(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000494
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】フレームレス燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F23D 14/22 20060101AFI20221222BHJP
F23D 14/66 20060101ALI20221222BHJP
F23C 99/00 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
F23D14/22 C
F23D14/66 B
F23C99/00 315
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101354
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】598148913
【氏名又は名称】株式会社エコム
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100214813
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 幸江
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100130281
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 道幸
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(72)【発明者】
【氏名】高梨 智志
(72)【発明者】
【氏名】野田 進
(72)【発明者】
【氏名】田邉 淳一
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 典昭
【テーマコード(参考)】
3K017
3K019
3K065
【Fターム(参考)】
3K017DC03
3K019AA06
3K019BB02
3K019BD03
3K065TA01
3K065TE04
3K065TJ06
(57)【要約】
【課題】
小型で、常温空気から高温空気の広い温度範囲の空気でフレームレス燃焼が可能なフレームレス燃焼装置を提供することにある。
【解決手段】
一段目燃焼器が、二段目環状空気流路部材の内側に配置され、二段目燃焼器の二段目空気噴出口と二段目燃料噴出口とが略同一面上になるように二段目環状空気流路部材と二段目燃料パイプとが配置され、一段目燃焼器の旋回火炎によって生じる旋回する一段目既燃ガスが、二段目環状空気流路部材と二段目燃料パイプとの間を炉内の方向に向かって進んだ後に炉内に噴出されることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内にフレームレス燃焼を生じさせるフレームレス燃焼装置において、
一段目燃料と一段目空気とを混合して燃焼させて旋回火炎を形成させるプロペラ状の旋回羽根からなる一段目燃焼器と、
円筒状で外壁内側に二段目空気が流れる環状流路を有すると共に該炉内に向かう先端側に該環状流路と連通して該二段目空気を噴出する複数の二段目空気噴出口を有する二段目環状空気流路部材と、
円筒棒状で、該炉内に向かう先端側に二段目燃料を噴出する二段目燃料噴出口を有し、該二段目環状空気流路部材の半径中心である略軸位置に延設された二段目燃料パイプと、からなる二段目燃焼器と、
を備え、
該一段目燃焼器が、該二段目環状空気流路部材の内側に配置され、
該二段目燃焼器の該二段目空気噴出口と該二段目燃料噴出口とが略同一面上になるように該二段目環状空気流路部材と該二段目燃料パイプとが配置され、
該一段目燃焼器の該旋回火炎によって生じる旋回する一段目既燃ガスが、該二段目環状空気流路部材と該二段目燃料パイプとの間を該炉内の方向に向かって進んだ後に該炉内に噴出されることを特徴とするフレームレス燃焼装置。
【請求項2】
前記二段目燃料パイプが、前記一段目燃焼器の前記旋回羽根の略軸中心に直立するように配置され、
