(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000492
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】調剤支援システム
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101348
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100106345
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 香
(72)【発明者】
【氏名】大村 義人
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047KK06
4C047KK09
4C047KK18
4C047KK25
4C047KK31
(57)【要約】
【課題】処方オーダエントリシステム等を介さなくても施用現場で調製歴データ等を施用者に向けて提示することができるように調剤支援システムを改良する。
【解決手段】調剤サーバ60の保持する調製歴データを近距離無線通信タグ65に書き込む手段(61,62)を調剤現場に設ける。また、施用現場には施用カート70を配置し、更に、カート70に制御装置71などを搭載して、電子データ読出装置73にてタグ65からデータを取得し、該データに基づきLAN経由で最新の調製歴データを取り直し、該データを表示装置75に表示させるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処方指示を電子データ化した処方データのうち調剤に係る部分を含む調剤データを取得する手段と、調剤現場の調剤装置へ前記調剤データを送信する手段と、前記調剤装置からその時までの調剤状況に係る調製歴データを取得する手段とを具備した調剤支援システムにおいて、
その時までの調剤状況に係る第1調製歴データを近距離無線通信タグに書き込むタグ書込手段が前記調剤現場に設けられており、
施用カートが施用現場に配置されており、前記施用現場と前記調剤現場とに通信範囲が及ぶ域内通信設備が設けられており、
前記近距離無線通信タグから保持データを取得する電子データ読出装置と、前記電子データ読出装置の取得データに基づき前記域内通信設備を介してその時までの調剤状況に係る第2調製歴データを取得するデータ取得手段と、前記第2調製歴データを表示する表示手段とが、前記施用カートに搭載されている、ことを特徴とする調剤支援システム。
【請求項2】
前記調剤現場の監査装置へその時までの調剤状況に係る調製歴データを送信する手段と、前記監査装置からその時までの監査状況に係る第1監査データを取得する手段とが、前記調剤現場に設けられており、
前記タグ書込手段が前記近距離無線通信タグへの書き込みに際して前記第1調製歴データに加えて前記第1監査データも書き込むようになっており、
前記施用カートに搭載されている前記データ取得手段が、前記域内通信設備を介して前記第2調製歴データを取得する際にその時までの監査状況に係る第2監査データも取得するようになっており、前記施用カートに搭載されている前記表示手段が、前記第2調製歴データの表示に加えて前記第2監査データの表示も行うようになっている、ことを特徴とする請求項1記載の調剤支援システム。
【請求項3】
前記近距離無線通信タグが前記電子データ読出装置の電子データ読出可能範囲に入るとそれに応じて前記電子データ読出装置による前記近距離無線通信タグからのデータ取得が行われるとともに前記データ取得手段による前記域内通信設備を介したデータ取得も行われるようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された調剤支援システム。
【請求項4】
前記域内通信設備を介して前記データ取得手段が行うデータ取得において不具合が生じたときには、前記表示手段への表示が前記電子データ読出装置の取得データに基づいて行われるようになっている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載された調剤支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処方指示に基づいて薬剤を調剤する調製作業やその作業を行う調剤者を支援するための調剤支援システムに関し、詳しくは、その支援対象を調剤にとどまらず投薬等の施用作業ひいては医師や看護師といった施用者にまで拡張した調剤支援システムに関する。
