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特開2023-49391シーラントフィルム、それを用いた積層フィルム、包装袋および包装容器、ならびにシーラントフィルムの製造方法
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  • 特開-シーラントフィルム、それを用いた積層フィルム、包装袋および包装容器、ならびにシーラントフィルムの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049391
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】シーラントフィルム、それを用いた積層フィルム、包装袋および包装容器、ならびにシーラントフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20230403BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20230403BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20230403BHJP
   C08G 63/183 20060101ALI20230403BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20230403BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20230403BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20230403BHJP
   B29C 48/335 20190101ALI20230403BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20230403BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/36
C08L67/02
C08G63/183
C08J5/18 CFD
B29C48/08
B29C48/21
B29C48/335
B29C48/92
B65D30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159097
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉永 雅信
【テーマコード(参考)】
3E064
3E086
4F071
4F100
4F207
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
3E064AA09
3E064AA11
3E064AB23
3E064BA01
3E064BA17
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3E064BA38
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3E064BC20
3E064EA18
3E064FA01
3E064FA03
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3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086AD05
3E086AD06
3E086BA13
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BA35
3E086BB05
3E086BB15
3E086BB21
3E086BB58
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3E086CA11
3E086CA28
3E086DA08
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(57)【要約】
【課題】ポリエステル樹脂を用いたシーラントフィルムにおいて、内容物の低吸着性を維持しつつ、臭気および風味の悪化を抑制すること。
【解決手段】ポリエステルを主成分として含むポリエステル層を備えるシーラントフィルムであって、前記ポリエステルは、エチレングリコールに由来する構造単位、テレフタル酸に由来する構造単位およびイソフタル酸に由来する構造単位からなり、前記イソフタル酸に由来する構造単位の比率は、前記ポリエステルを構成する前記テレフタル酸に由来する構造単位および前記イソフタル酸に由来する構造単位の比率に対して、3.0モル%以上15モル%以下であり、前記ポリエステル層中のオリゴマーの含有率は、2.0質量%未満である、シーラントフィルム。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを主成分として含むポリエステル層を備えるシーラントフィルムであって、
前記ポリエステルは、エチレングリコールに由来する構造単位、テレフタル酸に由来する構造単位およびイソフタル酸に由来する構造単位からなり、
前記イソフタル酸に由来する構造単位の比率は、前記ポリエステルを構成する前記テレフタル酸に由来する構造単位および前記イソフタル酸に由来する構造単位の比率に対して、3.0モル%以上15モル%以下であり、
