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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049320
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/135 20060101AFI20230403BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20230403BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
A61B3/135
G02B21/36
G02B21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158990
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】森嶋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】坂東 龍
【テーマコード(参考)】
2H052
4C316
【Fターム(参考)】
2H052AA00
2H052AB01
2H052AB05
2H052AB17
2H052AC04
2H052AC14
2H052AC15
2H052AC16
2H052AC18
2H052AC25
2H052AC33
2H052AD05
2H052AF14
2H052AF21
2H052AF25
4C316AA01
4C316AB19
4C316FA04
4C316FY01
4C316FY06
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】照明光により被検眼を走査する間、被検眼の視線方向を固定可能な顕微鏡を提供する。
【解決手段】被検眼に対して照明系及び撮影系を含むシャインプルーフ光学系を相対移動させて、照明光による被検眼の走査を行う相対移動機構と、を備え、照明光軸を含む物面と、光学系の主面と、撮像面と、がシャインプルーフの条件を満たしている顕微鏡において、被検眼との相対位置が固定されている固視光学系であって、且つ照明光軸及び撮影系の撮影光軸とは異なる投影光軸を有し、投影光軸に沿って被検眼に固視光を投影する固視光学系を備え、固視光学系が、少なくとも相対移動機構によるシャインプルーフ光学系の相対移動が行われている間、被検眼に固視光を投影する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光軸を有し、前記照明光軸に沿って被検眼に照明光を照射する照明系と、
第1撮像素子と、前記照明光が照射された前記被検眼からの戻り光を前記第1撮像素子の撮像面に導く光学系とを有し、前記第1撮像素子により前記戻り光を撮像する撮影系と、
前記被検眼に対して前記照明系及び前記撮影系を含むシャインプルーフ光学系を相対移動させて、前記照明光による前記被検眼の走査を行う相対移動機構と、
を備え、
前記照明光軸を含む物面と、前記光学系の主面と、前記撮像面と、がシャインプルーフの条件を満たしている顕微鏡において、
前記被検眼との相対位置が固定されている固視光学系であって、且つ前記照明光軸及び前記撮影系の撮影光軸とは異なる投影光軸を有し、前記投影光軸に沿って前記被検眼に固視光を投影する固視光学系を備え、
前記固視光学系が、少なくとも前記相対移動機構による前記シャインプルーフ光学系の相対移動が行われている間、前記被検眼に前記固視光を投影する顕微鏡。
【請求項2】
前記固視光学系が、予め定められた前記被検眼の配置想定位置に対する前記被検眼の位置ずれのずれ方向及びずれ量を被検者に認識させることが可能な前記固視光を前記被検眼に投影する請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項3】
前記固視光学系が前記被検眼に投影する前記固視光の形状及び光束径を、前記位置ずれが予め定められた規定範囲内の場合には前記固視光の全体が前記被検眼に投影され、且つ前記位置ずれが前記規定範囲内を超える場合には前記位置ずれのずれ方向及びずれ量に応じて前記固視光がケラレる形状及び光束径に設定している請求項2に記載の顕微鏡。
【請求項4】
前記固視光の形状が十字形状である請求項2又は3に記載の顕微鏡。
【請求項5】
前記固視光学系が、ピンホールを介して前記固視光を前記被検眼に投影する請求項1から4のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項6】
前記被検眼との相対位置が固定されている観察系であって、且つ前記投影光軸の一部と共通の観察光軸を有し、前記観察光軸に沿って入射した前記被検眼からの戻り光を第2撮像素子又は接眼レンズに導く観察系を備える請求項1から5のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項7】
互いに直交するXYZ方向のうちで前記照明光軸に平行な方向をZ方向とした場合に、前記撮影光軸が、Y方向に垂直であり且つ前記Y方向から見た場合に前記照明光軸に対して傾斜しており、
前記投影光軸が、前記Y方向から見た場合に前記照明光軸と重なり且つX方向から見た場合に前記照明光軸に対して傾斜している請求項1から6のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項8】