更に詳しくは、調剤済み薬剤をカート(手押車)にて施用現場へ運んでから患者に投与するところまで支援する調剤支援システムに関し、より具体的には、施用現場において処方指示に基づく作業内容を提示するにとどまらず調製結果までも施用者に提示することができる調剤支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病気の診察や施術に加えて薬剤の調剤まで行う病院では(
図2(a)参照)、その多くが、病棟のうち地上の一階に外来部門を配し、二階や三階といった上層階に入院部門を配し、病棟のうち地下に薬剤部門を配している。
そして、外来部門や入院部門で診察を行って処方箋が発行されると、その処方箋やその内容(処方指示)を電子データ化した処方データが薬剤部門に送られて薬剤の調剤(調製作業)が行われ、その調剤済み薬剤の多くがカート(手押車,例えば特許文献1,2参照)に乗せられて地下の薬剤部門(調剤現場)から地上の外来部門や入院部門(施用現場)へ運ばれ、そこで調剤済み薬剤を患者に投与する投薬が行われる。
【0003】
そのような調剤現場(薬剤部門)や施用現場(外来部門,入院部門)には、電気や電波のノイズを嫌う精密機器の設置先といった一部を除き、域内の多くの場所に、有線LANや無線LAN(Local Area Network)といった域内通信設備が置かれている(
図2(a)参照)。そして、処方指示に基づく調剤を支援する調剤支援システムに属する調剤現場の調剤機器も、処方指示に基づく投薬を支援する施用支援システムに属する施用現場の投薬支援機器も、上記のLAN(域内通信設備)を介するデータ通信を利用して所要の処方データを取得するようになっている(例えば特許文献2~6参照)。
【0004】
これらの調剤支援システムと施用支援システムとについて、本発明の前提となる従来の構成部分等の典型例を簡潔に説明する(
図2(b)のブロック図を参照)。
このシステムは、処方箋の内容である処方指示を電子データ化して入力することで処方データを取得し保持する汎用コンピュータ主体の処方オーダエントリシステム10と、処方オーダエントリシステム10から処方データをそのまま調剤データとして或いは処方データのうち調剤に係る部分を抽出したデータを調剤データとして受け取り保持する汎用コンピュータ主体の調剤サーバ20と、調剤現場に設置されていて調剤サーバ20の傘下で稼動する調剤機器21や監査装置25と、処方オーダエントリシステム10から処方データを受け取り保持する汎用コンピュータ主体の投薬サーバ30と、施用現場に設置されていて投薬サーバ30の傘下で稼動する投薬支援機器(31,32)とを備えている。
【0005】
調剤機器21の具体例としては、錠剤や散薬を分包する薬剤分包機や、PTP包装薬剤を払い出すPTP払出装置、注射薬の払出や計量調製などを実施や支援する注射薬取扱装置などが、挙げられる。このような調剤装置21は、調製の内容や結果を調製歴データとして調剤サーバ20にアップロードするのに加え、その調製歴データの要部をラベルプリンタ等の文字印刷装置22にて文字印刷物41に印字等にて記すとともに、上記の調製歴データに係る検索用コードをバーコードプリンタ等の符号印刷装置23にて符号印刷物42に記すようになっている。そして、それらの印刷物41,42は、図示した薬液ボトルや図示を割愛した薬袋といった薬剤収容体40に貼り付けられる。
【0006】
監査装置25は、上記の符号印刷物42を読み取れる符号読取装置26が付設されていて、調製の済んだ薬剤収容体40に貼り付けられている符号印刷物42を符号読取装置26に読み取らせると、それに対応した調製歴データを調剤サーバ20から取得して、その調製歴データ等と監査段階の測定データ等とを付き合わせるといった処理を行って、調製の適否を判定するとともに、その判定結果等を測定データとともに監査データとして保持するようになっている。そして、かかる監査で不具合が見つからなければ、調剤済み薬剤が、薬剤収容体40に収容された状態でトレー(盆)やカート(手押車)に載せられ、施用現場へ移送されてから、患者への投薬に供される。
【0007】
投薬サーバ30と投薬支援機器(31,32)との間には、病室などの区画単位ごとに設けられてデータの転送や処理の分担など担う中継装置や投薬支援制御装置なども存在するが、説明の簡明化等のため、そのような中継装置や投薬支援制御装置などは省いて投薬サーバ30が投薬支援制御装置を兼ねている簡素なシステムを具体例として説明する。
この場合、投薬サーバ30は、処方オーダエントリシステム10から送信されて来た処方データを受信して保持するとともに、バーコードリーダ等の符号読取装置31から読取データを取得するようになっている。薬剤収容体40の符号印刷物42に加えて、患者の腕などに巻かれた図示しないリストバンドの患者タグも、符号読取装置31の読取対象になっている。
