(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049178
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】敷板
(51)【国際特許分類】
E01C 9/08 20060101AFI20230403BHJP
【FI】
E01C9/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158762
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】503171913
【氏名又は名称】サコス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】原 甲太
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AA08
2D051AA09
2D051AC10
2D051AF12
2D051AG12
2D051AG15
2D051AG16
2D051AG20
2D051DA12
2D051DB02
2D051DC01
2D051DC09
(57)【要約】
【課題】建築・土木工事現場やイベント会場などで使用される樹脂製軽量敷板の特に温度変化による反り上がりをさらに抑えることが出来、しかも表面のギラツキをなくし、また表面が滑らない軽量樹脂製の敷板を提供する。
【解決手段】本発明は各層がシート状をなし、最上面部となる第1層1は、合成樹脂製メッシュシートに金属薄膜をコーティングした遮熱シートにより構成され、第2層2は合成樹脂製シート材により構成され、各層を重ね、貫通穴を有する上金型を用いた熱溶着のプレス加工により、前記第1層1の表面に第2層2の合成樹脂製シート材が溶け出して、第1層1の金属色を解消させると共に、第1層表面の前記貫通穴のある箇所に貫通穴形状の突起8が形成され、前記貫通穴形状の突起表面には第2層2の合成樹脂製シート材が溶けて前記第1層1のメッシュ目から飛び出す球状の突起8が形成されることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各層がシート状をなし、最上面部となる第1層は、合成樹脂製メッシュシートに金属薄膜をコーティングした遮熱シートにより構成され、第2層は合成樹脂製シート材により構成され、
各層を重ね、貫通穴を有する上金型を用いた熱溶着のプレス加工により、前記第1層の表面に第2層の合成樹脂製シート材が溶け出して、第1層の金属色を解消させると共に、第1層表面の前記貫通穴のある箇所に貫通穴形状の突起が形成され、前記貫通穴形状の突起表面には第2層の合成樹脂製シート材が溶けて前記第1層のメッシュ目から飛び出す球状の突起が形成される、
ことを特徴とする敷板。
【請求項2】
各層がシート状をなし、最上面部となる第1層は、合成樹脂製メッシュシートに金属薄膜をコーティングした遮熱シートにより構成され、第2層は合成樹脂製シート材により構成され、第3層は合成樹脂製強化繊維メッシュ部材で、第4層は板状に形成された合成樹脂製の軟質部材で、第4層は第2層と同様に合成樹脂製強化繊維メッシュ部材で、第5層はシート状をなす熱可塑性合成樹脂材で、第6層は第3層と同様に合成樹脂製強化繊維メッシュ部材で、最下面部となる第7層は合成樹脂製のシート状で網目状のメッシュの隙間を有する硬質ポリエチレンで構成されてなり、
前記各層は前記第7層の上に前記第6層を重ねて前記第1層まで順番に積み重ね、熱溶着プレス加工により前記第6層が第7層の前記隙間を通過し、最下部面部のずれ止め部を形成すると共に、貫通穴を有する上金型を用いた熱溶着プレス加工により、前記第1層の表面に第2層の合成樹脂製シート材が溶け出して、第1層の金属色を解消させると共に、第1層表面の前記貫通穴のある箇所に貫通穴形状の突起が形成され、前記貫通穴形状の突起表面には第2層の合成樹脂製シート材が溶けて前記第1層のメッシュ目から飛び出す球状の突起が形成され、
前記第1層で遮熱による反りの防止を図り、第3層と第6層を構成する合成樹脂製強化繊維メッシュ部材の引張強度により樹脂の膨張・収縮を抑制して反りを防止した、
ことを特徴とする敷板。
【請求項3】
