(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049304
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】電流センサ及び電力量計
(51)【国際特許分類】
G01R 15/18 20060101AFI20230403BHJP
G01R 11/02 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
G01R15/18 A
G01R11/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158967
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】311002034
【氏名又は名称】富士電機メーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 晋
(72)【発明者】
【氏名】山内 芳准
(72)【発明者】
【氏名】原山 滋章
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AB14
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】パターンコイルなどの磁気検出部が配置された基板の位置ずれに伴う電流検出感度の変動をさらに低減することができる電流センサ及び電力量計を提供すること。
【解決手段】検出すべき電流が流れる電流バー10と、電流バー10に流れる電流によって生じる磁束を集める少なくとも2つ以上の集磁コア2a,2bと、少なくとも2つ以上のパターンコイル3a,3bを有した基板3とを有し、パターンコイル3a,3bが検出した磁気検出結果をもとに電流バー10に流れる電流を検出する電流センサであって、電流バー10の両端にそれぞれ結合される2つの結合電流バー11,12は、少なくとも電流バー10と結合電流バー11,12との結合点P2,P1から集磁コア2a,2bの長手方向の端部までの間、集磁コア2a,2bの長手方向に対して平行配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出すべき電流が流れる電流バーと、前記電流バーに流れる電流によって生じる磁束を集める少なくとも2つ以上の集磁コアと、少なくとも2つ以上の磁気検出部を有した基板とを有し、前記磁気検出部が検出した磁気検出結果をもとに前記電流バーに流れる電流を検出する電流センサであって、
前記電流バーの両端にそれぞれ結合される2つの結合電流バーは、少なくとも前記電流バーと前記結合電流バーとの結合点から前記集磁コアの長手方向の端部までの間、前記集磁コアの長手方向に向けて前記集磁コアに対して平行配置されることを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
検知すべき電流が流れる電流バーと、前記電流バーに流れる電流によって生じる磁束を集める少なくとも2つ以上の集磁コアと、少なくとも2つ以上の磁気検出部を有した基板とを有し、前記磁気検出部が検出した磁気検出結果をもとに前記電流バーに流れる電流を検知する電流センサであって、
前記電流バーは、前記集磁コアの間に形成される空隙部を通り前記集磁コアの長手方向に直交して配置されるとともに、前記空隙部内において前記基板が貫通する貫通孔が形成され、
前記基板の前記磁気検出部は、前記貫通孔を介して前記貫通孔の両側に配置され、
前記電流バーの両端にそれぞれ結合される2つの結合電流バーは、少なくとも前記電流バーと前記結合電流バーとの結合点から前記集磁コアの長手方向の端部までの間、前記集磁コアの長手方向に向けて前記集磁コアに対して平行配置されることを特徴とする電流センサ。
【請求項3】
前記集磁コア、前記電流バー及び前記基板は、筐体に形成した位置決め機構により固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電流センサ。
【請求項4】
2つ以上の前記磁気検出部は、前記基板に形成されたパターンコイルであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の電流センサ。
【請求項5】
