(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049169
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法および半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20230403BHJP
【FI】
H01L21/56 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158748
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】390022471
【氏名又は名称】アオイ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】徳山 敏司
(72)【発明者】
【氏名】黒羽 淳史
【テーマコード(参考)】
5F061
【Fターム(参考)】
5F061AA01
5F061BA07
5F061CA21
5F061CB12
5F061DA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】現像液又は剥離液に溶解する金属材料からなる電極が半導体素子表面に配置された半導体装置の製造方法、当該製造方法で製造された半導体装置を提供する。
【解決手段】方法は、現像液又は剥離液に溶解する金属材料からなる半導体素子10の電極11が形成されたウェハを用意する工程と、現像液及び剥離液に溶解しない金属材料からなり、電極11を覆う配線パターン13をウェハ上に形成する工程と、開口部60を形成するための硬化させたレジスト層からなるポストを形成する工程と、ポストが形成されたウェハを、ポストを形成したまま各半導体素子10に個片化する工程と、半導体素子10を基板上にダイボンディングする工程と、半導体素子10と基板上の外部電極31とを電気的に接続する工程と、半導体素子10及び基板を封止用金型内に配置し樹脂封止する工程と、ポストを除去し開口部60を形成する工程と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部内に配置された機能部を有する半導体素子を備える半導体装置の製造方法であって、
現像液または剥離液に溶解する金属材料からなる前記半導体素子の電極が形成されたウェハを用意する工程と、
前記現像液および前記剥離液に溶解しない金属材料からなり、前記電極を覆う配線パターンを前記ウェハ上に形成する工程と、
前記開口部を形成するために硬化させたレジスト層からなるポストを形成する工程と、
前記ポストが形成された前記ウェハを、前記ポストを形成したまま各半導体素子に個片化する工程と、
前記ポストが形成された前記半導体素子を基板上にダイボンディングする工程と、
前記半導体素子と前記基板上の外部電極とを電気的に接続する工程と、
前記半導体素子および前記基板を封止用金型内に配置し、前記ポストの外周側の空間を樹脂封止する工程と、
前記半導体素子に形成された前記ポストを除去し、前記開口部を形成する工程と、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記電極が、前記開口部内に配置されており、
前記配線パターンが、前記開口部内から前記開口部外に延在し、前記開口部内に配置された電極を覆う配線を含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記現像液または前記剥離液がアルカリ性であり、
前記電極がアルミニウム、亜鉛、または鉛を含む金属組成物から構成される、請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記配線パターンを前記ウェハ上に形成する工程の前工程として、配線の密着性を高めるために前記電極を覆う金属膜を形成する工程を有する、請求項1ないし3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記金属膜は、前記電極の上に蒸着またはスパッタリングを施すことで形成され、
前記配線パターンは、前記金属膜の上にめっき処理を施すことで形成される、請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
開口部内に配置された機能部を有する半導体素子を備える半導体装置であって、
前記半導体素子は、現像液または剥離液に溶解する金属材料からなる電極を上面に有し、
前記電極を覆う、前記現像液および前記剥離液に溶解しない金属材料からなる配線パターンを有し、
前記半導体素子を、前記開口部を除いて封止する樹脂封止部を有することを特徴とする、半導体装置。
【請求項7】
前記電極が、前記開口部内に配置されており、
