(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049266
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】塗装システム、塗装方法
(51)【国際特許分類】
B25J 13/00 20060101AFI20230403BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158911
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】大坪 直幸
(72)【発明者】
【氏名】片岡 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】重吉 憲一郎
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS13
3C707AS23
3C707BS10
3C707CS04
3C707HS27
3C707JS02
3C707LV02
3C707NS02
(57)【要約】
【課題】開閉部の開放を良好に行いつつ高品質な塗装を行うことが可能な塗装システム及び塗装方法を提供する。
【解決手段】塗装システム1は、塗装ブースを構成する構造物に固定された基部31を備え、車体15のバックドア15aを開放するリア側開閉ロボット7と、基部31よりも鉛直方向において下方に配置された基部33を備え、リア側開閉ロボット7により開放されたバックドア15aを介して車体15の内部を塗装するリア側塗装ロボット9と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装エリアを構成する構造物に固定された第1基部を備え、車体の開閉部を開放する第1ロボットと、
前記第1基部よりも鉛直方向において下方に配置された第2基部を備え、前記第1ロボットにより開放された前記開閉部を介して前記車体の内部を塗装する第2ロボットと、
を有する、塗装システム。
【請求項2】
前記車体を第1方向に搬送する搬送装置と、
前記第2ロボットを前記第1方向に移動させると共に、前記第1方向に交差する第2方向に移動させる移動装置と、
をさらに有する、請求項1に記載の塗装システム。
【請求項3】
前記移動装置は、
スライダを前記第1方向に走行させる走行装置と、
前記スライダに設置され、前記鉛直方向に沿った旋回軸周りに旋回する旋回アームと、を有し、
前記第2ロボットは、
前記旋回アームに搭載されている、
請求項2に記載の塗装システム。
【請求項4】
前記第1ロボットは、
前記第1基部に連結された水平多関節型の第1アーム部と、
前記第1アーム部の先端部に連結され、前記開閉部を保持する垂直多関節型の第2アーム部と、
を有する、
請求項3に記載の塗装システム。
【請求項5】
前記第1アーム部は、
前記第1基部に前記鉛直方向に沿った回転軸周りに回転可能に連結されたアーム要素を含む複数のアーム要素を有し、
前記複数のアーム要素は、
前記鉛直方向に沿った回転軸周りに互いに回転可能に連結されている、
請求項4に記載の塗装システム。
【請求項6】
前記第2アーム部は、
前記第1アーム部の前記先端部に前記鉛直方向に垂直な方向に沿った回転軸周りに回転可能に連結されたアーム要素を含む少なくとも1つのアーム要素と、
前記アーム要素の先端部に連結され、前記開閉部を保持する保持部と、
を有する、
請求項4又は5に記載の塗装システム。
【請求項7】
前記第2ロボットは、
隣接する2つのアーム要素と、
前記2つのアーム要素を、各アーム要素の延設方向に垂直な方向に沿った回転軸周りに回転可能に連結する関節部と、
を有し、
前記関節部は、
前記2つのアーム要素の延設方向が互いに平行となる角度から、一方の前記アーム要素を他方の前記アーム要素に対して前記回転軸周りの周方向における一方側及び他方側の両方向に回転可能に連結する、
請求項3乃至6のいずれか1項に記載の塗装システム。
【請求項8】
前記旋回アームは、
前記スライダに連結され、前記鉛直方向に垂直な方向に延設された基部と、
前記基部に接続され、前記基部の上面よりも前記鉛直方向における下方において前記鉛直方向に垂直な方向に延設された搭載部と、
を有し、
前記第2ロボットは、
前記搭載部に設置されている、
請求項3乃至7のいずれか1項に記載の塗装システム。
【請求項9】
前記第2ロボットの前記第2基部は、
前記搬送装置の前記車体が搭載される搭載面と、前記車体の内部において最も下方位置にある塗装対象部と、の間の高さ位置において、前記搭載部に設置されている、
請求項8に記載の塗装システム。
【請求項10】
前記旋回アームは、
前記旋回軸周りの周方向に、前記第1方向に平行となる角度を含む所定の角度範囲で旋回可能なように、前記スライダに設置されている、
請求項3乃至9のいずれか1項に記載の塗装システム。
【請求項11】
前記旋回アームは、
前記旋回軸周りの周方向に、前記第1方向に平行となる角度から、前記第2ロボットが搭載される搭載部が前記車体から離れる方向に旋回可能なように、前記スライダに設置されている、
請求項10に記載の塗装システム。
【請求項12】
前記旋回アームは、
前記旋回軸と搭載された前記第2ロボットとの距離が、前記旋回軸と前記車体の前記第2方向における中心位置との距離と、略等しくなるように構成されている、
請求項3乃至11のいずれか1項に記載の塗装システム。
【請求項13】
前記搬送装置は、
前記車体を前記第1方向に連続して搬送し、
前記塗装システムは、
前記第2ロボットを前記車体に追従させるように、前記走行装置及び前記旋回アームの少なくとも一方を制御する第1制御部をさらに有する、
請求項3乃至12のいずれか1項に記載の塗装システム。
【請求項14】
前記搬送装置は、
前記車体を前記第1方向に連続して搬送し、
前記第1ロボットは、
前記第1基部に連結された水平多関節型の第1アーム部と、
前記第1アーム部の先端部に連結され、前記開閉部を保持する垂直多関節型の第2アーム部と、
を有し、
前記塗装システムは、
前記第2アーム部を前記車体に追従させるように前記第1アーム部を制御する第2制御部をさらに有する、
請求項3乃至13のいずれか1項に記載の塗装システム。
【請求項15】
前記第2ロボットを前記車体の搬送経路から退避させる際に、前記第2ロボットが搭載される搭載部が前記車体の搬送方向における上流側に移動するように前記旋回アームを旋回させる第3制御部をさらに有する、
請求項3乃至14のいずれか1項に記載の塗装システム。
【請求項16】
車体を第1方向に搬送する搬送装置と、
塗装エリアを構成する構造物に固定された第1基部を備え、前記車体の後方の第1開閉部を開放する第1ロボットと、
前記第1基部よりも鉛直方向において下方に配置された第2基部を備え、前記第1ロボットにより開放された前記第1開閉部を介して前記車体の内部を塗装する第2ロボットと、
前記構造物に固定された第3基部を備え、車体の側方の第2開閉部を開放する第3ロボットと、
前記第3基部よりも鉛直方向において下方に配置された第4基部を備え、前記第3ロボットにより開放された前記第2開閉部を介して前記車体の内部を塗装する第4ロボットと、
第1スライダ及び第2スライダを同一のレール上で前記第1方向に走行させる走行装置と、
前記第1スライダに設置され、前記鉛直方向に沿った旋回軸周りに旋回する旋回アームと、を有し、
前記第2ロボットは、
前記旋回アームに搭載され、
前記第4ロボットは、
前記第2スライダに搭載されている、
塗装システム。
【請求項17】
前記車体は、
前記第1方向に交差する第2方向の両側の側方に前記第2開閉部をそれぞれ有しており、
前記第3ロボット及び前記第4ロボットは、
当該第3ロボット及び第4ロボットを1組とした場合に、前記車体の搬送経路の前記第2方向における両側に1組ずつ配置されている、
請求項16記載の塗装システム。
【請求項18】
開閉部を備えた車体を第1方向に連続して搬送することと、
塗装エリアを構成する構造物に固定され、水平多関節型の第1アーム部と当該第1アーム部の先端部に連結された垂直多関節型の第2アーム部とを有する第1ロボットの前記第1アーム部を制御して前記第2アーム部を前記車体に追従させることと、
前記第2アーム部により前記開閉部を開放して開放状態を保持することと、
第2ロボットを前記第1方向及び前記第1方向に交差する第2方向に移動させて前記車体に追従させることと、
開放された前記開閉部を介して前記第2ロボットにより前記車体の内部を塗装することと、
を有する、塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、塗装システム及び塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車体のドア内部を塗装する塗装用ロボットと、車体のドアの開閉およびドア開放状態の保持を行うドア開閉用ロボットと、を備えた塗装システムが記載されている。この塗装システムでは、ドア開閉用ロボットが塗装用ロボットよりも低い高さ位置に設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車種によっては、車体は水平方向に限らず上下方向に開閉する開閉部を備える場合がある。そのような場合でも、開閉部の開放を良好に行い高品質な塗装を行うことができる塗装システムが求められていた。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、開閉部の開放を良好に行いつつ高品質な塗装を行うことが可能な塗装システム及び塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、塗装エリアを構成する構造物に固定された第1基部を備え、車体の開閉部を開放する第1ロボットと、前記第1基部よりも鉛直方向において下方に配置された第2基部を備え、前記第1ロボットにより開放された前記開閉部を介して前記車体の内部を塗装する第2ロボットと、を有する、塗装システムが適用される。
【0007】
また、本発明の別の観点によれば、車体を第1方向に搬送する搬送装置と、塗装エリアを構成する構造物に固定された第1基部を備え、前記車体の後方の第1開閉部を開放する第1ロボットと、前記第1基部よりも鉛直方向において下方に配置された第2基部を備え、前記第1ロボットにより開放された前記第1開閉部を介して前記車体の内部を塗装する第2ロボットと、前記構造物に固定された第3基部を備え、車体の側方の第2開閉部を開放する第3ロボットと、前記第3基部よりも鉛直方向において下方に配置された第4基部を備え、前記第3ロボットにより開放された前記第2開閉部を介して前記車体の内部を塗装する第4ロボットと、第1スライダ及び第2スライダを同一のレール上で前記第1方向に走行させる走行装置と、前記第1スライダに設置され、前記鉛直方向に沿った旋回軸周りに旋回する旋回アームと、を有し、前記第2ロボットは、前記旋回アームに搭載され、前記第4ロボットは、前記第2スライダに搭載されている、塗装システムが適用される。
