(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049376
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】木質構造、門型架構部材、施工方法及び製造方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/26 20060101AFI20230403BHJP
E04B 1/48 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
E04B1/26 E
E04B1/48 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159073
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】中島 俊介
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AB12
2E125AC24
2E125AG13
2E125BB08
2E125BD01
2E125BE07
2E125CA81
(57)【要約】
【課題】施工の省力化を図ること。
【解決手段】本開示に係る木質構造は、一対の木質柱と、前記一対の木質柱の間に横架された木質梁とを有する門型架構部材を備える。一対の前記木質柱及び前記木質梁は、一枚の木質系基材によって一体的に構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の木質柱と、前記一対の木質柱の間に横架された木質梁とを有する門型架構部材を備え、
一対の前記木質柱及び前記木質梁は、一枚の木質系基材によって一体的に構成されていることを特徴とする木質構造。
【請求項2】
請求項1に記載の木質構造であって、
前記木質系基材は、繊維方向が前記木質柱に平行な板材である第1ラミナと、繊維方向が前記木質梁に平行な板材である第2ラミナとを積層配置させた直交集成板であることを特徴とする木質構造。
【請求項3】
請求項2に記載の木質構造であって、
前記木質柱と前記木質梁は、共通の前記第2ラミナを含むことを特徴とする木質構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の木質構造であって、
前記木質柱と前記木質梁との連結部に埋設部材が埋設されていることを特徴とする木質構造。
【請求項5】
請求項4に記載の木質構造であって、
前記埋設部材は、前記木質梁と平行な方向に対して傾斜していることを特徴とする木質構造。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の木質構造であって、
前記木質系基材は、繊維方向が前記木質柱に平行な板材である第1ラミナと、繊維方向が前記木質梁に平行な板材である第2ラミナとを積層配置させた直交集成板であり、
前記埋設部材を挿入する穴は、前記第1ラミナに設けられていることを特徴とする木質構造。
【請求項7】
請求項1~6に記載の木質構造であって、
2つの前記門型架構部材が上下方向に配置されており、
2つの前記門型架構部材の前記木質柱の間に、階高を調整する調整部材が配置されていることを特徴とする木質構造。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の木質構造であって、
前記木質柱の側面に、前記木質柱を補強する補強材が配置されていることを特徴とする木質構造。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の木質構造であって、
2つの前記門型架構部材が桁行方向に配置されており、
2つの前記門型架構部材の前記木質柱の間に、桁部材が配置されていることを特徴とする木質構造。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の木質構造であって、
桁行方向をX方向とし、梁間方向をY方向とするとき、
2つの前記門型架構部材がY方向の異なる位置に配置されており、
Y方向プラス側に配置された前記門型架構部材のY方向マイナス側の前記木質柱と、Y方向マイナス側に配置された前記門型架構部材のY方向プラス側の前記木質柱との間に、桁部材が配置されていることを特徴とする木質構造。
【請求項11】
一対の木質柱と、
前記一対の木質柱の間に横架された木質梁と
を備え、
一対の前記木質柱及び前記木質梁は、一枚の木質系基材によって一体的に構成されていることを特徴とする門型架構部材。
【請求項12】
請求項11に記載の門型架構部材を施工現場に運搬する工程と、
前記施工現場において一対の前記木質柱を両脚として前記木質梁を支持するように前記門型架構部材を自立させる工程と
を行う木質構造の施工方法。
【請求項13】
木質系基材を用意する工程と、
一対の木質柱と、一対の前記木質柱の間に横架された木質梁とを一枚の前記木質系基材から切り出すことによって、一対の前記木質柱及び前記木質梁が一枚の木質系基材によって一体的に構成された門型架構部材を製造する工程と
を備える門型架構部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質構造、門型架構部材、施工方法及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木造の柱と梁の接合部を金属製の接合部材で接合することが知られている。但し、金具を用いて木造の柱と梁を接合した場合、柱と梁の接合部の強度が低下する。このため、特許文献1では、柱と梁の接合部の形状に合わせて単板から交差部材を切り出し、交差部材を柱又は梁に接合することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の交差部材は、柱と梁の接合部に用いる部材であるため、柱と梁の接合部は、従来通りに構成する必要があるため、柱と梁の組み立てる建て方作業の省力化が難しい。