前記貫通穴形状の突起及び球状の突起は、敷板上を歩行する際の滑り止め材となる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の敷板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、敷板に係り、特に温度変化による反り上がりを抑えた軽量樹脂製の敷板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建築・土木工事現場やイベント会場などで地面など敷設面に敷設して使用する敷板は多用されており、例えば、工事現場において車両や重機が走行する搬入路に、あるいは路面を傷つけないための養生部材として、あるいは歩行者の安全通路確保のため、あるいはイベント会場などにおいて砂埃の発生を抑えるため、あるいは雨上がりのぬかるみから歩行路を確保するためなど様々な用途に用いられている。
【0003】
ここで、敷板には、不整地面に重機を走行させる場合など敷板自体に高い剛性が必要な場合には鉄板が用いられるが、敷設・撤去時にクレーンなどの揚重機を使用しなくてはならず、搬出入等運搬時も大型トラックやトレーラーが必要となる。
【0004】
また、改修工事やリニューアル工事、イベント会場などでは、既設の床または整備されたフラットな地面を保護する場合に樹脂製の軽量敷板が用いられている。鉄板に比べると敷板自体の剛性は劣るが、敷設面がほぼフラット面であれば車両や重機が走行する程度の使用には耐えられる。軽量のため、揚重機を使用することなく、作業者が1人または2人など少人数で持ち運びできるので、敷設・撤去時の作業性が良く、また、鉄板と比べて輸送コストも抑えることができるため、仮設・簡易養生として幅広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実願2015-1796号
【特許文献2】特願2016-107005号
【特許文献3】特願2006-227883号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、樹脂製軽量敷板は、材質である樹脂の特徴として、温度変化に影響を受けやすいという課題がある。
例えば、真夏の炎天下で直射日光が当たる環境では、敷板の表面温度が90℃まで上がる場合がある。敷板の表面が高温になると、敷板の裏面に対して表面が特に敷板の水平方向に膨張することから、敷板の中央部が僅かに盛り上がるような変形がみられる。この状態では、敷板の四つ角が地面に接しており、隣り合う敷板で生じる段差も僅かであることから、車両や重機の走行、歩行者の妨げになることは少ない。
【0007】
しかし、真夏の炎天下で直射日光が当たり、敷板の表面が高温となった状態で、夕立などの急な雨が降ったり、敷板に水がかかって、表面の温度が急激に冷やされた場合には、敷板の表面温度が20~30℃まで低下し、樹脂が収縮する。表面の樹脂が敷板の水平方向に急激に収縮すると、敷板の四つ角部が反り上がる状態となる。この状態では、隣り合う敷板で段差が生じ、車両や重機が走行したときに敷板がずれたり、歩行者が段差で躓くなどの危険があった。
【0008】
また、敷板の四つ角部が反り上がった状態では、突風などの強風が吹いた際に、敷板と床面の間に風が入り込みやすく、敷板が吹き飛ばされる可能性が非常に高くなる。
一度四つ角が反り上がると、再び地面に馴染んでフラットになるまでに長時間を要すため、状況によっては敷板を裏返して使用する場合があった。
【0009】
しかしながら、樹脂製軽量敷板は、裏表の使用が固定されている場合が多く、表面は、車両がスリップしたり、歩行者が足を滑らせないよう、凸状に突き出た模様を有し、裏面は、敷板が床面とずれにくいようグリップ力のある素材で形成される。そして、敷板の四つ角が反り上がったときの対策として、敷板を裏返して使用することは、本来の使用方法とは異なるだけでなく、敷板を裏返す時間と労力を要すという課題があった。
【0010】
また、反り防止には、アルミやステンレスなどの金属をシート状に加工した遮熱材で表面側をカバーすることが好ましいが、金属製のシートを表面に配置すると、金属色のギラツキが発生し、まぶしいとの課題がある。
【0011】
本発明は、前記従来の状況に鑑みて創案されたものであり、建築・土木工事現場やイベント会場などで使用される樹脂製軽量敷板の特に温度変化による反り上がりをさらに抑えることが出来、しかも表面のギラツキをなくし、また表面が滑らない軽量樹脂製の敷板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
各層がシート状をなし、最上面部となる第1層は、合成樹脂製メッシュシートに金属薄膜をコーティングした遮熱シートにより構成され、第2層は合成樹脂製シート材により構成され、
各層を重ね、貫通穴を有する上金型を用いた熱溶着のプレス加工により、前記第1層の表面に第2層の合成樹脂製シート材が溶け出して、第1層の金属色を解消させると共に、第1層表面の前記貫通穴のある箇所に貫通穴形状の突起が形成され、前記貫通穴形状の突起表面には第2層の合成樹脂製シート材が溶けて前記第1層のメッシュ目から飛び出す球状の突起が形成される、
