(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049414
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】二軸延伸ポリプロピレンフィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20230403BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20230403BHJP
C08L 23/12 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
B32B27/32 E
C08L23/08
C08L23/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159138
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】592184876
【氏名又は名称】フタムラ化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 咲衣
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AK63
4F100AK63B
4F100BA03
4F100BA06
4F100EJ38A
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4F100GB15
4F100JC00
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4F100JN01
4F100JN01A
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4F100JN01C
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4J002BB052
4J002BB121
4J002GF00
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】環境負荷の低減を図りつつ、優れた透明性を備えるとともに、剛性にも優れる二軸延伸ポリオレフィンフィルムを提供する。
【解決手段】第一表層、中間層及び第二表層からなり、中間層には植物由来直鎖状低密度ポリエチレンが含有されてなるとともに、JIS K 7136(2000)に準拠して測定したヘーズ値が8%以下かつ、JIS K 7172(1999)に準拠して測定したMD方向の引張弾性率とTD方向の引張弾性率の合計値が4.0GPa以上である二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、第一表層及び第二表層は、プロピレン系重合体を主体とする樹脂組成物からなり、厚さは0.5μm超8.0μm未満とし、中間層は、プロピレン単独重合体(A)80~99重量%、植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)1~20重量%とする組成である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一表層、中間層及び第二表層からなり、
前記中間層には植物由来直鎖状低密度ポリエチレンが含有されてなるとともに、
JIS K 7136(2000)に準拠して測定したヘーズ値が8%以下かつ、
JIS K 7172(1999)に準拠して測定したMD方向の引張弾性率とTD方向の引張弾性率の合計値が4.0GPa以上である二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、
前記第一表層及び前記第二表層は、プロピレン系重合体を主体とする樹脂組成物からなり、厚さは0.5μm超8.0μm未満とし、
前記中間層は、プロピレン単独重合体(A)80~99重量%、前記植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)1~20重量%とする組成である
ことを特徴とする二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項2】
前記中間層の前記プロピレン単独重合体(A)にメソペンタッド分率(mmmm)が93%以上のプロピレン単独重合体が5重量%以上含有される請求項1に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、再生可能資源の利用度を高めて環境負荷を軽減した循環型社会への取り組みが積極的に求められている。再生可能資源は、主に植物や植物由来の原料を加工した資源であり、バイオマス資源とも称される。バイオマス資源の場合、植物体の生育に伴い大気中の二酸化炭素は吸収される。そして、バイオマス資源として燃料等に利用されると再び水と二酸化炭素に分解される。従って、二酸化炭素の量は増えない。つまり、バイオマス資源はカーボンニュートラルの点から今後大きく取り入れる必要のある資源である。
【0003】
プラスチックの分野においては、バイオマス由来のプラスチックとしてポリ乳酸や生分解性ポリマー等のバイオマス由来プラスチックが製造されているものの、生産量が限られており、広く普及しているということはできない。一方、汎用プラスチックのうち、最も多く使用される材料であるポリエチレンに関して、植物由来の糖分からエタノールを経てポリエチレンを得る手法が商業化され、普及している。
【0004】
バイオマス由来のポリエチレンを使用した樹脂フィルムとして、エチレン系樹脂のみを使用したフィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、このフィルムにおいては、エチレン系樹脂のみで構成されているため、耐熱性に劣る。また、ポリプロピレン系樹脂に植物由来のポリエチレンが添加されたフィルムが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、これらフィルムは、透明性や透視感に劣るきらいがある。
