(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049170
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】直動装置および電子部品実装装置
(51)【国際特許分類】
H02K 41/02 20060101AFI20230403BHJP
H02K 41/03 20060101ALI20230403BHJP
H05K 13/04 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
H02K41/02 C
H02K41/03 A
H05K13/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158749
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮原 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 亮
【テーマコード(参考)】
5E353
5H641
【Fターム(参考)】
5E353EE53
5E353EE62
5E353EE88
5E353GG21
5E353JJ02
5E353JJ21
5E353JJ26
5E353JJ48
5E353KK01
5E353QQ07
5E353QQ12
5H641BB06
5H641GG03
5H641GG15
5H641HH02
5H641JA09
5H641JB02
(57)【要約】
【課題】可動子から生じる熱による移動体、ガイドレール及びリニアガイドの熱変形を抑制し、移動体の位置決め精度を高めた直動装置を提供する。
【解決手段】移動体を基準方向に移動させる直動装置1であって、基準方向に延在するベース2と、ベースに固定され、基準方向に延在するガイドレール31、及び、ガイドレールに、基準方向に沿って移動可能に支持されるスライダ32を有するリニアガイド機構3と、スライダに固定される移動体5と、ベースに固定され、基準方向に延在する磁石列からなる固定子42、及び、固定子と一定の空隙を介して設けられる複数のコイルからなる可動子41を有するリニアモータ4と、移動体と可動子との間に介在し、移動体及び可動子に連結される伝熱体6と、を備え、伝熱体は、リニアガイド機構から離れる方向に延在している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を基準方向に移動させる直動装置であって、
前記基準方向に延在するベースと、
前記ベースに固定され、前記基準方向に延在するガイドレール、及び、前記ガイドレールに、前記基準方向に沿って移動可能に支持されるスライダを有するリニアガイド機構と、
前記スライダに固定される前記移動体と、
前記ベースに固定され、前記基準方向に延在する磁石列からなる固定子、及び、前記固定子と一定の空隙を介して設けられる複数のコイルからなる可動子を有するリニアモータと、
前記移動体と前記可動子との間に介在し、前記移動体及び前記可動子に連結される伝熱体と、
を備え、
前記伝熱体は、前記リニアガイド機構から離れる方向に延在している、直動装置。
【請求項2】
前記可動子は、前記リニアガイド機構から離れる方向に配置されている、請求項1に記載の直動装置。
【請求項3】
前記伝熱体は、スペーサを介して前記移動体に連結されている、請求項1または2に記載の直動装置。
【請求項4】
前記伝熱体は、前記リニアガイド機構と反対側の端部において、前記移動体から離れる方向に延在する屈曲部を有する、請求項1~3の何れか1項に記載の直動装置。
【請求項5】
前記伝熱体の表面に、放熱フィンが設けられている、請求項1~4の何れか1項に記載の直動装置。
【請求項6】
前記伝熱体は、前記リニアガイド機構側の端部において、前記可動子からの輻射熱を遮断する遮熱部を有する、請求項1~5の何れか1項に記載の直動装置。
【請求項7】
前記固定子と前記リニアガイド機構との間に、前記ベースに固定され、前記可動子からの輻射熱を遮断する遮熱板が設けられている、請求項1~5の何れか1項に記載の直動装置。
【請求項8】
前記伝熱体の前記可動子と対向する面に、前記可動子からの輻射熱を吸収する物質が被覆されている、請求項1~7の何れか1項に記載の直動装置。
