(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049319
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】顕微鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 3/135 20060101AFI20230403BHJP
A61B 3/15 20060101ALI20230403BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20230403BHJP
G02B 21/06 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
A61B3/135
A61B3/15
G02B21/36
G02B21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158989
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】森嶋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】坂東 龍
【テーマコード(参考)】
2H052
4C316
【Fターム(参考)】
2H052AA00
2H052AB01
2H052AB05
2H052AB17
2H052AC04
2H052AC09
2H052AC13
2H052AC14
2H052AC15
2H052AC16
2H052AC18
2H052AC25
2H052AC33
2H052AD05
2H052AD35
2H052AF14
2H052AF21
2H052AF25
4C316AA01
4C316AB19
4C316FA06
4C316FY01
4C316FY06
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】被検眼に対してシャインプルーフ光学系を精度よくアライメントすることが可能な顕微鏡を提供する。
【解決手段】照明系に設けられ、照明光とは異なる光束を照明光軸に沿って被検眼に投影する光束投影系と、光束投影系により光束が投影されている被検眼を、照明光軸の方向及び撮影系の撮影光軸の方向とは異なる方向から撮影して被検眼の観察像を取得する観察系と、観察系が取得した観察像に含まれるプルキンエ像に基づき、シャインプルーフ光学系に対する被検眼の相対位置を検出する相対位置検出部と、相対位置検出部による相対位置の検出結果に基づき、被検眼に対するシャインプルーフ光学系のアライメントを行うアライメント制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光軸を有し、前記照明光軸に沿って被検眼に照明光を照射する照明系と、
撮像素子と、前記照明光が照射された前記被検眼からの戻り光を前記撮像素子の撮像面に導く光学系とを有し、前記撮像素子により前記戻り光を撮像する撮影系と、
を備え、
前記照明光軸を含む物面と、前記光学系の主面と、前記撮像面と、がシャインプルーフの条件を満たしている顕微鏡において、
前記被検眼に対して、前記照明系及び前記撮影系を含むシャインプルーフ光学系を相対移動させる相対移動機構と、
前記照明系に設けられ、前記照明光とは異なる光束を前記照明光軸に沿って前記被検眼に投影する光束投影系と、
前記光束投影系が前記光束を前記被検眼に投影している間、前記照明系による前記被検眼への前記照明光の照射を停止させる照明制御部と、
前記光束投影系により前記光束が投影されている前記被検眼を、前記照明光軸の方向及び前記撮影系の撮影光軸の方向とは異なる方向から撮影して前記被検眼の観察像を取得する観察系と、
前記観察系が取得した前記観察像に含まれるプルキンエ像に基づき、前記シャインプルーフ光学系に対する前記被検眼の相対位置を検出する相対位置検出部と、
前記相対位置検出部による前記相対位置の検出結果に基づき前記相対移動機構を自動的に駆動又は前記相対移動機構を手動操作に応じて駆動して、前記被検眼に対する前記シャインプルーフ光学系のアライメントを行うアライメント制御部と、
を備える顕微鏡。
【請求項2】
互いに直交するXYZ方向のうちで前記照明光軸に平行な方向をZ方向とした場合に、前記撮影光軸が、Y方向に垂直であり且つ前記Y方向から見た場合に前記照明光軸に対して傾斜しており、
前記観察系の観察光軸が、前記Y方向から見た場合に前記照明光軸と重なり且つX方向から見た場合に前記照明光軸に対して傾斜している請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項3】
前記照明光軸に対する前記観察光軸の傾斜角度が、前記観察系により前記照明光がケラレない角度に設定されている請求項2に記載の顕微鏡。
【請求項4】
前記観察系の位置が固定されている請求項1から3のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項5】
照明光軸を有し、前記照明光軸に沿って被検眼に照明光を照射する照明系と、
前記照明系により前記照明光が照射されている前記被検眼を互いに異なる方向から撮影する複数の撮影系であって、光学系と、前記光学系により結像された前記被検眼からの戻り光を撮像する撮像素子と、を有する複数の撮影系と、
を備え、
前記撮影系ごとに、前記照明光軸を含む物面と、前記光学系の主面と、前記撮像素子の撮像面と、がシャインプルーフの条件を満たしている顕微鏡において、
前記被検眼に対して、前記照明系及び複数の前記撮影系を含むシャインプルーフ光学系を相対移動させる相対移動機構と、
前記照明系に設けられ、前記照明光とは異なる光束を前記照明光軸に沿って前記被検眼に投影する光束投影系と、
前記光束投影系が前記光束を前記被検眼に投影している間、前記照明系による前記被検眼への前記照明光の照射を停止させる照明制御部と、
前記光束投影系が前記光束を前記被検眼に投影している間、複数の前記撮影系による前記被検眼の撮影を実行させる撮影制御部と、
複数の前記撮影系により撮影された前記被検眼の観察像に含まれるプルキンエ像に基づき、前記シャインプルーフ光学系に対する前記被検眼の相対位置を検出する相対位置検出部と、
前記相対位置検出部による前記相対位置の検出結果に基づき前記相対移動機構を自動的に駆動又は前記相対移動機構を手動操作に応じて駆動して、前記被検眼に対する前記シャインプルーフ光学系のアライメントを行うアライメント制御部と、
を備える顕微鏡。
【請求項6】
複数の前記撮影系が、第1撮影系と第2撮影系とを含み、
互いに直交するXYZ方向のうちで前記照明光軸に平行な方向をZ方向とした場合に、前記第1撮影系の撮影光軸がY方向に垂直であり且つ前記Y方向から見た場合に前記照明光軸に対してX方向の一方向側に傾斜し、前記第2撮影系の撮影光軸がY方向に垂直であり且つ前記Y方向から見た場合に前記照明光軸に対してX方向の他方向側に傾斜している請求項5に記載の顕微鏡。
【請求項7】
前記Y方向から見た場合に前記照明光軸と重なり且つX方向から見た場合に前記照明光軸に対して傾斜している観察光軸を有する観察系であって、且つ前記光束投影系により前記光束が投影されている前記被検眼を撮影して前記被検眼の観察像を取得する観察系を備え、
前記相対位置検出部が、前記観察系により撮影された前記観察像に含まれるプルキンエ像に基づき、前記シャインプルーフ光学系に対する前記被検眼のXY方向の相対位置を検出し、且つ前記第1撮影系及び前記第2撮影系により撮影された前記観察像に含まれるプルキンエ像に基づき、前記シャインプルーフ光学系に対する前記被検眼のZ方向の相対位置を検出し、
前記アライメント制御部が、前記相対位置検出部によるXYZ方向の前記相対位置の検出結果に基づき、前記アライメントを行う請求項6に記載の顕微鏡。
【請求項8】
前記光束投影系が、近赤外光の前記光束を前記被検眼に投影する請求項1から7のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項9】