前記ポリエステル層中のオリゴマーの含有率は、2.0質量%未満である、シーラントフィルム。
【請求項2】
前記ポリエステルのガラス転移温度が60℃以上80℃以下である、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項3】
表面層を備え、
前記表面層は、ポリエチレン、エチレン-アクリル酸エステル共重合体およびエチレン-メタクリル酸エステル共重合体からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1または請求項2に記載のシーラントフィルム。
【請求項4】
前記ポリエステル層と前記表面層との間に中間層をさらに備え、
前記中間層は、酸無水物グラフトポリエチレンおよびエチレン-エステル共重合体からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項3に記載のシーラントフィルム。
【請求項5】
前記ポリエステル層の厚みは、20μm以上50μm以下である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシーラントフィルム。
【請求項6】
基材フィルムと、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のシーラントフィルムと、を含む積層フィルム。
【請求項7】
さらに、ガスバリアフィルムを前記基材フィルムと前記シーラントフィルムとの間に含む、請求項6に記載に積層フィルム。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の積層フィルムを、前記シーラントフィルム同士が融着されるようにシールしてなる、包装袋。
【請求項9】
請求項6または請求項7に記載の積層フィルムを、前記シーラントフィルム同士が融着されるようにシールしてなる、包装容器。
【請求項10】
ポリエステルを主成分として含むポリエステル層を備えるシーラントフィルムの製造方法であって、
前記シーラントフィルムの製造方法は、インフレーション法により前記ポリエステル層を構成する樹脂を押出す押出工程を備え、
前記押出工程の温度は、180℃以上260℃以下であり、
前記ポリエステルは、エチレングリコールに由来する構造単位、テレフタル酸に由来する構造単位およびイソフタル酸に由来する構造単位からなり、
前記イソフタル酸に由来する構造単位の比率は、前記ポリエステルを構成する前記テレフタル酸に由来する構造単位および前記イソフタル酸に由来する構造単位の比率に対して、3.0モル%以上15モル%以下であり、
前記ポリエステル層中のオリゴマーの含有率は、2.0質量%未満である、シーラントフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーラントフィルム、それを用いた積層フィルム、包装袋および包装容器、ならびにシーラントフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、飲料、医薬品等の包装袋において、シーラントフィルムが広く使用されている。シーラントフィルムは、包装袋の最内層に設けられ、ヒートシールされることで包装袋が密封される。シーラントフィルムとしては、シール強度の高いポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が使用されてきた。
【0003】
しかし、このようなシーラントフィルムは、油脂や香料等の有機化合物からなる成分を吸着しやすいため、シーラントフィルムを有する包装袋は、内容物の香気成分や薬効成分等を吸着するという問題があった。
【0004】
この対策として、ポリオレフィン系樹脂の代わりに、ポリエステル樹脂や、ポリアクリロニトリル共重合体(PAN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が使用されている。その中でも、ポリエステル樹脂は、コモノマー成分である二塩基酸およびグリコールを選び分けることで、内容物の低吸着性を維持しつつ、低温シール性の付与やシール時の流動性を制御することが可能である。
【0005】
一方で、コモノマー成分が存在することで重合段階において低分子量体(オリゴマー)が副生成され、臭気および風味を悪化させることや、内容物の吸着性が低下すること等が問題となっている。
【0006】
なお、特開2006-305975号公報(特許文献1)には、ポリエステル樹脂としてイソフタル酸変性PET樹脂からなり、該樹脂をTダイキャスト法により製造したシーラントフィルムが開示されている。該シーラントフィルムは、低吸着性およびバリア性に優れ、安定したヒートシールが可能なことも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-305975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のシーラントフィルムは臭気および風味において改善の余地がある。そこで、本発明者らは、ポリエステル樹脂のコモノマー成分である二塩基酸およびグリコールに着目し、二塩基酸をテレフタル酸およびイソフタル酸に、グリコールをエチレングリコールに、それぞれ限定し、テレフタル酸およびイソフタル酸の特定の割合で共重合し、インフレーション法により製造することで、オリゴマーの生成を抑制できることを見出した。これにより、内容物の吸着性の低下や、臭気および風味の悪化を抑制することができる。
