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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049380
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/239 20060101AFI20230403BHJP
   B60R 21/18 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
B60R21/239
B60R21/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159078
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】松崎 雄士
(72)【発明者】
【氏名】安田 陽
(72)【発明者】
【氏名】野田 雄斗
(72)【発明者】
【氏名】田中 志幸
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA25
3D054CC11
3D054CC16
3D054CC43
3D054DD14
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】ラップベルト部に収納されたエアバッグの突出が抑制される場合には、膨張用ガスを排気して、エアバッグの突出を抑制できる乗員保護装置の提供。
【解決手段】シートに着座した乗員の腰部の前方側に配設可能なラップベルト部の収納部位に、膨張完了時の後面側の乗員拘束面により、乗員の上半身を受け止めて保護可能なエアバッグ、を備える乗員保護装置。エアバッグ30は、膨張用ガスGを排気可能な排気口41と、排気口を開閉可能として、エアバッグの収納部位からの上方への突出を抑制される場合に、排気口41からの膨張用ガスGの排気を許容し、かつ、作動時のエアバッグの収納部位からの上方への突出を抑制されない場合に、排気口41からの膨張用ガスGの排気を抑制する調整弁機構45と、を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両端をシートの左右に連結させた状態として、シートに着座した乗員の腰部の前方側に配設可能なラップベルト部、を備えるとともに、
該ラップベルト部に設けられた収納部位に折り畳まれて収納されて、作動時に、膨張用ガスを流入させて膨張し、膨張完了時、下面側の支持面を乗員の大腿部に支持させた状態で、後面側の乗員拘束面により、前方移動する乗員の上半身を受け止めて保護可能なエアバッグ、を備えて構成される乗員保護装置であって、
前記エアバッグが、
流入される前記膨張用ガスを排気可能な排気口と、
前記排気口を開閉可能として、作動時の前記エアバッグの前記収納部位からの上方への突出を抑制される場合に、前記排気口からの前記膨張用ガスの排気を許容し、かつ、作動時の前記エアバッグの前記収納部位からの上方への突出を抑制されない場合に、前記排気口からの前記膨張用ガスの排気を抑制する調整弁機構と、
を備えて構成されていることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
前記調整弁機構が、
前記エアバッグの前記排気口の周縁に配設される筒状の可撓性を有した弁体と、
前記弁体の前記排気口の周縁の元部から離れた先端部側に、一端側の弁体側端部を連結し、他端側の周壁側端部を、前記エアバッグ内を経て、前記エアバッグの周壁に連結させた可撓性を有したストラップと、
を備えて構成されて、
前記エアバッグの膨張時、
前記エアバッグの周壁の引張力が前記ストラップに作用されると、前記弁体が前記ストラップにより前記エアバッグ内へ引き込まれて、膨張用ガスの圧力を受けた前記弁体の周壁が、前記排気口を閉塞し、
前記エアバッグの周壁の引張力が前記ストラップに作用されないと、前記弁体が前記エアバッグ内に引き込まれずに前記排気口の開口状態を維持する構成としていることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記弁体が、前記ストラップとの連結部位の近傍の周壁に、内外周を貫通する複数の通気口を開口させていることを特徴とする請求項2に記載の乗員保護装置。
【請求項4】
前記排気口が、膨張完了時の前記エアバッグの左右の側壁部の一方に、開口されるとともに、膨張完了時の前記エアバッグの前記排気口と前記ストラップの前記周壁側端部との配設方向が、前記シートの左右方向に沿って、配設され、
さらに、前記収納部位への収納時の前記エアバッグの折畳体が、
前記エアバッグへ膨張用ガスを流入させる流入口部付近を平らにしつつ、前記流入口部付近の上方に前記エアバッグの周壁部位を重ねて平らに展開した初期展開エアバッグを形成し、該初期展開エアバッグの左右方向と直交する方向の端縁側を前記流入口部側に接近させるように折って、軸心を左右方向に沿わせた柱状体形状に折り畳んで、形成される構成として、