前記配線パターンが、前記開口部内から前記開口部外に延在し、前記開口部内に配置された電極を覆う配線を含む、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記電極がアルミニウム、亜鉛、または鉛を含む金属組成物から構成される、請求項6または7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記配線パターンの密着性を高めるために前記電極を覆う金属膜を有し、前記配線パターンは、前記金属膜の上に形成されている、請求項6ないし8のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記開口部内に配置された電極を覆う配線が、前記開口部外で外部電極とワイヤにより接続されている、請求項6ないし9のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記電極が、前記開口部外に配置されており、
前記配線パターンが、前記開口部外に配置された電極から、前記配線パターンがワイヤによって外部電極と接続される位置まで延在する配線を含む、請求項6ないし10のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項12】
前記開口部が、上面から視た際に略円形、略楕円形、略矩形または略多角形である、請求項6ないし11のいずれかに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂封止されるとともに、一部に開口部を有する半導体装置の製造方法および半導体装置に関わるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ボンディングワイヤなどの部材の保護のための封止樹脂に、受光素子の受光部に光を取り込むため、あるいは発光素子が発する光を放射するための開口部を形成した半導体装置が知られている。このような半導体装置の製造方法として、特許文献1では、ウェハ上の受光部120、または受光部120の周囲にポスト(第1樹脂膜)を形成する工程と、ポストの上面およびリードフレーム180の下面のそれぞれに封止用金型を圧接し、ポストの周囲の空隙部分に封止樹脂を注入して、ポストの周囲に封止樹脂層200を形成する封止工程と、ポストを除去し、受光素子100を外部に露出させる工程と、を有する、半導体装置の製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえば、特許文献1に開示された方法を用いて、半導体素子の一部が開口部により露出した半導体装置を製造する場合、ウェハの上面にレジスト層を積層し、レジスト層の一部を露光により硬化させるとともに、アルカリ性の現像液を用いて、硬化されなかったレジスト層を除去することで、ウェハの上面にポストを形成することができる。また、アルカリ性の剥離液を用いることで、不必要となったポストを除去することができる。
しかしながら、半導体素子が、アルミニウム、亜鉛または鉛を含む金属組成物からなる電極を表面に有する場合、レジスト層をアルカリ性の現像液や剥離液を用いて除去する際に、アルカリ性の現像液または剥離液が電極に使用されているアルミニウム、亜鉛または鉛と接触して反応し、電極が溶解(腐食)してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、現像液または剥離液に溶解する金属材料からなる電極が半導体素子表面に配置された半導体装置を適切に製造することができる半導体装置の製造方法、および、当該製造方法により製造された半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、開口部内に配置された機能部を有する半導体素子を備える半導体装置の製造方法であって、現像液または剥離液に溶解する金属材料からなる前記半導体素子の電極が形成されたウェハを用意する工程と、前記現像液および前記剥離液に溶解しない金属材料からなり、前記電極を覆う配線パターンを前記ウェハ上に形成する工程と、前記開口部を形成するための硬化させたレジスト層からなるポストを形成する工程と、前記ポストが形成された前記ウェハを、前記ポストを形成したまま各半導体素子に個片化する工程と、前記半導体素子を基板上にダイボンディングする工程と、前記半導体素子と前記基板上の外部電極とを電気的に接続する工程と、前記半導体素子および前記基板を封止用金型内に配置し、前記ポストの外周側の空間を樹脂封止する工程と、前記半導体素子に形成された前記ポストを除去し、前記開口部を形成する工程と、を有することを特徴とする。
上記半導体装置の製造方法において、前記電極が、前記開口部内に配置されており、前記配線パターンが、前記開口部内から前記開口部外に延在し、前記開口部内に配置された電極を覆う配線を含むことができる。
上記半導体装置の製造方法において、前記現像液または前記剥離液がアルカリ性であり、前記電極がアルミニウム、亜鉛、または鉛を含む金属組成物から構成することができる。
上記半導体装置の製造方法において、前記配線パターンを前記ウェハ上に形成する工程の前工程として、配線の密着性を高めるために前記電極を覆う金属膜を形成する工程を有することができる。