【0009】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ポリエステル樹脂を用いたシーラントフィルムにおいて、内容物の低吸着性を維持しつつ、臭気および風味の悪化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]
ポリエステルを主成分として含むポリエステル層を備えるシーラントフィルムであって、
前記ポリエステルは、エチレングリコールに由来する構造単位、テレフタル酸に由来する構造単位およびイソフタル酸に由来する構造単位からなり、
前記イソフタル酸に由来する構造単位の比率は、前記ポリエステルを構成する前記テレフタル酸に由来する構造単位および前記イソフタル酸に由来する構造単位の比率に対して、3.0モル%以上15モル%以下であり、
前記ポリエステル層中のオリゴマーの含有率は、2.0質量%未満である、シーラントフィルム。
【0011】
[2]
前記ポリエステルのガラス転移温度が60℃以上80℃以下である、[1]に記載のシーラントフィルム。
【0012】
[3]
表面層を備え、
前記表面層は、ポリエチレン、エチレン-アクリル酸エステル共重合体およびエチレン-メタクリル酸エステル共重合体からなる群より選択される少なくとも一種である、[1]または[2]に記載のシーラントフィルム。
【0013】
[4]
前記ポリエステル層と前記表面層との間に中間層をさらに備え、
前記中間層は、酸無水物グラフトポリエチレンおよびエチレン-エステル共重合体からなる群より選択される少なくとも一種である、[3]に記載のシーラントフィルム。
【0014】
[5]
前記ポリエステル層の厚みは、20μm以上50μm以下である、[1]から[4]のいずれか一項に記載のシーラントフィルム。
【0015】
[6]
基材フィルムと、
[1]から[5]のいずれか一項に記載のシーラントフィルムと、を含む積層フィルム。
【0016】
[7]
さらに、ガスバリアフィルムを前記基材フィルムと前記シーラントフィルムとの間に含む、[6]に記載に積層フィルム。
【0017】
[8]
[6]または[7]に記載の積層フィルムを、前記シーラントフィルム同士が融着されるようにシールしてなる、包装袋。
【0018】
[9]
[6]または[7]に記載の積層フィルムを、前記シーラントフィルム同士が融着されるようにシールしてなる、包装容器。
【0019】
[10]
ポリエステルを主成分として含むポリエステル層を備えるシーラントフィルムの製造方法であって、
前記シーラントフィルムの製造方法は、インフレーション法により前記ポリエステル層を構成する樹脂を押出す押出工程を備え、
前記押出工程の温度は、180℃以上260℃以下であり、
前記ポリエステルは、エチレングリコールに由来する構造単位、テレフタル酸に由来する構造単位およびイソフタル酸に由来する構造単位からなり、
前記イソフタル酸に由来する構造単位の比率は、前記ポリエステルを構成する前記テレフタル酸に由来する構造単位および前記イソフタル酸に由来する構造単位の比率に対して、3.0モル%以上15モル%以下であり、
前記ポリエステル層中のオリゴマーの含有率は、2.0質量%未満である、シーラントフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、ポリエステル樹脂を用いたシーラントフィルムにおいて、内容物の低吸着性を維持しつつ、臭気および風味の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施形態1で用いられるシーラントフィルムの一例を示す概略断面図である。
図2図2は、実施形態2で用いられるシーラントフィルムの一例を示す概略断面図である。
図3図3は、実施形態3で用いられるシーラントフィルムの一例を示す概略断面図である。
図4図4は、実施形態4で用いられるシーラントフィルムの一例を示す概略断面図である。
図5図5は、実施形態5で用いられるシーラントフィルムの一例を示す概略断面図である。
図6図6は、実施形態6で用いられるシーラントフィルムの一例を示す概略断面図である。
図7図7は、実施形態7の積層フィルムの一例を示す概略断面図である。
図8図8は、実施形態7の積層フィルムの一例を示す概略断面図である。
図9図9は、実施形態8の積層フィルムの一例を示す概略断面図である。
図10図10は、実施形態8の積層フィルムの一例を示す概略断面図である。
図11図11は、実施形態9の積層フィルムの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表す。
【0023】
[実施形態1]
<シーラントフィルム>
図1を参照して、本実施形態のシーラントフィルム1は、ポリエステル層11(シール側)と表面層12との2層からなるシーラントフィルムである。なお、本実施形態のシーラントフィルム1は2層からなるが、ポリエステル層11のみからなってもよい。
【0024】
(ポリエステル層)
ポリエステル層11は、ポリエステルを主成分として含む。ここで、「主成分として含む」とは、例えば、ポリエステル層11の全量に対してポリエステルの含有量が50質量%より多いことである。ポリエステル層11中のポリエステルの含有率は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは98質量%である。なお、ポリエステル層11は、他の高分子材料、各種添加剤などを配合してもよい。