前記初期展開エアバッグが、前記ストラップを、左右方向に沿わせて配置させるとともに、前記弁体の元部側を前記排気口から前記エアバッグ外に繰り出させた状態とし、かつ、前記ストラップの前記周壁側端部を、前記弁体側に接近するように、前記エアバッグ内に入れ込んだ状態として、形成されていることを特徴とする請求項2若しくは請求項3に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員保護装置としては、シートベルトのラップベルト部に、膨張用ガスを流入させて膨張するエアバッグを配設させて、シートに着座した乗員を保護するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。ラップベルト部は、左右両端をシートの左右に連結させた状態として、シートに着座した乗員の腰部の前方側に配設されるベルト部位である。この乗員保護装置では、ラップベルト部に設けられた収納部位に、エアバッグが折り畳まれて収納されており、作動時に、エアバッグが膨張用ガスを流入させて膨張し、膨張を完了させたエアバッグは、下面側の支持面を乗員の大腿部に支持させた状態で、後面側の乗員拘束面により、前方移動する乗員の上半身を受け止めて保護していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-51744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の乗員保護装置では、シートベルトのラップベルト部に膨張するエアバッグを収納しており、チャイルドシートをシートに固定する際にも、ラップベルト部にエアバッグを収納したシートベルト、を使用しようとすると、すなわち、例えば、チャイルドシートの座部の底面側における左右に貫通する通し穴部に、ラップベルト部を通し、ラップベルト部の左右両端をシートの左右に連結させることにより、チャイルドシートをシートの背もたれ部から座部にかけて配置させてシートに固定することとなる。しかし、この状態で、車両が衝突して、ラップベルト部に収納したエアバッグが膨張すると、チャイルドシートを押し上げてしまい、好ましくない。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、ラップベルト部に収納されたエアバッグの突出が抑制される場合には、膨張用ガスを排気して、エアバッグの突出を抑制できる乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乗員保護装置では、左右両端をシートの左右に連結させた状態として、シートに着座した乗員の腰部の前方側に配設可能なラップベルト部、を備えるとともに、
該ラップベルト部に設けられた収納部位に折り畳まれて収納されて、作動時に、膨張用ガスを流入させて膨張し、膨張完了時、下面側の支持面を乗員の大腿部に支持させた状態で、後面側の乗員拘束面により、前方移動する乗員の上半身を受け止めて保護可能なエアバッグ、を備えて構成される乗員保護装置であって、
前記エアバッグが、
流入される前記膨張用ガスを排気可能な排気口と、
前記排気口を開閉可能として、作動時の前記エアバッグの前記収納部位からの上方への突出を抑制される場合に、前記排気口からの前記膨張用ガスの排気を許容し、かつ、作動時の前記エアバッグの前記収納部位からの上方への突出を抑制されない場合に、前記排気口からの前記膨張用ガスの排気を抑制する調整弁機構と、
を備えて構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る乗員保護装置では、作動時、ラップベルト部の収納部位に収納されたエアバッグに膨張用ガスが流入されて、エアバッグが膨張しようとする。その際、エアバッグの収納部位から上方への突出が抑制されると、調整弁機構が、排気口からの膨張用ガスの排気を許容することから、排気口から膨張用ガスが排気されて、エアバッグの膨張が抑制される。そのため、ラップベルト部が、チャイルドシートをシートに取り付けるように、チャイルドシートの下部側に配設されていても、チャイルドシートのエアバッグによる押し上げを防止できる。勿論、ラップベルト部が、チャイルドシートのシートへの取り付けに使用されずに、シートに着座した乗員の腰部の前方側に配設されていれば、エアバッグの収納部位から上方への突出が抑制されないことから、調整弁機構が、排気口からの膨張用ガスの排気を抑制して、排気口から膨張用ガスが排気されず、エアバッグは、迅速に膨張を完了させて、下面側の支持面を乗員の大腿部に支持させた状態で、後面側の乗員拘束面により、前方移動する乗員の上半身を受け止めて保護することができる。
【0008】
したがって、本発明に係る乗員保護装置では、ラップベルト部に収納されたエアバッグの突出が抑制される場合には、膨張用ガスを排気して、エアバッグの突出を抑制でき、エアバッグの突出が抑制されない場合には、エアバッグは、円滑に、膨張を完了させて、乗員を保護することができる。
【0009】
そして、本発明に係る乗員保護装置では、前記調整弁機構が、
前記エアバッグの前記排気口の周縁に配設される筒状の可撓性を有した弁体と、
前記弁体の前記排気口の周縁の元部から離れた先端部側に、一端側の弁体側端部を連結し、他端側の周壁側端部を、前記エアバッグ内を経て、前記エアバッグの周壁に連結させた可撓性を有したストラップと、
を備えて構成されて、
前記エアバッグの膨張時、
前記エアバッグの周壁の引張力が前記ストラップに作用されると、前記弁体が前記ストラップにより前記エアバッグ内へ引き込まれて、膨張用ガスの圧力を受けた前記弁体の周壁が、前記排気口を閉塞し、
前記エアバッグの周壁の引張力が前記ストラップに作用されないと、前記弁体が前記エアバッグ内に引き込まれずに前記排気口の開口状態を維持する構成としていることが望ましい。
【0010】
このような構成では、膨張を抑制されずにエアバッグが膨張する場合には、エアバッグの周壁が膨らんで、調整弁機構のストラップの周壁側端部が、引っ張られ、ストラップの弁体側端部に連結された弁体がエアバッグ内に引き込まれて、弁体が排気口を閉塞することから、排気口からの膨張用ガスの排気が抑制され、エアバッグが円滑に膨張を完了させる。一方、抑制された状態でエアバッグが膨張しようとする場合には、ストラップに引張力が作用されず、弁体の少なくとも一部が、排気口からエアバッグ外へ繰り出される状態となって、弁体が排気口を閉塞せず、排気口から膨張用ガスが排気され、エアバッグの膨張が抑制される。すなわち、調整弁機構が、排気口の周縁に結合される可撓性を有した筒状の弁体と、弁体とエアバッグの周壁とに連結される可撓性を有したストラップと、の2部材から構成できて、簡便に構成することができる。
【0011】
