(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049183
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】写真の裏面印刷用オフセット印刷機
(51)【国際特許分類】
B41F 7/02 20060101AFI20230403BHJP
B41F 21/04 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
B41F7/02 414
B41F21/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158771
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】521427597
【氏名又は名称】株式会社ジェット
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 広明
【テーマコード(参考)】
2C020
2C034
【Fターム(参考)】
2C020AA02
2C020AA09
2C034AA12
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、写真用紙の光沢表面に傷をつけずに、写真用紙の裏面に印刷できる、写真用紙の裏面印刷用のオフセット印刷機を提供することである。
【解決手段】前記課題は、本発明の印刷用紙のフィードローラーに胴入れセンサーを有し、そして前記印刷用紙が、印刷後に圧胴から排紙爪に受け渡される構造を有するオフセット印刷機であって、胴入れセンサーが設置されているフィードローラーの間隙部の2つの端部及び/又はフィードローラー表面が研磨されている、写真の裏面印刷用オフセット印刷機によって解決することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷用紙のフィードローラーに胴入れセンサーを有し、そして前記印刷用紙が、印刷後に圧胴から排紙爪に受け渡される構造を有するオフセット印刷機であって、
胴入れセンサーが設置されているフィードローラーの間隙部の2つの端部及び/又はフィードローラー表面が研磨されている、写真の裏面印刷用オフセット印刷機。
【請求項2】
前記フィードローラーの間隙部の2つの端部の研磨及びフィードローラー表面の研磨が番手#1000以上の耐水ペーパーによる研磨である、請求項1に記載の写真の裏面印刷用オフセット印刷機。
【請求項3】
前記排紙爪がストッパー及びグリッパーからなり、ストッパーが爪を有さない形状である、請求項1又は2に記載の写真の裏面印刷用オフセット印刷機。
【請求項4】
印刷後の排紙構造に、ロータリーガイドを有さない、請求項1~3のいずれか一項に記載の写真の裏面印刷用オフセット印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、写真の裏面印刷用オフセット印刷機に関する。本発明によれば、写真の表面に傷をつけることなく裏面のオフセット印刷をすることができる。
【背景技術】
【0002】
写真用紙の裏面には写真用紙のメーカー名が印刷されていることもあるが、通常ユーザーによって印刷されることは少ない。しかし、例えばブロマイドなどでは、タレントの所属などを裏面に印刷する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
写真は、インクジェットプリント又は銀塩プリントで印刷される。しかし、写真用紙の裏面の印刷は大量印刷であり、インクジェットプリント又は銀塩プリントではコストが高くなるため、大量印刷に適しているオフセット印刷が好ましい。しかしながら、写真用紙の裏面印刷専用のオフセット印刷機は、従来販売されていなかった。本発明者は、通常のオフセット印刷機を用いて、写真用紙の裏面に印刷を試みた。しかしながら、写真用紙の光沢表面は柔らかく傷がつきやすいため、通常のオフセット印刷機を用いると、写真用紙の裏面の印刷により光沢表面に多数の傷がつき、写真としての商品価値が著しく低下することがわかった。
