(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049314
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】車両の床下構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20230403BHJP
B62D 31/02 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
B62D25/20 B
B62D31/02 A
B62D25/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158979
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 友朗
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA18
3D203BA07
3D203BB04
3D203BB22
3D203CA23
3D203CA52
3D203CA53
3D203DA53
(57)【要約】 (修正有)
【課題】床面の高さの違いから段差用縦フレームと座席固定用フレームとが使用されている部分の剛性を向上させ、車両衝突時の座席の固定安定性を向上させる。
【解決手段】車両の床下構造であって、第1の床下フレームの隣りの第2の床下フレームが第1の床下フレームより低い位置にあり、フロアパネル13の下部パネル部13fの下側には、第2の床下フレームに連結された最前部座席固定用フレーム30fが設けられており、フロアパネルの上部パネル部13uと段差部13dとの角部の下側には、第1の床下フレームと最前部座席固定用フレームの端部とをつなぐ段差用縦フレーム40が設けられており、さらに、第1の床下フレームと段差用縦フレームと最前部座席固定用フレームとは、第1の床下フレームから段差用縦フレーム、及び最前部座席固定用フレームに跨る補強部材50によって相互に連結されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアパネルの下側で間隔をおいて平行に設けられた複数本の床下フレームと、前記フロアパネルの下側で前記床下フレームに対して交差する方向に延び、前記床下フレームを相互につなぐ構成で、座席の脚部が固定される複数本の座席固定用フレームとを備える車両の床下構造であって、
第1の床下フレームの隣りの第2の床下フレームが前記第1の床下フレームより低い位置にあり、
前記フロアパネルには、前記第1の床下フレームを覆う上部パネル部と、前記第2の床下フレームを覆う下部パネル部と、前記上部パネル部と前記下部パネル部間の段差部とが設けられており、
前記フロアパネルの下部パネル部の下側には、前記第2の床下フレームに連結された所定の前記座席固定用フレームが設けられており、
前記フロアパネルの上部パネル部と前記段差部との角部の下側には、前記第1の床下フレームと前記所定の座席固定用フレームの端部とをつなぐ段差用縦フレームが設けられており、
さらに、前記第1の床下フレームと前記段差用縦フレームと前記所定の座席固定用フレームとは、前記第1の床下フレームから前記段差用縦フレーム、及び前記所定の座席固定用フレームに跨る補強部材によって相互に連結されている車両の床下構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の床下構造であって、
前記床下フレームは、車幅方向に延びるフレームであり、
前記座席固定用フレームは、車両前後方向に延びるフレームであり、
前記所定の座席固定用フレームは、前端部が前記段差用縦フレームに連結されており、後端部が前記第2の床下フレームに連結されている車両の床下構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の車両の床下構造であって、
前記床下フレームは、溝形に形成されて、前記溝の開口両側にフランジ部が形成されており、
