(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049290
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】硬化性、硬化後の除去性、保存安定性に優れる歯科用水硬性仮封材組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 6/70 20200101AFI20230403BHJP
A61K 6/54 20200101ALI20230403BHJP
A61K 6/20 20200101ALI20230403BHJP
A61K 6/60 20200101ALI20230403BHJP
【FI】
A61K6/70
A61K6/54
A61K6/20
A61K6/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158947
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】390011143
【氏名又は名称】株式会社松風
(72)【発明者】
【氏名】下曽山 俊
(72)【発明者】
【氏名】西村 真波
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA06
4C089AA07
4C089BA04
4C089BA06
4C089BA07
4C089BA13
4C089BA18
4C089BD19
4C089BE04
4C089BE05
4C089CA03
(57)【要約】
【課題】
歯科臨床において、根管治療が行われる際、感染歯質を除去した後の経過観察期間や、薬剤の適用期間などに、根管内への食物の混入や治療部位の細菌感染の防止、根管に填入した薬剤の封鎖などを目的として、歯科用水硬性仮封材を窩洞や根管に暫間的に充填する仮封が行われている。
本発明は高い硬化性、優れた硬化後の除去性、良好な保存安定性の全てを満足する。
【解決手段】
50%粒子径が0.1μm以下である非水溶性の微粒子を含む歯科用水硬性仮封材組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(1)微粒子を含む歯科用水硬性仮封材組成物であって、前記成分(1)微粒子の50%粒子径が0.1μm以下であり、且つ、非水溶性であることを特徴とする歯科用水硬性仮封材組成物。
【請求項2】
前記成分(1)微粒子の表面が疎水化処理されていないことを特徴とする請求項1に記載の歯科用水硬性仮封材組成物。
【請求項3】
請求項1、又は2の何れかに記載の歯科用水硬性仮封材組成物が
成分(2)石こう粉末、
成分(3)有機溶媒、及び
成分(4)樹脂
を含む歯科用水硬性仮封材組成物。
【請求項4】
成分(1)微粒子 0.3~10質量%、
成分(2)石こう粉末 20~85質量%、
成分(3)有機溶媒 10~25質量%、及び
成分(4)樹脂 3~15質量%
を含む請求項3に記載の歯科用水硬性仮封材組成物。
【請求項5】
前記成分(3)有機溶媒がグリセリン、若しくはその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項3、又は4に記載の歯科用水硬性仮封材組成物。
【請求項6】
前記成分(4)樹脂が酢酸ビニル、又は塩化ビニルの単独重合体、又はそれらの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項3~5の何れか一項に記載の歯科用水硬性仮封材組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯科用水硬性仮封材組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯科臨床において、根管治療が行われる際、感染歯質を除去した後の経過観察期間や、薬剤の適用期間などに、根管内への食物の混入や治療部位の細菌感染の防止、根管に填入した薬剤の封鎖などを目的として、歯科用水硬性仮封材を窩洞や根管に暫間的に充填する仮封が行われている。
【0003】
歯科用水硬性仮封材は石こう粉末を主成分とするパテ状のペーストであり、窩洞に充填後、口腔内の唾液などの水分と反応して硬化する。仮封期間終了後は、硬化した歯科用水硬性仮封材を破壊して除去する。このような歯科用水硬性仮封材組成物としては、特許文献1、又は2に例示されるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-213608号公報