上記半導体装置の製造方法において、前記金属膜は、前記電極の上に蒸着またはスパッタリングを施すことで形成され、前記配線パターンは、前記金属膜の上にめっき処理を施すことで形成することができる。
【0007】
本発明に係る半導体装置は、開口部内に配置された機能部を有する半導体素子を備える半導体装置であって、前記半導体素子は、現像液または剥離液に溶解する金属材料からなる電極を上面に有し、前記電極を覆う、前記現像液および前記剥離液に溶解しない金属材料からなる配線パターンを有し、前記半導体素子を、前記開口部を除いて封止する樹脂封止部を有することを特徴とする。
上記半導体装置において、前記電極が、前記開口部内に配置されており、前記配線パターンが、前記開口部内から前記開口部外に延在し、前記開口部内に配置された電極を覆う配線を含む。
上記半導体装置において、前記電極がアルミニウム、亜鉛、または鉛を含む金属組成物から構成することができる。
上記半導体装置において、前記配線パターンの密着性を高めるために前記電極を覆う金属膜を有し、前記配線パターンは、前記金属膜の上に形成する構成とすることができる。
上記半導体装置において、前記開口部内に配置された電極を覆う配線が、前記開口部外で外部電極とワイヤにより導通されている構成とすることができる。
上記半導体装置において、前記電極が、前記開口部外に配置されており、前記配線パターンが、前記開口部外に配置された電極から、前記配線パターンがワイヤによって外部電極と接続される位置まで延在する配線を含むように構成することができる。
上記半導体装置において、前記開口部が、上面から視た際に略円形、略楕円形、略矩形または略多角形であるように構成することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レジスト現像液またはレジスト剥離液で溶解する金属からなる電極を備える半導体素子を有する半導体装置において、機能部を露出させるための開口部の形状の自由度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(A)は本実施形態に係る半導体装置を示す平面図であり、(B)は、(A)のB1-B1線に沿う断面図である。
【
図2】本実施形態に係る製造方法を説明するための平面図(その1)である。
【
図3】本実施形態に係る製造方法を説明するための平面図(その2)である。
【
図4】本実施形態に係る製造方法を説明するための断面図(その1)である。
【
図5】本実施形態に係る製造方法を説明するための断面図(その2)である。
【
図6】本実施形態に係る製造方法を説明するための断面図(その3)である。
【
図7】(A)は参考例に係る半導体装置を示す平面図であり、(B)は、(A)のB2-B2線に沿う断面図である。
【
図8】他の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図9】他の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本発明に係る半導体装置の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、半導体装置は、実用上は、1枚のウェハを用いて多数個を同時に作製するが、以下の説明では、そのうち1つの半導体装置を例示して説明する。
【0011】
<構成>
図1(A)は、本実施形態に係る半導体装置1を示す平面図であり、
図1(B)は、
図1(A)のB1-B1線に沿う断面図である。本実施形態に係る半導体装置1は、
図1(A),(B)に示すように、平置きした半導体素子10を樹脂封止部50で封止したものである。また、半導体装置1は、半導体素子10の機能部を露出するための開口部60を有している。半導体装置1は、半導体素子10として発光素子や受光素子が実装された光学モジュールを例示できる。
【0012】
半導体装置1は、
図1(A),(B)に示すように、半導体素子10と、金属膜12と、再配線13と、DAF(Die Attach Film)14と、外部電極31と、ボンディングワイヤ32と、樹脂封止部50と、開口部60とを有する。以下に、これらの各構成要素について説明する。
【0013】
半導体素子10の上面には、上面視矩形の電極11(電極パッド)が形成されている。本実施形態において、電極11は、アルミニウムで形成されるが、アルミニウムを含む金属化合物や、亜鉛または鉛を含む金属組成物で形成することもできる。また、電極11を含む半導体素子10の上面は、樹脂封止部50で覆われているが、中央部分に開口部60が設けられ、この開口部60から半導体素子10の上面の機能部70が露出している。半導体素子10の上面のうち開口部60から露出する機能部70は、たとえば、発光素子の発光部や受光素子の受光部であり、半導体素子10が発光素子である場合は、発光部からの光が開口部60を介して半導体装置1の外部へ射出され、あるいは、半導体素子10が受光素子である場合は、半導体装置1の外部からの光が開口部60を介して半導体素子10の受光部へと入射される。なお、半導体素子10の厚さは、特に限定されないが、たとえば400μmとすることができる。