【0005】
本発明は、建て方作業時の省力化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するための本発明は、一対の木質柱と、前記一対の木質柱の間に横架された木質梁とを有する門型架構部材を備え、一対の前記木質柱及び前記木質梁は、一枚の木質系基材によって一体的に構成されていることを特徴とする木質構造である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、建て方作業時の省力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1Aは、門型架構部材10の斜視図である。
図1Bは、木質柱11と木質梁12の連結部13の拡大図である。
【
図3】
図3は、門型架構部材10の製造方法の説明図である。
【
図5】
図5Aは、埋設部材15の説明図である。
図5Bは、別の埋設部材15の説明図である。
【
図6】
図6は、上下方向(Z方向)に2つの門型架構部材10を連結した木質構造100の説明図である。
【
図8】
図8Aは、木質柱11の断面図である。
図8Bは、調整部材20の断面図である。
【
図9】
図9は、補強材30Aを用いた接合部11Aの説明図である。
【
図11】
図11Aは、補強材30Aの断面図である。
図11Bは、補強材30Aが取り付けられた位置における木質柱11の断面図である。
図11Cは、補強材30Aが取り付けられた位置における調整部材20の断面図である。
【
図14】
図14Aは、木質柱11と調整部材20との接合部11Aの第2変形例の説明図である。
図14Bは、木質柱11と調整部材20との接合部11Aの第3変形例の説明図である。
【
図15】
図15は、桁行方向(X方向)に複数の門型架構部材10を配置した木質構造100の説明図である。
【
図16】
図16は、木質柱11と桁部材40との接合部の説明図である。
【
図17】
図17は、梁間方向(Y方向)に複数の門型架構部材10を配置した木質構造100の説明図である。
【
図18】
図18Aは、第1変形例の門型架構部材10の説明図である。
図18Bは、第2変形例の門型架構部材10の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
一対の木質柱と、前記一対の木質柱の間に横架された木質梁とを有する門型架構部材を備え、一対の前記木質柱及び前記木質梁は、一枚の木質系基材によって一体的に構成されていることを特徴とする木質構造が明らかとなる。このような木質構造によれば、建て方作業時の省力化を図ることができる。
【0011】
前記木質系基材は、繊維方向が前記木質柱に平行な板材である第1ラミナと、繊維方向が前記木質梁に平行な板材である第2ラミナとを積層配置させた直交集成板であることが望ましい。これにより、柱と梁の連結部の剛性を高めることができる。
【0012】
前記木質柱と前記木質梁は、共通の前記第2ラミナを含むことが望ましい。これにより、木質柱と木質梁との連結が強固になり、連結部の剛性を更に高めることができる。
【0013】
前記木質柱と前記木質梁との連結部に埋設部材が埋設されていることが望ましい。これにより、連結部の割れを抑制できる。
【0014】
前記埋設部材は、前記木質梁と平行な方向に対して傾斜していることが望ましい。これにより、連結部の耐力を向上させることができる。
【0015】
前記木質系基材は、繊維方向が前記木質柱に平行な板材である第1ラミナと、繊維方向が前記木質梁に平行な板材である第2ラミナとを積層配置させた直交集成板であり、
前記埋設部材を挿入する穴は、前記第1ラミナに設けられていることが望ましい。これにより、木質梁の強度を維持することができる。
【0016】
2つの前記門型架構部材が上下方向に配置されており、2つの前記門型架構部材の前記木質柱の間に、階高を調整する調整部材が配置されていることが望ましい。これにより、木質柱の長さが直交集成板の寸法の制約を受けても、階高の不足を補うことができる。
【0017】
前記木質柱の側面に、前記木質柱を補強する補強材が配置されていることが望ましい。これにより、木質構造の柱の強度を高めることができる。
【0018】
2つの前記門型架構部材が桁行方向に配置されており、2つの前記門型架構部材の前記木質柱の間に、桁部材が配置されていることが望ましい。これにより、2つの門型架構部材の木質梁の間に床材を載置することが可能になる。
【0019】
桁行方向をX方向とし、梁間方向をY方向とするとき、2つの前記門型架構部材がY方向の異なる位置に配置されており、Y方向プラス側に配置された前記門型架構部材のY方向マイナス側の前記木質柱と、Y方向マイナス側に配置された前記門型架構部材のY方向プラス側の前記木質柱との間に、桁部材が配置されていることが望ましい。これにより、梁間方向に広い木質構造を構成できる。
【0020】
一対の木質柱と、前記一対の木質柱の間に横架された木質梁とを備え、一対の前記木質柱及び前記木質梁は、一枚の木質系基材によって一体的に構成されていることを特徴とする門型架構部材が明らかとなる。このような門型架構部材によれば、建て方作業時の省力化を図ることができる。
【0021】