2つ以上の前記磁気検出部は、前記基板上の同一平面に形成されたパターンコイルであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の電流センサ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一つに記載した電流センサが検出した電流信号と電圧センサが検出した電圧信号とをもとに前記電流バーを流れる電力量を算出することを特徴とする電力量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンコイルなどの磁気検出部が配置された基板の位置ずれに伴う電流検出感度の変動をさらに低減することができる電流センサ及び電力量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられている電流センサとしては、変流器(カレントトランス:CT)や、集磁コアのギャップ部にホール素子などの磁電変換素子を配置した構成や、集磁コアのギャップ部に、巻線コイルや誘電体基板上にコイルパターンを形成した素子をもつ構成などがある。さらに、集磁コアを用いず、直接ホール素子などを配置して、電流を検出する構成等もある。これらの電流センサは、測定対象である一次電流が流れる回路とは電気的に分離されているため、一次電流側の回路に影響を与えることなく、精度よく電流を計測可能な点で優れている。さらにコイルパターンを形成した素子を配置する方法は、直線性および温度特性に優れ、部品点数が少なく製造が容易となる特徴を有する(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された電流センサは、環状の集磁コアの中央開口部に電流バーを通し、集磁コアのギャップ部にパターンコイルが施された基板を配置するものである。電流バーに電流が流れると、電流路の周辺には、電流バーに流れる電流の大きさに比例する磁束が発生する。発生した磁束は、集磁コアによって集磁される。電流が周期的電流である場合、その周期に応じて発生する磁束も周期的に変化する。これにより、コイルパターンをもつ検出コイルには、電流の大きさ及び周波数に応じた誘導電圧が発生し、この誘導電圧を電流バーに流れる電流の検出信号として用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、2つの集磁コアを平行に配置し、そのギャップの中央にコイルパターンを形成した基板を配置する電流センサは、例えば、
図6に示すように、検出すべき電流が流れる電流バー10の上下に集磁コア2a,2bを平行に配置し、その中央にパターンコイル3a,3bを形成した基板3を配置して電流バー10を流れる電流を検出する。この電流センサは、パターンコイル3a,3bを集磁コア2a,2b間のギャップの中央に配置することにより、左右方向(X方向)の外部磁場により生じる計測誤差を小さくしている。ここで、電流バー10及びパターンコイル3a,3bは、集磁コア2a,2b間のギャップの中央に配置することにより、計測誤差を小さくできるが、物理的にそれぞれが干渉してしまい、例えばパターンコイル3a,3bを集磁コア2a,2b間のギャップの中央に配置すると、電流バー10がギャップの中央から位置ずれして集磁コア2a,2bに異なる磁束が集磁され、計測誤差が大きくなる。
【0006】
そこで、例えば、
図7に示すように、電流バー10に貫通孔20を形成し、パターンコイル3a,3bを形成した基板3を貫通させる電流センサが考えられる。この電流センサでは、パターンコイル3a,3b及び電流バー10を集磁コア2a,2b間のギャップの中央に配置することができる。
【0007】
しかし、いずれの電流センサも、基板3がギャップの中央から上下方向に位置ずれが生じた場合、位置ずれ量に伴ってギャップ内の磁束密度分布が上下方向に対して非対称となり、電流検出感度が大きく変動する。
【0008】
しかも、電流センサの実装時には本体側の端子まで電流バー10を伸ばす必要がある。例えば、
図7に示すように、集磁コア2a,2bの長手方向(Y方向)に対して垂直な方向(-Z方向)に延びて電流バー10に結合する結合電流バー11´,12´を形成する必要がある。この場合、結合電流バー11´,12´は、下部の集磁コア2bを囲う構成となり、上下の集磁コア2a,2bに集磁される磁束密度に差が生じてしまう。このことは、
図6に示した電流センサに対しても同様である。そして、この結合電流バー11´,12´の配置による電流検出感度の変動は、電流バー10及び基板3のギャップ中央からの位置ずれによって生じた磁束密度分布の上下非対称による電流検出感度の変動に対応して変化し、全体的な電流検出感度の変動が大きくなってしまうという課題があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、パターンコイルなどの磁気検出部が配置された基板の位置ずれに伴う電流検出感度の変動をさらに低減することができる電流センサ及び電力量計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる電流センサは、検出すべき電流が流れる電流バーと、前記電流バーに流れる電流によって生じる磁束を集める少なくとも2つ以上の集磁コアと、少なくとも2つ以上の磁気検出部を有した基板とを有し、前記磁気検出部が検出した磁気検出結果をもとに前記電流バーに流れる電流を検出する電流センサであって、前記電流バーの両端にそれぞれ結合される2つの結合電流バーは、少