【請求項9】
前記伝熱体の前記移動体と対向する面は、鏡面になっている、請求項1~8の何れか1項に記載の直動装置。
【請求項10】
前記スペーサは、前記基準方向に延在する、互いに平行な2つのスペーサからなり、
前記スペーサ間に、前記基準方向に連通した通風路が設けられている、請求項3に記載の直動装置。
【請求項11】
前記伝熱体の一部に、前記可動子に接続される給電ケーブルを支持する支持部を有する、請求項1~10の何れか1項に記載の直動装置。
【請求項12】
電子部品を基板に実装する電子部品実装装置であって、
請求項1~11の何れか1項に記載の直動装置と、
前記移動体に固定され、前記電子部品の前記基板への実装を行う実装ヘッドと、
を備えた、電子部品実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータによって移動体を移動させる直動装置及び、該直動装置を備える電子部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体を移動させる直動装置として、駆動装置にリニアモータを用いるものが知られている。リニアモータは機械的な動力伝達部を持たないため、直動装置を構成する部品の変形や摩耗等による移動体の位置決め精度の悪化が少なく、高精度の位置決めに適している。
【0003】
移動体は、リニアモータの可動子に連結されて移動するが、可動子は通電されると発熱するため、この熱が移動体に伝達されると移動体が熱変形し、移動体の位置決め精度が悪化する。そこで、特許文献1には、可動子と移動体(天板)との間に、冷却風が流れる通風路を設けることで、可動子を効率的に冷却するとともに、可動子と移動体とを断熱材を介して連結することで、可動子から生じる熱が移動体に伝達されることを抑制する直動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された直動装置では、一対のガイドレールの間に可動子が配置され、可動子に連結された移動体は、ガイドレールに支持されたリニアガイド(スライダ)に固定され、これにより、ガイドレールに沿って移動可能になっている。このような構成の直動装置は、可動子が、移動体、ガイドレール及びリニアガイドで囲まれる空間に、互いに近接して配置されている。そのため、可動子と移動体との間に通風路や断熱材が介在していたとしても、可動子から生じる熱が、熱輻射や対流によって、移動体、ガイドレール及びリニアガイドに伝達されることは避けられず、これらの部材の熱変形によって、移動体の位置決め精度が悪化するという課題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、可動子から生じる熱による移動体、ガイドレール及びリニアガイドの熱変形を抑制し、移動体の位置決め精度を高めた直動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る直動装置は、移動体を基準方向に移動させる直動装置であって、基準方向に延在するベースと、ベースに固定され、基準方向に延在するガイドレール、及び、ガイドレールに、基準方向に沿って移動可能に支持されるスライダを有するリニアガイド機構と、スライダに固定される移動体と、ベースに固定され、基準方向に延在する磁石列からなる固定子、及び、固定子と一定の空隙を介して設けられる複数のコイルからなる可動子を有するリニアモータと、移動体と可動子との間に介在し、移動体及び可動子に連結される伝熱体と、を備え、伝熱体は、リニアガイド機構から離れる方向に延在している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、可動子から生じる熱による移動体、ガイドレール及びリニアガイドの熱変形を抑制し、移動体の位置決め精度を高めた直動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態における直動装置の構成を示した斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態における直動装置の構成を示した断面である。
【