【0025】
本実施形態におけるポリエステルは、エチレングリコールに由来する構造単位、テレフタル酸に由来する構造単位およびイソフタル酸に由来する構造単位からなる。該ポリエステルは、数平均分子量が15000以上21000以下である。
【0026】
イソフタル酸に由来する構造単位の比率は、ポリエステルを構成するテレフタル酸に由来する構造単位およびイソフタル酸に由来する構造単位の比率に対して、3.0モル%以上15モル%以下である。イソフタル酸に由来する構造単位の比率が3.0モル%未満の場合、低温シール性に劣るシーラントフィルムとなる。イソフタル酸に由来する構造単位の比率が15モル%を超える場合、非晶性または低結晶性のポリエステル層となり、内容物の吸着量が増加する。イソフタル酸に由来する構造単位の比率は、好ましくは8.0モル%以上であり、より好ましくは9.0モル%以上であり、さらに好ましくは10モル%以上であり、10.5モル%以上であってもよく、好ましくは13モル%以下であり、より好ましくは12.5モル%以下であり、さらに好ましくは12モル%以下であり、11.5モル%以下であってもよい。
【0027】
ポリエステル層11は、オリゴマーを含む。本実施形態におけるオリゴマーは、ポリエステルの重合段階において生成されるポリエステルよりも分子量の小さい重合体であり、鎖状オリゴマー、環状オリゴマーの双方を含む。該オリゴマーにより、臭気および風味の悪化や、内容物の吸着性の低下といった問題が起こる。本発明者らは、ポリエステルの構成を上述した成分および比率とし、後述する方法で製造することで、ポリエステル層11中のオリゴマーの含有率を2.0質量%未満とすることができることを見出した。ポリエステル層11中のオリゴマーの含有率が2.0質量%未満である場合、上記のような問題が抑制される。ポリエステル層11中のオリゴマーの含有率は、1.8質量%以下であることが好ましい。
【0028】
ポリエステル層11中のオリゴマーの含有率は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定することができる。具体的には、測定対象となるポリエステル層をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解後、アセトニトリルで再沈殿させ、上澄み液をフィルターろ過することで試料溶液を調製し、逆相系HPLC(アジレント社製、1260 インフィニティII LCシステム)により下記の条件で測定する。
[測定条件]
検出器 :紫外線吸収光度計
測定波長 :242nm
カラム :逆相カラム C18 ODS5μ(長さ:250mm、内径:4.6mm)
カラム温度:25℃
溶離液 :アセトニトリル/水=7/3
流量 :1.5ml/分
注入試料量:20μl
本実施形態におけるオリゴマーは、HPLCによる分子量分布において、溶出時間が5分から20分での複数のピーク部分を指すものである。クロマトグラムにおけるピーク波形処理では、ピーク面積を溶出時間毎に垂直分割し、各ピーク面積の分量を測定したポリエステル層の重量を用いて標準化する。測定は3回繰り返し、各ピーク面積の平均値を値として採用する。該ピーク面積が2%未満であればよい。
【0029】
ポリエステル層11の厚みは、使用用途に応じて適宜変更可能であり、例えば、20μm以上50μm以下である。ポリエステル層11の厚みが20μm未満である場合、内容物が吸着する量が増加する。ポリエステル層11の厚みが50μmを超える場合、製膜時の吐出負荷が大きく、製膜できない可能性がある。ポリエステル層11の厚みは、25μm以上45μm以下であることが好ましい。
【0030】
ポリエステル層11は、アンチブロッキング剤を含有していてもよい。アンチブロッキング剤を含有することで、ポリエステル層11の滑り性が向上してブロッキングが起こりにくくなるからである。アンチブロッキング剤としては、例えば、シリカ、タルク、珪藻土等が挙げられる。アンチブロッキング剤の含有量は、例えば、0.1質量%以上3質量%以下であり、0.5質量%以上1.5質量%以下であることが好ましい。
【0031】
ポリエステルのガラス転移温度(Tg)は、60℃以上80℃以下が好ましく、より好ましくは70℃以上75℃以下である。この場合、適正なシール強度を有するシーラントフィルム1を得ることができる。Tgは、JIS K7121に基づいて測定することができる。
【0032】
ポリエステルの結晶化温度(Tc)は、好ましくは130℃以上であり、より好ましくは135℃以上である。この場合、適正なシール強度を有するシーラントフィルム1を得ることができる。Tcは、JIS K7121に基づいて測定することができる。
【0033】
ポリエステルの融解温度(Tm)は、好ましくは200℃以上であり、より好ましくは210℃以上である。この場合、適正なシール強度を有するシーラントフィルム1を得ることができる。Tmは、JIS K7121に基づいて測定することができる。
【0034】
(表面層)
シーラントフィルム1は、表面層12を有していてもよい。
【0035】
表面層12としては、ポリエチレン(PE)、エチレン-エステル共重合体等が挙げられる。エチレン-エステル共重合体としては、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0036】
シーラントフィルム1の厚みは、使用用途に応じて適宜変更可能であり、例えば、30μm以上80μm以下である。