【0014】
半導体素子10の上面および側面は、樹脂封止部50で覆われており、半導体素子10の下面および樹脂封止部50の下面は半導体装置1の下面を構成する。半導体装置1の下面において、半導体素子10の下面と、外部電極31の下面とは、樹脂封止部50から露出している。なお、外部電極31は、たとえば、銅によって構成される。また、露出した半導体素子10の下面は、DAF(Die Attach Film)14で覆われる。DAF14は絶縁材料で構成されるため、半導体素子10の下面は絶縁性を備える。このため、たとえば、後述の基板30の実装面において、半導体装置1の実装位置に配線パターンを通しても、この配線パターンと半導体素子10の下面とが短絡することを防止することができる。DAF14は、たとえば、厚さ25μmの熱硬化性樹脂によって構成することができる。このような熱硬化性樹脂として、エポキシ、シリコン、およびシリカなどの混合物を例示することができる。なお、
図1(B)に示すように、半導体装置1の下面を構成する樹脂封止部50、DAF14(半導体素子10の下面)および外部電極31は、略面一(略同一の面上)に配置される。
【0015】
また、本実施形態に係る半導体装置1において、半導体素子10の電極11の上面は、金属膜12と再配線13で覆われている。金属膜12は、チタンや銅などの金属を、スパッタリングまたは蒸着して形成した薄膜の金属膜であり、これにより再配線13の密着性を強固にすることができる。金属膜12は、複数の電極11をそれぞれ被覆するように形成されている。また、本実施形態では、再配線13が形成される領域以外の金属膜12をウェットエッチングなどにより除去することで、再配線13が形成される領域の下地として金属膜12を形成することができる。また、
図1(B)に示すように、本実施形態では、金属膜12は開口部60の外側から内側に延在するように形成されている。
【0016】
再配線13は、電極11の上に金属膜12を形成した後に、金属膜12の上に銅めっきなどのめっき処理を施すことで形成した配線である。本実施形態では、半導体素子10を複数個取りするためのウェハの上面全体に金属膜12を形成した後に、ドライフィルムレジストなどにより第1のレジスト層20を形成し、再配線13の配線パターン(以下、「再配線パターン」という。)を形成するための露光および現像を行い、再配線パターンに合わせて金属膜12の一部を露出させる。露出した金属膜12に電解めっき等のめっき処理を行って再配線13を形成した後、硬化レジスト層21を除去する。さらに、再配線パターン以外の領域にある金属膜12をエッチングで除去することで、
図1(B)および
図2(B)に示すように、再配線13の再配線パターンを作製することができる。本実施形態の再配線パターンは、
図2(B)に示すように、再配線13a~13dからなる。このうち、
図1(B)および
図2(C)に示すように、再配線13bは開口部60の外側から内側に延在するように形成されている。
【0017】
再配線13a~13dは、
図3(D)に示すように、ボンディングワイヤ32によって、基板30上に設けられた外部電極31とそれぞれ接続される。再配線13a~13dと外部電極31a~31c,31fとをボンディングワイヤ32により接続することで、半導体素子10の電極11と外部電極31とが電気的に接続されることとなる。なお、
図3の例では、外部電極31d,31eは使用されていないが、たとえば、外部電極31dを使用する場合には、再配線13dが外部電極31dに近づく方向に延在する再配線パターンとすることもできる。
【0018】
基板30上に配置された半導体素子10、ボンディングワイヤ32および外部電極31は、樹脂封止部50によって封止された後、基板30と分離される。なお、開口部60は、樹脂封止部50により封止されておらず、開口部60から半導体素子10の上面に設けられた機能部70が露出している。たとえば、封止用に用いられるエポキシ樹脂は劣化により光透過特性が悪くなることが知られているが、開口部60は空洞となっているため、そのような問題は生じない。なお、樹脂封止部50は、たとえば、遮光性のフィラーを含有する黒色系のエポキシ樹脂とすることができる。
【0019】
<製造方法>
次に、本実施形態に係る半導体装置1の製造方法について、
図2~6を参照して説明する。
図2および
図3は、本実施形態に係る半導体装置1の製造方法を説明するための平面図であり、
図4~6は、本実施形態に係る半導体装置1の製造方法を説明するための断面図である。なお、
図4(A)は、
図2(A)の4A-4A線に沿う断面図であり、
図5(H)は、
図2(B)の5H-5H線に沿う断面図であり、
図5(K)は、
図2(C)の5K-5K線に沿う断面図である。また、
図6(L)は、
図3(D)の6L-6L線に沿う断面図であり、
図6(N)は、
図3(E)の6N-6N線に沿う断面図である。また、半導体素子10は、ウェハをダイシングすることで得られ、
図2(A)~(C)、
図4(A)~(E)および