【特許文献2】特開2018-95573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の歯科用水硬性仮封材は硬化性が緩慢であったため、処置後早期に機能させることができないという欠点があった。硬化性成分である石こう粉末を高配合することで硬化性を高くすることは可能であるものの、その場合硬化体が硬くなりすぎてしまい、除去が困難になる。また、製造初期の硬化性は高くとも、製造から長期間経過すると経時的に硬化性が低下するという欠点もあった。このように、従来の歯科用水硬性仮封材は高い硬化性、優れた硬化後の除去性、良好な保存安定性の全てを満足することは困難であった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高い硬化性を有しつつ、硬化後の除去性に優れると共に、経時的に硬化性が低下することなく良好な保存安定性を有する歯科用水硬性仮封材組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明の歯科用水硬性仮封材組成物は50%粒子径が0.1μm以下である非水溶性の微粒子を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の歯科用水硬性仮封材組成物の一実施形態としては、前記微粒子が疎水化処理されていないことが好ましい。
【0009】
本発明の歯科用水硬性仮封材組成物の他の実施形態としては、石こう粉末、有機溶媒、及び樹脂を含むことが好ましい。
【0010】
本発明の歯科用水硬性仮封材組成物の他の実施形態としては、組成物全体に対して、微粒子を0.3~10質量%、石こう粉末を20~85質量%、有機溶媒を10~25質量%、及び樹脂を3~15質量%含むことが好ましい。
【0011】
本発明の歯科用水硬性仮封材組成物の他の実施形態としては、有機溶媒がグリセリン、若しくはその誘導体から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0012】
本発明の歯科用水硬性仮封材組成物の他の実施形態としては、樹脂が酢酸ビニル、又は塩化ビニルの単独重合体、又はそれらの共重合体から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高い硬化性を有しつつ、硬化後の除去性に優れると共に、経時的に硬化性が低下することなく良好な保存安定性を有する歯科用水硬性仮封材組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の歯科用水硬性仮封材組成物は50%粒子径が0.1μm以下である非水溶性の微粒子を含むことを特徴とする。
【0015】
50%粒子径が0.1μm以下である非水溶性の成分(1)微粒子は、本発明の歯科用水硬性仮封材組成物に高い硬化性、優れた硬化後の除去性、及び良好な保存安定性を与える成分である。
【0016】
成分(1)微粒子の50%粒子径は0.1μm以下でなければならず、0.05μm以下であることが好ましく、0.02μm以下であることが更に好ましい。粒子径が0.1μmを超えると、高い硬化性が得られなくなるだけでなく、経時的に硬化性が低下し、良好な保存安定性を発現しなくなることがある。加えて、微粒子を配合していない場合よりも硬化体が硬くなり、硬化後の除去性がかえって悪くなってしまう場合がある。
【0017】
成分(1)微粒子は非水溶性でなければならない。水溶性の微粒子を用いた場合、本発明の特徴である高い硬化性、優れた硬化後の除去性、及び良好な保存安定性を発現しなくなることがある。
【0018】
成分(1)微粒子の構成元素や結晶構造等に特に制限はなく、公知の微粒子を用いることができる。中でも水や有機溶媒に対して膨潤性を示しにくく、硬度が高い無機微粒子を用いることが好ましい。
【0019】
成分(1)微粒子を具体的に例示すると、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化ジルコニウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、ソーダライムシリケートガラス、チタニアシリカガラスなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは2種類以上を組合せて使用しても良い。その中でも、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化亜鉛を用いることが好ましい。