図3】(A)及び(B)は、従来の直動装置の構成を示した図である。
【
図4】(A)及び(B)は、可動子をリニアガイド機構から離れる方向に配置した直動装置の構成を示した図である。
【
図5】(A)及び(B)は、第1の実施形態における直動装置の構成を示した図である。
【
図6】(A)及び(B)は、第1の実施形態における他の直動装置の構成を示した図である。
【
図7】第1の実施形態の変形例における直動装置の構成を示した断面である。
【
図8】第1の実施形態の変形例における直動装置の構成を示した断面である。
【
図9】本発明の第2の実施形態における電子部品実装装置の構成を示した断面図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態における電子部品実装装置の構成を示した正面図である。
【
図11】本発明の他の実施形態における直動装置の構成を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における直動装置の構成を模式的に示した斜視図で、
図2は、直動装置の構成を模式的に示した断面図である。
【0012】
なお、以下の説明において、移動体が移動する方向(基準方向)をX方向、X方向と直交する水平方向をY方向、X方向と直交する鉛直方向をZ方向とする。
【0013】
図1に示すように、直動装置1は、ベース2と、リニアガイド機構3と、リニアモータ4と、移動体5と、伝熱体6と、スペーサ7と、位置センサ8と、給電ケーブル9と、制御部(不図示)を有する。
【0014】
ベース2は、X方向に延伸した直方体状に形成される。リニアガイド機構3は、ガイドレール31と、スライダ32と、を有する。ガイドレール31は、X方向に延在して、ベース2にボルト等で固定される。ガイドレール31は、複数設けてもよい。本実施形態では、2つのガイドレール31をZ方向に離して設けている。
【0015】
ガイドレール31は、ガイドレール31に沿ってX方向に移動可能に、スライダ32を支持する。スライダ32は、複数設けてもよい。本実施形態ではガイドレール31ごとに2つ、合計4つのスライダ32を設けている。
【0016】
ガイドレール31とスライダ32の係合部は、転動体を備えるのが望ましい。これにより、ガイドレール31とスライダ32との間に生じる摩擦力を小さくすることができ、後述する移動体5の位置決めにおけるロストモーションを小さくすることができる。
【0017】
図2に示すよう、リニアモータ4は、固定子42と、可動子41と、を有する。固定子42は、Z方向に間隔を空けて対向配置されるとともに、X方向に延在する一連の磁石列42aと、磁石列42aを保持する断面がコの字型のフレーム42bとで構成される。固定子42は、ベース2の上面に固定される。固定子42の上面には、給電ケーブル9を支持する支持部43が設けられている。
【0018】
可動子41は、直方体状に形成され、内部に図示しない複数のコイルを有する。可動子41は、磁石列42aの間に、上下それぞれの磁石列から一定の空隙を介して配置される。可動子41は、後述する伝熱体6にボルト等で固定される。複数のコイルは、給電ケーブル9を介して制御部と電気的に接続される。
【0019】
複数のコイルが通電すると、複数のコイルの周囲に磁気が生じ、磁石列42aとの間で引き込み力を生じる。これにより、可動子41にX方向の推進力が与えられる。
【0020】
リニアモータ4は、可動子41がリニアガイド機構から上側に位置するように配置されることが望ましい。可動子41の近傍で加熱された空気は上方向に流れやすいため、可動子41をリニアガイド機構3の上側に配置することで、可動子41からリニアガイド機構3、及び、後述する移動体5への対流による熱伝達を抑制することができる。
【0021】
移動体5は、例えばX方向及びZ方向に延びる板状に形成される。移動体5の下側は、スライダ32にボルト等で固定される。移動体5の上側は、後述するスペーサ7を介して伝熱体6にボルト等で固定される。なお、
図1では、内部の構造が分かるよう、移動体5を透明部として、点線で示している。
【0022】