【0008】
そして、それらの読取データを投薬サーバ30が取得すると、投薬サーバ30は、保持している多数の患者の処方データから、該当する患者の処方データを抽出し、その抽出データを表示装置32のパネルディスプレイ等に表示するようになっている。
そのため、施用支援システムは、患者や薬剤といった投薬や施用の内容と表示装置32の表示内容とを施用者が照合確認するのを下支えすることで、施用現場における患者の取り違えや薬剤の投与ミスといった不所望な事態の発生を未然に防止や抑制することに役立っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005-040373号公報
【特許文献2】特開2012-130361号公報
【特許文献3】特開2013-255728号公報
【特許文献4】特開2104-008322号公報
【特許文献5】特開2014-106944号公報
【特許文献6】特開2015-167762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の調剤支援システムや施用支援システムでは、調剤サーバ20の開発主体と処方オーダエントリシステム10や投薬サーバ30の開発主体とが異なる場合が殆どであり、処方オーダエントリシステム10から調剤サーバ20へ渡される調剤データのフォーマット(形式)は調剤サーバ20の開発側へ明かされるが、他のデータの送受については開示や連携が難しく、調製歴データや監査データといった調剤サーバ20の固有データを投薬サーバ30へ引き渡せるように両部門の装置等を改修するのは、処方オーダエントリシステム10経由で間接的に引き渡す手法であれ、処方オーダエントリシステム10をバイパスしてLAN経由で直接的に引き渡す手法であれ、実現が困難であった。
【0011】
そのため、施用現場で投薬サーバ30を利用して投薬を行う際には、投薬作業に先だって、薬剤収容体40の符号印刷物42に加えて患者の腕等の患者タグをも符号読取装置31に読み取らせる作業を行って患者と薬剤収容体40との一致不一致を投薬サーバ30にチェックさせるとともに、処方データのうち該当する部分の抽出データが表示装置32に表示されるのを待って、その表示内容と薬剤収容体40の文字印刷物41の印刷内容とを目視等で突き合わせて整合を確認する作業等を行うことが、施用者に求められる。
【0012】
また、調剤現場での調剤作業に伴って取得されて調剤サーバ20の保持するところとなった調製歴データや監査データなどの謂わば「調製固有データ」は、投薬サーバ30には転送されないため、表示装置32に表示されることもないので、施用現場で調製歴データ等の調製固有データを参照するには、調剤現場で表示データを紙にメモしたりデータ表示をカメラで撮ったり等して人手でオフライン媒体を作成し、その媒体を薬剤収容体40に添えて調剤現場から施用現場へ移送しなければならない。
その作業は、手間が掛かるばかりか、精神的な負担も大きい。
【0013】
そこで、処方オーダエントリシステムや投薬サーバを介さなくても簡便かつ容易に施用現場で調製歴データ等の調製固有データを施用者に向けて提示することができるように調剤支援システムを拡張することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の調剤支援システムは(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、
処方指示を電子データ化した処方データのうち調剤に係る部分を含む調剤データを取得する手段と、調剤現場の調剤装置へ前記調剤データを送信する手段と、前記調剤装置からその時までの調剤状況に係る調製歴データを取得する手段とを具備した調剤支援システムにおいて、
その時までの調剤状況に係る第1調製歴データを近距離無線通信タグに書き込むタグ書込手段が前記調剤現場に設けられており、
施用カートが施用現場に配置されており、前記施用現場と前記調剤現場とに通信範囲が及ぶ域内通信設備が設けられており、
前記近距離無線通信タグから保持データを取得する電子データ読出装置と、前記電子データ読出装置の取得データに基づき前記域内通信設備を介してその時までの調剤状況に係る第2調製歴データを取得するデータ取得手段と、前記第2調製歴データを表示する表示手段とが、前記施用カートに搭載されている、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の調剤支援システムは(解決手段2)、上記解決手段1の調剤支援システムであって、