なくとも前記電流バーと前記結合電流バーとの結合点から前記集磁コアの長手方向の端部までの間、前記集磁コアの長手方向に向けて前記集磁コアに対して平行配置されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる電流センサは、上記の発明において、検知すべき電流が流れる電流バーと、前記電流バーに流れる電流によって生じる磁束を集める少なくとも2つ以上の集磁コアと、少なくとも2つ以上の磁気検出部を有した基板とを有し、前記磁気検出部が検出した磁気検出結果をもとに前記電流バーに流れる電流を検知する電流センサであって、前記電流バーは、前記集磁コアの間に形成される空隙部を通り前記集磁コアの長手方向に直交して配置されるとともに、前記空隙部内において前記基板が貫通する貫通孔が形成され、前記基板の前記磁気検出部は、前記貫通孔を介して前記貫通孔の両側に配置され、前記電流バーの両端にそれぞれ結合される2つの結合電流バーは、少なくとも前記電流バーと前記結合電流バーとの結合点から前記集磁コアの長手方向の端部までの間、前記集磁コアの長手方向に向けて前記集磁コアに対して平行配置されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる電流センサは、上記の発明において、前記集磁コア、前記電流バー及び前記基板は、筐体に形成した位置決め機構により固定されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる電流センサは、上記の発明において、2つ以上の前記磁気検出部は、前記基板に形成されたパターンコイルであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる電流センサは、上記の発明において、2つ以上の前記磁気検出部は、前記基板上の同一平面に形成されたパターンコイルであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる電力量計は、上記の発明のいずれか一つに記載した電流センサが検出した電流信号と電圧センサが検出した電圧信号とをもとに前記電流バーを流れる電力量を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、パターンコイルなどの磁気検出部が配置された基板の位置ずれが生じた場合における基板の位置ずれに伴う電流検出感度の変動をさらに低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態である電流センサの構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した電流センサのA-A線断面図である。
【
図4】
図4は、筐体に固定された電流センサの平面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示した電流センサのB-B線断面図である。
【
図6】
図6は、基板と電流バーとが交差配置される従来例Bの電流センサの構成を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、基板が電流バーの貫通孔を介して配置される従来例Aの電流センサの構成を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、従来例Bにおける基板の上下位置ずれに対する磁界分布を示す図である。
【
図9】
図9は、結合電流バーのない従来例Aにおける基板の上下位置ずれに対する磁界分布を示す図である。
【
図10】
図10は、結合電流バーが-Y方向に結合された従来例Aにおける基板の上下位置ずれに対する磁界分布を示す図である。
【
図11】
図11は、本実施の形態における基板の上下位置ずれに対する磁界分布を示す図である。
【
図12】
図12は、本実施の形態及び従来例A,Bの電流センサにおける基板の上下位置ずれに対する電流検出感度の変動率を比較した図である。
【
図13】
図13は、
図1に示した電流センサを用いた電力量計の一例を示すブロック図である。
【
図14】
図14は、三相電流及び三相電圧間のベクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照してこの発明を実施するための形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態である電流センサの構成を示す斜視図である。また、
図2は、
図1に示した電流センサのA-A線断面図である。
図1及び
図2に示すように、電流センサは、電流バー10、集磁コア2a,2b及び基板3を有する。集磁コア2a,2bは、Y方向に沿ってZ方向に平行配置され、電流バー10に流れる電流によって生じる磁束を集磁する。電流バー10は、集磁コア2a,2bの間に形成された空隙部Gの中心Cを通り、Y方向に直交して配置される。電流バー10には、空隙部G内において基板3が貫通する貫通孔20が形成される。