【0037】
本実施形態のシーラントフィルム1は、上記のような層を備えることにより、内容物(香気成分、薬効成分等)の吸着または吸収が抑制された非吸着性のものであり、オリゴマーの遊離を抑制することができる。また、十分なシール強度と低温シール性も備えている。
【0038】
低温シール性に関して、具体的には、シーラントフィルムのシール開始温度は、シール圧を0.1MPa、シール時間を1.0秒のシール条件で、シール強度が5N/15mm幅以上を発現する温度が130℃以下であることが好ましい。なお、シール開始温度は、JIS Z0238により測定される。
【0039】
シール強度に関して、具体的には、シーラントフィルムのシール強度は、シール温度を160℃、シール圧を0.1MPa、シール時間を1.0秒のシール条件で、30N/15mm幅以上であることが好ましい。なお、シール強度は、JIS Z0238により測定される。
【0040】
[実施形態2]
図2を参照して、本実施形態のシーラントフィルム1は、第1中間層13を、ポリエステル層11と表面層12との間に備える点以外は、実施形態1と同様である。
【0041】
第1中間層13を有することで、ポリエステル層11と表面層12の接着力が向上し、シーラントフィルム1のシール強度が向上する。第1中間層13としては、酸無水物グラフトポリエチレン(PE)、エチレン-エステル共重合体等が挙げられる。酸無水物グラフトPEとしては、無水マレイン酸グラフトPE、無水イタコン酸グラフトPE等が挙げられる。
【0042】
[実施形態3]
図3を参照して、本実施形態のシーラントフィルム1は、表面層12と、第1中間層13と、介在層14と、第2中間層15と、ポリエステル層11と、がこの順に積層されてなるシーラントフィルムである。介在層14と第2中間層15とをさらに積層する点以外は、実施形態2と同様である。
【0043】
介在層14としては、表面層12と同様の材料を用いることができる。なお、表面層12と介在層14とは、同じ材料を用いてもよく、異なる材料を用いてもよい。
【0044】
第2中間層15としては、第1中間層13と同様の材料を用いることができる。また、第1中間層13と第2中間層15とは、同じ材料を用いてもよく、異なる材料を用いてもよい。
【0045】
[実施形態4]
図4を参照して、本実施形態のシーラントフィルム1は、ポリエステル層11と裏面層16との2層からなるシーラントフィルムである。
【0046】
通常、本実施形態のようなシーラントフィルムの構成の場合、ポリエステル層は内容物と接しないことから、上述のようなオリゴマーによる臭気および風味の悪化は生じにくいと考えられる。しかし、例えば、アルコール類、油性食品等の飲食物や貼付剤等の医薬品を内容物として充填した場合、それらの内容物が有する駆動力によりポリエステル層のオリゴマーが内容物に溶け出すことがある。本実施形態のシーラントフィルム1では、ポリエステル層11を備えることにより、このような場合でも効果が得られる。
【0047】
裏面層16としては、上述の表面層12と同様の材料を用いることができる。
[実施形態5]
図5を参照して、本実施形態のシーラントフィルム1は、第1中間層13を、ポリエステル層11と裏面層16との間に備える点以外は、実施形態4と同様である。
【0048】
第1中間層13を有することで、ポリエステル層11と裏面層16の接着力が向上し、シーラントフィルム1のシール強度が向上する。
【0049】
[実施形態6]
図6を参照して、本実施形態のシーラントフィルム1は、ポリエステル層11と、第1中間層13と、介在層14と、第2中間層15と、裏面層16と、がこの順に積層されてなるシーラントフィルムである。介在層14と第2中間層15とをさらに積層する点以外は、実施形態5と同様である。
【0050】
裏面層16と介在層14とは、同じ材料を用いてもよく、異なる材料を用いてもよい。
[実施形態7]
<積層フィルム>
図7および8を参照して、本実施形態の積層フィルム2(包装材料)は、基材フィルム31と、接着層51と、ガスバリアフィルム4と、接着層52と、シーラントフィルム1と、がこの順に積層されてなる積層フィルムである。
【0051】
基材フィルム31としては、機械的強度や寸法安定性を有するものであれば特に限定されないが、プラスチックフィルム、紙、不織布等が使用できる。プラスチックフィルムの構成材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、PE、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、6-ナイロン等のポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリイミド等が挙げられる。プラスチックフィルムは、好ましくはPET、PE、紙である。
【0052】
本実施形態の積層フィルム2は、ガスバリアフィルム4を有していてもよい。ガスバリアフィルム4は、内容物の酸素ガスによる劣化、内容物の外部放散による減少などを抑制することができる。
【0053】