図5(F)~(K)では、半導体素子10のダイシング前の工程を示しているが、以下においては、説明の便宜上、ダイシング前のウェハにおける1つの半導体素子10に対応する領域を、半導体素子10として説明する。
【0020】
まず、複数の半導体素子10に対応する領域を有するウェハが用意される。
図4(A)に示すように、複数の半導体素子10に対応する領域のそれぞれの上面に、複数の電極11を形成する電極形成工程が実施される。本実施形態では、
図2(A)に示すように、4つの電極11a~11dが一つの半導体素子10に対応する領域に形成されるウェハが用意される。
次に、
図4(B)に示すように、半導体素子10の上面全体に、スパッタリングまたは蒸着により、アルミニウム、亜鉛、または鉛以外の金属を含む金属組成物(好ましくは銅またはチタン)からなる薄膜の金属膜12を形成する金属膜形成工程が実施される。
【0021】
次に、
図4(C)に示すように、金属膜12の上に、ドライフィルム等のレジストを貼り付け、第1のレジスト層20を形成する第1レジスト層形成工程が実施される。
続いて、
図4(D)に示すように、再配線13の再配線パターンに対応する領域以外の領域の第1のレジスト層20に対して露光を行い、硬化させるレジスト硬化工程が実施される。なお、
図4(D)においては、硬化させたレジスト層(以下、「硬化レジスト層」という。)を符号21で示している。
続いて、
図4(E)に示すように、硬化させていない第1のレジスト層20を現像液で除去する第1レジスト層除去工程が実施される。ここで、金属膜形成工程(
図4(B))で電極11を覆う金属膜12が形成されているため、第1レジスト層除去工程においては現像液が電極11と接触することがなく、現像液による電極11の溶解(腐食)を防止することができる。なお、第1レジスト層除去工程が実施されても、硬化レジスト層21は除去されない。
【0022】
本実施形態に係る現像液は、アルカリ性の水溶液であり、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n-プロピルアミン等の第一級アミン類、ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等の第二級アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラペンチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリアミルアンモニウムヒドロキシド、ジブチルジペンチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等のアルカリ剤を含むアルカリ性水溶液が例示される。また、上記アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。アルカリ現像液のアルカリ剤の濃度は、0.001~20質量%であることが好ましく、0.01~10質量%であることがより好ましく、0.1~1質量%であることがさらに好ましい。アルカリ現像液のpHは、10.0~15.0であることが好ましい。アルカリ現像液のアルカリ剤濃度およびpHは、適宜調整して用いることができる。アルカリ現像液は、例えばメタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤等を適量添加して用いてもよい。
【0023】
なお、現像方法は、特に限定されず、たとえばディップ(浸漬)現像やスプレー現像を、ドライフィルムレジストの種類に応じて使い分けることもできる。また、第1のレジスト層20と現像液との反応温度も、適宜設定することができる。また、本実施形態において、第1のレジスト層20(ドラムフィルムレジスト)は、カルボキシル基を側鎖に有する樹脂の架橋構造を有しており、第1のレジスト層20のカルボキシル基が現像液と反応することで、第1のレジスト層20を溶解させることができる。なお、現像後は、専用リンスや純水でしっかり洗うことが好ましく、洗浄後、スピン・ドライヤを用いて回転乾燥することなどで乾燥処理が行われる。
【0024】
次に、金属膜12が露出している再配線パターン部分にめっき処理を行い、
図5(F)に示すように、金属膜12に再配線13が積層された再配線パターンを形成する再配線工程が実施される。なお、めっき処理は、アルミニウム、亜鉛、および鉛以外の金属を含む金属組成物(好ましくは銅)を用いて行われる。
続いて、残りの硬化レジスト層21を除去する硬化レジスト層除去工程が実施される。硬化レジスト層21を除去する方法は、特に限定されず、たとえば、プラズマアッシャやオゾンアッシャを用いて硬化レジスト層21を半導体素子10から除去する方法としてもよいし、ウェットステーションを用いて特定の薬液(たとえば市販のレジスト剥離液)により硬化レジスト層21を半導体素子10から除去する方法とすることもできる。これにより、
図5(G)に示すように、半導体素子10の上に金属膜12と再配線13とだけが積層された状態となる。なお、本実施形態では、電極11が金属膜12および再配線13により覆われているため、レジスト剥離液として、アルカリ性の剥離液を用いることもできる。