前記一段目燃焼器の前記旋回火炎によって生じる旋回する前記一段目既燃ガスの旋回軸が、該二段目燃料パイプの軸と略同軸であることを特徴とする請求項1記載のフレームレス燃焼装置。
【請求項3】
前記一段目燃焼器の前記旋回羽根が、略軸方向に向かって開口する複数の一段目燃料噴出口を有する複数のブレードからなり、
該ブレード間の間隙を前記一段目空気が通過すると前記一段目空気が旋回し、該一段目燃料噴出口から噴出される前記一段目燃料と旋回する該一段目空気とが混合されて燃焼し、前記旋回火炎を形成させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のフレームレス燃焼装置。
【請求項4】
前記二段目環状空気流路部材と前記二段目燃料パイプとの間が、前記一段目燃焼器の一段目燃焼室であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のフレームレス燃焼装置。
【請求項5】
前記二段目環状空気流路部材の前記二段目空気噴出口と前記二段目燃料パイプの前記二段目燃料噴出口とが、該二段目環状空気流路部材の半径方向に所定の距離を持って離間していることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のフレームレス燃焼装置。
【請求項6】
前記二段目環状空気流路部材の前記二段目空気噴出口と前記二段目燃料パイプの前記二段目燃料噴出口とが、該二段目環状空気流路部材の半径方向に所定の距離をもって離間し、
該所定の距離が、
該二段目空気噴出口から噴出された前記二段目空気と該二段目燃料噴出口から噴出された前記二段目燃料とが該二段目空気噴出口及び該二段目燃料噴出口の直近で混合されず、該二段目空気と該二段目燃料とがそれぞれ前記一段目既燃ガスにより高温化及び希釈化された後に混合されて、フレームレス燃焼を生じ得る距離である、
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のフレームレス燃焼装置。
【請求項7】
前記二段目環状空気流路部材の前記二段目空気噴出口が、互いに所定の距離をもって離間していることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のフレームレス燃焼装置。
【請求項8】
前記二段目環状空気流路部材の前記二段目空気噴出口が、互いに所定の距離をもって離間し、
該所定の距離は、
前記一段目燃焼器と前記二段目燃焼器との燃焼によって生じた前記炉内の炉内既燃ガスが、該二段目空気噴出口から噴出された二段目空気及び前記二段目燃料噴出口から噴出された前記二段目燃料の方向に流入されて、流入された該炉内既燃ガスにより該二段目空気噴出口から噴出された該二段目空気及び該二段目燃料噴出口から噴出された該二段目燃料が高温化及び希釈化されて、フレームレス燃焼を生じ得る距離である、
ことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のフレームレス燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉の内部(炉内)にフレームレス燃焼を生じさせるフレームレス燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高温空気燃焼は、酸化剤である空気を燃焼排熱等で加熱するとともに、既燃ガスで希釈することで高効率燃焼及び窒素酸化物(NOx)の排出低減を実現している。高温空気燃焼は、フレームレス燃焼或いは緩慢燃焼とも呼ばれ、輝炎の存在しない1800[K]以下の平坦な温度分布を持つ火炎となる。NOxは、1800[K]以上の火炎温度で生成されるため、高温空気燃焼は、NOx排出低減燃焼技術である。
【0003】
従来のフレームレス燃焼を実現するリジェネバーナ(フレームレス燃焼装置)は、一対の蓄熱体と燃焼器からなり、既燃ガスで蓄熱体を加熱し、高温となった蓄熱体に空気を流すことで高温空気を生成している。さらに、この従来のリジェネバーナは、燃料ノズルと空気ノズルに距離を持たすことで、浮き上がり火炎を形成させ、浮き上がり火炎基部で高温空気と既燃ガスの混合を促進させ、高温空気の希釈を行うことで低NOxまた高効率となる燃焼を実現する。この従来のリジェネバーナの欠点は一対の燃焼装置が必要となること、燃料ノズルと空気ノズルに距離を持たすためシステムが大がかりになること、である。