ガスバリアフィルム41としては、アルミニウム箔等の金属箔、金属箔とプラスチックフィルムとの積層フィルムを使用することができる。ガスバリアフィルム42としては、プラスチックフィルム上に無機酸化物や金属の蒸着層を有する透明蒸着フィルムを使用することができる。プラスチックフィルムは上述したものが挙げられ、透明蒸着フィルムは酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の金属酸化物の蒸着膜が挙げられる。また、ガスバリア性フィルムとして、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂等のフィルムも使用することができる。なお、本実施形態においては、ガスバリアフィルム4として透明蒸着フィルムを用いた場合、基材フィルム31および接着層51を設けなくてもよい。
【0054】
(接着層)
本実施形態の積層フィルム2は、基材フィルム31とガスバリアフィルム41との間に、接着層51を有していてもよい。接着層51は、基材フィルム31とガスバリアフィルム41との接着強度を向上することができる。
【0055】
接着層51を構成する接着剤としては、特に限定されないが、ドライラミネート用接着剤を好適に用いることができる。ドライラミネート用接着剤としては、二液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤等が挙げられる。
【0056】
上記接着剤の中では、優れた接着力と内容物の化学成分で接着力が低下し難い二液硬化型接着剤を好適に用いることができる。二液硬化型接着剤は、主剤と硬化剤からなるものであり、例えば、ポリエステル、ポリオールと多官能ポリイソシアネートからなる二液硬化型接着剤が挙げられる。なお、このような接着剤を用いて基材フィルム31とガスバリアフィルム41とを貼り合わせる方法としては、ドライラミネート法が挙げられる。
【0057】
また、本実施形態の積層フィルム2は、シーラントフィルム1とガスバリアフィルム4との間に、接着層52を有していてもよい。接着層52を構成する接着剤としては、上述の接着層51と同様の材料を用いることができる。なお、接着剤51を構成する接着剤と接着層52を構成する接着剤とは、同じ成分であってもよく、異なる成分であってもよい。なお、シーラントフィルム1とガスバリアフィルム4とを貼り合わせる方法としては、ドライラミネート法が挙げられる。
【0058】
本実施形態の積層フィルム2は、上述の実施形態のシーラントフィルム1を備えることにより、内容物(香気成分、薬効成分等)の吸着または吸収が抑制された非吸着性のものであり、オリゴマーの遊離を抑制することができる。また、十分なシール強度と低温シール性も備えている。なお、以下の実施形態においても、上述の実施形態のシーラントフィルム1を備えることにより、同様の効果が奏される。
【0059】
[実施形態8]
図9および10を参照して、本実施形態の積層フィルム2は、基材フィルム31と、接着層51と、ガスバリアフィルム4と、接着層52と、基材フィルム32と、接着層53と、シーラントフィルム1と、がこの順に積層されてなる積層フィルムである。基材フィルム32と接着層53とをさらに積層する点以外は、実施形態7と同様である。
【0060】
基材フィルム32としては、上述の基材フィルム31と同様の材料を用いることができる。なお、基材フィルム31と基材フィルム32とは、同じ材料を用いてもよく、異なる材料を用いてもよい。
【0061】
接着層53を構成する接着剤としては、上述の接着層51と同様の材料を用いることができる。なお、接着剤51を構成する接着剤、接着層52を構成する接着剤および接着層53を構成する接着剤とは、同じ成分であってもよく、異なる成分であってもよい。なお、シーラントフィルム1と基材フィルム32とを貼り合わせる方法としては、ドライラミネート法が挙げられる。
【0062】
[実施形態9]
図11を参照して、本実施形態の積層フィルム2は、基材フィルム33と、基材フィルム34と、基材フィルム35と、ガスバリアフィルム4と、接着層52と、シーラントフィルム1と、がこの順にされてなる積層フィルムである。また、接着層52とシーラントフィルム1との間に、基材フィルム32と、接着層53とをさらに積層してもよい。
【0063】
[実施形態10]
<包装袋>
上記のようにして形成された積層フィルムを用い、所望の形状に製袋し包装袋を形成する。例えば、ピロータイプの包装袋、カゼットタイプの包装袋、自立タイプの包装袋等を、目的(包装袋のデザイン、内容量や使い易さ等)に応じて作製すればよい。
【0064】
内容物としては、例えば、食品、飲料、医薬品、医薬部外品等が挙げられる。本実施形態の包装袋は、特に香気成分、薬効成分等(包装袋に吸着または吸収され易い成分、または、包装袋に吸着または吸収されることが問題となる成分)を含有する内容物について、好適に使用することができる。具体的には、本実施形態の包装袋は、例えば、アルコール飲料、香料などの香気成分を含んだ化粧品、薬効成分を含んだ貼付剤または洗口液等を収容するために好適に用いることができる。
【0065】
[実施形態11]
<包装容器>
上記のようにして形成された積層フィルムを用い、所望の形状に製袋し包装容器を形成する。例えば、ブリックタイプの包装容器、カップタイプの包装容器、トレータイプの包装容器等を、目的(包装容器のデザイン、内容量や使い易さ等)に応じて作製すればよい。内容物としては、上述の実施形態10と同様のものが挙げられる。
【0066】
[実施形態12]
<シーラントフィルムの製造方法>
本実施形態におけるシーラントフィルムは、インフレーション法により製造する。インフレーション法は、ポリエステル層を構成する樹脂を押出す押出工程を備え、押出工程の温度は、180℃以上260℃以下である。このような方法で製造することで、オリゴマーの遊離を抑制することが可能となる。