前記調剤現場の監査装置へその時までの調剤状況に係る調製歴データを送信する手段と、前記監査装置からその時までの監査状況に係る第1監査データを取得する手段とが、前記調剤現場に設けられており、
前記タグ書込手段が前記近距離無線通信タグへの書き込みに際して前記第1調製歴データに加えて前記第1監査データも書き込むようになっており、
前記施用カートに搭載されている前記データ取得手段が、前記域内通信設備を介して前記第2調製歴データを取得する際にその時までの監査状況に係る第2監査データも取得するようになっており、前記施用カートに搭載されている前記表示手段が、前記第2調製歴データの表示に加えて前記第2監査データの表示も行うようになっている、ことを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の調剤支援システムは(解決手段3)、上記解決手段1,2の調剤支援システムであって、
前記近距離無線通信タグが前記電子データ読出装置の電子データ読出可能範囲に入るとそれに応じて前記電子データ読出装置による前記近距離無線通信タグからのデータ取得が行われるとともに前記データ取得手段による前記域内通信設備を介したデータ取得も行われるようになっていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の調剤支援システムは(解決手段4)、上記解決手段1~3の調剤支援システムであって、
前記域内通信設備を介して前記データ取得手段が行うデータ取得において不具合が生じたときには、前記表示手段への表示が前記電子データ読出装置の取得データに基づいて行われるようになっている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
このような本発明の調剤支援システムにあっては(解決手段1)、薬剤部門では、調剤データに基づく調剤現場の調剤装置の稼動等によって調製歴データが作成され、それらの電子データすなわち調剤データや調製歴データの電磁記録データが調剤サーバなど調剤現場の装置によって第1調製歴データ等として保持されるところ、更に、調剤現場で、少なくとも第1調製歴データが近距離無線通信タグに書き込まれる。これによって、調剤済み薬剤を施用現場へ移送するに際して第1調製歴データ書き込み済みの近距離無線通信タグを調剤済み薬剤に添えて施用現場へ移送することが可能になる。
【0019】
一方、施用現場では、そこで使用される施用カートに投薬支援のため電子データ読出装置が搭載されるとともに調製歴データ取得手段や調製歴データ表示手段を具現化した機器も搭載されている。
そして、調剤済み薬剤が施用カートに載せられるとその調剤済み薬剤に添えられている近距離無線通信タグから第1調製歴データ等が電子データ読出装置によって読み出されることが可能になり、更にそのデータ読出が行われると、それで取得されたデータ等に基づいて調剤サーバなど調剤現場の装置から域内通信設備を介して最新の調製歴データである第2調製歴データが取り直され、この第2調製歴データが調剤作業者に表示される。
【0020】
このように近距離無線通信タグが調剤済み薬剤に随伴して電子データ読出装置のアクセス可能範囲に入って更にデータ取得までなされると、添付先の調剤済み薬剤が施用カートに載せられたと擬制されるとともに、調剤現場の装置から域内通信設備を介して最新の調製歴データが取り直されて表示される。これにより、投薬を担う施用者は、旧くなったかもしれない調製歴データでなく、現時点の最新データを参照することが可能となる。
したがって、この発明によれば、調剤システムの僅かな機能拡張により、処方オーダエントリシステムや投薬サーバを介さなくても簡便かつ容易に最新の調製歴データを施用現場で施用者に向けて提示することができるようになる。
【0021】
また、本発明の調剤支援システムにあっては(解決手段2)、調製歴データに加えて監査データまでもが調剤現場でも施用現場でも上述の解決手段1での扱いと同様に扱われるようにしたことにより、調剤システムの僅かな機能追加により、処方オーダエントリシステムや投薬サーバを介さなくても簡便かつ容易に最新の監査データ等を施用現場で施用者に向けて提示することができるようになる。
【0022】
さらに、本発明の調剤支援システムにあっては(解決手段3)、近距離無線通信タグが電子データ読出装置のアクセス可能範囲に入ると、自動でアクセスがなされて近距離無線通信タグからデータが取得されるとともに、タグ添付先の調剤済み薬剤が施用カートに載せられたとの擬制がなされて、やはり自動的に調剤現場の装置から域内通信設備を介して最新の調製歴データや監査データが取り直されて表示される。
