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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049345
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】日射遮蔽装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/24 20060101AFI20230403BHJP
   E06B 5/00 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
E06B9/24 Z
E06B5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159029
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 翔平
(57)【要約】
【課題】建物内からの眺望性を損ねることなく、室内に到達する日射量を、効果的に抑えることができる日射遮蔽装置を提供する。
【解決手段】建物2の開口部5の少なくとも一部を覆い、建物の室内に向かう日射光を遮蔽する日射遮蔽装置1は、開口部5の外方に配置された内側遮光板10と、内側遮光板と間隙d1を空けて内側遮光板の外方に配置された外側遮光板20とを備えている。外側遮光板20は、複数の外側貫通孔21を有しており、内側遮光板10は、外側貫通孔よりも小さい複数の内側貫通孔11を有しており、内側貫通孔11は、水平方向から見て、外側貫通孔21の内側に形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部の少なくとも一部を覆い、前記建物の室内に向かう日射光を遮蔽する日射遮蔽装置であって、
前記開口部の外方に配置された内側遮光板と、前記内側遮光板と間隙を空けて前記内側遮光板の外方に配置された外側遮光板と、を備え、
前記外側遮光板は、複数の外側貫通孔を有しており、
前記内側遮光板は、前記外側貫通孔よりも小さい複数の内側貫通孔を有しており、
前記内側貫通孔は、水平方向から見て、前記外側貫通孔の内側に形成されていることを特徴とする日射遮蔽装置。
【請求項2】
年間を通して、年間の太陽高度のうち、太陽高度が最も高い日を含む所定の期間において、当該期間における太陽の軌道により前記外側貫通孔を通過する日射光が、前記内側貫通孔から外れた前記内側遮光板の表面のみを照射するように、前記外側貫通孔と、前記内側貫通孔とが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の日射遮蔽装置。
【請求項3】
前記内側貫通孔の開口縁と、前記外側貫通孔の開口縁と、の最短距離を結ぶ仮想線と、水平線との成す角度は、20°以上、40°以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の日射遮蔽装置。
【請求項4】
前記複数の内側貫通孔および前記複数の外側貫通孔は、千鳥状のピッチで配列されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の日射遮蔽装置。
【請求項5】
前記複数の内側貫通孔および前記複数の外側貫通孔は、水平方向に等間隔に配列されるとともに鉛直方向に等間隔に配列され、
鉛直方向のピッチに対して水平方向のピッチが小さく設定されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の日射遮蔽装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日射遮蔽装置に係り、例えば、建物の開口部の少なくとも一部を覆い、室内に向かう日射光を遮蔽する遮光板を備える日射遮蔽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、建物の開口部を覆い、室内に向かう日射を遮蔽する日射遮蔽装置が知られている(例えば、特許文献1)。この日射遮蔽装置は、その厚み方向における一側面を室内側に向けるとともに他側面を室外側に向ける複数の貫通孔が設けられた薄板と、薄板の周縁を保持する枠体と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-237982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の日射遮蔽装置では、日射の遮蔽性を高めて建物内の温度の上昇を抑えるため、薄板に形成された複数の貫通孔の直径を小さくすると、外方の景色を見るための眺望性が損なわれてしまう。