前記照明系が、前記物面に平行なスリット状の照明光を前記被検眼の前眼部に対して照射し、
前記アライメント制御部による前記アライメントが実行された場合に、前記相対移動機構を駆動して前記シャインプルーフ光学系を前記物面に対して垂直方向に移動させながら、前記照明系による前記被検眼への前記照明光の照射と前記撮像素子による前記戻り光の撮像と、を連続的に行う走査制御部と、
前記垂直方向の位置ごとに前記撮像素子により撮像された前記戻り光の撮像画像に基づき、前記前眼部の3次元画像を生成する3次元画像生成部と、
を備える請求項1から8のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャインプルーフ光学系を備える顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のスリットランプ顕微鏡は、シャインプルーフカメラとして機能するシャインプルーフ光学系を備える。シャインプルーフ光学系は、照明系と、レンズ系及び撮像素子を含む撮影系と、を備える。これら照明系及び撮影系は、照明系の照明光軸を含む物面(後述の撮像面にピントが合う面)を含む平面と、レンズ系の主面を含む平面と、撮像素子の撮像面を含む平面とが、同一直線上で交差するシャインプルーフの条件を満たすように構成されている。これにより、物面内の全ての位置にピントを合わせて撮影を行うことができ、例えば特許文献1に記載のスリットランプ顕微鏡では被検眼の前眼部の断面(角膜の前面から水晶体の後面)にピントを合わせて撮影を行う。
【0003】
また、特許文献1に記載のスリットランプ顕微鏡では、物面(照明光軸)に対して垂直方向にシャインプルーフ光学系を移動させながら撮影系による前眼部の断面撮影を連続的に行うことで、スリット光により前眼部の角膜全体を走査しながらその走査位置ごとの前眼部断面像を取得する。そして、スリットランプ顕微鏡は、走査位置ごとの前眼部断面像に基づき前眼部の3次元画像を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のスリットランプ顕微鏡を用いて前眼部の所望の3次元領域(全領域を含む)の3次元画像を生成するためには、スリット光の走査範囲及び前眼部の断面の撮影範囲をそれぞれ3次元領域に合わせる必要がある。そして、そのためには、スリット光の走査開始前にシャインプルーフ光学系を被検眼に対して精度良くアライメントする必要がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、被検眼に対してシャインプルーフ光学系を精度よくアライメントすることが可能な顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を達成するための顕微鏡は、照明光軸を有し、照明光軸に沿って被検眼に照明光を照射する照明系と、撮像素子と、照明光が照射された被検眼からの戻り光を撮像素子の撮像面に導く光学系とを有し、撮像素子により戻り光を撮像する撮影系と、を備え、照明光軸を含む物面と、光学系の主面と、撮像面と、がシャインプルーフの条件を満たしている顕微鏡において、被検眼に対して、照明系及び撮影系を含むシャインプルーフ光学系を相対移動させる相対移動機構と、照明系に設けられ、照明光とは異なる光束を照明光軸に沿って被検眼に投影する光束投影系と、光束投影系が光束を被検眼に投影している間、照明系による被検眼への照明光の照射を停止させる照明制御部と、光束投影系により光束が投影されている被検眼を、照明光軸の方向及び撮影系の撮影光軸の方向とは異なる方向から撮影して被検眼の観察像を取得する観察系と、観察系が取得した観察像に含まれるプルキンエ像に基づき、シャインプルーフ光学系に対する被検眼の相対位置を検出する相対位置検出部と、相対位置検出部による相対位置の検出結果に基づき相対移動機構を自動的に駆動又は相対移動機構を手動操作に応じて駆動して、被検眼に対するシャインプルーフ光学系のアライメントを行うアライメント制御部と、を備える。
【0008】
この顕微鏡によれば、被検眼に対するシャインプルーフ光学系のアライメントを行うことができる。
【0009】
本発明の他の態様に係る顕微鏡において、互いに直交するXYZ方向のうちで照明光軸に平行な方向をZ方向とした場合に、撮影光軸が、Y方向に垂直であり且つY方向から見た場合に照明光軸に対して傾斜しており、観察系の観察光軸が、Y方向から見た場合に照明光軸と重なり且つX方向から見た場合に照明光軸に対して傾斜している。
【0010】
本発明の他の態様に係る顕微鏡において、照明光軸に対する観察光軸の傾斜角度が、観察系により照明光がケラレない角度に設定されている。これにより、照明系から被検眼に照射される照明光の光量低下が防止される。
【0011】
本発明の他の態様に係る顕微鏡において、観察系の位置が固定されている。
【0012】
本発明の目的を達成するための顕微鏡は、照明光軸を有し、照明光軸に沿って被検眼に照明光を照射する照明系と、照明系により照明光が照射されている被検眼を互いに異なる方向から撮影する複数の撮影系であって、光学系と、光学系により結像された被検眼からの戻り光を撮像する撮像素子と、を有する複数の撮影系と、を備え、撮影系ごとに、照明光軸を含む物面と、光学系の主面と、撮像素子の撮像面と、がシャインプルーフの条件を満たしている顕微鏡において、被検眼に対して、照明系及び複数の撮影系を含むシャインプルーフ光学系を相対移動させる相対移動機構と、照明系に設けられ、照明光とは異なる光束を照明光軸に沿って被検眼に投影する光束投影系と、光束投影系が光束を被検眼に投影している間、照明系による被検眼への照明光の照射を停止させる照明制御部と、光束投影系が光束を被検眼に投影している間、複数の撮影系による被検眼の撮影を実行させる撮影制御部と、複数の撮影系により撮影された被検眼の観察像に含まれるプルキンエ像に基づき、シャインプルーフ光学系に対する被検眼の相対位置を検出する相対位置検出部と、相対位置検出部による相対位置の検出結果に基づき相対移動機構を自動的に駆動又は相対移動機構を手動操作に応じて駆動して、被検眼に対するシャインプルーフ光学系のアライメントを行うアライメント制御部と、を備える。
【0013】
この顕微鏡によれば、アライメント検出用のカメラを別途に設けることなく、被検眼に対するシャインプルーフ光学系のアライメントを行うことができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る顕微鏡において、複数の撮影系が、第1撮影系と第2撮影系とを含み、互いに直交するXYZ方向のうちで照明光軸に平行な方向をZ方向とした場合に、第1撮影系の撮影光軸がY方向に垂直であり且つY方向から見た場合に照明光軸に対してX方向の一方向側に傾斜し、第2撮影系の撮影光軸がY方向に垂直であり且つY方向から見た場合に照明光軸に対してX方向の他方向側に傾斜している。
【0015】
本発明の他の態様に係る顕微鏡において、Y方向から見た場合に照明光軸と重なり且つX方向から見た場合に照明光軸に対して傾斜している観察光軸を有する観察系であって、且つ光束投影系により光束が投影されている被検眼を撮影して被検眼の観察像を取得する観察系を備え、相対位置検出部が、観察系により撮影された観察像に含まれるプルキンエ像に基づき、シャインプルーフ光学系に対する被検眼のXY方向の相対位置を検出し、且つ第1撮影系及び第2撮影系により撮影された観察像に含まれるプルキンエ像に基づき、シャインプルーフ光学系に対する被検眼のZ方向の相対位置を検出し、アライメント制御部が、相対位置検出部によるXYZ方向の相対位置の検出結果に基づき、アライメントを行う。これにより、被検眼に対するシャインプルーフ光学系12のアライメントをより高精度に行うことができる。
【0016】
本発明の他の態様に係る顕微鏡において、光束投影系が、近赤外光の光束を被検眼に投影する。これにより、被検者が光束を眩しく感じることが防止される。
【0017】