前記照明系が、前記物面に平行なスリット状の照明光を前記被検眼の前眼部に対して照射し、
前記相対移動機構が、前記シャインプルーフ光学系を前記物面に対して垂直な方向に移動させる請求項1から7のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャインプルーフ光学系を備える顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のスリットランプ顕微鏡は、シャインプルーフカメラとして機能するシャインプルーフ光学系を備える。シャインプルーフ光学系は、照明系と、レンズ系及び撮像素子を含む撮影系と、を備える。これら照明系及び撮影系は、照明系の照明光軸を含む物面(後述の撮像面にピントが合う面)を含む平面と、レンズ系の主面を含む平面と、撮像素子の撮像面を含む平面とが、同一直線上で交差するシャインプルーフの条件を満たすように構成されている。これにより、物面内の全ての位置にピントを合わせて撮影を行うことができ、例えば特許文献1に記載のスリットランプ顕微鏡では被検眼の前眼部の断面(角膜の前面から水晶体の後面)にピントを合わせて撮影を行う。
【0003】
また、特許文献1に記載のスリットランプ顕微鏡では、物面(照明光軸)に対して垂直方向にシャインプルーフ光学系を移動させながら撮影系による前眼部の断面撮影を連続的に行うことで、スリット光により前眼部の角膜全体を走査しながらその走査位置ごとの前眼部断面像を取得する。そして、スリットランプ顕微鏡は、走査位置ごとの前眼部断面像に基づき前眼部の3次元画像を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-213733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スリットランプ顕微鏡の照明系から被検眼の前眼部に照射されるスリット光としては一般的には可視光が用いられることが多い。このため、スリット光による前眼部の走査中にこのスリット光を被検者が目で追ってしまうことで、被検眼の視線方向が変化してしまうおそれがある。この場合には良好な前眼部の3次元画像が得られないため、スリット光の走査中には被検眼の視線方向を固定する固視を行う必要がある。
【0006】
ここで、例えば光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:OCT)装置及び走査型レーザ顕微鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope:SLO)には、各種の測定光で被検眼の走査を行うと共に被検眼からの戻り光を受光する投受光学系と、被検眼の固視を行う固視光学系と、が設けられている。そして、OCT装置及びSLOでは、被検者が測定光を目で追わないように固視に工夫をしている。
【0007】
しかしながら、OCT装置及びSLOでは、投受光学系と固視光学系とが共通の対物レンズ(光学系)を使用している。このため、仮にOCT装置及びSLOの固視光学系を上記特許文献1に記載のスリットランプ顕微鏡に適用すると、スリット光による前眼部の走査時に固視光学系がシャインプルーフ光学系と一体に移動してしまうので、被検眼の固視を行うことができない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、被検眼に対してシャインプルーフ光学系を相対移動させる間、すなわち照明光により被検眼を走査する間、被検眼の視線方向を固定可能な顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を達成するための顕微鏡は、照明光軸を有し、照明光軸に沿って被検眼に照明光を照射する照明系と、第1撮像素子と、照明光が照射された被検眼からの戻り光を第1撮像素子の撮像面に導く光学系とを有し、第1撮像素子により戻り光を撮像する撮影系と、被検眼に対して照明系及び撮影系を含むシャインプルーフ光学系を相対移動させて、照明光による被検眼の走査を行う相対移動機構と、を備え、照明光軸を含む物面と、光学系の主面と、撮像面と、がシャインプルーフの条件を満たしている顕微鏡において、被検眼との相対位置が固定されている固視光学系であって、且つ照明光軸及び撮影系の撮影光軸とは異なる投影光軸を有し、投影光軸に沿って被検眼に固視光を投影する固視光学系を備え、固視光学系が、少なくとも相対移動機構によるシャインプルーフ光学系の相対移動が行われている間、被検眼に固視光を投影する。
【0010】
この顕微鏡によれば、照明光による被検眼の走査を行う間、被検眼との相対位置が固定されている固視光学系から被検眼に対して固視光を投影することができる。
【0011】
本発明の他の態様に係る顕微鏡において、固視光学系が、予め定められた被検眼の配置想定位置に対する被検眼の位置ずれのずれ方向及びずれ量を被検者に認識させることが可能な固視光を被検眼に投影する。これにより、被検者が被検眼(顔)の位置を適切に調整することができる。
【0012】
本発明の他の態様に係る顕微鏡において、固視光学系が被検眼に投影する固視光の形状及び光束径を、位置ずれが予め定められた規定範囲内の場合には固視光の全体が被検眼に投影され、且つ位置ずれが規定範囲内を超える場合には位置ずれのずれ方向及びずれ量に応じて固視光がケラレる形状及び光束径に設定している。これにより、被検者が位置ずれのずれ方向及びずれ量を認識することができるため、被検眼(顔)の位置を適切に調整することができる。