【0020】
基板3は、2つの磁気検出部としてのパターンコイル3a,3bを有する。基板3は、電流バー10の貫通孔20に挿入される。基板3のY方向の中央部分は、貫通孔20の位置に配置される。2つのパターンコイル3a,3bは、貫通孔20の両側に配置され、貫通孔20の中心Cを通るXY平面と集磁コア2a,2bの内面2c、2dとの間の距離が等しい距離dとなるように配置される。各パターンコイル3a,3bは、集磁コア2a,2bが集磁した磁束の磁束密度を検出する。
【0021】
電流バー10の両端の結合点P2,P1にはそれぞれ結合電流バー11,12が結合される。そして、結合電流バー11,12は、それぞれ少なくとも結合点P2,P1から集磁コア2a,2bの長手方向(Y方向)の端部Lまでの間、集磁コア2a,2bの長手方向に対して平行配置される。
図1及び
図2では、結合電流バー11,12は、結合点P2,P1から-Y方向に延びて平行配置されている。したがって、結合電流バー11,12は、空隙部Gを囲み、集磁コア2a,2bを囲まないように伸びて配置される。なお、結合点P2,P1は、直線状の電流バー10と結合電流バー11,12との折り曲げ点である。また、結合電流バー11,12は、端部Lの-Y方向の外部においてさらに-X方向に折り曲げられている。すなわち、電流バー10及び結合電流バーは、1つの電流バー1である。
【0022】
図3は、基板3の平面図である。
図3に示すように、パターンコイル3a,3bは、それぞれ電流バー10に流れる電流Iにより発生する磁界を検出するものであり、電流および周波数に応じた誘導電圧を発生させる。上記したように、パターンコイル3a,3bは、電流バー10を介して左右均等な位置に配置されており、パターンコイル3a,3bは、電流Iにより発生する向きの異なる磁束Φを検出する。パターンコイル3a,3bは、それぞれ4層のパターンコイルであり、それぞれビアa1,b1,c1,d1、ビアa2,b2,c2,d2を介して結合される。外部接続端子22a,22bは、図示しない信号処理回路と接続するための端子である。パターンコイル3a,3bは、それぞれのコイルで発生した誘導電圧が足し合わされるように直列接続される。そして、この誘導電圧を基板外部、あるいは基板内部の信号処理回路により積分処理することで電流Iに比例した検出信号を出力するものである。なお、各パターンコイル3a,3bは、1層でも、2層以上の偶数層でもよい。また、
図3では、パターンコイル3a,3bが正方形の形状であったが、円形等の形状であってもよい。なお、各層は、基板3の表面に平行な同一平面に形成される。
【0023】
このような構成により、パターンコイル3a,3bを有する基板3は、集磁コア2a,2bが形成する空隙部Gの中央に配置され、電流バー10は、空隙部Gの中心Cを通って配置される。
【0024】
図4は、筐体100に固定された電流センサの平面図である。また、
図5は、
図4に示した電流センサのB-B線断面図である。
図4及び
図5に示すように、電流センサは、筐体100に形成された位置決め機構30によって電流バー10、集磁コア2a,2b及び基板3が位置決めされる。位置決め機構30は、透磁率の低い絶縁部材である。
【0025】
位置決め機構30は、電流センサが搭載される装置の筐体100に形成される。位置決め機構30には、Y方向が開口した凹部31,32、33,34、35が形成され、-Y方向の基部が、筐体100側に結合される。凹部31,32は、それぞれ集磁コア2a,2bが方向AR(-Y方向)から嵌め込まれる穴であり、爪31a,32aにより集磁コア2a,2bが係止される。凹部33,34は、電流バー10が方向ARから嵌め込まれる穴であり、爪33a,34aにより電流バー10が係止される。凹部35は、基板3が方向ARから嵌め込まれる穴であり、図示しない爪により基板3が係止される。この図示しない爪は、凹部35内に形成された爪であり、基板3に形成された爪受けと係合することにより、基板3が係止される。
【0026】
ここで、基板3の上下位置ずれによる電流センサによる電流検出感度の変動率について説明する。なお、
図6は、基板3と電流バー10とが交差配置される従来例Bの電流センサの構成を示す斜視図である。また、
図7は、基板3が電流バー10の貫通孔20を介して配置される従来例Aの電流センサの構成を示す斜視図である。
【0027】
図8に示すように、従来例Bの電流センサでは、基板3が上下方向(Z方向)にずれると、電流バー10とパターンコイル3a,3bとの間の距離が変化する。電流バー10に流れる電流により生じる磁界の強さHは、電流バー10の電流I、電流バー10からの半径rとすると、H=I/(2πr)であるため、基板3、すなわちパターンコイル3a,3bの上下位置がずれると、半径rが変化することになり、電流バー10近傍の電流検出感度が大きく変動してしまう。