上記の門型架構部材を施工現場に運搬する工程と、前記施工現場において一対の前記木質柱を両脚として前記木質梁を支持するように前記門型架構部材を自立させる工程とを行う木質構造の施工方法が明らかとなる。このような施工方法によれば、建て方作業時の省力化を図ることができる。
【0022】
木質系基材を用意する工程と、一対の木質柱と、一対の前記木質柱の間に横架された木質梁とを一枚の前記木質系基材から切り出すことによって、一対の前記木質柱及び前記木質梁が一枚の木質系基材によって一体的に構成された門型架構部材を製造する工程とを備える門型架構部材の製造方法が明らかとなる。このような製造方法によれば、建て方作業時の省力化を図ることが可能な門型架構部材を製造できる。
【0023】
===実施形態===
<門型架構部材>
図1Aは、門型架構部材10の斜視図である。
図1Bは、木質柱11と木質梁12の連結部13の拡大図である。
【0024】
門型架構部材10は、木造の構造物(木質構造)の柱及び梁を構成するための部材(架構部材)である。後述するように、複数の門型架構部材10を組み合わせることによって、木質構造100(後述;
図6、
図9、
図15、
図17参照)が構成されることになる。門型架構部材10は、一枚の木質系基材で構成されている。なお、木質系基材とは木質系の基材(もとになる材料)を意味し、例えば無垢材やひき板のような木材、集成材、合板などが含まれる。なお、木質系基材は、主な材料が木質系であればよく、全てが木質系の材料でなくてもよく、例えば金属や樹脂などの非木質系の材料が補助的に用いられていても良い。ここでは、門型架構部材10を構成する木質系基材として、直交集成板が用いられている。木質系基材として直交集成板が用いられることによって、木質系基材の大型化を図ることができ、門型架構部材10の大型化を図ることができる。
【0025】
図2A及び
図2Bは、直交集成板1の構造の説明図である。
図2Aは、直交集成板1の分解図である。
図2Bは、直交集成板1の斜視図である。ここでは、5層7プライの直交集成板1について説明する。
【0026】
直交集成板1は、繊維方向が直交するようにラミナ3(ひき板;板材)を積層配置させた木質系基材である。直交集成板1は、CLT(Cross Laminated Timber)と呼ばれることもある。複数のラミナ3を幅方向に並べた層を繊維方向が直交するように積層させることによって、直交集成板1が構成される。直交集成板1を構成するラミナ3は接着剤により固定されている。図中の直交集成板1は、繊維方向が直交する5層を積層させて構成されている。また、複数のラミナ3を幅方向に並べてプライ(段)が構成され、繊維方向が直交するように複数のプライを積層させることによって、直交集成板1が構成される。繊維方向が平行なプライを連続させて、1つの層を複数(例えば2段)のプライで構成しても良い。例えば、図中の直交集成板1は、外側の層(外層)が2段のプライで構成されている。なお、図中のラミナ3は、長手方向に1枚の板材(ひき板)で構成されている。但し、ラミナ3は、長手方向に複数枚の板材片を継ぎ合わせて構成されていても良い。長手方向に板材片を継ぎ合わせてラミナ3を構成した場合には、継ぎ目が幅方向に隣接しないように、複数のラミナ3を幅方向に並べてプライを構成することが望ましい。
【0027】
図2A及び
図2Bに示すように、外層を構成するプライ(又はラミナ3)の繊維方向を「強軸方向」と呼び、強軸方向に対して直交する方向を「弱軸方向」と呼ぶ。また、
図2Aに示すように、プライの繊維方向が強軸方向に平行な層を「平行層」と呼び、プライの繊維方向が強軸方向と直交する層を「直交層」と呼ぶ。直交集成板1は、平行層と直交層とを互い違いに積層させて構成されている。
【0028】
図1A及び
図1Bに示す門型架構部材10は、5層7プライの直交集成板1で構成されている。但し、門型架構部材10を構成する直交集成板1は、5層7プライの直交集成板1に限られるものではなく、他の層構造の直交集成板でも良い。また、門型架構部材10を構成する木質系基材は直交集成板1でなくても良い。
【0029】
図1Aに示すように、門型架構部材10は、一対の木質柱11,11と、木質梁12とを有する。門型架構部材10は、一対の木質柱11,11及び木質梁12によって門型に構成されている。このため、例えばT字型、L字型又は十字型の形状に構成される場合と比べると、門型架構部材10は、一対の木質柱11,11を両脚として木質梁12を支持するように自立させ易い形状であるため(後述;
図4参照)、建て方作業を省力化させることが可能である。また、門型架構部材10は、一枚の直交集成板1(単一の直交集成板1)で構成されており、一対の木質柱11,11及び木質梁12は直交集成板1によって一体的に構成されている。このため、本実施形態では、木質柱11と木質梁12との連結部13の剛性を高めることができる。
【0030】
以下の説明では、木質柱11に平行なラミナ3のことを第1ラミナ3Aと呼び、第1ラミナ3Aと直交するラミナ3(木質梁12に平行なラミナ3)のことを第2ラミナ3Bと呼ぶことがある。第1ラミナ3Aは、繊維方向が強軸方向と直交するラミナ3であり、直交層を構成するラミナ3である。第2ラミナ3Bは、繊維方向が強軸方向に平行なラミナ3であり、平行層を構成するラミナ3である。また、第1ラミナ3Aは、繊維方向が木質柱11に平行なラミナ3であり、第2ラミナ3Bは、繊維方向が木質梁12に平行なラミナ3である。
【0031】
また、
図1Aに示すように、各方向を定める。木質柱11に平行な方向をZ方向とし、木質梁12に平行な方向をY方向とし、Y方向及びZ方向に垂直な方向をX方向とする。なお、X方向のことを桁行方向と呼ぶことがある。また、Y方向のことを梁間方向と呼ぶことがある。また、Z方向のことを上下方向と呼ぶことがある。