また、眺望性を高めようとすると、複数の貫通孔の直径を大きくすることが必要で、結果的に日射遮蔽効果が損なわれ、建物内の温度上昇が大きくなってしまうことが想定される。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、日射遮蔽効果を高めながら、眺望性を損ねない日射遮蔽装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を鑑みて、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、建物の開口部の少なくとも一部を覆うように、複数の内側貫通孔を形成した内側遮光板と、複数の外側貫通孔を形成した外側遮光板との2枚を配置し、内側貫通孔を、水平方向から見て、外側貫通孔の内側に形成することにより、開口部の眺望性を損なうことを抑え、日射量を効果的に低減できることができると考えた。
【0007】
本発明は、このような考えに基づくものであり、本発明に係る日射遮蔽装置は、建物の開口部の少なくとも一部を覆い、前記建物の室内に向かう日射光を遮蔽する日射遮蔽装置であって、前記開口部の外方に配置された内側遮光板と、前記内側遮光板と間隙を空けて前記内側遮光板の外方に配置された外側遮光板と、を備え、前記外側遮光板は、複数の外側貫通孔を有しており、前記内側遮光板は、前記外側貫通孔よりも小さい複数の内側貫通孔を有しており、前記内側貫通孔は、水平方向から見て、前記外側貫通孔の内側に形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、複数の内側貫通孔が、水平方向から見て、複数の内側貫通孔よりも大きい複数の外側貫通孔の内側に形成されていることにより、内側遮光板の複数の内側貫通孔と外側遮光板の複数の外側貫通孔を通して、室内より外方を広い視野角で眺望することができる。さらに、外側遮光板の複数の外側貫通孔を通過した日射光は、内側遮光板の複数の内側貫通孔を除く周囲の部位で遮光され易くなるため、室内に入り込む日射量を抑制することができる。
【0009】
より好ましい態様としては、年間を通して、年間の太陽高度のうち、太陽高度が最も高い日を含む所定の期間において、当該期間における太陽の軌道により前記外側貫通孔を通過する日射光が、前記内側貫通孔から外れた前記内側遮光板の表面のみを照射するように、前記外側貫通孔と、前記内側貫通孔とが形成されている。
【0010】
この態様によれば、年間を通して、年間の太陽高度のうち、太陽高度が最も高い日を含む期間(例えば夏季期間)において、外側遮光板の複数の外側貫通孔を通過した日射光は、内側遮光板の複数の内側貫通孔を除く、内側遮光板の表面のみに照射され、内側遮光板で遮光される。これにより、外側貫通孔および内側貫通孔を通して、直射日光が室内に入り込むことを防止することができる。
【0011】
ここで、年間の太陽の軌道に対して、外側貫通孔を通過する日射光が、前記内側貫通孔から外れた前記内側遮光板の表面のみを照射するように、前記外側貫通孔と、前記内側貫通孔とを形成すれば、年間を通して、日射光を開口部に通過させることを防止することができる。
【0012】
さらに、太陽高度が最も高い日(夏至の日)と、太陽高度が最も低い日(冬至の日)と、低い日(冬至の日)から高い日(夏至の日)までの間で、これらの太陽高度が中間(中央)位置となる第1の中間の日(春分の日)と、高い日(夏至の日)から低い日(冬至の日)までの間で、これらの太陽高度が中間(中央)となる第2の中間の日(秋分の日)としたときに、以下のように、外側貫通孔と内側貫通孔とを形成してもよい。具体的には、第1の中間の日(春分の日)から、第2の中間の日(秋分の日)までの期間の太陽の軌道に対して、前記外側貫通孔を通過する日射光が、前記内側貫通孔から外れた前記内側遮光板の表面のみを照射するように、前記外側貫通孔と、前記内側貫通孔とが形成されている。これにより、年間のうち、第1の中間の日(春分の日)から、第2の中間の日(秋分の日)までの期間は、それ以外の日よりも多いため、これらの期間の日射光を、遮断し、それ以外の期間の日射光の一部を室内に取り込むことができる。