【0020】
成分(1)微粒子は表面処理の有無に特に制限はないものの、疎水化処理が施されていないことが好ましい。親水性表面を有する微粒子を用いることで、高い硬化性と良好な保存安定性を発現しやすくなる。
【0021】
成分(1)微粒子の含有量は特に制限はないものの、歯科用水硬性仮封材組成物全体に対して0.3~10質量%の範囲内であることが好ましく、1~5質量%の範囲内であることが更に好ましい。成分(1)微粒子の含有量を0.3質量%以上とすることで、高い硬化性、優れた除去性、及び良好な保存安定性を確実に発現させることができる。また、成分(1)微粒子の含有量を10質量%以下とすることで、扱いやすいペースト性状を維持し、過度な硬化膨張を生じないようにできる。
【0022】
成分(1)微粒子の形状に特に制限はなく、球状、針状、板状、破砕状、鱗片状などの任意の形状のものを用いることができる。
【0023】
成分(2)石こう粉末は水の存在下で反応・硬化する成分であり、本発明の歯科用水硬性仮封材組成物に硬化性を与える成分である。本発明における石こう粉末とは硫酸カルシウム半水和物を意味する。
【0024】
成分(2)石こう粉末の含有量に特に制限はないものの、歯科用水硬性仮封材組成物全体に対して20~85質量%の範囲内であることが好ましく、40~75質量%の範囲内であることが更に好ましい。成分(2)石こう粉末の含有量を20質量%以上とすることで、高い硬化性、及び良好な保存安定性を確実に発現させることができる。また、成分(2)石こう粉末の含有量を85質量%以下とすることで、優れた硬化後の除去性をより顕著に発現させることができる。
【0025】
成分(2)石こう粉末の50%粒子径に特に制限はなく、扱いやすいペースト性状となるように、任意の粒子径のものを用いることができる。
【0026】
成分(2)石こう粉末の形状に特に制限はなく、球状、針状、板状、破砕状、鱗片状などの任意の形状のものを用いることができる。
【0027】
成分(2)石こう粉末の密度に特に制限はなく、中実、中空、多孔質などの任意の密度のものを用いることができる。
【0028】
成分(3)有機溶媒は本発明の歯科用水硬性仮封材組成物をペースト化させるための成分である。
【0029】
成分(3)有機溶媒は、成分(2)石こう粉末と反応しないものであれば特に制限はなく、公知の有機溶媒を用いることができる。但し、保存安定性の観点から、揮発性の低い有機溶媒を用いることが好ましい。
【0030】
成分(3)有機溶媒を具体的に例示すると、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、低分子量ポリエチレングリコール、グリセリンなどのアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、グリセリンモノアセテート、グリセリンジアセテート、グリセリントリアセテート、グリセリンモノメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、グリセリンモノステアラートなどの脂肪酸エステル、ブタン、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、アセトンなどのケトン、ジエチルエーテルなどのエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化アルキル、ジメチルポリシロキサン、ジビニルジメチルポリシロキサンなどのオルガノポリシロキサン、メチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは2種類以上を組合せて使用しても良い。その中でもグリセリン、グリセリンモノアセテート、グリセリンジアセテート、グリセリントリアセテート、グリセリンモノメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、グリセリンモノステアラートなどのグリセリン、若しくはその誘導体を用いることが好ましい。
【0031】
成分(3)有機溶媒の含有量に特に制限はないものの、歯科用水硬性仮封材組成物全体に対して10~25質量%の範囲内であることが好ましく、15~25質量%の範囲内であることが更に好ましい。成分(3)有機溶媒の含有量を10質量%以上とすることで、本発明の歯科用水硬性仮封材組成物が扱いやすいペースト状となり、良好な操作性を付与することができる。また、成分(3)有機溶媒の含有量を25質量%以下とすることで、ペーストのベタツキを低減し、良好な操作性を付与することができる。