【0013】
本発明の他の態様に係る顕微鏡において、固視光の形状が十字形状である。これにより、被検者が位置ずれのずれ方向及びずれ量を認識することができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る顕微鏡において、固視光学系が、ピンホールを介して固視光を被検眼に投影する。これにより、固視光学系の被写界深度を深くすることができる。
【0015】
本発明の他の態様に係る顕微鏡において、被検眼との相対位置が固定されている観察系であって、且つ投影光軸の一部と共通の観察光軸を有し、観察光軸に沿って入射した被検眼からの戻り光を第2撮像素子又は接眼レンズに導く観察系を備える。
【0016】
本発明の他の態様に係る顕微鏡において、互いに直交するXYZ方向のうちで照明光軸に平行な方向をZ方向とした場合に、撮影光軸が、Y方向に垂直であり且つY方向から見た場合に照明光軸に対して傾斜しており、投影光軸が、Y方向から見た場合に照明光軸と重なり且つX方向から見た場合に照明光軸に対して傾斜している。
【0017】
本発明の他の態様に係る顕微鏡において、照明系が、物面に平行なスリット状の照明光を被検眼の前眼部に対して照射し、相対移動機構が、シャインプルーフ光学系を物面に対して垂直な方向に移動させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、照明光により被検眼を走査する間、被検眼の視線方向を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】スリットランプ顕微鏡をX方向側から見た側面図である。
図2】スリットランプ顕微鏡をY方向側から見た上面図である。
図3】照明系及び撮影系のそれぞれの構成及び配置の条件を説明するための説明図である。
図4図1中の固視光学系をY方向上方側から見た上面拡大図である。
図5】被検眼の位置ずれが規定範囲内である場合に被検者に呈示される固視標の一例を示した説明図である。
図6】被検眼の位置ずれが規定範囲内を超える場合に被検者に呈示される固視標の一例を示した説明図である。
図7図6に示した例よりも被検眼の位置ずれが大きくなる場合に被検者に呈示される固視標の一例を示した説明図である。
図8】スリットランプ顕微鏡による前眼部の3次元画像の生成処理の流れを示すフローチャートである。
図9】スリットランプ顕微鏡の観察系の変形例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[スリットランプ顕微鏡の全体構成]
図1は、スリットランプ顕微鏡10をX方向側から見た側面図である。図2は、スリットランプ顕微鏡10をY方向側から見た上面図である。なお、図中の互いに直交するXYZ方向のうち、Z方向は被検眼Eに近づく前方向と被検者から遠ざかる後方向とに平行な前後方向(作動距離方向ともいう)であり、X方向は被検者を基準した左右方向であり、Y方向はXZ方向の双方に垂直な方向(ここでは上下方向)である。
【0021】
図1及び図2に示すように、スリットランプ顕微鏡10は、本発明の顕微鏡に相当するものであり、被検眼Eの前眼部Eaの3次元画像の生成を行う。このスリットランプ顕微鏡10は、大別してシャインプルーフ光学系12と、移動機構14と、観察系50と、固視光学系80と、制御装置100と、を備える。
【0022】
[シャインプルーフ光学系]
シャインプルーフ光学系12は、後述の移動機構14によりX方向に移動自在に保持されており、被検眼Eの前眼部EaのYZ面に沿った断面撮影を行う。このシャインプルーフ光学系12は、照明系20と、撮影系30R,30Lとにより構成される。なお、図1では図面の煩雑化を防止するために、撮影系30R,30Lの図示は省略している。
【0023】
<照明系>
照明系20は、Z方向に平行な照明光軸O1を有し、この照明光軸O1に沿って被検眼Eの前眼部Eaに対してスリット状の照明光L(スリット光LS)を照射する。照明系20は、従来のスリットランプ顕微鏡の照明系と同様の構成を備えていてよく、例えば、照明光軸O1に沿って配置された照明光源22、スリット形成部24、及び対物レンズ26などを含む。
【0024】
照明光源22は、例えばLED(light emitting diode)が用いられ、照明光Lを出射する。照明光Lとしては可視光が用いられるが、赤外光(近赤外光)を用いてもよい。照明光源22から出射された照明光Lは、不図示のレンズ等を透過した後、スリット形成部24に入射する。
【0025】
なお、照明光源22は複数の光源で構成されていてもよい。例えば照明光源22が、連続光を出力する光源と、フラッシュ光を出力する照明光源とを含んでいてよい。また、照明光源22が、前眼部用照明光源と後眼部用照明光源とを含んでいてもよい。さらに、照明光源22が、照明光Lの出力波長が互いに異なる複数の光源を含んでいてもよい。
【0026】
スリット形成部24は、例えばY方向に平行な一対のスリット刃を有し、これらスリット刃のX方向の間隔(スリット幅)を変更することで照明光Lが通過する領域の幅を変更する。これにより、スリット形成部24を通過した照明光Lは、合焦時には前眼部位置でX方向を幅方向とし且つY方向を長さ方向とするスリット光LSになる。
【0027】