続いて、半導体素子10の上面全体に形成されている金属膜12にエッチング処理が行われ、不要な金属膜12を除去する金属膜除去工程が実施される。これにより、
図2(B)および
図5(H)に示すように、再配線13の再配線パターンが形成された領域だけに金属膜12が形成され、それ以外の領域では、半導体素子10の上面が露出した状態となる。
【0025】
次いで、
図5(I)に示すように、再度、半導体素子10の上面側に、ドライフィルムレジストを貼り付け、第2のレジスト層22を形成する第2レジスト層形成工程が実施される。
次いで、第2のレジスト層22のうち、開口部60の周縁部となる領域を露光して硬化させることで、ポスト23を形成するポスト形成工程が実施される。本実施形態では、
図5(J)に示すように、再配線13の一部を横断する四角い枠型の閉じたポスト23が形成される(
図2(C)参照)。
次いで、硬化させていない第2のレジスト層22を現像液で現像して除去する第2のレジスト層除去工程が実施される。これにより、
図2(C)および
図5(K)に示すように、ポスト23と再配線パターンだけが半導体素子10の上面に残存する。第2レジスト層除去工程においても、電極11が金属膜12および再配線13で覆われているため、現像液による電極11の溶解(腐食)を防止することができる。
【0026】
次いで、ウェハのダイシングにより、半導体素子10を個片化する個片化工程が実施される。
次いで、
図3(D)および
図6(L)に示すように、分離した半導体素子10を、ステンレスからなる基板30の上面にダイボンディングする工程が実施される。本実施形態では、DAF14を用いることで、半導体素子10を基板30の上面の所定位置にダイボンディングすることが可能となっている。ダイボンディング工程では、複数の外部電極31a~31fも基板30の所定位置に載置され、ボンディングワイヤ32により、外部電極31と再配線13とが電気的に接続される。
【0027】
続いて、
図6(M)に示すように、基板30に載置した半導体素子10および外部電極31を、基板30ごと封止用金型40内に収容し、樹脂封止する樹脂封止工程が実施される。樹脂封止工程では、封止用金型40で、半導体素子10の上面に設立されたポスト23と、基板30の下面とを圧接しながら、閉じたポスト23の外周側の空隙に封止樹脂を充填し、硬化させることで、樹脂封止部50がトランスファーモールド成形される。なお、
図6(M)に示すように、ポスト23の内側の空間は封止樹脂が充填されない開口部60となる。樹脂封止部50の形成後は、封止用金型40は取り外される。
【0028】
次いで、ポスト23を除去するポスト除去工程が実施される。基板30を取り外すことにより、
図3(E)および
図6(N)に示すように、半導体装置1が製造される。なお、ポスト23の除去は、硬化レジスト層21と同様に、特定の薬剤(市販の剥離液など)を用いて行うことができる。なお、本実施形態では、電極11が金属膜12および再配線13により覆われているため、ポスト23のレジスト剥離液として、アルカリ性の剥離液を用いることもできる。
また、半導体装置1を製造する際に、
図6(O)に示すように、半導体装置1の平面面積が所定の大きさとなるように、樹脂封止部50を適宜切断することもできる。
【0029】
以上のように、本実施形態に係る半導体装置1では、半導体素子10の表面に形成された、現像液に溶解する金属材料(アルミニウム、亜鉛、または鉛を含む金属組成物)からなる電極11の上に、スパッタリングまたは蒸着により、現像液に溶解しない金属材料(アルミニウム、亜鉛、および鉛以外の金属組成物)からなる金属膜12を形成し、金属膜12の上に、めっき処理により、現像液に溶解しない金属材料(アルミニウム、亜鉛、および鉛以外の金属組成物)からなる再配線13が形成される。そして、再配線13の上面を含む領域に第2のレジスト層22を形成し、第2のレジスト層22の一部を露光させて硬化させ、硬化していない第2のレジスト層22をアルカリ性の現像液で除去することで、開口部60を形成するためのポスト23が形成される。さらに、ポスト23の外周側の空隙を樹脂封止して樹脂封止部50を形成し、その後、ポスト23を除去することで、開口部60が形成される。このように、本実施形態に係る半導体装置1では、アルミニウム、亜鉛、または鉛を含む金属組成物から構成される電極11が、アルミニウム、亜鉛、および鉛以外の金属を含む金属組成物から構成される金属膜12および再配線13で被覆されるため、その後、レジスト層20,22をアルカリ性の現像液を用いて除去する場合でも、あるいは、硬化レジスト層21やポスト23をアルカリ性の剥離液を用いて除去する場合でも、アルカリ性の現像液や剥離液が電極11に接触することを回避することができ、現像液または剥離液による電極11の溶解を回避することができる。現像液または剥離液による電極11の溶解を気にしなくてもよいので、現像液または剥離液に溶解しない金のような高価な材料を用いる必要がなくなる。