【0004】
このような従来のフレームレス燃焼装置の課題を解決するために、本願出願人は、特許文献1に示すフレームレス燃焼装置を提案している。特許文献1に示すフレームレス燃焼装置は、レキュペレータ(熱交換器)を備えた二段燃焼方式による燃焼器で、一段目燃焼器の既燃ガスで二段目燃焼器のための高温空気と燃料を同時に希釈することで高効率低NOx高温空気燃焼(フレームレス燃焼)を実現している。
【0005】
特許文献1に示すフレームレス燃焼装置は、具体的には、燃料ガスと空気(酸化剤ガス)とをるつぼ炉(炉)の内部に供給し、フレームレス燃焼により発生する発生ガスをるつぼ炉の外部に排気する。そして、特許文献1に示すフレームレス燃焼装置は、発生ガスが有する熱エネルギーは、熱交換装置において空気を加熱する。また、特許文献1に示すフレームレス燃焼装置は、燃焼ガス発生装置で燃料を希薄燃焼させて、酸素ガスの体積濃度が13[%]未満で、温度が1200[K]よりも高い燃焼ガスを発生させ、燃焼ガスは、るつぼ炉の内部に放出されて、このるつぼ炉の内部で空気と混合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の本願出願人が提案したフレームレス燃焼装置は、フレームレス燃焼を安定的に生じさせることが可能であるが、燃焼装置の更なる小型化が求められている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、小型で、常温空気から高温空気の広い温度範囲の空気でフレームレス燃焼が可能なフレームレス燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載のフレームレス燃焼装置は、一段目燃料と一段目空気とを混合して燃焼させて旋回火炎を形成させるプロペラ状の旋回羽根からなる一段目燃焼器と、円筒状で外壁内側に二段目空気が流れる環状流路を有すると共に炉内に向かう先端側に環状流路と連通して二段目空気を噴出する複数の二段目空気噴出口を有する二段目環状空気流路部材と、円筒棒状で、炉内に向かう先端側に二段目燃料を噴出する二段目燃料噴出口を有し、二段目環状空気流路部材の半径中心である略軸位置に延設された二段目燃料パイプと、からなる二段目燃焼器と、を備え、一段目燃焼器が、二段目環状空気流路部材の内側に配置され、二段目燃焼器の二段目空気噴出口と二段目燃料噴出口とが略同一面上になるように二段目環状空気流路部材と二段目燃料パイプとが配置され、一段目燃焼器の旋回火炎によって生じる旋回する一段目既燃ガスが、二段目環状空気流路部材と二段目燃料パイプとの間を炉内の方向に向かって進んだ後に炉内に噴出されることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載のフレームレス燃焼装置は、二段目燃料パイプが、一段目燃焼器の旋回羽根の略軸中心に直立するように配置され、一段目燃焼器の旋回火炎によって生じる旋回する一段目既燃ガスの旋回軸が、二段目燃料パイプの軸と略同軸であることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載のフレームレス燃焼装置は、一段目燃焼器の旋回羽根が、略軸方向に向かって開口する複数の一段目燃料噴出口を有する複数のブレードからなり、ブレード間の間隙を一段目空気が通過すると一段目空気が旋回し、一段目燃料噴出口から噴出される一段目燃料と旋回する一段目空気とが混合されて燃焼し、旋回火炎を形成させることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載のフレームレス燃焼装置は、二段目環状空気流路部材と二段目燃料パイプとの間が、一段目燃焼器の一段目燃焼室であることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載のフレームレス燃焼装置は、二段目環状空気流路部材の二段目空気噴出口と二段目燃料パイプの二段目燃料噴出口とが、二段目環状空気流路部材の半径方向に所定の距離を持って離間していることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載のフレームレス燃焼装置は、二段目環状空気流路部材の二段目空気噴出口と二段目燃料パイプの二段目燃料噴出口とが、二段目環状空気流路部材の半径方向に所定の距離をもって離間し、所定の距離が、二段目空気噴出口から噴出された二段目空気と二段目燃料噴出口から噴出された二段目燃料とが二段目空気噴出口及び二段目燃料噴出口の直近で混合されず、二段目空気と二段目燃料とがそれぞれ一段目既燃ガスにより高温化及び希釈化された後に混合されて、フレームレス燃焼を生じ得る距離である、ことを特徴とする。
