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特開2023-49300呈色反応定量化装置及び呈色反応定量化プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049300
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】呈色反応定量化装置及び呈色反応定量化プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/78 20060101AFI20230403BHJP
   G01N 33/18 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
G01N21/78 A
G01N33/18 106Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158962
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】521426110
【氏名又は名称】RePublic Water合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】石井 崇晃
【テーマコード(参考)】
2G054
【Fターム(参考)】
2G054AA02
2G054AB10
2G054BB08
2G054CA03
2G054CA10
2G054CD04
2G054CE02
2G054EA05
2G054EA06
2G054EB02
2G054EB05
2G054FA12
2G054FA33
2G054FA42
2G054FA44
2G054GB10
2G054GE06
2G054GE10
2G054JA01
2G054JA02
2G054JA04
2G054JA05
2G054JA07
2G054JA08
(57)【要約】
【課題】 市販の試験紙と色見本とを用いて、試験紙等に現れる呈色反応を正確に定量化することができる呈色反応定量化装置及び呈色反応の定量化を実行するプログラムを提供すること。
【解決手段】 本発明に係る呈色反応定量化装置は、カメラと、カメラで撮影した画像データを入力し、入力した画像データに基づいて測定すべき水の成分を定量化する制御装置と、前記制御装置で定量化した成分を出力する出力手段とを備え、前記制御装置が、成分測定に使用する試験紙に対応する色見本の基準画素値と、画素値と成分値との関係式を予め記憶する記憶部と、色見本画素値を取得し、前記基準画素値との回帰式に基づいて色補正式を構築する色見本画像データ処理部と、試験画像データの画素値を前記色補正式で補正し、前記関係式に基づいて呈色反応を定量化する試験画像データ処理部と、出力部とを備えている。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呈色反応を用いて水質を測定する呈色反応定量化装置であって、
カメラと、
カメラで撮影した画像データを入力し、入力した画像データに基づいて測定すべき水の成分を定量化する制御装置と、
前記制御装置で定量化した成分を出力する出力手段と
を備え、
前記制御装置が、
成分測定に使用する試験紙に対応する色見本の基準画素値、並びに前記試験紙を成分値が異なる複数の成分値既知の水と呈色反応させ、呈色反応後の画像を撮影して得た試験紙画像データの画素値及び成分値の真値を教師データとして機械学習法またはn次関数によって構築した画素値と成分値との関係式を予め記憶する記憶部と、
前記カメラを用いて、前記試験紙に対応する色見本を撮影した色見本画像データを入力し、色見本画像データの色見本画素値を取得し、取得した前記色見本画素値と、前記記憶部に記憶した基準画素値との回帰式に基づいて色補正式を構築する色見本画像データ処理部と、
前記カメラを用いて、前記試験紙を測定すべき水との呈色反応後に撮影した試験画像データを入力し、入力した試験画像データの画素値を、前記色補正式で補正し、前記記憶部に記憶した関係式を用いて前記補正された画素値から前記試験紙の呈色反応を定量化する試験画像データ処理部と、
前記試験画像データ処理部で得られた定量化情報を前記出力手段に出力する出力部と
を備えている
ことを特徴とする呈色反応定量化装置。
【請求項2】
前記記憶手段が、色見本画像データ及び/又は撮影画像データに対応する画素値の閾値を有し、
前記色見本画像データ処理部及び前記試験画像データ処理部が、色見本画像データ及び試験画像データから取得した画素値が、前記閾値の範囲を超えている場合にエラー処理を行うように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の呈色反応定量化装置。