【0013】
さらに好ましい態様としては、前記内側貫通孔の開口縁と、前記外側貫通孔の開口縁と、の最短距離を結ぶ仮想線と、水平線との成す角度は、20°以上、40°以下である。この態様によれば、人間の有効視野角度は、遠方に向けて徐々に広がるものであるため、室内側に位置する複数の内側貫通孔の開口縁に対して、外方に位置する複数の外側貫通孔の開口縁の関係を上述した関係とすることができ、眺望性を高めることができる。ここで、この角度が、20°未満である場合には、人間の有効視野角度よりも狭い角度となるため、眺望性が低下するおそれがある。一方、この角度が40°を超えた場合には、外側貫通孔が大きすぎるため、内側貫通孔に日射光が通過しやすくなる。
【0014】
さらに好ましい態様としては、前記複数の内側貫通孔および前記複数の外側貫通孔は、千鳥状のピッチで配列される。ここで、千鳥状のピッチとは、複数の内側貫通孔および複数の外側貫通孔が水平方向および鉛直方向に一定のピッチで配列されるとともに、水平方向および鉛直方向に沿って、隣り合う行および列の外側貫通孔を半ピッチずらして、複数の内側貫通孔および複数の外側貫通孔を配列するものである。
【0015】
この態様によれば、太陽高度が最も高い日(夏至の日)の太陽の軌跡において、外側貫通孔を通過した日射光を、内側遮光板の内側貫通孔に通過させずに、その周りの表面に照射させ易い。一方、太陽高度が最も低い日(冬至の日)の太陽の軌跡において、外側貫通孔を通過した日射光の一部を、内側遮光板の内側貫通孔に通過させ、室内に取り込むことができる。
【0016】
さらに好ましい態様としては、前記複数の内側貫通孔および前記複数の外側貫通孔は、水平方向に等間隔に配列されるとともに鉛直方向に等間隔に配列され、鉛直方向のピッチに対して水平方向のピッチが小さく設定される。この態様の場合であっても、鉛直方向のピッチを広く、水平方向のピッチを狭く設定し、複数の外側貫通孔および複数の内側貫通孔を配列することで、日射を効率よく遮光して、眺望性を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、建物内からの眺望性を損ねることなく、室内に到達する日射量を、効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の日射遮蔽装置を模式的に示し、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
図2図1に示す日射遮蔽装置の平面図である。
図3図1図2に示す日射遮蔽装置を構成する1組の内側遮光板および外側遮光板の分解状態を模式的に示す斜視図である。
図4】(a)は、図1に示す日射遮蔽装置を構成する内側遮光板および外側遮光板に形成された内側貫通孔および外側貫通孔の要部断面図、(b)は内側貫通孔および外側貫通孔の配置を示す要部正面図である。
図5図1に示す日射遮蔽装置の固定構造を示し、(a)は図1のA部の要部左側面図、(b)は図1のB部の要部左側面図、(c)は図1のC部の要部左側面図、(d)は図1のD部の要部平面図、(e)は図1のE-E線に沿う要部断面図、(f)は図1のF部の要部底面図である。
図6】本実施形態の日射遮蔽装置に日射光が照射したときの説明図であり、(a)は外側貫通孔を通過した日射光が内側貫通孔を通過できない場合、(b)は外側貫通孔を通過した日射光が内側貫通孔を通過できる場合、(c)は複数の外側貫通孔よりも小さい直径の複数の内側貫通孔の場合の視野を示す説明図、(d)は、本実施形態の比較となる日射遮蔽装置において、複数の外側貫通孔と同じ直径の複数の内側貫通孔の場合の視野を示す説明図である。
図7】外側遮光板に形成された1つの外側貫通孔を通過する内側遮光板上の照射範囲を示し、(a)は本実施形態の説明図、(b)は他例の説明図である。
図8】日射遮蔽装置の他の実施形態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。各実施形態において同一の符号を付された構成については、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有し、その説明を省略する。図1(a)は、本実施形態の日射遮蔽装置を備える建物の要部正面図を示しており、一部を模式的に示している。図1(b)は、その右側面図であり、図2は、その底面図である。図3は、図1における1組の内側遮光板および外側遮光板の分解状態を模式的に示す斜視図である。図4(a)は、内側貫通孔および外側貫通孔の要部断面図、図4(b)は内側貫通孔および外側貫通孔の配置を示す要部正面図である。