前記補強部材は、板状の成形体であり、前記第1の床下フレームの両側のフランジ部に重ねられた状態で、それらのフランジ部に接合されている車両の床下構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両の床下構造であって、
前記段差用縦フレームと前記補強部材とは、互いに接合されることで中空閉断面を構成している車両の床下構造。
【請求項5】
請求項4に記載の車両の床下構造であって、
前記段差用縦フレームは、上下方向に延びる溝形に形成されて、前記溝の開口両側にフランジ部が形成されており、
前記補強部材は、前記段差用縦フレームの両側のフランジ部に重ねられた状態で、それらのフランジ部に接合されている車両の床下構造。
【請求項6】
請求項5に記載の車両の床下構造であって、
前記補強部材には、前記段差用縦フレームにおける前記溝内の空間を覆う位置に上下方向に延びるビードが形成されている車両の床下構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロアパネルの下側で車幅方向に延び、車両前後方向に間隔をおいて複数本設けられた床下フレームと、前記床下フレームを相互につないだ状態で座席の脚部が固定される複数本の座席固定用フレームとを備える車両の床下構造に関する。
【背景技術】
【0002】
バス等の車両の座席の配置に関する技術が特許文献1に記載されている。一般的に小型バス100等は、
図14に示すように、前部の床下にエンジン等が設置されているため、運転席101がある前部の床面110(以下、前部床面110)が高く、乗客用の座席102が設置される床面112(以下、客室床面112)は前部床面110よりも一段低い位置にある。ここで、床下には、
図15に示すように、角溝状の床下フレーム121が客室床材112pの下側で車幅方向に延びるように設けられている。床下フレーム121は、車両の前後方向に間隔をおいた状態で複数本設けられている。また、客室床材112pの下側には、床下フレーム121を相互につないで車両前後方向に延び、前記座席102の脚部102kが固定される複数本の座席固定用フレーム124m,124fが設けられている。
【0003】
ここで、客室床面112に設置された複数の床下フレーム121は等しい高さ位置にあるため、客室床面112の前後の床下フレーム121は直線状の主座席固定用フレーム124mによって相互に連結される。これに対し、前部床面110に設置された床下フレーム121(第1の床下フレーム121)と客室床面112に設置された最前部の床下フレーム121(第2の床下フレーム)とは高さが異なるため、直線状の主座席固定用フレーム124mでは連結できない。このため、
図15に示すように、第1の床下フレーム121と第2の床下フレーム121とは、一般的に、縦向きの段差用縦フレーム126と最前部座席固定用フレーム124fとをつなぎ合わせることで連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、段差用縦フレーム126と最前部座席固定用フレーム124fとによって、第1の床下フレーム121と第2の床下フレーム121とをつなぐ構成は、直線状の主座席固定用フレーム124mによって前後の床下フレーム121をつなぐ構成と比較して剛性が低下する。このため、例えば、車両の衝突時に、
図15の二点鎖線に示すように、座席102の前傾により最前部座席固定用フレーム124fに対して下向きの荷重Fが加わると、段差用縦フレーム126と最前部座席固定用フレーム124fとの連結部分の変形により前記荷重Fを第1の床下フレーム121で効果的に受けられなくなる。また、座席102が前傾する際、座席102の脚部102kの前面を客室床材112p、及び段差用縦フレーム126とで効率的に支えられなくなる。即ち、車両衝突時の座席の固定安定性が低下する。