(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049283
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】導電性粒子、導電性粒子の製造方法、及び導電性組成物
(51)【国際特許分類】
H01B 5/00 20060101AFI20230403BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20230403BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20230403BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20230403BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
H01B5/00 C
H01B5/00 K
H01B13/00 501Z
H01B1/00 C
H01B1/00 K
H01B1/22 A
H01R11/01 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158939
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】和久 香緒里
(72)【発明者】
【氏名】波木 秀次
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄介
(72)【発明者】
【氏名】久我 生子
(72)【発明者】
【氏名】西尾 健
【テーマコード(参考)】
5G301
5G307
【Fターム(参考)】
5G301DA02
5G301DA03
5G301DA05
5G301DA06
5G301DA10
5G301DA13
5G301DA15
5G301DA29
5G301DA42
5G301DA43
5G301DA51
5G301DA53
5G301DA57
5G301DA60
5G301DD03
5G301DE01
5G307AA02
(57)【要約】
【課題】加熱圧着時におけるマトリックス導電材料からなるマトリックス層の流出を防止でき、導通信頼性及び絶縁性の向上を図れる導電性粒子、導電性粒子の製造方法、及び導電性組成物の提供。
【解決手段】母粒子と、該母粒子の表面にマトリックス導電材料と、ドメイン導電材料と、を有する導電性粒子である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母粒子と、該母粒子の表面にマトリックス導電材料と、ドメイン導電材料と、を有することを特徴とする導電性粒子。
【請求項2】
前記ドメイン導電材料の融点が前記マトリックス導電材料の融点よりも高い、請求項1に記載の導電性粒子。
【請求項3】
前記母粒子の表面における前記マトリックス導電材料からなるマトリックス層の平均厚みが1nm以上である、請求項1から2のいずれかに記載の導電性粒子。
【請求項4】
前記マトリックス導電材料がSnと、Bi、Ag、Cu、及びInから選択される少なくとも1種とを含む、請求項1から3のいずれかに記載の導電性粒子。
【請求項5】
前記ドメイン導電材料がAu、Ag、Cu、Ni、Sn、及びZnから選択される少なくとも1種を含む、請求項1から4のいずれかに記載の導電性粒子。
【請求項6】
前記母粒子が、樹脂粒子及び金属被覆樹脂粒子の少なくともいずれかである、請求項1から5のいずれかに記載の導電性粒子。
【請求項7】
メカノケミカル法により製造される、請求項1から6のいずれかに記載の導電性粒子。
【請求項8】
母粒子と、マトリックス導電材料と、ドメイン導電材料とをメカノケミカル法により混合する混合工程を含むことを特徴とする導電性粒子の製造方法。
【請求項9】
前記母粒子の平均粒径が3μm以上300μm以下である、請求項8に記載の導電性粒子の製造方法。
【請求項10】
前記母粒子の平均粒径Cに対する前記ドメイン導電材料の平均粒径Dの比率(D/C)が、1/10,000以上1/10以下である、請求項9に記載の導電性粒子の製造方法。
【請求項11】
前記マトリックス導電材料Aと前記ドメイン導電材料Bとの混合質量比率(A:B)が、9:1~5:5である、請求項8から10のいずれかに記載の導電性粒子の製造方法。
【請求項12】
請求項1から7のいずれかに記載の導電性粒子を含有することを特徴とする導電性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粒子、導電性粒子の製造方法、及び導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、メカノケミカル法(ハイブリタイゼーション処理)により母粒子の表面に小粒子を物理的に衝突させ、母粒子の表面に小粒子により膜を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
例えば、
図1Aに示すように、表面に金属層102を有する母粒子101と、SnBi等のはんだ粒子103とをメカノケミカル法により混合すると、母粒子101の表面に、はんだ層103aを有する導電性粒子100が製造される(
図1B参照)。次に、
図1Cに示すように、導電性粒子100を含む導電性組成物を用いて接続構造体を作製し、接続構造体を加熱圧着すると、溶融したはんだ層103aが押されて流出し導通信頼性が低下してしまう(
図1D参照)。また、
図1Eに示すように、加熱圧着時に隣接する導電性粒子100同士が合一化し、絶縁性が低下してしまうという問題がある。
【0003】