ことを特徴とし、
または、
各層がシート状をなし、最上面部となる第1層は、合成樹脂製メッシュシートに金属薄膜をコーティングした遮熱シートにより構成され、第2層は合成樹脂製シート材により構成され、第3層は合成樹脂製強化繊維メッシュ部材で、第4層は板状に形成された合成樹脂製の軟質部材で、第4層は第2層と同様に合成樹脂製強化繊維メッシュ部材で、第5層はシート状をなす熱可塑性合成樹脂材で、第6層は第3層と同様に合成樹脂製強化繊維メッシュ部材で、最下面部となる第7層は合成樹脂製のシート状で網目状のメッシュの隙間を有する硬質ポリエチレンで構成されてなり、
前記各層は前記第7層の上に前記第6層を重ねて前記第1層まで順番に積み重ね、熱溶着プレス加工により前記第6層が第7層の前記隙間を通過し、最下部面部のずれ止め部を形成すると共に、貫通穴を有する上金型を用いた熱溶着プレス加工により、前記第1層の表面に第2層の合成樹脂製シート材が溶け出して、第1層の金属色を解消させると共に、第1層表面の前記貫通穴のある箇所に貫通穴形状の突起が形成され、前記貫通穴形状の突起表面には第2層の合成樹脂製シート材が溶けて前記第1層のメッシュ目から飛び出す球状の突起が形成され、
前記第1層で遮熱による反りの防止を図り、第3層と第6層を構成する合成樹脂製強化繊維メッシュ部材の引張強度により樹脂の膨張・収縮を抑制して反りを防止した、
ことを特徴とし、
または、
前記貫通穴形状の突起及び球状の突起は、敷板上を歩行する際の滑り止め材となる、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の反り上がりを抑えた樹脂製軽量敷板によれば、敷板の硬質膜と軟質層の間に、引張強度の高いポリエステル製の強化繊維シートが固着されており、敷板に急激な温度変化が生じた場合であっても、敷板の反り上がりを抑えることができ、車両や重機が走行しても敷板がずれたり、歩行者が段差で躓くなどの危険性を大幅に低減することができる。
また、突風などの強風が吹いた際に、敷板と床面の間に風が入り込みにくく、敷板が吹き飛ばされる危険性を抑えることが出来、さらには反り上がりをさらに抑えることが出来、しかも表面のギラツキをなくし、また表面が滑らない敷板を提供出来るとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の概略構成を説明する概略構成説明図(1)である。
【
図2】本発明の概略構成を説明する概略構成説明図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図に示す実施例に基づいて説明する。
本発明による敷板10は、各層が例えば長方形のシート状をなす7層から構成される。そしてその7層を例えばプレス加工して成形された敷板10の外形は、所定の厚み(例えば18mm)を有して例えば略長方形状に形成されるものとなる。尚、敷板の外形については前記略長方形状に限定されるものではない。
【0016】
まず、最上面部の第1層1は、主に遮熱のためのシートとなる。該第1層1は、合成樹脂製のメッシュシート、例えばポリエステル製のメッシュシートにステンレスなどの金属薄膜をコーティングして形成すると良い。かかる構成の第1層1は、反り防止、滑り防止さらには遮熱を企図して構成された遮熱シートとなる。
【0017】
尚、金属であるステンレス製のメッシュシートで前記遮熱シートを作製することも考えられるが、金属製では硬質過ぎるため表面に貼って他の層と一体化する作業が難しい。さらにはステンレス製メッシュシートにおける表面の金属的ギラツキが問題となる。反射してまぶしすぎる状態を招来する。すなわち、敷板10の表面がギラギラしていると、眩しくて作業の妨げとなるし、また金属製の遮熱シートでは剥離のトラブルも発生するからである。そこで、ポリエステル製のメッシュシートにステンレスなどの金属薄膜をコーティングして形成した。
【0018】
第1層1の下方には第2層2が重ねられる。この第2層2には、合成樹脂製の硬質シート部材が使用される。例えば硬質ポリエチレンで薄いシート状に、あるいは薄いメッシュシート状に構成したものが使用される。
【0019】
ここで、前記第1層1と第2層2は、プレス加工の際、熱溶着により一体化される。この際、第1層1の遮熱シートがメッシュ状なので、熱溶着時に第2層2を構成する硬質ポリエチレンの一部が第1層1であるメッシュ状に構成された遮熱シートの前記メッシュの網目から表面側に飛び出し略球状をなす突起8が大量に形成される。この突起8により敷板の表面がザラザラとした質感になることで、歩行時の滑り止め効果を発揮するものとなる。