【0032】
木質柱11は、木造の柱を構成する部位である。木質柱11は、直交集成板1で構成されている。このため、木質柱11は、繊維方向が直交するように積層配置された複数のラミナ3(第1ラミナ3A、第2ラミナ3B)で構成されている。一対の木質柱11,11は、間隔をあけて平行に配置されている。
【0033】
木質梁12は、木造の梁を構成する部位である。木質梁12は、一対の木質柱11,11の間に横架されている(掛け渡されている)。木質梁12は、木質柱11と同様に、直交集成板1で構成されている。このため、木質梁12も、木質柱11と同様に、繊維方向が直交するように積層配置された複数のラミナ3(第1ラミナ3A、第2ラミナ3B)で構成されている。木質梁12の両端には、それぞれ木質柱11が設けられている。
【0034】
本実施形態の門型架構部材10は、第1ラミナ3Aで構成された層と、第2ラミナ3Bで構成された層とを積層して構成された一枚の直交集成板1によって構成されている。本実施形態では、一対の木質柱11,11及び木質梁12が一枚の直交集成板1によって一体的に構成されることによって、木質柱11と木質梁12とが接合部を設けずに一体的に連結された構造になるため、木質柱11と木質梁12との連結部13(木質柱11と木質梁12との境界部)の剛性を高めることができる。
【0035】
また、門型架構部材10は、木質梁12に沿った方向を強軸方向とする直交集成板1で構成されている。
図1Bには、外層を構成するラミナ3(平行層を構成するラミナ3;第2ラミナ3B)の繊維方向が木質梁12に沿っていることが示されている。つまり、第2ラミナ3Bの繊維方向は、直交集成板1の強軸方向に平行である。なお、第1ラミナ3Aの繊維方向は、直交集成板1の強軸方向に直交する。木質梁12に沿った方向を強軸方向とする直交集成板1によって門型架構部材10が構成されることによって、木質梁12の強度を高めることができる。
【0036】
本実施形態では、木質柱11と木質梁12は、共通の第2ラミナ3Bを含んでいる。
図1Bには、門型架構部材10の外層を構成する第2ラミナ3Bが、木質柱11と木質梁12を構成しており、木質柱11と木質梁12が共通の第2ラミナ3Bを含むことが示されている。但し、木質柱11と木質梁12を構成する共通の第2ラミナ3Bは、門型架構部材10の表面に配置されている第2ラミナ3Bに限られるものではなく、門型架構部材10の内部に配置されている第2ラミナ3B(直交集成板1の内層を構成する第2ラミナ3B)でも良い。木質柱11と木質梁12が共通の第2ラミナ3Bを含むように構成されることによって、木質柱11と木質梁12との連結が強固になるため、連結部13の剛性を更に高めることができる。
【0037】
図3は、門型架構部材10の製造方法の説明図である。
上図に示すように、1枚の直交集成板1を用意する。例えば、直交集成板1の強軸方向の寸法は、数メートルから十数メートル程度であり、弱軸方向の寸法は数メートル程度である。
次に、下図に示すように、一枚の直交集成板1から門型架構部材10が切り出される。なお、直交集成板1の弱軸方向に沿うように木質柱11が切り出され、直交集成板1の強軸方向に沿うように木質梁12が切り出されことになる。切り出された門型架構部材10は、一対の木質柱11,11及び木質梁12によって門型に構成されている。一枚の直交集成板1から門型架構部材10が切り出されることによって、木質柱11及び木質梁12が接合部を設けずに一体的に連結された構造になる。このため、木質柱11と木質梁12との連結部13の剛性を高めることができる。また、工場で製造した門型架構部材10をトラックなどで施工現場へ運搬することができ、施工現場で木質柱11と木質梁12とを接合する必要が無くなるので、施工現場での工程数を削減することができる。
【0038】
図4は、建て方作業時の様子の説明図である。
上図に示すように、門型架構部材10が施工現場に運搬される。既に説明した通り、本実施形態の門型架構部材10は、一対の木質柱11,11及び木質梁12によって門型に構成されている。このため、門型架構部材10は、一対の木質柱11,11を両脚として木質梁12を支持するように自立可能な形状である。下図に示すように、施工現場において一対の木質柱11,11を立てることによって、一対の木質柱11,11を両脚として木質梁12を支持するように門型架構部材10を自立させて、木質構造100(後述)の建て方を行うことが可能である。加えて、本実施形態の門型架構部材10は、比較的軽量な木質系基材で構成されるため、鉄筋コンクリートなどで架構部材が構成される場合と比べると、門型架構部材10が軽量化されている。このように、門型架構部材10が自立可能であることと、門型架構部材10が軽量化されていることとが相乗的に作用することによって、木質構造100(後述)の建て方作業時に、例えばクレーンなどの設備の小型化を図ることが可能になり、建て方作業時の省力化が可能になる。
【0039】
ところで、本実施形態では、門型架構部材10が木質系基材で構成されているため、また、木質柱11と木質梁12とが剛に連結されているため、連結部13が割れるおそれがある。そこで、次に説明する埋設部材15を設けることによって、連結部13の割裂を抑制しても良い。
【0040】
【0041】