【0008】
また、本発明の別の観点によれば、開閉部を備えた車体を第1方向に連続して搬送することと、塗装エリアを構成する構造物に固定され、水平多関節型の第1アーム部と当該第1アーム部の先端部に連結された垂直多関節型の第2アーム部とを有する第1ロボットの前記第1アーム部を制御して前記第2アーム部を前記車体に追従させることと、前記第2アーム部により前記開閉部を開放して開放状態を保持することと、第2ロボットを前記第1方向及び前記第1方向に交差する第2方向に移動させて前記車体に追従させることと、開放された前記開閉部を介して前記第2ロボットにより前記車体の内部を塗装することと、を有する、塗装方法が適用される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗装システム等によれば、開閉部の開放を良好に行いつつ高品質な塗装を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る塗装システムの全体構成の一例を表す斜視図である。
【
図2】リア側開閉ロボットの構成の一例を表す斜視図である。
【
図3】リア側塗装ロボット及びフロント側塗装ロボットの構成の一例を表す斜視図である。
【
図4】フロント側開閉ロボットの構成の一例を表す斜視図である。
【
図5】リア側開閉ロボットとリア側塗装ロボットの動作エリアの一例を表す側面図である。
【
図6】フロント側開閉ロボットとフロント側塗装ロボットの動作エリアの一例を表す側面図である。
【
図7】旋回アームの構成及びリア側塗装ロボットの設置高さの一例を表す後面図である。
【
図8】リア側塗装ロボットの関節駆動角度の一例を表す側面図である。
【
図9】リア側塗装ロボットの関節駆動角度の一例を表す側面図である。
【
図10】旋回アームの旋回角度の一例を表す上面図である。
【
図11】旋回アームの旋回角度の一例を表す上面図である。
【
図12】上位コントローラの機能構成及び塗装システムの制御構成の一例を表すブロック図である。
【
図13】上位コントローラ等により実行される処理手順の一例を表すフローチャートである。
【
図14】アーム逆取付型の塗装ロボットを用いる変形例における、旋回アームの旋回角度の一例を表す上面図である。
【
図15】車体の両側から塗装を行う変形例における、塗装システムの全体構成の一例を表す斜視図である。
【
図16】リア側開閉ロボットとリア側塗装ロボットの動作エリアを上下方向に重複しないように構成した変形例を表す側面図である。
【
図17】フロント側開閉ロボットとフロント側塗装ロボットの動作エリアを上下方向に重複しないように構成した変形例を表す側面図である。
【
図18】走行装置及び旋回アーム用のコントローラを設けた変形例における、塗装システムの制御構成の一例を表すブロック図である。
【
図19】上位コントローラのハードウェア構成の一例を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下において、塗装システム等の構成の説明の便宜上、上下左右前後等の方向を適宜使用する場合があるが、塗装システム等の各構成の位置関係を限定するものではない。
【0012】
<1.塗装システムの全体構成>
図1を参照しつつ、本実施形態に係る塗装システム1の全体構成の一例について説明する。
【0013】
塗装システム1は、塗装ブース(塗装エリアの一例。図示省略)内を搬送される車体の内部に対してロボットにより自動的に塗装を実行するシステムである。
図1に示すように、塗装システム1は、コンベア3と、移動装置5と、リア側開閉ロボット7と、リア側塗装ロボット9と、フロント側開閉ロボット11と、フロント側塗装ロボット13とを有する。
【0014】
コンベア3(搬送装置の一例)は、車体15を前後方向(第1方向の一例)における前向きに搬送する。コンベア3は、車体15を停止することなく連続して搬送する連続運転を行ってもよいし、搬送と停止を繰り返す間欠運転を行ってもよい。本実施形態では、コンベア3が連続運転を行う場合を一例として説明する。車体15は、例えば自動車のボディである。車体15は、例えば後方のバックドア15aと、左側方のサイドドア15bとを有する。バックドア15a(開閉部の一例)は上下方向(鉛直方向)に旋回して開閉され、サイドドア15b(開閉部の一例)は水平方向に旋回して開閉される。車体15は、開閉部を備え内部に塗装対象部を備えるワークであれば、自動車のボディ以外のワークでもよい。
【0015】
移動装置5は、リア側塗装ロボット9を前後方向に移動させると共に、前後方向に交差する方向(例えば前後方向に垂直な左右方向)に移動させる。移動装置5は、走行装置17と、旋回アーム19とを有する。走行装置17は、前後方向に沿って配設されたレール21と、2つのスライダ23,25とを有する。走行装置17は、2つのスライダ23,25をそれぞれ共通のレール21に沿って前後方向における前向き及び後向きに走行させる。走行装置17は、例えば2つのアクチュエータ(例えばリニアモータ、又は、回転モータと送りねじ機構等。図示省略。)により、2つのスライダ23,25を各々独立して走行させる。
【0016】
旋回アーム19は、スライダ23に設置されており、スライダ23と共にレール21に沿って前後方向に移動する。旋回アーム19は、アクチュエータ27により鉛直方向に沿った旋回軸SAx周りに旋回する。アクチュエータ27は、例えばサーボモータ、エンコーダ、減速機等により構成される。旋回アーム19は、基部19aと、搭載部19bと、連結部19cとを有する。基部19aはスライダ23に連結され、搭載部19bにはリア側塗装ロボット9が搭載される。連結部19cは、高さ位置が異なる基部19aと搭載部19bとを連結する。
【0017】
リア側開閉ロボット7(第1ロボットの一例)は、フック29を用いて車体15のバックドア15aを開放する。リア側開閉ロボット7は、姿勢を変更することでフック29を車体15に追従させ、バックドア15aを開放した状態を保持する。バックドア15aは、例えば水平方向に略平行に開放された状態で保持される。またリア側開閉ロボット7は、バックドア15aを閉じる作業を行ってもよい。リア側開閉ロボット7は、リア側塗装ロボット9よりも上方に配置されている。リア側開閉ロボット7の基部31(第1基部の一例)は、塗装ブースを構成する壁又は天井(構造物の一例。図示省略)に固定されており、壁又は天井に対して移動しない構造となっている。なお、基部31が固定される構造物は、塗装ブースの壁や天井に限るものではなく、例えば塗装ブースに設けられた支柱や支持壁(天井と連結されていないものを含む)等でもよい。
【0018】
リア側塗装ロボット9(第2ロボットの一例)は、旋回アーム19の搭載部19bに搭載されている。リア側塗装ロボット9は、走行装置17によるスライダ23の移動により前後方向に移動すると共に、旋回アーム19の旋回により旋回軸SAx周りの周方向に移動する。当該周方向は、前後方向及び左右方向を含んでおり、周方向のうち前後方向以外の方向が第1方向に交差する第2方向の一例である。リア側塗装ロボット9は、リア側開閉ロボット7よりも下方に配置されている。リア側塗装ロボット9の基部33(第2基部の一例)は、リア側開閉ロボット7の基部31よりも鉛直方向において下方に配置されている。リア側塗装ロボット9は、リア側開閉ロボット7により開放されたバックドア15aを介して車体15の内部に後方からアクセスし、車体15の内部を塗装する。リア側塗装ロボット9は、走行装置17及び旋回アーム19の少なくとも一方により車体15に追従して移動する。
【0019】
フロント側開閉ロボット11(第1ロボット、第3ロボットの一例)は、フック35を用いて車体15のサイドドア15bを開放する。フロント側開閉ロボット11は、姿勢を変更することでフック35を車体15に追従させ、サイドドア15bを開放した状態を保持する。サイドドア15bは、例えば左右方向に略平行に開放された状態で保持される。またフロント側開閉ロボット11は、サイドドア15bを閉じる作業を行ってもよい。フロント側開閉ロボット11は、フロント側塗装ロボット13よりも上方に配置されている。フロント側開閉ロボット11の基部37(第3基部の一例)は、塗装ブースを構成する壁又は天井(構造物の一例。図示省略)に固定されており、壁又は天井に対して移動しない構造となっている。なお、基部37が固定される構造物は、塗装ブースの壁や天井に限るものではなく、例えば塗装ブースに設けられた支柱や支持壁(天井と連結されていないものを含む)等でもよい。
【0020】
フロント側塗装ロボット13(第2ロボット、第4ロボットの一例)は、スライダ25に搭載されている。フロント側塗装ロボット13は、走行装置17によるスライダ25の移動により前後方向に移動する。フロント側塗装ロボット13は、フロント側開閉ロボット11よりも下方に配置されている。フロント側塗装ロボット13の基部39(第4基部の一例)は、フロント側開閉ロボット11の基部37よりも鉛直方向において下方に配置されている。フロント側塗装ロボット13は、フロント側開閉ロボット11により開放されたサイドドア15bを介して車体15の内部に左側方からアクセスし、車体15の内部を塗装する。フロント側塗装ロボット13は、走行装置17により車体15に追従して移動する。
【0021】
上述した塗装システム1の構成は一例であり、上述の内容に限定されるものではない。例えば、旋回アーム19の代わりに、レール及びスライダにより左右方向に移動可能な走行装置を設置し、リア側塗装ロボット9を前後方向及び左右方向に移動可能な構成としてもよい。また、壁や天井を有する塗装ブースでなく、そのような仕切りを有しない塗装エリア(塗装スペース)で塗装を行ってもよい。この場合には、リア側開閉ロボット7やフロント側開閉ロボット11を塗装エリアに設置した支柱等(構造物の一例)に固定してもよい。
【0022】
<2.リア側開閉ロボットの構成>
図2を参照しつつ、リア側開閉ロボット7の構成の一例について説明する。
【0023】
図2に示すように、リア側開閉ロボット7は、例えば6つのアクチュエータR1Ac1~R1Ac6を備えた6つの関節部を有する6軸ロボットアームである。リア側開閉ロボット7は、前述の基部31と、基部31に連結された水平多関節型の水平アーム部41(第1アーム部の一例)と、水平アーム部41の先端部に連結され、バックドア15aを保持する垂直多関節型の垂直アーム部43(第2アーム部の一例)とを有する。前述のように、基部31は塗装ブースを構成する壁又は天井に固定されている。
【0024】
水平アーム部41は、第1アーム部45と、第2アーム部47と、第3アーム部49とを有する。第1アーム部45(アーム要素の一例)は、基部31の先端部に、鉛直方向に沿った回転軸R1Ax1周りに旋回(回転)可能に連結されている。第1アーム部45は、基部31との間の関節部に設けられたアクチュエータR1Ac1の駆動により、基部31の先端部に対し、回転軸R1Ax1周りに旋回駆動される。