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、床面の高さの違いから段差用縦フレームと座席固定用フレームとが使用されている部分の剛性を向上させることで、車両衝突時の座席の固定安定性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、車両のフロアパネルの下側で間隔をおいて平行に設けられた複数本の床下フレームと、前記フロアパネルの下側で前記床下フレームに対して交差する方向に延び、前記床下フレームを相互につなぐ構成で、座席の脚部が固定される複数本の座席固定用フレームとを備える車両の床下構造であって、第1の床下フレームの隣りの第2の床下フレームが前記第1の床下フレームより低い位置にあり、前記フロアパネルには、前記第1の床下フレームを覆う上部パネル部と、前記第2の床下フレームを覆う下部パネル部と、前記上部パネル部と前記下部パネル部間の段差部とが設けられており、前記フロアパネルの下部パネル部の下側には、前記第2の床下フレームに連結された所定の前記座席固定用フレームが設けられており、前記フロアパネルの上部パネル部と前記段差部との角部の下側には、前記第1の床下フレームと前記所定の座席固定用フレームの端部とをつなぐ段差用縦フレームが設けられており、さらに、前記第1の床下フレームと前記段差用縦フレームと前記所定の座席固定用フレームとは、前記第1の床下フレームから前記段差用縦フレーム、及び前記所定の座席固定用フレームに跨る補強部材によって相互に連結されている。
【0008】
本発明によると、上側の第1の床下フレームと下側の第2の床下フレームとは、段差用縦フレームと所定の座席固定用フレームとを介して連結されている。さらに、第1の床下フレームと段差用縦フレームと所定の座席固定用フレームとは、第1の床下フレームから段差用縦フレーム、及び所定の座席固定用フレームに跨る補強部材によって相互に連結されている。即ち、第1の床下フレームと段差用縦フレームと所定の座席固定用フレームとの連結部分が補強部材によって全体に亘って補強されているため、第1の床下フレームと段差用縦フレームと座席固定用フレームの前部との連結部分の剛性が高くなる。これにより、車両の前突時に座席が前傾する際、座席の脚部から所定の座席固定用フレームに対して下向きの荷重が加わったときに、この荷重を第1の床下フレームで効果的に受けることができる。さらに、座席が前傾する際、段差用縦フレーム、補強部材によって剛性が向上したフロアパネルの段差部で座席の脚部の前面を受けることができる。これにより、車両の前突時の座席の前方倒れこみを抑えることができる。即ち、車両衝突時の座席の固定安定性が向上する。
【0009】
第2の発明によると、床下フレームは、車幅方向に延びるフレームであり、座席固定用フレームは、車両前後方向に延びるフレームであり、所定の座席固定用フレームは、前端部が段差用縦フレームに連結されており、後端部が第2の床下フレームに連結されている。
【0010】
第3の発明によると、床下フレームは、溝形に形成されて、前記溝の開口両側にフランジ部が形成されており、補強部材は、板状の成形体であり、第1の床下フレームの両側のフランジ部に重ねられた状態で、それらのフランジ部に接合されている。即ち、補強部材は、第1の床下フレームをフロアパネルと共に上から覆った状態で第1の床下フレームのフランジ部に接合される。
【0011】
第4の発明によると、段差用縦フレームと補強部材とは、互いに接合されることで中空閉断面を構成している。即ち、段差用縦フレームと補強部材とが接合されることで、筒状部が形成されるため、段差用縦フレームと補強部材との接合体の剛性が高くなる。
【0012】
第5の発明によると、段差用縦フレームは、上下方向に延びる溝形に形成されて、前記溝の開口両側にフランジ部が形成されており、補強部材は、前記段差用縦フレームの両側のフランジ部に重ねられた状態で、それらのフランジ部に接合されている。
【0013】
第6の発明によると、補強部材には、段差用縦フレームにおける溝内の空間を覆う位置に上下方向に延びるビードが形成されている。このように、ビードの働きで段差用縦フレームと補強部材との接合体の上下方向における剛性が高くなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、床面の高さの違いから段差用縦フレームと座席固定用フレームとが使用されている部分の剛性を向上させることができるため、車両衝突時の座席の固定安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態1に係る床下構造を備える車両の模式側面図である。
【
図3】本実施形態1に係る床下構造を表す縦断面図である。
