IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大和ハウス工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-食器搬送システム 図1
  • 特開-食器搬送システム 図2
  • 特開-食器搬送システム 図3
  • 特開-食器搬送システム 図4
  • 特開-食器搬送システム 図5
  • 特開-食器搬送システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049278
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】食器搬送システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/12 20120101AFI20230403BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20230403BHJP
   B25J 5/00 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
G06Q50/12
G05D1/02 H
G05D1/02 P
B25J5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158932
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶 雄登
(72)【発明者】
【氏名】竹内 愛
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅之
【テーマコード(参考)】
3C707
5H301
5L049
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707CS08
3C707WA16
5H301AA01
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD07
5H301DD15
5H301KK02
5H301KK03
5H301KK06
5H301KK08
5H301KK09
5H301KK19
5L049CC23
(57)【要約】
【課題】宴会場のバックヤードにおいて、効率的な食器洗浄を可能とすること。
【解決手段】食器搬送システムは、台車毎に設けられた情報デバイス(10)と、台車を搬送する搬送ロボット(30)と、情報デバイスからの情報に基づいて、搬送ロボットを制御する管理装置(20)とを備える。情報デバイスは、使用中、待機中、および搬送可の3状態のうちの1つを、台車のステータスとして前工程の作業者に選択させるための操作手段(11)と、自身の位置を検出する位置検出手段(14)とを含む。管理装置は、後工程の作業者からのプッシュ通知を受け付けた場合に、各台車のステータスを判断し、搬送可の台車を搬送対象として決定する決定処理手段(61)と、搬送対象として決定された台車の位置を搬送ロボットの目的地に設定するロボット制御手段(62)とを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宴会場のバックヤードにおいて、前工程から後工程に食器を載せた台車を搬送するための食器搬送システムであって、
台車毎に設けられた情報デバイスと、
前記台車を搬送する搬送ロボットと、
前記情報デバイスからの情報に基づいて、前記搬送ロボットを制御する管理装置とを備え、
前記情報デバイスは、
使用中、待機中、および搬送可の3状態のうちの1つを、前記台車のステータスとして前記前工程の作業者に選択させるための操作手段と、
自身の位置を検出する位置検出手段とを含み、
前記管理装置は、
前記後工程の作業者からのプッシュ通知を受け付けた場合に、各台車のステータスを判断し、前記搬送可の台車を搬送対象として決定する決定処理手段と、
前記搬送対象として決定された台車の位置を前記搬送ロボットの目的地に設定するロボット制御手段とを含む、食器搬送システム。
【請求項2】
前記決定処理手段は、前記搬送可の台車がない場合に、前記使用中または前記待機中の台車の前記情報デバイスにアラートを発報する、請求項1に記載の食器搬送システム。
【請求項3】
前記決定処理手段は、前記搬送可の台車がなく、前記使用中の台車がある場合に、前記使用中の台車を搬送対象として決定する、請求項1または2に記載の食器搬送システム。
【請求項4】