【請求項3】
前記色見本が、市販の試験紙に付随している色見本である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の呈色反応定量化装置。
【請求項4】
前記色見本が、使用すべき試験紙に応じて予め指定した色の見本である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の呈色反応定量化装置。
【請求項5】
前記記憶部が、少なくとも二種類の試験紙に対する基準画素値及び関係式を記憶し、
制御装置が、使用する試験紙の種類に応じて、前記基準画素値及び関係式を選択可能な試験紙選択部を備えている
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の呈色反応定量化装置。
【請求項6】
予め記憶した、成分測定に使用する試験紙に対応する色見本の基準画素値、並びに前記試験紙を成分値が異なる複数の成分値既知の水と呈色反応させ、呈色反応後の画像を撮影して得た試験紙画像データの画素値及び成分値の真値を教師データとして機械学習法またはn次関数によって構築した画素値と成分値との関係式を用いて、
前記カメラを用いて、前記試験紙に対応する色見本を撮影した色見本画像データを入力し、色見本画像データの色見本画素値を取得し、取得した前記色見本画素値と、前記記憶部に記憶した基準画素値との回帰式に基づいて色補正式を構築する色見本画像データ処理、
前記カメラを用いて、前記試験紙を測定すべき水との呈色反応後に撮影した試験画像データを入力し、入力した試験画像データの画素値を、前記色補正式で補正し、前記記憶部に記憶した関係式を用いて前記補正された画素値から前記試験紙の呈色反応を定量化する試験画像データ処理、及び
前記試験画像データ処理部で得られた定量化情報を前記出力手段に出力する処理
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定すべき成分に対応する試薬が設けられた試験紙又は前記試薬を封入した試験用透明チューブにおける呈色反応を定量化することで測定すべき水の成分を測定する呈色反応定量化装置及び呈色反応定量化プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
測定すべき成分に対応する試薬が設けられた試験紙又は、例えば、株式会社共立理化学研究所により販売されているパックテスト(登録商標)のような試薬を封入した試験用透明チューブ(以下、単に「試験用透明チューブ」と称する。)の呈色反応を利用して測定すべき水の成分を測定する測定方法では、試験紙を測定対象の液体に浸すか、又は試験用透明チューブに測定対象の液体を導入し、その呈色を測定して残留塩素濃度、pHなどを定量化する測定方法が知られている。この種の測定方法には、色の基準となる色見本と比較することで定量化するものがある。
【0003】
特許文献1に開示された水質検査試験紙計測装置では、試験紙の定量化をするための特殊な装置が必要となり、家庭内で簡易に検査することができない。
【0004】
特許文献2に開示された環境検査判定支援システムでは、サーバーを使用して判定するため、必ずインターネット環境が必要となる。また、固有の色基準シートを必要とすることから、アプリケーションを使用する場合には試験紙の他に、試験紙に対応した固有の色基準シートを購入する必要がある。
【0005】
入力画像に含まれる物体を検出する技術が知られている。例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)を用いて、入力画像から対象となる領域を検出する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-088232
【特許文献2】特開2016-139331
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
試験紙や試験用透明チューブ等に現れた呈色を、それらに対応する色見本を用いて、人の目で正確に判定することは極めて困難であり、誤判定になってしまう恐れがある。また、色見本が水質と正確に対応しているとは限らないため、水質を正確に特定できない場合がある。
【0008】
また、カメラによる撮影は、自動で検査者の意図とは無関係に画素値を自動で補正してしまうおそれがある。
【0009】
従って、試験紙や試験用透明チューブ等に現れる呈色を定量化する従来の方法は、試験紙や試験用透明チューブ等の他に、試験紙に対応した特殊な装置や色の基準シートを用意する必要がある。