本発明の他の態様に係る顕微鏡において、照明系が、物面に平行なスリット状の照明光を被検眼の前眼部に対して照射し、アライメント制御部によるアライメントが実行された場合に、相対移動機構を駆動してシャインプルーフ光学系を物面に対して垂直方向に移動させながら、照明系による被検眼への照明光の照射と撮像素子による戻り光の撮像と、を連続的に行う走査制御部と、垂直方向の位置ごとに撮像素子により撮像された戻り光の撮像画像に基づき、前眼部の3次元画像を生成する3次元画像生成部と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、被検眼に対してシャインプルーフ光学系を精度よくアライメントすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態のスリットランプ顕微鏡をX方向側から見た側面図である。
【
図2】第1実施形態のスリットランプ顕微鏡をY方向側から見た上面図である。
【
図3】照明系及び撮影系のそれぞれの構成及び配置の条件を説明するための説明図である。
【
図4】
図2中のXYスポット投影系の拡大図である。
【
図5】アライメント検出時における観察系による前眼部の撮影を説明するための説明図である。
【
図6】観察系により撮影された前眼部の観察像の一例を示した説明図である。
【
図7】第1実施形態のスリットランプ顕微鏡の制御装置の機能ブロック図である。
【
図8】第1実施形態のスリットランプ顕微鏡による前眼部の3次元画像の生成処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】第2実施形態のアライメント検出時における撮影系による前眼部の撮影を説明するための説明図である。
【
図10】撮影系により撮影された前眼部の一対の観察像の一例を示した説明図である。
【
図11】第2実施形態のアライメント検出部が行うシャインプルーフ光学系に対する被検眼のXYZ方向のアライメント検出を説明するための説明図である。
【
図12】第2実施形態のスリットランプ顕微鏡による前眼部の3次元画像の生成処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】第3実施形態のスリットランプ顕微鏡による被検眼の前眼部の3次元画像の生成処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のスリットランプ顕微鏡10をX方向側から見た側面図である。
図2は、第1実施形態のスリットランプ顕微鏡10をY方向側から見た上面図である。なお、図中の互いに直交するXYZ方向のうち、Z方向は被検眼Eに近づく前方向と被検者から遠ざかる後方向とに平行な前後方向(作動距離方向ともいう)であり、X方向は被検者を基準した左右方向であり、Y方向はXZ方向の双方に垂直な方向(ここでは上下方向)である。
【0021】
図1及び
図2に示すように、スリットランプ顕微鏡10は、本発明の顕微鏡に相当するものであり、被検眼Eの前眼部Eaの3次元画像の生成を行う。このスリットランプ顕微鏡10は、大別してシャインプルーフ光学系12と、移動機構14と、観察系50と、XYスポット投影系70と、制御装置100と、を備える。
【0022】
[シャインプルーフ光学系]
シャインプルーフ光学系12は、後述の移動機構14によりX方向に移動自在に保持されており、被検眼Eの前眼部EaのYZ面に沿った断面撮影を行う。このシャインプルーフ光学系12は、照明系20と、撮影系30R,30Lとにより構成される。なお、
図1では図面の煩雑化を防止するために、撮影系30R,30Lの図示は省略している。
【0023】
<照明系>
照明系20は、Z方向に平行な照明光軸O1を有し、この照明光軸O1に沿って被検眼Eの前眼部Eaに対してスリット状の照明光L(スリット光LS)を照射する。照明系20は、後述のXYスポット投影系70が設けられている点を除けば従来のスリットランプ顕微鏡の照明系と同様の構成を備えていてよく、例えば、照明光軸O1に沿って配置された照明光源22、スリット形成部24、及び対物レンズ26などを含む。
【0024】
照明光源22は、例えばLED(light emitting diode)が用いられ、照明光Lを出射する。照明光Lとしては可視光が用いられるが、赤外光(近赤外光)を用いてもよい。照明光源22から出射された照明光Lは、不図示のレンズ等を透過した後、スリット形成部24に入射する。
【0025】
なお、照明光源22は複数の光源で構成されていてもよい。例えば照明光源22が、連続光を出力する光源と、フラッシュ光を出力する照明光源とを含んでいてよい。また、照明光源22が、前眼部用照明光源と後眼部用照明光源とを含んでいてもよい。さらに、照明光源22が、照明光Lの出力波長が互いに異なる複数の光源を含んでいてもよい。
【0026】
スリット形成部24は、例えばY方向に平行な一対のスリット刃を有し、これらスリット刃のX方向の間隔(スリット幅)を変更することで照明光Lが通過する領域の幅を変更する。これにより、スリット形成部24を通過した照明光Lは、合焦時には前眼部位置でX方向を幅方向とし且つY方向を長さ方向とするスリット光LSになる。
【0027】
スリット光LSのY方向の長さは、前眼部Eaの表面において角膜径以上に設定されている。なお、スリット形成部24がスリット光LSのY方向の長さを変更可能に構成されてもよい。
【0028】
対物レンズ26は、スリット形成部24を通過した照明光Lを前眼部Eaに照射する。これにより、前眼部Eaにスリット光LSが照射される。
【0029】
なお、照明系20が、スリット光LSのフォーカス位置を変更するための合焦光学系(図示は省略)を更に含んでいてもよい。
【0030】
<撮影系>
撮影系30R,30Lは、スリット光LSが照射されている前眼部Eaを互いに異なる2方向から撮影する。撮影系30R,30Lは、従来のスリットランプ顕微鏡の撮影系と同様の構成を備えていてもよい。例えば撮影系30R(本発明の第1撮影系に相当)は、撮影光軸O2Rに沿って配置された光学系32R及び撮像素子34Rを備える。また、撮影系30L(本発明の第2撮影系に相当)は、撮影光軸O2Lに沿って配置された光学系32L及び撮像素子34Lを備える。
【0031】
撮影光軸O2Rは、ZX面に平行で、且つY方向側から見た場合にZ方向に対してX方向の一方向側に角度θRで傾斜している。また、撮影光軸O2Lは、ZX面に平行で、且つY方向側から見た場合にZ方向に対してX方向の他方向側に角度θLで傾斜している。角度θRと角度θLとは、互いに等しくてもよいし異なっていてもよい。そして、照明光軸O1と撮影光軸O2Rと撮影光軸O2Lとは一点で交差する。
【0032】
光学系32Rは、図示は省略するが、例えば被検眼Eに近い側から順に、対物レンズ、変倍光学系、及び結像レンズ等を含む。前眼部Eaからの戻り光LAは、光学系32Rの対物レンズ及び変倍光学系を通過し、光学系32Rの結像レンズにより撮像素子34Rの撮像面36Rに結像される。なお、光学系32Rが合焦光学系(図示は省略)を更に含んでいてもよい。
【0033】
前眼部Eaからの戻り光LAには、前眼部Eaに照射されているスリット光LSの戻り光が含まれ、さらに他の光を含んでいてよい。戻り光LAの例としては、反射光、散乱光、及び蛍光等が挙げられる。また、他の光の例としては、スリットランプ顕微鏡10の設置環境からの光(室内光、太陽光など)がある。また、前眼部Eaの全体を照明するための前眼部照明系(図示は省略)が照明系20とは別に設けられている場合には、この前眼部照明系からの前眼部照明光の戻り光(反射光)が「他の光」に含まれていてもよい。
【0034】
撮像素子34Rは、2次元の撮像面36Rを有するCMOS(complementary metal oxide semiconductor)型又はCCD(Charge Coupled Device)型のエリアセンサである。撮像素子34Rは、光学系32Rにより撮像面36Rに結像された戻り光LAを撮像して、この戻り光LAの撮像画像である前眼部断面像DRを制御装置100へ出力する。この前眼部断面像DRは、前眼部Eaのスリット光照射位置におけるYZ断面の画像である。
【0035】