スリット光LSのY方向の長さは、前眼部Eaの表面において角膜径以上に設定されている。なお、スリット形成部24がスリット光LSのY方向の長さを変更可能に構成されてもよい。
【0028】
対物レンズ26は、スリット形成部24を通過した照明光Lを前眼部Eaに照射する。これにより、前眼部Eaにスリット光LSが照射される。
【0029】
なお、照明系20が、スリット光LSのフォーカス位置を変更するための合焦光学系(図示は省略)を更に含んでいてもよい。
【0030】
<撮影系>
撮影系30R,30Lは、スリット光LSが照射されている前眼部Eaを互いに異なる2方向から撮影する。撮影系30R,30Lは、従来のスリットランプ顕微鏡の撮影系と同様の構成を備えていてもよい。例えば撮影系30Rは、撮影光軸O2Rに沿って配置された光学系32R及び撮像素子34Rを備える。また、撮影系30Lは、撮影光軸O2Lに沿って配置された光学系32L及び撮像素子34Lを備える。
【0031】
撮影光軸O2Rは、ZX面に平行で、且つY方向側から見た場合にZ方向に対してX方向の一方向側に角度θRで傾斜している。また、撮影光軸O2Lは、ZX面に平行で、且つY方向側から見た場合にZ方向に対してX方向の他方向側に角度θLで傾斜している。角度θRと角度θLとは、互いに等しくてもよいし異なっていてもよい。そして、照明光軸O1と撮影光軸O2Rと撮影光軸O2Lとは一点で交差する。
【0032】
光学系32Rは、図示は省略するが、例えば被検眼Eに近い側から順に、対物レンズ、変倍光学系、及び結像レンズ等を含む。前眼部Eaからの戻り光LAは、光学系32Rの対物レンズ及び変倍光学系を通過し、光学系32Rの結像レンズにより撮像素子34Rの撮像面36Rに結像される。なお、光学系32Rが合焦光学系(図示は省略)を更に含んでいてもよい。
【0033】
前眼部Eaからの戻り光LAには、前眼部Eaに照射されているスリット光LSの戻り光が含まれ、さらに他の光を含んでいてよい。戻り光LAの例としては、反射光、散乱光、及び蛍光等が挙げられる。また、他の光の例としては、スリットランプ顕微鏡10の設置環境からの光(室内光、太陽光など)がある。また、前眼部Eaの全体を照明するための前眼部照明系(図示は省略)が照明系20とは別に設けられている場合には、この前眼部照明系からの前眼部照明光の戻り光(反射光)が「他の光」に含まれていてもよい。
【0034】
撮像素子34Rは、後述の撮像素子34Lと共に本発明の第1撮像素子を構成する。撮像素子34Rは、2次元の撮像面36Rを有するCMOS(complementary metal oxide semiconductor)型又はCCD(Charge Coupled Device)型のエリアセンサである。撮像素子34Rは、光学系32Rにより撮像面36Rに結像された戻り光LAを撮像して、この戻り光LAの撮像画像である前眼部断面像DRを制御装置100へ出力する。この前眼部断面像DRは、前眼部Eaのスリット光照射位置におけるYZ断面の画像である。
【0035】
光学系32Lは、既述の光学系32Rと同じ構成であり、図示は省略するが対物レンズ、変倍光学系、及び結像レンズ等を含み、さらに合焦光学系を含んでもよい。これにより、スリット光LSが照射されている前眼部Eaからの戻り光LAが、光学系32Lの対物レンズ及び変倍光学系を通過し、光学系32Lの結像レンズにより撮像素子34Lの撮像面36Lに結像される。
【0036】
撮像素子34Lは、2次元の撮像面36Lを有するCMOS型又はCCD型のエリアセンサであり、光学系32Lにより撮像面36Lに結像された戻り光LAを撮像して、この戻り光LAの撮像画像である前眼部断面像DLを制御装置100へ出力する。この前眼部断面像DLは、前眼部Eaのスリット光照射位置におけるYZ断面の画像である。
【0037】
<シャインプルーフカメラ>
図3は、照明系20及び撮影系30R,30Lのそれぞれの構成及び配置の条件を説明するための説明図である。図3に示すように、照明系20及び撮影系30Lはシャインプルーフカメラとして機能し、且つ照明系20及び撮影系30Rもシャインプルーフカメラとして機能する。
【0038】
図3の符号3Aに示すように、照明光軸O1を含み且つYZ面に平行な物面SP(撮像面36R,36Lにピントが合う面)と、光学系32Lの主面SLと、撮像面36Lと、がシャインプルーフの条件(原理)を満たすように、照明系20及び撮影系30Lが構成されている。より具体的には、物面SPを含む平面H1と、主面SLを含む平面H2Lと、撮像面36Lを含む平面H3Lと、が同一の直線上にて交差する。これにより、撮影系30Lが物面SP内の全ての位置(例えば前眼部Eaの角膜前面から水晶体後面の範囲)にピントを合わせて撮影、すなわち前眼部Eaの断面撮影を行うことで前眼部断面像DLが得られる。
【0039】
また同様に、図3の符号3Bに示すように、物面SPと、光学系32Rの主面SRと、撮像面36Rと、がシャインプルーフの条件を満たすように、照明系20及び撮影系30Rとが構成されている。より具体的には、平面H1と、主面SRを含む平面H2Rと、撮像面36Rを含む平面H3Rと、が同一の直線上にて交差する。これにより、撮影系30Rも物面SP内の全ての位置(前眼部Eaの角膜前面から水晶体後面の範囲)にピントを合わせて前眼部Eaの断面撮影を行うことで前眼部断面像DRが得られる。
【0040】