前記決定処理手段は、前記搬送可および前記使用中の台車がなく、前記待機中の台車がある場合に、前記待機中の台車を搬送対象として決定する、請求項1~3のいずれかに記載の食器搬送システム。
【請求項5】
前記決定処理手段は、同一のステータスの台車が複数ある場合、履歴の古い台車を搬送対象として決定する、請求項1~4のいずれかに記載の食器搬送システム。
【請求項6】
前記決定処理手段は、同一のステータスの台車が前記前工程の複数のエリアに跨って存在する場合、前記台車の数が多いエリアを優先して搬送対象の台車を決定する、請求項1~5のいずれかに記載の食器搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器搬送システムに関し、特に、宴会場のバックヤードにおいて、前工程から後工程に食器を載せた台車を搬送するための食器搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、作業を自動化する手段の一つとして、荷物が載置されている棚をある地点から別の地点に運搬させる搬送ロボットが導入されている。
【0003】
たとえば、国際公開第2017-090108号公報(特許文献1)には、物流倉庫内に設置されている棚を物流倉庫内の目的地まで運搬し、自動的に整列して配置することができる棚配置システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017-090108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえば、宴会場のバックヤードなどにおいて、使用済みの食器を処理するために、食べ残しなどの食品残渣を食器から廃棄する前工程と、食器を洗浄する後工程が行われる。前工程において、台車に食器が溜まると、手の空いたスチュワートが、その台車を前工程から後工程に手動で運搬する。しかし、スチュワートが多忙であると、前工程に食器が載った台車が溜まってしまい、効率的に食器を洗浄することができない。
【0006】
一方で、このような作業を効率的に行うために、搬送ロボットを利用することが考えられるが、特許文献1に開示されている搬送ロボットは、搬送対象の台車が逐次変化し、宴会場の飲食の進捗に左右されるといった、宴会場のバックヤードにおける台車の運搬には適していない。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、宴会場のバックヤードにおいて、効率的な食器洗浄を可能とするための食器搬送システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に従う食器搬送システムは、宴会場のバックヤードにおいて、前工程から後工程に食器を載せた台車を搬送するための食器搬送システムであって、台車毎に設けられた情報デバイスと、台車を搬送する搬送ロボットと、情報デバイスからの情報に基づいて、搬送ロボットを制御する管理装置とを備え、情報デバイスは、使用中、待機中、および搬送可の3状態のうちの1つを、台車のステータスとして前工程の作業者に選択させるための操作手段と、自身の位置を検出する位置検出手段とを含み、管理装置は、後工程の作業者からのプッシュ通知を受け付けた場合に、各台車のステータスを判断し、搬送可の台車を搬送対象として決定する決定処理手段と、搬送対象として決定された台車の位置を搬送ロボットの目的地に設定するロボット制御手段とを含む。
【0009】
好ましくは、決定処理手段は、搬送可の台車がない場合に、使用中または待機中の台車の情報デバイスにアラートを発報する。
【0010】
好ましくは、決定処理手段は、搬送可の台車がなく、使用中の台車がある場合に、使用中の台車を搬送対象として決定する。
【0011】
好ましくは、決定処理手段は、搬送可および使用中の台車がなく、待機中の台車がある場合に、待機中の台車を搬送対象として決定する。
【0012】
好ましくは、決定処理手段は、同一のステータスの台車が複数ある場合、履歴の古い台車を搬送対象として決定する。
【0013】
好ましくは、決定処理手段は、同一のステータスの台車が前工程の複数のエリアに跨って存在する場合、台車の数が多いエリアを優先して搬送対象の台車を決定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、宴会場のバックヤードにおいて、効率的な食器洗浄を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る食器搬送システムの概要を模式的に示す図である。
図2】(A)は、本発明の実施の形態に係る食器搬送システムの概略構成を示すブロック図であり、(B)は、台車に設けられた情報デバイスを拡大して示す図である。