可動子41に連結された伝熱体6は、リニアガイド機構3から離れる方向(Z方向)に延在している。また、伝熱体6は、リニアガイド機構3と反対側の端部において、移動体5から離れる方向(Y方向)に延在する屈曲部61を有する。このように、伝熱体6は、X方向から見た断面形状がL字状になるように形成されている。なお、屈曲部61は、Y方向に対して傾斜して延びていてもよい。また、伝熱体6は、リニアガイド機構3側の端部において、可動子41からの輻射熱を遮断する遮熱部62を有していてもよい。
【0023】
伝熱体6は、例えば、アルミニウムや銅等の熱伝導率が高い材料で形成されることが望ましい。これにより、可動子41から生じる熱を、効率的に伝熱体6に伝達するとともに、可動子41から伝達された熱を大気中に放熱することができる。また、伝熱体6には、放熱フィンを備えてもよい。これにより、放熱面積が増え、伝熱体6の放熱効率を高めることができる。また、伝熱体6の一部(例えば、屈曲部61)に、給電ケーブル9の一方側を支持する支持部を設けてもよい。給電ケーブル9の他方側は、例えば、リニアモータ4の上面に設けられた支持部43に固定される。
【0024】
スペーサ7は、例えば、筒状に形成される。複数のスペーサ7は、X方向に連通する通風路71が設けられるように、移動体5と伝熱体6との間に、互いに間隔を空けて配置される。これにより、移動体5と伝熱体6との間に空気層が形成され、伝熱体6と移動体5との間の熱伝達が抑制される。また、移動体5が移動する方向(X方向)に通風路71を設けることで、移動体5と伝熱体6との間に空気流が生じ、放熱効果を高めることができる。
【0025】
また、複数のスペーサ7の間に、Z方向に連通する通風路がさらに設けられることが好ましい。これにより、伝熱体6の周囲の温まった空気が上方向に流れやすくなり、伝熱体6の放熱効果を高めることができる。
【0026】
スペーサ7は、例えば、樹脂やステンレス鋼等の熱伝導率が低い素材で形成されることが好ましい。これにより、伝熱体6から移動体5への熱伝達を抑制することができる。
【0027】
位置センサ8は、リニアスケール82と、センサヘッド81と、を有する。リニアスケール82は、ガイドレール31と略平行になるようにX方向に延在し、ベース2に固定される。センサヘッド81は、センサヘッド81の読み取り部がリニアスケール82と対向するように移動体5に固定される。センサヘッド81の読み取り部が、リニアスケール82の表面に記録された位置情報を取得することにより、ベース2に対する移動体5のX方向の相対位置が取得できる。
【0028】
制御部(不図示)は、センサヘッド81から位置情報を取得し、移動体5のベース2に対する相対位置と移動体5の目標位置との差に基づいて、複数のコイルに駆動信号(電流)を出力する。複数のコイルが通電すると、可動子41に推進力が与えられ、ベース2に対して移動体5がX方向に相対移動する。
【0029】
本実施形態において、可動子41は、リニアガイド機構3から離れる方向に配置されている。すなわち、可動子41は、移動体5、ガイドレール31及びスライダ32で囲まれる空間に拘束されない位置に配置されている。そのため、可動子41に連結された伝熱体6を、リニアガイド機構3から離れる方向(Z方向)に延在して配置することができる。これにより、可動子41で発生す熱を、伝熱体6を介して、速やかに放熱することができるため、可動子41の温度を速やかに下げることができる。その結果、可動子41から生じる熱が、輻射熱や対流によって、移動体5、ガイドレール31、及びスライダ32に伝達されるのを大幅に抑制できるため、これらの部材の熱変形が防止され、移動体の位置決め精度を高めることができる。
【0030】
ところで、従来の直動装置では、
図3(A)、(B)に示すように、可動子41は、一対のガイドレール31の中間に配置されている。この場合、移動体5、可動子41、及びスライダ32で構成される可動部の重心位置P
1は、Z方向において、可動子41の近傍に位置している。そのため、可動部は、リニアモータ4が作動した際に可動子41に生じる推力Fを、可動部の重心位置P
1近傍で受けるため、可動部に生じる偶力は小さい。
【0031】
一方、
図4(A)、(B)に示すように、可動子41をリニアガイド機構3から離れる方向(Z方向)に配置した場合、移動体5、可動子41、及びスライダ32で構成される可動部の重心位置P