光学系32Lは、既述の光学系32Rと同じ構成であり、図示は省略するが対物レンズ、変倍光学系、及び結像レンズ等を含み、さらに合焦光学系を含んでもよい。これにより、スリット光LSが照射されている前眼部Eaからの戻り光LAが、光学系32Lの対物レンズ及び変倍光学系を通過し、光学系32Lの結像レンズにより撮像素子34Lの撮像面36Lに結像される。
【0036】
撮像素子34Lは、2次元の撮像面36Lを有するCMOS型又はCCD型のエリアセンサであり、光学系32Lにより撮像面36Lに結像された戻り光LAを撮像して、この戻り光LAの撮像画像である前眼部断面像DLを制御装置100へ出力する。この前眼部断面像DLは、前眼部Eaのスリット光照射位置におけるYZ断面の画像である。
【0037】
<シャインプルーフカメラ>
図3は、照明系20及び撮影系30R,30Lのそれぞれの構成及び配置の条件を説明するための説明図である。
図3に示すように、照明系20及び撮影系30Lはシャインプルーフカメラとして機能し、且つ照明系20及び撮影系30Rもシャインプルーフカメラとして機能する。
【0038】
図3の符号3Aに示すように、照明光軸O1を含み且つYZ面に平行な物面SP(撮像面36R,36Lにピントが合う面)と、光学系32Lの主面SLと、撮像面36Lと、がシャインプルーフの条件(原理)を満たすように、照明系20及び撮影系30Lが構成されている。より具体的には、物面SPを含む平面H1と、主面SLを含む平面H2Lと、撮像面36Lを含む平面H3Lと、が同一の直線上にて交差する。これにより、撮影系30Lが物面SP内の全ての位置(例えば前眼部Eaの角膜前面から水晶体後面の範囲)にピントを合わせて撮影、すなわち前眼部Eaの断面撮影を行うことで前眼部断面像DLが得られる。
【0039】
また同様に、
図3の符号3Bに示すように、物面SPと、光学系32Rの主面SRと、撮像面36Rと、がシャインプルーフの条件を満たすように、照明系20及び撮影系30Rとが構成されている。より具体的には、平面H1と、主面SRを含む平面H2Rと、撮像面36Rを含む平面H3Rと、が同一の直線上にて交差する。これにより、撮影系30Rも物面SP内の全ての位置(前眼部Eaの角膜前面から水晶体後面の範囲)にピントを合わせて前眼部Eaの断面撮影を行うことで前眼部断面像DRが得られる。
【0040】
このようなシャインプルーフの条件を満たす照明系20及び撮影系30R,30Lの構成は、照明系20に含まれる要素の構成及び配置、撮影系30R,30Lに含まれる要素の構成及び配置、及び照明系20と撮影系30R,30Lとの相対位置によって実現される。照明系20と撮影系30R,30Lとの相対位置を示すパラメータは、例えば、既述の角度θR,θLを含む。角度θR,θLは、例えば17.5度、30度、又は45度に設定される。なお、角度θR,θLが可変であってもよい。
【0041】
[移動機構]
移動機構14は、本発明の相対移動機構に相当するものであり、図示は省略するが、シャインプルーフ光学系12が搭載されたステージと、このステージをXYZ方向に移動させるモータ等のアクチュエータと、により構成されている。なお、移動機構14は、被検眼Eに対してシャインプルーフ光学系12を相対移動可能であれば、その構成は特に限定されるものではなく、例えば不図示の顔支持部を移動させるものであってもよい。
【0042】
移動機構14は、被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のアライメント時には、後述の制御装置100の制御の下、シャインプルーフ光学系12のXYZ方向の位置調整を行うことで、被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のアライメント(オートアライメント)を実行する。
【0043】
また、移動機構14は、前眼部Eaの3次元画像生成時には、後述の制御装置100の制御の下、照明系20による前眼部Eaへのスリット光LSの照射と撮影系30R,30Lによる前眼部断面像DR,DLの撮影とに合わせて、シャインプルーフ光学系12を照明光軸O1に対して垂直方向に移動させる。より具体的には移動機構14は、シャインプルーフ光学系12を物面SPに垂直な方向であるX方向に移動させる。これにより、X方向を幅方向とし且つY方向を長さ方向とするYZ面に平行なスリット光LSにより前眼部EaをX方向に走査(スキャン)することができる。この際に本実施形態では、移動機構14によるシャインプルーフ光学系12のX方向の移動範囲、すなわち前眼部Eaに対するスリット光LSのX方向の走査範囲が少なくとも前眼部Eaの角膜を含む範囲に設定されている。このため、角膜全体をスリット光LSで走査することができる。
【0044】
このように移動機構14により照明系20からのスリット光LSを前眼部Eaに対してX方向に走査しながら撮影系30R,30Lによる戻り光LAの撮像(動画撮像)及び前眼部断面像DR,DLの連続出力と、を実行することで、スリット光LSのX方向の走査位置ごとに前眼部Eaの前眼部断面像DR,DLが得られる(上記特許文献1参照)。なお、アライメントに用いられる移動機構14と、シャインプルーフ光学系12をX方向に移動させる移動機構14とが別体であってもよい。
【0045】
[観察系]
図1に戻って、観察系50は、シャインプルーフ光学系12とは独立して設けられており、スリットランプ顕微鏡10内で位置が固定、すなわち被検眼Eとの相対位置が固定されている。
【0046】
観察系50は、観察光軸O3を有し、被検眼Eに近い側から順に観察光軸O3に沿って配置された光学系52及び撮像素子54を備える。
【0047】
観察光軸O3は、Y方向から見た場合に照明光軸O1と重なり且つX方向から見た場合に照明光軸O1に対してY方向下方側(Y方向上方側でも可)に傾斜角度θだけ傾斜している。この傾斜角度θは、照明系20から前眼部Eaに照射されるスリット光LSが観察系50にケラレないような適切な角度、例えば約8度に設定されている。これにより、照明系20から前眼部Eaに照射されるスリット光LSの光量低下が防止される。
【0048】
光学系52は、図示は省略するが結像レンズ等を含み、被検眼Eからの戻り光LBを撮像素子54に結像させる。なお、光学系52が合焦光学系を含んでいてもよい。
【0049】
被検眼Eからの戻り光LBには、既述の前眼部照明系(図示は省略)から前眼部Eaに照射されている前眼部照明光の戻り光(前眼部反射光)、及び後述のXYスポット投影系70によりXYスポット光LPが投影されている被検眼Eの前眼部Eaからの戻り光などが含まれる。
【0050】
撮像素子54は、CMOS型又はCCD型のエリアセンサであり、光学系52により結像された戻り光LBを撮像して、被検眼Eの観察像D(前眼部Eaを撮影した前眼部像)を制御装置100へ出力する。
【0051】
なお、図示は省略するが、戻り光LBを接眼レンズに導く接眼系を観察系50に設けることで、検者が接眼レンズを通して観察像Dを観察可能にしてもよい。
【0052】
[XYスポット投影系]
図4は、
図2中のXYスポット投影系70の拡大図である。
図4と、既述の
図1及び
図2とに示すように、XYスポット投影系70は、本発明の光束投影系に相当するものであり、シャインプルーフ光学系12に対する被検眼Eの相対位置を検出するアライメント検出、より具体的にはXY方向のアライメント検出に用いられる。このXYスポット投影系70は、照明光軸O1の一部と共通の投影光軸O1Aを有している、すなわち照明系20と同軸である。投影光軸O1Aは、照明光軸O1の途中から分岐しており、この分岐位置から被検眼Eまでが照明光軸O1と共通している。
【0053】
XYスポット投影系70は、投影光軸O1Aに沿って配置されたスポット光源72、光学系74、及びミラー76を備える。
【0054】
スポット光源72は、例えば近赤外光を照射可能なLEDなどが用いられる。このスポット光源72は、アライメント検出時において、後述の制御装置100の制御の下、本発明の光束として近赤外波長域のスポット光であるXYスポット光LP(近赤外光)を出射する。