【0010】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたもので、試験紙、及び色見本を撮影して画像データを取り込む際の撮影条件の違い及び検査者の違い等に起因する条件の変化等を抑制し、市販の試験紙と色見本とを用いて、試験紙等に現れる呈色反応を正確に定量化することができる呈色反応定量化装置及び呈色反応の定量化を実行するプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本願の請求項1に係る呈色反応定量化装置は、呈色反応を用いて水質を測定する呈色反応定量化装置であって、カメラと、カメラで撮影した画像データを入力し、入力した画像データに基づいて測定すべき水の成分を定量化する制御装置と、前記制御装置で定量化した成分を出力する出力手段とを備え、前記制御装置が、成分測定に使用する試験紙に対応する色見本の基準画素値、並びに前記試験紙を成分値が異なる複数の成分値既知の水と呈色反応させ、呈色反応後の画像を撮影して得た試験紙画像データの画素値及び成分値の真値を教師データとして機械学習法またはn次関数によって構築した画素値と成分値との関係式を予め記憶する記憶部と、前記カメラを用いて、前記試験紙に対応する色見本を撮影した色見本画像データを入力し、色見本画像データの色見本画素値を取得し、取得した前記色見本画素値と、前記記憶部に記憶した基準画素値との回帰式に基づいて色補正式を構築する色見本画像データ処理部と、前記カメラを用いて、前記試験紙を測定すべき水との呈色反応後に撮影した試験画像データを入力し、入力した試験画像データの画素値を、前記色補正式で補正し、前記記憶部に記憶した関係式を用いて前記補正された画素値から前記試験紙の呈色反応を定量化する試験画像データ処理部と、前記試験画像データ処理部で得られた定量化情報を前記出力手段に出力する出力部とを備えていることを特徴とする。
上記した試験紙は、特定の成分と呈色反応する試薬が設けられた紙に限定されるものではなく、本明細書では、例えば、株式会社共立理化学研究所により販売されているパックテスト(登録商標)のような試薬を封入した試験用透明チューブを含む。

上記した呈色反応定量化装置は、例えば、スマートフォンやタブレット端末のようなカメラ付きの携帯式通信機器によって構成され得、この場合、前記カメラは携帯式通信機器に設けられたカメラであり、制御装置は携帯式通信機器に設けられたCPU及びメモリ並びに各処理部の機能を実行するアプリケーションで構成され得、さらに、出力手段は携帯式通信機器に設けられたディスプレイで構成され得る。
また、上記した呈色反応定量化装置は、カメラを搭載した若しくはカメラを搭載していないパーソナルコンピュータによっても構成され得る。カメラを搭載したパーソナルコンピュータの場合、前記カメラはパーソナルコンピュータに設けられたカメラであり、制御装置はパーソナルコンピュータに設けられたCPU及びメモリ並びに各処理部の機能を実行するアプリケーションで構成され得、さらに、出力手段はパーソナルコンピュータのモニタで構成され得る。カメラを搭載していないパーソナルコンピュータの場合、前記カメラは、別途用意したデジタルカメラであり、制御装置はパーソナルコンピュータに設けられたCPU及びメモリ並びに各処理部の機能を実行するアプリケーションで構成され得、さらに、出力手段はパーソナルコンピュータのモニタで構成され得る。
尚、出力手段は、ディスプレイ又はモニタに限定されるものではなく、例えば、プリンタ等の他の任意の出力手段であり得る。
【0012】
また、本願の請求項2に係る呈色反応定量化装置は、上記した構成に加えて、前記記憶手段が、色見本画像データ及び/又は撮影画像データに対応する画素値の閾値を有し、前記色見本画像データ処理部及び前記試験画像データ処理部が、色見本画像データ及び試験画像データから取得した画素値が、前記閾値の範囲を超えている場合にエラー処理を行うように構成されていることを特徴とする。
【0013】
前記色見本は、市販の試験紙に付随している色見本であってもよく、また、使用すべき試験紙に応じて予め指定した色見本であってもよい。使用すべき試験紙に応じて予め指定した色見本を作成する場合、例えば、所定の紙に蛍光ペン等で指定の色を描いて色見本を作成することができる。
【0014】