【0015】
請求項7記載のフレームレス燃焼装置は、二段目環状空気流路部材の二段目空気噴出口が、互いに所定の距離をもって離間していることを特徴とする。
【0016】
請求項8記載のフレームレス燃焼装置は、二段目環状空気流路部材の二段目空気噴出口が、互いに所定の距離をもって離間し、所定の距離は、一段目燃焼器と二段目燃焼器との燃焼によって生じた炉内の炉内既燃ガスが、二段目空気噴出口から噴出された二段目空気及び二段目燃料噴出口から噴出された二段目燃料の方向に流入されて、流入された炉内既燃ガスにより二段目空気噴出口から噴出された二段目空気及び二段目燃料噴出口から噴出された二段目燃料が高温化及び希釈化されて、フレームレス燃焼を生じ得る距離である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本願の発明によれば、小型化が可能で、常温空気から高温空気の広い温度範囲の空気でフレームレス燃焼が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るフレームレス燃焼装置が、炉に備え付けられた状態の一例を炉を断面で示す説明図である。
【
図2】同フレームレス燃焼装置の外観を示す説明図である。
【
図3】同フレームレス燃焼装置の一部を断面で示す説明図である。
【
図4】同フレームレス燃焼装置の先端側の面を示す説明図である。
【
図5】同フレームレス燃焼装置の一段目燃焼器の旋回羽根を示す説明図である。
【
図6】同フレームレス燃焼装置の全体の断面を示す説明図である。
【
図7】同フレームレス燃焼装置の動作を示す説明図である。
【
図8】同フレームレス燃焼装置の炉内温度とNOx排出量との関係をグラフで示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明に係るフレームレス燃焼装置が、炉に備え付けられた状態の一例を炉を断面で示す説明図である。
図2は、同フレームレス燃焼装置の外観を示す説明図である。
図3は、同フレームレス燃焼装置の一部を断面で示す説明図である。
図4は、同フレームレス燃焼装置の先端側の面を示す説明図である。
図5は、同フレームレス燃焼装置の一段目燃焼器の旋回羽根を示す説明図である。
図6は、同フレームレス燃焼装置の全体の断面を示す説明図(
図4のA-A線部分の矢視方向の断面を、縦方向にして示した図面)である。
図7は、同フレームレス燃焼装置の動作を示す説明図である。
図8は、同フレームレス燃焼装置の炉内温度とNOx排出量との関係をグラフで示す説明図である。
【0020】
フレームレス燃焼装置1は、
図1に示すように、例えば、加熱炉や、アルミニウムの地金を溶解するるつぼ炉のような炉100に用いる燃焼装置であり、炉100の内部である炉内110にフレームレス燃焼を生じさせるためのものである。
【0021】
フレームレス燃焼装置1は、
図1~
図7に示すように、全体として略円筒状で、その円筒の外周側(二段目環状空気流路部材54の外壁54a)にフランジ16を張り出させている。そして、フレームレス燃焼装置1は、
図1に示すように、後述する二段目燃焼器50の燃焼側(後述する先端側)が炉内110に配置されるように、炉100の炉壁120に貫通され、炉壁120の外側にフランジ16が当接されてフランジ16を炉壁120の外側にボルト等で固定することにより、炉100に取り付けられる。尚、各部材に共通して、フレームレス燃焼装置1の炉内110に向かう側を先端側とし、逆側を後端側とする。
【0022】
フレームレス燃焼装置1は、基本構造としては二段燃焼方式であり、一段目燃焼器30と二段目燃焼器50とで構成されている。フレームレス燃焼装置1の一段目燃焼器30は、一段目燃料44と一段目空気46とを混合して燃焼させて旋回火炎を形成させるプロペラ状の旋回羽根32等から構成される。また、フレームレス燃焼装置1の二段目燃焼器50は、二段目環状空気流路部材54や二段目燃料パイプ52等から構成される。