埋設部材15は、木質柱11と木質梁12との連結部13に埋設される部材である。埋設部材15は、門型架構部材10にかかる応力の一部を担うことによって、門型架構部材10を補強する部材である。埋設部材15は、木質柱11と木質梁12との間をまたぐように配置されている。つまり、埋設部材15の一端が木質柱11に配置され、埋設部材15の他端が木質梁12に配置され、これにより、埋設部材15の中央部が木質柱11と木質梁12との境界部に配置されている。このように埋設部材15が木質柱11と木質梁12との間に配置されることにより、木質柱11と木質梁12との連結部13に割れが生じることを抑制できる(門型架構部材10の耐力を向上させることができる)。このため、埋設部材15は、門型架構部材10の割裂防止材として機能する。埋設部材15は、例えば、金属製の棒状の部材であり、門型架構部材10に埋設されている。金属製の埋設部材15が門型架構部材10の内部に埋設されることによって、門型架構部材10の木質系の外観を維持することができる。
【0042】
図5Aに示す埋設部材15は、木質梁12に平行に配置されている。但し、埋設部材15は、次に示すように、木質梁12に平行でなくても良い。
【0043】
図5Bは、別の埋設部材15の説明図である。
図5Bに示す埋設部材15は、木質梁12に対して斜めに配置されている。また、上下に一対の埋設部材15は、異なる方向に斜めに配置されている。これにより、木質柱11と木質梁12との間に作用するモーメント力に対する連結部13の耐力を向上させることができる。
【0044】
図5A及び
図5Bに示すように、木質梁12とは反対側の木質柱11の側面から木質梁12に向かって穴が設けられている。そして、この穴に棒状の埋設部材15が挿入されることによって、埋設部材15を門型架構部材10の内部に埋設させることができる。なお、埋設部材15を挿入した穴の内壁と埋設部材15との間の空隙には接着剤が充填され、接着剤が硬化することによって、埋設部材15が門型架構部材10と一体化する(この結果、接着剤の付着力と埋設部材15の耐力とによって、木質柱11と木質梁12との耐力を向上させることができる。
【0045】
ところで、いわゆるGIR(Glued in Rod)接合では、接合される2つの部材に穴を設け、この穴に棒状部材を挿入させ、棒状部材の周囲の空隙に充填した接着剤を硬化させることが行われている。
図5A及び
図5Bに示す埋設部材15の埋設方法は、GIR接合における棒状部材の埋設方法とほぼ同じである。但し、GIR接合は2つの部材の接合に適用されるのに対し、
図5A及び
図5Bに示す埋設部材15の埋設は、一枚の直交集成板1で構成された木質柱11と木質梁12との間の連結部13に適用される点で異なっている。
【0046】
埋設部材15を挿入するための穴は、第1ラミナ3A(木質柱11に平行なラミナ3)に設けられることが望ましい。これにより、木質梁12に平行な繊維を損ねずに済むため、木質梁12の強度を維持することができる。また、埋設部材15を挿入した穴に木栓を挿入することが望ましい。これにより、埋設部材15の露出を防ぐことができるため、門型架構部材10の木質系の外観を維持することができる。
【0047】
<木質構造(1)>
図6は、上下方向(Z方向)に2つの門型架構部材10を連結した木質構造100の説明図である。
図7は、
図6に示す木質構造100の分解図である。木質構造100の施工方法では、前述の門型架構部材10を用意する工程と、門型架構部材10を用いて木質構造100を組み立てることが行われることになる。図中の木質構造100は、2つの門型架構部材10と、調整部材20とを有する。ここでは、2つの門型架構部材10は、上下方向に並んで配置されている。
【0048】
門型架構部材10は、既に説明した通り、一対の木質柱11,11と、木質梁12とを有する。門型架構部材10は、
図6に示すように木質柱11が上下方向になるように立設させた状態で木質構造100を構成する。門型架構部材10は自立可能な形状であるため、木質構造100の建て方作業の省力化を図ることができる。
【0049】
木質梁12は床材50を支持することになるため、2つの門型架構部材10を上下に連結した場合、木質構造100の階高は、上側の門型架構部材10の木質梁12と、下側の門型架構部材10の木質梁12との間隔になる。一方、
図3Bに示すように、木質柱11の長さは直交集成板1の弱軸方向の寸法の制約を受けるため(直交集成板1の弱軸方向の寸法以下になるため)、門型架構部材10の木質柱11の長さだけでは階高が不足することがある。そこで、門型架構部材10の木質柱11の長さだけでは階高が不足する場合には、
図6に示すように、2つの門型架構部材10の間に調整部材20を配置する。但し、門型架構部材10の木質柱11の長さだけで十分な階高になる場合には、2つの門型架構部材10の間に調整部材20を介在させずに、2つの門型架構部材10の木質柱11同士を直接接合しても良い。
【0050】
調整部材20は、階高を調整する部材である。調整部材20は、上側の門型架構部材10の木質柱11と、下側の門型架構部材10の木質柱11との間に配置される。これにより、調整部材20によって、上側の門型架構部材10の木質梁12と、下側の門型架構部材10の木質梁12との間隔を調整することが可能である。上下に並ぶ門型架構部材10の間に調整部材20が配置されることによって、仮に木質柱11の長さが直交集成板1の寸法の制約を受けていても、階高の不足を補うことができる。ここでは、調整部材20は、直交集成板(
図2B参照)で構成されている。但し、調整部材20は、例えば無垢材、積層材、集成材などの直交集成板以外の木質系基材で構成されても良い。
【0051】
なお、調整部材20は、門型架構部材10と同様に、木質系材料で構成されることが望ましい。これにより、木質系の外観を維持することができる。また、調整部材20は、門型架構部材10と同様に直交集成板で構成されることが望ましい。これにより、木質構造100の外観の統一させることができる。
【0052】
