(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049291
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】患者用椅子
(51)【国際特許分類】
A61G 15/12 20060101AFI20230403BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20230403BHJP
A61C 19/00 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
A61G15/12 510
A47C7/38
A61C19/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158949
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和也
【テーマコード(参考)】
3B084
4C052
4C341
【Fターム(参考)】
3B084DB01
3B084DC01
4C052AA06
4C052LL09
4C341MM11
4C341MN12
4C341MQ03
4C341MS02
4C341MS24
(57)【要約】
【課題】利便性が高いヘッドレストの昇降機構を備える患者用椅子を提供する。
【解決手段】昇降可能に設けられた着座部、着座部に対して傾倒起立可能である背もたれ、及び、背もたれに対して手動により昇降可能に配置されたヘッドレストを備える患者用椅子であって、ヘッドレストの昇降に対する抵抗力を付与するブレーキ装置が設けられており、ブレーキ装置は、背もたれが起立した姿勢のときに比べ、背もたれが傾倒した姿勢のときの方が抵抗力が小さくなるように構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降可能に設けられた着座部、前記着座部に対して傾倒起立可能である背もたれ、及び、前記背もたれに対して手動により昇降可能に配置されたヘッドレストを備える患者用椅子であって、
前記ヘッドレストの昇降に対する抵抗力を付与するブレーキ装置が設けられており、
前記ブレーキ装置は、前記背もたれが起立した姿勢のときに比べ、前記背もたれが傾倒した姿勢のときの方が前記抵抗力が小さくなるように構成されている、
患者用椅子。
【請求項2】
前記ブレーキ装置は、前記ヘッドレストの前記昇降の軸に接触して前記抵抗力を生じる抵抗体と、
前記背もたれの前記傾倒起立の姿勢により、前記抵抗体に対する押圧力が変化する押圧機構と、を備える、請求項1に記載の患者用椅子。
【請求項3】
前記押圧機構がリンク機構である、請求項2に記載の患者用椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は歯科等で用いる患者用椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科ユニットは、歯科治療の際に使用される各種設備が備えられるユニットであり、患者が着座する患者用椅子を備えている。ここで患者用椅子は、患者を治療や処置のしやすい姿勢にさせるため、昇降可能であるとともに、背もたれを傾倒起立できるように構成されている。また、背もたれの上端には患者の頭部を支持することができるようにヘッドレストが配置されている。
【0003】
患者用椅子に設けられたヘッドレストは、患者によって異なる座高に応じて昇降して位置を変更できる昇降機構が備わっている。ヘッドレストを大別すると昇降機構を手動で操作して動かすものと、スクリューや油圧シリンダとモータとの組み合わせによって電動で動くものと、が流通している。
【0004】
手動で昇降させるヘッドレストでは、ヘッドレストを手動で移動させることによりその位置を決定させるが、決定させた後にその位置の保持しておく必要がある。特許文献1にはヘッドレストを昇降可能とするとともに、保持する機構が開示されている。
しかしながら当該機構ではラチェット機構が用いられており、無段階の調整ができないため必ずしも適切な調整をすることができるとは限らなかった。
【0005】
これに対して、従来では、