また、基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置されたはんだ層とを備え、前記はんだ層がはんだ割れを抑制する補強材料を含む導電性粒子が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2では、補強材料としてカーボンブラック又はカーボンナノチューブが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-209491号公報
【特許文献2】特開2013-54851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2に記載の導電性粒子は、母粒子の表面にマトリックス導電材料とドメイン導電材料を有するものではなく、接続構造体の電気的な接続に用いた場合に、溶融した後、固化したはんだ部分に割れが生じ難い導電性粒子を提供することを課題としており、加熱圧着時におけるマトリックス導電材料からなるマトリックス層の流出を防止して、導通信頼性及び絶縁性の向上を図ることを課題としていない。
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、加熱圧着時におけるマトリックス導電材料からなるマトリックス層の流出を防止でき、導通信頼性及び絶縁性の向上を図れる導電性粒子、導電性粒子の製造方法、及び導電性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 母粒子と、該母粒子の表面にマトリックス導電材料と、ドメイン導電材料と、を有することを特徴とする導電性粒子である。
<2> 前記ドメイン導電材料の融点が前記マトリックス導電材料の融点よりも高い、前記<1>に記載の導電性粒子である。
<3> 前記母粒子の表面における前記マトリックス導電材料からなるマトリックス層の平均厚みが1nm以上である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の導電性粒子である。
<4> 前記マトリックス導電材料がSnと、Bi、Ag、Cu、及びInから選択される少なくとも1種とを含む、前記<1>から<3>のいずれかに記載の導電性粒子である。
<5> 前記ドメイン導電材料がAu、Ag、Cu、Ni、Sn、及びZnから選択される少なくとも1種を含む、前記<1>から<4>のいずれかに記載の導電性粒子である。
<6> 前記母粒子が、樹脂粒子及び金属被覆樹脂粒子の少なくともいずれかである、前記<1>から<5>のいずれかに記載の導電性粒子である。
<7> メカノケミカル法により製造される、前記<1>から<6>のいずれかに記載の導電性粒子である。
<8> 母粒子と、マトリックス導電材料と、ドメイン導電材料とをメカノケミカル法により混合する混合工程を含むことを特徴とする導電性粒子の製造方法である。
<9> 前記母粒子の平均粒径が3μm以上300μm以下である、前記<8>に記載の導電性粒子の製造方法である。
<10> 前記母粒子の平均粒径Cに対する前記ドメイン導電材料の平均粒径Dの比率(D/C)が、1/10,000以上1/10以下である、前記<9>に記載の導電性粒子の製造方法である。
<11> 前記マトリックス導電材料Aと前記ドメイン導電材料Bとの混合質量比率(A:B)が、9:1~5:5である、前記<8>から<10>のいずれかに記載の導電性粒子の製造方法である。
<12> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の導電性粒子を含有することを特徴とする導電性組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、加熱圧着時におけるマトリックス導電材料からなるマトリックス層の流出を防止でき、導通信頼性及び絶縁性の向上を図れる導電性粒子、導電性粒子の製造方法、及び導電性組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、はんだ粒子と母粒子とをメカノケミカル法により混合する様子を示す図である。
【
図1B】
図1Bは、従来の導電性粒子の一例を示す概略図である。
【
図1C】
図1Cは、
図1Bの導電性粒子を用いた接続構造体の接続部を模式的に示す概略図である。
【
図1D】
図1Dは、加熱圧着時の導電性粒子の様子を示す模式図である。
【
図1E】
図1Eは、加熱圧着時に隣接する導電性粒子が合一化する状態を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、マトリックス導電材料と、ドメイン導電材料と、母粒子とをメカノケミカル法により混合する様子を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の導電性粒子の一例を示す概略図である。
【
図2C】
図2Cは、
図2Bの導電性粒子を用いた接続構造体の接続部を模式的に示す概略図である。
【
図2D】
図2Dは、加熱圧着時の導電性粒子の様子を示す模式図である。
【
図2E】
図2Eは、加熱圧着時に隣接する導電性粒子が合一化していない状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(導電性粒子)
本発明の導電性粒子は、母粒子と、該母粒子の表面にマトリックス導電材料と、ドメイン導電材料と、を有する。
前記導電性粒子は、母粒子の表面にマトリックス導電材料からなるマトリックス層を有し、前記マトリックス層中にドメイン導電材料からなるドメイン粒子が分散した状態で存在している。これにより、加熱圧着時にマトリックス層が溶融しても前記マトリックス層中に存在するドメイン粒子がマトリックス層の流動を抑制し、加熱圧着時にマトリックス層が流出することを防止できるので、導通信頼性が向上する。また、隣接する導電性粒子同士が合一化することがないので、絶縁性が向上する。
【0011】