また、本願の請求項5に係るプログラムは、予め記憶した、成分測定に使用する試験紙に対応する色見本の基準画素値、並びに前記試験紙を成分値が異なる複数の成分値既知の水と呈色反応させ、呈色反応後の画像を撮影して得た試験紙画像データの画素値及び成分値の真値を教師データとして機械学習法またはn次関数によって構築した画素値と成分値との関係式を用いて、前記カメラを用いて、前記試験紙に対応する色見本を撮影した色見本画像データを入力し、色見本画像データの色見本画素値を取得し、取得した前記色見本画素値と、前記記憶部に記憶した基準画素値との回帰式に基づいて色補正式を構築する色見本画像データ処理、前記カメラを用いて、前記試験紙を測定すべき水との呈色反応後に撮影した試験画像データを入力し、入力した試験画像データの画素値を、前記色補正式で補正し、前記記憶部に記憶した関係式を用いて前記補正された画素値から前記試験紙の呈色反応を定量化する試験画像データ処理、及び前記試験画像データ処理部で得られた定量化情報を前記出力手段に出力する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
上記したプログラムは、例えば、スマートフォンやタブレット端末のようなカメラ付きの携帯式通信機器又はカメラを搭載した若しくはカメラを搭載していないパーソナルコンピュータにインストールされるアプリケーションであり得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る呈色反応定量化装置は、呈色反応を用いて水質を測定する呈色反応定量化装置であって、カメラと、カメラで撮影した画像データを入力し、入力した画像データに基づいて測定すべき水の成分を定量化する制御装置と、前記制御装置で定量化した成分を出力する出力手段とを備え、前記制御装置が、成分測定に使用する試験紙に対応する色見本の基準画素値、並びに前記試験紙を成分値が異なる複数の成分値既知の水と呈色反応させ、呈色反応後の画像を撮影して得た試験紙画像データの画素値及び成分値の真値を教師データとして機械学習法またはn次関数によって構築した画素値と成分値との関係式を予め記憶する記憶部と、前記カメラを用いて、前記試験紙に対応する色見本を撮影した色見本画像データを入力し、色見本画像データの色見本画素値を取得し、取得した前記色見本画素値と、前記記憶部に記憶した基準画素値との回帰式に基づいて色補正式を構築する色見本画像データ処理部と、前記カメラを用いて、前記試験紙を測定すべき水との呈色反応後に撮影した試験画像データを入力し、入力した試験画像データの画素値を、前記色補正式で補正し、前記記憶部に記憶した関係式を用いて前記補正された画素値から前記試験紙の呈色反応を定量化する試験画像データ処理部と、前記試験画像データ処理部で得られた定量化情報を前記出力手段に出力する出力部とを備えているので、市販の簡易的な試験紙や試験用透明チューブを用いて、高精度に、測定すべき水の成分を定量化できる。
また、上記した構成により、呈色反応定量化装置を、スマートフォンやタブレット端末のようなカメラ付きの携帯式通信機器、又は、デジタルカメラ及びパーソナルコンピュータによって実現することが可能になるため、特別な装置を必要とせずに、市販の簡易的な試験紙や試験用透明チューブを用いて、高精度に、測定すべき水の成分を定量化することが可能になる。
さらにまた、本発明に係る呈色反応定量化装置は、同一のカメラを用いて色見本及び呈色反応後の試験紙を撮影し、予め記憶した基礎画素値を用いて色見本画像データを用いて色補正式を構築し、試験画像データを前記色補正式で補正するように構成されているので、撮影条件の変化の影響を受けることなく、試験画像データを正確に補正することが可能になる。そして、正確に補正した試験画像データに基づいて、予め記憶した画素値と成分値との関係式を使用して呈色反応を定量化するので、高精度な定量化が可能になる。
また、本発明に係るプログラムは、予め記憶した、成分測定に使用する試験紙に対応する色見本の基準画素値、並びに前記試験紙を成分値が異なる複数の成分値既知の水と呈色反応させ、呈色反応後の画像を撮影して得た試験紙画像データの画素値及び成分値の真値を教師データとして機械学習法またはn次関数によって構築した画素値と成分値との関係式を用いて、前記カメラを用いて、前記試験紙に対応する色見本を撮影した色見本画像データを入力し、色見本画像データの色見本画素値を取得し、取得した前記色見本画素値と、前記記憶部に記憶した基準画素値との回帰式に基づいて色補正式を構築する色見本画像データ処理、前記カメラを用いて、前記試験紙を測定すべき水との呈色反応後に撮影した試験画像データを入力し、入力した試験画像データの画素値を、前記色補正式で補正し、前記記憶部に記憶した関係式を用いて前記補正された画素値から前記試験紙の呈色反応を定量化する試験画像データ処理、及び前記試験画像データ処理部で得られた定量化情報を前記出力手段に出力する処理をコンピュータに実行させるように構成されているので、スマートフォンやタブレット端末のようなカメラ付きの携帯式通信機器、又は、パーソナルコンピュータにインストールすることで、カメラ付きの携帯式通信機器、又は、カメラを搭載した若しくはカメラを搭載していないパーソナルコンピュータが、呈色反応定量化装置として利用可能になるという効果を奏する。尚、カメラを搭載していないパーソナルコンピュータにインストールする場合には、カメラとして別途デジタルカメラ等が用意され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る呈色反応定量化プラグラムを実行する装置の一実施例の概要を示す図