このようなシャインプルーフの条件を満たす照明系20及び撮影系30R,30Lの構成は、照明系20に含まれる要素の構成及び配置、撮影系30R,30Lに含まれる要素の構成及び配置、及び照明系20と撮影系30R,30Lとの相対位置によって実現される。照明系20と撮影系30R,30Lとの相対位置を示すパラメータは、例えば、既述の角度θR,θLを含む。角度θR,θLは、例えば17.5度、30度、又は45度に設定される。なお、角度θR,θLが可変であってもよい。
【0041】
[移動機構]
移動機構14は、本発明の相対移動機構に相当するものであり、図示は省略するが、シャインプルーフ光学系12が搭載されたステージと、このステージをXYZ方向に移動させるモータ等のアクチュエータと、により構成されている。なお、移動機構14は、被検眼Eに対してシャインプルーフ光学系12を相対移動可能であれば、その構成は特に限定されるものではなく、例えば不図示の顔支持部を移動させるものであってもよい。
【0042】
移動機構14は、被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のアライメント時には、後述の制御装置100の制御の下、シャインプルーフ光学系12のXYZ方向の位置調整を行うことで、被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のアライメント(オートアライメント)を実行する。
【0043】
また、移動機構14は、前眼部Eaの3次元画像生成時には、後述の制御装置100の制御の下、照明系20による前眼部Eaへのスリット光LSの照射と撮影系30R,30Lによる前眼部断面像DR,DLの撮影とに合わせて、シャインプルーフ光学系12を照明光軸O1に対して垂直方向に移動させる。より具体的には移動機構14は、シャインプルーフ光学系12を物面SPに垂直な方向であるX方向に移動させる。これにより、X方向を幅方向とし且つY方向を長さ方向とするYZ面に平行なスリット光LSにより前眼部EaをX方向に走査(スキャン)することができる。この際に本実施形態では、移動機構14によるシャインプルーフ光学系12のX方向の移動範囲、すなわち前眼部Eaに対するスリット光LSのX方向の走査範囲が少なくとも前眼部Eaの角膜を含む範囲に設定されている。このため、角膜全体をスリット光LSで走査することができる。
【0044】
このように移動機構14により照明系20からのスリット光LSを前眼部Eaに対してX方向に走査しながら撮影系30R,30Lによる戻り光LAの撮像(動画撮像)及び前眼部断面像DR,DLの連続出力と、を実行することで、スリット光LSのX方向の走査位置ごとに前眼部Eaの前眼部断面像DR,DLが得られる(上記特許文献1参照)。なお、アライメントに用いられる移動機構14と、シャインプルーフ光学系12をX方向に移動させる移動機構14とが別体であってもよい。
【0045】
[観察系]
図1に戻って、観察系50は、シャインプルーフ光学系12とは独立して設けられており、スリットランプ顕微鏡10内で位置が固定、すなわち被検眼Eとの相対位置が固定されている。
【0046】
観察系50は、観察光軸O3を有し、被検眼Eに近い側から順に観察光軸O3に沿って配置された光学系52及び撮像素子54を備える。
【0047】
観察光軸O3(後述の投影光軸O4も同様)は、Y方向から見た場合に照明光軸O1と重なり且つX方向から見た場合に照明光軸O1に対してY方向下方側(Y方向上方側でも可)に傾斜角度θだけ傾斜している。この傾斜角度θは、照明系20から前眼部Eaに照射されるスリット光LSが観察系50及び後述の固視光学系80にケラレないような適切な角度、例えば約8度に設定されている。これにより、照明系20から前眼部Eaに照射されるスリット光LSの光量低下が防止される。
【0048】
光学系52は、図示は省略するが結像レンズ等を含み、被検眼Eからの戻り光LB(第2戻り光に相当)を撮像素子54に結像させる。なお、光学系52が合焦光学系を含んでいてもよい。
【0049】
被検眼Eからの戻り光LBには、既述の前眼部照明系(図示は省略)から前眼部Eaに照射されている前眼部照明光の戻り光(前眼部反射光)などが含まれる。
【0050】
撮像素子54は、CMOS型又はCCD型のエリアセンサであり、本発明の第2撮像素子に相当する。この撮像素子54は、光学系52により結像された戻り光LBを撮像して、被検眼Eの観察像D(前眼部Eaを撮影した前眼部像)を制御装置100へ出力する。
【0051】
[固視光学系]
図4は、図1中の固視光学系80をY方向上方側から見た上面拡大図である。なお、図中のZ1方向は、Z方向に対して傾斜角度θだけ傾斜した方向、すなわち観察光軸O3に平行な方向である。また、図中のY1方向は、Z1方向及びX方向の双方に対して垂直な方向である。
【0052】
図4及び既述の図1に示すように、固視光学系80は、被検眼Eの眼底Efに対して固視光LFを投影(照射)する。固視光学系80は、観察系50の観察光軸O3の一部と共通の投影光軸O4を有している、すなわち観察系50と同軸である。投影光軸O4は、観察光軸O3の途中から分岐しており、この分岐位置から被検眼Eまでが観察光軸O3と共通している。なお、観察光軸O3の途中から投影光軸O4を分岐させる代わりに、投影光軸O4の途中から観察光軸O3を分岐させてもよい。
【0053】
固視光学系80は、投影光軸O4に沿って配置された固視光源81、拡散板82、ピンホール部材83、レンズ84、十字レチクル板85、レンズ86、及びミラー87を備える。