図3】(A)は、情報デバイスの構成を示すブロック図であり、(B)は、管理装置の構成を示すブロック図であり、(C)は、搬送ロボットの構成を示すブロック図である。
図4】ステータスDBのデータ構造例を示す図である。
図5】本発明の実施の形態における食器搬送処理を示すフローチャートである。
図6図5に示す台車判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0017】
<食器搬送システムの概要>
図1および図2(A)を参照して、本実施の形態に係る食器搬送システム1の概要について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る食器搬送システム1の概要を模式的に示す図である。図2(A)は、食器搬送システム1の概略構成を示すブロック図である。
【0018】
図1に示されるように、ホテルなどの施設では、1フロアにおいて、宴会場101とバックヤード102とが配置されている。宴会場101はフロアの大部分の領域を占めており、バックヤード102は宴会場101に隣接して配置されている。バックヤード102は、残渣処理場103、食洗場104、および通路105を含み、残渣処理場103と食洗場104は、通路105を介して接続されている。バックヤード102は、従業員だけが行き来することができるエリアである。
【0019】
なお、図1に示す一例では、1つの宴会場101に対して、1つのバックヤード102が設けられているが、1つのバックヤード102に対して宴会場101が複数設けられていてもよいし、残渣処理場103だけが複数設けられていてもよい。
【0020】
宴会場101は、複数人が一斉に飲食を行う会場であり、一般的な宴会だけに限らず、たとえば朝食や夕食などの会場、披露宴会場、ディナーショーの会場などを含むものとする。宴会場101では、たとえばバイキング形式などで料理の提供が行われる。飲食が終わった後、利用者が食器をセルフで片づけることができるように、移動式の食器返却棚2が宴会場101の複数個所に複数台設けられている。食器返却棚2は、たとえばパイプ式であり、複数段の棚と、複数の車輪とを含む。
【0021】
残渣処理場103は、食器の上に残った食べ残しなどの食品残渣を廃棄する。宴会場101に設置されている食器返却棚2の食器の載積量が多くなると、食器返却棚2は、白抜き矢印で示すように、ウェイターなどの給仕スタッフにより残渣処理場103に運ばれる。残渣処理場103において、残渣処理スタッフにより、食器の上の食品残渣は廃棄される。食品残渣が処理された食器は、たとえば番重などのフードコンテナの中に収納され、バックヤード102内を移動する台車3の棚の上に載置される。なお、残渣処理場103では、食器洗浄は行われず、食器の洗浄の前段階の処理だけが行われる。残渣処理場103において食器から食品残渣を廃棄する工程を「前工程」という。
【0022】
図2(A)に示すように、台車3は、たとえばパイプ式であり、複数段の棚と、複数の車輪とを含む。台車3の棚の上には、複数の食器が収納されたフードコンテナが載置されている。
【0023】
食洗場104は、残渣処理場103で残渣処理された食器を洗浄する洗い場である。残渣処理された食器が載置された台車3は、破線の矢印で示すように、残渣処理場103から通路105を通って食洗場104に搬送される。食洗場104において、洗浄スタッフにより、食器が洗浄される。食洗場104において食器を洗浄する工程を「後工程」という。
【0024】
食洗場104には、たとえば食器洗浄機などが設けられており、洗浄の効率化のために、常に一定量の食器があることが好ましい。つまり、前工程である残渣処理場103から、食器が載せられた台車3が遅滞なく後工程である食洗場104に搬送されることが好ましい。
【0025】
そこで、本実施の形態の食器搬送システム1は、宴会場のバックヤード102において、前工程から後工程に食器を載せた台車3を搬送ロボット30により自動的に搬送する。
【0026】
<食器搬送システムの構成>
図2(A)に示すように、本実施の形態の食器搬送システム1は、台車3毎に設けられる情報デバイス10と、台車3を搬送する搬送ロボット30と、情報デバイス10からの情報に基づいて、搬送ロボット30を制御する管理装置20とを備える。管理装置20は、たとえば端末40を介してプッシュ通知を受け付ける。
【0027】
図2(B)は、台車3に設けられた情報デバイス10を拡大して示す図である。図3(A)は、情報デバイスの構成を示すブロック図であり、図3(B)は、管理装置の構成を示すブロック図であり、図3(C)は、搬送ロボットの構成を示すブロック図である。