図2】試験紙の一例を示す図
図3】色見本の一例を示す図
図4】蛍光ペンを用いて作成した使用すべき試験紙に応じて予め指定した色見本を示す図である。
図5】試験紙の呈色反応定量化の流れを示すフローチャート
図6】色見本の撮影作業を説明する図
図7】試験紙の撮影作業を説明する図
図8】画像データ取得処理の流れを示すフローチャート
図9】試験紙のグリーン画素値とpHの関係を説明する図
図10】本発明に係る呈色反応定量化装置の一実施例の概略ブロック図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。また、本発明の実施形態では、試験紙としてpH試験紙を例に説明する。但し、本発明における呈色反応定量化装置に適用可能な試験紙は、pH試験紙に限定されるものではなく、水と反応されることで呈色するものであれば、どのようなものであっても良い。また、本明細書において「試験紙」は、特定の成分と呈色反応する試薬が設けられた紙に限定されるものではなく、本明細書では、例えば、株式会社共立理化学研究所により販売されているパックテスト(登録商標)のような試薬を封入した試験用透明チューブを含む。
【0018】
図1は、本発明に係る呈色反応定量化プログラムを実行する装置の一実施形態の概要を示す図である。図1に示すように、本発明に係る呈色反応定量化装置は、カメラ、モニタ及び情報処理を行う制御装置を備えた情報処理装置2で構成され得、水質測定に用いられる試験紙4(図1及び図2参照)と、試験紙の色見本3が掲載されているケース、又は使用すべき試験紙に応じて予め指定した色を、白い紙に蛍光ペン9で線を引いた色見本10(図3参照)とを用いて測定対象である水の試薬に対する呈色反応を定量化する。
【0019】
前記情報処理装置2は、例えば、スマートフォンに代表されるコンピュータの機能を併せ持った携帯電話器などであり得る。情報処理装置2は、CPU(「Central Processing Unit」の略)、主記憶部としてのメモリ及び、補助記憶部としてのHDD(「Hard Disk Drive」の略)や、フラッシュメモリを備えた制御装置、出力部としての液晶ディスプレイ、入力部としてのキーボードやマウス、タッチパネルディスプレイ、有線通信部としてのLAN(「Local Area Network」の略)または、無線通信部としての無線モジュールを有する。
【0020】
補助記憶部としてのHDDやフラッシュメモリには、OS(「Operating System」の略)、アプリケーションプログラム、処理に必要なデータ等が記憶されている。情報処理装置2のCPUは、補助記憶部からOSやアプリケーションプログラムを読み出して主記憶部に格納し、主記憶部にアクセスしながら、その他の機器を制御し、後述する処理を実行する。
【0021】
また、情報処理装置2は、例えば、試験紙4等の画像を撮影可能なカメラを有するスマートフォンやタブレット端末等である。またデジタルカメラ等で試験紙4の画像を撮影する場合、情報処理装置2はカメラ機能のないデスクトップPC(「Personal Computer」の略)やノートPCでも良い。以下では、情報処理装置2がスマートフォンの場合を例にして説明する。
【0022】
前記情報処置装置2には、本発明に係る呈色反応定量化プログラムから成るアプリケーションがインストールされている。
前記プログラムは、
予め記憶した、成分測定に使用する試験紙に対応する色見本の基準画素値、並びに前記試験紙を成分値が異なる複数の成分値既知の水と呈色反応させ、呈色反応後の画像を撮影して得た試験紙画像データの画素値及び成分値の真値を教師データとして機械学習法またはn次関数によって構築した画素値と成分値との関係式を用いて、
前記カメラを用いて、前記試験紙に対応する色見本を撮影した色見本画像データを入力し、色見本画像データの色見本画素値を取得し、取得した前記色見本画素値と、前記記憶部に記憶した基準画素値との回帰式に基づいて色補正式を構築する色見本画像データ処理、
前記カメラを用いて、前記試験紙を測定すべき水との呈色反応後に撮影した試験画像データを入力し、入力した試験画像データの画素値を、前記色補正式で補正し、前記記憶部に記憶した関係式を用いて前記補正された画素値から前記試験紙の呈色反応を定量化する試験画像データ処理、及び
前記試験画像データ処理部で得られた定量化情報を前記出力手段に出力する処理