この場合、前記弁体が、前記ストラップとの連結部位近傍の周壁に、内外周を貫通する複数の通気口を開口させていれば、エアバッグの膨張が抑制される際、すなわち、ストラップが緩んで、弁体の少なくとも一部が排気口からエアバッグ外へ繰り出される際、弁体における排気口の周縁から延びる筒状部位内に、膨張用ガスが流入し、そして、流入した膨張用ガスが、円滑に、弁体の複数の通気口を経て、エアバッグ外に排気されることとなり、エアバッグの膨張抑制を、安定して行うことができる。
【0012】
そして、本発明に係る乗員保護装置では、前記排気口が、膨張完了時の前記エアバッグの左右の側壁部の一方に、開口されるとともに、膨張完了時の前記エアバッグの前記排気口と前記ストラップの前記周壁側端部との配設方向が、前記シートの左右方向に沿って、配設され、
さらに、前記収納部位への収納時の前記エアバッグの折畳体が、
前記エアバッグへ膨張用ガスを流入させる流入口部付近を平らにしつつ、前記流入口部付近の上方に前記エアバッグの周壁部位を重ねて平らに展開した初期展開エアバッグを形成し、該初期展開エアバッグの左右方向と直交する方向の端縁側を前記流入口部側に接近させるように折って、軸心を左右方向に沿わせた柱状体形状に折り畳んで、形成される構成として、
前記初期展開エアバッグが、前記ストラップを、左右方向に沿わせて配置させるとともに、前記弁体の元部側を前記排気口から前記エアバッグ外に繰り出させた状態とし、かつ、前記ストラップの前記周壁側端部を、前記弁体側に接近するように、前記エアバッグ内に入れ込んだ状態として、形成されていることが望ましい。
【0013】
このような構成では、エアバッグは、上方への突出を抑制されずに膨張する際には、流入口部から膨張用ガスを流入させて、初期展開エアバッグの流入口部付近のエアバッグの周壁の対向部位を押し上げつつ、初期展開エアバッグの左右方向と直交する方向の端縁側の折りを解消して、膨張することとなる。しかし、上方への突出を抑制された状態でのエアバッグの膨張時には、初期展開エアバッグの左右方向と直交する方向の端縁側の折りの解消が規制されることとなって、エアバッグの折畳体における軸心を左右方向に沿わせた柱状体形状が、その軸心の直交方向に膨らむことが規制されて、流入口部から流入する膨張用ガスが、軸心に沿った左右方向に流れようとする。その際、初期展開エアバッグが、ストラップを、エアバッグの折畳体における柱状体形状の軸心に沿うように、左右方向に沿わせて配置させるとともに、弁体の元部側を排気口からエアバッグ外に繰り出させた状態とし、かつ、ストラップの周壁側端部を、弁体側に接近するように、エアバッグ内に入れ込んだ状態として、形成されており、排気口の位置も、エアバッグの上方側でなく、エアバッグの左右の側壁部の一方側であって、突出を抑制される位置側ではない。そのため、エアバッグの膨張初期、エアバッグの上方への突出が規制されていれば、ストラップの周壁側端部付近のエアバッグの周壁が外方へ膨らみ難く、ストラップに引張力が作用しない状態となることから、弁体の元部側が、排気口から繰り出された状態を維持して、排気口が開口状態を維持し、排気口から膨張用ガスが排気されて、エアバッグの膨張が抑制されることとなる。勿論、エアバッグの上方への突出が抑制されていなければ、エアバッグは、流入口部から膨張用ガスを流入させて、初期展開エアバッグの流入口部付近のエアバッグの周壁の対向部位を押し上げつつ、初期展開エアバッグの左右方向と直交する方向の端縁側の折りを解消して、膨張し、そして、ストラップの周壁側端部付近のエアバッグの周壁が、膨らみ、ストラップに引張力を作用させることから、ストラップが弁体をエアバッグ内に引き込んで、膨張用ガスの圧力を受けた弁体の周壁が、排気口を閉塞し、エアバッグが円滑に膨張を完了させることとなる。さらに付言すると、エアバッグの膨張が抑制される際の膨張用ガスの排気口からの排気は、膨張完了時のエアバッグの左右の側壁部の一方側に開口された排気口からの排気となって、左右方向に沿って配置されるラップベルト部の左右の一方側に配置される排気口からの排気となることから、エアバッグの膨張を抑制する干渉物が、ラップベルト部に配設される折畳体の上方側に配置されることとなっても、ラップベルト部の左右の一方側に配置される排気口は、干渉物に塞がれること無く、円滑に、膨張用ガスを排気させることができて、エアバッグの膨張を円滑に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態である乗員保護装置を搭載したシートの斜視図である。
図2】実施形態の乗員保護装置を搭載したシートの左側面図である。
図3】実施形態の乗員保護装置を搭載したシートの正面図であり、シートベルトが乗員に装着された状態を示し、また併せて、エアバッグの膨張時を二点鎖線で示す。
図4】実施形態の乗員保護装置のエアバッグの膨張状態を示す左側面図である。
図5】実施形態の乗員保護装置のエアバッグの膨張状態を示す右側面図である。
図6】実施形態の乗員保護装置のエアバッグの膨張完了時を示す正面図である。
図7】実施形態の乗員保護装置のエアバッグの構成材料を示す平面図である。
図8】実施形態の乗員保護装置のエアバッグの折畳時における初期展開バッグを示す平面図である。
図9】実施形態の乗員保護装置のエアバッグの折畳工程を示す図である。
図10】実施形態の乗員保護装置におけるエアバッグの排気口付近における作動初期状態、開口状態、及び、閉塞状態、を示す概略断面図である。
図11】実施形態の乗員保護装置におけるエアバッグの排気口付近における作動初期状態、開口状態、及び、閉塞状態、を示す正面側から見た概略図である。
図12】実施形態の乗員保護装置のラップベルト部によりチャイルドシートをシートに取り付けた状態の概略斜視図である。
図13】実施形態の乗員保護装置のラップベルト部によりチャイルドシートをシートに取り付けた状態の概略右側面図である。
図14】実施形態の乗員保護装置のラップベルト部によりチャイルドシートをシートに取り付けた状態でのエアバッグの膨張時を説明する概略部分右側面図である。