<母粒子>
母粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂粒子、金属被覆樹脂粒子、有機無機ハイブリッド粒子、金属粒子などが挙げられる。これらの中でも、応力緩和性に優れる点から、樹脂粒子又は金属被覆樹脂粒子が好ましい。
【0012】
前記樹脂粒子における樹脂としては、例えば、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、ベンゾグアナミン樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン-シリカ複合樹脂などが挙げられる。
前記金属被覆樹脂粒子は、樹脂粒子の表面に金属層が設けられた粒子である。前記樹脂粒子への金属層の被覆方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電解めっき法、スパッタリング法、などが挙げられる。
前記金属層としては、ニッケル、銀、銅、金、及びパラジウムの少なくともいずれかの単体金属又はこれらの合金であることが好ましい。
前記金属層の平均厚みは、50nm以上300nm以下が好ましく、80nm以上250nm以下がより好ましい。なお、前記金属層が複数の金属層から構成される場合は、複数の金属層の合計平均厚みが上記平均厚みの範囲を満たすことが好ましい。
前記有機無機ハイブリッド粒子としては、例えば、架橋したアルコキシシリルポリマーとアクリル樹脂とにより形成された粒子などが挙げられる。
前記金属粒子としては、例えば、ニッケル粒子、コバルト粒子、銀粒子、銅粒子、金粒子、パラジウム粒子、はんだ粒子などが挙げられる。
【0013】
前記母粒子の平均粒径は、3μm以上300μm以下が好ましく、10μm以上50μm以下がより好ましい。前記母粒子の平均粒径が3μm以上300μm以下であると、メカノケミカル法を用いて導電性粒子を効率よく作製することができる。
前記平均粒径は、乾式撮像型粒度分布計(Morphologi G3、Malvern社製)を用い、約1万個の粒子を測定し、粒度分布は個数頻度で表すことができる。
【0014】
<マトリックス導電材料>
マトリックス導電材料は、前記母粒子の表面に層状に存在し、マトリックス層を形成する。
前記マトリックス導電材料としては、JIS Z3282-1999に規定されている、Sn-Pb系はんだ粒子、Pb-Sn-Sb系はんだ粒子、Sn-Sb系はんだ粒子、Sn-Pb-Bi系はんだ粒子、Sn-Bi系はんだ粒子、Sn-Bi-Ag系はんだ粒子、Sn-Bi-Cu系はんだ粒子、Sn-Cu系はんだ粒子、Sn-Pb-Cu系はんだ粒子、Sn-In系はんだ粒子、Sn-Ag系はんだ粒子、Sn-Pb-Ag系はんだ粒子、Pb-Ag系はんだ粒子、Sn-Ag-Cu系はんだ粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、Snと、Bi、Ag、Cu、及びInから選択される少なくとも1種と、を含むはんだ粒子が好ましく、Sn-Bi系はんだ粒子、Sn-Bi-Ag系はんだ粒子、Sn-Ag-Cu系はんだ粒子、Sn-In系はんだ粒子がより好ましい。
【0015】
前記母粒子の表面におけるマトリックス導電材料からなるマトリックス層の平均厚みは1nm以上が好ましく、100nm以上1000nm以下がより好ましい。
前記マトリックス層の平均厚みは、例えば、乾式撮像型粒度分布計(Morphologi G3、Malvern社製)を用い、メカノケミカル前後で約1万個の粒子を測定し、粒度分布は個数頻度で比較した。得られたメカノケミカル前後での粒子径から増加した厚みを算出することにより求めることができる。
前記母粒子の表面における前記マトリックス導電材料からなるマトリックス層の平均厚みは、前記マトリックス層中に存在するドメイン導電材料からなるドメイン粒子の平均粒径よりも大きいことが好ましい。これにより、マトリックス層中にドメイン粒子を確実に保持することができる。
前記マトリックス導電材料の融点は、110℃以上240℃以下が好ましく、120℃以上200℃以下がより好ましい。
前記マトリックス導電材料の融点は、前記ドメイン導電材料の融点よりも低いことが、マトリックス導電材料からなるマトリックス層中にドメイン導電材料が粒子状態で存在できる点から好ましい。
【0016】
<ドメイン導電材料>
ドメイン導電材料は、前記母粒子の表面のマトリックス導電材料からなるマトリックス層中にドメイン粒子として存在する。
前記ドメイン導電材料としては、Au、Ag、Cu、Ni、Sn、及びZnから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
前記母粒子表面におけるマトリックス導電材料Aとドメイン導電材料Bとの質量比(A:B)は、9:1~5:5であることが好ましい。
【0017】
本発明の導電性粒子によると、加熱圧着した導電性粒子のマトリックス層の流出が抑制され、導通信頼性が向上する。また、隣接する導電性粒子同士が合一化することがなくなるので、絶縁性が向上する。
本発明の導電性粒子は、母粒子と、マトリックス導電材料と、ドメイン導電材料とを混合するメカノケミカル法により製造されることが好ましい。
【0018】
(導電性粒子の製造方法)
本発明の導電性粒子の製造方法は、母粒子と、マトリックス導電材料と、ドメイン導電材料とをメカノケミカル法により混合する混合工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の導電性粒子の製造方法によると、母粒子の表面に層状に形成されたマトリックス導電材料からなる層が溶融してもマトリックス導電材料からなるマトリックス層中にドメイン導電材料からなるドメイン粒子がマトリックス層の流動を抑制し、加熱圧着時にマトリックス層が流出しない導電性粒子が得られる。