【
図4】前記床下構造を表す斜視図(フロアパネルを取り外した状態の斜視図)である。
【
図5】前記床下構造の縦断面図(
図4のV-V矢視断面図)である。
【
図6】前記床下構造を表す平断面図(
図5のVI-VI矢視断面図)である。
【
図7】前記床下構造において段差用縦フレームの配置を表す斜視図(補強プレートを取り外した状態の斜視図)である。
【
図8】前記床下構造の組付け手順を表す縦断面図である。
【
図9】前記床下構造を構成する補強プレートの斜視図である。
【
図10】前記床下構造を構成する段差用縦フレームの斜視図である。
【
図11】前記床下構造を構成する最前部座席固定用フレームの外側ケース部の斜視図である。
【
図12】前記床下構造を構成する最前部座席固定用フレームのリインフォースの斜視図である。
【
図13】前記床下構造を構成する最前部座席固定用フレームの下側蓋部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態1]
以下、
図1から
図13に基づいて、本発明の実施形態1に係る車両の床下構造の説明を行う。本実施形態に係る車両の床下構造は、小型バス(以下、車両という)の前部における床下構造である。ここで、図中における前後左右及び上下は、車両の前後左右、及び上下に対応している。
【0017】
<車両10の前部床下の概要について>
車両10は、
図1、
図2に示すように、運転席12dがある前部の床面13u(以下、前部床面13u)が比較的高い位置にあり、乗客用の複数の座席12pが配置される床面13f(以下、客室床面13f)が前部床面13uよりも一段低い位置に形成されている。そして、前部床面13uと客室床面13fとの境界部分に段差部13d(
図2参照)が形成されている。ここで、車両10の前部床面13uの下側には、車両10のエンジン等の駆動機構が設置されている。
【0018】
車両10の床下には、
図2(
図1のII矢視拡大図)に示すように、前部床面13u、及び客室床面13fを構成するフロアパネル13の下側で車幅方向に延びるクロスメンバ20が設けられている。クロスメンバ20は、そのクロスメンバ20の左右の端部が車両10の床下の左右両側(車幅方向両側)で車両前後方向に延びるサイドメンバ(図示省略)に接続されている。クロスメンバ20は、車両10の前後方向に間隔をおいた状態で複数本設けられている。さらに、フロアパネル13の下側には、車両前後方向に延びて、隣り合うクロスメンバ20を相互につなぐとともに、座席12pの脚部12kが固定される複数本の座席固定用フレーム30m,30fが設けられている。
【0019】
前部床面13uを構成するフロアパネル13(以下、上部パネル部13u)の下側に設けられたクロスメンバ20は、
図2に示すように、客室床面13fを構成するフロアパネル13(以下、下部パネル部13f)の下側に設けられたクロスメンバ20よりも高い位置に設けられている。ここで、フロアパネル13の上部パネル部13uの下側に設けられたクロスメンバ20を第1のクロスメンバ20と呼び、フロアパネル13の下部パネル部13fの下側に設けられたクロスメンバ20を第2~第Nのクロスメンバ20と呼ぶことにする。フロアパネル13の下部パネル部13fは、
図1に示すように、水平であるため、第2~第Nのクロスメンバ20は、等しい高さ位置に設けられている。このため、第2~第Nのクロスメンバ20は、直線状の主座席固定用フレーム30mによって相互に連結されている。
【0020】
これに対し、高さ位置が異なる第1のクロスメンバ20と第2のクロスメンバ20間では、
図2、
図3に示すように、最前部座席固定用フレーム30fの前端に段差用縦フレーム40をつなぎ合わせることで第1のクロスメンバ20と第2のクロスメンバ20とを連結している。さらに、第1のクロスメンバ20と段差用縦フレーム40と最前部座席固定用フレーム30fとは、第1のクロスメンバ20、段差用縦フレーム40、及び最前部座席固定用フレーム30fに跨る補強プレート50によって相互に連結されている。
【0021】
<クロスメンバ20の構成について>
第1~第Nのクロスメンバ20は、等しい断面構成、等しい断面サイズで形成されている。クロスメンバ20は、
図3~