【0025】
第2アーム部47(アーム要素の一例)は、第1アーム部45の先端部に、鉛直方向に沿った回転軸R1Ax2周りに旋回(回転)可能に連結されている。第2アーム部47は、第1アーム部45との間の関節部に設けられたアクチュエータR1Ac2の駆動により、第1アーム部45の先端部に対し、回転軸R1Ax2周りに旋回駆動される。
【0026】
第3アーム部49(アーム要素の一例)は、第2アーム部47の先端部の下方に、鉛直方向に沿った回転軸R1Ax3周りに回動(回転)可能に連結されている。第3アーム部49は、第2アーム部47との間の関節部に設けられたアクチュエータR1Ac3の駆動により、第2アーム部47の先端部に対し、回転軸R1Ax3周りに回動駆動される。
【0027】
垂直アーム部43は、第4アーム部51と、第5アーム部53と、第6アーム部55と、前述のフック29とを有する。第4アーム部51(アーム要素の一例)は、水平アーム部41の先端部である第3アーム部49に、鉛直方向に垂直な水平方向に沿った回転軸R1Ax4周りに旋回(回転)可能に連結されている。第4アーム部51は、第3アーム部49との間の関節部に設けられたアクチュエータR1Ac4の駆動により、第3アーム部49の先端部に対し、回転軸R1Ax4周りに旋回駆動される。
【0028】
第5アーム部53(アーム要素の一例)は、第4アーム部51の先端部に、水平方向に沿った回転軸R1Ax5周りに旋回(回転)可能に連結されている。第5アーム部53は、第4アーム部51との間の関節部に設けられたアクチュエータR1Ac5の駆動により、第4アーム部51の先端部に対し、回転軸R1Ax5周りに旋回駆動される。
【0029】
第6アーム部55は、第5アーム部53の先端部に、回転軸R1Ax5に垂直な回転軸R1Ax6周りに回動(回転)可能に連結されている。第6アーム部55は、第5アーム部53との間の関節部に設けられたアクチュエータR1Ac6の駆動により、第5アーム部53の先端部に対し、回転軸R1Ax6周りに回動駆動される。フック29(保持部の一例)は、第6アーム部55の先端部に取り付けられ、バックドア15aを保持する。
【0030】
第1アーム部45、第2アーム部47及び第4アーム部51はそれぞれ、延設方向に長い長尺状の部材である。例えば、第1アーム部45の長さは第2アーム部47よりも長く、第2アーム部47の長さは第4アーム部51よりも長い。これにより、水平アーム部41の動作による垂直アーム部43(フック29)の車体15に対する追従距離を大きくすることができる。
【0031】
各関節部を駆動するアクチュエータR1Ac1~R1Ac6は、例えばサーボモータ、エンコーダ、減速機、及びブレーキ等により構成されている。なお、上記では、リア側開閉ロボット7の長手方向(あるいは延在方向)に沿った回転軸周りの回転を「回動」と呼び、リア側開閉ロボット7の長手方向(あるいは延在方向)に垂直な回転軸周りの回転を「旋回」と呼んで区別している。
【0032】
上述した構成により、水平アーム部41を構成する各アーム部は水平方向に回転する。これにより、リア側開閉ロボット7の上方の構造物(天井等)への干渉を回避できる。また、水平アーム部41を構成する第1アーム部45及び第2アーム部47の長さは比較的長い。これにより、リア側開閉ロボット7の動作範囲を確保できる。したがって、リア側開閉ロボット7の移動装置が不要となる。重量物である移動装置を塗装ブースの天井や壁に設置する必要がなくなるので、天井や壁の補強を不要又は簡易とすることができる。また、垂直アーム部43を垂直多関節構造とすることにより、上下方向を含む多方向の動作が可能となり、先端部の自由度を向上できる。これにより、フック29の上下方向の動作が可能となるので、上下方向に開閉するバックドア15aの開放を良好に行うことができる。また、リア側開閉ロボット7はリア側塗装ロボット9の上方に配置されるため、各ロボットの動作エリアが干渉するのを抑制できる。このため、リア側塗装ロボット9による塗装作業に影響を与えることなく、バックドア15aの開放状態を保持できる。
【0033】
上述したリア側開閉ロボット7の構成は一例であり、上述の内容に限定されるものではない。例えば、垂直アーム部43のアーム部の数や水平アーム部41のアーム部の数を上述した数以外としてもよいし、6軸以外のロボットとしてもよい。
【0034】
<3.リア側塗装ロボット、フロント側塗装ロボットの構成>
図3を参照しつつ、リア側塗装ロボット9及びフロント側塗装ロボット13の構成の一例について説明する。リア側塗装ロボット9とフロント側塗装ロボット13は同様の構成であるため、ここではリア側塗装ロボット9について説明し、フロント側塗装ロボット13については説明を省略する。
【0035】
図3に示すように、リア側塗装ロボット9(フロント側塗装ロボット13も同様)は、例えば6つのアクチュエータR2Ac1~R2Ac6を備えた6つの関節部を有する垂直多関節型の6軸ロボットアームである。リア側塗装ロボット9は、前述の基部33(フロント側塗装ロボット13では基部39)と、旋回部57と、下腕部59と、肘部61と、上腕部63と、手首部65と、フランジ部67と、塗装ガン69とを有する。
【0036】
旋回部57は、基部33の上端部に、鉛直方向に平行な回転軸R2Ax1周りに回動可能に連結されている。旋回部57は、基部33との間の関節部に設けられたアクチュエータR2Ac1の駆動により、基部33の上端部に対し、回転軸R2Ax1周りに回動駆動される。
【0037】
下腕部59は、旋回部57の一方側の側部(例えば左側)に、回転軸R2Ax1に垂直な回転軸R2Ax2周りに旋回可能に連結されている。下腕部59は、旋回部57との間の関節部に設けられたアクチュエータR2Ac2の駆動により、旋回部57の一方側の側部に対し、回転軸R2Ax2周りに旋回駆動される。
【0038】
肘部61は、下腕部59の先端部の他方側(例えば右側)に、回転軸R2Ax2に平行な回転軸R2Ax3周りに旋回可能に連結されている。肘部61は、下腕部59との間の関節部に設けられたアクチュエータR2Ac3の駆動により、下腕部59の先端部の他方側に対し、回転軸R2Ax3周りに旋回駆動される。
【0039】
上腕部63は、肘部61の先端部に、回転軸R2Ax3に垂直な回転軸R2Ax4周りに回動可能に連結されている。上腕部63は、肘部61との間の関節部に設けられたアクチュエータR2Ac4の駆動により、肘部61の先端部に対し、回転軸R2Ax4周りに回動駆動される。
【0040】
手首部65は、上腕部63の先端部の他方側(例えば左側)に、回転軸R2Ax4に垂直な回転軸R2Ax5周りに旋回可能に連結されている。手首部65は、上腕部63との間の関節部に設けられたアクチュエータR2Ac5の駆動により、上腕部63の先端部の他方側に対し、回転軸R2Ax5周りに旋回駆動される。
【0041】
フランジ部67は、手首部65の先端部に、回転軸R2Ax5に垂直な回転軸R2Ax6周りに回動可能に連結されている。フランジ部67は、手首部65との間の関節部に設けられたアクチュエータR2Ac6の駆動により、手首部65の先端部に対し、回転軸R2Ax6周りに回動駆動される。
【0042】
塗装ガン69は、フランジ部67の先端に所定の角度で取り付けられており、フランジ部67の回転軸R2Ax6周りの回動と共に、回転軸R2Ax6周りに回動する。塗装ガン69には塗料を送るためのホース等(図示省略)が接続されている。
【0043】
各関節部を駆動するアクチュエータR2Ac1~R2Ac6は、例えばサーボモータ、エンコーダ、減速機、及びブレーキ等により構成されている。なお、上記では、リア側塗装ロボット9の長手方向(あるいは延在方向)に沿った回転軸周りの回転を「回動」と呼び、リア側塗装ロボット9の長手方向(あるいは延在方向)に垂直な回転軸周りの回転を「旋回」と呼んで区別している。
【0044】
上述したリア側塗装ロボット9の構成は一例であり、上述の内容に限定されるものではない。例えば、リア側塗装ロボット9に上述した各アーム部以外のアーム部を含めてもよいし、アームの一部に水平多関節構造を含めてもよい。また、6軸以外のロボットとしてもよい。
【0045】
<4.フロント側開閉ロボットの構成>
図4を参照しつつ、フロント側開閉ロボット11の構成の一例について説明する。
【0046】
図4に示すように、フロント側開閉ロボット11は、例えば6つのアクチュエータR3Ac1~R3Ac6を備えた6つの関節部を有する垂直多関節型の6軸ロボットアームである。フロント側開閉ロボット11は、前述の基部37と、旋回部71と、下腕部73と、肘部75と、上腕部77と、手首部79と、フランジ部81と、前述のフック35とを有する。前述のように、基部37は塗装ブースを構成する壁又は天井に固定されている。
【0047】
旋回部71は、基部37の前方の端部に、鉛直方向に垂直な水平方向に沿った回転軸R3Ax1周りに回動可能に連結されている。旋回部71は、基部37との間の関節部に設けられたアクチュエータR3Ac1の駆動により、基部37の前端部に対し、回転軸R3Ax1周りに回動駆動される。
【0048】
下腕部73は、旋回部71の一方側の側部(例えば左側)に、回転軸R3Ax1に垂直な回転軸R3Ax2周りに旋回可能に連結されている。下腕部73は、旋回部71との間の関節部に設けられたアクチュエータR3Ac2の駆動により、旋回部71の一方側の側部に対し、回転軸R3Ax2周りに旋回駆動される。
【0049】
肘部75は、下腕部73の先端部の他方側(例えば右側)に、回転軸R3Ax2に平行な回転軸R3Ax3周りに旋回可能に連結されている。肘部75は、下腕部73との間の関節部に設けられたアクチュエータR3Ac3の駆動により、下腕部73の先端部の他方側に対し、回転軸R3Ax3周りに旋回駆動される。
【0050】
上腕部77は、肘部75の先端部に、回転軸R3Ax3に垂直な回転軸R3Ax4周りに回動可能に連結されている。上腕部77は、肘部75との間の関節部に設けられたアクチュエータR3Ac4の駆動により、肘部75の先端部に対し、回転軸R3Ax4周りに回動駆動される。
【0051】
手首部79は、上腕部77の先端部の他方側(例えば左側)に、回転軸R3Ax4に垂直な回転軸R3Ax5周りに旋回可能に連結されている。手首部79は、上腕部77との間の関節部に設けられたアクチュエータR3Ac5の駆動により、上腕部77の先端部の他方側に対し、回転軸R3Ax5周りに旋回駆動される。
【0052】
フランジ部81は、手首部79の先端部に、回転軸R3Ax5に垂直な回転軸R3Ax6周りに回動可能に連結されている。フランジ部81は、手首部79との間の関節部に設けられたアクチュエータR3Ac6の駆動により、手首部79の先端部に対し、回転軸R3Ax6周りに回動駆動される。
【0053】
フック35(保持部の一例)は、フランジ部81の先端部に取付部材83を介して取り付けられ、サイドドア15bを保持する。
【0054】