図8Aは、木質柱11の断面図である。
図8Bは、調整部材20の断面図である。木質柱11と調整部材20との接合部11Aにおいて、互いの端面を合わせるため、木質柱11の断面の外形と、調整部材20の断面の外形は、ほぼ同じである。
【0053】
既に説明したように、門型架構部材10は、木質梁12に沿った方向を強軸方向とする直交集成板1で構成されている。この結果、
図8Aに示すように、木質柱11の断面には、繊維方向が木質柱11に平行な第1ラミナ3Aよりも、繊維方向が木質柱11に垂直な第2ラミナ3Bの方が多く存在する。
一方、
図8Bに示すように、調整部材20は、木質柱11に沿った方向を強軸方向とする直交集成板1で構成されている。この結果、調整部材20の断面には、木質柱11の断面と比べて、繊維方向が木質柱11に平行なラミナ3が多く存在する。このような調整部材20を用いることによって、木質構造100の柱(木質柱11と調整部材20とによって構成された柱)の強度を向上させることができる。
【0054】
図6に示す木質柱11と調整部材20との接合部11Aは、接着剤による接合によって構成されている。木質構造100の施工現場において接合面(木質柱11の端面又は調整部材20の端面)に接着剤(例えばエポキシ樹脂)が塗布され、木質柱11と調整部材20が接着剤によって接合されることになる。但し、接着剤による接合では不十分な場合には、接合部11Aを接合部材(後述)で補強しても良い。
【0055】
図9は、補強材30Aを用いた木質構造100の説明図である。
図10は、
図9に示す木質構造100の分解図である。
図11Aは、補強材30Aの断面図である。
図11Bは、補強材30Aが取り付けられた位置における木質柱11の断面図である。
【0056】
補強材30Aは、木質柱11の側面に配置される板状の部材である。補強材30Aは、木質柱11の強度を補強する部材である。なお、図中の補強材30Aは、木質柱11の接合部11Aを接合する接合部材としても機能する(後述)。ここでは、補強材30Aは、直交集成板1で構成されている。但し、補強材30Aは、例えば単板積層材(LVL:Laminated Veneer Lumber)などの直交集成板以外の木質系基材で構成されても良い。
【0057】
なお、補強材30Aは、門型架構部材10(及び調整部材20)と同様に、木質系材料で構成されることが望ましい。これにより、木質系の外観を維持することができる。また、補強材30Aは、門型架構部材10と同様に直交集成板で構成されることが望ましい。これにより、木質構造100の外観の統一させることができる。
【0058】
図11Aに示すように、補強材30Aは、木質柱11に沿った方向を強軸方向とする直交集成板1で構成されている。ここでは、補強材30Aは、3層3プライの直交集成板1で構成されており、外層を構成するラミナ3の繊維方向は木質柱11に平行な方向である(内層を構成するラミナ3の繊維方向は木質柱11に垂直な方向である)。
図11Aに示すように、補強材30Aの断面には、繊維方向が木質柱11に平行なラミナ3が多く存在する。このため、
図11Bに示すように、繊維方向が木質柱11に平行なラミナ3を多く存在させることができる。このように、木質柱11に沿った方向を強軸方向とする直交集成板1を用いて補強材30Aが木質柱11の側面に配置されることによって、木質構造100の柱の強度を向上させることができる。
【0059】
また、
図9(及び
図12)に示すように、補強材30Aは、木質柱11の接合部11A(ここでは木質柱11と調整部材20との接合部11A)を上下方向にまたぐように配置されている。これにより、補強材30Aは、木質柱11と調整部材20を接合する接合部材(言い換えると、木質柱11の接合部11Aを補強する接合部材)としても機能する。なお、調整部材20を介在させずに上下の木質柱11同士を直接接合する場合には、補強材30Aは、木質柱11と木質柱11との接合部11Aを上下方向にまたぐように配置されても良い(木質柱11同士の接合部11Aを補強しても良い)。このように補強材30Aが木質柱11の接合部11Aをまたぐように配置されることによって、木質柱11の接合部11Aが補強され、接合部11Aに大きな力(引っ張り力やせん断力)がかかることが許容される。
【0060】
なお、補強材30Aは、木質柱11の接合部11Aをまたぐように配置されていなくても良い。このような場合であっても、補強材30Aが木質柱11の側面に配置されていれば、補強材30Aは、木質柱11を補強することが可能である。
【0061】
図11Cは、補強材30Aが取り付けられた位置における調整部材20の断面図である。
図11Cに示すように、調整部材20の断面においても、繊維方向が木質柱11に平行なラミナ3を多く存在させることができる。このように、木質柱11に沿った方向を強軸方向とする直交集成板1を用いて補強材30Aが調整部材20の側面に配置されることによって、木質構造100の柱(調整部材20)の強度を向上させることができる。
【0062】
図11B及び
図11Cに示すように、補強材30Aは、木質柱11や調整部材20を構成する直交集成板1の積層方向に積層させるように、木質柱11や調整部材20の側面に配置されることが望ましい。これにより、ボルトやビス(後述)等によって補強材30Aが木質柱11の側面に取り付けられるときに、直交集成板1の割裂を抑制することができる。
【0063】
図9に示すように、柱の側面には、それぞれ上下に2枚の補強材30Aが取り付けられている。上下に配置された2枚の補強材30Aのうち、上側の補強材30Aは、調整部材20の上側の接合部11Aをまたぐように配置されており、下側の補強材30Aは、調整部材20の下側の接合部11Aをまたぐように配置されている。このように2枚の補強材30Aを上下に配置する場合には、