2は、Z方向において、可動子41から離れた位置にある。そのため、可動部は、リニアモータ4が作動した際に可動子41に生じる推力Fを、可動部の重心位置P
1から離れた位置で受けるため、可動部に偶力が生じる。
【0032】
この偶力Nは、
図4(A)に示すように、移動体5を移動可能に支持するスライダ32に対して、スライダ32の移動方向(X方向)以外の方向(主には、Z方向)に作用する。そのため、この偶力Nによって、スライダ32、及び、スライダ32とガイドレール31との間に介在する転動体は、弾性変形するとともに、ガイドレール31とスライダ32との摺動抵抗が増加する。さらに、この偶力Nは、推力Fの方向、すなわち、移動体5の移動方向によって、向きが反転する。その結果、移動体5の位置決めにおいて、ロストモーションが大きくなる。
【0033】
これに対して、本実施形態では、
図5(A)、(B)に示すように、リニアガイド機構3から離れる方向に配置した可動子41に連結された伝熱体6を、リニアガイド機構3から離れる方向(主には、Z方向)に延在して配置している。そのため、伝熱体6の構成、例えば、伝熱体6のZ方向の長さ等を調整することによって、移動体5、伝熱体6、可動子41、及びスライダ32で構成される可動部の重心位置P
3を、Z方向において、可動子41の近傍に近づけることができる。
【0034】
このような構成により、本実施形態では、
図5(A)に示すように、可動部の重心位置P
3近傍で、可動子41に生じる推力Fを受けることができるため、スライダ32に加わる偶力Nを小さくすることができる。その結果、スライダ32、及び、スライダ32とガイドレール31との間に介在する転動体の弾性変形が抑制されるとともに、ガイドレール31とスライダ32との摺動抵抗が小さくなり、移動体5の位置決めにおけるロストモーションを抑制することができる。
【0035】
さらに、
図6(A)、(B)に示すように、伝熱体6のリニアガイド機構3と反対側の端部に、移動体5から離れる方向(X方向)に延在する屈曲部61を設けてもよい。これにより、移動体5、伝熱体6、可動子41、及びスライダ32で構成される可動部の重心位置P
4を、より可動子41の中心部近傍に近づけることができる。その結果、スライダ32に加わる偶力Nがより小さくなり、移動体5の位置決めにおけるロストモーションをより抑制することができる。
【0036】
なお、
図2に示したように、伝熱体6の屈曲部61に給電ケーブル9を配置した場合、給電ケーブル9を含めた可動部の重心位置が、可動子41の近傍に近づくように、屈曲部61を含めた伝熱体6の構成を調整することが好ましい。この場合、屈曲部61が受ける給電ケーブル9の質量は、移動体5の位置によって変化するため、例えば、給電ケーブル9を含めた可動部の重心位置を、移動体5のストロークの中間位置で求めることが好ましい。
【0037】
(第1の実施形態の変形例)
図7は、第1の実施形態の変形例における直動装置1の構成を模式的に示した断面図である。
図2に例示した直動装置1では、伝熱体6のリニアガイド機構3側の端部に、可動子41からの輻射熱を遮断する遮熱部62を設けたが、本変形例では、伝熱体6のリニアガイド機構3側の端部に、可動子41からの輻射熱を遮断する遮熱材63を備えている。これにより、可動子41から移動体5及びリニアガイド機構3への輻射による熱伝達が抑制される。遮熱材63は、例えば、樹脂やステンレス鋼等の熱伝導率が低い材料で形成することが好ましい。これにより、伝熱体6から遮熱材63へ伝達される熱量が小さくなり、リニアガイド機構3近傍の空気が、遮熱材63によって加熱されることが抑制される。
【0038】
また、
図8に示すように、固定子42とリニアガイド機構3との間に、ベース2に固定され、可動子41からの輻射熱を遮断する遮熱板10を設けてもよい。これにより、伝熱体6から移動体5及びリニアガイド機構3に向かって輻射される熱量が小さくなり、伝熱体6から移動体5及びリニアガイド機構3への熱伝達が抑制される。加えて、遮熱板10を境界とするZ方向の対流が抑制されるため、可動子41及び伝熱体6から、移動体5及びリニアガイド機構3への対流による熱伝達が抑制される。
【0039】