各関節部を駆動するアクチュエータR3Ac1~R3Ac6は、例えばサーボモータ、エンコーダ、減速機、及びブレーキ等により構成されている。なお、上記では、フロント側開閉ロボット11の長手方向(あるいは延在方向)に沿った回転軸周りの回転を「回動」と呼び、フロント側開閉ロボット11の長手方向(あるいは延在方向)に垂直な回転軸周りの回転を「旋回」と呼んで区別している。
【0055】
上述した構成により、フロント側開閉ロボット11を車体15の搬送方向下流側(前方側)に向けて設置することができる。これにより、サイドドア15bとの干渉を回避できると共に、車体15(サイドドア15b)に対する追従距離を大きくすることができる。したがって、フロント側開閉ロボット11の動作範囲を確保でき、移動装置が不要となる。重量物である移動装置を塗装ブースの天井や壁に設置する必要がなくなるので、天井や壁の補強を不要又は簡易とすることができる。また、フロント側開閉ロボット11はフロント側塗装ロボット13の上方に配置されるため、各ロボットの動作エリアが干渉するのを抑制できる。このため、フロント側塗装ロボット13による塗装作業に影響を与えることなく、サイドドア15bの開放状態を保持できる。
【0056】
上述したフロント側開閉ロボット11の構成は一例であり、上述の内容に限定されるものではない。例えば、フロント側開閉ロボット11に上述した各アーム部以外のアーム部を含めてもよいし、アームの一部に水平多関節構造を含めてもよい。また、6軸以外のロボットとしてもよい。
【0057】
<5.開閉ロボットと塗装ロボットの動作エリア>
図5及び
図6を参照しつつ、リア側開閉ロボット7とリア側塗装ロボット9の動作エリア、及び、フロント側開閉ロボット11とフロント側塗装ロボット13の動作エリアの一例について説明する。
【0058】
図5に示すように、リア側塗装ロボット9の動作可能な範囲である動作エリア85は、走行装置17のスライダ23の前後方向の移動により、車体15の搬送方向(前後方向)に長く伸びる。動作エリア85の上下方向の範囲は、例えば車体15の内部のフロア15cの近傍から天井15dの近傍までの範囲である。動作エリア85の左右方向の範囲は、例えば車体15の内部の左側の壁部15e(後述の
図7参照)近傍から右側の壁部15f(後述の
図7参照)近傍までの範囲である。
【0059】
リア側開閉ロボット7の動作可能な範囲である動作エリア91は、水平アーム部41の動作により、車体15の搬送方向(前後方向)に長く伸びる。動作エリア91の上下方向の範囲は、例えば基部31の近傍から車体15のバックドア15aの閉じた状態における下端近傍までの範囲である。動作エリア91の左右方向の範囲は、例えば車体15のバックドア15aの左右方向の幅寸法の範囲である。
【0060】
以上のように、リア側開閉ロボット7の動作エリア91と、リア側塗装ロボット9の動作エリア85とは、鉛直方向から見て少なくとも一部が前後左右方向に重複すると共に、左右方向から見て少なくとも一部が上下方向に重複している。したがって、リア側開閉ロボット7とリア側塗装ロボット9とは、後述の第1ロボットコントローラ97及び第2ロボットコントローラ99(
図12参照)により、互いに干渉しないように動作を制御される。
【0061】
図6に示すように、フロント側塗装ロボット13の動作可能な範囲である動作エリア93は、走行装置17のスライダ25の前後方向の移動により、車体15の搬送方向(前後方向)に長く伸びる。動作エリア93の上下方向の範囲は、例えば車体15の内部のフロア15cの近傍から天井15dの近傍までの範囲である。動作エリア93の左右方向の範囲は、例えば基部39の近傍から車体15の内部の右側の壁部15fの近傍までの範囲である。
【0062】
フロント側開閉ロボット11の動作可能な範囲である動作エリア95は、前方に向けて設置されていることにより、車体15の搬送方向(前後方向)に長く伸びる。動作エリア95の上下方向の範囲は、例えば基部37の近傍から車体15のサイドドア15bの上下方向中間部(フック35を引っ掛ける部分)の近傍までの範囲である。動作エリア95の左右方向の範囲は、例えば左右方向に略平行に開放されたサイドドア15bの左右方向の幅寸法の範囲である。
【0063】
以上のように、フロント側開閉ロボット11の動作エリア95と、フロント側塗装ロボット13の動作エリア93とは、鉛直方向から見て少なくとも一部が前後左右方向に重複すると共に、左右方向から見て少なくとも一部が上下方向に重複している。したがって、フロント側開閉ロボット11とフロント側塗装ロボット13とは、後述の第3ロボットコントローラ101及び第4ロボットコントローラ103(
図12参照)により、互いに干渉しないように動作を制御される。
【0064】
<6.旋回アームの構成、リア側塗装ロボットの設置高さ>
図7を参照しつつ、旋回アーム19の構成、及び、リア側塗装ロボット9の設置高さの一例について説明する。
【0065】
図7に示すように、旋回アーム19は、基部19aと、搭載部19bと、連結部19cとを有する。基部19aは、スライダ23に連結され、水平方向に延設されている。搭載部19bは、基部19aに連結部19cを介して接続され、基部19aの上面よりも鉛直方向における下方において水平方向に延設されている。連結部19cは、水平方向に対して所定角度傾斜して延設され、高さ位置が異なる基部19aと搭載部19bとを連結する。リア側塗装ロボット9は、旋回アーム19の搭載部19bに搭載されている。リア側塗装ロボット9の基部33は、コンベア3の車体15が搭載される搭載面3aと、車体15の内部において最も下方位置にある塗装対象部(例えばフロア15c等)との間の高さ位置Hp1において、搭載部19bに設置されている。すなわち、リア側塗装ロボット9の設置高さである高さ位置Hp1は、鉛直方向において、車体15の内部において最も下方位置にある塗装対象部(例えばフロア15c等)の高さ位置Hp2と、コンベア3の搭載面3aの高さ位置Hp3との間に位置している。
【0066】
上記構成により、次のような効果を奏する。例えば、車体15の内部における下方の塗装対象部(例えばフロア15c等)を塗装する場合に、リア側塗装ロボット9の据え付け位置が高いと、リア側塗装ロボット9のいずれかのアーム要素(例えば下腕部59や肘部61等)が車体15の上部(例えば天井15d等)と干渉し易くなる。本実施形態では、上記構成により、リア側塗装ロボット9の据え付け位置を低くすることができるので、リア側塗装ロボット9と車体15の上部との干渉を回避しつつ、車体15の内部における下方の塗装対象部を塗装することができる。
【0067】
なお、前述の
図6に示すように、フロント側塗装ロボット13についても上記と同様に、基部39は、コンベア3の搭載面3aと、車体15の内部において最も下方位置にある塗装対象部(例えばフロア15c等)との間の高さ位置において、スライダ25に設置されている。これにより、上記と同様の効果を奏する。
【0068】
また、旋回アーム19は、左右方向に平行な状態(車体15の搬送方向に平行となる角度から略90度旋回した状態)において、旋回軸SAxと搭載されたリア側塗装ロボット9の例えば回転軸R2Ax1との距離D1と、旋回軸SAxと車体15の左右方向における中心位置Cpとの距離D2とが、概略等しくなるように構成されている。これにより、旋回アーム19を旋回させることにより、リア側塗装ロボット9を車体15の幅方向における略中心位置に位置させることができる。リア側塗装ロボット9が車体15の後側のバックドア15aから内部にアクセスして塗装する場合に、車体15の左右の壁部15e,15fとの干渉を回避しつつ塗装を実行できる。
【0069】
<7.リア側塗装ロボットの関節駆動角度>
図8及び
図9を参照しつつ、リア側塗装ロボット9の関節駆動角度の一例について説明する。
【0070】
リア側塗装ロボット9は、隣接する2つのアーム要素である下腕部59及び肘部61と、これら下腕部59及び肘部61を各アーム要素の延設方向に垂直な方向に沿った回転軸R2Ax3周りに回転可能に連結する関節部R2Jとを有する。関節部R2Jは、下腕部59及び肘部61の延設方向が互いに平行となる角度(θが略180度)から、下腕部59及び肘部61の一方を他方に対して回転軸R2Ax3周りの周方向における一方側(例えば時計回り方向)及び他方側(例えば反時計回り方向)の両方向に回転可能に連結する。
【0071】
図8に示すように、例えばリア側塗装ロボット9が車体15の内部のフロア15cの塗装を行う場合、関節部R2Jは、下腕部59及び肘部61の延設方向が互いに平行となる角度から、肘部61を下方向(左側から見た場合には反時計回り方向。右側から見た場合には時計回り方向)に旋回させる。つまり、下腕部59と肘部61との間の下側の相対角度θは180度よりも小さくなる。一方、
図9に示すように、例えばリア側塗装ロボット9が車体15の内部の天井15dの塗装を行う場合、関節部R2Jは、下腕部59及び肘部61の延設方向が互いに平行となる角度から、肘部61を上方向(左側から見た場合には時計回り方向。右側から見た場合には反時計回り方向)に旋回させる。つまり、下腕部59と肘部61との間の下側の相対角度θは180度よりも大きくなる。
【0072】
上記構成により、次のような効果を奏する。仮に、下腕部59及び肘部61が関節部R2Jにおいて片側にしか曲折しない構造である場合、例えば車体15の内部における上方の塗装対象部(例えば天井15d等)を塗装する場合に、リア側塗装ロボット9のいずれかのアーム要素(例えば下腕部59や肘部61等)が車体15の上部(例えば天井15d等)と干渉し易くなる。本実施形態では、下腕部59及び肘部61が関節部R2Jにおいて両側に曲折するので、リア側塗装ロボット9と車体15の上部との干渉を回避しつつ、車体15の内部における上方の塗装対象部を塗装することができる。
【0073】
なお、上記と同様の関節構造を、リア側塗装ロボット9の関節部R2J以外の関節に適用してもよい。また、上記と同様の関節構造を、リア側開閉ロボット7、フロント側開閉ロボット11、フロント側塗装ロボット13のいずれかの関節に適用してもよい。
【0074】
<8.旋回アームの旋回角度>
図10及び
図11を参照しつつ、旋回アーム19の旋回角度の一例について説明する。
【0075】
図10に示すように、旋回アーム19は、鉛直方向に平行な旋回軸SAx周りの周方向に、車体15の搬送方向(前後方向)に平行となる角度を含む所定の角度範囲で旋回可能なように、スライダ23に設置されている。「搬送方向に平行となる角度」とは、旋回アーム19とレール21の搬送方向上流側の部分との角度θが0度又は180度となる角度である。
図10は、θが略90度である状態を示している。「所定の角度範囲」とは、旋回アーム19が機構的に旋回可能な角度範囲であり、例えば略180度としてもよいし、180度よりも大きい角度範囲としてもよい。本実施形態では、旋回アーム19は180度よりも大きい角度範囲で旋回可能である。
【0076】