【0005】
そこで、発明者らは鋭意検討を重ね、包装分野において多用される二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおいて、バイオマス資源に由来する樹脂を含有して環境負荷の低減を図るとともに、優れた透明性を有し、かつ、加工適性に優れた二軸延伸ポリプロピレンフィルムを開発するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5862055号公報
【特許文献2】特許第6764754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記状況に鑑み提案されたものであり、環境負荷の低減を図りつつ、優れた透明性を備えるとともに、剛性にも優れる二軸延伸ポリオレフィンフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、第1の発明は、第一表層、中間層及び第二表層からなり、前記中間層には植物由来直鎖状低密度ポリエチレンが含有されてなるとともに、JIS K 7136(2000)に準拠して測定したヘーズ値が8%以下かつ、JIS K 7127(1999)に準拠して測定したMD方向の引張弾性率とTD方向の引張弾性率の合計値が4.0GPa以上である二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、前記第一表層及び前記第二表層は、プロピレン系重合体を主体とする樹脂組成物からなり、厚さは0.5μm超8.0μm未満とし、前記中間層は、プロピレン単独重合体(A)80~99重量%、前記植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)1~20重量%とする組成であることを特徴とする二軸延伸ポリプロピレンフィルムに係る。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記中間層の前記プロピレン単独重合体(A)にメソペンタッド分率(mmmm)が93%以上のプロピレン単独重合体が5重量%以上含有される二軸延伸ポリプロピレンフィルムに係る。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムによると、第一表層、中間層及び第二表層からなり、前記中間層には植物由来直鎖状低密度ポリエチレンが含有されてなるとともに、JIS K 7136(2000)に準拠して測定したヘーズ値が8%以下かつ、JIS K 7127(1999)に準拠して測定したMD方向の引張弾性率とTD方向の引張弾性率の合計値が4.0GPa以上である二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、前記第一表層及び前記第二表層は、プロピレン系重合体を主体とする樹脂組成物からなり、厚さは0.5μm超8.0μm未満とし、前記中間層は、プロピレン単独重合体(A)80~99重量%、前記植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)1~20重量%とする組成であるから、環境負荷の低減を図りつつ、優れた透明性を備えるとともに、剛性にも優れて良好な加工適性を有する二軸延伸ポリオレフィンフィルムとすることができる。
【0011】
第2の発明に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムによると、第1の発明において、前記中間層の前記プロピレン単独重合体(A)にメソペンタッド分率(mmmm)が93%以上のプロピレン単独重合体が5重量%以上含有されるため、さらに剛性に優れた二軸延伸ポリオレフィンフィルムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施例に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの中間層には、植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)が添加されてなる。植物由来の樹脂組成物をフィルムに用いることにより環境負荷の低減を図ることができる。しかしながら、植物由来の樹脂組成物の配合比率が大きくなりすぎると、フィルムの透明性が劣ってしまい使用に適さなかったり、所望の剛性が得られずに加工適性に劣ることとなる。
【0014】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、中間層に植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)が添加されつつも、十分な透明性と加工適性を備えるため、JIS K 7136(2000)に準拠して測定したヘーズ値が8%以下かつ、JIS K 7127(1999)に準拠して測定したMD方向の引張弾性率とTD方向の引張弾性率の合計値が4.0GPa以上とされる。フィルムのヘーズ値が8%以下であれば、透明フィルムとしての取り扱いに適性がある。フィルムのMD方向の引張弾性率とTD方向の引張弾性率の合計値が4.0GPa以上であれば、加工時のシワや破れが生じにくくなる十分な剛性が確保される。
【0015】
図1は、本発明の一実施例に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルム10の概略断面図である。このフィルム10は、プロピレン系重合体を主体とする第一表層11及び第二表層12と、プロピレン単独重合体(A)及び植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)からなる中間層13からなる積層フィルムである。このフィルム10は、各層の原料樹脂が溶融されてTダイ等から所定の厚さで吐出され共押出しされるTダイ法等の公知の製造方法により製造される。共押出しにより製膜されることによって、各層の間に接着層を介すことなく一体化されるため、生産性に優れつつ環境負荷の低減を図ることができるとともに、透明性・透視感に優れる。なお、二軸延伸ポリオレフィンフィルム10は包装用フィルムとして印刷性や加工適性の観点からフィルム厚は100μm以下とすることが好ましい。