図5等に示すように、両側の側壁部22と底板部23とにより車幅方向に延びる角溝状に形成されている。そして、両側の側壁部22の上端(角溝の開口側)には、幅方向外側に水平に折り曲げられたフランジ部22fが形成されている。クロスメンバ20は、例えば、厚み寸法が約1.8mmの鋼板により形成されている。
【0022】
<最前部座席固定用フレーム30fの構成について>
最前部座席固定用フレーム30fは、主座席固定用フレーム30mと基本的に等しい構成であり、その主座席固定用フレーム30mよりも長さ寸法が小さく設定されている。即ち、最前部座席固定用フレーム30fの長さ寸法は、
図2、
図3等に示すように、第2のクロスメンバ20の前側の側壁部22の位置からフロアパネル13の段差部13dの位置までの水平寸法とほぼ等しい値に設定されている。最前部座席固定用フレーム30fは、
図3、及び
図11~
図13の部品斜視図に示すように、外側フレーム部32と、外側フレーム部32の内側に設けられるリインフォース部34と、外側フレーム部32の下面を塞ぐ下蓋部36とから構成されている。
【0023】
外側フレーム部32は、
図11の全体斜視図に示すように、左右の側壁部323と、天板部322と、左右の側壁部323の下端に形成されたフランジ状の折り曲げ部324とにより断面ハット形に形成されている。外側フレーム部32の左右の側壁部323の前端には、幅方向外側に折り曲げられた角形フランジ部323xが形成されている。外側フレーム部32の角形フランジ部323xは、
図5、
図7等に示すように、段差用縦フレーム40の台形状縦フランジ部42(後記する)の下端に溶接等により接合される。また、外側フレーム部32の左右の側壁部323の後端には、
図11に示すように、幅方向外側に折り曲げられた幅広フランジ部323yが形成されている。外側フレーム部32の幅広フランジ部323yは、
図3、
図5等に示すように、第2のクロスメンバ20の前側の側壁部22の側面に溶接等により接合される。
【0024】
外側フレーム部32の天板部322の前部は、
図11に示すように、帯状に窪んでおり、この部分が、
図4に示すように、補強プレート50の下端水平フランジ部55が溶接等により接合されるプレート受け部322uとなっている。また、外側フレーム部32の天板部322の後部は、
図11に示すように、同じく帯状に窪んでおり、この部分が、
図5等に示すように、第2のクロスメンバ20のフランジ部22fが溶接等により接合されるフランジ受け部322wとなっている。また、外側フレーム部32の天板部322の中央所定位置には、
図11に示すように、座席12pの脚部12kを固定する固定ボルトB(
図3参照)が通されるボルト挿通孔322hが形成されている。ここで、外側フレーム部32は、例えば、厚み寸法が約1.4mmの鋼板により形成されている。
【0025】
リインフォース部34は、
図12の全体斜視図に示すように、左右の側壁部343と天板部342とから断面略門形に形成されている。そして、リインフォース部34の左右の側壁部343が外側フレーム部32の左右の側壁部323に対して内側から合わせられ、リインフォース部34の天板部342が外側フレーム部32の天板部322に内側から合わせられる。リインフォース部34の天板部342には、外側フレーム部32の天板部322のプレート受け部322uに対応する位置にプレート受け部342uが形成されており、外側フレーム部32の天板部322のフランジ受け部322wに対応する位置にフランジ受け部342wが形成されている。また、リインフォース部34の天板部342には、外側フレーム部32の天板部322のボルト挿通孔322hに対応する位置にナットNを備える雌ねじ穴342nが設けられている。ここで、リインフォース部34は、例えば、厚み寸法が約2.0mmの鋼板により形成されている。
【0026】
下蓋部36は、
図13の全体斜視図に示すように、左右の側壁部363と天板部362とから断面略門形に形成されている。そして、下蓋部36の左右の側壁部363がリインフォース部34の左右の側壁部343に対して内側から合わせられることで、