【0020】
図1において、本実施形態に係る日射遮蔽装置1は、建物2の開口部5の少なくとも一部を覆い、開口部5を通して建物2の室内に向かう日射光を遮蔽する装置である。建物2は、住宅、倉庫等の構造物であり、木造、鉄骨造、コンクリート造で、平屋や多層階建てに適宜構成される。建物2は構造物の外周を構成する外壁3を有しており、開口部5は外壁3を貫通して形成され、日射光が室内に取り込まれる。開口部5は嵌め込み式の窓ガラスを備えるものでもよく、引き違い式の窓ガラスを備えるものでもよい。
【0021】
日射遮蔽装置1を適用する建物2は、パネル状に構成された外壁3を貫通する開口部5を備えており、ガラス戸等を備えていない単なる開口で構成されている。本実施形態の日射遮蔽装置1は、開口部5の外側に2枚の平板状の遮光板を平行に設置している。具体的には、日射遮蔽装置1は、開口部5の外方に配置された内側遮光板10と、内側遮光板10と間隙d1を空けて内側遮光板10の外方に配置された外側遮光板20と、を備えている。外側遮光板20は、建物2の外壁3と間隙d2を空けて固定されている。
【0022】
本実施形態では、外側遮光板20は、アルミまたは鋼などの金属製の板材からなり、縦横に並べられた4枚の外側遮光板20A,20B,20C,20Dで構成されている。たとえば、1枚の遮光板は、縦4m、横1.5m程度で、その板厚は1~2mm程度である。外側遮光板20は、板材を貫通する複数の外側貫通孔21を有している。建物2の外壁3に形成された開口部5は、4枚の外側遮光板20と内側遮光板10の面積より、やや小さい正面視で長方形に形成されている。
【0023】
複数の外側貫通孔21は、たとえば1枚の外側遮光板20Aには、横方向に3個で、17段形成され、合計51個形成されている。本実施形態では、各外側貫通孔21は、円形状に形成され、図4に示すように、直径Woutは、50mm~400mm程度の範囲に設定されており、好ましくは、50mm~320mmの範囲であり、より好ましくは、50mm~270mmである。本実施形態では、たとえば、52.3mmに設定されている。なお、複数の外側貫通孔21は円形に限られるものでなく、正方形や菱形、星形等、適宜の形状に形成してもよい。なお、本明細書でいう、「横方向」とは、開口部5に沿った水平方向と同じ意味であり、「縦方向」とは、「横方向」と直交する鉛直方向と同じ意味である。
【0024】
複数の外側貫通孔21は、本実施形態では千鳥状のピッチで配列されている。千鳥状のピッチとは、図4に示すように、複数の外側貫通孔21が横方向および縦方向に一定のピッチで配列されるとともに、横方向および縦方向に沿って、隣り合う行および列の外側貫通孔21を半ピッチずらして、複数の外側貫通孔21が配列されているものである。
【0025】
具体的には、図3に示すように、特定の領域において、水平方向に沿って3つの外側貫通孔21がピッチPhで配列され、上下方向に隣り合う3つの外側貫通孔21の各群は、横方向に半ピッチ(Ph/2)ずれている。また、縦方向からみても、垂直方向に沿って8または9つの外側貫通孔21がピッチPvで配列されている。左右方向に隣り合う8つまたは9つの外側貫通孔21の各郡は、縦方向に、半ピッチ(Pv/2)ずれている。このようにして、鉛直方向および水平方向に沿って、矩形の四隅となるように、最も近い4つの外側貫通孔21を選択すると、その矩形の中央に、外側貫通孔21が形成される。
【0026】
内側遮光板10も、アルミまたは鋼などの金属製の板材からなり、縦横に並べられた4枚の内側遮光板10A,10B,10C,10Dで構成されている。たとえば、1枚の遮光板は、縦4m、横1.5m程度で、その板厚は、1~2mm程度である。内側遮光板10も、板材を貫通する複数の内側貫通孔11を有している。なお、外側遮光板20、内側遮光板10の寸法や板厚は、適宜設定できるものであり、前記の寸法や板厚に限られるものでない。
【0027】