これにより、投薬を担う施用者は、調製歴データ等の更新作業を行うことなく更には意識すらするまでもなく、以前の調製歴データ等でなく現時点の最新データを参照することができる。
【0023】
また、本発明の調剤支援システムにあっては(解決手段4)、域内通信設備の不調等に起因して域内通信設備を介する最新データ(第2調製歴データや第2監査データ)の取得に不具合が生じたときには、調製歴データや監査データといった所要データを近距離無線通信タグの保持データ(第1調製歴データや第1監査データ)にて代用することができるようにしたことにより、システムの稼働率を高めることができる。
なお、そのときの代用データと最新データとの相違点については、施用現場の施用者から調剤現場の調剤作業者への問い合わせ等にて確認や取得することが可能なうえ、相違点が多く生じることは滅多に無いので、作業負担の増加は僅少にとどまる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施例1について、調剤支援システム及び施用支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】従来の調剤支援システム等の構成を示し、(a)がシステム設置先の病院の概略図、(b)が調剤支援システム及び施用支援システムのブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
このような本発明の調剤支援システムについて、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1により説明する。
図1に示した実施例1は、上述した解決手段1~4(出願当初の請求項1~4)を総て具現化したものである。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、各部の機械的構造図や回路図などは割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心にブロック図にて示した。
また、それらの図示に際し従来と同様の構成要素には同一の符号を付して示したので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【実施例0026】
本発明の調剤支援システムの実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1は、改良された調剤支援システム及び施用支援システムの構成を示すブロック図である。
【0027】
この
図1に示したシステムは、既述した
図2(b)のシステムを部分的に改造したものであり、同一の符号を付して示した構成要素10,21~23,26,30~32,40~42は、従来品を踏襲したものなので、繰り返しとなる詳細な説明は割愛する。
以下、調剤サーバ20の機能を強化した調剤サーバ60と、調剤現場に設けられていた監査装置25を改造した監査装置61と、調剤現場に追加された電子データ書込装置62及びそのアクセス対象である近距離無線通信タグ65と、施用現場に新たに導入された施用カート70(手押車)とその搭載物71~75とについて詳述する。
【0028】
先ず、調剤現場については、薬剤収容体40に対して文字印刷物41や符号印刷物42と同様に貼り付けることができる近距離無線通信タグ65も使用するために、タグ書込手段として、電子データ書込装置62が導入され、その書込を本実施例では監査装置61が制御するようになっている。
電子データ書込装置62は、監査装置61から書込指令とともに書込データが送られてくると、そのデータを近距離無線通信タグ65に書き込むようになっている。
【0029】
近距離無線通信タグ65は、例えばRFID(Radio Frequency IDentification)方式の近距離無線通信にて電子データを書き込むことに加えて読み出すことも行えるものであり、電子タグやICタグとも呼ばれる小さな札状体に形成されている。
監査装置61は、近距離無線通信タグ65に対するデータ書込機能が追加されている。具体的には、監査担当者等の操作にて監査装置61に対して近距離無線通信タグ65へのデータ書込が指示されると、それに応じて、符号印刷物42に印刷したのと同じか一対一対応の検索用コードに加え、調剤サーバ60の保持している調製歴データ(即ちその時までの調剤状況に係るデータ,第1調製歴データ)や監査データ(即ちその時までの監査状況に係るデータ,第1監査データ)のうち該当するデータを調剤サーバ60から取得して、そのデータを書込指令とともに電子データ書込装置62へ送るようになっている。