【0028】
特に図2(B)に示すように、情報デバイス10は、外観的な構成として、台車3のステータス情報を変更するための操作部11と、台車3のステータス情報を表示する表示部12とを含む。
【0029】
さらに図3(A)に示すように、情報デバイス10は、内部構成として、各種データおよびプログラムを記憶するメモリ13と、自身の位置を検出する位置検出部14と、各種演算処理を実行するコントローラ15と、ネットワークを介して他の通信機器と通信する通信部16と、外部にアラートを報知する報知部17とを含む。
【0030】
操作部11は、台車3の3状態、すなわち「使用中」、「待機中」、および「搬送可」のうちの1つを前工程の残渣処理スタッフに台車3のステータスとして選択させるためのものである。ここで、「使用中」とは、残渣処理スタッフにより残渣処理が行われている最中であり、前工程の途中の状態を示す。「待機中」とは、未使用状態であり、食器が台車3に載置されていない空の状態を示す。「搬送可」とは、残渣処理スタッフによる残渣処理が完了し、台車3に残渣処理済の食器が載置されている状態であり、前工程が完了した状態を示す。具体的には、図2(B)に示すように、操作部11は、「使用中」のボタン11aと、「待機中」のボタン11bと、「搬送可」のボタン11cとを有する。
【0031】
残渣処理場103の残渣処理スタッフがこれらのボタン11a,11b,11cを選択的に押すことで、表示部12の表示を変更することができる。具体的には、残渣処理スタッフが残渣処理を行っている状態では、「使用中」のボタン11aを押下して、情報デバイス10の表示部12の表示を「使用中」にしておく。残渣処理スタッフが残渣処理を完了し、台車3に残渣処理済の食器が載置されている状態では、「搬送可」のボタン11cを押下して、情報デバイス10の表示部12の表示を「搬送可」にしておく。なお、図2(B)では、台車3の状態が「搬送可」であることが示されている。
【0032】
位置検出部14は、情報デバイス10が取り付けられている台車3の座標値を検出する。位置検出部14は、たとえば、バックヤード102に設置されたビーコン発信機からの電波を受信する受信機により構成されている。報知部17は、たとえばランプまたはブザーなどであり、後工程の洗浄スタッフからプッシュ通知があったことを外部に報知する。
【0033】
図3(B)に示すように、管理装置20は、ハードウェア構成として、各種演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)21と、各種データおよびプログラムを記憶するメモリ22と、外部機器からの信号を入出力する入出力部23と、ネットワークを介して情報デバイス10、搬送ロボット30、および端末40などの通信機器と通信する通信部24と、各種情報を表示する表示部25とを備えている。
【0034】
管理装置20は、主な機能構成として、決定処理部61と、ロボット制御部62と、ステータスDB(データベース)26とを含む。
【0035】
決定処理部61は、後工程の洗浄スタッフからのプッシュ通知を受け付けた場合に、各台車3のステータスを判断し、搬送対象の台車3として決定する処理を実行する。具体的には、洗浄スタッフが、食洗場104にある食器が少ないと判断した場合に、端末40でプッシュ通知を行う。決定処理部61は、そのプッシュ通知を受け付けると、「搬送可」の台車3を搬送対象として決定する。決定処理部61は、「搬送可」の台車3がない場合は、「使用中」または「待機中」の台車3の情報デバイス10にアラートを発報する。これにより、残渣処理スタッフがボタン11を押し忘れていたとしても、押し忘れに気づくため、台車3のステータスを適切なステータスに変更させることができる。
【0036】
その後も、「搬送可」の台車3がない場合には、「使用中」の台車3がある場合に、「使用中」の台車3を搬送対象として決定してもよい。「搬送可」および「使用中」の台車3がなく、「待機中」の台車3がある場合に、「待機中」の台車3を搬送対象として決定してもよい。本実施の形態では、決定処理部61は、台車3のステータスを確認し、「搬送可」「使用中」「待機中」の順番で、搬送する台車3を搬送対象として決定する。これにより、「搬送可」の台車3がない場合であっても、食器を載せた台車3を効率的に搬送することができる。
【0037】
決定処理部61は、同一のステータスの台車3が複数ある場合、履歴の古い台車3を搬送対象として決定する。履歴の古い台車とは、現在のステータスの継続時間が最も長い台車のことである。