【0030】
また、本実施形態に係る半導体装置1では、
図3(D)および
図5(K)に示すように、再配線13a~13dを電極11a~11dの上だけではなく、閉じたポスト23の内側から外側に延在する再配線13bを形成することができる。これにより、電極11の位置に関わらず(たとえば、電極11bのように開口部60内に電極を設ける場合でも)、十分な広さの開口部60を確保することができ、半導体装置1の設計自由度を高めることができる。
【0031】
図7(A)は、参考例に係る半導体装置1aを示す平面図であり、
図7(B)は、
図7(A)のB2-B2線に沿う断面図である。参考例に係る半導体装置1aでは、再配線113は電極11と同じ配線パターンで形成されている。以下では、上述の実施形態と同じ要素については、同じ符号を付し、説明を省略する。
再配線113を電極11の上にだけ形成する場合には、
図7(A),(B)に示すように、再配線113にボンディングするボンディングワイヤ32を保護するために、再配線113全体を樹脂封止部50で封止する必要がある。そのため、トランスファーモールド成形時に封止用樹脂が再配線13に到達するような形状の開口部とする必要が生じる。参考例では、
図7(A)に示すように、開口部160の形状を上面視コの字状または凹状とすることで、中央部に位置する再配線113を樹脂封止することを可能としている。これに対して、本実施形態に係る半導体装置1では、電極が中央部に位置する場合であっても、中央部の電極11bと電気的に接続するための再配線13bを開口部60の内側から外側に延在させることができるので、開口部60の形状の自由度が高まる。このため、開口部60の形状を、たとえば、多角形、偶数個の頂点を有する多角形、円形、楕円形としたりすることも可能である。
【0032】
また、本実施形態に係る半導体装置1では、半導体素子10における電極11の位置の自由度を高めることもできる。すなわち、再配線13を有しない半導体装置では、半導体装置の最終的な形態に合わせて、半導体素子10の電極11の位置が制限される場合がある。しかしながら、本実施形態に係る半導体装置1では、再配線パターンで電極11を覆うため、半導体素子の電極位置を変えなくとも再配線パターンを変えることで容易にレイアウトを変更することが可能となる。さらに、本実施形態に係る半導体装置1では、電極11の面積が小さい場合でも、再配線13の面積を大きくしたり引き回しをしたりすることで、ワイヤボンディングの作業性を向上させることが可能となる。
【0033】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態例の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0034】
たとえば、上述した実施形態では、開口部60の形状を矩形とする構成を例示したが、この構成に限定されず、開口部60の形状を円形や多角形などとすることもできる。
【0035】
また、上述した実施形態では、
図1(A),(B)に示すように、再配線13が、電極11が配置される開口部60の内側から開口部60の外側まで延在する構成や、
図7(A),(B)に示すように、開口部60の外側に配置された電極11の上のみに再配線13を形成する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、
図8に示すように、電極11が開口部60の外側に形成されており、電極11を覆う再配線13が、開口部60の外側の領域内において、開口部60外部から開口部60内側へと向かって、あるいは、開口部60の周縁に沿って延在する構成とすることができる。このように、再配線13を開口部60の外側で引き回すことにより、再配線13上のワイヤボンディングを行う位置を自由に変更することができるため(半導体素子10上の電極11の位置に合わせてワイヤボンディングを行わないといけないという制約を受けないため)、設計上の自由度を高めることができる。なお、
図8は、他の実施形態に係る半導体装置1bを示す断面図である。
【0036】
さらに、上述した実施形態では、
図1(B)に示すように、半導体素子10の下面がDAF14で覆われる構成を例示したが、この構成に限定されず、
図9に示すように、ダイパッド15の上面に半導体素子10を接着して載置する構成とすることができる。この場合、半導体素子10は、絶縁性あるいは導電性の接着剤でダイパッド15上に接着され、ダイパッドの裏面は樹脂封止部から露出する。なお、
図9は、他の実施形態に係る半導体装置1cを示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1,1a~1c…半導体装置
10…半導体素子
11…電極
12…金属膜
13…再配線
14…DAF
15…ダイパッド
20…レジスト層
21…硬化レジスト層
22…レジスト層
31…外部電極
32…ボンディングワイヤ
50…樹脂封止部
60…開口部
23…ポスト
30…基板
40…封止用金型
70…機能部