をコンピュータに実行させるように構成されている。
【0023】
図2は、試験紙4の一例を示す図である。図2に示すように、本実施例において試験紙4は水と反応する第2領域6を有する紙材である。また、試験紙4は第2領域6以外に持ち手部分として、第3領域7を有する場合がある。尚、第3領域7は必ずしも必要ではない。
【0024】
図3は、色見本3の一例を示す図である。図3に示すように、色見本3は、色毎に水質を定量的に評価する第4領域8a、第4領域8b、第4領域8c、及び第4領域8dを有する。但し、色見本領域は4つとは限られない。
【0025】
図4は、使用すべき試験紙に応じて予め指定した色を、白い紙に蛍光ペン9を用いて描いた色見本の一例を示す図である。図4に示すように、白い紙に複数の指定した色の蛍光ペン9を用いて異なる蛍光色の線9a,9b,9cを引いたものとする。但し,蛍光ペン9は2色以上として、3つとは限られない。
【0026】
図5は、前記プログラムによる呈色反応定量化処理の基本的な流れを示すフローチャートである。図5に示すように、始めに、検査者が色見本3の撮影を行い、色見本画像データを取得する(ステップS11)。
【0027】
図6、または図7は、色見本3、または試験紙4の撮影作業を説明する図である。図6、または図7に示すように、検査者は、色見本3、または試験紙4が第1領域5に戴置された状態で、撮影範囲が第1領域5の範囲内となるように撮影範囲を調整し、情報処理装置2のカメラによって撮影を行う。このように調整された撮影範囲の画像を得ることによって、後述する情報処理装置2において精度良く解析できる。但し、第1領域5に戴置された状態でない場合でも、色見本3が撮影範囲にあれば良いものとする。
【0028】
検査者は、情報処理装置2を用いて、色見本3を撮影する。この時、CNNの物体検出によって色見本3の第4領域8a、第4領域8b、第4領域8c、及び第4領域8dを自動で検出する(ステップS12)。
【0029】
検出された領域から、それぞれの色見本画像データの色見本画素値を取得する(ステップS13)。このように取得された色見本画素値から、情報処理装置2は色を補正する回帰式を構築する(ステップS14)。尚、回帰式には予め色見本の色毎に決めた基準画素値を使用する。
【0030】
画素値は、RGB値の3値、またはCMYKの4値とする。以下では、RGBを用いた例を基に説明する。
【0031】
検査者は、情報処理装置2を用いて、呈色反応後の試験紙4を撮影し、試験画像データを取得する(ステップS15)。この時、CNNの物体検出によって、情報処理装置2は試験紙4の第2領域6を自動で検出する(ステップS16)。
【0032】
検出された領域から、それぞれの画素値を取得する(ステップS17)。このように取得された画素値を、情報処理装置2は、色見本3の色見本画素値及び基準画素値を用いて構築した回帰式(色補正式)に代入することで、補正された画素値を得る(ステップS18)。
【0033】
情報処理装置2は、試験紙4の補正された画素値から、後述する事前の実験によって求めた水の成分と試験紙4の画素値の関係式を用いて、水質を定量化する(ステップS19)。このようにして取得した水の成分を、情報処理装置2に表示する。
【0034】
図7は、前記プログラムによる画像データ取得処理の流れを示すフローチャートである。図7に示すように、始めに、検査者が色見本3の撮影を行い、色見本画像データを取得する (ステップS21)。
【0035】
情報処理装置2は、定量判定のための色見本画素値の閾値T1、T2(0<T1<T2<255)を記憶しており、求めた色見本3の画素値(C)と閾値T1,T2と比較することにより、正しく色見本3が撮影されたかの判定を行う(ステップS22)。すなわち、T1<C<T2であれば色見本3が正しく撮影されていると判定する。閾値T1,T2は、2以上の多数の検体について試験を行い、色見本3の有無を最も正確に判定できるような値に選ぶとよい。例えば、ある色見本のレッド(R)は試験により215から235の範囲とわかっている時、T1=205、T2=245とする。尚、T1とT2は、事前の実験により設定をするが、情報処理装置により自由に変更できるものとする。
【0036】
情報処理装置2は、定量判定のための試験画像データの画素値の閾値U1、U2(0<U1<U2<255)を記憶しており、取得した試験紙4又は試験用透明チューブの試験画像データの画素値(X)と閾値U1,U2と比較することにより、正しく試験紙4又は試験用透明チューブの試験画像データが取得されたか否かの判定を行う(ステップS25)。すなわち、U1<X<U2であれば試験紙4又は試験用透明チューブの試験画像データは正しく取得されていると判定する。閾値U1,U2は、2以上の多数の検体について試験を行い、試験紙4の有無を最も正確に判定できるような値に選ぶとよい。例えば、ある試験紙のレッド(R)は試験により30から170の範囲とわかっている時、U1=20、U2=180とする。尚、U1とU2は、事前の実験により設定をするが、情報処理装置により自由に変更できるものとする。