【0038】
決定処理部61は、同一のステータスの台車3が前工程の複数のエリアに跨って存在する場合、たとえば台車3の数が多いエリアを優先して搬送対象の台車3を決定する。残渣処理場103が2箇所以上設けられている場合、台車3は複数の残渣処理場103に跨って存在することになるためである。これにより、前工程で処理する台車3を残しつつ、食器が不足している後工程に食器が載った台車3を効率よく搬送することができる。
【0039】
ロボット制御部62は、搬送対象として決定された台車3の位置を搬送ロボット30の目的地に設定する。具体的には、ロボット制御部62は、搬送ロボット30の目的地を搬送対象として決定された台車3の座標値にする。
【0040】
図4に示すように、ステータスDB26には、台車No.に対応付けて、その台車3のステータス、台車3が置かれているエリア、台車3がそのステータスになった時間(時刻)、および台車3の位置が記憶されている。台車3のステータスは、上述した台車3の3状態である。エリアは、台車3の位置により算出され、位置は、台車3の座標値である。情報デバイス10は、各台車3にそれぞれ設けられているため、台車3の識別IDとしての台車No.により、それぞれの台車3のステータスと位置とが特定できる。
【0041】
図2(A)に示すように、端末40は、たとえばスマートフォン、タブレットなどの携帯型の端末であり、後工程の洗浄スタッフなどが所持する。端末40は、ハードウェア構成として、典型的には、各種演算処理を実行するCPUなどのプロセッサと、各種データおよびプログラムを記憶する記憶部と、各種情報を表示する表示部と、ネットワークを介して他の通信機器と通信する通信部とを備えている(図示せず)。上述のように、食洗場104では、一定量以上の食器があることが好ましい。そのため、食洗場104の洗浄スタッフは、洗浄するための食器が少なくなった場合などに、端末40を介して、管理装置20に台車3の搬送を依頼する。
【0042】
図3(C)に示すように、搬送ロボット30は、台車3を搬送する。搬送ロボット30は、バックヤード102内を自走して、搬送対象である台車3を自動的に搬送する無人搬送車である。搬送ロボット30は、装置本体の前面(前方側面)に設けられ、周囲環境との距離を計測するレーザー距離センサ31と、装置本体の上面には台車3を上げ下げする荷役プレート32と、装置本体の下面に設けられる車輪(図示せず)とを含む。搬送ロボット30は、搬送対象である台車3の位置(ステータスDB26の座標値で指定される場所)まで移動して台車3の下に潜り込み、台車3を持ち上げる。搬送ロボット30は、その状態で目的地まで移動する。
【0043】
搬送ロボット30の装置本体の内部には、荷役プレート32の駆動機構、車輪の駆動機構、それらの動作を制御するコンピュータ(CPU、RAM、ROM)が備えられている。後述する機能は、コンピュータによるプログラムの実行を通じて提供される。
【0044】
データ送受信部73は、インターネットを通じて管理装置20と無線接続されており、台車3の搬送に関する情報である搬送データ82を管理装置20から受信すると共に、搬送の終了を管理装置20に通知する。センシング部74は、レーザー距離センサ31で計測したデータをセンサデータ85として記憶部(RAM)に格納する。荷役部75は、駆動機構(図示せず)を制御して、荷役プレート32の上げ下げおよび旋回の少なくとも一方を制御する。地図更新部76は、ステータスDB26に格納されている地図データを現在の状態に合うよう更新する。
【0045】
駆動部77は、車輪を駆動して搬送ロボット30を移動させる駆動機構である。移動制御部78は、管理装置20から指示を受信した後、搬送データ82に基づいて作成した移動経路データ83に沿って移動するように駆動部77を制御し、搬送ロボット30のバックヤード102内における移動を制御する。本実施の形態では、移動制御部78は、駆動部77だけでなく装置本体内の全ての動作を制御する。
【0046】
搬送ロボット30の記憶部(例えばRAM)には、地図データ81と、管理装置20より受信した搬送データ82と、現在地から移動先までの経路を示す移動経路データ83と、レーザー距離センサ31を用いて測定した周囲環境との距離を表すセンサデータ85と、センサデータ85と地図データとの照合処理により算出した現在位置データ84とが格納される。
【0047】
上述の決定処理部61およびロボット制御部62の機能は、管理装置20のCPU21がソフトウェアを実行することにより実現される。ステータスDB26は、不揮発性の記憶装置により実現される。なお、上記の機能部のうちの少なくとも一つは、ハードウェアにより実現されてもよい。