【0028】
一方、
図9に示すように、従来例Aの電流センサでは、電流バー10の中央に貫通孔20があるため、電流バー10近傍の磁界は上下で打ち消されるため、パターンコイル3a,3bが上下方向に位置ずれした場合でも、電流検出感度の変動を抑えることができる。
【0029】
しかし、
図10に示すように、従来例Aの電流バー1´は、電流バー10と結合される結合電流バー11´,12´が-Z方向に伸びて集磁コア2bを囲って直交している。したがって、集磁コア2bの磁束密度は、集磁コア2aの磁束密度よりも大きくなる。この場合、磁気特性の非線形性により、
図10に示すように、集磁コア2a,2b間の磁束の流れが上下非対称となる。
図10では、集磁コア2b側の磁束が密になっている。この状態でパターンコイル3a,3bの位置が上下にずれると、電流検出感度が大きく変動してしまう。
【0030】
これに対し、本実施の形態では、
図11に示すように、結合電流バー11,12が集磁コア2a,2bの長手方向(Y方向)に平行配置して結合電流バー11,12が集磁コア2a,2bを囲わないようにしている。これにより、上下の集磁コア2a,2b間の磁束密度の差が低減でき、磁束密度の流れも、上下対称に近づけることができる。したがって、本実施の形態では、パターンコイル3a,3b(基板3)が上下に位置ずれしても、電流検出感度の変動を抑えることができる。
【0031】
図12は、本実施の形態及び従来例A,Bの電流センサにおける基板3の上下位置ずれに対する電流検出感度の変動率を比較した図である。
図12に示すように、従来例Aは、従来例Bに比べて電流検出感度の変動率を大きく低減しているが、本実施の形態では、電流検出感度の変動率をさらに低減することができる。
【0032】
なお、集磁コア2a,2bの対を2つ以上設け、各集磁コア2a,2bに対してパターンコイル3a,3bを設けた電流センサであってもよい。すなわち、1つの電流バー10に沿って
図1に示した集磁コア2a,2b及びパターンコイル3a,3bを複数設け、各パターンコイル3a,3bでの検出値を積算するようにしてもよい。この場合、複数のパターンコイル3a,3bは同一基板上に設けてもよい。
【0033】
<電力量計>
図13は、本実施の形態で示した電流センサを用いた電力量計200の一例を示すブロック図である。この電力量計200は、電源SPと負荷LDとの間の三相電力量を計測するものであり、2電力計法により求めている。なお、
図14は、三相電流IR,IS,IT及び三相電圧VR,VS,VT間のベクトル図を示している。
【0034】
図13に示すように、電力量計200は、実施の形態で示した電流センサに対応する電流センサ103a,103b、電圧センサ201a,201b、電力量算出部202、出力部203を有する。電流センサ103aは、R相の電流信号を検出する。電流センサ103bは、T相の電流信号を検出する。また、電圧センサ201aは、R相とS相との間の電圧信号を検出する。電圧センサ201bは、T相とS相との間の電圧信号を検出する。
【0035】
電力量算出部202は、電流センサ103aの電流信号と電圧センサ201aの電圧信号とを乗算して瞬時電力信号を生成し、これをローパスフィルタで平滑した有効電力を求めるとともに、電流センサ103bの電流信号と電圧センサ201bの電圧信号とを乗算して瞬時電力信号を生成し、これをローパスフィルタで平滑した有効電力を求め、各有効電力を加算した有効電力を電力量として算出する。出力部203は、この算出された電力量を表示出力あるいは外部出力する。
【0036】
なお、2電力計法で求める三相電力Pは、
P=VRS・IR+VTS・IT
=(VR-VS)・IR+(VT-VS)・IT
=VR・IR+VS・(-IR-IT)+VT・IT
=VR・IR+VS・IS+VT・IT
となり、各相の電力を合計した電力を求めたことと同じになる。
【0037】
また、上記の実施の形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置及び構成要素の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【符号の説明】
【0038】
1,10 電流バー
2a,2b 集磁コア
2c,2d 内面
3 基板
3a,3b パターンコイル
11,11´,12,12´ 結合電流バー
20 貫通孔
22a,22b 外部接続端子
30 位置決め機構
31~35 凹部
31a,32a,33a,34a 爪
100 筐体
103a,103b 電流センサ
200 電力量計
201a,201b 電圧センサ
202 電力量算出部
203 出力部
a1,a2,b1,b2,c1,c2,d1,d2 ビア
AR 方向
C 中心
G 空隙部
I 電流
IR,IS,IT 三相電流
L 端部
LD 負荷
P 三相電力
P1,P2 結合点
r 半径
SP 電源
VR,VS,VT 三相電圧
Φ 磁束