従って、本発明の目的は、写真用紙の光沢表面に傷をつけずに、写真用紙の裏面に印刷できる、写真用紙の裏面印刷用のオフセット印刷機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、写真用紙の光沢表面に傷をつけずに、写真用紙の裏面に印刷できる、写真用紙の裏面印刷用のオフセット印刷機について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、オフセット印刷機の胴入れセンサーが設置されているフィードローラーの間隙部の2つの端部及び/又はフィードローラー表面を研磨することにより、写真用紙の光沢表面に傷をつけずに、写真用紙の裏面に印刷できることを見出した。また、オフセット印刷機は、排紙爪を有しているが(特許文献1)、本発明のオフセット印刷機は、排紙部の写真用紙を挟む排紙爪のストッパーが爪を有さない構造であることにより、写真用紙の光沢表面に傷をつけずに、写真用紙の裏面に印刷できることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]印刷用紙のフィードローラーに胴入れセンサーを有し、そして前記印刷用紙が、印刷後に圧胴から排紙爪に受け渡される構造を有するオフセット印刷機であって、胴入れセンサーが設置されているフィードローラーの間隙部の2つの端部及び/又はフィードローラー表面が研磨されている、写真の裏面印刷用オフセット印刷機、
[2]前記フィードローラーの間隙部の2つの端部の研磨及びフィードローラー表面の研磨が番手#1000以上の耐水ペーパーによる研磨である、[1]に記載の写真の裏面印刷用オフセット印刷機、
[3]前記排紙爪がストッパー及びグリッパーからなり、ストッパーが爪を有さない形状である、[1]又は[2]に記載の写真の裏面印刷用オフセット印刷機、及び
[4]印刷後の排紙構造に、ロータリーガイドを有さない、[1]~[3]のいずれかに記載の写真の裏面印刷用オフセット印刷機、
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の写真の裏面印刷用オフセット印刷機によれば、写真用紙の光沢表面に傷をつけずに、写真用紙の裏面に印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の写真の裏面印刷用オフセット印刷機の全体の概要を示した図である。
【
図2】本発明の写真の裏面印刷用オフセット印刷機の給紙構造部分を示した図である。
【
図3】本発明の写真の裏面印刷用オフセット印刷機に用いるロアーフィードローラーを示した図である。
【
図4】本発明の写真の裏面印刷用オフセット印刷機の排紙構造部分を示した図である。
【
図5】通常の排紙爪(A)及び本発明の写真の裏面印刷用オフセット印刷機に用いる排紙爪(B)を示した図である。
【
図6】通常のオフセット印刷機のロータリーガイド(A)及びロータリーガイドを有さない本発明の写真の裏面印刷用オフセット印刷機(B)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の写真の裏面印刷用オフセット印刷機は、印刷用紙のフィードローラーに胴入れセンサーを有し、そして前記印刷用紙が、印刷後に圧胴から排紙爪に受け渡される構造を有するオフセット印刷機であって、胴入れセンサーが設置されているフィードローラーの間隙部の2つの端部及び/又はフィードローラー表面が研磨されている。
【0009】
オフセット印刷は、平板印刷方法の1つであり、写真及び色の再現性に優れ、大量印刷に適した印刷方法である。版に付けられたインキを、ゴムブランケットなどの中間転写体に転写した後、紙などの被印刷体に印刷する。
本発明においては、
図1に示すように、版胴1にインキが供給され、版胴1からゴム胴2にインキが転写される。コム胴2に対接する圧胴3との間に写真用紙を挿入し、ゴム胴2から写真用紙にインキが印刷される。
【0010】
写真用紙は、サクションフィットによって吸い上げられ、アッパーフィードローラー4とロアーフィードローラー5との間を通り、コム胴2と圧胴3との間に挿入される。アッパーフィードローラー4は、
図2に示すように、いくつかのフィードローラー(
図2では8つのフィードローラー)で形成されている。一方、ロアーフィードローラー5は、
図3に示すように、胴入れセンサー6による感知のために、第1ロアーフィードローラー5-1と第2ロアーフィードローラー5-2とに分かれ、その間に間隙部8を有している。この間隙部8において、胴入れセンサー6によって写真用紙のコム胴2と圧胴3との間への挿入が検出される。
【0011】
本発明の写真の裏面印刷用オフセット印刷機では、写真用紙の裏面にタレントの所属事務所などを印刷する。従って、裏面がアッパーフィードローラー4に接触し、写真用紙の表面(例えば、光沢面又はシルク面)がロアーフィードローラー5に接触する。写真用紙の表面(例えば、光沢面又はシルク面)は柔らかいため、ロアーフィードローラー5の表面の凹凸によって傷がつくことがある。また、第1ロアーフィードローラー5-1の端部7-1及び第2ロアーフィードローラー5-2の端部7-2によって、傷がつくことがある。従来のオフセット印刷機では、ロアーフィードローラーに接触する面は印刷用紙の裏面である。従って、写真用紙の表面(例えば、光沢面又はシルク面)がロアーフィードローラーに接触することは想定していなかった。従って、ロアーフィードローラーにわずかな傷などがあると容易に写真用紙の表面に傷が生じることが分かった。