【0048】
なお、上記実施形態の搬送ロボット30は、自己位置を検出する手段としてレーザ距離センサ31を用いていたが、これに限定されず、たとえばカメラなどの映像から自己位置を推定してもよい。
【0049】
<食器搬送システムの動作>
図5および図6は、本実施の形態における食器搬送処理を示すフローチャートである。食器搬送処理は、管理装置20のCPU21が、ステータスDB26に予め記憶されたプログラム(食器搬送プログラム)を読み出して実行することにより実現される。
【0050】
図5を参照して、管理装置20の決定処理部61は、後工程の洗浄スタッフからプッシュ通知を受け付けた場合に、「搬送可」の台車3があるか否かを確認する(ステップS2)。
【0051】
台車3はバックヤード102において複数台設けられている。そのため、「搬送可」の台車3があり(ステップS2にてYES)、「搬送可」の台車3が1台しかない場合は(ステップS4にてYES)、その台車3を搬送対象として決定する(ステップS6)。この場合、ロボット制御部62は、ステップS6で搬送対象とされた台車3を搬送ロボット30の目的地に設定する(ステップS9)。「搬送可」の台車3が複数台ある場合は(ステップS4にてNO)、台車判定処理に進む(ステップS8)。
【0052】
台車判定処理は、図6に示されている。図6を参照して、「搬送可」の台車3が複数台ある場合、その台車3が複数のエリアに跨って存在するかを確認し、1つのエリアにしか存在しない場合(ステップS50)、履歴の古い台車3を搬送対象として決定する(ステップS52)。具体的には、複数の台車3が、1つの残渣処理場103にしか存在しない場合、管理装置20のステータスDB26に記憶されている時間が古い台車3の台車No.(図4では台車No.2)を選択し、その台車3の位置を搬送ロボット30の搬送対象として決定する。
【0053】
「搬送可」の台車3が複数のエリアに存在する場合(ステップS50)、各エリアの台車3の台数を取得する(ステップS54)。台車3の台数が同数のエリアが存在するかを確認し、台車3の数が同数のエリアがある場合(ステップS56にてYES)、履歴の古い台車3を搬送対象として決定する(ステップS58)。一方、台車3の数が同数のエリアがない場合(ステップS56にてNO)、台車3の数が最も多いエリアであり、履歴の古い台車3を搬送対象に決定する(ステップS60)。これにより、搬送対象に決定した台車3を搬送ロボット30の目的地に設定し(ステップS9)、食器搬送処理は終了する。
【0054】
図5に示すように、決定処理部61は、「搬送可」の台車3が存在しない場合(ステップS2にてNO)、「使用中」の台車3が存在するか確認する。「使用中」の台車3が存在する場合は(ステップS10にてYES)、情報デバイス10の報知部17は、たとえばランプまたはブザーなどのアラートを発報する(ステップS12)。
【0055】
「使用中」の台車3は、残渣処理スタッフが作業中の台車であるため、通常では後工程に搬送される状態ではない。しかし、残渣処理スタッフが、残渣処理を終了した後であっても、ボタンを押し忘れて「使用中」の状態のままの台車3がある。そのような台車3にアラートが発報されることで、前工程の残渣処理スタッフに、ボタンの押し忘れを気付かせることができる。また、残渣処理スタッフが「使用中」の台車3で作業中の場合であっても、その「使用中」の台車3にアラートが発報されることで、残渣処理スタッフは後工程で洗うための食器が不足していることがわかる。
【0056】
前工程の残渣処理スタッフにより「搬送可」のボタンが押下された場合であり(ステップS14にてYES)、さらに「搬送可」の台車3が1台の場合は(ステップS16にてYES)、その台車3を搬送対象として決定する(ステップS18)。この場合、ロボット制御部62は、ステップS18で搬送対象とされた台車3を搬送ロボット30の目的地に設定し(ステップS21)、食器搬送処理は終了する。
【0057】
前工程の残渣処理スタッフにより「搬送可」のボタンが押下されない場合であり(ステップS14にてNO)、さらに「搬送可」の台車3が1台の場合は(ステップS16にてYES)、その台車3を搬送対象として決定する(ステップS24)。この場合、ロボット制御部62は、ステップS24で搬送対象とされた台車3を搬送ロボット30の目的地に設定し(ステップS27)、食器搬送処理は終了する。「搬送可」の台車3が複数台の場合は(ステップS22にてNO)、上述の台車判定処理に進んだ後(ステップS26)、食器搬送処理は終了する。
【0058】