図11に示すように、旋回アーム19は、旋回軸SAx周りの周方向に、車体15の搬送方向(前後方向)に平行となる角度(角度θが略0度)から、リア側塗装ロボット9が搭載される搭載部19bが車体15の搬送経路(コンベア3)から離れる方向に旋回可能なように、スライダ23に設置されている。
図11に示す例では、リア側塗装ロボット9の下腕部59が車体15の搬送経路と干渉しないように、旋回アーム19の搭載部19bがコンベア3から離れる方向に所定の角度θ(0度からマイナス90度の範囲)だけ旋回されている。
【0077】
上記構成により、リア側塗装ロボット9が車体15に塗装作業を行う際に、旋回アーム19を前後方向に平行となる角度から車体15側に所定の角度θだけ旋回させることで、リア側塗装ロボット9を最適な塗装位置に移動することができる。また、車体15を通過させる場合には、旋回アーム19を前後方向に平行となる角度(角度θが略0度)に旋回させて退避させることで、車体15との干渉を回避できる。さらに、旋回アーム19を角度θがマイナスとなる方向(搭載部19bがコンベア3から離れる方向)に旋回させることにより、旋回アーム19の旋回軸SAxと車体15の搬送経路(コンベア3)とを近づけつつ、リア側塗装ロボット9と車体15との干渉を回避することができる。これにより、塗装ブースの幅方向寸法を縮小できる。
【0078】
<9.上位コントローラの機能構成、塗装システムの制御構成>
次に、
図12を参照しつつ、上位コントローラの機能構成及び塗装システムの制御構成の一例について説明する。
【0079】
図12に示すように、塗装システム1は、第1ロボットコントローラ97と、第2ロボットコントローラ99と、第3ロボットコントローラ101と、第4ロボットコントローラ103と、上位コントローラ109とを有する。
【0080】
第1ロボットコントローラ97は、上位コントローラ109から入力された指令(例えば位置指令等)に基づいて、リア側開閉ロボット7の先端位置(例えばフック29の位置)を所望の位置に移動させるために必要となる各アクチュエータR1Ac1~R1Ac6の各サーボモータの目標回転角度等を演算する。第1ロボットコントローラ97は、演算結果に対応するモータ位置指令と、各サーボモータの各エンコーダの検出値等に基づいて、各アクチュエータR1Ac1~R1Ac6の各サーボモータに供給する駆動電力の制御を行い、リア側開閉ロボット7の動作を制御する。
【0081】
第2ロボットコントローラ99は、上位コントローラ109から入力された指令(例えば位置指令等)に基づいて、リア側塗装ロボット9の先端位置(例えば塗装ガン69の位置)を所望の位置に移動させるために必要となる各アクチュエータR2Ac1~R2Ac6の各サーボモータの目標回転角度等を演算する。第2ロボットコントローラ99は、演算結果に対応するモータ位置指令と、各サーボモータの各エンコーダの検出値等に基づいて、各アクチュエータR2Ac1~R2Ac6の各サーボモータに供給する駆動電力の制御を行い、リア側塗装ロボット9の動作を制御する。
【0082】
また第2ロボットコントローラ99は、上位コントローラ109から入力された指令(例えば位置指令等)に基づいて、旋回アーム19の回転角度を所望の角度に旋回させるために必要となるアクチュエータ27のサーボモータの目標回転角度等を演算する。第2ロボットコントローラ99は、演算結果に対応するモータ位置指令と、サーボモータのエンコーダの検出値等に基づいて、アクチュエータ27のサーボモータに供給する駆動電力の制御を行い、旋回アーム19の旋回動作を制御する。
【0083】
また第2ロボットコントローラ99は、上位コントローラ109から入力された指令(例えば位置指令等)に基づいて、リア側塗装ロボット9が搭載されるスライダ23の位置を所望の位置に移動させるために必要となるアクチュエータのサーボモータの目標回転角度等を演算する。第2ロボットコントローラ99は、演算結果に対応するモータ位置指令と、サーボモータのエンコーダの検出値等に基づいて、アクチュエータのサーボモータに供給する駆動電力の制御を行い、スライダ23の位置を制御する。
【0084】
第3ロボットコントローラ101は、上位コントローラ109から入力された指令(例えば位置指令等)に基づいて、フロント側開閉ロボット11の先端位置(例えばフック35の位置)を所望の位置に移動させるために必要となる各アクチュエータR3Ac1~R3Ac6の各サーボモータの目標回転角度等を演算する。第3ロボットコントローラ101は、演算結果に対応するモータ位置指令と、各サーボモータの各エンコーダの検出値等に基づいて、各アクチュエータR3Ac1~R3Ac6の各サーボモータに供給する駆動電力の制御を行い、フロント側開閉ロボット11の動作を制御する。
【0085】
第4ロボットコントローラ103は、上位コントローラ109から入力された指令(例えば位置指令等)に基づいて、フロント側塗装ロボット13の先端位置(例えば塗装ガン69の位置)を所望の位置に移動させるために必要となる各アクチュエータR2Ac1~R2Ac6の各サーボモータの目標回転角度等を演算する。第4ロボットコントローラ103は、演算結果に対応するモータ位置指令と、各サーボモータの各エンコーダの検出値等に基づいて、各アクチュエータR2Ac1~R2Ac6の各サーボモータに供給する駆動電力の制御を行い、フロント側塗装ロボット13の動作を制御する。
【0086】
また第4ロボットコントローラ103は、上位コントローラ109から入力された指令(例えば位置指令等)に基づいて、フロント側塗装ロボット13が搭載されるスライダ25の位置を所望の位置に移動させるために必要となるアクチュエータのサーボモータの目標回転角度等を演算する。第4ロボットコントローラ103は、演算結果に対応するモータ位置指令と、サーボモータのエンコーダの検出値等に基づいて、アクチュエータのサーボモータに供給する駆動電力の制御を行い、スライダ25の位置を制御する。
【0087】
上位コントローラ109は、上述した各コントローラに対して指令を出力し、塗装システム1を統括して制御する。上位コントローラ109は、第1制御部111と、第2制御部113と、第3制御部115とを有する。
【0088】
第1制御部111は、リア側塗装ロボット9を、コンベア3により連続して搬送される車体15に追従させるように、第2ロボットコントローラ99を介して走行装置17のスライダ23及び旋回アーム19の少なくとも一方を制御する。また第1制御部111は、フロント側塗装ロボット13を、コンベア3により連続して搬送される車体15に追従させるように、第4ロボットコントローラ103を介して走行装置17のスライダ25を制御する。これにより、リア側塗装ロボット9及びフロント側塗装ロボット13に対し、車体15を停止させた状態で行った教示データを使用することが可能となるので、リア側塗装ロボット9及びフロント側塗装ロボット13への教示作業が容易となる。
【0089】
第2制御部113は、リア側開閉ロボット7の垂直アーム部43(フック29)を、コンベア3により連続して搬送される車体15に追従させるように、第1ロボットコントローラ97を介してリア側開閉ロボット7の水平アーム部41を制御する。これにより、リア側開閉ロボット7を移動させる移動装置を設けることなく、連続して搬送される車体15に対してバックドア15aを開放した状態を保持できる。
【0090】
第3制御部115は、リア側塗装ロボット9を車体15の搬送経路から退避させる際に、リア側塗装ロボット9が搭載される旋回アーム19の搭載部19bが車体15の搬送方向における上流側に移動するように旋回アーム19を旋回させる。これにより、車体15に対して塗装作業を行う際に、車体15の後端が上流側を向いた旋回アーム19の先端を通過した後に旋回アーム19の旋回を開始することが可能となり、追従距離を確保できる。
【0091】
なお、上述した第1制御部111、第2制御部113、第3制御部115等における処理等は、これらの処理の分担の例に限定されるものではなく、例えば、更に少ない数の処理部(例えば1つの処理部)で処理されてもよく、また、更に細分化された処理部により処理されてもよい。また、上位コントローラ109の各制御部の機能は、後述するCPU901(
図19参照)が実行するプログラムにより実装されてもよいし、その一部又は全部がASICやFPGA、その他の電気回路等の実際の装置により実装されてもよい。
【0092】
<10.上位コントローラ等による処理手順>
図13を参照しつつ、上位コントローラ109等(上述した各コントローラを含む)により実行される処理手順の一例について説明する。
【0093】
ステップS10では、上位コントローラ109等は、コンベア3を駆動して車体15を連続して搬送する。なお、コンベア3の駆動は作業者の操作によって行われてもよい。
【0094】
ステップS20では、上位コントローラ109等は、車体15が、リア側開閉ロボット7とリア側塗装ロボット9の動作エリア、又は、フロント側開閉ロボット11とフロント側塗装ロボット13の動作エリアに進入したか否かを判定する。車体15が動作エリアに進入するまで本ステップS20を繰り返し(ステップS20:NO)、車体15が動作エリアに進入した場合には(ステップS20:YES)、次のステップS30に移る。
【0095】
ステップS30では、上位コントローラ109等は、第2制御部113により、リア側開閉ロボット7の水平アーム部41の姿勢を制御してフック29を車体15に追従させ、バックドア15aを開放して開放状態を保持する。
【0096】
ステップS40では、上位コントローラ109等は、第1制御部111により、走行装置17及び旋回アーム19の少なくとも一方を制御してリア側塗装ロボット9を車体15に追従させ、旋回アーム19を制御してリア側塗装ロボット9を最適な塗装位置に移動させながら、開放されたバックドア15aを介して後方からリア側塗装ロボット9により車体15の内部を塗装する。
【0097】
ステップS50では、上位コントローラ109等は、フロント側開閉ロボット11の姿勢を制御してフック35を車体15に追従させ、サイドドア15bを開放して開放状態を保持する。
【0098】
ステップS60では、上位コントローラ109等は、第1制御部111により、走行装置17を制御してフロント側塗装ロボット13を車体15に追従させ、開放されたサイドドア15bを介して側方からフロント側塗装ロボット13により車体15の内部を塗装する。
【0099】
ステップS70では、上位コントローラ109等は、車体15の塗装が終了したか否かを判定する。車体15の塗装が終了するまで本ステップS70を繰り返し(ステップS70:NO)、車体15の塗装が終了した場合には(ステップS70:YES)、次のステップS80に移る。
【0100】