図10に示したように、背もたれ側に設けられたガイドにヘッドレスト側に設けられた昇降の軸であるスライドバーが挿入されており、スライドバーに対して両側面から押圧調整ネジによりブレーキ部材を押し付けることで摩擦力を発生させ、この摩擦力によりヘッドレストを昇降可能としつつ、位置決めした後の保持力を得ることができるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、ヘッドレストを手動で移動させることによりその位置を決定するためには、移動させ易さと、移動させた後にその位置を維持する(動かないようにする)こととのバランスが重要である。特に患者用椅子の場合、ヘッドレストは背もたれの傾倒起立に追随してその姿勢が変わるため、ヘッドレストにかかる重力(自重)の方向が昇降方向(背もたれの起立時)となったり、昇降方向に直交する方向(背もたれが水平位置にまで傾倒した時)になったり、その中間的な方向(背もたれが所定の角度で傾倒しているとき)になったりする。例えば、操作性(ヘッドレストの移動容易性)を考えてブレーキ部材の押圧力を弱めれば背もたれを起立させたときにヘッドレストの自重で勝手にヘッドレストが下降してしまったり、背もたれを傾倒させたときに弱い力で移動させても簡単にヘッドレストが背もたれから抜けてしまったりする虞があった。一方、保持力を考えてブレーキ部材の押圧力を高めればヘッドレストを移動させるためにより大きな力が必要となり操作性が低下する。
【0008】
そこで、本開示は上記の問題点に鑑み、利便性が高いヘッドレストの昇降機構を備える患者用椅子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の1つの態様は、昇降可能に設けられた着座部、着座部に対して傾倒起立可能である背もたれ、及び、背もたれに対して手動により昇降可能に配置されたヘッドレストを備える患者用椅子であって、ヘッドレストの昇降に対する抵抗力を付与するブレーキ装置が設けられており、ブレーキ装置は、背もたれが起立した姿勢のときに比べ、背もたれが傾倒した姿勢のときの方が抵抗力が小さくなるように構成されている、患者用椅子である。
【0010】
ブレーキ装置は、ヘッドレストの昇降の軸に接触して抵抗力を生じる抵抗体と、背もたれの傾倒起立の姿勢により、抵抗体に対する押圧力が変化する押圧機構と、を備えるように構成してもよい。
【0011】
押圧機構をリンク機構としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示の患者用椅子によれば、背もたれの姿勢によりヘッドレストの昇降の抵抗が自動に変化し、利便性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】
図4は、ブレーキ装置20を説明する図である。
【
図5】
図5は、ブレーキ装置20を説明する図である。
【
図6】
図6は、抵抗付与部材27による抵抗発生の説明をする図である。
【
図7】
図7は、抵抗付与部材27による抵抗発生の説明をする図である。
【
図8】
図8は、抵抗付与部材27による抵抗発生の説明をする図である。
【
図9】
図9は、抵抗付与部材127による抵抗発生の説明をする図である。
【
図10】
図10は、従来のブレーキ装置について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.歯科ユニットの構成(第1の態様)
図1~
図3は、第1の態様にかかる患者用椅子10を含む歯科ユニット1の外観を示している。
図1は平面図(上から見た図)、
図2は正面図(
図1の矢印IIから見た図)、
図3は背面図(
図1のIIIから見た図)である。
歯科ユニット1は、基台2、患者用椅子10、ドクターユニット3、及び、アシスタントユニット4を備えている。さらに、不図示の歯科用照明が配置されてもよい。歯科用照明としては公知の形態を挙げることができる。
【0015】
1.1.基台
基台2は患者用椅子10の下方に配置されており、患者用椅子10の土台となるものである。基台2は、筐体により外郭が形成されるとともに、該筐体内側には、各種制御機器が内包されている。ここに含まれる制御機器としては、例えば、患者用椅子10の昇降、傾倒起立等をさせるための油圧回路、及び該油圧回路を制御する油圧制御手段を挙げることができる。従って、基台2のうち、患者用椅子10の背面側には、不図示のフットスイッチが設けられる。施術者はこのフットスイッチやドクターユニット3の操作パネルの操作スイッチを操作して油圧制御手段に対して指令を出し、油圧回路を制御して患者用椅子10の昇降、傾倒起立をさせることができる。