図15】実施形態の乗員保護装置のラップベルト部によりチャイルドシートを後向きとしてシートに取り付けた状態の概略右側面図である。
図16】実施形態の乗員保護装置を搭載するシートベルトの他の形態を説明する図である。
図17】実施形態の調整弁機構の変形例を示す排気口付近における作動初期状態、開口状態、及び、閉塞状態、を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の乗員保護装置10は、図1~6に示すように、車両のシート1に搭載されるもので、シートベルト11と、エアバッグ30と、エアバッグ30に膨張用ガスを供給するインフレーター24と、干渉物(例えば、チャイルドシート90(図12,13参照))との干渉時にエアバッグ30から膨張用ガスを排気する調整弁機構45と、を備えて構成されている。シート1は、背もたれ部2と座部5とを備えている。
【0016】
シートベルト11は、シート1に着座した乗員MPを拘束できるように、シート1の左右方向の一方側(実施形態では左方側)において、上端11a側を、背もたれ部2の上端3における左縁3a側の内部に配設されたリトラクタ15から繰り出し可能とし、下端11b側を、座部5の左側部6側に配設されたアンカ部材17に固定される固定端として配設されている。なお、図1,2に示す符号18の部材は、ベルト11を、挿通可能として、座部5の左側部6から外れないように押えておく押え部材である。
【0017】
シートベルト11の中間部位には、タング20が配設され、タング20は、シート1の左右方向の他方側(実施形態では右方側)における座部5の右側部7側に配設されたバックル19に締結されることとなり、タング20をバックル19に締結させた状態のシートベルト11は、タング20からリトラクタ15側に延びる部位を、乗員MPの上半身(胸部)MBの前面側に配置されるショルダーベルト部12とし、タング20から固定端11b側に延びる部位を、乗員MPの腰部MWの前面側に配置されるラップベルト部13としている。なお、バックル19には、図示しないリリースボタンが配設されており、締結したタング20を締結解除する際、リリースボタンを押圧操作すれば、タング20をバックル19から取り外すことができる。また、リトラクタ15は、ベルト11の急激な引き出しがあれば、引き出しを停止させ、さらに、車両の衝突等があれば、引き出したベルト11を巻き取り可能なプリテンショナーを配設させて構成されている。
【0018】
インフレーター24は、膨張用ガスを吐出する略円柱状のインフレーター本体25と、インフレーター本体25から突出して略L字状に屈曲するパイプ部26と、を備えて、シート1の座部5の後面側に取付固定されている(図1,2参照)。パイプ部26には、エアバッグ30に接続される導管部38の先端部38b側が、外装され、さらに、クランプ27で締め付けられて、連結されている。
【0019】
導管部38は、元部38a側を、エアバッグ30の膨張用ガスを流入させるための流入口部37に、連結させている。
【0020】
エアバッグ30は、シートベルト11のラップベルト部13となる部位の上面13a側における左右方向の中央付近を収納部位22とし、折り畳まれた折畳体77として、収納されている。折畳体77は、ラップベルト部13の上面13a側の収納部位22に対し、エアバッグ30の膨張時に破断するカバー82に包まれて、配設されている。なお、収納時の折畳体77には、インフレーター24から延びて、インフレーター24からの膨張用ガスをエアバッグ30内に流入させるための導管部38が、エアバッグ30の流入口部37に接続されている。
【0021】
エアバッグ30は、ポリエステル等の可撓性を有した織布から形成されている。なお、導管部38も、エアバッグ30と同様に、ポリエステル等の可撓性を有した織布から形成されている。また、調整弁機構45を構成する後述する弁体46やストラップ50もポリエステル等の可撓性を有した織布から形成されている。
【0022】
エアバッグ30は、膨張完了時に、周壁31が、側方から見て略三角柱状に膨張する構成として、底面側の底壁部32、後面側の後壁部33、前面側の前壁部34、及び、左右の側壁部35(L,R)、を備えて構成されている。そして、膨張完了時のエアバッグ30は、底壁部32の下面側を乗員MPの大腿部MFに支持させる支持面32aとし、後壁部33の後面側を乗員拘束面33aとして、前方移動する乗員MPの上半身MBを、乗員拘束面33aで受け止めて保護することとなる。
【0023】
底壁部32の後縁付近には、導管部38からの膨張用ガスを流入させる複数の流入口37aを開口させた流入口部37が配設されている(図6~8参照)。また、左右の側壁部35L,35Rの前部側には、エアバッグ30内に流入する膨張用ガスの余剰分を排気するベントホール40が開口されている。
【0024】
さらに、エアバッグ30には、膨張途中に干渉物と干渉した際に、膨張を抑制するように、膨張用ガスを排気する排気口41が、右側壁部35Rに配設されている。そして、排気口41の周縁には、調整弁機構45を構成する弁体46とストラップ50とが配設されている。調整弁機構45は、排気口41を開閉可能として、作動時のエアバッグ30の収納部位22からの上方への突出を抑制される場合に、排気口41からの膨張用ガスの排気を許容し、かつ、作動時のエアバッグ30の収納部位22からの上方への突出を抑制されない場合に、排気口41からの膨張用ガスの排気を抑制するものである。
【0025】
そして、弁体46は、排気口41の周縁に元部46aを結合させた可撓性を有した筒状体47としている。詳しくは、筒状体47の弁体46は、図7,10,11に示すように、二枚の同形の台形とした弁体用基布70,70の底辺側の元側縁70aを、排気口41の内周縁に縫合し、弁体用基布70,70の先側縁70b相互と、側縁70c,70c相互とを縫合して、形成されている。
【0026】