【0019】
前記メカノケミカル法は、例えば、衝撃、圧縮、粉砕、混合、混練などの機械的操作において、物質に加えられる機械的エネルギーにより生じる化学反応を利用するものであり、例えば、高速撹拌型粉体球状化装置、ハイブリダイザー等を用いた混合法などが挙げられる。
前記高速撹拌型粉体球状化装置としては、例えば、型式NSM-200、型式NSM-350(いずれも株式会社セイシン企業製)などが挙げられる。
前記ハイブリダイザーとしては、例えば、ハイブリダイゼーションシステムNHS(株式会社奈良機械製作所製)などが挙げられる。
【0020】
前記マトリックス導電材料及び前記ドメイン導電材料は、混合工程前においていずれも粒子状であり、母粒子の平均粒径Cに対する、マトリックス導電材料からなるマトリックス粒子の平均粒径D1及びドメイン導電材料からなるドメイン粒子の平均粒径D2の比率(D1/C又はD2/C)は、1/100,000以上1/10以下が好ましく、1/10,000以上1/10以下がより好ましく、1/1,000以上1/10以下が更に好ましい。前記比率(D1/C又はD2/C)が1/100,000以上1/10以下であると、前記マトリックス粒子及び前記ドメイン粒子を用いて母粒子表面にドメイン粒子が分散したマトリックス層を効率よく形成することができる。
前記マトリックス導電材料からなるマトリックス粒子の平均粒径及びドメイン導電材料からなるドメイン粒子の平均粒径は、例えば、乾式撮像型粒度分布計(Morphologi G3、Malvern社製)を用い、約1万個の粒子を測定し、粒度分布は個数頻度で比較することができる。
【0021】
前記マトリックス導電材料Aと前記ドメイン導電材料Bとの混合質量比率(A:B)は、95:5~5:95が好ましく、9:1~5:5がより好ましい。これにより、前記マトリックス導電材料及びドメイン導電材料を用いて母粒子表面にドメイン粒子が分散したマトリックス層を効率よく形成することができる。
【0022】
図2Aは、本発明の導電性粒子の製造方法における混合工程を説明するための概略図である。
図2Aに示すように、混合工程においては、表面に金属層12を有する母粒子11と、マトリックス導電材料13と、ドメイン導電材料14とを、メカノケミカル法により混合し、母粒子11にマトリックス導電材料13及びドメイン導電材料14を衝突させる。すると、
図2Bに示すように、マトリックス導電材料12からなるマトリックス層12a中にドメイン導電材料からなるドメイン粒子13が分散している導電性粒子10が製造される。
次に、
図2Cに示すように、導電性粒子10を含む導電性組成物を用いて接続構造体を作製し、前記接続構造体を加熱圧着すると、
図2Dに示すように、マトリックス層13aが溶融してもマトリックス層13a中に存在するドメイン粒子14がマトリックス層13aの流動を抑制し、マトリックス層13aの流出を防止できるので、導通信頼性が向上する。また、
図2Eに示すように、接続構造体の加熱圧着時にマトリックス層13aの流出が抑制されるので、隣接する導電性粒子10同士が合一化することがなくなり、絶縁性が向上する。
【0023】
(導電性組成物)
本発明の導電性組成物は、本発明の導電性粒子を含有し、バインダー、単官能の重合性モノマー、エラストマー、硬化剤、及びシランカップリング剤を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0024】
前記導電性組成物は、フィルム状の導電性フィルム、又はペースト状の導電性ペーストのいずれであってもよい。取り扱いのし易さの点から導電性フィルムが好ましく、コストの点から導電性ペーストが好ましい。なお、導電性組成物が導電性フィルムである場合、該導電性粒子を含む導電性フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されてもよい。
【0025】
-導電性粒子-
導電性粒子としては、上述した本発明の導電性粒子が用いられる。
前記導電性粒子の前記導電性組成物における含有量としては、特に制限はなく、接続構造体の配線ピッチや、接続面積などによって適宜調整することができる。
【0026】
-バインダー-
前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製膜性、加工性、及び接続信頼性の点から、フェノキシ樹脂が特に好ましい。
前記フェノキシ樹脂とは、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンより合成される樹脂であって、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば商品名:YP-50(東都化成株式会社製)、YP-70(東都化成株式会社製)、EP1256(ジャパンエポキシレジン株式会社製)などが挙げられる。
前記バインダーの導電性組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、20質量%~70質量%が好ましく、35質量%~55質量%がより好ましい。
【0027】
-単官能の重合性モノマー-
前記単官能の重合性モノマーとしては、分子内に重合性基を1つ有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単官能の(メタ)アクリルモノマー、スチレンモノマー、ブタジエンモノマー、その他2重結合を有するオレフィン系モノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、接着強度及び接続信頼性の点から、単官能(メタ)アクリルモノマーが特に好ましい。