本発明においては、ロアーフィードローラー5(第1ロアーフィードローラー5-1及び第2ロアーフィードローラー5-2)の表面を耐水ペーペーで研磨し、平滑にしている。更に、第1ロアーフィードローラー5-1の端部7-1及び第2ロアーフィードローラー5-2の端部7-2を耐水ペーパーで研磨し、平滑にしている。従って、写真用紙の表面に傷が生じることを防ぐことができる。
前記耐水ペーパーは、本発明の効果が得られる限りにおいて、限定されるものではないが、番手#1000以上の耐水ペーパーが好ましく、番手#1500番の耐水ペーパーがさらに好ましく、番手#2000番の耐水ペーパーが最も好ましい。
前記フィードローラーの間隙部の2つの端部の研磨は、限定されるものではないが、前記耐水ペーパーによる研磨の前にダイヤモンドやすりによって研磨するのが好ましい。更に、限定されるものではないが、耐水ペーパーの研磨の後にコンパウンドによって研磨するのが好ましい。また、フィードローラー表面の研磨は、限定されるものではないが、耐水ペーパーの研磨の後にコンパウンドによって研磨するのが好ましい。
前記コンパウンドも本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えばシリカフィラー、チタニアフィラーおよびアルミナフィラー、炭酸カルシウムフィラー、又は硫酸カルシウムフィラーなどの鉱物フィラーを含むものが好ましく、特にアルミナフィラーを含むコンパウンドが好ましい。
本発明においては、ロアーフィードローラー5の表面及び端部7-1及び7-2が平滑であることによって、写真用紙の表面(例えば、光沢面又はシルク面)に傷がつくことを防止することができる。
【0012】
本発明の写真の裏面印刷用オフセット印刷機は、限定されるものではないが、好ましくは前記排紙爪がストッパー及びグリッパーからなり、ストッパーが爪を有さない形状である。
【0013】
コム胴2及び圧胴3との間を通過し、コム胴2により裏面に印刷された写真用紙は、排紙爪9(
図4)によって掴まれ、排紙される。
図5(A)に示すように、通常の排紙爪9は、ストッパー10及びグリッパー11からなり、ストッパー10が爪12を有しており、これによって印刷された写真用紙を強固に把持することができる。
しかしながら、写真用紙の裏面の印刷においては、ストッパー10の爪12が、写真用紙の表面に引っ掛かり、傷をつけることがある。本発明においては、
図5(B)に示すように、ストッパー10に爪を有しない構造になっている。すなわち、ストッパー10は、2つの爪なし端部13を有している。爪なし端部13は、写真用紙の表面を傷つけることがなく、写真用紙の表面(例えば、光沢面又はシルク面)に傷がつくことを防止することができる。更に、爪なし端部13を有するストッパー10及びグリッパー11からなる排紙爪によっても、印刷された写真用紙を強固に把持することができる。
【0014】
写真用紙とは、記録面に光沢処理を施すなど写真用に見栄えをよくする加工を施した用紙を意味する。具体的には、フォトペーパー、光沢フォトペーパー、マットフォトペーパー、コート紙、光沢写真用紙、絹目調写真用紙、又は印画紙が挙げられる。写真用紙は、前記のとおり記録面が加工されているため、傷がつきやすい。本発明の写真の裏面印刷用オフセット印刷機は、写真用紙の表面(記録面)に傷が生ずることを防ぐことができる。
【0015】
本発明の写真の裏面印刷用オフセット印刷機は、限定されるものではないが、好ましくは印刷後の排紙構造に、ロータリーガイドを有さない。
通常のオフセット印刷機は、
図6(A)に示すように、排紙構造にロータリーガイドを有しており、排紙された印刷用紙をロータリーガイドにより下方に抑える。しかしながら、ロータリーガイドは、凹凸を有しており、この凹凸により写真用紙の表面(記録面)に傷をつけることがある。
本発明の写真の裏面印刷用オフセット印刷機は、
図6(B)の写真に示すように、ロータリーガイドを有しておらず、写真用紙の表面(記録面)に傷が生じることを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明のオフセット印刷機は、写真の裏面印刷に有効に用いることができる。
【符号の説明】
【0017】
1・・・版胴;
2・・・ゴム胴;
3・・・圧胴;
4・・・アッパーフィードローラー;
5・・・ロアーフィードローラー;
5-1・・・第1ロアーフィードローラー;
5-2・・・第2ロアーフィードローラー;
6・・・胴入れセンサー;
7-1・・・第1端部;
7-2・・・第2端部;
8・・・間隙部;
9・・・排紙爪;
10・・・ストッパー;
11・・・グリッパー;
12・・・爪;
13・・・爪なし端部;
14・・・2枚検知センサー;
15・・・ロータリーガイド;