図5等に示すように、外側フレーム部32が下方から塞がれるようになる。下蓋部36の天板部362には、リインフォース部34の天板部342のナットNに対応する位置に、そのナットN、及びナットNから下方に突出する固定ボルトBの先端を通す挿通孔262hが形成されている。ここで、下蓋部36は、例えば、厚み寸法が約1.8mmの鋼板により形成されている。
【0027】
<段差用縦フレーム40について>
段差用縦フレーム40は、
図3、
図5等に示すように、フロアパネル13の上部パネル部13uと段差部13dとの角部下側に配置されて、第1のクロスメンバ20の後側の側壁部22と最前部座席固定用フレーム30fの前端とを連結するフレームである。段差用縦フレーム40は、
図10の全体斜視図に示すように、左側壁部43と、右側壁部44と、左右の側壁部43,44の前端上部をつなぐ前壁部45とにより、上下方向に延びる溝状に形成されている。そして、左右の側壁部43,44の後端位置、即ち、溝の開口側に幅方向外側に折り曲げられた台形状縦フランジ部42が形成されている。また、左右の側壁部43,44の上端中央位置には、幅方向外側に折り曲げられた角形水平フランジ部47が形成されている。
【0028】
段差用縦フレーム40は、
図5~
図7等に示すように、前壁部45が第1のクロスメンバ20の後側の側壁部22の外側面に溶接等により接合される。また、段差用縦フレーム40は、
図7に示すように、左右の台形状縦フランジ部の42の下部が最前部座席固定用フレーム30fの外側フレーム部32の前端に形成された角形フランジ部323xに接合される。これにより、第1のクロスメンバ20と最前部座席固定用フレーム30fとは、段差用縦フレーム40を介して連結される。また、段差用縦フレーム40の左右の角形水平フランジ部47と左右の台形状縦フランジ部の42の下部以外の部分とは、
図4、
図5に示すように、第1のクロスメンバ20、段差用縦フレーム40、及び最前部座席固定用フレーム30fの前部に跨る補強プレート50に対して溶接等により接合される。段差用縦フレーム40は、例えば、厚み寸法が約1.6mmの鋼板により形成されている。
【0029】
<補強プレート50について>
補強プレート50は、上記したように、第1のクロスメンバ20、段差用縦フレーム40、及び最前部座席固定用フレーム30fの前部に跨るプレートであり、
図9の全体斜視図に示すように、水平上板部52と縦板部53と下端水平フランジ部55とにより断面略Z字形に形成されている。補強プレート50は、
図5等に示すように、フロアパネル13の上部パネル部13u、段差部13d、及び下部パネル部13fに対して下側から合わせられるように構成されている。そして、補強プレート50の水平上板部52の前後幅寸法は、
図5に示すように、第1のクロスメンバ20の前側のフランジ部22fから段差用縦フレーム40の台形状縦フランジ部42までの水平寸法とほぼ等しい値になるように設定されている。また、補強プレート50の縦板部53の高さ寸法は、第1のクロスメンバ20のフランジ部の上面から最前部座席固定用フレーム30fの外側フレーム部32の前端上部に形成されたプレート受け部322uまでの高さ寸法とほぼ等しい値となるように設定されている。
【0030】
補強プレート50の縦板部53には、
図4等に示すように、中央位置に水平上板部52の位置から縦板部53の下部近傍まで下方向に延びる断面逆台形状のビード53bが形成されている。また、補強プレート50の縦板部53の左右端部には、ビード53bと等しい高さ位置にそのビード53bの半割形状であるビード半割部53wが形成されている。補強プレート50の水平上板部52は、
図4、
図5等に示すように、第1のクロスメンバ20の前後のフランジ部22fと段差用縦フレーム40の左右の角形水平フランジ部47とに接合される。また、補強プレート50の縦板部53におけるビード53bの左右両側が、
図6に示すように、段差用縦フレーム40の左右の台形状縦フランジ部42に接合される。即ち、段差用縦フレーム40の上下方向に延びる溝の開口側が補強プレート50の縦板部53によって塞がれる。さらに、
図4に示すように、補強プレート50の下端水平フランジ部55が最前部座席固定用フレーム30fの外側フレーム部32のプレート受け部322uに接合される。
【0031】