図9に示すように、補強材30Aの端面同士が突き合わされていることが望ましい。これにより、柱の側面を平らにすることができ、柱の側面に段差が形成されることを抑制できる。但し、上側の補強材30Aの端面と、下側の補強材30Aの端面との間に隙間が形成されても良い。
【0064】
【0065】
ここでは、補強材30Aと木質柱11(又は調整部材20)とを結合する結合部材として、通しボルト31や引き寄せビス32が用いられている。通しボルト31は、一対の補強材30Aとその間の木質柱11とを貫通する貫通穴に挿入されており、通しボルト31の一端にナットが取り付けられている。通しボルト31(及びナット)によって一対の補強材30Aと木質柱11とが締結されることになる。引き寄せビス32は、補強材30Aの表面から木質柱11に向かって打ち込まれるビスである。引き寄せビス32は、一対の補強材30Aのそれぞれの表面から木質柱11に向かって打ち込まれることになる(柱の両側から打ち込まれることになる)。引き寄せビス32が打ち込まれることによって、木質柱11が補強材30Aの側に引き寄せられるため、木質柱11と補強材30Aとを隙間無く固定することができる。なお、補強材30Aと木質柱11(又は調整部材20)とを結合する方法は、通しボルト31や引き寄せビス32を用いた方法に限られるものではない。例えば、接着剤によって補強材30Aと木質柱11(又は調整部材20)とを接着しても良い。また、通しボルト31や引き寄せビス32によって補強材30Aと木質柱11(又は調整部材20)とを接合する場合には、補強材30Aの表面に形成される穴を木栓によって塞ぐことが望ましい。これにより、門型架構部材10の木質系の外観を維持することができる。
【0066】
図12A及び
図12Bに示すように、補強材30Aと木質柱11との間にドリフトピン33が埋め込まれても良い。ドリフトピン33は、一対の補強材30Aとその間の木質柱11とを貫通する貫通穴に打ち込まれる棒状の金具である。補強材30Aと木質柱11との間にドリフトピン33が埋め込まれることによって、補強材30Aと木質柱11との間でドリフトピン33を介して応力を伝達でき、補強材30Aと木質柱11との結合が強固になる。なお、接着剤によって十分な結合力が得られるのであれば、ドリフトピン33が用いられなくても良い。また、ドリフトピン33が打ち込まれる場合には、補強材30Aの表面に形成される穴を木栓によって塞ぐことが望ましい。これにより、門型架構部材10の木質系の外観を維持することができる。
【0067】
なお、木質柱11と調整部材20(又は木質柱11)との接合部11Aに用いられる接合部材は、補強材30Aに限られるものではない。例えば、次に説明する接合部材が用いられても良い。
【0068】
図13A及び
図13Bは、木質柱11と調整部材20との接合部11Aの第1変形例の説明図である。
第1変形例では、木質柱11と調整部材20(又は木質柱11でも良い。以下同様)との接合部11Aにコッター30Bが設けられている。コッター30Bは、木質柱11と調整部材20の間に設けられる接合部材である。具体的には、コッター30Bは、木質柱11に設けられた溝と、調整部材20に設けられた溝に差し込まれる部材である。ここでは、コッター30Bは円筒状(環状)の金具で構成されているが、ピン状などの他の形状の部材で構成されても良い。木質柱11と調整部材20の間にコッター30Bが配置されることによって、木質柱11と調整部材20の間でコッター30Bを介して応力(せん断応力)を伝達でき、木質柱11と調整部材20との結合が強固になる。
【0069】
図14Aは、木質柱11と調整部材20との接合部11Aの第2変形例の説明図である。
第2変形例では、木質柱11と調整部材20とがGIR(Glued in Rod)接合されている。木質柱11の端部及び調整部材20の端部に穴を設け、この穴に接続部材となる棒状部材30Cを挿入させ、棒状部材30Cの周囲の空隙に充填した接着剤を硬化させることになる。木質柱11と調整部材20とをGIR接合することによって、木質柱11と調整部材20の間で棒状部材30Cを介して応力(引っ張り応力)を伝達でき、木質柱11と調整部材20との結合が強固になる。
【0070】
なお、
図13Aや
図14Aに示すように、金属製の接合部材(コッター30B、棒状部材30C)は、木質柱11の接合部11Aに埋設されることが望ましい。これにより、金属製の接合部材が露出する場合と比べて、木質系の外観を維持することができる。
【0071】
図14Bは、木質柱11と調整部材20との接合部11Aの第3変形例の説明図である。
第3変形例では、直交集成板1で構成された接合板(
図11A参照)の代わりに、接合金具30D(金属プレート)が用いられている。このように、金属製の接合部材を用いて木質柱11と調整部材20とを接合しても良い。
【0072】
<木質構造(2)>
図15は、桁行方向(X方向)に複数の門型架構部材10を配置した木質構造100の説明図である。
【0073】
図中の木質構造100は、2つの門型架構部材10と、桁部材40とを有する。ここでは、2つの門型架構部材10は、桁行方向(X方向)に間隔をあけて平行に配置されている。なお、桁行方向(X方向)に間隔を2つの門型架構部材10を配置することによって、2つの門型架構部材10の木質梁12の間に床材50を載置することが可能になる。
【0074】