ストラップ50の一端側は、弁体側端部51として、弁体46の先端部46bに連結されている。弁体側端部51は、弁体用基布70,70の先側縁70b相互の縫合時、共縫いされて、弁体46の先端部46b側に連結されている。また、ストラップ50の他端側は、周壁側端部52として、排気口41と反対側の左側壁部35Lに連結されている。周壁側端部52は、エアバッグ30の周壁31を構成する後述の前側基布60と後側基布63との外周縁61,65a相互の縫合時、共縫いされて、左側壁部35L側に連結されている。
【0027】
そして、調整弁機構45の弁体46は、先端部46bの近傍に、内外周を貫通して円形に開口する複数(実施形態では2個)の通気口48が、形成されている。通気口48は、二枚の弁体用基布70,70の先側縁70bの近傍に、配設されている。弁体46による排気口41の閉塞状態は、図10のCと図11のCとに示すように、ストラップ50に引っ張られて、弁体46の先端部46bがエアバッグ30内に強く引き込まれると、膨張用ガスGの圧力により、元部46a側の周縁の周壁、すなわち、筒状体47の内周面47a側が相互に密着するように押し付けられ(実施形態では弁体用基布70,70相互が重なって密着され)ることから、エアバッグ30の排気口41の内周側を閉塞することとなる。一方、排気口41の開口状態は、図10のBと図11のBとに示すように、弁体46がストラップ50の引っ張りを受けない状態としていれば、膨張用ガスGの圧力により、弁体46が排気口41から押し出されたようになり、すなわち、通気口48付近を排気口41よりエアバッグ30の外側に配置させるように、筒状体47がエアバッグ30外に押し出されるようになって、エアバッグ30内の膨張用ガスGが、通気口48を挿通しつつ、排気口41からエアバッグ30外へ排気される状態となる。
【0028】
なお、調整弁機構45のストラップ50の弁体側端部51から周壁側端部52までの長さ寸法は、エアバッグ30の膨張完了時には、乗員拘束面33aによる乗員MPの拘束を阻害しない範囲で、エアバッグ30内に弁体46を強く引っ張り込める長さで、かつ、エアバッグ30の膨張が抑制され、すなわち、周壁側端部52が連結される側壁部35Rの膨らみが抑制されて、周壁側端部52の移動量が僅かな場合には、弁体46を引っ張らない長さ寸法としている。
【0029】
エアバッグ30の周壁31は、図7に示すように、後壁部33、底壁部32、及び、左右の側壁部35(L,R)の後部側、を構成する後側基布63と、前壁部34、及び、左右の側壁部35(L,R)の前部側、を構成する前側基布60と、から形成されている。後側基布63は、左右にスリット63a,63aを設けて、スリット63aの上方側の略六角板状の上側部64とスリット63aの下方側の略六角板状の下側部65と、を備えて構成されている。前側基布60は、大きな六角板状として、構成されている。そして、周壁31の形成は、ベントホール40と流入口37aとを設けた後側基布63のスリット63aの部位で対向する対向縁64b,65b相互を縫合し、スリット63aの部位を除いた上側部64と下側部65とを平らに展開して、前側基布60を重ねて、重ねた外周縁61,64a,65a相互を縫合すれば、形成できる。なお、前側基布60の上側外周縁61aは、後側基布63の上側部64の外周縁64aと同じ形状とし、同様に、前側基布60の下側外周縁61bは、後側基布63の下側部65の外周縁65aと同じ形状としていることから、この前側基布60と後側基布63との縫合は、容易に、相互を重ねて、行える。また、後側基布63の流入口37aを設けた流入口部37には、予め、筒状にしていないベルト取付部80を取り付けた導管部38、を取り付けておく。導管部38は、外形形状を同じとした外側材38cとバッグ側材38dとの外周縁相互を縫合して形成されている。バッグ側材38dは、流入口部37の外周面側に縫合され、流入口37a,37aと連通する連通口38da、を備えて構成されている。
【0030】
また、実施形態の場合には、排気口41付近では、排気口41を形成する部位の前側基布60の下側外周縁61bと後側基布63の下側部65の外周縁65aとの部位61ba,65aa(図7参照)に、それぞれ、弁体用基布70の元側縁70aを縫合しておき、排気口41の部位を塞がずに、排気口41の周縁の前側基布60の下側外周縁61bと後側基布63の下側部65の外周縁65aとを縫合する。また、弁体用基布70,70は、側縁70c,70c相互を縫合するとともに、先側縁70b,70b相互を、ストラップ50の弁体側端部51を共縫いしつつ、縫合する。ストラップ50の周壁側端部52は、前側基布60の下側外周縁61bと後側基布63の下側部65の外周縁65aとの縫合時に、連結するストラップ用部位61bb,65ab(図7参照)に共縫いして、縫合しておく。そして、前側基布60の下側外周縁61bと後側基布63の下側部65の外周縁65aとの相互と、前側基布60の上側外周縁61aと後側基布63の上側部64の外周縁64aとの相互を縫合すれば、導管部38を設けたエアバッグ30の周壁31を形成できる。
【0031】
収納部位22に収納するエアバッグ30の折畳体77は、図8,9に示すように形成する。まず、図8に示すように、膨張完了時のエアバッグ30の前後方向で対向する前壁部34と後壁部33とを重ね、さらに、実施形態の場合には、左右方向に沿う折目73を付けて、前壁部34側で二つ折りして、平らに展開した初期展開エアバッグ72を形成する。換言すれば、初期展開エアバッグ72は、エアバッグ30へ膨張用ガスGを流入させる流入口部37付近を平らにしつつ、前壁部34を二つ折りして、流入口部37付近の上方にエアバッグ30の周壁部位である後壁部33を重ねて平らに展開して、形成されている。そして、この初期展開エアバッグ72の形成時、ストラップ50を左右方向に沿わせて配置させるとともに、通気口48を排気口41付近に配置させつつ、弁体46の元部46a側を排気口41からエアバッグ30外に繰り出させた状態とし、かつ、ストラップ50の周壁側端部52を、弁体46側に接近するように、エアバッグ30内に入れ込んだ状態としておく。ついで、図9のAに示すように、初期展開エアバッグ72の幅方向となる左右の両縁72a,72bを中央側に折る幅方向縮小折りにより、幅方向縮小体75を形成する。なお、この幅方向縮小折りは、折畳体77や収納部位22の左右方向の幅寸法を広くできる場合には、省略してもよい。