これにより、第1のクロスメンバ20と段差用縦フレーム40と最前部座席固定用フレーム30fの前部とは、第1のクロスメンバ20、段差用縦フレーム40、及び最前部座席固定用フレーム30fの前部に跨る補強プレート50によって強固に連結される。ここで、第1のクロスメンバ20は、
図5等に示すように、補強プレート50の水平上板部52によって上側が塞がれることで車幅方向に延びる角筒状に形成されている。また、段差用縦フレーム40は、
図6に示すように、補強プレート50の縦板部53によって後側が塞がれることで上下方向に延びる角筒状に形成される。ここで、補強プレート50の縦板部53には、段差用縦フレーム40の溝内の空間を覆う位置にビード53bが形成されているため、段差用縦フレーム40と補強プレート50の縦板部53とによって形成された角筒状部分の上下荷重に対する剛性が高くなる。補強プレート50は、例えば、厚み寸法が約2.0mmの鋼板により形成されている。
【0032】
<車両10の前部床下の組付け手順について>
車両10の前部床下の組付けでは、
図8に示すように、先ず、第1のクロスメンバ20の後側の側壁部22の外側面に対して段差用縦フレーム40の前壁部45が合わせられ、溶接等により接合される。次に、補強プレート50の水平上板部52が第1のクロスメンバ20の前後のフランジ部22fと段差用縦フレーム40の左右の角形水平フランジ部47とに合わせられ、溶接等により接合される。さらに、補強プレート50の縦板部53におけるビード53bの左右両側が段差用縦フレーム40の左右の台形状縦フランジ部42に溶接等により接合される。
【0033】
さらに、
図8に示すように、補強プレート50、及びその補強プレート50から露出した第1のクロスメンバ20のフランジ部22f(
図5参照)に対してフロアパネル13が被せられ、溶接等により接合される。次に、最前部座席固定用フレーム30fの外側フレーム部32の前端の角形フランジ部323xが段差用縦フレーム40の左右の台形状縦フランジ部42の下部に溶接等により接合される。また、最前部座席固定用フレーム30fの外側フレーム部32の前端上部に形成されたプレート受け部322uが補強プレート50の下端水平フランジ部55に溶接等により接合される。
【0034】
次に、最前部座席固定用フレーム30fの外側フレーム部32の後端の幅広フランジ部323yが、
図5等に示すように、第2のクロスメンバ20の前側の側壁部22の外側面に溶接等により接合される。また、最前部座席固定用フレーム30fの外側フレーム部32の後端上部のフランジ受け部322wが第2のクロスメンバ20の前側のフランジ部22fに溶接等により接合される。これにより、第1のクロスメンバ20と段差用縦フレーム40と最前部座席固定用フレーム30fと第2のクロスメンバ20との連結、及び補強プレート50、フロアパネル13の連結が完了する。
【0035】
次に、
図3に示すように、フロアパネル13上に外装材60がセットされ、座席12pが客室床面13fに固定される。最前列の座席12pの固定では、座席12pの脚部12kの下部に設けられた前側の固定ボルトBが最前部座席固定用フレーム30fのナットNに締結される。また、座席12pの脚部12kの後側の固定ボルト(図示省略)が第2のクロスメンバ20内のリインフォース(図示省略)のナットに締結される。ここで、
図3における二点鎖線は、車両10の前方衝突時に最前列の座席12pが衝突荷重により前傾した状態を表している。また、黒矢印Fは、座席12pが前傾したときに、最前部座席固定用フレーム30fが受ける下向きの荷重を表している。
【0036】
上記したように、最前部座席固定用フレーム30fの前部は、段差用縦フレーム40を介して第1のクロスメンバ20に連結されている。また、最前部座席固定用フレーム30fの前部と段差用縦フレーム40と第1のクロスメンバ20とは、最前部座席固定用フレーム30fの前部、段差用縦フレーム40、及び第1のクロスメンバ20に跨る補強プレート50によって相互に連結されている。即ち、第1のクロスメンバ20と段差用縦フレーム40と最前部座席固定用フレーム30fの前部とが補強プレート50によって全体に亘って補強されている。このため、高さ位置が異なる第1のクロスメンバ20と第2のクロスメンバ20とをつなぐ段差用縦フレーム40と最前部座席固定用フレーム30fとの剛性を直線的な主座席固定用フレーム30mの剛性と同程度に高めることができる。