【0016】
1.2.患者用椅子
患者用椅子10は、施術の際に患者が着座する椅子である。本形態で患者用椅子10は、着座部11、背もたれ12、ヘッドレスト13、レッグレスト14、フットレスト15、ブレーキ装置20を備えている。
【0017】
着座部11は、基台2の上方に昇降可能に取り付けられている。着座部11の昇降は、上記したように基台2内に収められた油圧回路により行われる。具体的には、フットスイッチや後述するドクターユニット3の操作パネルを施術者が操作し、その操作指令を受けた油圧制御手段が、上記油圧回路に組み込まれた油圧シリンダを適切に作動させることで着座部11が昇降する。そして背もたれ12、ヘッドレスト13、レッグレスト14、フットレスト15、及び、ブレーキ装置20は着座部11と一体に昇降する。
【0018】
背もたれ12は、着座部11の一端側を軸に回動可能に設けられている部材で、患者の胴部をサポートするものである。背もたれ12は、患者が着座の姿勢、仰向けの姿勢になることができるように傾倒及び起立が可能とされている。背もたれ12の傾倒起立は、基台2内から連結される油圧回路により行われる。具体的には、フットスイッチやドクターユニット3の操作パネルを施術者が操作し、その操作指令を受けた油圧制御手段が、上記油圧回路に組み込まれた油圧シリンダを適切に作動させることで背もたれ12が傾倒起立する。
【0019】
ヘッドレスト13は、背もたれ12の端部のうち、着座部11が配置される側とは反対側の端部に配置される部材で、患者の頭部をサポートする部材である。ヘッドレスト13は、患者の頭部位置を施術に都合よい姿勢にさせるため、昇降、回動可能に形成されている。ヘッドレスト13の昇降は手動で行われるように構成されており、ブレーキ装置20により当該昇降可能とされている。
【0020】
レッグレスト14は、着座部11の端部のうち、上記背もたれ12が配置される側とは反対側の端部を軸に回動可能に設けられている部材で、患者の脚部をサポートするものである。レッグレスト14は、背もたれ12の傾倒起立の姿勢に合わせて鉛直、水平の姿勢となることができるように回動可能である。このようなレッグレスト14の回動は、背もたれ12の傾倒起立にリンクして作動するリンク機構により行われる。具体的には、上記のように背もたれ12をフットスイッチやドクターユニット3の操作パネルを施術者が操作すると、背もたれ12が傾倒起立し、これにリンクしてレッグレスト14が回動する。
【0021】
フットレスト15は、レッグレスト14から該レッグレスト14を延長する方向に設けられている部材であり、患者の足先をサポートするものである。具体的には、背もたれ12が起立した姿勢、すなわち着座の姿勢では、フットレスト15は患者の足裏を受けるようにレッグレスト14に対して屈曲している。一方、背もたれ12が傾倒され患者が仰向けとなる姿勢では、フットレスト15は患者のかかとを受けるようにレッグレスト14に対して概ね平らになる。フットレスト15のこのような移動の手段としては油圧、モータ、リンク機構等を用いることができるが、特に限定されるものではない。
【0022】
ブレーキ装置20は、背もたれ12とヘッドレスト13とを渡すように設けられ、ヘッドレスト13を昇降可能とする装置である。
図4、
図5にブレーキ装置20の構造を説明するための図を示した。
図4は
図3にIVに示した部分を拡大し、かかる視点からブレーキ装置20の内部構造を表している。
図5は
図3にVで示した線に沿って切断した端面を表し、かかる視点からブレーキ装置20の内部構造を表している。
これら図からわかるように、本形態でブレーキ装置20は、ガイド部材21、スライドバー22、ブレーキ部材23、ブレーキ押圧部材24、及び、抵抗付与部材25を備えて構成されている。なお、本形態ではブレーキ部材23及びブレーキ押圧部材24によりヘッドレスト13に抵抗を与える機構と、抵抗付与部材25によりヘッドレストに抵抗を与える機構と、の2つの機構が備えられている。