【0023】
二段目燃焼器50の二段目環状空気流路部材54は、円筒状で内部に二段目空気62が流れる環状流路を有すると共に炉内110に向かう先端側に環状流路と連通して二段目空気62を噴出する複数の二段目空気噴出口56aを有する。また、二段目燃焼器50の二段目燃料パイプ52は、円筒棒状で、炉内110に向かう先端側に二段目燃料60を噴出する二段目燃料噴出口52cを有し、二段目環状空気流路部材54の内側の略軸位置に略同軸で延設されている。
【0024】
フレームレス燃焼装置1は、一段目燃焼器30が、二段目環状空気流路部材54の内側(必ずしも、内側に限定されず、後端側であってもよい)に配置され、二段目燃焼器50の二段目空気噴出口56aと二段目燃料噴出口52cとが略同一面上になるように二段目環状空気流路部材54と二段目燃料パイプ52とが配置されている。そして、フレームレス燃焼装置1は、一段目燃焼器30の旋回火炎によって生じる旋回する一段目既燃ガス48が、二段目環状空気流路部材54と二段目燃料パイプ52との間を炉内110の方向に向かって進んだ後に、炉内110に噴出されるものである。
【0025】
このような、フレームレス燃焼装置1の基本構造により、一段目燃焼器30の旋回火炎で生成される一段目既燃ガス48が、二段目燃料60及び二段目空気62に二段燃焼の開始直前で混合し、希薄高温燃料と希薄高温空気を生成する機能を持つ。フレームレス燃焼装置1では、この希薄高温燃料と希薄高温空気とが混合されて燃焼することで、フレームレス燃焼が生じることになる。そして、フレームレス燃焼装置1の基本構造により、小型で、常温空気から高温空気の広い温度範囲の空気で低NOx高温空気燃焼(フレームレス燃焼)が可能である。
【0026】
また、二段目燃料パイプ52を、一段目燃焼器30の旋回羽根32の略軸中心に直立するように配置し、一段目燃焼器30の旋回火炎によって生じる旋回する一段目既燃ガス48の旋回軸が、二段目燃料パイプ52の軸と略同軸になるようにしてもよい。
【0027】
さらに、一段目燃焼器30の旋回羽根32を、軸方向に向かって開口する複数の一段目燃料噴出口34eを有する複数のブレード34から構成させ、ブレード34間の間隙を一段目空気46が通過すると一段目空気46が旋回し、一段目燃料噴出口34eから噴出される一段目燃料44と旋回する一段目空気46とが混合されて燃焼し、旋回火炎を形成させるようにしてもよい。
【0028】
このように、旋回羽根32のブレード34に設けられた一段目燃料噴出口34eからの一段目燃料44は一段目空気流中(一段目空気46の気流中)に噴出されるので、基本的には拡散燃焼であるが、一段目燃料44が多数の一段目燃料噴出口34eから噴出されて一段目空気46と急速混合されるために予混合燃焼に近い燃焼形態を持つことになる。そして、旋回火炎は、一段目既燃ガス48が旋回火炎自身を予熱及び希釈することで、広い安定燃焼範囲と低NOx燃焼を実現することになる。
【0029】
さらに、二段目環状空気流路部材54と二段目燃料パイプ52との間を、一段目燃焼器30の一段目燃焼室40にするようにしてもよい。
【0030】
さらに、二段目環状空気流路部材54の二段目空気噴出口56aと二段目燃料パイプ52の二段目燃料噴出口52cとを、二段目環状空気流路部材54の半径方向に離間させるようにしてもよい。このように、二段目空気噴出口56aと二段目燃料噴出口52cとが距離を持って設けられることで、二段目燃焼70には、着火遅れが生じることになる。この着火遅れ時間において、二段目燃料60及び二段目空気62が高温希釈される。
【0031】
さらに、二段目環状空気流路部材54の二段目空気噴出口56aを、互いに離間させるようにしてもよい。二段目空気噴出口56aを互いに離間させることにより、炉内既燃ガス72の巻き込み(流入)による高温希釈が生じる。
【実施例0032】
以下、より具体的なフレームレス燃焼装置1の実施例を説明する。フレームレス燃焼装置1は、
図1~
図7に示すように、全体として略円筒状で、外形的には、主に、円柱部材であるハブ10と、ハブ10の炉内110に向かう先端側に設けられた略円筒状の二段目環状空気流路部材54とで構成されている。