また、伝熱体6の可動子41と対向する面に、可動子41からの輻射熱を吸収する物質が被覆されていてもよい。輻射熱の吸収を促進する物質は、例えば、黒体塗料やアルマイト等である。これにより、伝熱体6が吸収する輻射熱量が大きくなり、伝熱体6の放熱効率を高めることができる。
【0040】
また、伝熱体6の移動体5と対向する面は、鏡面になっていることが好ましい。これにより、伝熱体6から移動体5及びリニアガイド機構3に向かって輻射される熱量が小さくなり、伝熱体6から移動体5及びリニアガイド機構3への熱伝達が抑制される。
【0041】
(第2の実施形態)
図9及び
図10は、本発明の第2の実施形態における電子部品実装装置の構成を模式的に示した図である。
【0042】
図9に示すように、本実施形態における電子部品実装装置は、電子部品を基板に実装する電子部品実装装置であって、第1の実施形態における直動装置1と、直動装置1の移動体5に固定され、電子部品の基板への実装を行う実装ヘッド101とを備えている。
【0043】
実装ヘッド101は、吸着ノズル111と、ヘッド駆動機構121を有する。ヘッド駆動機構121は、移動体5に設けられ、移動体5に対してZ方向に相対移動可能に吸着ノズル111を支持する。吸着ノズル111は、下面に吸着穴112を有する。吸着ノズル111に負圧、又は、正圧を供給することにより、吸着ノズル111は、部品の吸着保持と解放を行う。
【0044】
ヘッド駆動機構121は、サーボモータ、ステッピングモータ、又は、リニアモータ等からなり、後述する部品供給ステージ201に配置される部品501、及び、基板供給ステージ301に配置される基板502に対して、吸着ノズル111をZ方向に相対移動させる。
【0045】
直動装置1は、移動体5をX方向に沿って移動させることによって、吸着ノズル111を、部品供給ステージ201の直上(第1の位置)、及び、後述する基板供給ステージ301の直上(第2の位置)に移動する。
【0046】
図10に示すように、部品供給ステージ201は、部品501を支持するステージ202と、ステージ駆動機構203と、を有する。部品供給ステージ201は、ステージ202の上面が、第1の位置にある吸着ノズル111と対向するように配置される。ステージ駆動機構203は、サーボモータ、ステッピングモータ、又は、リニアモータ等のアクチュエータからなり、実装ヘッド101に対して、部品501を、X方向、Y方向、及び、Z方向を回転軸とする回動方向(Θ方向)に相対移動させる。
【0047】
基板供給ステージ301は、基板502を支持するステージ302と、ステージ駆動機構303と、図示しない実装位置計測センサと、を有する。基板供給ステージ301は、ステージ302の上面が、第2の位置にある吸着ノズル111と対向するように配置される。ステージ駆動機構303は、サーボモータ、ステッピングモータ、又は、リニアモータ等のアクチュエータからなり、実装ヘッド101に対して、ステージ302を、X方向、Y方向、及び、Θ方向に相対移動させる。
【0048】
実装位置計測センサは、少なくとも1つのカメラ等を有する。実装位置計測センサは、吸着ノズル111に吸着保持された部品501と、ステージ302の上面に配置された基板502の、水平面上における相対位置、及び、相対角度を計測する。
【0049】
以上説明したヘッド駆動機構121、及び、ステージ駆動機構203は、吸着ノズル111と部品501をZ方向、X方向、Y方向、及び、Θ方向に相対移動させる目的で設けられるものである。これらの相対移動は、実装ヘッド101、及び、部品供給ステージ201のどちらか、もしくは両方で行わせてもよい。例えば、固定されたステージ202に対して、吸着ノズル111をZ方向、X方向、Y方向、及び、Θ方向に相対移動させる構成でもよい。
【0050】
ヘッド駆動機構121、及び、ステージ駆動機構303に関しても同様であり、吸着ノズル111と基板502の相対移動は、実装ヘッド101、及び、基板供給ステージ301のどちらか、もしくは両方で行わせてもよい。
【0051】
次に、本実施形態における電子部品実装装置の実装動作を説明する。
【0052】