【0030】
調剤サーバ60は、既設のLAN(域内通信設備)を介して処方オーダエントリシステム10から調剤データの受信等を行う調剤サーバ20の通信機能を維持しているのに加えて、通信規約のうちアプリケーション層といった上層の部分について処方オーダエントリシステム10の通信と干渉しない規約を採用したり既知の設定値で通信相手を限定や特定するといったことで処方オーダエントリシステム10や投薬サーバ30等のLAN利用と干渉することなく施用カート70搭載の制御装置71とデータを送受信できる通信機能も具備している。そして、制御装置71からLAN経由で調製歴データや監査データを要求されると、該当するデータ(即ちその時までの調剤状況に係るデータからなる第2調製歴データや,その時までの監査状況に係るデータからなる第2監査データ)をLAN経由で要求装置(71)へ送るようになっている。
【0031】
次に、施用現場については、少なくとも一台の施用カート70が導入されて看護師等の施用者が利用できる場所に置かれる。
施用カート70は、手押しでも軽快に移動させうる小形の運搬車両であり、それには、小型のコンピュータを主体とした制御装置71と、それに動作電力を供給する電池72が搭載されている。更に、施用カート70には、制御装置71の周辺機器として、上述の電子データ書込装置62と同じ方式で近距離無線通信タグ65にアクセスする電子データ読出装置73と、既述した符号読取装置31と同じく薬剤収容体40の符号印刷物42に加えてリストバンド等の患者タグも読み取れるバーコードリーダ等の符号読取装置74と、既述した表示装置32と同様にパネルディスプレイ等からなり処方データや調製歴データさらには監査データに係る画面表示を担う表示装置75も、搭載されている。
【0032】
電子データ読出装置73は、薬剤収容体40に随伴した近距離無線通信タグ65が電子データ読出装置73のアクセス範囲である電子データ読出可能範囲に入ると、そのことを自動検出して、近距離無線通信タグ65から保持データを読み取り、具体的には既述の検索用コードとそれに対応する調製歴データや監査データを読み取り、それを制御装置71に引き渡すところまで、自動で行うようになっている。
その調製歴データは、電子データ書込装置62でのデータ書き込み時までの調剤状況に係るものなので第1調製歴データに該当し、その監査データは、電子データ書込装置62でのデータ書き込み時までの監査状況に係るものなので第1監査データに該当する。
【0033】
符号読取装置74は、手動操作式なので、施用者が手作業で読み取り操作を行うと、その読取データを制御装置71に引き渡すようになっている。
制御装置71は、そのような符号読取装置74から符号印刷物42の読取データと患者タグの読取データとを取得すると、両データの値が一致しているか或いは少なくとも既定の対応規定などの下で適切に対応しているかを確認するようになっている。そして、その確認が否定的な場合には、その旨を表示装置75に表示して誤施用を防止するようになっている。
【0034】
また、制御装置71は、データ取得プログラム(データ取得手段)の実行によって、電子データ読出装置73から検索用コードと調製歴データと監査データといった取得データを受け取るとそれらをデータ保持するとともに、そのうちの検索用コード即ち電子データ読出装置73にて近距離無線通信タグ65から取得した検索用コードと、上述した符号読取装置74にて符号印刷物42から取得した検索用コードとを比較して、両コードが一致するか或いは少なくとも適切に対応しているかを確認し、その確認が否定的な場合には、符号印刷物42か近距離無線通信タグ65かの付け間違い等の不具合が想定されるので、その旨を表示装置75に表示して誤施用を防止するようにもなっている。
【0035】
さらに、制御装置71は、やはりデータ取得プログラム(データ取得手段)にて、電子データ読出装置73にて近距離無線通信タグ65から取得した上記の検索用コードを用いて調剤サーバ60に対しLAN経由で即ち既述の域内通信設備を介してデータ送信を要求することにより、その時点で最新の調製歴データ(第2調製歴データ)や監査データ(第2監査データ)も取得し、これらもデータ保持するようになっている。そして、投薬サーバ30によって表示装置32に表示される処方データに対応する実際の調製歴データや監査データとして、LAN経由で得たデータ即ち上述の第2調製歴データや第2監査データを表示装置75に表示するようになっている。
【0036】