【0032】
成分(4)樹脂は本発明の歯科用水硬性仮封材組成物に可塑性を与え、ペーストの操作性を調整するための成分である。
【0033】
成分(4)樹脂は成分(3)有機溶媒と相溶するものであれば特に制限はなく、公知の樹脂を用いることができる。
【0034】
成分(4)樹脂を具体的に例示すると、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸などの単独重合体、及び共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは2種類以上を組合せて使用しても良い。その中でも酢酸ビニル、又は塩化ビニルの単独重合体、又はそれらの共重合体を用いることが好ましい。
【0035】
成分(4)樹脂の含有量に特に制限はないものの、歯科用水硬性仮封材組成物全体に対して3~15質量%の範囲内であることが好ましく、5~10質量%の範囲内であることが更に好ましい。成分(4)樹脂の含有量を3質量%以上とすることで、本発明の歯科用水硬性仮封材組成物に十分な可塑性が付与され、良好な操作性を発現させることができる。また、成分(4)樹脂の含有量を15質量%以下とすることで、高い硬化性、優れた硬化後の除去性、経時的に硬化性が低下することのない良好な保存安定性をより顕著に発現させることができる。
【0036】
更に、本発明の歯科用水硬性仮封材組成物は本発明の効果を阻害しない範囲において、顔料、染料、反応調整剤、充填材、賦形材、界面活性剤、抗菌剤、イオン放出剤などを添加することができる。
【実施例0037】
以下に本発明の実施例及び比較例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
(歯科用水硬性仮封材組成物の調製に用いた成分の詳細)
実施例、及び比較例の歯科用水硬性仮封材組成物の調製に用いた成分を表1に示した。また、微粒子1~5、及び充填材1~6の50%粒子径の測定結果も併せて記載した。尚、50%粒子径は微粒子1~5については電子顕微鏡による観察像を画像解析することによって算出し、充填材1~6については日機装社製マイクロトラックMT3300を用いて測定した。
【0039】
(歯科用水硬性仮封材組成物の調製)
表2に示した配合に従い、各成分を計量し、混練機にて混練することで各実施例、及び比較例の歯科用水硬性仮封材組成物を調製した。実施例、及び比較例に示す歯科用水硬性仮封材組成物の評価方法は次の通りである。
【0040】
(歯科用水硬性仮封材組成物の硬化性)
実施例、及び比較例に示す歯科用水硬性仮封材組成物を内径15mm、高さ3mmの金属リングに満たし、試験片を作製した。これを37℃の恒温水槽に試験片の底面だけが水に接するように浸漬させ30分間静置後、恒温水槽から試験片を取り出して水分を除去した。試験片天面から重さ100gf、直径1mmのビカー針を静かに下ろし、試験片底面からの硬化層の厚みを測定し、それを硬化性とした。
【0041】
(歯科用水硬性仮封材組成物の加速試験後の硬化性)
実施例、及び比較例に示す歯科用水硬性仮封材組成物をプラスチック製容器に充填し、50℃の環境下に1ヶ月間静置することで加速試験を実施した。加速試験後の各歯科用水硬性仮封材組成物について、前記方法に従い硬化させた後、硬化層の厚みを測定し、それを加速試験後の硬化性とした。
【0042】
(減衰率)
加速試験による硬化性の減衰率を式(1)により算出した。
(式1)
減衰率=100×(硬化性-加速試験後の硬化性)/(硬化性)
【0043】
(歯科用水硬性仮封材組成物の硬化後の除去性)
実施例、及び比較例に示す歯科用水硬性仮封材組成物を、歯牙の模型に形成された模擬窩洞に充填し、模型ごと水中に浸漬させた。室温にて3日間静置後、模型を取り出し、硬化した歯科用水硬性仮封材組成物表面の水分を拭き取った。硬化した組成物を金属製のインスツルメントを用いて模擬窩洞から除去し、硬化後の仮封材除去のシミュレーションを行った。このとき、硬化後の組成物が適度に軟らかく、容易に除去できたものを「A」、やや硬いものの、問題なく除去できたものを「B」、硬くて除去し辛かったものを「C」、非常に硬く、除去が困難であったものを「D」とした。
【0044】
(実施例、及び比較例の評価結果)
表2に各実施例、及び比較例の歯科用水硬性仮封材組成物の評価結果を示した。
【0045】
