながら製作コストを低減することができる。ここで、芯材等の材料としてはその他、国土交通大臣の認定を取得した製品の全般が適用されてよい。
【0017】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様は、
前記芯材及び前記拘束材がSS材、SN材、SM材のいずれか一種により形成され、該内挿板がSC材により形成されていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、芯材及び拘束材が一般に市販されて可及的に安価なSS材、SN材、SM材のいずれか一種により形成され、内挿板が同様に一般に市販されて可及的に安価なSC(Steel Carbon)材(機械構造用炭素鋼鋼材)により形成され、SC材はSS材等よりも一般に強度と硬度が高いことから、それらの強度と硬度を異ならせながら製作コストを低減することができる。
【0019】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様において、
前記内挿板における、前記芯材もしくは前記拘束材への取り付け面と反対側には、前記芯材の座屈変形用の隙間が設けられていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、芯材と拘束材の対向面の少なくとも一方に内挿板が取り付けられ、内挿板と他方の部材との間に座屈変形用の隙間(クリアランス)が設けられることにより、芯材の高次モードの座屈を生じさせることが可能になる。本態様において、内挿板を、その一方面が芯材と拘束材のいずれか一方に対して、点溶接や接着剤等により接続することができる。
【0021】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様において、
前記芯材の両端には、前記広幅面に直交して他部材に接合される、一対の接合板が固定されており、
前記一対の接合板に対して補強板が固定され、前記広幅面と該一対の接合板と該補強板により形成される空間に前記拘束材の端部が収容されていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、芯材の両端において広幅面に直交する一対の接合板が固定され、一対の接合板に対して補強板が固定され、広幅面と一対の接合板と補強板により形成される空間に拘束材の端部が収容されていることにより、高強度な端部構造を備えた座屈拘束ブレースとなる。ここで、接合板が接合される他部材とは、建物架構の隅角部等から構面内に張り出すブラケットやガセットプレート等の接続治具が一例として挙げられる。また、芯材の端部をウェブとした場合は、このウェブに直交する一対の接合板は一対のフランジとなる。
【0023】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様は、
前記芯材の側方において、前記一対の拘束材の両側を一対の補剛材が繋いでおり、
前記芯材が、前記一対の拘束材と前記一対の補剛材とにより包囲されていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、芯材の側方において一対の拘束材の両側を一対の補剛材が繋いでいることにより、芯材の幅方向(強軸方向)の変形を補剛材により拘束することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上の説明から理解できるように、本発明の座屈拘束ブレースによれば、定形のブチルゴムによるアンボンド材に代わり、拘束材が芯材から受ける押圧力に起因する局部破壊を防止する機構とアンボンド材としての機能を備えた部材を有する、座屈拘束ブレースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態に係る座屈拘束ブレースの一例の分解斜視図である。
図2】実施形態に係る座屈拘束ブレースの組立前状態の軸直交方向の縦断面図である。
図3】実施形態に係る座屈拘束ブレースの一例の斜視図である。
図4】実施形態に係る座屈拘束ブレースの組立状態の軸直交方向の縦断面図である。
図5A】芯材から拘束材に対して、高次モードの座屈の際の押圧力が作用している状態を説明する、座屈拘束ブレースの軸直交方向の縦断面模式図である。
図5B】芯材から拘束材に対して、高次モードの座屈の際の押圧力が作用している状態を説明する、座屈拘束ブレースの軸方向の縦断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施形態に係る座屈拘束ブレースについて添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0028】
[実施形態に係る座屈拘束ブレース]