【0020】
ところで、
図2に示すように、敷板10の表面には複数の山城の突起9も形成される。この複数の山城の突起9は、略楕円形の穴が設けられた金型を使ってプレス加工するために形成されるものである。すなわち、金型に設けられた略楕円形の穴が貫通穴となっているため、熱溶着でプレス加工した際、前記略楕円形の穴の箇所は、上からの押圧力がかからない。よって、敷板10の表面に複数の山城の突起9が形成される。また、第1層1であるメッシュ状の遮熱シートの網目から熱によって溶けた第2層を構成する硬質ポリエチレンの一部が飛び出し、これが潰されずに前記山城の突起9の上に球形状に残る。これが略球状をなす突起8である。
【0021】
山城の突起9も敷板10の上を歩行する際の滑り止め材として機能するが、山城の突起9の上に略球形状をなす突起8は大量に形成され、敷板10の表面にざらつきが生まれる。このように、突起8はさらなる滑り止めとして機能するものとなる。尚、前述したように、熱をかけながらプレスして溶着しているため、第1層1となる、金属薄膜をコーティングしたメッシュシートの網目から第2層2を構成する例えば、緑色をなす樹脂が溶けて表面に出て来る。よって、表面は溶けた樹脂に覆われ金属色ではなくなる。しかしながら、第1層1を構成する金属薄膜をした遮熱メッシュシートが完全に埋もれてしまうわけではないので、色合いとしてはややシルバーがかった例えば緑色となり、これが表面のギラツキを制御するものとなる。
【0022】
次に、第3層3には、難燃性を有する合成樹脂製の強化繊維メッシュ部材が使用される。例えば、ポリエステル製の強化繊維メッシュ部材が考えられる。
ナイロン製ではなくポリエステル製の強化繊維メッシュ部材とすることにより、ナイロンよりも引張強度が優れるものとなる。よってポリエステル製を採用したことで、樹脂の膨張・収縮をさらに抑制する。よって反り防止にさらに効果を発揮する。
【0023】
ここで、該強化繊維メッシュ部材は、長方形状で、例えば網目状のメッシュ目を有して構成され長手方向に引張強度が高くなるよう前記メッシュ目が配置されているものが使用される。すなわち、成形された敷板10は、主に長手方向端部に発生する反りが起こりやすく、かかる箇所の反りを防止する必要があるからである。
【0024】
さらに、第4層4には、板状に形成された合成樹脂製の軟質部材が使用される。例えば、発泡ポリエチレンによって略20mm程の厚さに構成された軟質部材が考えられ、該軟質部材で構成された第4層4は、後述するように、敷板10の軽量化と車両や重機が敷板10上を走行するときの衝撃吸収・防振の役割を果たすものとなる。
【0025】
さらに、第5層5には、例えば略2mm程の厚みを有するシート状をなす熱可塑性合成樹脂材が使用される。該熱可塑性合成樹脂材はEVA素材で構成される。EVA素材はゴムやPVCと比べても非常に軽量で、風雨や紫外線を浴び続けても劣化しにくい特徴がある。また、環境にやさしい素材で、寒い場所などでも硬くなりにくく、弾力性(クッション性)にも優れている。
【0026】
また、第6層6には、第3層3と同様の難燃性を有する合成樹脂製の強化繊維メッシュ部材が使用される。本発明において、第3層3と第6層6に、膨張・収縮を抑制し、もって反りを防止する強化繊維メッシュ部材を使用している。この2箇所に強化繊維メッシュ部材を配置することも本発明の大きな特徴となっている。
【0027】
そして、第7層7には、合成樹脂製のシート状で網目状のメッシュを有する例えば硬質ポリエチレンで構成された硬質部材が使用される。
ここで前記7層を積み重ね、これを熱溶着プレス加工すると、前記第6層6の略2mm程の厚みを有するシート状をなす熱可塑性合成樹脂材が溶けて前記第7層7の前記網目状をなすメッシュにおける隙間を通過し、熱溶着プレス加工した後の成形後は通過した熱可塑性合成樹脂材によって最下部の滑り止め部が形成されるものとなる。
すなわち、第6層6と第7層7の配置が逆転する場合がある。
以上、各々長方形シート状をなす各層の部材が上記の順番のように7層に重ねられた後、熱溶着プレス加工される。
【0028】
すると、熱溶着によって各層が接着すると共に、第6層6と第7層7の配置が逆転し、第6層6の部材である熱可塑性合成樹脂材によって最下部の滑り止め部が形成されるものとなる。これも本発明の敷板10の効果といえる。
【符号の説明】
【0029】
1 第1層
2 第2層
3 第3層
4 第4層
5 第5層
6 第6層
7 第7層
8 突起
9 山城の突起
10 敷板