桁部材40は、桁行方向に並ぶ2つの門型架構部材10に掛け渡される部材である。2つの門型架構部材10のY方向プラス側の木質柱11同士の間に桁部材40が配置されており、Y方向マイナス側の木質柱11同士の間に別の桁部材40が配置されている。桁部材40は、荷重を木質柱11に伝達するため、木質柱11に接合されている。つまり、桁部材40の一端は、2つの門型架構部材10のうちの一方の門型架構部材10の木質柱11に接合されており、桁部材40の他端は、2つの門型架構部材10のうちの他方の門型架構部材10の木質柱11に接合されている。ここでは、桁部材40は、直交集成板1で構成されている。桁部材40に沿った方向を強軸方向とする直交集成板1によって、桁部材40が構成されている。但し、桁部材40は、例えば無垢材、積層材、集成材などの直交集成板以外の木質系基材で構成されても良い。
【0075】
なお、桁部材40は、門型架構部材10と同様に、木質系材料で構成されることが望ましい。これにより、木質系の外観を維持することができる。また、桁部材40は、門型架構部材10と同様に直交集成板で構成されることが望ましい。これにより、木質構造100の外観の統一させることができる。
【0076】
図16は、木質柱11と桁部材40との接合部の説明図である。
【0077】
木質柱11の側面には、ガセットプレート41が取り付けられている。ガセットプレート41は、木質柱11と桁部材40とを接続するための金具である。ガセットプレート41は、Y方向に垂直な板状の部材であり、木質柱11からX方向に突出している。ガセットプレート41には、ドリフトピン42を挿入するための貫通穴が形成されている。
【0078】
桁部材40の端部には、溝40Aが設けられている。溝40Aは、ガセットプレート41を差し込むための部位(スリット)である。また、桁部材40の端部には、ドリフトピン42を挿入するための穴が形成されている。桁部材40の溝40Aにガセットプレート41を差し込むとともに、桁部材40の側面の穴からドリフトピン42を挿入し、桁部材40の穴とガセットプレート41の貫通穴にドリフトピン42を挿入する。これにより、ガセットプレート41及びドリフトピン42を介して、木質柱11と桁部材40が接合されることになる。なお、ガセットプレート41が桁部材40の溝40Aに差し込まれるため、金属製のガセットプレート41を桁部材40の内側に配置させることができるため(金属製のガセットプレート41が露出させないため)、木質系の外観を維持することができる。
【0079】
図17は、梁間方向(Y方向)に複数の門型架構部材10を配置した木質構造100の説明図である。
【0080】
梁間方向(Y方向)の位置が異なる2つの門型架構部材10に着目すると、一方の門型架構部材10のY方向プラス側の木質柱11と、他方の門型架構部材10のY方向マイナス側の木質柱11との間に桁部材40が配置されている。このため、桁部材40の一方の端部は、一方の門型架構部材10のY方向プラス側の木質柱11に接合されており、桁部材40の他方の端部は、他方の門型架構部材10のY方向プラス側の木質柱11に接合されている。これにより、梁間方向に広い木質構造100を構成できる。
【0081】
<変形例>
図18Aは、第1変形例の門型架構部材10の説明図である。
第1変形例では、木質梁12は、一対の木質柱11,11の上端同士の間に掛け渡されている。この結果、第1変形例の門型架構部材10は、逆U字状に構成されている(これに対し、門型架構部材10は、H字状に構成されている)。第1変形例の門型架構部材10を木質構造100(例えば
図6、
図9参照)の最上階に配置することによって、最上階の階高を増加させることができる。
【0082】
図18Bは、第2変形例の門型架構部材10の説明図である。
第2変形例では、木質梁12の下面が湾曲しており、湾曲面12Aが形成されている。このように、木質梁12の側面は平面に限られるものではなく、木質梁12に湾曲面12Aが形成されても良い。なお、
図18Bに示す第2変形例では、木質梁12の両端が太くなり、木質梁12の中央部を細くなるように、木質梁12の下面に円弧状の湾曲面12Aが形成されている。これにより、木質柱11と木質梁12の連結部13の強度を向上させることができる。
【0083】
なお、第1変形例及び第2変形例においても、門型架構部材10は、一対の木質柱11,11及び木質梁12によって門型に構成されている。このため、第1変形例及び第2変形例の門型架構部材10も一対の木質柱11,11を両脚として木質梁12を支持するように自立可能な形状である。また、第1変形例及び第2変形例においても、門型架構部材10は比較的軽量な木質系基材(1枚の直交集成板1)で構成されており、仮に鉄筋コンクリートなどで架構部材が構成される場合と比べると、門型架構部材10が軽量化されている。このように、門型架構部材10が自立可能であることと、門型架構部材10が軽量化されていることとが相乗的に作用することによって、第1変形例及び第2変形例の門型架構部材10を用いた木質構造100の建て方作業時に、例えばクレーンなどの設備の小型化を図ることが可能になり、建て方作業時の省力化が可能になる。
【0084】
===その他の実施形態===
以上、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0085】
1 直交集成板、3 ラミナ、
3A 第1ラミナ、3B 第2ラミナ、
10 門型架構部材、11 木質柱、11A 接合部、
12 木質梁、12A 湾曲面、13 連結部、
15 埋設部材、20 調整部材、
30A 補強材(接合部材)、30B コッター(接合部材)、
30C 棒状部材(接合部材)、30D 接合金具、
31 通しボルト、32 引き寄せビス、33 ドリフトピン、
40 桁部材、40A 溝、
41 ガセットプレート、42 ドリフトピン、
50 床材、100 木質構造