【0055】
光学系74は、スポット光源72から入射したXYスポット光LPを平行光束にした後、このXYスポット光LPをミラー76に向けて出射する。なお、図示は省略するが、スポット光源72と光学系74との間に、拡散板及び絞りなどが配置されていてもよい。
【0056】
ミラー76は、例えばダイクロイックミラーなどが用いられ、照明光軸O1からの投影光軸O1Aの分岐位置に配置されている。ミラー76は、スポット光源72から光学系74を介して入射した近赤外光のXYスポット光LPを被検眼Eに向けて反射し、対物レンズ26から入射した可視光の照明光Lを透過して被検眼Eに向けて出射する。これにより、XYスポット投影系70から前眼部Eaに対してXYスポット光LPが投影される。なお、XYスポット光LPの光束径φについては後述する。
【0057】
図5は、アライメント検出時における観察系50による前眼部Eaの撮影(戻り光LBの撮像)を説明するための説明図である。
図6は、観察系50により撮影された前眼部Eaの観察像D(前眼部像)の一例を示した説明図である。
【0058】
図5に示すように、XYスポット投影系70から前眼部Eaに対してXYスポット光LPを投影すると、このXYスポット光LPが前眼部Eaの角膜表面及び水晶体等で反射することによりプルキンエ像PIが生じる。このプルキンエ像PIは、被検眼Eの角膜曲率半径をRとした場合に、被検眼Eの角膜頂点から角膜曲率半径Rの1/2の位置(R/2)で観察される虚像である。なお、プルキンエ像PIは、角膜の表裏面及び水晶体の表裏面の各々で反射して生じる像の総称であり、厳密には角膜表面側からプルキンエ第1像、プルキンエ第2像、プルキンエ第3像、プルキンエ第4像という。第1実施形態において使用するプルキンエ像PIは角膜の表面反射によるプルキンエ第1像である。
【0059】
観察系50は、アライメント検出時には、XYスポット投影系70によりXYスポット光LPが投影されている前眼部Eaからの戻り光LBを撮像、すなわち前眼部Eaの撮影を行う。これにより、
図6に示すようなプルキンエ像PIを含む前眼部Eaの観察像Dが観察系50により撮影され、この観察像Dが観察系50から制御装置100に対して出力される。
【0060】
プルキンエ像PIを含む観察像Dは、観察系50により被検眼Eの略正面から撮影される正面画像であるので、被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のXY方向のアライメントが大きくずれている場合でもプルキンエ像PIのピントはボケない。このため、観察系50で前眼部Eaの撮影を行うことで、プルキンエ像PIのXY方向の検出範囲を広げることができる。この観察像D内に含まれるプルキンエ像PIの位置に基づき、後述の制御装置100は、シャインプルーフ光学系12に対する被検眼EのXY方向の相対位置の検出、すなわちXY方向のアライメント検出を行う(特開2015-85081号公報参照)。
【0061】
被検眼Eに投影されるXYスポット光LPの光束径φ(
図4参照)は、制御装置100が観察像D内からプルキンエ像PIを検出可能な大きさ(例えば14mm)に調整されている。なお、プルキンエ像PIの光束径φが大きい方が、被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のアライメントがXY方向に大きくずれている場合でも制御装置100がアライメント検出を行うことができる。
【0062】
被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のZ方向のアライメントがずれている場合には、観察像D内に含まれるプルキンエ像PIのピントがボケる(特開2015-85081号公報参照)。このため、制御装置100は、観察像D内に含まれるプルキンエ像PIの合焦度合いに基づき、被検眼Eに対してシャインプルーフ光学系12がZ方向に適正にアライメントされているか否かを判定可能である。なお、シャインプルーフ光学系12に対する被検眼EのZ方向の相対位置を検出する方法、すなわちZ方向のアライメント検出方法は特に限定されず、公知の方法を用いてもよく、さらに後述の第2実施形態で説明する方法を用いてもよい。
【0063】
[制御装置]
図7は、第1実施形態のスリットランプ顕微鏡10の制御装置100の機能ブロック図である。
図7に示すように制御装置100は、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、制御装置100の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0064】
制御装置100には、照明系20(照明光源22)、撮影系30R,30L(撮像素子34R,34L)、移動機構14、観察系50(撮像素子54)、及びXYスポット投影系70(スポット光源72)の他に、操作部102及び表示部104が接続されている。
【0065】
操作部102は、スリットランプ顕微鏡10の各種操作、例えばシャインプルーフ光学系12の位置姿勢の調整操作(手動アライメント操作)、前眼部Eaの3次元画像の生成開始操作、及びスリットランプ顕微鏡10の観察モードの切替操作などに用いられる。この操作部102には、スリットランプ顕微鏡10に設けられたハードウェアキー(スイッチ、ボタン)、操作レバー、マウス、キーボード、及び操作パネル(表示部104の表示面を含む)等の各種操作デバイスが含まれる。
【0066】
表示部104は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)のような表示デバイスが用いられる。表示部104は、撮影系30R,30Lにより撮影された前眼部断面像DR,DL、観察系50により撮影された前眼部Eaの観察像D、及び後述の3次元画像生成部122により生成された前眼部Eaの3次元画像等を表示する。
【0067】
制御装置100は、不図示の記憶部内の制御プログラムを読み出して実行することにより、照明制御部110、撮影制御部112、アライメント検出部114、アライメント制御部116、走査制御部118、画像取得部120、及び3次元画像生成部122として機能する。
【0068】
照明制御部110は、照明光源22からの照明光Lの出射、すなわち照明系20による前眼部Eaへのスリット光LSの照射を制御する。この照明制御部110は、シャインプルーフ光学系12に対する被検眼Eのアライメント検出時には照明光源22からの照明光Lの出射を停止させ、アライメント完了後からスリット光LSの走査が完了するまでの間は照明光源22から照明光Lを出射させる。
【0069】
撮影制御部112は、撮影系30R,30Lによる前眼部断面像DR,DLの撮影(戻り光LAの撮像)と、観察系50による観察像Dの撮影(戻り光LBの撮像)とを制御する。この撮影制御部112は、アライメント検出時には観察系50による観察像Dの撮影を実行させると共に、撮影系30R,30Lの作動を停止させる。また、撮影制御部112は、アライメント完了後からスリット光LSの走査が完了するまでの間は、少なくとも撮影系30R,30Lによる前眼部断面像DR,DLの撮影(動画撮影)を連続的に実行させる。
【0070】
アライメント検出部114は、本発明の相対位置検出部に相当するものであり、シャインプルーフ光学系12に対する被検眼EのXYZ方向のアライメント検出を制御する。アライメント検出部114は、例えば操作部102に対する前眼部Eaの3次元画像の生成開始操作に応じて、照明制御部110を制御して照明系20からの前眼部Eaに対するスリット光LSの照射を停止させる。また、アライメント検出部114は、XYスポット投影系70を制御して被検眼Eに対するXYスポット光LPの投影を開始させると共に、撮影制御部112を制御して観察系50による前眼部Eaの撮影を実行させる。これにより、プルキンエ像PIを含む前眼部Eaの観察像D(
図6参照)が観察系50により撮影され、この観察像Dが観察系50からアライメント検出部114へ出力される。
【0071】