【0016】
第一表層及び第二表層の層厚は、0.5μmよりも厚く、8.0μmよりも薄く構成される。第一表層及び第二表層の層厚が0.5μm以下とすると、透明性に劣る。第一表層及び第二表層の層厚が8.0μm以上とすると、透明性に劣るとともに、剛性も低下して加工適性に劣ることとなる。
【0017】
中間層に植物由来のポリエチレンが配合される。中間層は、プロピレン単独重合体を主体とし、プロピレン単独重合体(A)は80~99重量%とされ、植物由来のポリエチレンは、直鎖状低密度ポリエチレンであって、直鎖状低密度ポリエチレン(B)は1~20重量%の組成とされる。
【0018】
プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)は、結晶性が高く、耐熱性や耐薬品性、強度に優れる。このことから、二軸延伸ポリオレフィンフィルム10の中間層を構成する樹脂のうち80~99重量%を組成する。二軸延伸に際し、耐熱性の高い樹脂を主体とすることにより、フィルムの生産性を向上させることができる。それぞれの層には、必要に応じてアンチブロッキング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、着色剤等の添加剤が添加される。
【0019】
植物由来のポリエチレン系樹脂は、植物原料を加工して得られた直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂が用いられる。具体的には、サトウキビ等の植物原料から抽出された糖液から酵母によるアルコール発酵を経てエタノールを生成し、エチレン化したのち公知の樹脂化の工程でポリエチレンを製造する。この植物由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、最終製品の環境負荷の低減に寄与する。
【0020】
さらに、中間層を組成するプロピレン単独重合体(A)には、メソペンタッド分率(mmmm)が93%以上のプロピレン単独重合体が5重量%以上含有されると、フィルムの剛性をさらに向上させることができる。メソペンタッド分率が高いプロピレン単独重合体を混合することにより、フィルム全体の剛性が良好となり、加工適性にさらに優れたフィルムとすることができる。
【実施例0021】
[フィルムの作製]
試作例1~29のフィルムについて、後述の各材料を3台の押出機にそれぞれ投入し、第一表層、中間層、第二表層の順に積層されるようにし、240℃に設定した三層Tダイから共押出し、50℃の冷却ロールで冷却、固化して原反シートとした。次に、原反シートを設定温度100~115℃で予熱し、MD方向に4.5倍に延伸した後、設定温度135℃でアニールした。テンターにて設定温度180℃で予熱し、設定温度160℃でTD方向に8倍延伸した後、設定温度165℃でアニールした。テンターを出た後、巻取機で巻き取って二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0022】
[メソペンタッド分立(mmmm)の測定]
メソペンタッド分率(mmmm)は、高温核磁気共鳴(NMR)測定によって得ることができる立体規則性の指標である。ペンタッド分率は、13C-NMRを使用して測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖の存在割合を示しており、プロピレン単位で5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマーの分率(mmmm)である。具体的には、13C-NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中mmmmピークの強度分率をアイソタクチックのペンタッド単位とする。
【0023】
メソペンタッド分率(mmmm)の測定は、13C-NMRを用いて行った。メソペンタッド分率は、「Zambelliら、Macromolecules,第6巻,925頁(1973)」に記載の方法に従って算出した。なお、ピークの帰属に関しては、「Macromolecules、8巻、687頁(1975)」に記載の上記文献の訂正版に基づいて行った。13C-NMR測定は、FT-NMR装置(株式会社JEOL RESONANCE社製、『JNM-ECA400』)を用い、試料120mgに重水素化オルトジクロロベンゼン:重ベンゼン=8:2(体積比)の混合液0.6mLを加え、135℃に加温して溶解し、135℃で行った。
観測核:13C(100MHz)
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス間隔:5秒
パルス幅:45°
シフト基準:溶媒由来シグナル=132.39ppm
積算回数:11,000回
【0024】
[使用原料]
中間層におけるプロピレン単独重合体は、下記の樹脂PP1~PP4を使用した。また、第一表層及び第二表層には、樹脂PP1とランダムポリプロピレンとして樹脂PP5を使用した。なお、一般的なフィルムに用いられるアンチブロッキング剤を適正量添加した。そして、植物由来直鎖状低密度ポリエチレンには、下記の樹脂PE1を使用した。
・樹脂PP1:プロピレン単独重合体(日本ポリプロ株式会社製、『FL203D』、メソペンタッド分率(mmmm) 91.0%)
・樹脂PP2:プロピレン単独重合体(日本ポリプロ株式会社製、『FL1105F』、メソペンタッド分率(mmmm) 96.1%)
・樹脂PP3:プロピレン単独重合体(サビック社製、『PP5212P』、メソペンタッド分率(mmmm) 94.0%)
・樹脂PP4:プロピレン単独重合体(住友ケミカルアジア社製、『FS3011E』、メソペンタッド分率(mmmm) 90.1%)
・樹脂PP5:ランダムポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、『FX4EA』)
・樹脂PE1:植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(ブラスケム社製、『SLH118』)