複数の内側貫通孔11も、千鳥状のピッチで配列されている。各内側貫通孔11は、円形状であり、外側貫通孔21よりも小さいことを前提に、その大きさは、10~40mm程度である。複数の内側貫通孔11は、複数の外側貫通孔21と同じピッチで同一の位置に形成され、建物外側において、外側遮光板20の法線方向(水平方向)から見て、複数の外側貫通孔21の内側に形成されている。したがって、間隙d1を空けて平行に配列された2枚の外側遮光板20と内側遮光板10とを水平方向から見ると、複数の外側貫通孔21と複数の内側貫通孔11とは同一中心の二重丸に見えるように構成されている(図4(b)参照)。なお、複数の外側貫通孔21、複数の内側貫通孔11は円形に限られるものでなく、正方形や菱形、星形等、適宜の形状に形成してもよい。
【0028】
ここで、1つの外側貫通孔21と1つの内側貫通孔11との大きさ、複数の外側貫通孔21と複数の内側貫通孔11とのピッチ、および内側遮光板10と外側遮光板20との間隙等についての関係の一例を、以下に簡単に説明する。内側貫通孔11の直径Winを基準に、外側貫通孔の直径Wout、内側遮光板10と外側遮光板20との間隙d1、複数の内側貫通孔11と外側貫通孔21との水平方向のピッチPh、鉛直方向のピッチPvについて検討する。
【0029】
以上の点を考慮して検討すると、
d1=1.4×Win・・・(1)
Wout=Win×2×d1×tan30°=2.616×Win・・・(2)
Ph=Pv=8×Win・・・(3)
の関係式が想定される。
【0030】
各内側貫通孔11および各外側貫通孔21は、本実施形態では円形状に形成され、たとえば、複数の内側貫通孔11の直径Winを20mmに設定する。(1)式より、内側遮光板10と外側遮光板20との間隙d1は28mm、(2)式より、外側貫通孔21の直径Woutは約52.3mm、(3)式より、複数の外側貫通孔21および複数の内側貫通孔11の水平方向のピッチPh、Pvは160mmとなる。
【0031】
そして、内側貫通孔11の開口縁と、外側貫通孔21の開口縁と、の最短距離を結ぶ仮想線L1と、水平線L2との成す角度θは、20°以上、40°以下である(20°~40°の範囲内にある)ことが好ましく、(2)式では、30°に設定されている。この角度θは、内側貫通孔11の開口縁から、外側貫通孔21の開口縁への間隙d1に沿った広がり角度に相当する。
【0032】
人間の有効視野角度は遠方に向けて徐々に広がるものであり、室内側に位置する複数の内側貫通孔11の直径Winに対して、外方に位置する複数の外側貫通孔21の直径Woutを20°以上、40°以下の範囲の角度(例えば、30°)で、間隙d1にわたって、広がるように大きくする。このことで、建物2の室内から開口部5、内側貫通孔11、外側貫通孔21を通して、外方の景色を眺めるときに視野が広がるため、眺望性を高めることができる。
【0033】
なお、この角度θが20°未満では、内側貫通孔11から遠方に位置する外側貫通孔21の広がり具合が小さくなるため、十分な眺望性が得られない。一方、この角度θが40°を超えた場合には、外側貫通孔が大きすぎるため、内側貫通孔に日射光が通過しやすくなる。
【0034】
つぎに、本実施形態の日射遮蔽装置1の建物2への取付け構造について図5を参照して説明する。日射遮蔽装置1は、前記のように、建物2の開口部5の少なくとも一部を覆い、開口部5を通して建物2の室内に向かう日射光を遮蔽する装置である。日射遮蔽装置1は、開口部5の外方に配置された内側遮光板10と、内側遮光板10と間隙d1を空けて内側遮光板10の外方に配置された外側遮光板20とを備えている。
【0035】
さらに、外側遮光板20は、複数の外側貫通孔21を有しており、内側遮光板10は、外側貫通孔21よりも小さい複数の内側貫通孔11を有している。複数の内側貫通孔11と複数の外側貫通孔21とは、同じピッチで同じ位置に形成されているため、内側貫通孔11は、水平方向から見て、外側貫通孔21の内側に形成されている。本実施形態では、複数の外側貫通孔21および複数の内側貫通孔11は、ともに円形であり、建物の外方から、水平方向(外側貫通孔21の法線方向)に見た場合、小径の内側貫通孔11の周囲に大径の外側貫通孔21の周縁が位置して、同心の二重丸の形状に見える。
【0036】
建物2の開口部5に近い位置の4枚の内側遮光板10A,10B,10C,10Dには、上下にそれぞれ断面形状がL字状のアングル12が固定されている。アングル12は、それぞれの内側遮光板10の上下に2本固定され、合計で8本が固定されている。アングル12は開口部5の外周部に複数のブラケット13で固定されている。複数のブラケット13は、建物2を構成する外壁3にアンカーボルトで固定される。
【0037】