次いで、アライメント検出部114は、観察系50から入力された観察像Dから公知の方法でプルキンエ像PIを検出し、この観察像D内でのプルキンエ像PIの位置(XY位置)に基づき、シャインプルーフ光学系12に対する被検眼EのXY方向の相対位置を検出するXY方向のアライメント検出を行う。例えば、観察像D内でのプルキンエ像PIの検出座標、すなわち撮像素子54の撮像面内でのプルキンエ像PIの検出座標を(x、y)とし、この撮像面内の基準座標の位置座標を(x0、y0)とし、観察系50の倍率をβとした場合に、被検眼E上でのプルキンエ像PIの位置座標は下記の[数1]式で表される。
【0072】
【0073】
そして、アライメント検出部114は、XY方向のアライメント検出結果をアライメント制御部116へ出力する。
【0074】
また、アライメント検出部114は、公知の方法を用いてシャインプルーフ光学系12に対する被検眼EのZ方向のアライメントを検出し、その検出結果をアライメント制御部116へ出力する。
【0075】
アライメント制御部116は、アライメント検出部114から入力されるXYZ方向のアライメント検出結果に基づき、移動機構14を駆動してシャインプルーフ光学系12のXYZ方向位置を調整することで、被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のXYZ方向のアライメントを行う。これにより、シャインプルーフ光学系12が、前眼部Eaに対するスリット光LSの走査開始位置に位置調整される。
【0076】
走査制御部118は、前眼部Eaに対するスリット光LSのX方向の走査を制御する。走査制御部118は、上述のアライメントが完了すると、XYスポット投影系70による被検眼EへのXYスポット光LPの投影を停止させると共に、照明制御部110及び撮影制御部112を制御して、照明系20から前眼部Eaへのスリット光LSの照射と、撮影系30R,30Lによる前眼部Eaの断面撮影と、を開始させる。
【0077】
また、走査制御部118は、移動機構14を駆動してシャインプルーフ光学系12をX方向に移動させる。これにより、スリット光LSにより前眼部EaがX方向に走査されると共に、このスリット光LSのX方向の走査位置ごとに撮影系30R,30Lにより前眼部断面像DR,DLが撮影される。
【0078】
画像取得部120は、撮影系30R,30Lにより前眼部断面像DR,DLの撮影が行われるごとに、撮影系30R,30Lから前眼部断面像DR,DLを取得して3次元画像生成部122へ出力する。
【0079】
3次元画像生成部122は、画像取得部120から入力される上述の走査位置ごとの前眼部断面像DR,DLに基づき、前眼部Eaの3次元画像を生成する。なお、この3次元画像の生成方法については、公知技術(上記特許文献1参照)であるので具体的な説明は省略する。第1実施形態では、撮影系30R,30Lにより互いに異なる2方向から前眼部Eaを撮影するので、例えば前眼部断面像DR,DLのいずれか一方にアーティファクトが含まれている場合であっても他方にアーティファクトが含まれていなければ、他方を用いて3次元画像の生成を行うことができる。これにより、高品質の3次元画像の生成が可能となる。
【0080】
[第1実施形態の作用]
図8は、上記構成の第1実施形態のスリットランプ顕微鏡10による前眼部Eaの3次元画像の生成処理の流れを示すフローチャートである。
【0081】
図8に示すように、被検者の顔が不図示の顔支持部にセットされた後、検者が操作部102に対して3次元画像の生成開始操作を行うと(ステップS1)、アライメント検出部114は、照明制御部110を制御して照明光源22から前眼部Eaへのスリット光LSの照射を停止させると共に、XYスポット投影系70を制御して前眼部Eaに対するXYスポット光LPの投影を開始させる(ステップS2)。被検眼Eに対する可視光のスリット光LSの照射を停止すると共に、近赤外光のXYスポット光LPを被検眼Eに投影することで、被検者がスリット光LS及びXYスポット光LPを眩しく感じることが防止される。
【0082】
また、アライメント検出部114は、撮影制御部112を制御して観察系50の撮像素子54による戻り光LBの撮像、すなわちXYスポット光LPの投影によりプルキンエ像PIが生じている前眼部Eaの撮影を実行させる(ステップS3)。これにより、観察系50からアライメント検出部114に対して、プルキンエ像PIを含む前眼部Eaの観察像Dが出力される。
【0083】
次いで、アライメント検出部114は、観察系50から入力された観察像Dに含まれるプルキンエ像PIの位置に基づき、シャインプルーフ光学系12に対する被検眼EのXY方向のアライメント検出を行い、その検出結果をアライメント制御部116へ出力する(ステップS4)。この際に第1実施形態では、観察系50により前眼部Eaの撮影を行っているので、被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のアライメントがXY方向に大きくずれている場合でも、観察像D内のプルキンエ像PIのピントはボケないのでXY方向のアライメント検出が可能になる。
【0084】
また、アライメント検出部114は、公知の方法でシャインプルーフ光学系12に対する被検眼EのZ方向のアライメント検出を行い、その検出結果をアライメント制御部116へ出力する。
【0085】
そして、アライメント検出部114は、アライメント検出部114から入力されるXYZ方向のアライメント検出結果に基づき、移動機構14を駆動して被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のXYZ方向のアライメントを行う(ステップS5)。これにより、シャインプルーフ光学系12が、前眼部Eaに対するスリット光LSの走査開始位置に位置調整される。
【0086】
シャインプルーフ光学系12のアライメントが完了すると、走査制御部118が、XYスポット投影系70による前眼部EaへのXYスポット光LPの投影を停止させると共に、照明制御部110を制御して照明系20から前眼部Eaへのスリット光LSの照射を開始させる(ステップS6)。また、走査制御部118は、撮影制御部112を制御して、撮影系30R,30Lの撮像素子34R,34Lによる戻り光LAの撮像、すなわち前眼部Eaの断面撮影を実行させる(ステップS7)。これにより、撮像素子34R,34Lから画像取得部120に対して前眼部断面像DR,DLが出力される。
【0087】
そして、走査制御部118は、移動機構14を駆動してシャインプルーフ光学系12をX方向に移動させることで、スリット光LSによる前眼部Eaの走査を開始する(ステップS8)。これにより、スリット光LSが走査終了位置に達するまで、スリット光LSのX方向の走査位置ごとに、撮影系30R,30Lにより前眼部断面像DR,DLが撮影され、且つ画像取得部120が撮影系30R,30Lから前眼部断面像DR,DLを取得して3次元画像生成部122へ出力する(ステップS9、ステップS10でNO)。
【0088】
スリット光LSが走査終了位置に達すると、スリット光LSによる前眼部Eaの走査が終了する(ステップS10でYES)。上述のアライメントを実行してからスリット光LSによる前眼部Eaの走査を開始しているので、前眼部Eaの所望範囲(例えば角膜全体)をスリット光LSで走査することができ、且つ撮影系30R、30Lによる前眼部Eaの断面の撮影範囲を所望範囲(例えば角膜前面から水晶体後面)に合わせることができる。
【0089】
スリット光LSによる前眼部Eaの走査が終了すると、3次元画像生成部122が、画像取得部120から入力される走査位置ごとの前眼部断面像DR,DLに基づき、前眼部Eaの3次元画像を生成する(ステップS11)。前眼部Eaの3次元画像は、表示部104により表示、或いは制御装置100に不図示の通信ネットワークを介して接続された各種表示装置により表示される。また、操作部102により3次元画像に対して断面を指定する指定操作がなされた場合に、制御装置100が3次元画像の断面を示す2次元断面像を生成し、この2次元断面像を表示部104等に表示させてもよい(上記特許文献1参照)。