【0025】
<試作例1>
第一表層をプロピレン系重合体(樹脂PP1)100重量%、第二表層をプロピレン系重合体(樹脂PP5)100重量部とし、中間層の組成をプロピレン単独重合体(A)として樹脂PP1を96重量%、植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)として樹脂PE1を4重量%とし、第一表層及び第二表層の厚みをそれぞれ0.5μm、中間層の厚みを18.0μmとして製膜されたフィルムを試作例1とした。
【0026】
<試作例2>
第一表層及び第二表層の厚みをそれぞれ1.0μmとした以外は、試作例1と同様としてフィルムを製膜し試作例2とした。
【0027】
<試作例3>
中間層の組成をプロピレン単独重合体(A)として樹脂PP1を91重量%、樹脂PP2を5重量%、植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)として樹脂PE1を4重量%とした以外は、試作例1と同様としてフィルムを製膜し試作例3とした。
【0028】
<試作例4>
第一表層及び第二表層の厚みをそれぞれ1.0μmとした以外は、試作例3と同様としてフィルムを製膜し試作例4とした。
【0029】
<試作例5>
中間層の組成をプロピレン単独重合体(A)として樹脂PP1を76重量%、樹脂PP2を20重量%、植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)として樹脂PE1を4重量%とした以外は、試作例1と同様としてフィルムを製膜し試作例5とした。
【0030】
<試作例6>
第一表層及び第二表層の厚みをそれぞれ1.0μmとした以外は、試作例5と同様としてフィルムを製膜し試作例6とした。
【0031】
<試作例7>
中間層の組成をプロピレン単独重合体(A)として樹脂PP1を56重量%、樹脂PP2を40重量%、植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)として樹脂PE1を4重量%とした以外は、試作例1と同様としてフィルムを製膜し試作例7とした。
【0032】
<試作例8>
第一表層及び第二表層の厚みをそれぞれ1.0μmとした以外は、試作例7と同様としてフィルムを製膜し試作例8とした。
【0033】
<試作例9>
第一表層をプロピレン系重合体(樹脂PP5)100重量%とした以外は試作例8と同様としてフィルムを製膜し試作例9とした。
【0034】
<試作例10>
第一表層及び第二表層の厚みをそれぞれ3.5μmとした以外は、試作例7と同様としてフィルムを製膜し試作例10とした。
【0035】
<試作例11>
第一表層及び第二表層の厚みをそれぞれ7.5μmとした以外は、試作例7と同様としてフィルムを製膜し試作例11とした。
【0036】
<試作例12>
第一表層及び第二表層の厚みをそれぞれ8.0μmとした以外は、試作例7と同様としてフィルムを製膜し試作例12とした。
【0037】
<試作例13>
中間層の組成をプロピレン単独重合体(A)として樹脂PP1を60重量%、樹脂PP2を20重量%、植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)として樹脂PE1を20重量%とした以外は、試作例2と同様としてフィルムを製膜し試作例13とした。
【0038】
<試作例14>
中間層の組成をプロピレン単独重合体(A)として樹脂PP1を40重量%、樹脂PP2を40重量%、植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)として樹脂PE1を20重量%とした以外は、試作例1と同様としてフィルムを製膜し試作例14とした。
【0039】
<試作例15>
第一表層及び第二表層の厚みをそれぞれ1.0μmとした以外は、試作例14と同様としてフィルムを製膜し試作例15とした。
【0040】
<試作例16>
第二表層をプロピレン系重合体(樹脂PP1)100重量%とした以外は試作例15と同様としてフィルムを製膜し試作例16とした。
【0041】
<試作例17>
第一表層及び第二表層の厚みをそれぞれ4.5μmとした以外は、試作例14と同様としてフィルムを製膜し試作例17とした。
【0042】
<試作例18>
第一表層及び第二表層の厚みをそれぞれ7.5μmとした以外は、試作例14と同様としてフィルムを製膜し試作例18とした。
【0043】
<試作例19>
第一表層及び第二表層の厚みをそれぞれ8.0μmとした以外は、試作例14と同様としてフィルムを製膜し試作例19とした。
【0044】
<試作例20>
中間層の組成をプロピレン単独重合体(A)として樹脂PP1を40重量%、樹脂PP3を40重量%、植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)として樹脂PE1を20重量%とした以外は、試作例2と同様としてフィルムを製膜し試作例20とした。
【0045】
<試作例21>
中間層の組成をプロピレン単独重合体(A)として樹脂PP2を40重量%、樹脂PP4を40重量%、植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)として樹脂PE1を20重量%とした以外は、試作例2と同様としてフィルムを製膜し試作例21とした。
【0046】
<試作例22>
中間層の組成をプロピレン単独重合体(A)として樹脂PP1を20重量%、樹脂PP2を60重量%、植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)として樹脂PE1を20重量%とした以外は、試作例2と同様としてフィルムを製膜し試作例22とした。
【0047】
<試作例23>
中間層の組成をプロピレン単独重合体(A)として樹脂PP1を80重量%、植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)として樹脂PE1を20重量%とした以外は、試作例1と同様としてフィルムを製膜し試作例23とした。
【0048】