【0037】
これにより、車両の前突時に座席12pが前傾する際、最前部座席固定用フレーム30fに対して下向きの荷重Fが加わっても、最前部座席固定用フレーム30fの前部と段差用縦フレーム40との連結部分が変形し難くなり、この荷重Fを第1のクロスメンバ20で効果的に受けることができる。さらに、座席12pが前傾する際、段差用縦フレーム40と補強プレート50とによって剛性が向上したフロアパネル13の段差部13dで座席12pの脚部12kの前面を受けることができる。これにより、車両10の前突時の座席12pの前方倒れこみを抑えることができる。即ち、車両衝突時の座席12pの固定安定性が向上する。
【0038】
<本実施形態で使用した用語と本発明における用語との対応>
本実施形態におけるクロスメンバ20が本発明の床下フレームに相当する。また、最前部座席固定用フレーム30fが本発明の所定の座席固定用フレームに相当し、主座席固定用フレーム30mが本発明の座席固定用フレームに相当する。さらに、補強プレート50が本発明の補強部材に相当する。
【0039】
<本実施形態に係る車両の床下構造の長所について>
本実施形態に係る車両の床下構造によると、最前部座席固定用フレーム30f(所定の座席固定用フレーム)の前部は、段差用縦フレーム40を介して第1のクロスメンバ20(床下フレーム)に連結されている。また、最前部座席固定用フレーム30fの前部と段差用縦フレーム40と第1のクロスメンバ20とは、最前部座席固定用フレーム30fの前部、段差用縦フレーム40、及び第1のクロスメンバ20に跨る補強プレート50(補強部材)によって相互に連結されている。このため、高さ位置が異なる第1のクロスメンバ20と第2のクロスメンバ20とをつなぐ段差用縦フレーム40と最前部座席固定用フレーム30fとの剛性を直線的な主座席固定用フレーム30mの剛性と同程度に高めることができる。
【0040】
また、段差用縦フレーム40と補強プレート50とは互いに接合されることで、縦向き角筒状の中空閉断面を構成している。このため、段差用縦フレーム40と補強プレート50との接合体の剛性が高くなる。また、補強プレート50には、段差用縦フレーム40における溝内の空間を覆う位置に上下方向に延びるビード53bが形成されている。即ち、ビード53bの働きで段差用縦フレーム40と補強プレート50との接合体の上下方向における剛性が高くなる。
【0041】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、第1のクロスメンバ20と段差用縦フレーム40と最前部座席固定用フレーム30fの前部とに対して補強プレート50を接合した後、補強プレート50等をフロアパネル13で覆って接合する例を示した。しかし、第1のクロスメンバ20と段差用縦フレーム40と最前部座席固定用フレーム30fの前部とに対してフロアパネル13で覆って接合した後、フロアパネル13を補強プレート50で覆い、その補強プレート50を第1のクロスメンバ20と段差用縦フレーム40と最前部座席固定用フレーム30fの前部とに対して接合する構成でも可能である。また、本実施形態では、段差用縦フレーム40の前壁部45を第1のクロスメンバ20の側壁部22の外側面に接合し、左右の台形状縦フランジ部42を補強プレート50の縦板部53に接合する例を示した。しかし、段差用縦フレーム40の前壁部45と左右の台形状縦フランジ部42との上下寸法を変更して、左右の台形状縦フランジ部42を第1のクロスメンバ20の側壁部22の外側面に接合し、前壁部45を補強プレート50の縦板部53に接合することも可能である。
【符号の説明】
【0042】
10・・・・車両
12p・・・座席
12k・・・脚部
13・・・・フロアパネル
13f・・・客室床面(下部パネル部)
13u・・・前部床面(上部パネル部)
13d・・・段差部
20・・・・クロスメンバ(床下フレーム)
22f・・・フランジ部
30m・・・主座席固定用フレーム(座席固定用フレーム)
30f・・・最前部座席固定用フレーム(所定の座席固定用フレーム)
40・・・・段差用縦フレーム
50・・・・補強プレート(補強部材)