前記単官能(メタ)アクリルモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸n-ドデシル、アクリル酸2-エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2-クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸、又はそのエステル類;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸n-ドデシル、メタクリル酸2-エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸又はそのエステル類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記単官能の重合性モノマーの導電性組成物における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2質量%~30質量%であることが好ましく、5質量%~20質量%であることがより好ましい。
【0029】
-硬化剤-
前記硬化剤としては、バインダーを硬化できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、有機過酸化物などが好適である。
前記有機過酸化物としては、例えば、ラウロイルパーオキサイド、ブチルパーオキサイド、ベンジルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ベンジルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキサイドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記硬化剤の導電性組成物における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1質量%~15質量%であることが好ましく、3質量%~10質量%であることがより好ましい。
【0030】
-エラストマー-
エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリウレタン系エラストマー、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
-シランカップリング剤-
前記シランカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばエポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤、チオール系シランカップリング剤、アミン系シランカップリング剤などが挙げられる。
前記シランカップリング剤の導電性組成物における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%~10質量%であることが好ましく、1質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0032】
-その他の成分-
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機溶剤、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、イオンキャッチャー剤などが挙げられる。前記その他の成分の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0033】
<用途>
本発明の導電性粒子及び導電性組成物は、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、フレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))などの様々な接続対象部材の電極間を電気的に接続するために用いることができる。
【実施例0034】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例では、母粒子としてアクリル樹脂コアNiメッキ粒子、アクリル樹脂粒子を用い、マトリックス導電材料としてCu粒子、Ni粒子、Au粒子を用い、ドメイン導電材料としてSnBi粒子、SnAgCu粒子を用いた。
【0035】
以下の実施例において、母粒子、マトリックス導電材料及びドメイン導電材料の平均粒径は、以下のようにして測定した。
【0036】
<母粒子、マトリックス導電材料、及びドメイン導電材料の平均粒径の測定>
母粒子、マトリックス導電材料、及びドメイン導電材料の平均粒径は、乾式撮像型粒度分布計(Morphologi G3、Malvern社製)を用い、約1万個の粒子を測定し、粒度分布は個数頻度で表した。
【0037】
<マトリックス層の平均厚みの測定>
乾式撮像型粒度分布計(Morphologi G3、Malvern社製)を用い、メカノケミカル前後で約1万個の粒子を測定し、粒度分布は個数頻度で比較した。得られたメカノケミカル前後での粒子径から増加した厚みを算出し、平均厚みを求めた。
【0038】
(実施例1)
<導電性粒子の作製>
Cu粒子(大陽日酸株式会社製、平均粒径:100nm、融点1,083℃)1質量部に対してSnBi粒子(中国ベンチャー企業製、平均粒径:100nm、融点139℃)9質量部、及びアクリル樹脂コアNiメッキ粒子(積水化学工業株式会社製、平均粒径:20μm)30質量部を測量し、カップに入れ、1分間ウッドバーで混ぜ合わせた。この混合物を高速撹拌型粉体球状化装置(NSM-200、株式会社セイシン企業製)へ投入し、窒素雰囲気下、3,000rpmで1分間造粒を行い、実施例1の導電性粒子を作製した。
【0039】
<導電性フィルムの作製>