【0033】
フレームレス燃焼装置1のハブ10の先端側には、ハブ10よりも大径な円盤状で中央に穴を有するハブフランジ12を有し、ハブフランジ12のハブ10とは反対側(先端側)には円環状の燃焼器フランジ14が密接するように設けられている。そして、燃焼器フランジ14から、円筒状の二段目環状空気流路部材54が、ハブ10、ハブフランジ12及び燃焼器フランジ14と軸が略同一になるように先端側に向かって起立するように設けられている。
【0034】
ハブ10の略軸中心から、円筒棒状の二段目燃料パイプ52が先端側に向かって起立している。二段目燃料パイプ52は、先端側に二段目燃料噴出口52cを有し、二段目環状空気流路部材54の内側の略軸位置に略同軸で延設された配置となっている。二段目燃料パイプ52の後端側は、ハブ10に刺さり込んでいるような構造であり、ハブ10の外周面に向かって穿設された二段目燃料口52bに連通し、二段目燃料パイプ52の内側は、先端側に向かう二段目燃料60の流れる二段目燃料流路52aになっている。二段目燃料パイプ52の先端側の二段目燃料噴出口52cの位置は、二段目環状空気流路部材54の先端側の端部と、略同一面になるような位置である。
【0035】
二段目燃料パイプ52の長手方向の略中央には、プロペラ状の旋回羽根32が設けられ、二段目燃料パイプ52が旋回羽根32の略軸中心に直立するような配置である。旋回羽根32は、複数のブレード34を有し、各ブレード34には、旋回羽根32の略軸方向(すなわち、先端側)に向かって開口する複数の一段目燃料噴出口34eが穿設されている。
【0036】
旋回羽根32は、より具体的には、
図3~
図5に示すように、円柱状の中心部材32aから複数のブレード34が放射状に延びて設けられている。個々のブレード34は、前面34a側(先端側)から後面34d側(後端側)に向かって傾斜する端部である前縁34bに、旋回羽根32の中心に向かって複数の一段目燃料噴出口34eが穿設されている。各ブレード34の前縁34bに対向する後縁34cは、前縁34bと逆の傾きを有している。そして、前縁34bと隣り合うブレード34の後縁34cとが、略平行して対向した状態で離間し、前縁34bと隣り合うブレード34の後縁34cの傾きがあることで、前縁34bと隣り合うブレード34の後縁34cとの間を通過する一段目空気46が旋回させられることになる。尚、各ブレード34の複数の一段目燃料噴出口34eは、中心部材32aの後端側に向かって開口する連通孔32bに連通している。
【0037】
旋回羽根32の後端側とハブ10との間には、二段目燃料パイプ52を覆うように、円筒状の一段目燃料流路部材36が設けられている。具体的には、一段目燃料流路部材36は、旋回羽根32の中心部材32aの後端側の径と略同径で、先端側が中心部材32aの後端側に略同軸で密接し、後端側がハブフランジ12及び燃焼器フランジ14を抜けてハブ10に挿嵌されている。そして、一段目燃料流路部材36の内周と二段目燃料パイプ52の外周との間が、ハブ10の外周面に向かって穿設された一段目燃料口36bに連通している。このような構成により、一段目燃料口36bから一段目燃料流路部材36の内周と二段目燃料パイプ52の外周との間に、一段目燃料流路36aが形成され、この一段目燃料流路36aが、旋回羽根32の中心部材32aの連通孔32bに連通している。
【0038】
二段目燃料パイプ52及び旋回羽根32の外側には、円筒状の二段目環状空気流路部材54が設けられている。二段目環状空気流路部材54は、実際には、円筒状の外周を形成する円筒状の外壁54aと、円筒状の内周を形成する円筒状の先端側内壁54bと後端側内壁54cとで、構成されている。
【0039】
二段目環状空気流路部材54は、外壁54aである筒体と、先端側内壁54bと後端側内壁54cとからなる筒体の2つで構成され、後端側は、燃焼器フランジ14によって密封されるように燃焼器フランジ14に固定され、先端側は、円環状の二段目空気ノズル板56で、外壁54aと先端側内壁54bとの間が封止されるような形態になっている。二段目空気ノズル板56は、所定の間隔で、複数の二段目空気噴出口56aが穿設されている。
【0040】