<試作例24>
中間層の組成をプロピレン単独重合体(A)として樹脂PP2を80重量%、植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)として樹脂PE1を20重量%とした以外は、試作例1と同様としてフィルムを製膜し試作例24とした。
【0049】
<試作例25>
第一表層及び第二表層の厚みをそれぞれ1.0μmとした以外は、試作例24と同様としてフィルムを製膜し試作例25とした。
【0050】
<試作例26>
第一表層及び第二表層の厚みをそれぞれ4.5μmとした以外は、試作例24と同様としてフィルムを製膜し試作例26とした。
【0051】
<試作例27>
第一表層及び第二表層の厚みをそれぞれ7.5μmとした以外は、試作例24と同様としてフィルムを製膜し試作例27とした。
【0052】
<試作例28>
第一表層及び第二表層の厚みをそれぞれ8.0μmとした以外は、試作例24と同様としてフィルムを製膜し試作例28とした。
【0053】
<試作例29>
中間層の組成をプロピレン単独重合体(A)として樹脂PP2を70重量%、植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)として樹脂PE1を30重量%とした以外は、試作例2と同様としてフィルムを製膜し試作例29とした。
【0054】
[フィルムの性能の評価]
試作例1~29のフィルムに関し、ヘーズ、MD方向及びTD方向の引張弾性率ついてそれぞれ測定した。ヘーズが8%以下であると透明フィルムとして良好に用いられることができる。MD方向の引張弾性率とTD方向の引張弾性率の合計値が4.0GPa以上であると良好な加工適性を備えたフィルムであるということができる。ヘーズ及び引張弾性率の測定結果と、各試作例に用いた樹脂及びその組成、各層の厚さを表1~5に示した。
【0055】
[ヘーズの測定]
ヘーズ(%)の測定は、透明性の指標であって、JIS K 7136(2000)に準拠し、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、『NDH-5000』)を使用して測定を行った。
【0056】
[引張弾性率の測定]
引張弾性率(GPa)の測定は、加工適性の指標の1つであって、JIS K 7127(1999)に準拠し、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製、『RTF-1310』)を使用して測定した。試作例1~29のフィルムからそれぞれ15mm×20cmの試験片を切り出し、チャック間距離100mm、引張速度200mm/minの条件でMD方向及びTD方向の引張弾性率をそれぞれ測定した。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
[結果と考察]
表1~5に示されるように、樹脂組成を同一とし、第一表層及び第二表層の厚さを変更した各試作例を対比すると、各表層の厚さをそれぞれ0.5μmとするとヘーズが高くなって透明性に劣り、透明フィルムとしての適性を備えないフィルムとなった。次に、各表層の厚さをそれぞれ8.0μmとしたときもヘーズが高くなり、透明性に劣る結果となった。このことから、所望の透明性を備えるフィルムとするには、第一表層及び第二表層の厚さは、0.5μm超8.0μm未満とされる。
【0063】
また、試作例29と試作例25を対比すると、中間層の組成を、プロピレン単独重合体(A)としての樹脂PP2が70重量%、植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)としての樹脂PE1が30重量%の試作例29はヘーズが高くなり透明性に劣るとともに、MD方向及びTD方向の引張弾性率の和が小さくなり剛性にも劣ることとなった。中間層の組成を、プロピレン単独重合体(A)としての樹脂PP2が80重量%、植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)としての樹脂PE1が20重量%とする試作例25は良好な透明性及び剛性を備えることから、所望の透明性及び剛性を備えるフィルムとするには、中間層の組成のうち、植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)の配合上限は20重量%であることが示された。
【0064】
さらに、各表面層の厚さが1.0μmとし、植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)が中間層に4重量%配合された試作例2,4,6,8を比較すると、中間層に配合されるプロピレン単独重合体(A)のうち、メソペンタッド分率(mmmm)が高い樹脂PP2を多く含有する試作例の方が、引張弾性率が高くなる傾向があった。同様に、各表面層の厚さが1.0μmとし、植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(B)が中間層に20重量%配合された試作例13,15.22,25についても、引張弾性率が高くなる傾向があった。メソペンタッド分率(mmmm)が一定以上の樹脂PP2又は樹脂PP3がそれぞれ変更されて配合された試作例15,20,21を対比しても、同様である。よって、中間層にメソペンタッド分率(mmmm)が高いプロピレン単独重合体(A)を配合することにより、フィルムの剛性が向上することが示された。
【0065】
以上説明したとおり、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、環境負荷の低減のために中間層に植物由来直鎖状低密度ポリエチレンを含有したとしても、良好な透明性を備えるとともに、剛性にも優れたフィルムとすることができる。
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、植物由来の樹脂を中間層に含むことで環境負荷の低減を図りつつ、良好な透明性と剛性を備えることで、透明フィルムとしての使用適性を十分に満たすことにより、新たな包装用フィルム等への活用が期待できるとともに、バイオマス資源の活用に有利となる。