【0090】
以上のように第1実施形態では、照明系20に設けられたXYスポット投影系70から前眼部Eaに対してXYスポット光LPを投影すると共に、この前眼部Eaを観察系50で撮影することで、前眼部Eaの観察像Dに基づきシャインプルーフ光学系12に対する被検眼Eのアライメント検出が可能になる。これにより、被検眼Eに対してシャインプルーフ光学系12を精度よくアライメントすることができる。
【0091】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態のスリットランプ顕微鏡10について説明を行う。上記第1実施形態のスリットランプ顕微鏡10では、XYスポット投影系70によりXYスポット光LPが投影されている前眼部Eaを観察系50で撮影し、この観察系50が撮影した観察像Dに基づきシャインプルーフ光学系12に対する被検眼Eのアライメント検出を行う。これに対して第2実施形態のスリットランプ顕微鏡10では、XYスポット光LPが投影されている前眼部Eaを撮影系30R,30Lにより撮影し、これら撮影系30R,30Lが撮影した前眼部Eaの一対の観察像DR1,DL1(
図10参照)に基づき、上述のアライメント検出を実行する。
【0092】
なお、第2実施形態のスリットランプ顕微鏡10は、上記第1実施形態のスリットランプ顕微鏡10と基本的に同じ構成であるので、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0093】
図9は、第2実施形態のアライメント検出時における撮影系30R,30Lによる前眼部Eaの撮影(戻り光LAの撮像)を説明するための説明図である。
図10は、撮影系30R,30Lにより撮影された前眼部Eaの一対の観察像DR1,DL1(前眼部像)の一例を示した説明図である。
【0094】
図9に示すように、第2実施形態のアライメント検出部114は、XYスポット投影系70により前眼部EaにXYスポット光LPが投影されると、撮影制御部112を制御して、撮影系30R,30Lの撮像素子34R,34Lによる戻り光LAの撮像、すなわち撮影系30R,30Lによる前眼部Eaの撮影を実行させる。これにより、プルキンエ像PIを含む前眼部Eaが、撮影系30R,30Lにより互いに異なる方向から撮影、すなわちステレオ撮影される。その結果、
図10に示すように、撮影系30Rにより撮影された観察像DR1と撮影系30Lにより撮影された観察像DL1とを含む一対の観察像DR1,DL1が得られ、これら一対の観察像DR1,DL1が撮影系30R,30Lからアライメント検出部114へ出力される。
【0095】
一対の観察像DR1,DL1は、シャインプルーフ光学系12の撮影系30R,30Lにより撮影される撮影画像である。そして、撮影系30R,30Lは物面SP内の全ての位置にピントを合わせて撮影が可能である。このため、被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のZ方向のアライメントが大きくずれている場合でもプルキンエ像PIのピントはボケない。このため、第2実施形態では、プルキンエ像PIのZ方向の検出範囲を広げることができる。なお、第2実施形態では、被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のXY方向のアライメントがずれている場合には、観察像D内に含まれるプルキンエ像PIのピントがボケる。
【0096】
図11は、第2実施形態のアライメント検出部114が行うシャインプルーフ光学系12に対する被検眼EのXYZ方向のアライメント検出を説明するための説明図である。
図12に示すように、第2実施形態では撮影系30R,30Lにより前眼部Eaのステレオ撮影を行っているので、アライメント検出部114は、一般的なステレオカメラによる3次元計測の原理を利用して一対の観察像DR1,DL1を解析することによりアライメント検出を実行可能である。
【0097】
具体的にはアライメント検出部114は、一対の観察像DR1,DL1からそれぞれプルキンエ像PIの位置(XY座標)を検出する。ここでは、観察像DR1内のプルキンエ像PIのXY座標を(xR、xL)とし、観察像DL1内のプルキンエ像PIのXY座標を(yR、yL)とする。そして、撮影系30R,30Lの基線長をBとし、撮影系30R,30Lの焦点距離をfとすると、アライメント検出部114は、被検眼E上でのプルキンエ像PI(例えば角膜頂点)の位置座標(X、Y、Z)を以下の[数2]式を用いて演算する。これにより、アライメント検出部114は、シャインプルーフ光学系12に対する被検眼EのXYZ方向の相対位置の検出、すなわちXYZ方向のアライメント検出を行う。
【0098】
【0099】
第2実施形態のアライメント制御部116は、第1実施形態と同様に、アライメント検出部114から入力されるXYZ方向のアライメント検出結果に基づき、移動機構14を駆動して、被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のXYZ方向のアライメントを行う。
【0100】
図12は、第2実施形態のスリットランプ顕微鏡10による前眼部Eaの3次元画像の生成処理の流れを示すフローチャートである。
【0101】
図12に示すように、第2実施形態では、XYスポット投影系70による被検眼EへのXYスポット光LPの投影後に(ステップS2)、アライメント検出部114が、撮影制御部112を制御して、XYスポット光LPの投影によりプルキンエ像PIが生じている前眼部Eaの撮影を撮影系30R,30Lに実行させる(ステップS3A)。これにより、撮影系30R,30Lをステレオカメラとして利用することができる。そして、撮影系30R,30Lからアライメント検出部114に対して、プルキンエ像PIを含む前眼部Eaの一対の観察像DR1,DL1が出力される。
【0102】
次いで、アライメント検出部114は、撮影系30R,30Lから入力された一対の観察像DR1,DL1に含まれるプルキンエ像PIの位置に基づき、シャインプルーフ光学系12に対する被検眼EのXYZ方向のアライメント検出を行い、その検出結果をアライメント制御部116へ出力する(ステップS4A)。この際に第2実施形態では、シャインプルーフ光学系12(撮影系30R,30L)により前眼部Eaを撮影しているので、被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のアライメントがZ方向に大きくずれている場合でも、観察像DR1,DL1内のプルキンエ像PIのピントはボケないのでZ方向のアライメント検出が可能になる。
【0103】
なお、ステップS5以降の処理については、既述の
図8に示した第1実施形態と同じ処理になるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0104】
以上のように第2実施形態では、XYスポット投影系70からXYスポット光LPが投影されている前眼部Eaを撮影系30R,30Lにより撮影することで、撮影系30R,30Lが撮影した一対の観察像DR1,DL1に基づきシャインプルーフ光学系12に対する被検眼Eのアライメント検出が可能になる。これにより、第1実施形態と同様に、被検眼Eに対してシャインプルーフ光学系12を精度よくアライメントすることができる。
【0105】
また、第2実施形態では、シャインプルーフ光学系12を利用して前眼部Eaの撮影を行うため、アライメント検出時に前眼部Eaを撮影するカメラを別途設ける必要がなくなり、スリットランプ顕微鏡10の構成を簡素化することができる。
【0106】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態のスリットランプ顕微鏡10について説明を行う。上記第1実施形態でのスリットランプ顕微鏡10では、XYスポット光LPが投影されている前眼部Eaを観察系50で撮影する。このため、第1実施形態では、被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のXY方向のアライメントが大きくずれていてもプルキンエ像PIのピントはボケないが、逆に被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のZ方向のアライメントがずれているとプルキンエ像PIのピントがボケる。従って、第1実施形態はXY方向のアライメントに適している。