二段目環状空気流路部材54の外壁54aの後端側には、外側方向に突出する円筒状の一段目空気口部材38aが挿嵌され、一段目空気口部材38aの一端の開口が一段目空気口38bとなり、他端側が、一段目燃料流路部材36と後端側内壁54cとの間に連通している。これにより、一段目空気口38bから一段目空気口部材38aを抜けて、一段目燃料流路部材36と後端側内壁54cとの間に通じる部分が、一段目空気流路38cとなっている。
【0041】
また、二段目環状空気流路部材54の外壁54aの後端側には、外側方向に突出する円筒状の二段目空気口部材54dが挿嵌され、二段目空気口部材54dの一端の開口が二段目空気口54eとなり、他端側が、外壁54aと先端側内壁54b及び後端側内壁54cとの間に連通している。これにより、二段目空気口54eから二段目空気口部材54dを抜けて、外壁54aと先端側内壁54b及び後端側内壁54cとの間に通じる部分が、二段目空気流路54fとなっている。そして、二段目空気流路54fの先端側は、二段目空気ノズル板56の二段目空気噴出口56aへと繋がる。
【0042】
このように、二段目環状空気流路部材54の後端側内壁54cは、二段目空気流路54fを形成させると共に、一段目空気流路38cを形成させる一段目空気流路部材38をも兼ねることになる。
【0043】
尚、二段目環状空気流路部材54の先端側内壁54bと二段目燃料パイプ52との間は、一段目燃焼器30の一段目燃焼室40となり、先端側は、二段目空気ノズル板56の一段目既燃ガス噴出口56bを介して、炉内110に向かって開放されている。このように、二段目環状空気流路部材54の二段目空気噴出口56aと、二段目燃料パイプ52の二段目燃料噴出口52cとが、二段目環状空気流路部材54の半径方向に離間している。
【0044】
このように、フレームレス燃焼装置1は、二段燃焼方式であり、一段目燃焼器30と二段目燃焼器50とで構成されている。フレームレス燃焼装置1の一段目燃焼器30は、一段目燃料44と一段目空気46とを混合して燃焼させて旋回火炎を形成させるプロペラ状の旋回羽根32等から構成され、二段目燃焼器50は、二段目環状空気流路部材54や二段目燃料パイプ52等から構成されている。
【0045】
次に、フレームレス燃焼装置1の動作を説明する。まず、一段目燃焼器30の動作を説明する。一段目空気口部材38aの一段目空気口38bから、常温の一段目空気46を供給し、一段目空気46を一段目空気流路38cへと流すようにする。すると、一段目空気46は、旋回羽根32の各ブレード34の後面34d側から前面34a側に向かって、前縁34bと隣り合うブレード34の後縁34cとの間を通過する。前縁34bと隣り合うブレード34の後縁34cとの間を通過した一段目空気46は、旋回羽根32により、旋回させられて、一段目燃焼室40に噴出されることになる。
【0046】
また、ハブ10の一段目燃料口36bから、一段目燃料44を供給し、一段目燃料44を一段目燃料流路36aへと流すようにする。すると、一段目燃料44は、旋回羽根32の中心部材32aの連通孔32bから、各ブレード34の一段目燃料噴出口34eから、一段目燃焼室40に噴出されることになる。
【0047】
そして、多数の一段目燃料噴出口34eから噴出する一段目燃料44が、旋回する一段目空気46と急速混合され、図示しない着火手段により点火されて、一段目燃焼器30の燃焼が行われ、旋回燃焼(旋回火炎)が生じ、さらに旋回火炎により旋回する一段目既燃ガス48が生じることになる。この一段目既燃ガス48は、一段目燃焼室40を二段目燃料パイプ52の周囲を旋回しつつ、先端側の方向に向かって進み、旋回した状態のままで、二段目空気ノズル板56の一段目既燃ガス噴出口56bから、炉内110に噴出される。
【0048】
すなわち、一段目燃焼器30の旋回火炎によって生じる旋回する一段目既燃ガス48が、二段目環状空気流路部材54と二段目燃料パイプ52との間を炉内110の方向に向かって進んだ後に、炉内110に噴出されるものである。そして、一段目燃焼器30の旋回火炎によって生じる旋回する一段目既燃ガス48の旋回軸が、二段目燃料パイプ52の軸と略同軸である。
【0049】
尚、この一段目燃焼器30の一段目燃料44は、旋回羽根32に設けられた一段目燃料噴出口34eから一段目空気46中に噴出されるので、基本的には拡散燃焼であるが、多数の一段目燃料噴出口34eから一段目燃料44が噴出され一段目空気46と急速混合されるため、予混合燃焼に近い燃焼形態を持つことになる。そして、一段目燃焼は、旋回火炎が、一段目既燃ガス48により旋回火炎自身を予熱及び希釈されることで、広い安定燃焼範囲と低NOx燃焼を実現する。