図1乃至図5を参照して、実施形態に係る座屈拘束ブレースとその製作方法の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る座屈拘束ブレースの一例の分解斜視図であり、図2は、実施形態に係る座屈拘束ブレースの組立前状態の軸直交方向の縦断面図である。また、図3は、実施形態に係る座屈拘束ブレースの一例の斜視図であり、図4は、実施形態に係る座屈拘束ブレースの組立状態の軸直交方向の縦断面図である。
【0029】
座屈拘束ブレース100は、芯材10と、芯材10の有する二つの広幅面10aに対向するように配設されている一対の拘束材30と、芯材10と拘束材30の間に介在する内挿板20とを有する。すなわち、従来の座屈拘束ブレースのように、定形のブチルゴムによるアンボンド材を備えていない。
【0030】
芯材10は、細長の鋼板により形成され、その長手方向の中央側において広幅面10aの幅が相対的に狭い狭幅部11を有し、その長手方向の端部側において広幅面10aの幅が相対的に広い広幅部12を有している。
【0031】
芯材10がその長手方向の中央側に狭幅部11を有し、長手方向の端部側に広幅部12を有することにより、中央側の狭幅部11を塑性化し易い領域とすることができ、さらに、塑性化領域を中央側の狭幅部11に限定させることができる。
【0032】
芯材10の狭幅部11の中央位置において、狭幅部11の二つの広幅面10aには、鋼製で円柱状の突起15が張り出している。突起15は、狭幅部11の広幅面10aに対して溶接等により接合されている。
【0033】
また、芯材10の狭幅部11の突起15の両側には、細長のスリット14が設けられており、スリット14には、鋼製のスペーサー17がX1方向に挿通されるようになっている。
【0034】
スリット14は、芯材10の耐力調整用の細孔であり、スペーサー17は、芯材10がスリット14を設けたことにより内部へ変形すること(強軸方向への変形)を防止する内部変形防止材として機能する。スリット14に挿通されたスペーサー17は、一対の拘束材30により位置規制される。
【0035】
芯材の両端にある広幅部12には、その広幅面10aに直交して他部材に接合される、一対の鋼板からなる接合板13が溶接等により接合されている。
【0036】
広幅部12と接合板13にはそれぞれボルト孔12a,13aが設けられており、不図示の建物架構の隅角部等から構面内に張り出すブラケットやガセットプレート等の接続治具(他部材)のボルト孔と位置合わせされ、ボルト接合されるようになっている。
【0037】
一対の接合板13に対して鋼板からなる補強板18が溶接等により接合され、芯材10の広幅部12と一対の接合板13と補強板18とにより形成される空間に、拘束材30の端部が収容されるようになっている。
【0038】
芯材10と拘束材30の間に内挿板20が介在することにより、座屈拘束ブレース100が組み込まれた建物架構が地震時に変形した際に、拘束材30が芯材10から押圧力を直接受けることに起因する局部破壊を防止できる。
【0039】
ここで、内挿板20と芯材10及び拘束材30の形成材料に関し、内挿板20の強度と硬度が芯材10及び拘束材30に比べて相対的に高くなるように、それらの形成材料が設定されている。
【0040】
例えば、内挿板20の強度と硬度が相対的に高くなるように、金属種を変化させる形態や、鋼種を変化させる形態などが挙げられる。金属種としては、鋼、アルミニウム、ステンレス、銅、チタン、鉛などが挙げられる。
【0041】
鋼種を変化させる場合は、芯材10及び拘束材30と、内挿板20がいずれも、SS材やSN材、SM材のいずれか一種により形成され、内挿板20が相対的に高強度かつ高硬度のSS材等により形成される形態と、芯材10及び拘束材30がSS材やSN材、SM材のいずれか一種により形成され、内挿板20がSC材により形成される形態がある。
【0042】
SS材を取り上げると、SS材には、SS330,SS400,SS490,SS540等があり、SS400とSS490は広く普及されている。
【0043】
そこで、芯材10及び拘束材30と、内挿板20がいずれもSS材により形成される形態では、芯材10及び拘束材30にSS400を適用し、内挿板20にSS490を適用することにより、製作コストが低減されることから好ましい。
【0044】
一方、SC材には、S45C,S50C,S55C.S60C等があり、S45Cは広く普及されている。
【0045】
そこで、芯材10及び拘束材30に例えばSS400やSS490を適用し、内挿板20にS45Cを適用することにより、製作コストが低減されることから好ましい。
【0046】
同種の金属により形成される金属部材同士を当接させて摺動面を形成する場合、双方の金属部材の摺動面が互いに噛み合うように塑性変形し、かじりや焼き付けが生じ得る。同種の金属による金属部材の摺動面においては、摺動面の酸化膜が剥がされて金属が露出し、拡散接合して溶着し易く、溶着した際には金属の表面に凹凸が生じ得る。そして、双方の金属の硬度が同じ場合は、互いの凹凸が噛み合うことから、双方の金属の硬度を異ならせることにより、例えば相対的に硬い金属は柔らかい金属を削って変形させ、繰り返しの削りによって滑らかになる。