【0032】
その後、図9のB,Cに示すように、幅方向縮小体75における左右方向と直交する方向の端縁75a,75bを、エアバッグ30の支持面32a側に配置された膨張用ガスGの流入口部37側に重ねて接近させる長手方向縮小折りにより、折り畳んで、折り崩れ防止用の破断可能なテープ材78で包めば、左右方向に沿った軸心Xを有した柱状体の折畳体77が形成される。
【0033】
このように形成された折畳体77は、ベルト取付部80を、シートベルト11のラップベルト部13の収納部位22に、包むように配置させて、環状の挿通孔80aを形成し、折畳体77をカバー82で包めば、シートベルト11に組み付けることができる。さらに、折畳体77から延びる導管部38の先端部38bをインフレーター24のインフレーター本体25から延びるパイプ部26に接続させれば、乗員保護装置10をシート1に搭載することができる。
【0034】
実施形態の乗員保護装置10では、シート1に着座した乗員MPがシートベルト11を装着した状態で、車両が衝突等すれば、作動される。その際、ラップベルト部13が、シート1に着座した乗員MPの腰部MWの前方側に配設されていることから、インフレーター24からの膨張用ガスが、導管部38を経て、流入口部37の流入口37aからエアバッグ30内に流入する。
【0035】
その際、図3~6に示すように、収納部位22の上方に、干渉物が配設されていなければ、エアバッグ30の上方への突出が抑制されないことから、エアバッグ30は、テープ材78やカバー82を破断させつつ、折りを解消して、円滑に、膨張する。すなわち、エアバッグ30が膨張する際、周壁31が膨らみ、左側壁部35Lの膨張に伴う調整弁機構45におけるストラップ50の周壁側端部52が移動して、図10のAや図11のAから図10のCや図11のCに示すように、ストラップ50が、調整弁機構45における弁体46をエアバッグ30内に引き込んで、膨張用ガスGの圧力を作用させて、弁体46の筒状体47を内周側に潰すようにして、排気口41を閉塞することとなり、調整弁機構45が、排気口41からの膨張用ガスGの排気を抑制する。そのため、排気口41から膨張用ガスが排気されず、エアバッグ30は、迅速に膨張を完了させて、下面側の支持面32aを乗員MPの大腿部MFに支持させた状態で、後面側の乗員拘束面33aにより、前方移動する乗員MPの上半身MBを受け止めて保護することができる。
【0036】
一方、実施形態の乗員保護装置10において、図12に示すように、シートベルト11を利用して、シート1にチャイルドシート90を配置させる場合がある。この場合には、チャイルドシート90の座部92の底面側における左右に貫通する通し穴部94に、ラップベルト部13を通し、タング20をバックル19に締結し、ラップベルト部13の左右両端をシート1の左右に連結させることにより、チャイルドシート90をシート1の背もたれ部2から座部5にかけて配置させてシート1に固定することとなる。なお、シートベルト11のショルダーベルト部12は、タング20から離れたリトラクタ15側を、チャイルドシート90の左側面側の通し穴部94の上端部94a側に配置された挟持具95に挟んでおく。
【0037】
このように、チャイルドシート90がシートベルト11を利用してシート1に固定されていれば、ラップベルト部13のエアバッグ30の収納部位22は、通し穴部94の上端部94aと前端部94bとの間の中央部94c付近において、上方を、チャイルドシート90のフレーム93の背面93aにより、塞がれる状体となる。そのため、この状態で乗員保護装置10が作動しようとすると、すなわち、エアバッグ30が収納部位22から上方へ突出しようとすると、チャイルドシート90のフレーム93の背面93aに当接して、エアバッグ30の収納部位22から上方への突出が抑制される。すると、調整弁機構45が、排気口41からの膨張用ガスGの排気を許容して、排気口41から膨張用ガスGが排気されて、エアバッグ30の膨張が抑制される。すなわち、調整弁機構45は、排気口41を開閉可能として、作動時のエアバッグ30の収納部位22からの上方への突出を抑制される場合に、排気口41からの膨張用ガスGの排気を許容し、かつ、作動時のエアバッグ30の収納部位22からの上方への突出を抑制されない場合に、排気口41からの膨張用ガスGの排気を抑制するように配設されている。そのため、ラップベルト部13が、チャイルドシート90をシート1に取り付けるように、チャイルドシート90の下部側に配設されて、エアバッグ30の上方への突出が抑制されると、調整弁機構45が、排気口41からの膨張用ガスGの排気を許容することから、排気口41から膨張用ガスGが排気されて(図14参照)、エアバッグ30の膨張が抑制され、その結果、エアバッグ30によるチャイルドシート90の押し上げを防止できて、チャイルドシート90の飛散等の不具合を防止できる。
【0038】
したがって、実施形態の乗員保護装置10では、ラップベルト部13に収納されたエアバッグ30の突出が抑制される場合には、膨張用ガスGを排気して、エアバッグ30の突出を抑制でき、エアバッグ30の突出が抑制されない場合には、エアバッグ30は、円滑に、膨張を完了させて、乗員MPを保護することができる。
【0039】