【0054】
固視光源81は、例えば緑色LEDが用いられ、可視光である緑色光を固視光LFとして出射する。固視光源81から出射された固視光LFは、拡散板82で拡散された後、ピンホール部材83に形成されているピンホール83aを通過する。この際にピンホール83aを小径にすることで、固視光学系80の被写界深度を深くすることができる。その結果、固視光学系80が合焦機構を備えていなくとも、ある程度のディオプター範囲に固視光LFのピント位置を合わせることができる。
【0055】
ピンホール83aを通過した固視光LFは、レンズ84を介して十字レチクル板85を透過する。これにより、眼底Efに対して十字形状の固視光LFが投影される。そして、十字レチクル板85を透過した固視光LFは、レンズ86を介してミラー87に入射する。
【0056】
ミラー87は、例えばダイクロイックミラー或いはハーフミラーなどが用いられ、観察光軸O3からの投影光軸O4の分岐位置に配置されている。ミラー87は、レンズ86から入射した固視光LFを被検眼Eに向けて反射し、逆に被検眼Eから入射した戻り光LBを透過して光学系52に向けて出射する。
【0057】
このように固視光学系80は、投影光軸O4に沿って眼底Efに対して固視光LFを投影する。この際に、被検眼Eの瞳上での固視光LFの光束径φは例えば4.5mmに調整されている。これにより、眼底Ef内の図中の点線円Cで囲む領域の眼底像Dfに示すように、眼底Ef上に十字形状の固視光LFが結像されることで、被検眼Eに対して十字形状の固視標FPが呈示される。その結果、被検眼Eの視線方向を固視標FPの方向に固定、すなわち被検眼Eを固視させることができる。
【0058】
そして、固視光学系80は、被検眼Eに対する相対位置が固定されている観察系50に設けられているので、移動機構14によりシャインプルーフ光学系12がX方向に移動される場合、すなわちスリット光LSにより前眼部EaがX方向に走査される場合においても、被検眼Eの固視を安定(継続)させることができる。
【0059】
また、本実施形態では、固視光学系80を、被検者が行うスリットランプ顕微鏡10に対する被検眼E(顔)の位置調整であるラフアライメント(簡易アライメントともいう)に用いる。例えば、スリットランプ顕微鏡10がスクリーノスコープ型である場合には、被検者がスリットランプ顕微鏡10に設けられた接眼部覗孔(図示は省略)を覗き込む必要がある。この際に、被検眼Eがスリットランプ顕微鏡10で想定されている配置想定位置から照明光軸O1に対して垂直方向(XY方向)に位置ずれ(以下、単に「位置ずれ」と略す)する場合がある。
【0060】
このような場合に、被検眼Eの位置ずれが配置想定位置から予め定められた規定範囲(許容範囲ともいう)、例えば観察系50の観察範囲内であれば、シャインプルーフ光学系12に対する被検眼Eの相対位置の検出(アライメント検出)、及び被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のアライメントを実行可能である。しかしながら、被検眼Eの位置ずれが上述の規定範囲内を超えてしまうと、アライメント検出及びアライメントを実行することができない。
【0061】
そこで本実施形態では、固視光学系80により被検眼Eに呈示される固視標FPに基づき、被検者が、配置想定位置に対する被検眼Eの位置ずれのずれ方向及びずれ量を認識可能にすると共に、被検者がこの位置ずれが上述の規定範囲内であるか否かも認識可能にする。このため、配置想定位置に対する被検眼Eの位置ずれが規定範囲内である場合には固視光LFの全体が眼底Efに投影され、且つ逆に位置ずれが規定範囲内を超える場合には位置ずれのずれ方向及びずれ量に応じて眼底Efに投影される固視光LFがケラレるように、固視光LFの形状及び瞳上での光束径φを設定する。
【0062】
具体的には本実施形態では、眼底Efに投影される固視光LFの形状を既述の通り十字形状に設定し、且つ位置ずれが規定範囲内を超える場合に固視光LFがケラレるように瞳上での光束径φ(被検者に呈示される固視標FPの大きさ)を設定する。
【0063】
図5は、被検眼Eの位置ずれが規定範囲内である場合に被検者に呈示される固視標FPの一例を示した説明図である。図6は、被検眼Eの位置ずれが規定範囲内を超える場合に被検者に呈示される固視標FPの一例を示した説明図である。図7は、図6に示した例よりも被検眼Eの位置ずれが大きくなる場合に被検者に呈示される固視標FPの一例を示した説明図である。なお、図6及び図7は、固視標FPのケラレの一例を示したものであり、この固視標FPのケラレの状態は被検眼Eのディオプター、瞳孔径、及びZ方向のアライメント位置によって異なる。
【0064】
図5に示すように、被検眼Eの位置ずれが規定範囲内である場合には、被検者は十字形状の固視標FPの全体を視認することができる。この場合には、被検者は被検眼E(顔)の位置調整(ラフアライメント)が不要であることを容易に認識することができる。
【0065】