【0107】
一方、上記第2実施形態でのスリットランプ顕微鏡10では、XYスポット光LPが投影されている前眼部Eaをシャインプルーフ光学系12の撮影系30R,30Lで撮影する。このため、第2実施形態では、被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のZ方向のアライメントが大きくずれていてもプルキンエ像PIのピントはボケないが、逆に被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のXY方向のアライメントがずれているとプルキンエ像PIのピントがボケる。従って、第2実施形態はZ方向のアライメントに適している。
【0108】
そこで、第3実施形態のスリットランプ顕微鏡10では、観察系50を用いて被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のXY方向のアライメントを行い、且つ撮影系30R,30Lを用いて被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のZ方向のアライメントを行う。なお、第3実施形態のスリットランプ顕微鏡10は、上記各実施形態のスリットランプ顕微鏡10と基本的に同じ構成であるので、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0109】
図13は、第3実施形態のスリットランプ顕微鏡10による被検眼Eの前眼部Eaの3次元画像の生成処理の流れを示すフローチャートである。
【0110】
図13に示すように、第3実施形態では、XYスポット投影系70による被検眼EへのXYスポット光LPの投影後に(ステップS2)、アライメント検出部114が、撮影制御部112を制御して、XYスポット光LPの投影によりプルキンエ像PIが生じている前眼部Eaの撮影を観察系50に実行させる(ステップS3-1)。これにより、観察系50からアライメント検出部114に対して、プルキンエ像PIを含む前眼部Eaの観察像Dが出力される。
【0111】
次いで、アライメント検出部114が、観察像Dに基づきシャインプルーフ光学系12に対する被検眼EのXY方向のアライメント検出を行い、その検出結果をアライメント制御部116へ出力する(ステップS4-1)。そして、アライメント検出部114が、アライメント検出部114によるXY方向のアライメント検出結果に基づき、移動機構14を駆動して被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のXY方向のアライメントを行う(ステップS5-1)。
【0112】
XY方向のアライメントが完了すると、アライメント検出部114が、撮影制御部112を制御して、プルキンエ像PIが生じている前眼部Eaの撮影を撮影系30R,30Lに実行させる(ステップS3-2)。これにより、撮影系30R,30Lからアライメント検出部114に対して、プルキンエ像PIを含む前眼部Eaの一対の観察像DR1,DL1が出力される。
【0113】
次いで、アライメント検出部114が、一対の観察像DR1,DL1に基づきシャインプルーフ光学系12に対する被検眼EのZ方向のアライメント検出を行い、その検出結果をアライメント制御部116へ出力する(ステップS4-2)。そして、アライメント検出部114が、アライメント検出部114によるZ方向のアライメント検出結果に基づき、移動機構14を駆動して被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のZ方向のアライメントを行う(ステップS5-2)。これにより、被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のXYZ方向のアライメントが完了する。
【0114】
なお、ステップS6以降の処理については、既述の
図8に示した第1実施形態と同じ処理になるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0115】
以上のように第3実施形態では、観察系50を用いたXY方向のアライメントと、撮影系30R,30Lを用いたZ方向のアライメントとを組み合わせることで、上記各実施径よりも、被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のアライメントを高精度に行うことができる。
【0116】
[その他]
上記各実施形態では、移動機構14によりシャインプルーフ光学系12をX方向に移動させることで、YZ面に平行なスリット光LSをX方向に走査しているが、スリット光LSの長さ方向及び走査方向は任意に変更可能である。また、上記特許文献1に記載されているように、シャインプルーフ光学系12を、照明光軸O1を中心として回転させることでスリット光LSによる前眼部Eaの走査を実行してもよい。
【0117】
上記各実施形態では前眼部Eaにスリット光LSを照射しているが、被検眼E内でのスリット光LSの照射位置は適宜変更してもよい。また、上記各実施形態では、被検眼Eにスリット光LSを照射しているが、スリット光LS以外の各種形状の照明光を被検眼Eに照射してもよい。
【0118】
上記第1実施形態では、シャインプルーフ光学系12に2つの撮影系30R,30Lが設けられているが、撮影系の数は1つまたは3以上であってもよい。また、上記第2実施形態及び上記第3実施形態では、撮影系の数が3以上であってもよい。
【0119】
上記実施形態では、XYスポット投影系70から被検眼Eに対して近赤外光のXYスポット光LPを投影しているが、可視光のXYスポット光LPを被検眼Eに投影してもよく、さらにスポット光以外の任意の形状の光束を被検眼Eに投影してもよい。
【0120】
上記各実施形態では、被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のアライメントとして制御装置100により移動機構14を自動的に駆動するオートアライメントを例に挙げて説明したが、手動アライメントを行う場合にも本発明を適用可能である。手動アライメントでは、アライメント検出部114によるXYZ方向のアライメント検出結果に基づき、被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のアライメント状態を表示部104に表示することで、この表示に従って検者が操作部102を手動操作して移動機構14を駆動することによりXYZ方向の手動アライメントを行う。
【符号の説明】
【0121】
10 スリットランプ顕微鏡
12 シャインプルーフ光学系
14 移動機構
20 照明系
22 照明光源
24 スリット形成部
26 対物レンズ
30L,30R 撮影系
32L,32R 光学系
34L,34R 撮像素子
36L,36R 撮像面
50 観察系
52 光学系
54 撮像素子
70 XYスポット投影系
72 スポット光源
74 光学系
76 ミラー
100 制御装置
102 操作部
104 表示部
110 照明制御部
112 撮影制御部
114 アライメント検出部
116 アライメント制御部
118 走査制御部
120 画像取得部
122 3次元画像生成部
D 観察像
DL,DR 前眼部断面像
DL1,DR1 観察像
E 被検眼
Ea 前眼部
H1 平面
H2L,H2R 平面
H3L,H3R 平面
L 照明光
LA,LB 戻り光
LP XYスポット光
LS スリット光
O1 照明光軸
O1A 投影光軸
O2L,O2R 撮影光軸
O3 観察光軸
PI プルキンエ像
R 角膜曲率半径
SL,SR 主面
SP 物面
θ 傾斜角度
θL,θR 角度
φ 光束径