そして、実施形態の乗員保護装置10では、調整弁機構45が、エアバッグ30の内周面側の排気口41の周縁に配設される筒状の可撓性を有した弁体46と、弁体46の排気口41の周縁の元部46aから離れた先端部46b側に、一端側の弁体側端部51を連結し、他端側の周壁側端部52をエアバッグ30の周壁31に連結させた可撓性を有したストラップ50と、を備えて構成されている。そして、調整弁機構45は、エアバッグ30の膨張時、エアバッグ30の周壁31の引張力がストラップ50に作用されると、弁体46がストラップ50によりエアバッグ30内へ引き込まれて、膨張用ガスGの圧力を受けた弁体46の周壁(筒状体)47が、内周面47a相互を密着されるようにして、排気口41を閉塞し、エアバッグ30の周壁31の引張力がストラップ50に作用されないと、弁体46がエアバッグ30内に引き込まれずに排気口41の開口状態を維持する構成としている。
【0040】
そのため、実施形態では、膨張を抑制されずにエアバッグ30が膨張する場合には、エアバッグ30の周壁31が膨らんで、図10のAや図11のAから図10のCや図11のCに示すように、調整弁機構45のストラップ50の周壁側端部52が、引っ張られ、ストラップ50の弁体側端部51に連結された弁体46がエアバッグ30内に引き込まれて、弁体46が排気口41を閉塞することから、排気口41からの膨張用ガスGの排気が抑制され、エアバッグ30が円滑に膨張を完了させる。一方、抑制された状態でエアバッグ30が膨張しようとする場合には、ストラップ50に引張力が作用されず、図10のAや図11のAから図10B図11のBに示すように、弁体46の少なくとも一部が、排気口41からエアバッグ30外へ繰り出される状態となって、弁体46が排気口41を閉塞せず、排気口41から膨張用ガスGが排気され、エアバッグ30の膨張が抑制される。すなわち、調整弁機構45が、排気口41の周縁に結合される可撓性を有した筒状の弁体46と、弁体46とエアバッグ30の周壁31とに連結される可撓性を有したストラップ50と、の2部材から構成されて、簡便に構成することができる。
【0041】
この場合、実施形態では、弁体46が、ストラップ50との連結部位近傍の周壁に、内外周を貫通する複数の通気口48を開口させている。
【0042】
そのため、実施形態では、エアバッグ30の膨張が抑制される際、すなわち、ストラップ50が緩んで、弁体46の少なくとも一部が排気口41からエアバッグ30外へ繰り出される際、弁体46における排気口41の周縁から延びる筒状部位(筒状体)47内に、膨張用ガスGが流入し(図10のB参照)、そして、流入した膨張用ガスGが、円滑に、複数の通気口48を経て、エアバッグ30外に排気されることとなって、エアバッグ30の膨張抑制を、安定して行うことができる。
【0043】
そして、実施形態の乗員保護装置10では、排気口41が、膨張完了時のエアバッグ30の左右の側壁部35(L,R)の一方(実施形態では、左側壁部35L)に、開口されるとともに、膨張完了時のエアバッグ30の排気口41とストラップ50の周壁側端部52との配設方向が、シート1の左右方向に沿って、配設されている。さらに、収納部位22への収納時のエアバッグ30の折畳体77が、エアバッグ30へ膨張用ガスGを流入させる流入口部37付近を平らにしつつ、流入口部37付近の上方にエアバッグ30の周壁部位(後壁部)33を重ねて平らに展開した初期展開エアバッグ72を形成し、初期展開エアバッグ72の左右方向と直交する方向の端縁75a,75b側を流入口部37側に接近させるように折って、軸心Xを左右方向に沿わせた柱状体形状に折り畳んで、形成される構成としている(図9参照)。さらに、初期展開エアバッグ72が、ストラップ50を、左右方向に沿わせて配置させるとともに、弁体46の元部46a側を排気口41からエアバッグ30外に繰り出させた状態とし、かつ、ストラップ50の周壁側端部52を、弁体46側に接近するように、エアバッグ30内に入れ込んだ状態として、形成されている(図8参照)。
【0044】
そのため、実施形態では、エアバッグ30は、上方への突出を抑制されずに膨張する際には、流入口部37から膨張用ガスGを流入させて、初期展開エアバッグ72の流入口部37付近のエアバッグ30の周壁31の対向部位(後壁部)33を押し上げつつ、初期展開エアバッグ72の左右方向と直交する方向の端縁75a,75b側の折りを解消して、膨張することとなる。しかし、上方への突出を抑制された状態でのエアバッグ30の膨張時には、初期展開エアバッグ72の左右方向と直交する方向の端縁75a,75b側の折りの解消が規制されることとなって、エアバッグ30の折畳体77における軸心Xを左右方向に沿わせた柱状体形状が、その軸心Xの直交方向に膨らむことが規制されて、流入口部37から流入する膨張用ガスGが、軸心Xに沿った左右方向に流れようとする。その際、初期展開エアバッグ72が、ストラップ50を、エアバッグ30の折畳体77における柱状体形状の軸心Xに沿うように、左右方向に沿わせて配置させるとともに、弁体46の元部46a側を排気口41からエアバッグ30外に繰り出させた状態とし、かつ、ストラップ50の周壁側端部52を、弁体46側に接近するように、エアバッグ30内に入れ込んだ状態として、形成されており、排気口41の位置も、エアバッグ30の上方側でなく、エアバッグ30の左右の側壁部35(L,R)の一方側の左側壁部35Lであって、突出を抑制される位置側ではない。そのため、エアバッグ30の膨張初期、エアバッグ30の上方への突出が規制されていれば、ストラップ50の周壁側端部52付近のエアバッグ30の周壁31が上方へ膨らみ難く、ストラップ50に引張力が作用しない状態となることから、図10のBや図11のBに示すように、弁体46の元部46a側が、排気口41から繰り出された状態を維持して、排気口41が開口状態を維持し、排気口41から膨張用ガスGが排気されて、エアバッグ30の膨張が抑制されることとなる。