作製した実施例1の導電性粒子5質量部と、下記の絶縁性バインダー95質量部とを遊星式撹拌装置に投入し、1分間撹拌して導電性組成物を作製した。
次に、導電性組成物を厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンで5分間乾燥させ、導電性組成物からなる厚さ25μmの粘着層をPETフィルム上に形成し、幅2.0mmの導電性フィルムを作製した。
【0040】
-絶縁性バインダー-
絶縁性バインダーは、フェノキシ樹脂(商品名:YP-50、新日化エポキシ製造株式会社製)47質量部、単官能モノマー(商品名:M-5300、東亞合成株式会社製)3質量部、ウレタン樹脂(商品名:UR-1400、東洋紡績株式会社製)25質量部、ゴム成分(商品名:SG80H、ナガセケムテックス株式会社製)15質量部、シランカップリング剤(商品名:A-187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)2質量部、及び有機過酸化物(商品名:ナイパーBW、日油株式会社製)3質量部を、固形分が50質量%となるように含有する、酢酸エチルとトルエンとの混合溶液とした。
【0041】
<接続構造体の作製>
上記導電性フィルムを介して、評価用基板(ガラスエポキシ基板(FR4)、200μmピッチ、ライン:スペース=1:1、端子厚み10μm、Cu(下地)/Ni/Auメッキ)と、FPC(ポリイミドフィルム、200μmピッチ、ライン:スペース=1:1、端子厚み12μm、Cu(下地)/Ni/Auメッキ)とを加熱圧着し、接続構造体を作製した。
加熱圧着は、FPC上の厚み200μmのシリコンラバーを介してツールを押し下げ、温度:150℃、圧力:2MPa、時間:20secの条件で行った。
【0042】
<導通特性の評価>
初期導通性として、デジタルマルチメータ(横河電機株式会社製)を用い、4端子法にて電流1mAを流したときの接続構造体の初期導通抵抗を測定し、下記の基準で評価した。
導通信頼性として、上記初期導通性と同様に、温度85℃、湿度85%、500時間の条件の環境試験後の接続構造体の導通抵抗を測定し、下記の基準で評価した。
[評価基準]
◎:導通抵抗が100mΩ未満の場合
〇:導通抵抗が100mΩ以上1,000mΩ以下の場合
△:導通抵抗が1,000mΩを超えた場合
×:導通抵抗がOPEN
【0043】
<マトリックス層の流出、隣接する導電性粒子同士の自己融着性の評価>
接続構造体の端子部分の導電性粒子の断面観察を圧着サンプルの裁断を行い、走査型電子顕微鏡を用いて断面観察することにより行い、マトリックス層の流出、及び隣接する導電性粒子同士の自己融着性について評価した。接続構造体の端子部分の導電性粒子のマトリックス層の流出、及び隣接する導電性粒子同士の自己融着が無かった場合の評価を「無し」とし、接続構造体の端子部分の導電性粒子のマトリックス層の流出、及び隣接する導電性粒子同士の自己融着が有った場合の評価を「有り」とした。
【0044】
<絶縁性>
温度85℃、湿度85%、500時間の条件の環境試験後の接続構造体について、2つのパターン間にプローブで電圧を印可し、その時の流れる電流から絶縁抵抗を測定し、下記の基準で評価した。
[評価基準]
◎:電気抵抗が105Ω以上の場合
△:電気抵抗が105Ω未満の場合
×:ショートが発生した場合
【0045】
実施例1において、導通抵抗を測定した結果、初期導通抵抗は40mΩを示し良好であった。更に、85℃で85%RHの環境下、オーブンに500時間保管した接続構造体の導通抵抗を測定したところ、50mΩを示し、良好な導通信頼性が得られた。また、接続構造体の導電性粒子部分の断面観察を行った結果、マトリックス層は流出せずに金属結合をしていることを確認した。また、隣接する導電性粒子同士は自己融着せず、隣接する導電性粒子間の良好な絶縁状態が確認できた。
【0046】
(実施例2)
<導電性粒子の作製>
実施例1において、Cu粒子(大陽日酸株式会社製、平均粒径:100nm、融点1,083℃)をNi粒子(大陽日酸株式会社製、平均粒径:100nm、融点1455℃)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の導電性粒子を作製した。
【0047】
<導電性フィルムの作製、接続構造体の作製、及び評価>
作製した実施例2の導電性粒子を用い、実施例1と同様にして導電性フィルム及び接続構造体を作製し、実施例1と同様にして導通抵抗を測定した結果、初期導通抵抗は40mΩを示し良好であった。更に、85℃で85%RHの環境下、オーブンに500時間保管した接続構造体の導通抵抗を測定したところ、50mΩを示し、良好な導通信頼性が得られた。また、接続構造体の導電性粒子部分の断面観察を行った結果、マトリックス層は流出せずに金属結合をしていることを確認した。また、隣接する導電性粒子同士は自己融着せず、隣接する導電性粒子間の良好な絶縁状態が確認できた。
【0048】
(実施例3)
<導電性粒子の作製>
実施例1において、Cu粒子(大陽日酸株式会社製、平均粒径:100nm、融点1,083℃)をAu粒子(中国ベンチャー企業製、平均粒径:100nm、融点1,064℃)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の導電性粒子を作製した。
【0049】
<導電性フィルムの作製、接続構造体の作製、及び評価>
作製した実施例3の導電性粒子を用い、実施例1と同様にして導電性フィルム及び接続構造体を作製し、実施例1と同様にして導通抵抗を測定した結果、初期導通抵抗は40mΩを示し良好であった。更に、85℃で85%RHの環境下、オーブンに500時間保管した接続構造体の導通抵抗を測定したところ、50mΩを示し、良好な導通信頼性が得られた。また、接続構造体の導電性粒子部分の断面観察を行った結果、マトリックス層は流出せずに金属結合をしていることを確認した。また、隣接する導電性粒子同士は自己融着せず、隣接する導電性粒子間の良好な絶縁状態が確認できた。