実施例1では成分(1)微粒子を配合していない比較例1と比較して硬化性の向上が認められ、減衰率は24%と低かった。また、硬化後の組成物は適度に軟らかく、容易に除去できた。
実施例2~5は実施例1における微粒子の種類を、微粒子2~5として調製した組成物である。
実施例2では成分(1)微粒子を配合していない比較例1と比較して硬化性の向上が認められ、減衰率は15%と低かった。また、硬化後の組成物は適度に軟らかく、容易に除去できた。
実施例3、及び4では成分(1)微粒子を配合していない比較例1と比較して硬化性の向上が認められ、減衰率はそれぞれ3%、9%と顕著に低く、硬化性の低下がほとんど認められなかった。また、硬化後の組成物は適度に軟らかく、容易に除去できた。
実施例5では成分(1)微粒子を配合していない比較例1と比較して硬化性の向上が認められ、減衰率は18%と低かった。また、硬化後の組成物は適度に軟らかく、容易に除去できた。
実施例6は実施例3における石こう粉末の種類を、石こう粉末2として調製した組成物である。
実施例6では成分(1)微粒子を配合していない比較例1と比較して硬化性の向上が認められ、減衰率は1%と顕著に低く、硬化性の低下がほとんど認められなかった。また、硬化後の組成物は適度に軟らかく、容易に除去できた。
実施例7~12は実施例3における有機溶媒の種類を、それぞれ有機溶媒1~3、5~7として調製した組成物である。
実施例7~12では成分(1)微粒子を配合していない比較例1と比較して硬化性の向上が認められ、減衰率は10%未満と顕著に低く、硬化性の低下がほとんど認められなかった。また、硬化後の組成物は適度に軟らかく、容易に除去できた。
実施例13、及び14は実施例3における樹脂の種類を、樹脂2、または3として調製した組成物である。
実施例13、及び14では成分(1)微粒子を配合していない比較例1と比較して硬化性の向上が認められ、減衰率はそれぞれ2%、3%と顕著に低く、硬化性の低下がほとんど認められなかった。また、硬化後の組成物は適度に軟らかく、容易に除去できた。
実施例15、及び16は実施例3における石こう粉末の含有量を少なくし、その他の成分の含有量を多くし、且つ充填材6を配合して調製した組成物である。
実施例15では成分(1)微粒子を配合していない比較例1と比較して硬化性の向上が認められ、減衰率は5%と顕著に低く、硬化性の低下がほとんど認められなかった。また、硬化後の組成物はやや硬いものの、問題なく除去可能であった。
実施例16では成分(1)微粒子を配合していない比較例1と比較して硬化性の向上が認められ、減衰率は1%と顕著に低く、硬化性の低下がほとんど認められなかった。また、硬化後の組成物は適度に軟らかく、容易に除去できた。
実施例17は実施例3における石こう粉末の含有量を少なくし、減少分を充填材6に置き換えて調製した組成物である。
実施例17では成分(1)微粒子を配合していない比較例1と比較して硬化性の向上が認められ、減衰率は4%と顕著に低く、硬化性の低下がほとんど認められなかった。また、硬化後の組成物は適度に軟らかく、容易に除去できた。
実施例18、及び19は実施例3における石こう粉末の含有量を多くし、その他の成分の含有量を少なくし、且つ充填材6を配合して調製した組成物である。
実施例18では成分(1)微粒子を配合していない比較例1と比較して硬化性の向上が認められ、減衰率は9%と顕著に低く、硬化性の低下がほとんど認められなかった。また、硬化後の組成物は適度に軟らかく、容易に除去できた。
実施例19では成分(1)微粒子を配合していない比較例1と比較して硬化性の向上が認められ、減衰率は19%と低かった。また、硬化後の組成物はやや硬いものの、問題なく除去可能であった。
比較例1は実施例1における微粒子を含まない組成物である。
比較例1では成分(1)微粒子を配合した各実施例と比較して硬化性が低く、減衰率は40%以上であった。また、硬化後の組成物は硬くて除去し辛かった。
比較例2~6は実施例1における微粒子を含まず、充填材1~5を配合して調製した組成物である。
比較例2、及び3では成分(1)微粒子を配合した各実施例と比較して硬化性が低く、減衰率は40%以上であった。また、硬化後の組成物は非常に硬く、除去が困難であった。
比較例4~6では成分(1)微粒子を配合した各実施例と比較して硬化性が低く、減衰率は40%以上であった。また、硬化後の組成物は硬くて除去し辛かった。
【0046】
【0047】
本発明によれば、高い硬化性を有しつつ、硬化後の除去性に優れると共に、経時的に硬化性が低下することなく、良好な保存安定性を有する歯科用水硬性仮封材組成物を提供することができる。