【0037】
定量化された呈色反応の定量化情報(水の成分)は、情報処理装置2に保存され得る(ステップS27)。保存されたデータは、数値とグラフとして確認することができる。
【0038】
白色第1領域5が撮影範囲に含まれることによって、カメラの自動露光調整を適切に動作させ、試験紙4の白飛びを抑制できる。尚、白色第1領域5がない場合には、試験紙の箱などを用いても良い。
【0039】
情報解析装置2は、撮影により取得した呈色反応後の試験紙4の試験画像データの画素値を取得し、試験紙4を定量評価する
【0040】
ここで、前述した「基準画素値」及び「事前の実験によって求めた水の成分と試験紙4の画素値の関係式」について説明する。
始めに、基準画素値について説明する。
本実施例では、基準画素値は、使用する試験紙の色見本を予め複数回撮影して、各色に対して複数の色見本画像の色見本画素値を取得し、色毎に取得した複数の色見本画素値の平均値を用いる。
具体的には、この実施例では、MACHEREY-NAGEL社製の試験紙(スタンダードpH試験紙 1.0-14.0)に添付されている色見本を、撮影場所を変えた2条件で、131回撮影して、色見本の各色の平均値を求め、それらを基準画素値C'とした。前記色見本には11色の色があり、各色に対してRGB値の3値の基準画素値を求めた。説明を簡単化するために以下の説明では、Rについてのみ説明する。
上記した方法により得られた色見本の各色のRに対する基準画素値C'は以下の通りである。
C' =(200.56, 190.40, 177.88, 94.06, 106.20, 122.86, 139.57, 91.47, 50.32, 29.33, 33.05)
【0041】
色補正式は、C'=a×C+bという式を構築する。aとbは最も決定係数R値が高くなったもの、または決定係数R値が0.9以上となるようなものを使用すると良い。
情報処理装置2は、色見本の各色に対する基準画素値C'を予め記憶し、検査者が、水質試験を実施するために試験紙に対応する色見本を撮影すると、撮影された各色の色見本画像データから色見本画素値Cを取得する。次いで、各色の色見本画素値Cと、予め記憶した対応する色の基準画素値C'を用いて、各色について色補正式C'=a×C+bの係数a及びbを自動的に算出する。
具体的には、例えば、MACHEREY-NAGEL社製の試験紙(スタンダードpH試験紙 1.0-14.0)の色見本を撮影した時の各色のRに対する色見本画素値Cが(209.25, 196.85, 181.64, 87.00, 105.25, 125.42, 141.36, 85.00, 44.14, 18.64, 24.36)であった場合、上記した基準画素値C'を用いて構築した色補正式の係数はa=0.9052、b=-12.027となる。
【0042】
上述のように構築した色補正式に対応する試験紙4から取得した試験画像データの画素値Xを代入し、補正された試験紙4の試験画像データの画素値X'を得る。尚、X'=a×X+bとなる。
【0043】
次に、事前の実験によって求めた水の成分と試験紙4の画素値の関係式について説明する。
前記関係式は、水の成分の真値Wと、試験画像データの画素値X'との関係式であり、n次関数や、ニューラルネットワーク、XGBoostなどの機械学習法によって構築する。
具体的には、予め成分の真値Wが既知の複数の水を用いて呈色反応させた試験紙の画素値X'を教師データとして、複数の教師データを用いて、入力値として画素値X'を使用し、出力値として対応する成分の真値Wを使用して機械学習法またはn次関数によって関係式W = f(X')を構築する。
具体的には、この実施例では、教師データとして、MACHEREY-NAGEL社製の試験紙(スタンダードpH試験紙 1.0-14.0)及びpH1.0~14.0までのpH0.1刻みの水を使用して、131回試験を行い、そのデータを教師データとして使用して、f(x)=-2.35×10-6×x + 6.57×10-4×x - 0.076×x + 11.79となる関係式W = f(X')を構築した。
検証のためにMACHEREY-NAGEL社製の試験紙を使用してpHが既知(pH7.0)の水と反応させて呈色反応後に得た試験画像データのRの画素値Xを前記色補正式を用いて補正した補正後画素値X'から前記関係式を用いて成分値Wを得た。データは以下の通りである。