ステップS80では、上位コントローラ109等は、第3制御部115により各ロボットを車体15の搬送経路から退避させる。例えば、上位コントローラ109等は、リア側開閉ロボット7を所定の退避姿勢とする。また例えば、上位コントローラ109等は、搭載部19bが車体15の搬送方向における上流側に移動するように旋回アーム19を旋回させてリア側塗装ロボット9を車体15の搬送経路から退避させると共に、スライダ23を走行させてリア側塗装ロボット9を所定の退避位置に移動させ、所定の退避姿勢とする。また例えば、上位コントローラ109等は、フロント側開閉ロボット11を所定の退避姿勢とする。また例えば、上位コントローラ109等は、スライダ25を走行させてフロント側塗装ロボット13を所定の退避位置に移動させると共に、所定の退避姿勢とする。これにより、次の車体15が各ロボットの動作エリア内に進入するまで通過させることが可能となる。
【0101】
ステップS90では、上位コントローラ109等は、塗装システム1の稼働を終了するか否かを判定する。稼働を終了しない場合には(ステップS90:NO)、先のステップS20に戻り、同様の手順を繰り返す。一方、稼動を終了する場合には(ステップS90:YES)、本フローチャートを終了する。
【0102】
以上説明した処理手順は一例であって、上記手順の少なくとも一部を削除又は変更してもよいし、上記以外の手順を追加してもよい。上記手順の少なくとも一部の順番を変更してもよいし、複数の手順が単一の手順にまとめられてもよい。
【0103】
<11.実施形態の効果>
以上説明したように、実施形態に係る塗装システム1は、塗装ブースを構成する構造物に固定された基部31を備え、車体15のバックドア15aを開放するリア側開閉ロボット7と、基部31よりも鉛直方向において下方に配置された基部33を備え、リア側開閉ロボット7により開放されたバックドア15aを介して車体15の内部を塗装するリア側塗装ロボット9と、を有する。
【0104】
本実施形態の塗装システム1では、車体15のバックドア15aを開放するリア側開閉ロボット7が車体15の内部を塗装するリア側塗装ロボット9に比べて比較的高い位置に設置されている。これにより、車体15が例えば上下方向に開閉するバックドア15aを備える場合でも、バックドア15aを上方まで引き上げて大きく開放することが可能となり、バックドア15aの開放を良好に行うことができる。その結果、リア側塗装ロボット9が車体15の内部を塗装するための動作エリアを確保することが可能となり、高品質な塗装を実行することができる。また、リア側開閉ロボット7とリア側塗装ロボット9の高さ位置を異ならせることで、リア側開閉ロボット7の動作エリア91とリア側塗装ロボット9の動作エリア85が干渉するのを抑制でき、各ロボットの動作エリアを確保できる。さらに、上方に配置されるリア側開閉ロボット7を構造物に固定するので、重量物であるリア側開閉ロボット7用の移動装置を塗装ブースの天井や壁に設置する必要がなく、天井や壁の補強を不要又は簡易とすることができる。
【0105】
また塗装システム1は、塗装ブースを構成する構造物に固定された基部37を備え、車体15のサイドドア15bを開放するフロント側開閉ロボット11と、基部37よりも鉛直方向において下方に配置された基部39を備え、フロント側開閉ロボット11により開放されたサイドドア15bを介して車体15の内部を塗装するフロント側塗装ロボット13と、を有する。
【0106】
本実施形態の塗装システム1では、車体15のサイドドア15bを開放するフロント側開閉ロボット11が車体15の内部を塗装するフロント側塗装ロボット13に比べて比較的高い位置に設置されている。これにより、車体15が例えば水平方向に開閉するサイドドア15bを備える場合でも、サイドドア15bを上方から保持することで、サイドドア15bと干渉することなく開放することが可能となり、サイドドア15bの開放を良好に行うことができる。その結果、フロント側塗装ロボット13が車体15の内部を塗装するための動作エリアを確保することが可能となり、高品質な塗装を実行することができる。また、フロント側開閉ロボット11とフロント側塗装ロボット13の高さ位置を異ならせることで、フロント側開閉ロボット11の動作エリア95とフロント側塗装ロボット13の動作エリア93が干渉するのを抑制でき、各ロボットの動作エリアを確保できる。さらに、上方に配置されるフロント側開閉ロボット11を構造物に固定するので、重量物であるフロント側開閉ロボット11用の移動装置を塗装ブースの天井や壁に設置する必要がなく、天井や壁の補強を不要又は簡易とすることができる。
【0107】
実施形態において、塗装システム1は、車体15を前後方向に搬送するコンベア3と、リア側塗装ロボット9を前後方向に移動させると共に、前後方向に交差する左右方向に移動させる移動装置5と、を有してもよい。
【0108】
この場合、リア側塗装ロボット9を前後方向及び左右方向に移動させることで、リア側塗装ロボット9の動作範囲を拡大できる。また、リア側塗装ロボット9を前後方向に移動させることで、搬送される車体15にリア側塗装ロボット9を追従させることができるので、車体15を停止させた状態でリア側塗装ロボット9への教示を行うことが可能となり、教示作業が容易となる。さらに、リア側塗装ロボット9を左右方向に移動させることで、リア側塗装ロボット9を最適な塗装位置に移動することが可能となるので、塗装の品質を向上できる。例えば、リア側塗装ロボット9を車体15の前面側または後面側へ回り込ませることができ、車体15の前面または後面からリア側塗装ロボット9の一部(例えば塗装ガン69を搭載した先端部)を入り込ませ易くし、より効率的に車体15の内部を塗装することができる。
【0109】
実施形態において、移動装置5は、スライダ23を前後方向に走行させる走行装置17と、スライダ23に設置され、鉛直方向に沿った旋回軸SAx周りに旋回する旋回アーム19と、を有してもよく、その場合には、リア側塗装ロボット9は、旋回アーム19に搭載されてもよい。
【0110】
この場合、走行装置17によるスライダ23の移動によりリア側塗装ロボット9を前後方向に移動させることができ、旋回アーム19の旋回によりリア側塗装ロボット9を前後方向及び左右方向に移動させることができる。旋回アーム19を用いることにより、車体15に塗装作業を行う場合には旋回アーム19を車体15側に突出させてリア側塗装ロボット9を最適な塗装位置に移動することができる。車体15を通過させる場合には、旋回アーム19を退避させて車体15との干渉を回避できる。
【0111】
実施形態において、リア側開閉ロボット7は、基部31に連結された水平多関節型の水平アーム部41と、水平アーム部41の先端部に連結され、バックドア15aを保持する垂直多関節型の垂直アーム部43と、を有してもよい。
【0112】
仮に、上方に配置されるリア側開閉ロボット7の動作範囲を拡大するために移動装置を設置する場合、重量物である上に振動も発生するため、塗装ブースの天井や壁に大規模な補強を行うことが望ましい。本実施形態では、リア側開閉ロボット7が基部側に水平多関節型の水平アーム部41を有し、先端側に垂直多関節型の垂直アーム部43を有する。基部側の水平アーム部41を水平多関節構造とすることにより、上方の構造物(天井等)への干渉を回避しつつ動作範囲を確保できる。また、先端側の垂直アーム部43を垂直多関節構造とすることにより、上下方向を含む多方向の動作が可能となり、先端部の自由度を向上できる。したがって、移動装置を設けなくともリア側開閉ロボット7の動作範囲を確保できると共に、ドアの開閉方向によらずに開放を良好に行うことができる。
【0113】
実施形態において、水平アーム部41は、基部31に鉛直方向に沿った回転軸R1Ax1周りに回転可能に連結された第1アーム部45を含む複数のアーム部を有してもよく、その場合には、複数のアーム部は、鉛直方向に沿った回転軸周りに互いに回転可能に連結されてもよい。
【0114】
本実施形態では、水平アーム部41を構成する各アーム部は、基部31又は基部側のアーム部に対して水平方向に回転する。これにより、上方の構造物(天井等)への干渉を回避しつつ、リア側開閉ロボット7の動作範囲を確保できる。また、水平アーム部41を構成する各アーム部の長さや数に応じてリア側開閉ロボット7の動作範囲を拡大できる。
【0115】
実施形態において、垂直アーム部43は、水平アーム部41の先端部に鉛直方向に垂直な水平方向に沿った回転軸R1Ax4周りに回転可能に連結された第4アーム部51を含む少なくとも1つのアーム部と、先端部に連結され、バックドア15aを保持するフック29と、を有してもよい。
【0116】
本実施形態では、垂直アーム部43を構成するアーム部は、水平アーム部41の先端部に対して上下方向に回転する。これにより、フック29の上下方向の動作が可能となるので、上下方向に開閉するバックドア15aの場合でも開放を良好に行うことができる。
【0117】
実施形態において、リア側塗装ロボット9は、隣接する2つのアーム要素である下腕部59及び肘部61と、下腕部59及び肘部61を、各アーム要素の延設方向に垂直な方向に沿った回転軸R2Ax3周りに回転可能に連結する関節部R2Jと、を有してもよく、その場合には、関節部R2Jは、下腕部59及び肘部61の延設方向が互いに平行となる角度から、下腕部59及び肘部61の一方を他方に対して回転軸R2Ax3周りの周方向における一方側及び他方側の両方向に回転可能に連結してもよい。
【0118】
仮に、隣接する下腕部59及び肘部61が関節部R2Jにおいて片側にしか曲折しない構造である場合、例えば車体15の内部における上方の塗装対象部を塗装する場合に、リア側塗装ロボット9の一部のアーム要素が車体15の上部と干渉し易くなる。本実施形態では、隣接する下腕部59及び肘部61が関節部R2Jにおいて両側に曲折するので、リア側塗装ロボット9と車体15の上部との干渉を回避しつつ、車体15の内部における上方の塗装対象部(例えば天井15d等)を塗装することができる。
【0119】
実施形態において、旋回アーム19は、スライダ23に連結され、鉛直方向に垂直な水平方向に延設された基部19aと、基部19aに接続され、基部19aの上面よりも鉛直方向における下方において水平方向に延設された搭載部19bと、を有してもよく、その場合には、リア側塗装ロボット9は、搭載部19bに設置されてもよい。
【0120】
例えば車体15の内部における下方の塗装対象部(例えばフロア等)を塗装する場合に、リア側塗装ロボット9の据え付け位置が高いと、リア側塗装ロボット9の一部のアーム要素が車体15の上部と干渉し易くなる。本実施形態では、旋回アーム19において基部19aよりも低い位置に延設された搭載部19bにリア側塗装ロボット9を設置する。これにより、リア側塗装ロボット9の据え付け位置を低くすることができるので、リア側塗装ロボット9と車体15の上部との干渉を回避しつつ、車体15の内部における下方の塗装対象部(例えばフロア15c等)を塗装することができる。
【0121】
実施形態において、リア側塗装ロボット9の基部33は、コンベア3の車体15が搭載される搭載面3aと、車体15の内部において最も下方位置にある塗装対象部(例えばフロア15c等)と、の間の高さ位置において、搭載部19bに設置されてもよい。