【0067】
本実施形態におけるインフレーション法は、好ましくは空冷インフレーション法である。また、表面層および中間層を設ける場合には、ポリエステル層を構成する樹脂と表面層を構成する樹脂と中間層を構成する樹脂とを共押出しすることが好ましい。以下、空冷インフレーション法により、ポリエステル層、表面層および中間層からなるシーラントフィルムの製造方法について説明する。
【0068】
空冷インフレーション法では、ポリエステル層を構成する樹脂と表面層を構成する樹脂と中間層を構成する樹脂とを別々の押出機により溶融し、溶融した各樹脂を、ダイから共押出しする共押出工程と、共押出しした溶融状態の樹脂に空気を供給し、チューブ状に膨らませると同時に、該空気が溶融状態の樹脂を空冷および固化し、チューブフィルムを得るインフレーション冷却工程と、チューブフィルム内部の空気を締め出しながら引き取る引取工程と、を有する。
【0069】
該方法で使用できるインフレーション成形機は、2層以上を押出しできるものであれば特に制限はない。
【0070】
共押出工程における押出機の温度は、180℃以上260℃以下であり、200℃以上230℃以下であることが好ましい。押出機の温度が180℃未満の場合、使用する樹脂が溶融しない可能性がある。押出機の温度が260℃を超える場合、遊離するオリゴマーの量が増加する可能性がある。また、使用する樹脂が熱劣化する可能性もある。
【0071】
インフレーション成形機におけるダイの形状は、通常円形である。かかるダイ径は、例えば、100mmΦ以上300mmΦ以下であり、200mmΦ以上250Φmm以下であることが好ましい。ダイ径が100mmΦ未満の場合、製膜効率が劣る可能性がある。ダイ径が300mmΦを超える場合、シーラントフィルムのバルブ形状が安定しない。
【0072】
インフレーション冷却工程における膨張の程度はブロー比によって定まり、シール強度や成膜安定性等に影響する。かかるブロー比は、例えば、1.5以上2.5以下であり、1.8以上2.2以下であることが好ましい。ブロー比が1.5未満の場合、製膜効率が劣る可能性がある。ブロー比が2.5を超える場合、シーラントフィルムのバルブ形状が安定しない。
【0073】
引取工程における成形速度は、例えば、5.0m/分以上25m/分以下であり、10m/分以上20m/分以下であることが好ましい。成形速度が5.0m/分未満の場合、安定的に製膜できない可能性がある。成形速度が25m/分を超える場合、シーラントフィルムの膜割れが起こる可能性がある。
【実施例0074】
以下、実施例を挙げて本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0075】
(実施例1~4、比較例1~3)
図7(a)の層構成を有する積層フィルムのシーラントフィルムにおいて、ポリエステル層を構成するポリエステル樹脂として、表1に示す組成の樹脂をそれぞれ使用した。また、表面層としてはPEを、中間層としては無水マレイン酸グラフトPEを、それぞれ使用した。
【0076】
なお、表1の「ポリエステル層構成」の欄中、TPAは「テレフタル酸」を、IPAは「イソフタル酸」を、EGは「エチレングリコール」を、他グリコールは後述する比較例5~11で使用するEG以外のグリコール成分を、それぞれ意味する。また、例えば、実施例1について、ジカルボン酸として95モル%のTPAと5モル%のIPAを、ジオールとして100モル%のEGを、含むポリエステル層であることを意味する。
【0077】
直径250mmΦのポリエステル層用押出機、直径250mmΦの表面層用押出機、直径250mmΦの中間層用押出機、を備える3種3層多層のインフレーション成形機を使用し、以下の条件で製造することで、実施例1~4および比較例1~3のシーラントフィルムを得た。製造されたシーラントフィルムの各層の厚さは実施例1~4および比較例1~3の全てにおいて、ポリエステル層が40μm、表面層が15μm、中間層が5μm、であった。
[製造条件]
押出機温度:230℃
ダイ径 :250mmΦ
ブロー比 :2.0
成形速度 :13m/分
このシーラントフィルムとは別に、基材フィルムとガスバリアフィルムを2液硬化型ポリエステルウレタン系接着剤を介してドライラミネート法で積層した。また、ガスバリアフィルムの上に上記で作製したシーラントフィルムを、2液硬化型ポリエステルウレタン系接着剤を介してドライラミネート法で積層し、実施例1~4および比較例1~3の積層フィルムを得た。
【0078】
基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)であり、厚みは12μmである。また、ガスバリアフィルムは、アルミニウム箔であり、厚みは9μmである。
【0079】
(比較例4)
シーラントフィルムをTダイ法により製膜した点を除いては、実施例3と同様にして、積層フィルムを作製した。なお、Tダイ押出し成形機内の押出機の温度は290℃であった。
【0080】
(比較例5~11)
ポリエステル層を構成するEG以外のグリコールとして、比較例5および6はブタンジオールを、比較例7はネオペンチルグリコールを、比較例8はヘキサンジオールを、比較例9~11はシクロヘキサンジメタノールを、それぞれ表1に示す割合で使用した点を除いては、実施例1と同様にして、積層フィルムを作製した。
【0081】
<評価>
(評価試験1)