X = 161.12
X'=157.87
W=f(X')=6.92
情報処理装置2は、予め構築した関係式W = f(X')及び各色の基準画素値C'を記憶装置(メモリ又はHDD等)に記憶させており、検査者がカメラを用いて色見本及び呈色反応後の試験紙等を撮影して色見本画像データ及び試験画像データを取得すると、色見本の各色について基準画素値C'を用いて色補正式の係数a及びbを自動的に算出し、試験画像データの画素値を補正して補正後の画素値X'を取得して、前記関係式を用いて成分値Wを得るように構成されている。
尚、情報処理装置2は、少なくとも1種類の試験紙に対する関係式W = f(X')及び色見本の各色の基準画素値C'を記憶している。複数種類の試験紙に対する関係式W = f(X')及び色見本の各色の基準画素値C'を記憶している場合には、検査者が、使用する試験紙に対応する関係式W = f(X')及び基準画素値C'を選択することができるように構成され得る。具体的には、ディスプレイに使用可能な試験紙の種類を表示して検査者が選択できるように構成され、検査者の選択に応じて関係式W = f(X')及び基準画素値C'を決定する試験紙選択処理を実行するプログラム又は試験紙選択部が設けられ得る。
【0044】
1つの画素値、ここではRGB値のグリーン(G)を例に説明するとグリーンは2つ以上の水質濃度に対応する場合がある。図9は、グリーンとpHの関係を示す。グリーンが51から114のとき、pH2.3から10.9で2つのpH値に対応する。そこで、RGB値の3値で場合分けをすることで、水質濃度を1つに決定する。例えばレッド(R)が100以上の時、グリーンはpH7以下と対応するとする。尚、情報処理装置2は、それぞれの画素値取得後に、プログラムにより自動で対応する領域を算出する。
【0045】
撮影環境に応じて、補正パラメータαを設定することができる。試験紙4により得られた水質濃度と真値がわかる時、最初にαを調整し、推定値と真値を一致させる。αは画素値、または水質濃度に足すことで、値を変化させる。尚、αは情報処理装置の設定により、自由に設定できるものとする。
【0046】
補正パラメータαを設定した時、同時に試験紙4の第3領域7の画素値を記録する。その時の画素値をYとする。情報処理装置2は試験紙4の第3領域7の画素値がV1<Y<V2の時、記録された補正パラメータαを自動で使用する。例えば、V1=Y-10、V2=Y+10とすると、Y=100の時、V1=90、V2=110となる。尚、V1とV2は情報処理装置で自由に設定できるものとする。
【0047】
次に、図10のブロック図を参照して、本発明に係る呈色反応定量化装置の一実施例について説明していく。
この実施例では、呈色反応定量化装置は、
カメラ20と、
カメラ20で撮影した画像データを入力し、入力した画像データに基づいて測定すべき水の成分を定量化する制御装置30と、
前記制御装置で定量化した成分を出力する出力手段40と
を備えている。
前記制御装置30が、
成分測定に使用する試験紙に対応する色見本の基準画素値、並びに前記試験紙を成分値が異なる複数の成分値既知の水と呈色反応させ、呈色反応後の画像を撮影して得た試験紙画像データの画素値及び成分値の真値を教師データとして機械学習法またはn次関数によって構築した画素値と成分値との関係式を予め記憶する記憶部30aと、
前記カメラ20を用いて、前記試験紙に対応する色見本を撮影した色見本画像データを入力し、色見本画像データの色見本画素値を取得し、取得した前記色見本画素値と、前記記憶部に記憶した基準画素値との回帰式に基づいて色補正式を構築する色見本画像データ処理部30bと、
前記カメラ20を用いて、前記試験紙を測定すべき水との呈色反応後に撮影した試験画像データを入力し、入力した試験画像データの画素値を、前記色補正式で補正し、前記記憶部に記憶した関係式を用いて前記補正された画素値から前記試験紙の呈色反応を定量化する試験画像データ処理部30cと、
前記試験画像データ処理部30cで得られた定量化情報を前記出力手段40に出力する出力部30dと
を備えている
各処理部における処理は、図1図9の実施例を用いて説明した処理と同じであるので、ここでは重複する説明は省略する。
【符号の説明】
【0048】
1 情報処理システム
2 情報処理装置
3 色見本
4 試験紙
5 第1領域
6 第2領域
7 第3領域
8a~8d 第4領域
9a~9c 蛍光ペンによって引かれた線

10 白い紙
20 カメラ
30 制御装置
30a 記憶部
30b 色見本画像データ処理部
30c 試験画像データ処理部
30d 出力部
40 出力手段
図1
図2
図3
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図10