【0023】
ガイド部材21は、背もたれ12の背面側(着座部11とは反対側)となる面に固定された部材であり、スライドバー22が挿入されてガイドするガイド穴21aが設けられている。従ってガイド穴21aは、ヘッドレスト13側に開口を有し、ヘッドレスト13の昇降方向に延びるように構成されている。
また、ガイド穴21aはその内側にブレーキ部材23、及び、抵抗付与部材25も内包することができるように構成してもよい。
【0024】
スライドバー22は、ヘッドレスト13の昇降の軸である棒状の部材である。スライドバー22はその棒状の一端が、ヘッドレスト13に設けられた取り付け部材13aに回動可能に取り付けられている。また、スライドバー22の他端側はガイド部材21のガイド穴21aの内側に挿入されている。
【0025】
ブレーキ部材23は、スライドバー22に押し当てられて棒状であるスライドバー22の軸線方向の移動に抵抗を与える部材であり、本形態では
図4からわかるようにブレーキ部材23はガイド部材21のガイド穴21aの内側に、スライドバー22を挟むように2つ配置されている。
ブレーキ部材23の形状は、スライドバー22を押圧できれば特に限定されることはなく、板状やブロック状とすることができる。ブレーキ部材23とスライドバー22との接触面積を増やす観点から、ブレーキ部材23の面のうちスライドバー22と接触する面をスライドバー22の面に沿った面形状としてもよい。
ブレーキ部材を構成する材料は特に限定されることはないが、ポリアセタール等のプラスチック材料を用いることができる。
【0026】
ブレーキ押圧部材24は、ブレーキ部材23に対してスライドバー22への押圧力を付与、及び押圧力の調整をする部材である。ブレーキ押圧部材24はブレーキ部材23を移動させてスライドバー22にブレーキ部材23を押し当てることができればよく特に限定されることはなく、本形態ではガイド部材21の壁に設けられたメネジに螺合するオネジにより構成されている。本形態ではブレーキ押圧部材24として1つのブレーキ部材23に2つのオネジが配置されている。すなわちオネジを回転させることによりブレーキ部材23によるスライドバー22への押圧力を調整することができる。
【0027】
なお、上記したように本形態では抵抗付与部材25が別途スライドバー22に昇降に対する抵抗を付与するので、ブレーキ部材23及びブレーキ押圧部材24によるスライドバー22への抵抗付与は補助的なものでよく、付与する抵抗は小さいものでよい。
【0028】
抵抗付与部材25は、ガイド部材21のガイド穴21aの内側に配置され、スライドバー22に押し当てられて棒状であるスライドバー22の軸線方向の移動に抵抗を与える部材である。ここで、抵抗付与部材25はブレーキ部材23と異なり、背もたれ12の傾斜状態により抵抗力が自動に変化するように構成されている。そのため、本形態で抵抗付与部材25は、抵抗体26及び押圧機構27を有して構成されている。
【0029】
抵抗体26は、押圧機構27によりスライドバー22に押し当てられて棒状であるスライドバー22の軸線方向の移動に抵抗を与える部材である。抵抗体26の形状はスライドバー22を押圧できれば特に限定されることはなく、板状やブロック状とすることができる。
抵抗体26の材料は特に限定されることはなく、適宜必要な材料を適用することができるが、軟質な材料を用いることで、押圧機構27による抵抗力の変化がより適切に反映される。当該軟質な材料として具体的にはシリコンやゴム等を挙げることができる。
【0030】
押圧機構27は抵抗体26に対してスライドバー22への押圧力を付与し、及び、押圧力の調整をする部材である。押圧機構27は背もたれ12の傾斜角度によって抵抗体26がスライドバー22を押圧する力を自動に調整する機能を有し、これにより抵抗体26によるスライドバー22への押圧力を調整することができる。
そのため、本形態の押圧機構27は4節リンク機構を有してなり、具体的には
図5からわかるように、第一リンク27a、第二リンク27b、及び、固定リンク27cを有して構成されている。
【0031】
第一リンク27aは、第二リンク27bに平行となるリンクであり、その一端が抵抗体26と節点C1で回動可能に、他端が固定リンク27cに節点C2で回動可能に接続されている。