【0122】
この場合、車体15の内部の最も下方位置にある塗装対象部(例えばフロア15c等)を塗装する場合にも、リア側塗装ロボット9のアーム要素が車体15の上部と干渉するのを回避することが可能となる。
【0123】
実施形態において、旋回アーム19は、旋回軸SAx周りの周方向に、前後方向に平行となる角度を含む所定の角度範囲で旋回可能なように、スライダ23に設置されてもよい。
【0124】
この場合、車体15に塗装作業を行う場合には、旋回アーム19を前後方向に平行となる角度から車体15側に所定の角度だけ旋回させて、リア側塗装ロボット9を最適な塗装位置に移動することができる。また、車体15を通過させる場合には、旋回アーム19を前後方向に平行となる角度に旋回させて退避させ、車体15との干渉を回避できる。
【0125】
実施形態において、旋回アーム19は、旋回軸SAx周りの周方向に、前後方向に平行となる角度から、リア側塗装ロボット9が搭載される搭載部19bが車体15の搬送経路から離れる方向に旋回可能なように、スライダ23に設置されもよい。
【0126】
例えば、リア側塗装ロボット9の幅が旋回アーム19の幅よりも大きく幅方向にはみ出す場合、旋回アーム19を前後方向に平行となる角度に旋回させて退避させても、リア側塗装ロボット9のはみ出した部分が車体15の搬送経路と干渉する可能性がある。干渉を回避するためには、旋回アーム19の旋回軸SAxと車体15の搬送経路の間を離間させる必要が生じるが、その場合には塗装ブースの幅方向寸法の増大を招く。本実施形態では、旋回アーム19を前後方向に平行となる角度から搭載部19bが車体15の搬送経路から離れる方向に旋回させることにより、旋回アーム19の旋回軸SAxと車体15の搬送経路とを近づけつつ、リア側塗装ロボット9と車体15の搬送経路との干渉を回避することが可能となる。これにより、塗装ブースの幅方向寸法を縮小できる。
【0127】
実施形態において、旋回アーム19は、旋回軸SAxと搭載されたリア側塗装ロボット9との距離D1が、旋回軸SAxと車体15の左右方向における中心位置Cpとの距離D2と、略等しくなるように構成されてもよい。
【0128】
この場合、旋回アーム19を前後方向に平行となる角度から略90度旋回させることにより、リア側塗装ロボット9を車体15の幅方向における略中心位置に位置させることができる。これにより、リア側塗装ロボット9が例えば車体15の後側のバックドア15aから内部にアクセスして塗装する場合に、車体15の左右の壁部15e,15fとの干渉を回避しつつ塗装を実行できる。
【0129】
実施形態において、コンベア3は、車体15を前後方向に連続して搬送してもよく、その場合には、上位コントローラ109等は、リア側塗装ロボット9又はフロント側塗装ロボット13を車体15に追従させるように、走行装置17及び旋回アーム19の少なくとも一方を制御してもよい。
【0130】
本実施形態では、コンベア3により連続して搬送される車体15に対してリア側塗装ロボット9又はフロント側塗装ロボット13を追従させて塗装を行うので、車体15を停止させて塗装を行う場合に比べてタクトタイムを短縮できる。また、リア側塗装ロボット9又はフロント側塗装ロボット13を車体15に追従させることで、車体15を停止させた状態で行った教示データを使用することが可能となる。これにより、リア側塗装ロボット9又はフロント側塗装ロボット13への教示作業が容易となる。
【0131】
実施形態において、上位コントローラ109等は、リア側開閉ロボット7の垂直アーム部43を車体15に追従させるように水平アーム部41を制御してもよい。
【0132】
本実施形態では、リア側開閉ロボット7の水平アーム部41の動作を制御することにより、連続して搬送される車体15に垂直アーム部43(フック29)を追従させる。これにより、移動装置を設けることなく、連続して搬送される車体15に対してバックドア15aを開放した状態を保持できる。
【0133】
実施形態において、上位コントローラ109等は、リア側塗装ロボット9を車体15の搬送経路から退避させる際に、リア側塗装ロボット9が搭載される搭載部19bが車体15の搬送方向における上流側に移動するように旋回アーム19を旋回させてもよい。
【0134】
仮に、リア側塗装ロボット9を搭載した搭載部19bが車体15の搬送方向における下流側に移動するように旋回アーム19を旋回させてリア側塗装ロボット9を車体15の搬送経路から退避させる場合、車体15の後端が下流側を向いた旋回アーム19の先端を通過した後に旋回アーム19を旋回させることとなり、追従距離が小さくなる。本実施形態では、リア側塗装ロボット9を搭載した搭載部19bが車体15の搬送方向における上流側に移動するように旋回アーム19を旋回させてリア側塗装ロボット9を車体15の搬送経路から退避させる。これにより、車体15の後端が上流側を向いた旋回アーム19の先端を通過した後に旋回アーム19の旋回を開始することが可能となり、追従距離を確保できる。したがって、高品質な塗装が可能となる。
【0135】
実施形態に係る塗装システム1は、車体15を前後方向に搬送するコンベア3と、塗装ブースを構成する構造物に固定された基部31を備え、車体15の後方のバックドア15aを開放するリア側開閉ロボット7と、基部31よりも鉛直方向において下方に配置された基部33を備え、リア側開閉ロボット7により開放されたバックドア15aを介して車体15の内部を塗装するリア側塗装ロボット9と、構造物に固定された基部37を備え、車体15の側方のサイドドア15bを開放するフロント側開閉ロボット11と、基部37よりも鉛直方向において下方に配置された基部39を備え、フロント側開閉ロボット11により開放されたサイドドア15bを介して車体15の内部を塗装するフロント側塗装ロボット13と、スライダ23,25を同一のレール21上で前後方向に走行させる走行装置17と、スライダ23に設置され、鉛直方向に沿った旋回軸SAx周りに旋回する旋回アーム19と、を有し、リア側塗装ロボット9は、旋回アーム19に搭載され、フロント側塗装ロボット13は、スライダ25に搭載されている。
【0136】
本実施形態の塗装システム1では、車体15の後方のバックドア15a及び側方のサイドドア15bの開放を良好に行うことができるので、リア側塗装ロボット9及びフロント側塗装ロボット13が車体15の内部を塗装するための動作エリアを確保することが可能となり、高品質な塗装を実行することができる。また、リア側開閉ロボット7とリア側塗装ロボット9の高さ位置、及び、フロント側開閉ロボット11とフロント側塗装ロボット13の高さ位置をそれぞれ異ならせることで、リア側開閉ロボット7の動作エリア91とリア側塗装ロボット9の動作エリア85、及び、フロント側開閉ロボット11の動作エリア95とフロント側塗装ロボット13の動作エリア93がそれぞれ干渉するのを回避でき、各ロボットの動作エリアを確保できる。さらに、上方に配置されるリア側開閉ロボット7及びフロント側開閉ロボット11を構造物に固定するので、重量物であるリア側開閉ロボット7用の移動装置及びフロント側開閉ロボット11用の移動装置を塗装ブースの天井や壁に設置する必要がなく、天井や壁の補強を不要又は簡易とすることができる。また、同一のレール21上にリア側塗装ロボット9とフロント側塗装ロボット13を搭載するので、塗装ブースの幅方向寸法を縮小できる。
【0137】
<12.変形例>
開示の実施形態は、上記に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
【0138】
(12-1.アーム逆取付型の塗装ロボットを用いる場合)
前述の実施形態では、旋回アーム19を、前後方向に平行となる角度(角度θが略0度)から搭載部19bがコンベア3から離れる方向に旋回させることで、リア側塗装ロボット9の下腕部59が車体15の搬送経路と干渉することを回避するようにしたが、これに限られない。例えば
図14に示すように、下腕部59が旋回部57に対して、前述のリア側塗装ロボット9とは反対側、すなわち旋回部57の他方側の側部(
図14に示す例では下側)に連結された、いわゆるアーム逆取付型のリア側塗装ロボット9Aを使用してもよい。この場合には、
図14に示すように旋回アーム19を例えば前後方向に平行となる角度に旋回させた状態でも、リア側塗装ロボット9の下腕部59が車体15の搬送経路と干渉することを回避することが可能となる。
【0139】
(12-2.車体の両側から塗装を行う場合)
前述の実施形態では、車体15が左側の側方にサイドドア15bを有する場合について説明したが、これに限られない。例えば
図15に示すように、車体15が、左右方向の両側の側方にサイドドア15b,15gをそれぞれ有してもよい。この場合、
図15に示すように、フロント側開閉ロボット11及びフロント側塗装ロボット13は、それら2台のロボットを1組とした場合に、車体15の搬送経路の左右方向における両側に1組ずつ(計2組)配置されてもよい。本変形例では、コンベア3の左側に加えて右側にも走行装置17が設置されており、車体15の右側に配置されたフロント側塗装ロボット13は、走行装置17によりレール21に沿って前後方向に移動される。また、車体15の右側に配置されたフロント側開閉ロボット11は、左側に配置されたフロント側開閉ロボット11と同様に、基部37が塗装ブースを構成する壁又は天井に固定されており、壁又は天井に対して移動しない構造となっている。左右一対のフロント側開閉ロボット11は、車体15の搬送経路(コンベア3)を中心に例えば線対称に配置されている。
【0140】
車体15の右側に配置されたフロント側開閉ロボット11は、フック35を用いて車体15のサイドドア15gを開放する。フロント側開閉ロボット11は、姿勢を変更することでフック35を車体15に追従させ、サイドドア15gを開放した状態を保持する。車体15の右側に配置されたフロント側塗装ロボット13は、フロント側開閉ロボット11により開放されたサイドドア15gを介して車体15の内部に右側方からアクセスし、車体15の内部を塗装する。
【0141】
本変形例によれば、車体15の幅方向両側に設けられたサイドドア15b,15gをそれぞれ開放して保持し、車体15の左右両側から同時並行して塗装を実行することができる。したがって、車体15の左右方向の片側から塗装を行う場合に比べてタクトタイムを短縮できる。
【0142】
(12-3.開閉ロボットと塗装ロボットの動作エリアを上下に分離する場合)
前述の実施形態では、リア側開閉ロボット7とリア側塗装ロボット9の動作エリア、及び、フロント側開閉ロボット11とフロント側塗装ロボット13の動作エリアが、それぞれ上下方向に重複するように構成されたが、例えば各動作エリアが上下方向に分離されて上下方向に重複しないように構成されてもよい。
【0143】
図16及び
図17に、本変形例におけるリア側開閉ロボット7とリア側塗装ロボット9の動作エリア、及び、フロント側開閉ロボット11とフロント側塗装ロボット13の動作エリアの一例を示す。例えば