ブラケット13は、下方の内側遮光板10C,10Dの下部を支持する2つの下エンドブラケット13Aと、1つの下センターブラケット13B(図2参照)と、を含んでいる。また、ブラケット13は、4枚の内側遮光板10A,10B,10C,10Dの中央の連結部を支持する2つの中央エンドブラケット13Cと、1つの中央センターブラケット13Dと、を含んでいる。さらに、ブラケット13は、上方の内側遮光板10A,10Bの上部を支持する2つの上エンドブラケット13E、1つの上センターブラケット13Fと、を含んでいる。
【0038】
6つのエンドブラケット13A、13C,13Eは、アングル12の端部を支持するため1つのボルト孔が形成され、3つのセンターブラケット13B,13D,13Fは、アングル12の両端部を支持するため2つのボルト孔が形成されている。
【0039】
4枚の内側遮光板10A,10B,10C,10Dの外方には、4枚の外側遮光板20A,20B,20C,20Dを固定するために、断面形状がコ字状の溝型部材22が固定されている。すなわち、4枚の内側遮光板10A,10B,10C,10Dを外壁3に固定するための8本のアングル12と対向するように、8本の溝型部材22がボルトナットで固定される。8本の溝型部材22の外方に4枚の外側遮光板20A,20B,20C,20Dがボルトナットで固定される。
【0040】
このように、建物2の開口部5の周囲に固定された複数のブラケット13に8本のアングル12が水平方向に沿って配置され、アングル12に4枚の内側遮光板10がボルトナットで固定され、内側遮光板10と外壁3との間に間隙d2が形成される。また、アングル12に4枚の内側遮光板10を挟んだ状態で外方に8本の溝型部材22が配置され、4枚の外側遮光板20を挟んでボルトナットで固定される。これにより4枚の外側遮光板20と4枚の内側遮光板10との間に間隙d1が設定される。
【0041】
したがって、外壁3と4枚の内側遮光板10との間に間隙d2が形成され、4枚の内側遮光板10と4枚の外側遮光板20との間に間隙d1が形成されて、日射遮蔽装置1は建物2に固定される。このように、建物2の外壁3と内側遮光板10と外側遮光板20との間に間隙d1,d2の空間が形成されることで、断熱性能が向上し、日射光による建物2内部の温度上昇を抑制することができる。
【0042】
前記のように構成された本実施形態の日射遮蔽装置1の作用について、図6図7を参照して説明する。図6は、本実施形態の日射遮蔽装置1に日射光が照射したときの説明図と、視野角度の説明図、図7は、外側遮光板20に形成された1つの外側貫通孔21を通過する内側遮光板上の照射範囲の一例と、他の例の説明図である。
【0043】
図6において、日射光の一部は、日射遮蔽装置1の外側遮光板20の複数の外側貫通孔21を通過し、残りの日射光は、複数の外側貫通孔21の外周の部位に照射されるため、外側遮光板20を通過できない。言い換えると、日射光は、外側遮光板20の表面積に対して、複数の外側貫通孔21の合計の開口面積分の日射光のみが外側遮光板20を通過することができる。
【0044】
図6(a)は、年間を通して、年間の太陽高度のうち、太陽高度が最も高い日を含む所定の期間(夏至の日を含む期間)である。図6(a)では、図6(b)に比べて、太陽の位置は比較的高い位置にあり角度α1で入射する。この角度α1では、複数の外側貫通孔21を通過した日射光は、内側に位置する内側遮光板10の複数の内側貫通孔11の外周の部位で通過を阻止される。すなわち、この期間において、太陽の軌道により外側貫通孔21を通過する日射光の範囲が、内側貫通孔11から外れた内側遮光板10の表面のみを照射するように、外側貫通孔21と、内側貫通孔11とが形成されている。このため、内側遮光板10の複数の内側貫通孔11を通過することができない。
【0045】
一方、図6(b)では、たとえば冬季の期間などの太陽高度であり、図6(a)に比べて、太陽の位置は比較的低い位置にあり角度α2で入射する。この角度α2では、複数の外側貫通孔21を通過した日射光は、内側に位置する内側遮光板10の複数の内側貫通孔11の外周の部位で、一部の通過を阻止され、内側遮光板10の複数の内側貫通孔11を一部の日射光が通過する。図6(b)では、外側貫通孔21の通過日射量を断面積Saで示すと、内側貫通孔11の通過日射量は断面積Sbで示され、かなりの日射量の通過を阻止していることが分かる。このように、太陽の移動の軌跡により太陽の高さ位置が変化するため、時刻によって外側遮光板20の複数の外側貫通孔21を通過し、さらに内側遮光板10の複数の内側貫通孔11を通過する日射量が変化する。