【0050】
次に、二段目燃焼器50の動作を説明する。二段目空気口部材54dの二段目空気口54eから、常温から高温の広い温度範囲のうち任意の温度の二段目空気62を供給し、二段目空気62を二段目空気流路54fへと流すようにする。すると、二段目空気62は、二段目空気ノズル板56の二段目空気噴出口56aから、炉内110に噴出される。
【0051】
また、ハブ10の二段目燃料口52bから、二段目燃料60を供給し、二段目燃料60を二段目燃料パイプ52へと流すようにする。すると、二段目燃料60は、二段目燃料パイプ52の内部の二段面燃料流路52aを通って、二段目燃料噴出口52cから、炉内110に噴出される。
【0052】
そして、フレームレス燃焼器1の先端側で、一段目燃焼器30の旋回火炎で生成される一段目既燃ガス48が、二段目燃料60と二段目空気62を二段目燃焼の開始直前で混合し、希薄高温燃料と希薄高温空気を生成することになる。希薄高温燃料となった二段目燃料60と希薄高温になって二段目空気62とが混合され、フレームレス燃焼条件となり自着火によって、二段目燃焼器50の二段目燃焼70が行われることになる。
【0053】
実際には、二段目空気噴出口56aと二段目燃料噴出口52cとが、二段目環状空気流路部材54の半径方向に離間していることから、
図7に示すように、二段目燃焼70には着火遅れDが生じる。さらに、二段目空気噴出口56aが互いに離間していることから、
図7の炉内既燃ガス72の矢印の動きのように、炉内既燃ガス72が、二段目燃料60の流れや二段目空気62の流れや一段目既燃ガス48の旋回する流れによって生じる伴流に影響されて、より、二段目燃料60や二段目空気62が高温希釈されることになる(隣接する二段目空気噴出口56a間から流入する炉内既燃ガス72による高温化及び希釈化)。
【0054】
フレームレス燃焼器1は、一段目燃焼器30による一段目既燃ガス48による希釈や炉内既燃ガス72の巻き込みによる希釈によって高温希釈燃料化された二段目燃料60と高温希釈空気化された二段目空気62により、燃焼温度が1800[K]以下の平坦な温度分布を持つ低NOxフレームレス燃焼(高温空気燃焼、緩慢燃焼)が実現する。
【0055】
以上のように構成されたフレームレス燃焼装置1によれば、常温空気から高温空気の広い温度範囲の空気で低NOx高温空気燃焼(フレームレス燃焼)が可能である。尚、本実施の形態のフレームレス燃焼装置1の性能としては、
図8の炉内温度とNOx排出量との関係をグラフで示すように、300度の余熱空気を用いた場合と、常温空気を用いた場合とで、NOx排出量の排出量は、共に十分に抑えられており、炉内温度的にも、低NOx高温空気燃焼(フレームレス燃焼)が実現されていることを示している。
【0056】
尚、二段目環状空気流路部材54の二段目空気噴出口56aと二段目燃料パイプ52の二段目燃料噴出口52cとが、二段目環状空気流路部材54の半径方向に所定の距離をもって離間しているが、その所定の距離は、二段目空気噴出口56aから噴出された二段目空気62と二段目燃料噴出口52cから噴出された二段目燃料60とが二段目空気噴出口56a及び二段目燃料噴出口52cの直近で混合されず、二段目空気62と二段目燃料60とがそれぞれ一段目既燃ガス48により高温化及び希釈化された後に混合されて、フレームレス燃焼を生じ得る距離である。
【0057】
また、二段目環状空気流路部材54の二段目空気噴出口56aが、互いに所定の距離をもって離間しているが、その所定の距離は、一段目燃焼器30と二段目燃焼器50との燃焼によって生じた炉内110の炉内既燃ガス72が、二段目空気噴出口56aから噴出された二段目空気62及び二段目燃料噴出口52cから噴出された二段目燃料60の方向に流入されて、流入された炉内既燃ガス72により二段目空気噴出口56aから噴出された二段目空気62及び二段目燃料噴出口52cから噴出された二段目燃料60が高温化及び希釈化されて、フレームレス燃焼を生じ得る距離である。
【0058】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。