一方、図6及び図7に示すように、被検眼Eの位置ずれが規定範囲内を超える場合には、被検者は、被検眼Eの位置ずれのずれ方向及びずれ量に応じて一部がケラレた固視標FPを視認する。この場合には被検者は、上述のラフアライメントが必要であることを認識すると共に上下左右の各方向のうちで固視標FPがケラレている方向を認識することができ、このケラレている方向に基づき被検眼E(顔)を動かす方向を判別可能である。これにより、被検者は、十字形状の固視標FPの一部がケラレないように、すなわち上下左右方向の長さが均等に見えるように被検眼E(顔)の位置を位置調整するラフアライメントを実行することができる。その結果、被検眼Eの位置ずれが規定範囲内に収められるので、被検眼Eの瞳孔径が大きい場合でも被検眼Eをアライメント検出範囲或いは観察範囲内に入れることができ、アライメント検出及び被検眼Eの観察等が可能になる。
【0066】
[制御装置]
制御装置100は、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備えており、不図示の操作部に入力された検者からの操作指示に基づき、スリットランプ顕微鏡10の各部の動作を統括制御する。この制御装置100は、固視光学系80による被検眼Eへの固視光LFの投影と、被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のアライメント検出及びアライメントと、照明系20による前眼部Eaへのスリット光LSの照射及び撮影系30R,30Lによる前眼部断面像DR,DLの撮影と、スリット光LSによる前眼部Eaの走査と、前眼部Eaの3次元画像の生成と、を制御する。
【0067】
制御装置100は、例えばスリットランプ顕微鏡10の電源がONされた場合などのように、被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のアライメント開始前の状態において、固視光源81を制御して、固視光学系80による眼底Efへの固視光LFの投影を実行させる。また、制御装置100は、スリット光LSによる前眼部Eaの走査が行われている間、固視光源81を制御して、固視光学系80による眼底Efへの固視光LFの投影を実行させる。
【0068】
また、制御装置100は、不図示の操作部において前眼部Eaの3次元画像の生成指示を受け付けた場合に、観察系50(撮影系30R,30Lでも可)を制御して、前眼部Eaの観察像Dの撮影を行い、この観察像Dに基づきシャインプルーフ光学系12に対する被検眼Eの相対位置を検出するアライメント検出を行う。そして、制御装置100は、アライメント検出の結果に基づき、移動機構14を駆動してシャインプルーフ光学系12のXYZ方向位置を調整することで、被検眼Eに対するシャインプルーフ光学系12のXYZ方向のアライメント(精密アライメント)を行う。なお、アライメント検出及びアライメントについては公知技術であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0069】
さらに制御装置100は、上述のアライメントが完了した場合に、照明系20による前眼部Eaへのスリット光LSの照射と、撮影系30R,30Lによる前眼部Eaの断面撮影と、移動機構14によるスリット光LSのX方向の走査と、を実行させる(上記特許文献1参照)。そして、制御装置100は、スリット光LSの走査中にその走査位置ごとに撮影系30R,30Lにより撮影された前眼部断面像DR,DLに基づき、公知の方法で前眼部Eaの3次元画像を生成する(上記特許文献1参照)。
【0070】
[スリットランプ顕微鏡の作用]
図8は、上記構成のスリットランプ顕微鏡10による前眼部Eaの3次元画像の生成処理の流れを示すフローチャートである。なお、ここではスクリーノスコープ型のスリットランプ顕微鏡10を例に挙げて説明を行う。
【0071】
図8に示すように、制御装置100は、スリットランプ顕微鏡10の電源がONされると、固視光源81を制御して、固視光源81からの固視光LFの出射を開始させる。そして、被検者がスリットランプ顕微鏡10の接眼部覗孔(図示は省略)を覗き込むと、固視光学系80から眼底Efに固視光LFが投影され、被検者に十字形状の固視標FPが呈示される(ステップS1)。これにより、被検者は、十字形状の固視標FPの全体が視認可能か否かに基づき、被検眼E(顔)の位置調整であるラフアライメントの不要/要を認識する。
【0072】
被検者は、被検眼Eの位置ずれのずれ方向及びずれ量に応じて固視標FPの一部がケラレている場合には、上下左右の各方向のうちで固視標FPがケラレている方向に基づき被検眼E(顔)を動かす方向を判別する。そして、被検者は、固視標FPの上下左右方向の長さが均等に見えるように被検眼Eの位置を位置調整するラフアライメントを実行する(ステップS2)。これにより、被検眼Eの位置ずれが規定範囲内に収められるので、アライメント検出及び被検眼Eの観察等が可能になる。
【0073】
次いで、検者が不図示の操作部に対して前眼部Eaの3次元画像の生成開始操作を行うと、制御装置100が、観察系50による前眼部Eaの撮影を実行させ、この撮影で得られた観察像D(前眼部像)に基づきシャインプルーフ光学系12に対する被検眼Eのアライメント検出を行う。そして、制御装置100は、アライメント検出結果に基づき、移動機構14を駆動してシャインプルーフ光学系12のアライメントを実行する(ステップS3)。これにより、シャインプルーフ光学系12が、前眼部Eaに対するスリット光LSの走査開始位置に位置調整される。
【0074】
アライメントが完了すると、制御装置100が、照明系20から前眼部Eaへのスリット光LSの照射を開始させると共に(ステップS4)、撮影系30R,30Lの撮像素子34R,34Lによる戻り光LAの撮像、すなわち前眼部Eaの断面撮影を実行させる(ステップS5)。これにより、撮像素子34R,34Lから制御装置100に対して前眼部断面像DR,DLが出力される。