【0046】
つぎに、建物2の室内から、外方の景色を眺望する場合について、図6(c)を参照して述べる。本実施形態の日射遮蔽装置1では、外側遮光板20の複数の外側貫通孔21に対して、内側遮光板10の複数の内側貫通孔11は小さいものである。人の目で外方を見るとき、小さい内側貫通孔11から比較的大きい外側貫通孔21を通して見るため、上部の内側貫通孔11aを通して上方の外側貫通孔21aを見るときの視野角度はβ1となる。また、下方の内側貫通孔11bを通して下方の外側貫通孔21bを見るときの視野角度はβ2となる。
【0047】
これに対して、比較となる図6(d)の場合は、内側遮光板10の内側貫通孔11と、外側遮光板25の複数の外側貫通孔26とは、同じ大きさになっている。この場合の視野角度は、上方の内側貫通孔11aと外側貫通孔26aの場合の視野角度β3は、図6(c)の視野角度β1と比較して小さくなっている。これは、外側貫通孔26が小さいため視野角度が遮られるからである。また、下方の内側貫通孔11bと下方の外側貫通孔26bを通して見る視野角度β4も図6(c)の視野角度β2と比較して小さくなっている。
【0048】
このように、内側貫通孔11と外側貫通孔21を通して外方を眺望する場合、小さい内側貫通孔11でも、外側貫通孔21が大きいときは視野角度が大きく取れて視界が広がり、眺望性を高めることができる。
【0049】
つぎに、図7を参照して、外側遮光板20の1つの外側貫通孔21を通過する照射範囲について説明する。図7の実施形態では、外側貫通孔26を通過する日射光の範囲が、内側貫通孔11から外れた内側遮光板11の表面を照射するように、外側貫通孔26と、前記内側貫通孔11とが形成されている。
【0050】
図7(a)は本実施形態の日射遮蔽装置1において、外側遮光板20を通過した日射光が、内側遮光板10の表面に照射される照射範囲30を示している。軌跡31は、太陽が最も高い位置にある夏至の日の太陽の軌道に合わせた日射中心の軌跡である。軌跡31の上下のほぼ平行な軌道31a、31bの間の領域は、夏至の日の外側貫通孔21を通過した日射光の照射領域である。
【0051】
なお、図7(a)で示す日射光の照射範囲を有する日射遮蔽装置1は、図4で示す外側貫通孔21の直径Woutが52.3mm、内側貫通孔11の直径Winが20mm、間隙d1が28mm、外側貫通孔21の開口縁と内側貫通孔11の開口縁との最短距離を結ぶ仮想線と、水平線とのなす角度、すなわち内側貫通孔11から外側貫通孔21に広がる広がり角度が30°に設定されている。
【0052】
図7(a)において、軌跡32は、太陽が中間位置にある春分、秋分の日の太陽の軌道に合わせた日射中心の軌跡を示している。軌跡32の上下のほぼ平行な軌道32a、32bの間の領域は、春分、秋分の時期の外側貫通孔21を通過した日射光の照射領域である。軌跡33は、太陽が最も低い位置にある冬至の軌跡を示している。これらの照射範囲から、春分の日から、夏至の日を経て、秋分の日までの1つの外側貫通孔21を通過した日射光の照射範囲は、照射範囲30となる。なお、本例では、日射を遮蔽する必要がなく、冬の日射光の室内への進入を阻止する必要がない冬至の日の日射中心の軌跡33に合わせた日射領域については考慮していない。
【0053】
このように、本実施形態では、その一例として上述した式(1)~(3)を満たすことで、年間を通して、春分の日から、夏至の日を経て、秋分の日までの期間において、この期間における太陽の軌道により外側貫通孔21を通過する日射光を、内側貫通孔11から外れた内側遮光板10の表面のみに照射させることができる。したがって、1つの外側貫通孔21を通過した日射光は、内周側の4つの内側貫通孔11を通過することができず、日射遮蔽装置1を通過した日射光は建物2の室内に到達することはできない。このため、春分の日から秋分の日までの期間において、日射光による建物2の室内の温度上昇を防ぐことができる。
【0054】
図7(b)は、日射遮蔽装置の他の例の、複数の外側貫通孔21と複数の内側貫通孔11を通過した日射光の照射範囲30を示している。この例では、図4で示す外側貫通孔21の直径Woutが314mm、内側貫通孔11の直径Winが120mm、間隙d1が168mm、外側貫通孔21の開口縁と内側貫通孔11の開口縁との最短距離を結ぶ仮想線と、水平線とのなす角度が30°に設定されている。また、複数の外側貫通孔21および複数の内側貫通孔11の水平方向のピッチPh、Pv=960mmに設定されている。