勿論、エアバッグ30の上方への突出が抑制されていなければ、エアバッグ30は、流入口部37から膨張用ガスGを流入させて、初期展開エアバッグ72の流入口部37付近のエアバッグ30の周壁31の対向部位(後壁部)33を押し上げつつ、初期展開エアバッグ72の左右方向と直交する方向の端縁75a,75b側の折りを解消して、膨張し、そして、ストラップ50の周壁側端部52付近のエアバッグ30の周壁31が、膨らみ、図10のCや図11のCに示すように、ストラップ50に引張力を作用させることから、ストラップ50が弁体46をエアバッグ30内に引き込んで、膨張用ガスGの圧力を受けた弁体46の周壁(筒状体)47が、排気口41を閉塞し、エアバッグ30が円滑に膨張を完了させることとなる。さらに付言すると、エアバッグ30の膨張が抑制される際の膨張用ガスGの排気口41からの排気は、膨張完了時のエアバッグ30の左右の側壁部の一方側(左側壁部)35Lに開口された排気口41からの排気となって、左右方向に沿って配置されるラップベルト部13の左右の一方側(左側)に配置される排気口41からの排気となることから(図14参照)、エアバッグ30の膨張を抑制する干渉物としてのチャイルドシート90のフレーム93の背面93aが、ラップベルト部13に配設される折畳体77の上方側に配置されることとなっても(図13,14参照)、ラップベルト部13の左右の一方側の左側に配置される排気口41は、干渉物としてのチャイルドシート90に塞がれること無く、円滑に、膨張用ガスGを排気させることができて、エアバッグ30の膨張を円滑に抑制できる。
【0045】
なお、実施形態では、チャイルドシート90をシート1に前向きに固定したが、図15に示すように、チャイルドシート90を後向きとして、シート1に固定してもよい。
【0046】
また、実施形態では、リトラクタ15をシート1内に設けたシートベルト11を例示したが、図16に示すように、リトラクタ15Aを車体側に設けたシートベルト11Aを使用し、そのシートベルト11のラップベルト部13Aの部位に、エアバッグ30を折り畳んだ折畳体77を、インフレーター24から延びる導管部38を連結させた状態として、収納させてもよい。
【0047】
さらに、シートベルトとしては、図1図16に示す3点式の場合だけでなく、ショルダーベルト部の無い二点式のシートベルトのラップベルト部にエアバッグ30を折り畳んだ折畳体77を、インフレーター24から延びる導管部38を連結させた状態として、収納させてもよい。
【0048】
さらにまた、実施形態では、調整弁機構45の弁体46として、先端部46bを塞いで、その近傍に通気口48を開口させたものを示した。しかし、弁体とストラップとからなる調整弁機構としては、エアバッグの膨張時、エアバッグの周壁の引張力がストラップに作用されると、弁体がストラップによりエアバッグ内へ引き込まれて、膨張用ガスの圧力を受けた弁体の周壁が、排気口を閉塞し、エアバッグの周壁の引張力がストラップに作用されないと、弁体がエアバッグ内に引き込まれずに排気口の開口状態を維持すればよい。そのため、例えば、図17に示す調整弁機構45Aのように、弁体46Aを、単に、先端部46bを開口させた筒状の筒状体47Aから構成してもよい。この弁体46Aは、元部46a側が排気口41の周縁に結合され、先端部46b側を筒状の単なる開放端として、先端部46bの端末側に、1つの開口(通気口)48Aを開口させ、かつ、先端部46b側に、二又状に分岐されたストラップ50Aの弁体側端部51Aを、連結させて、構成されている。
【0049】
この調整弁機構45Aでも、膨張を抑制されずにエアバッグ30が膨張する場合には、エアバッグ30の周壁31が膨らんで、図17のAから図17のCに示すように、調整弁機構45Aのストラップ50Aの周壁側端部52が、引っ張られ、ストラップ50Aの弁体側端部51Aに連結された弁体46Aがエアバッグ30内に引き込まれ、膨張用ガスGの圧力によって筒状体47Aの内周面47a相互が密着されて、弁体46Aが排気口41を閉塞することから、排気口41からの膨張用ガスGの排気が抑制され、エアバッグ30が円滑に膨張を完了させることとなる。一方、抑制された状態でエアバッグ30が膨張しようとする場合には、ストラップ50Aに引張力が作用されず、図17のAから図17のBに示すように、弁体46Aが、排気口41からエアバッグ30外へ繰り出される状態となって、先端部46bの開放端からなる通気口48Aが、開口された状態で、エアバッグ30外に配置されることとなり、膨張用ガスGが、通気口48Aを通過しつつ、排気口41からエアバッグ30外に排気されることとなり、エアバッグ30の膨張が抑制される。なお、エアバッグ30外への排気時の膨張用ガスGは、ストラップ50Aが紐状としており、ストラップ50Aの周囲の隙間を経て、通気口48Aから、エアバッグ30外へ排気されることとなる。そして、このような構成の調整弁機構45Aでも、排気口41の周縁に結合される可撓性を有した筒状の弁体46Aと、弁体46Aとエアバッグ30の周壁31とに連結される可撓性を有したストラップ50Aと、の2部材から構成できて、簡便に、排気口41の開閉を行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
1…シート、10…乗員保護装置、11…シートベルト、13…ラップベルト部、22…収納部位、30…エアバッグ、31…周壁、32a…支持面、33a…乗員拘束面、35(L,R)…側壁部、37…流入口部、37a…流入口、41…排気口、45,45A…調整弁機構、46,46A…弁体、46a…元部、46b…先端部、48…通気口、50,50A…ストラップ、51,51A…弁体側端部、52…周壁側端部、72…初期展開バッグ、75a…(前)端縁、75b…(後)端縁、77…折畳体、90…(干渉物)チャイルドシート、
X…(折畳体の)軸心、MP…乗員、MW…腰部、MF…大腿部、MB…(胸部)上半身、G…膨張用ガス。
図1
図2
図3
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図10
図11
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