【0050】
(実施例4)
<導電性粒子の作製>
実施例1において、SnBi粒子(中国ベンチャー企業製、平均粒径:100nm、融点139℃)をSnAgCu粒子(中国ベンチャー企業製、平均粒径:100nm、融点220℃)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の導電性粒子を作製した。
【0051】
<導電性フィルムの作製、接続構造体の作製、及び評価>
作製した実施例4の導電性粒子を用い、実施例1と同様にして導電性フィルム及び接続構造体を作製し、実施例1と同様にして導通抵抗を測定した結果、初期導通抵抗は40mΩを示し良好であった。更に、85℃で85%RHの環境下、オーブンに500時間保管した接続構造体の導通抵抗を測定したところ、50mΩを示し、良好な導通信頼性が得られた。また、接続構造体の導電性粒子部分の断面観察を行った結果、マトリックス層は流出せずに金属結合をしていることを確認した。また、隣接する導電性粒子同士は自己融着せず、隣接する導電性粒子間の良好な絶縁状態が確認できた。
【0052】
(実施例5)
<導電性粒子の作製>
実施例4において、Cu粒子(大陽日酸株式会社製、平均粒径:100nm、融点1,083℃)をNi粒子(大陽日酸株式会社製、平均粒径:100nm、融点1,455℃)に代えた以外は、実施例4と同様にして、実施例5の導電性粒子を作製した。
【0053】
<導電性フィルムの作製、接続構造体の作製、及び評価>
作製した実施例5の導電性粒子を用い、実施例1と同様にして導電性フィルム及び接続構造体を作製し、実施例1と同様にして導通抵抗を測定した結果、初期導通抵抗は40mΩを示し良好であった。更に、85℃で85%RHの環境下、オーブンに500時間保管した接続構造体の導通抵抗を測定したところ、50mΩを示し、良好な導通信頼性が得られた。また、接続構造体の導電性粒子部分の断面観察を行った結果、マトリックス層は流出せずに金属結合をしていることを確認した。また、隣接する導電性粒子同士は自己融着せず、隣接する導電性粒子間の良好な絶縁状態が確認できた。
【0054】
(実施例6)
<導電性粒子の作製>
実施例1において、Cu粒子(大陽日酸株式会社製、平均粒径:100nm、融点1,083℃)をNi粒子(中国ベンチャー企業製、平均粒径:1000nm、融点1455℃)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例6の導電性粒子を作製した。
【0055】
<導電性フィルムの作製、接続構造体の作製、及び評価>
作製した実施例6の導電性粒子を用い、実施例1と同様にして導電性フィルム及び接続構造体を作製し、実施例1と同様にして導通抵抗を測定した結果、初期導通抵抗は40mΩを示し良好であった。更に、85℃で85%RHの環境下、オーブンに500時間保管した接続構造体の導通抵抗を測定したところ、50mΩを示し、良好な導通信頼性が得られた。また、接続構造体の導電性粒子部分の断面観察を行った結果、マトリックス層は流出せずに金属結合をしていることを確認した。また、隣接する導電性粒子同士は自己融着せず、隣接する導電性粒子間の良好な絶縁状態が確認できた。
【0056】
(実施例7)
<導電性粒子の作製>
実施例1において、Cu粒子(大陽日酸株式会社製、平均粒径:100nm、融点1,083℃)をNi粒子(中国ベンチャー企業製、平均粒径:30nm、融点1,455℃)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例7の導電性粒子を作製した。
【0057】
<導電性フィルムの作製、接続構造体の作製、及び評価>
作製した実施例7の導電性粒子を用い、実施例1と同様にして導電性フィルム及び接続構造体を作製し、実施例1と同様にして導通抵抗を測定した結果、初期導通抵抗は100mΩを示した。更に、85℃で85%RHの環境下、オーブンに500時間保管した接続構造体の導通抵抗を測定したところ、160mΩを示した。また、接続構造体の導電性粒子部分の断面観察を行った結果、マトリックス層の流出がやや生じていることを確認した。また、隣接する導電性粒子同士はやや自己融着していた。
【0058】
(実施例8)
<導電性粒子の作製>
実施例2において、Ni粒子(大陽日酸株式会社製、平均粒径:100nm、融点1,455℃)5質量部、SnBi粒子(中国ベンチャー企業製、平均粒径:100nm、融点139℃)5質量部、及びアクリル樹脂コアNiメッキ粒子(積水化学工業株式会社製、平均粒径:20μm)30質量部とした以外は、実施例2と同様にして、実施例8の導電性粒子を作製した。
【0059】
<導電性フィルムの作製、接続構造体の作製、及び評価>
作製した実施例8の導電性粒子を用い、実施例1と同様にして導電性フィルム及び接続構造体を作製し、実施例1と同様にして導通抵抗を測定した結果、初期導通抵抗は40mΩを示し良好であった。更に、85℃で85%RHの環境下、オーブンに500時間保管した接続構造体の導通抵抗を測定したところ、50mΩを示し、良好な導通信頼性が得られた。また、接続構造体の導電性粒子部分の断面観察を行った結果、マトリックス層は流出せずに金属結合をしていることを確認した。また、隣接する導電性粒子同士は自己融着せず、隣接する導電性粒子間の良好な絶縁状態が確認できた。
【0060】
(実施例9)
<導電性粒子の作製>
実施例2において、Ni粒子(大陽日酸株式会社製、平均粒径:100nm、融点1,455℃)1質量部、SnBi粒子(中国ベンチャー企業製、平均粒径:100nm、融点139℃)9質量部、及びアクリル樹脂コアNiメッキ粒子(積水化学工業株式会社製、平均粒径:20μm)30質量部とした以外は、実施例2と同様にして、実施例9の導電性粒子を作製した。