「使用中」の台車3が存在しない場合(ステップS10にてNO)、「待機中」の台車3が存在するか確認する。「待機中」の台車3が存在する場合は(ステップS28にてYES)は、情報デバイス10の報知部17はアラートを発報する(ステップS30)。
【0059】
「使用中」の台車3と同様に、「待機中」の台車3も、通常では後工程に搬送される状態ではない。しかし、「待機中」の台車3にアラートが発報されることで、後工程で洗うための食器が不足していることがわかる。そこで、「待機中」の台車3にアラートを発報することで、前工程の残渣処理スタッフに食器の搬送を促すことができる。
【0060】
前工程の残渣処理スタッフにより「搬送可」のボタンが押下された場合であり(ステップS32にてYES)、さらに「搬送可」の台車3が1台の場合は(ステップS16にてYES)、その台車3を搬送対象として決定する(ステップS18)。さらに、ロボット制御部62は、決定処理部61により搬送対象とされた台車3を搬送ロボット30の目的地に設定し(ステップS21)、食器搬送処理は終了する。
【0061】
前工程の残渣処理スタッフにより「搬送可」のボタンが押下されず(ステップS32にてNO)、「使用中」のボタンが押下され(ステップS34にてYES)、さらに「使用中」の台車3が1台しかない場合は(ステップS36にてYES)、その台車3を搬送対象として決定する(ステップS38)。この場合、ロボット制御部62は、ステップS38で搬送対象とされた台車3を搬送ロボット30の目的地に設定し(ステップS41)食器搬送処理は終了する。「使用中」の台車3が複数台の場合は(ステップS36にてNO)、上述の台車判定処理に進んだ後(ステップS40)、食器搬送処理は終了する。
【0062】
前工程の残渣処理スタッフにより「使用中」のボタンが押下されず(ステップS34にてNO)、さらに「使用中」の台車3が1台しかない場合は(ステップS42にてYES)、その台車3を搬送対象として決定する(ステップS46)。この場合、ロボット制御部62は、ステップS46で搬送対象とされた台車3を搬送ロボット30の目的地に設定する(ステップS45)。「使用中」の台車3が複数台の場合は(ステップS42にてNO)、上述の台車判定処理に進んだ後(ステップS45)、食器搬送処理は終了する。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態に係る食器搬送装置1によれば、搬送ロボット30を用いて、食器を載せた台車3の搬送を自動化することができるため、効率的に食器洗浄を行うことができる。
【0064】
また、前工程の残渣処理スタッフがステータスを変更するボタン11を押し忘れて、台車3のステータスが「使用中」または「待機中」の場合のままであっても、台車3の情報デバイス10にアラートが発報されるため、残渣処置スタッフに、ボタン11の押し忘れを気付かせて、ボタン11の押下を促すことができる。
【0065】
さらに、残渣処理スタッフが、たとえばアラートに気づかずにボタン11を押下しない場合であっても、ステータスが「使用中」または「待機中」の台車3を搬送ロボット30により強制的に搬送することができる。そのため、少しでも食器を載せた台車3が食洗場104に絶え間なく搬送されることになるため、効率的に食器洗浄を行うことができる。
【0066】
<変形例>
本実施の形態の管理装置20のステータスDB26は、ハードディスク上に予め記憶されることに限定されず、たとえばクラウドサーバーなどの外部リソース上に保存されていてもよい。
【0067】
管理装置20により実行される食器搬送処理を、プログラムとして提供してもよい。このようなプログラムは、CD-ROM(Compact Disc-ROM)などの光学媒体や、メモリカードなどのコンピュータ読取り可能な一時的でない(non-transitory)記録媒体にて記録させて提供することができる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0068】
本発明にかかるプログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0069】
また、本発明にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
1 食器搬送システム、2 食器返却棚、10 情報デバイス、11 操作部、12 表示部、14 位置検出部、20 管理装置、61 決定処理部、62 ロボット制御部、101 宴会場、102 バックヤード、103 残渣処理場、104 食洗場。
図1
図2
図3
図4
図5
図6