もっとも、LAN(域内通信設備)そのものの不具合が原因であれ、調剤サーバ60等の不具合が原因であれ、既述の域内通信設備を介して調剤サーバ60側から施用カート70の制御装置71が検索用コードであれ第2調製歴データや第2監査データであれ所要のデータを取得できなかったときには、制御装置71が、その旨の表示を表示装置75に行ったうえで、電子データ読出装置73にて近距離無線通信タグ65から取得した監査時の第1調製歴データや第1監査データを表示装置75に表示するようにもなっている。
【0037】
このような実施例1の調剤支援システムについて、その使用態様及び動作を、上述の
図1を引用して説明する。
【0038】
既述したように、外来部門や入院部門で診察が行われて処方箋が発行されると、その処方データが、調剤データとなって薬剤部門の調剤サーバ60に送られて調剤現場での調製作業に供されるとともに、処方データのまま投薬サーバ30にも送られて施用現場での投薬作業にも供される。
【0039】
そして、先ず従来通りの部分を簡潔に述べると、調剤現場では、調剤データが調剤サーバ60から適宜な調剤装置21へ配信され、それを用いた自動や半自動の調剤作業が遂行され、その調剤状況を記した調製歴データが、調剤サーバ60に送られて保持される。それから、調製歴データの要部が文字印刷装置22によって文字印刷物41に記され、調製歴データの検索用コードが符号印刷装置23によって符号印刷物42に記され、それら41,42が手作業等によって薬袋やボトル等の薬剤収容体40に貼り付けられる。
【0040】
また、その後の調剤監査では、薬剤収容体40の符号印刷物42が符号読取装置26にて読み取られ、その符号の割り振りにて紐付けされている調剤データや調製歴データが調剤サーバ60から監査装置25に取得され、監査装置25を用いた自動処理や人手作業などで調剤結果の適否判別が行われ、その監査状況を記した監査データが監査装置61から調剤サーバ60に送られて保持される。
【0041】
さらに、それから、従来には無かった新たな事項として次のことが行われる。すなわち、調製歴データ又はそれに監査データを加えたデータのうち監査対象になった薬剤収容体40に係るデータ(第1調製歴データや第1監査データ)が、そのときの監査装置61の保持データだけで足りなければ調剤サーバ60から監査装置61への追加データの送受信なども行われたうえで、監査装置61の制御下で電子データ書込装置62にて近距離無線通信タグ65に書き込まれる。
そして、この近距離無線通信タグ65も、文字印刷物41や符号印刷物42と同様に、人手作業などで薬剤収容体40に貼り付けられる。その薬剤収容体40は調剤の最終監査で異常が無ければトレーやカートで施用現場へ移送され、患者への投薬に供される。
【0042】
次に、施用現場では、既述した従来の投薬支援制御装置(投薬サーバ30等)や投薬支援機器(31,32)に加えて又は代えて施用カート70を使用することが可能なので、近距離無線通信タグ65が貼り付けられた薬剤収容体40を含む処方薬剤を施用するときには、可能なら施用カート70を使用するのが望ましい。
既存の投薬支援制御装置の投薬支援機器(31,32)と施用カート70とを併用したり使い分けるのも好ましく、例えば、施用準備時には投薬支援制御装置(30等)の投薬支援機器(31,32)と施用カート70とを近くに並べて準備作業を行い、施用実行時には施用カート70を患者の近くに移動させて投薬を行うと、利便性が更に高まる。
【0043】
施用カート70が使用可能なときには、先ず薬剤収容体40や他の薬剤を施用単位で施用カート70に載せる。すると、その搭載に伴って大抵は搭載途中で薬剤収容体40については近距離無線通信タグ65が電子データ読出装置73のアクセス可能範囲に入るので、検索用コードに加えて調剤時の調製歴データや監査データ(第1調製歴データや第1監査データ)が、電子データ読出装置73によって読み出され、施用カート70の制御装置71によって取得される。さらに、その検索用コードを使用して、最新の調製歴データや監査データ(第2調製歴データや第2監査データ)も、LAN等の域内通信設備を介して、制御装置71によって取得されデータ保持される。
【0044】
そして、基本的には、最新の調製歴データや監査データ(第2調製歴データや第2監査データ)が以降の処理に用いられるが、LANやその他の不具合などによって域内通信設備を介する調製歴データ等の取得が達成できなかったときには、その旨の表示が施用カート70の表示装置75になされるので、施用者は調製歴データ等の参照を諦めることもできるが、近距離無線通信タグ65の保持データで代用する旨の指示を施用者が施用カート70の制御装置71に対して与えると、制御装置71による以後の処理については、近距離無線通信タグ65への書き込み時に調剤サーバ60に保持されていた調製歴データや監査データ(第1調製歴データや第1監査データ)が用いられる。