【0061】
<導電性フィルムの作製、接続構造体の作製、及び評価>
作製した実施例9の導電性粒子を用い、実施例1と同様にして導電性フィルム及び接続構造体を作製し、実施例1と同様にして導通抵抗を測定した結果、初期導通抵抗は150mΩを示した。更に、85℃で85%RHの環境下、オーブンに500時間保管した接続構造体の導通抵抗を測定したところ、180mΩを示した。また、接続構造体の導電性粒子部分の断面観察を行った結果、マトリックス層は流出せずに金属結合をしていることを確認した。また、隣接する導電性粒子同士は自己融着せず、隣接する導電性粒子間の良好な絶縁状態が確認できた。
【0062】
(実施例10)
<導電性粒子の作製>
実施例1において、アクリル樹脂コアNiメッキ粒子(積水化学工業株式会社製、平均粒径:20μm)をアクリル樹脂粒子(積水化学工業株式会社製、平均粒径:20μm)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例10の導電性粒子を作製した。
【0063】
<導電性フィルムの作製、接続構造体の作製、及び評価>
作製した実施例10の導電性粒子を用い、実施例1と同様にして導電性フィルム及び接続構造体を作製し、実施例1と同様にして導通抵抗を測定した結果、初期導通抵抗は40mΩを示し良好であった。更に、85℃で85%RHの環境下、オーブンに500時間保管した接続構造体の導通抵抗を測定したところ、50mΩを示し、良好な導通信頼性が得られた。また、接続構造体の導電性粒子部分の断面観察を行った結果、マトリックス層は流出せずに金属結合をしていることを確認した。また、隣接する導電性粒子同士は自己融着せず、隣接する導電性粒子間の良好な絶縁状態が確認できた。
【0064】
(比較例1)
<導電性粒子>
導電性粒子としてアクリル樹脂コアNiメッキ粒子(積水化学工業株式会社製、平均粒径:20μm)を用いた。
【0065】
<導電性フィルムの作製、接続構造体の作製、及び評価>
作製した比較例1の導電性粒子を用い、実施例1と同様にして導電性フィルム及び接続構造体を作製し、実施例1と同様にして導通抵抗を測定した結果、初期導通抵抗は150mΩを示し。更に、85℃で85%RHの環境下、オーブンに500時間保管した接続構造体の導通抵抗を測定したところ、1,500mΩを示し、導通信頼性が低下した。また、隣接する導電性粒子同士は自己融着せず、隣接する導電性粒子間の良好な絶縁状態が確認できた。
【0066】
(比較例2)
<導電性粒子の作製>
実施例1において、Cu粒子を用いず、SnBi粒子のみを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の導電性粒子を作製した。
【0067】
<導電性フィルムの作製、接続構造体の作製、及び評価>
作製した比較例2の導電性粒子を用い、実施例1と同様にして導電性フィルム及び接続構造体を作製し、実施例1と同様にして導通抵抗を測定した結果、初期導通抵抗は180mΩを示した。更に、85℃で85%RH環境下、オーブンに500時間保管した接続構造体の導通抵抗を測定したところ、1,500mΩを示し導通抵抗値の上昇を確認し、導通信頼性がNGであることを確認した。接続構造体の粒子部分の断面観察を行った結果、はんだはやや流出していたが、はんだと基板は金属結合をしていることを確認した。また、隣接する導電性粒子同士は一部自己融着していた。
【0068】
(比較例3)
<導電性粒子の作製>
実施例1において、SnBi粒子を用いず、Cu粒子のみを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例3の導電性粒子を作製した。
【0069】
<導電性フィルムの作製、接続構造体の作製、及び評価>
作製した比較例3の導電性粒子を用い、実施例1と同様にして導電性フィルム及び接続構造体を作製し、実施例1と同様にして導通抵抗を測定した結果、初期導通抵抗は1000mΩを示した。更に、85℃で85%RH環境下、オーブンに500時間保管した接続構造体の導通抵抗を測定したところ、2,000mΩを示し導通抵抗値の上昇を確認し、導通信頼性がNGであることを確認した。
【0070】
(比較例4)
<導電性粒子の作製>
実施例1において、SnBi粒子を用いず、Ni粒子のみを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例4の導電性粒子を作製した。
【0071】
<導電性フィルムの作製、接続構造体の作製、及び評価>
作製した比較例4の導電性粒子を用い、実施例1と同様にして導電性フィルム及び接続構造体を作製し、実施例1と同様にして導通抵抗を測定した結果、初期導通抵抗は1000mΩを示した。更に、85℃で85%RH環境下、オーブンに500時間保管した接続構造体の導通抵抗を測定したところ、2,000mΩを示し導通抵抗値の上昇を確認し、導通信頼性がNGであることを確認した。
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
表1~表5の結果から、実施例1~10の導電性粒子は、比較例1~4の導電性粒子に比べて、マトリックス層の流出、及び隣接する導電性粒子同士の合一化が防止できるので、導通信頼性及び絶縁性が向上することがわかった。
本発明の導電性粒子及び導電性組成物は、優れた導通信頼性及び絶縁性を有しているので、例えば、フレキシブルプリント基板(FPC)やICチップの端子とLCDパネルのガラス基板上に形成されたITO(Indium Tin Oxide)電極との接続、COFとPWBの接続、TCPとPWBの接続、COFとガラス基板の接続、COFとCOFの接続、IC基板とガラス基板の接続、IC基板とPWBの接続などに好適に用いられる。