図16に示すように、リア側開閉ロボット7の動作エリア91の上下方向の範囲を、例えば基部31の近傍から車体15のバックドア15aの開いた状態における下端近傍までの範囲としてもよい。この場合、バックドア15aは例えば作業者又は他の機械によって開放され、リア側開閉ロボット7は開放状態を保持するようにすればよい。
【0144】
本変形例では、リア側開閉ロボット7の動作エリア91と、リア側塗装ロボット9の動作エリア85とは、鉛直方向から見て少なくとも一部が前後左右方向に重複している。また、リア側塗装ロボット9の動作エリア85は、リア側開閉ロボット7の基部31よりも鉛直方向において下方に位置する。また、リア側塗装ロボット9の動作エリア85は、リア側開閉ロボット7の動作エリア91よりも鉛直方向において下方に位置する。
【0145】
また、例えば
図17に示すように、フロント側開閉ロボット11の動作エリア95の上下方向の範囲を、例えば基部37の近傍から車体15のサイドドア15bの上端の近傍までの範囲としてもよい。この場合、フロント側開閉ロボット11はフック35により例えばサイドドア15bの上端を保持するようにすればよい。
【0146】
本変形例では、フロント側開閉ロボット11の動作エリア95と、フロント側塗装ロボット13の動作エリア93とは、鉛直方向から見て少なくとも一部が前後左右方向に重複している。また、フロント側塗装ロボット13の動作エリア93は、フロント側開閉ロボット11の基部37よりも鉛直方向において下方に位置する。また、フロント側塗装ロボット13の動作エリア93は、フロント側開閉ロボット11の動作エリア95よりも鉛直方向において下方に位置する。
【0147】
本変形例によれば、リア側開閉ロボット7の動作エリア91とリア側塗装ロボット9の動作エリア85が干渉するのを回避でき、各ロボットの動作エリアを確保できる。これにより、リア側開閉ロボット7はリア側塗装ロボット9の動作の影響を受けることなくバックドア15aの開放作業を実行でき、リア側塗装ロボット9はリア側開閉ロボット7の動作の影響を受けることなく塗装作業を実行できる。したがって、高品質な塗装を実行できる。また、フロント側開閉ロボット11の動作エリア95とフロント側塗装ロボット13の動作エリア93が干渉するのを回避でき、各ロボットの動作エリアを確保できる。これにより、フロント側開閉ロボット11はフロント側塗装ロボット13の動作の影響を受けることなくサイドドア15bの開放作業を実行でき、フロント側塗装ロボット13はフロント側開閉ロボット11の動作の影響を受けることなく塗装作業を実行できる。したがって、高品質な塗装を実行できる。
【0148】
(12-4.旋回アーム及び走行装置用のコントローラを設ける場合)
前述の実施形態では、第2ロボットコントローラ99がリア側塗装ロボット9に加えて旋回アーム19及び走行装置17のスライダ23を制御し、第4ロボットコントローラ103がフロント側塗装ロボット13に加えて走行装置17のスライダ25を制御するようにしたが、塗装システム1の制御構成は上記に限定されるものではない。例えば、旋回アーム19及び走行装置17用のコントローラを別途設けてもよい。
【0149】
図18に示すように、塗装システム1は、走行装置コントローラ105と、旋回アームコントローラ107とを有する。走行装置コントローラ105は、上位コントローラ109から入力された指令(例えば位置指令等)に基づいて、各スライダ23,25の位置を所望の位置に移動させるために必要となる各アクチュエータの各サーボモータの目標回転角度等を演算する。走行装置コントローラ105は、演算結果に対応するモータ位置指令と、各サーボモータの各エンコーダの検出値等に基づいて、各アクチュエータの各サーボモータに供給する駆動電力の制御を行い、各スライダ23,25の位置をそれぞれ独立して制御する。
【0150】
旋回アームコントローラ107は、上位コントローラ109から入力された指令(例えば位置指令等)に基づいて、旋回アーム19の回転角度を所望の角度に旋回させるために必要となるアクチュエータ27のサーボモータの目標回転角度等を演算する。旋回アームコントローラ107は、演算結果に対応するモータ位置指令と、サーボモータのエンコーダの検出値等に基づいて、アクチュエータ27のサーボモータに供給する駆動電力の制御を行い、旋回アーム19の旋回動作を制御する。本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0151】
(12-5.その他)
前述の実施形態では、車体15が上下方向に開閉するバックドア15aと水平方向に開閉するサイドドア15bの両方を有する場合について説明したが、塗装対象である車体の種類は上記に限られない。例えば、車体15が上下方向に開閉するドアのみを有する場合に、上述した塗装システムを適用してもよい。また例えば、車体15が水平方向に開閉するドアのみを有する場合に、上述した塗装システムを適用してもよい。また例えば、車体15が上下方向又は水平方向に開閉する開閉部を前側に有する場合に、旋回アーム19を車体15の前方に旋回させて塗装ロボットが車体15の前側から内部にアクセスして塗装してもよい。
【0152】
<13.コントローラのハードウェア構成例>
次に、
図19を参照しつつ、上記で説明した上位コントローラ109のハードウェア構成例について説明する。
【0153】
図19に示すように、上位コントローラ109は、例えば、CPU901と、ROM903と、RAM905と、ASIC又はFPGA等の特定の用途向けに構築された専用集積回路907と、入力装置913と、出力装置915と、記録装置917と、ドライブ919と、接続ポート921と、通信装置923とを有する。これらの構成は、バス909や入出力インターフェース911を介し相互に信号を伝達可能に接続されている。
【0154】
プログラムは、例えば、ROM903やRAM905、ハードディスク等を含む記録装置917等に記録しておくことができる。
【0155】
また、プログラムは、例えば、フレキシブルディスクなどの磁気ディスク、各種のCD・MOディスク・DVD等の光ディスク、半導体メモリ等のリムーバブルな記録媒体925に、一時的又は非一時的(永続的)に記録しておくこともできる。このような記録媒体925は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することもできる。この場合、これらの記録媒体925に記録されたプログラムは、ドライブ919により読み出されて、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
【0156】
また、プログラムは、例えば、ダウンロードサイト・他のコンピュータ・他の記録装置等(図示せず)に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、LANやインターネット等のネットワークNWを介し転送され、通信装置923がこのプログラムを受信する。そして、通信装置923が受信したプログラムは、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
【0157】
また、プログラムは、例えば、適宜の外部接続機器927に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、適宜の接続ポート921を介し転送され、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
【0158】
そして、CPU901が、上記記録装置917に記録されたプログラムに従い各種の処理を実行することにより、上記の第1制御部111、第2制御部113、第3制御部115等による処理が実現される。この際、CPU901は、例えば、上記記録装置917からプログラムを直接読み出して実行してもよいし、RAM905に一旦ロードした上で実行してもよい。更にCPU901は、例えば、プログラムを通信装置923やドライブ919、接続ポート921を介し受信する場合、受信したプログラムを記録装置917に記録せずに直接実行してもよい。
【0159】
また、CPU901は、必要に応じて、例えばマウス・キーボード・マイク・タッチパネル(図示省略)等の入力装置913から入力する信号や情報に基づいて各種の処理を行ってもよい。
【0160】
そして、CPU901は、上記の処理を実行した結果を、例えば表示装置や音声出力装置等の出力装置915から出力してもよく、さらにCPU901は、必要に応じてこの処理結果を通信装置923や接続ポート921を介し送信してもよく、上記記録装置917や記録媒体925に記録させてもよい。
【0161】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
【0162】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさ、形状、位置等が「同一」「同じ」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「同じ」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に同じ」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0163】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0164】
1 塗装システム
3 コンベア(搬送装置)
3a 搭載面
5 移動装置
7 リア側開閉ロボット(第1ロボット)
9 リア側塗装ロボット(第2ロボット)
9A リア側塗装ロボット(第2ロボット)
11 フロント側開閉ロボット(第3ロボット)
13 フロント側塗装ロボット(第4ロボット)
15 車体
15a バックドア(開閉部、第1開閉部)
15b サイドドア(開閉部、第2開閉部)
15c フロア(塗装対象部)
15g サイドドア(開閉部、第2開閉部)
17 走行装置
19 旋回アーム
19a 基部
19b 搭載部
21 レール
23 スライダ(第1スライダ)
25 スライダ(第2スライダ)
29 フック(保持部)
31 基部(第1基部)
33 基部(第2基部)
37 基部(第3基部)
39 基部(第4基部)
41 水平アーム部(第1アーム部)
43 垂直アーム部(第2アーム部)
45 第1アーム部(アーム要素)
47 第2アーム部(アーム要素)
49 第3アーム部(アーム要素)
51 第4アーム部(アーム要素)
53 第5アーム部(アーム要素)
55 第6アーム部(アーム要素)
59 下腕部(アーム要素)
61 肘部(アーム要素)
111 第1制御部
113 第2制御部
115 第3制御部
D1 距離
D2 距離
R1Ax1 回転軸
R1Ax2 回転軸
R1Ax3 回転軸
R1Ax4 回転軸
R1Ax5 回転軸
R1Ax6 回転軸
R2Ax3 回転軸
R2J 関節部
SAx 旋回軸