こうして、施用現場で薬剤収容体40を施用カート70に載せると、通常は自動的に、LAN等での域内通信が不調なときでも少々の確認操作を行うことで、薬剤収容体40に対応した調製歴データ等が施用カート70に搭載の制御装置71に取得される。
【0045】
そのため、施用者は、施用現場での施用実行に先立ち、従来使用の符号読取装置31の操作等とほぼ同様のことを符号読取装置74にて行うことで符号印刷物42と患者タグとの読取作業を行うことができ、そうすれば、従来と同様に患者と薬剤との対応の適否がチェックされるとともに処方データの抽出データの表示が可能になるのに加えて、従来には無かった符号印刷物42と近距離無線通信タグ65との対応の適否までもチェックされ、さらに、やはり従来には無かった調製歴データ等の表示まで行われる。
【0046】
このように、本実施例の調剤支援システムを導入した病院にあっては、調剤現場では、そこでの調剤作業に伴って取得されて調剤サーバ60の保持するところとなった調製歴データや監査データなどの調整時「調製固有データ」に加えてそれに係る「検索用コード」が近距離無線通信タグ65へのデータ書き込みと近距離無線通信タグ65の薬剤収容体40への貼り付けとによって薬剤収容体40に付帯されるようにし、更に、施用現場では、最新の「調製固有データ」が上記「検索用コード」の利用にて処方オーダエントリシステム10や投薬サーバ30を迂回して取得できるようにもしたことにより、施用現場でも、最新の「調製固有データ」を容易に参照できて、投薬量等を細かく調整することができる。
【0047】
[その他]
上記実施例では、施用現場で使用される医療機器が点滴用のポンプであるといった事例については説明を割愛したが、ポンプを含む点滴用の設備まで施用カート70に搭載したような場合にも、点滴速度データ等の点滴制御データをも近距離無線通信タグ65等に保持させ、それをポンプの動作制御に用いるといったことにより、点滴速度などのデータを人手で入力・設定しなくても済むので、作業の能率向上や作業ミスの防止を期することができる。
【0048】
上記実施例では、近距離無線通信タグ65に対して調製歴データや監査データを書き込む電子データ書込装置62が、近距離無線通信タグ65に書き込むデータを監査装置61から受け取るようになっていたが、これは必須でなく、近距離無線通信タグ65に書き込むデータを調剤サーバ60から受け取るようになっていても良い。
【0049】
上記実施例では、調製歴データや監査データを域内通信設備(LAN)経由で施用カート70の制御装置71へ送信するものが、調剤サーバ60になっていたが(
図1において調剤側から投薬側へ至る矢付き実線を参照)、これは必須でなく、監査装置61など他の装置であっても良い(
図1において調剤側から投薬側へ至る矢付き破線を参照)。
【0050】
上記実施例では、符号印刷物42からの読出データと近距離無線通信タグ65からの読出データとの突き合わせチェックを施用カート70への薬剤搭載直後など早々に行っていたが、このチェックは施用の実施前であれば何時に行っても良い。
【0051】
上記実施例では、制御装置71と表示装置75とが別体でケーブル接続されているかのようなブロック図を例示したが、それらは所謂ノートパソコンのような一体形のものであっても良い。また、施用カート70に搭載されるものは、上記の実施例で挙げた制御装置71その他の機器72~75に限られる訳でなく、例えば文字印刷物41を読み取って電子データ化するスキャナや、表示装置75の表示内容や他の情報を印刷するプリンタ等が搭載されていても良い。
【0052】
上記実施例では、薬剤収容体40として薬液ボトルや薬袋を挙げたが、薬のみの収容体に限定される訳でなく、薬に準じて調剤される輸液バッグ等も薬剤収容体40として取り扱うことが可能である。
【0053】
上記実施例では、調製歴データや監査データの具体例を挙げなかったが、調製歴データの具体例としては、調製者や,調製年月日,調製開始時刻,調製終了時刻,処方指示薬品情報などが挙げられ、監査データの具体例としては、調製過程における計量に係る重量監査情報や,調製後の薬剤濃度情報,薬品の識別情報の照合結果などが挙げられる。
【0054】
上記実施例では、言及しなかったが、施用カート70を用いた施用過程において制御装置71が把握しうる作業工程や使用データ等については、域内通信設備(LAN)経由で調剤サーバ60にアップロードしてデータ保存するようにしても良い。