第二リンク27bは、第一リンク27aに平行となるリンクであり、その一端が抵抗体26と節点C3で回動可能に、他端が固定リンク27cに節点C4で回動可能に接続されている。
固定リンク27cは、抵抗体26に平行となるリンクであり、その一端が第一リンク27aと節点C2で回動可能に、他端が第二リンク27bと節点C4で回動可能に接続されている。また、固定リンク27cは移動及び回動できないように固定されている。本形態では固定リンク27cはガイド部材21に固定されることにより保持されている。
【0032】
また、
図5からわかるように、節点C1は節点C2よりも高さ方向で高い位置となり、節点C3は節点C4よりも高さ方向で高い位置となる配置となるように位置付けられる。
【0033】
このような抵抗付与部材25により、背もたれ12の傾斜角度によって抵抗力が自動に変化する。より詳しくは後で説明する。
【0034】
1.3.ドクターユニット
ドクターユニット3は、患者用椅子10の側方のうちアシスタントユニット4とは反対側の側方に設けられ、本形態では作業台3a、第一アーム3b、及び第二アーム3cを有している。
作業台3aは、施術者が必要とする各器具やスイッチ等が備えられる部位である。具体的には、作業台3aはその上面に作業面を具備し、施術者が施術の際に使用するハンドピースを収納するホルダーが設けられている。なお、ホルダーには図示は省略するが各種ハンドピースが保持されている。ハンドピースとしては、例えば、エアタービン、マイクロモータ、スケーラ、シリンジ等を挙げることができる。ほとんど全てのハンドピースは、チューブ類を介して、電気回路、水回路、エア回路等と連結されている。また、作業面とホルダーとの間には操作パネルが具備されている。操作パネルには、各種操作スイッチ類が設けられており、例えば患者用椅子10の傾倒起立、昇降操作、歯科用照明の点灯及び消灯の切り替え等が可能となっている。
このように、ホルダーや操作パネルは作業台3aのうち、患者用椅子3の背面側に集められている。これにより患者の頭部付近で施術を進める施術者の利便が図られる。
【0035】
第一アーム3bは、中空棒状のいわゆるアーム部材であり、その一端が基台2の下部に配置され、鉛直方向を軸線とする軸線回りに回動可能とされている。従って第一アーム3bは、
図1に矢印Iaで示したように回動することが可能である。
第二アーム3cも中空棒状のアーム部材である。第二アーム3cの一端は、第一アーム3bの端部のうち、基台2側とは反対側である他端に配置されている。また、第二アーム3cの他端には作業台3aが配置されている。第二アーム3cは第一アーム3bと鉛直方向を軸線とする軸線回りに回動可能に接続されており、
図1に矢印Ibで示したように回動することができる。
また、作業台3aは第二アーム3cと鉛直方向を軸線とする軸線回りに回動可能に接続されており、
図1に矢印Icで示したように回動することができる。
【0036】
従って、作業台3aは、第一アーム3b、第二アーム3c、及び、作業台3a自体の上記回動が組み合わされた範囲で移動及び姿勢をとることができ、施術者の利便性を高めている。そして施術者は作業台3aの取っ手等を掴み、作業台3aを押したり引いたりすることで作業台3aの位置及び姿勢を変更することが可能である。
【0037】
1.4.アシスタントユニット
アシスタントユニット4は、患者用椅子10の側方のうちのドクターユニット10が配置された側とは反対側に設けられたユニットであり、アシスタントハンガー4a、給排水部4eを備えている。
【0038】
アシスタントハンガー4aは、主にアシスタントが使用する器具が具備された部位である。アシスタントハンガー4aは、ハンガー部4b、第一アーム4c、第二アーム4dを備えている。
【0039】
ハンガー部4bは、施術者が施術の際に使用するハンドピース(不図示)を収納するホルダーである。ハンドピースとしては例えばバキューム、排唾管、シリンジ等のハンドピースを挙げることができる。バキュームや排唾管は、吸引管を介してバキュームユニット(不図示)に接続されている。
【0040】
第一アーム4cは、中空棒状のいわゆるアーム部材であり、その一端が給排水部4eに配置され、鉛直方向を軸線とする軸線回りに回動可能とされている。従って第一アーム4cは、