評価試験1として、低温シール性の評価を行った。具体的には、上記の実施例および比較例の各々の積層フィルムを、シーラントフィルムを内側にしてシールした。シール条件は、シール圧を0.1MPa、シール時間を1.0秒として、シール温度を変化させて、シール強度が5N/15mm幅以上を発現する温度をJIS Z0238に基づいて、シール開始温度として求めた。結果を表1の「シール開始温度(℃)」欄に示す。130℃以下を良好とした。
【0082】
(評価試験2)
評価試験2として、シール強度の評価を行った。具体的には、上記の実施例および比較例の各々の積層フィルムを、シーラントフィルムを内側にしてシールした。シール条件は、シール温度を160℃、シール圧を0.1MPa、シール時間を1.0秒とした。シールされた2枚の積層フィルムのシール強度(N/15mm)を、短冊状にカットした積層フィルムについて、JIS X0238に基づいて測定した。結果を表1の「シール強度(N/15mm)」の欄に示す。30N/15mm以上を良好とした。
【0083】
(評価試験3)
評価試験3として、吸着性の評価を行った。具体的には、上記の実施例および比較例の各々の積層フィルムを所定の形状(縦:120mm、横:120mm)にカットし、2枚の積層フィルムをシーラントフィルム同士が接触するように重ねた状態で製袋機に載置し、所定の領域(シーラントフィルムの周縁部:周縁端部から10mmの範囲)をシールすることで、3方製袋タイプの包装袋を作成した。なお、この時点では、包装袋の上端(天シール部)は、内容物を充填するために未だシールされていない。シール条件は、シール温度を160℃、シール圧を0.1MPa、シール時間を1.0秒とした。
【0084】
次に上記包装袋の上端より、酒(白鶴酒造株式会社製、「大吟醸」)を窒素雰囲気下で充填し、包装袋の上端(天シール部)をシールすることで、内容物を密封した。なお、ここで用いた酒の成分であるカプリン酸エチルは、一般にシーラントフィルムに吸着されやすい成分である。
【0085】
上記のようにして内容物が収容された包装袋を、40℃に維持された恒温槽内で3ヶ月間保存した。保存後に包装袋中のヘッドスペースを固相マイクロ抽出法(SPME)にて濃縮し、ガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)によって内部標準として用いたカプリン酸エチルの標品濃度から定量を行い、初期量に対する保存期間後の残存量の比率をカプリン酸エチルの残存率(%)として算出した。結果を表1の「残存率(%)」の欄に示す。70%以上を良好とした。
【0086】
(評価試験4)
評価試験4として、オリゴマー量の評価を行った。具体的には、上記の実施例および比較例の各々のポリエステル層をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解後、アセトニトリルで再沈殿させ、上澄み液をフィルターろ過することで試料溶液を調製し、逆相系HPLC(アジレント社製、1260 インフィニティII LCシステム)により下記の条件で測定した。
[測定条件]
検出器 :紫外線吸収光度計
測定波長 :242nm
カラム :逆相カラム C18 ODS5μ(長さ:250mm、内径:4.6mm)
カラム温度:25℃
溶離液 :アセトニトリル/水=7/3
流量 :1.5ml/分
注入試料量:20μl
上記で得られたHPLCによる分子量分布において、溶出時間が5分から20分での複数のピーク部分のピーク面積を溶出時間毎に垂直分割し、各ピーク面積の分量を測定したポリエステル層の重量を用いて標準化することでピーク波形処理を行った。測定は3回繰り返し、各ピーク面積の平均値を値として採用した。結果を表1の「オリゴマー量(wt%)」欄に示す。2.0wt%未満を良好とした。
【0087】
なお、実施例1~4および比較例1~11に用いたシーラントフィルムの各ポリエステル層について、示差走査熱量分析計を用いてJIS K7121に基づいて測定したガラス転移温度、結晶化温度、融解温度を合わせて表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
表1に示される結果から、特定のポリエステルを主成分として含むポリエステル層を備えるシーラントフィルムを用いた実施例1~4の積層フィルムは、オリゴマー量が2.0wt%未満と少なく、内容物の低吸着性に優れ、臭気および風味の悪化を抑制できることがわかる。
【0090】
これに対して、IPAの含有量が規定量を超えるポリエステルを使用した比較例1~3では、オリゴマー量が2.0wt%以上であり、内容物の吸着性が高く、臭気および風味の悪化を抑制できていないことがわかる。また、シーラントフィルムをTダイ法により製膜した点を除いては実施例3と同じ組成で作製した比較例4は、オリゴマー量が2.0wt%であり、内容物の吸着性が高く、臭気および風味の悪化を抑制できていないことがわかる。さらに、EG以外のグリコールを使用した比較例5~11は、内容物の吸着性が高いことがわかる。
【0091】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
1 シーラントフィルム、11 ポリエステル層、12 表面層、13 第1中間層、14 介在層、15 第2中間層、16 裏面層、2 積層フィルム、31,32,33,34,35 基材フィルム、4,41,42 ガスバリアフィルム、51,52,53 接着層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11