【0055】
図7(b)に示す、日射遮蔽装置の他の例であっても、図7(a)と同様に、年間を通して、春分の日から秋分の日までの期間において、この期間における太陽の軌道により外側貫通孔21を通過する日射光を、内側貫通孔11から外れた内側遮光板10の表面のみに照射させることができる。
【0056】
つぎに、本発明の他の実施形態について、図8を参照して説明する。図8は、他の実施形態の日射遮蔽装置を模式的に示す正面図である。図8に示す日射遮蔽装置1Aの特徴構成は、前記した日射遮蔽装置1と比較して、外側貫通孔と内側貫通孔の配列が異なることを特徴としている。
【0057】
すなわち、日射遮蔽装置1では、外側遮光板20に形成された複数の外側貫通孔21と、内側遮光板10に形成された複数の内側貫通孔11は千鳥状のピッチで配列されているのに対して、日射遮蔽装置1Aでは、複数の内側貫通孔11および複数の外側貫通孔21は、水平方向に等間隔に配列されるとともに鉛直方向に等間隔に配列され、鉛直方向のピッチに対して水平方向のピッチが小さく設定されている。他の実質的に同じ構成については、同じ参照番号を付して説明を省略する。
【0058】
図8において、日射遮蔽装置1Aは、建物2の開口部5の外方に配置された4枚の内側遮光板と10E,10F,10G,10Hと、4枚の内側遮光板と間隙d1を空けて内側遮光板の外方に配置された4枚の外側遮光板20E,20F,20G,20Hとを備え、外側遮光板は、複数の外側貫通孔21を有しており、内側遮光板は、外側貫通孔21よりも小さい複数の内側貫通孔11を有しており、内側貫通孔11は、水平方向から見て、外側貫通孔21の内側に形成されている。
【0059】
そして、日射遮蔽装置1Aは、複数の内側貫通孔11および複数の外側貫通孔21は、水平方向にピッチPh1で等間隔に配列されるとともに、鉛直方向にピッチPv1で等間隔に配列され、鉛直方向のピッチPv1に対して水平方向のピッチPh1が小さく設定されるものである。具体的には、垂直方向のピッチPv1が500mmであり、水平方向のピッチPh1は250mmに設定されている。また、内側貫通孔11の直径が62.5mmであり、外側貫通孔21の直径は164mmに設定されている。
【0060】
このように構成された他の実施形態の日射遮蔽装置1Aでは、前記の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。具体的には、内側遮光板10の複数の小さい内側貫通孔11と外側遮光板20の複数の大きい外側貫通孔21を通して、室内より外方を広い視野角で眺望することができる。また、外側遮光板20の複数の大きい外側貫通孔21を通過した日射光は、内側遮光板10の複数の小さい内側貫通孔11を除く周囲の部位で遮光され易くなるため、室内に入り込む日射量を抑制することができる。
【0061】
さらに、鉛直方向のピッチPv1を広く、水平方向のピッチPh1を狭く設定し、複数の外側貫通孔21および複数の内側貫通孔11を配列することで、日射を効率よく遮光して眺望性を高めることができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更を行うことができる。本発明は、或る実施形態の構成を他の実施形態の構成に追加したり、或る実施形態の構成を他の実施形態と置換したり、或る実施形態の構成の一部を削除したりすることができる。
【0063】
例えば、日射遮蔽装置を構成する内側遮光板と、外側遮光板を建物に固定する固定手段として、アングルと溝型部材をブラケットを介して外壁に固定する例を示したが、これに限られるものでなく、他の固定手段を適用することができる。また、複数の内側貫通孔および複数の外側貫通孔の直径は所定の寸法を示したが、複数の内側貫通孔の直径が複数の外側貫通孔の直径より小さいものであれば、寸法は適宜設定できるものである。
【符号の説明】
【0064】
1:日射遮蔽装置、2:建物、3:外壁、5:開口部、10:内側遮光板、11:複数の内側貫通孔、20:外側遮光板、21:複数の外側貫通孔、Wout:外側貫通孔の直径、Win:内側貫通孔の直径、θ:内側貫通孔から外側貫通孔への広がり角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8