図1に矢印Idで示したように回動することが可能である。
第二アーム4dも中空棒状のアーム部材である。第二アーム4dの一端は、第一アーム4cの端部のうち、給排水部4eとは反対側である他端に配置されている。また、第二アーム4dの他端には、ハンガー部4bが配置されている。第二アーム4dは第一アーム4cと鉛直方向を軸線とする軸線回りに回動可能に接続されており、
図1に矢印Ieで示したように回動することができる。
また、ハンガー部4bは第二アーム4dと鉛直方向を軸線とする軸線回りに回動可能に接続されており、
図1に矢印Ifで示したように回動することができる。
【0041】
従って、ハンガー部4bは、第一アーム4c、第二アーム4d、及び、ハンガー部4b自体の上記回動が組み合わされた範囲で移動及び姿勢をとることができ、施術者の利便性を高めている。そして施術者はハンガー部4bの取っ手等を掴み、ハンガー部4bを押したり引いたりすることでハンガー部4bの位置及び姿勢を変更することが可能である。
【0042】
給排水部4eは、治療中や治療後に患者がうがいをして、口腔内を洗浄するための給排水を行うための部位であり、公知の構成を適用することができる。
例えば給排水部4eは、筐体4fを有し、筐体4fの内側には給排水のための配管や配管洗浄のための洗浄回路が収められている。
また、本形態の給排水部4eは、筐体4fの上面にスピットン4g及び給水部4hを備えており、給水部4hから供給された水がコップに注がれ、患者はこれによりうがいをしてスピットン4gに対してその水を吐き捨てることができるように構成されている。従って、スピットン4gは、うがいをした後の口腔内の水を吐き捨てるため、鉢状とされている。そしてスピットン4gに排出された唾液や水は、給排水部4eの筐体4fの内側等に備えられた排水トラップを介して排出される。なお、スピットンは患者の姿勢の利便性が考慮され可動式にしてもよい。その場合には患者がうがいをする際にスピットン4gを患者の前に移動させることができる。
【0043】
2.作用など
上記した歯科ユニット1において、患者用椅子10は、当該患者用椅子10の傾倒起立とヘッドレスト13との関係で次のように作用する。
図6~
図8に説明のための図を示した。
【0044】
図6は、
図5と同じ視点からの図であり、背もたれ12が起立した姿勢にある。
図6に示したように、背もたれ12が起立した姿勢では抵抗体26には重力Gがかかる。これにより第一リンク27aが節点C2を中心にして、第二リンク27bが節点C4を中心にして、それぞれ矢印K1で示した方向に回転力が働き、抵抗体26がスライドバー22を押圧する矢印FO1で示した力が働く。この押圧する力はスライドバー22が昇降するための抵抗となる。
【0045】
図7は、
図6に対して患者用椅子12を傾倒させた図である。この場合、
図7に示したように、傾斜した姿勢で抵抗体26には重力Gがかかる。ただしこの場合には背もたれ12が傾斜しているため、重力Gはヘッドレスト13の昇降方向及びこれに直交する方向に対してG1とG2に分けて第一リンク27a、第二リンク27bに生じる回転力を考える必要がある。第一リンク27aが節点C2を中心にして、第二リンク27bが節点C4を中心にして、それぞれ矢印K2で示した方向に回転力が働き、抵抗体26がスライドバー22を押圧する矢印FO2で示した力が働く。この押圧する力はスライドバー22が昇降するための抵抗となる。
ただし、本姿勢ではK2の回転力は、上記のようにG1とG2とに分けられた力により生じることから、上記K1の回転力よりも小さくなる。そのため、FO2の力はFO1の力より弱いため、ヘッドレスト13を昇降するための抵抗力は
図6の姿勢に比べて小さくなる。
【0046】
図8は、
図7に対して患者用椅子12をさらに傾倒させた図である。この場合、
図8に示したように、傾斜した姿勢で抵抗体26には重力Gがかかる。ただしこの場合には背もたれ12が傾斜しているため、重力Gはヘッドレスト13の昇降方向及びこれに直交する方向に対してG3とG4に分けて第一リンク27a、第二リンク27bに生じる回転力を考える必要がある。第一リンク27aが節点C2を中心にして、第二リンク27bが節点C4を中心にして、それぞれ矢印K3で示した方向に回転力が働き、抵抗体26がスライドバー22を押圧する矢印FO3で示した力が働く。この押圧する力はスライドバー22が昇降するための抵抗となる。