【0047】
そこで、座屈拘束ブレース100においては、芯材10と拘束材30との間に、これらと金属種や鋼種が異なり、これらよりも強度と硬度の高い内挿板20を介在させたことにより、座屈拘束ブレース100が組み込まれた建物架構が地震時に変形した際の、芯材10と内挿板20のかじりや、内挿板20と拘束材30のかじりを防止することができる。
【0048】
また、定形のブチルゴムによるアンボンド材を廃したことにより、座屈拘束ブレース100を組み付けた後に、その全体を水溶性溶液に浸漬し、直流電流を流して塗膜を形成する、電着塗装を行うことができる。
【0049】
ブチルゴムによるアンボンド材を備えている従来の座屈拘束ブレースでは、ブチルゴムが電着塗装にて劣化することから、部品ごとにスプレー塗装を施し、スプレー塗装後の各部品を組み付けて座屈拘束ブレースを製作することにより、製作手間を要している。さらに、スプレー塗装後の組み付けを溶接にて行う場合、溶接後のタッチアップ錆止め塗装が行われるが、このタッチアップ錆止め塗装にも製作手間を要している。
【0050】
座屈拘束ブレース100によれば、組み付けられた座屈拘束ブレースの全体に対して電着塗装することができるため、タッチアップ錆止め塗装を不要にでき、製作効率が格段に向上する。
【0051】
以上のことから、内挿板20は、拘束材30が芯材10から受ける押圧力に起因する局部破壊を防止する機能と、アンボンド材としての機能の双方を備えることから、アンボンド材兼用内挿板と称することもできる。
【0052】
図1に示すように、内挿板20は拘束材30に対してX2方向に取り付けられ、点溶接や接着剤等により固定される。ここで、内挿板20は芯材10に固定されてもよい。
【0053】
図4に示すように、拘束材30の対向面に形成された内挿板20と芯材10との間(内挿板20の取り付け面と反対側)には、例えば1mm前後の隙間25が形成される。この隙間25の内部には、座屈拘束ブレース100が組み込まれた建物架構の変形の際に芯材10に圧縮力が作用し、狭幅部11に面外方向(弱軸方向)の高次モードの座屈(波状の変形)が生じるようになっている。
【0054】
座屈拘束ブレース100においては、芯材10等に対して内挿板20が相対的に高強度かつ高硬度であることから、内挿板20の厚みを可及的に薄くすることができる。そのため、隙間25を備えた状態で形成される座屈拘束ブレース100は、その全体の厚みが可及的に薄厚となる。
【0055】
拘束材30は、断面視矩形の角形鋼管により形成されている。拘束材30のうち、内挿板20が取り付けられている側面にも、芯材10の突起15が嵌まり込む突起孔30aが設けられている。
【0056】
芯材10の側方において、一対の拘束材30の両側(矩形の短辺に対応する側面)を一対の鋼板からなる補剛材50が溶接等によって繋いでおり、芯材10は、一対の拘束材30と一対の補剛材50とにより包囲されている。
【0057】
次に、図5を参照して、芯材10の弱軸方向に生じる高次モードの座屈について説明する。
【0058】
座屈拘束ブレース100は、その両端部が建物架構の隅角部等に設けられている接続治具に対してボルト接合等されることにより、建物架構に組み込まれる。そして、建物架構が地震時に変形した際には、地震時の水平力等の外力が接続治具を介して座屈拘束ブレース100の端部に入り、芯材10の端部からその全域に外力が圧縮力Nとして伝達されることにより、芯材10の全域が塑性変形することで地震時のエネルギー吸収性能が発揮されることになる。言い換えると、芯材10に圧縮力Nが作用した際に芯材10の全域でその弱軸方向に高次モードの座屈(波状の変形)が生じることにより、芯材10の全体を可及的均等に座屈させることで座屈拘束ブレース100の全体の塑性変形性能を発揮することができる。
【0059】
図5Bに示すように、芯材10に作用する圧縮力Nによって高次モードの座屈が生じ、座屈による波状の変形の山が内挿板20に対して押圧力Qを付与することになる。
【0060】
押圧力Qは、内挿板20に作用した後、内挿板20の内部を広がって拘束材30に作用することとなり、押圧力Qによる拘束材30の局部破壊が防止される。
【0061】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0062】
10:芯材
10a:広幅面
11:狭幅部
12:広幅部
12a:ボルト孔
13:接合板
13a:ボルト孔
14:スリット
15:突起
17:スペーサー
18:補強板
20:内挿板(アンボンド材兼用内挿板)
20a:突起孔
25:隙間
30:拘束材(角形鋼管)
30a:突起孔
50:補剛材
100:座屈拘束ブレース
N:軸力(圧縮力)
Q:押圧力
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B