制御部(不図示)で、直動装置1及びステージ駆動機構203を駆動することにより、吸着ノズル111は第1の位置に移動し、部品501は吸着ノズル111の直下に移動する。また、制御部で、ヘッド駆動機構121を駆動することにより、吸着ノズル111は、下方向に移動する。部品501の上面と吸着ノズル111の下面が所定の距離になったとき、もしくは、部品501の上面と吸着ノズル111の下面が接したとき、吸着ノズル111の移動を止める。吸着穴112に負圧を供給することにより、吸着ノズル111は部品501を吸着保持する。ヘッド駆動機構121を駆動することにより、吸着ノズル111は、部品501を吸着保持した状態で上方向に所定量移動する。直動装置1及びステージ駆動機構303を駆動することにより、吸着ノズル111は部品501を吸着保持した状態で第2の位置に移動し、基板502は吸着ノズル111の直下に移動する。
【0053】
実装位置計測センサから取得した部品501と基板502の水平面上における相対位置、及び、相対角度に基づき、ステージ駆動機構303を駆動することにより、基板502を所定の実装位置、及び、実装角度に移動させる。ヘッド駆動機構121を駆動することにより、吸着ノズル111は、部品501を吸着保持した状態で下方向に移動する。基板502の上面と部品501の下面が所定の距離になったとき、もしくは、基板502の上面と部品501の下面が接したとき、吸着ノズル111の移動を止める。吸着穴112に正圧を供給することにより、吸着ノズル111は部品501を解放する。ヘッド駆動機構121を駆動することにより、吸着ノズル111は、上方向に所定量移動する。
【0054】
以上の動作により、部品501は基板502上の実装位置、及び、実装角度に配置される。
【0055】
吸着ノズル111の上下の移動方向は、直動装置1、及び、実装ヘッド101の構成部品の熱変形や、移動体5のロストモーション等によって、実装動作ごとにわずかに変化する。吸着ノズル111に吸着保持された部品501は、部品501と基板502が実装位置に位置決めされた後、吸着ノズル111を下方向に直線移動させることで、基板502上に配置される。したがって、吸着ノズル111の上下の移動方向の傾きが大きいと、実装位置計測センサで取得した相対位置と、基板502上に配置された部品501と基板502の相対位置の差が大きくなる。つまり、基板502に対する部品501の実装精度が悪化する。
【0056】
本発明の直動装置は、直動装置1及び実装ヘッド101の構成部品の熱変形、及び、移動体5のロストモーションを小さくすることができるため、実装動作ごとの吸着ノズル111の上下の移動方向の傾きの変化を小さくできる。したがって、基板502に対して部品501を高精度に実装することが可能である。
【0057】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態において、
図1及び
図2に例示した直動装置1では、可動子41をY方向(水平方向)に延在させて配置し、移動体5及び伝熱体6を、Z方向(鉛直方向)に延在させて配置したが、これに限定されず、例えば、
図11に示すように、可動子41をZ方向(鉛直方向)に延在させて配置し、移動体5及び伝熱体6を、Y方向(水平方向)に延在させて配置してもよい。勿論、可動子41、移動体5及び伝熱体6を、これ以外の方向に配置してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、直動装置1を電子部品実装装置に適用した例を示したが、これに限定されず、あらゆる部品の搬送、組立、位置決めの用途に適用することができる。また、直動装置1を、移動体5をステージとして構成したステージ駆動装置として使用してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 直動装置
2 ベース
3 リニアガイド機構
4 リニアモータ
5 移動体
6 伝熱体
7 スペーサ
8 位置センサ
9 給電ケーブル
10 遮熱板
31 ガイドレール
32 スライダ
41 可動子
42 固定子
42a 磁石列
42b フレーム
43 支持部
62 遮熱部
63 遮熱材
71 通風路
81 センサヘッド
82 リニアスケール
101 実装ヘッド
111 吸着ノズル
112 吸着穴
121 ヘッド駆動機構
201 部品供給ステージ
202 ステージ
203 ステージ駆動機構
301 基板供給ステージ
302 ステージ
303 ステージ駆動機構
501 部品
502 基板