ただし、本姿勢ではK3の回転力は、上記のようにG3とG4とに分けられた力により生じることから、上記K2の回転力よりも小さくなる。そのため、FO3の力はFO2の力より弱いため、ヘッドレスト13を昇降するための抵抗力は
図7の姿勢に比べて小さくなる。
【0047】
以上のように、抵抗付与部材25を備える患者用椅子10によれば、背もたれ12が起立している姿勢で抵抗付与部材25はスライドバー22を昇降させるための抵抗を大きくすることができ、ヘッドレスト13の自重による意図しない下降を防ぐことができる。
これに対して上記したように、背もたれ12を傾けるほどにヘッドレスト13を昇降させるための抵抗を小さくすることができる。背もたれ12を傾けたときにはヘッドレスト13の自重による意図しない下降の懸念も小さくなり、昇降させる抵抗が小さいことによる操作性向上に利便性が認められる。
以上のように、背もたれの姿勢によりヘッドレストの昇降の抵抗が自動に変化し、利便性が高いヘッドレストの昇降機構を備える患者用椅子となる。
【0048】
なお、本形態でブレーキ装置20には、ヘッドレスト13の昇降に抵抗を付与する手段としてブレーキ部材23及び抵抗付与部材25を備える例を説明したが、ブレーキ部材23は必ずしも配置する必要はなく、抵抗付与部材25のみにより構成してもよい。
【0049】
3.歯科ユニットの構成(第2の形態)
図9には第2の形態を説明する図を示した。
図9は
図5に相当する図である。第2の形態では第1の形態に具備された抵抗体26及び押圧機構27の代わりに抵抗体126及び押圧機構127が適用されている。従ってここでは抵抗体126及び押圧機構127について説明する。
【0050】
抵抗体126は、押圧機構127によりスライドバー22に押し当てられて棒状であるスライドバー22の軸線方向の移動に抵抗を与える部材である。本形態で抵抗体126は円筒状(
図9の紙面奥/手前方向が軸線方向)であり、その外周面の一部がスライドバー22に接触するように配置される。
抵抗体126の材料は特に限定されることはなく、上記した抵抗体26と同様に考えることができる。
【0051】
押圧機構127は抵抗体126にスライドバー22への抵抗力を付与し、及び、抵抗力の調整をする部材である。押圧機構127は背もたれ12の傾斜角度によって抵抗体126がスライドバー22に付与する抵抗力を自動に調整する機能を有し、これにより抵抗体126によるスライドバー22への抵抗力を調整することができる。
そのため、本形態の押圧機構127は、おもり127a、紐材127b、及び、おもりガイド127cを有して構成されている。
【0052】
おもり127aは紐材127bにより抵抗体126の外周にぶら下げられるように配置される。おもり127aは抵抗体126の外周面のうちスライドバー22に接触する部位とは反対側に配置されていることが好ましい。
おもりガイド127cは、おもり127aが挿入されて該おもり127aの移動をガイドする部位である。おもりガイド127cによりガイドされるおもり127aの方向がヘッドレスト13の昇降方向となるようにおもりガイド127cが形成されている。
【0053】
本形態によれば、おもり127aの重さにより抵抗体126に回転力が付与され、その結果、抵抗体126は
図9の矢印FO4で示した方向の力(抵抗力)を発生させる。これはヘッドレスト12が自重により降下することを抑制する抵抗力である。そしておもり127aが抵抗体126を回転させる力は背もたれ12が傾斜するほど小さくなることから、FO4で示した方向の力は、上記した第1の形態例と同様に背もたれ12を傾斜により低下する。従って、本形態も上記第1の形態と同様の効果を奏するものとなる。
【符号の説明】
【0054】
1 歯科ユニット
2 基台
3 ドクターユニット
4 アシスタントユニット
10 患者用椅子
11 着座部
12 背もたれ
13 ヘッドレスト
14 レッグレスト
15 フットレスト
20 ブレーキ装置
21 ガイド部材
22 スライドバー
23 ブレーキ部材
24 ブレーキ押圧部材
25 抵抗付与部材
26、126 抵抗体
27、127 押圧機構