【0075】
そして、制御装置100は、移動機構14を駆動してシャインプルーフ光学系12をX方向に移動させることで、スリット光LSによる前眼部Eaの走査を開始する(ステップS6)。これにより、スリット光LSがX方向に走査されている間、このスリット光LSのX方向の走査位置ごとに、撮影系30R,30Lにより前眼部断面像DR,DLが撮影され、制御装置100が撮影系30R,30Lから前眼部断面像DR,DLを取得する(ステップS7)。
【0076】
また、制御装置100は、スリット光LSによる前眼部Eaの走査開始に合わせて、固視光学系80から眼底Efに対して固視光LFを投影させる(ステップS8)。これにより、被検眼Eに対して固視標FPが呈示されるので、被検眼Eの視線方向を固視標FPの方向に固定、すなわち被検眼Eを固視させることができる。その結果、スリット光LSによる前眼部Eaの走査時に被検者がこのスリット光LSを目で追ってしまうことが防止される。
【0077】
以下、スリット光LSが走査終了位置に達するまで上述のステップS6からステップS8までの処理が繰り返し実行される(ステップS9でNO)。そして、スリット光LSによる前眼部Eaの走査が終了すると(ステップS9でYES)、制御装置100が、撮影系30R,30Lから取得したスリット光LSの走査位置ごとの前眼部断面像DR,DLに基づき、前眼部Eaの3次元画像を生成する(ステップS10)。
【0078】
以上のように本実施形態では、被検眼Eに対する相対位置が固定されている観察系50に固視光学系80を設けることで、シャインプルーフ光学系12をX方向に移動させている間、すなわちスリット光LSによる前眼部Eaの走査を行っている間、固視光学系80による被検眼Eの固視を行って被検眼Eの視線方向を固定することができる。その結果、前眼部Eaの良好な3次元画像が得られる。
【0079】
[観察系の変形例]
図9は、スリットランプ顕微鏡10の観察系50の変形例を説明するための説明図である。上記実施形態では観察系50が戻り光LBを撮像素子54に導いているが、戻り光LBを接眼レンズ59に導くようにする、すなわち検者が接眼レンズ59を通して観察像D(前眼部像)を観察可能にしてもよい。この場合には、図9に示すように観察系50に接眼レンズ系56を設ける。この接眼レンズ系56は、ビームスプリッタ57と、結像レンズ58と、接眼レンズ59とを含む。
【0080】
ビームスプリッタ57は、観察光軸O3上に配置されており、被検眼Eからの戻り光LBの一部を透過して光学系52へ出射し、且つ残りを結像レンズ58に向けて反射する。結像レンズ58はビームスプリッタ57から入射した戻り光LBを接眼レンズ59に導く。これにより、検者は接眼レンズ59を通して観察像Dを観察することができる。
【0081】
[その他]
上記実施形態では、移動機構14によりシャインプルーフ光学系12をX方向に移動させることで、YZ面に平行なスリット光LSをX方向に走査しているが、スリット光LSの長さ方向及び走査方向は任意に変更可能である。また、上記特許文献1に記載されているように、シャインプルーフ光学系12を、照明光軸O1を中心として回転させることでスリット光LSによる前眼部Eaの走査を実行してもよい。
【0082】
上記実施形態では前眼部Eaにスリット光LSを照射しているが、被検眼E内でのスリット光LSの照射位置は適宜変更してもよい。また、上記実施形態では、被検眼Eにスリット光LSを照射しているが、スリット光LS以外の各種形状の照明光を被検眼Eに照射してもよい。
【0083】
上記実施形態では、シャインプルーフ光学系12に2つの撮影系30R,30Lが設けられているが、撮影系の数は1つまたは3以上であってもよい。
【0084】
上記実施形態では、固視光学系80から眼底Efに対して十字形状の固視光LFを投影しているが、被検眼Eの位置ずれ(好ましくはそのずれ方向及びずれ量)を被検者が認識可能であれば固視光LFの形状は特に限定されず、例えば上下左右斜めの計8方向に延びた放射線状、或いは同心円状等の各種形状の固視光LFを眼底Efに投影してもよい。
【符号の説明】
【0085】
10 スリットランプ顕微鏡
12 シャインプルーフ光学系
14 移動機構
20 照明系
22 照明光源
24 スリット形成部
26 対物レンズ
30L,30R 撮影系
32L,32R 光学系
34L,34R 撮像素子
36L,36R 撮像面
50 観察系
52 光学系
54 撮像素子
56 接眼レンズ系
57 ビームスプリッタ
58 結像レンズ
59 接眼レンズ
80 固視光学系
81 固視光源
82 拡散板
83 ピンホール部材
83a ピンホール
84 レンズ
85 十字レチクル板
86 レンズ
87 ミラー
100 制御装置
C 点線円
D 観察像
DL,DR 前眼部断面像
Df 眼底像
E 被検眼
Ea 前眼部
Ef 眼底
FP 固視標
H1 平面
H2L,H2R 平面
H3L,H3R 平面
L 照明光
LA,LB 戻り光
LF 固視光
LS スリット光
O1 照明光軸
O2L,O2R 撮影光軸
O3 観察光軸
O4 投影光軸
SL,SR 主面
SP 物面
θ 傾斜角度
θL 角度
θR 角度
φ 光束径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9