(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049435
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物およびフレキシブルプリント配線基板
(51)【国際特許分類】
G03F 7/027 20060101AFI20230403BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230403BHJP
C08G 59/17 20060101ALI20230403BHJP
C08G 18/80 20060101ALI20230403BHJP
C08F 290/00 20060101ALI20230403BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
G03F7/027 515
G03F7/004 501
C08G59/17
C08G18/80
C08F290/00
H05K3/28 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159169
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 大英
(72)【発明者】
【氏名】上杉 尚之
(72)【発明者】
【氏名】木村 健人
(72)【発明者】
【氏名】田家 史佳
【テーマコード(参考)】
2H225
4J034
4J036
4J127
5E314
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】十分な柔軟性を有し、かつ十分な耐フラックス性を有する感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)有機フィラーと、(C)ポリイソシアネートと、(D)光重合開始剤と、(E)エポキシ化合物と、(F)反応性希釈剤とを含有し、前記(B)成分が、(B1)ウレタンビーズを含有し、前記(C)成分が、(C1)ブロックポリイソシアネートを含有する、感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)有機フィラーと、(C)ポリイソシアネートと、(D)光重合開始剤と、(E)エポキシ化合物と、(F)反応性希釈剤とを含有し、
前記(B)成分が、(B1)ウレタンビーズを含有し、
前記(C)成分が、(C1)ブロックポリイソシアネートを含有する、
感光性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物において、
前記(C1)成分が、ヘキサメチレンジイソシアネート系ブロックポリイソシアネートである、
感光性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の感光性樹脂組成物において、
前記(B1)成分が、疎水性シリカで被膜されている、
感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物からなるソルダーレジスト膜を備える、
フレキシブルプリント配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物およびフレキシブルプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキシブル配線基板の絶縁被膜は、フレキシブル配線基板に、接着層を備えたカバーレイを被覆するものであった。しかしながら、近年のパット部の微細化に伴い、写真現像型の感光性樹脂組成物であるソルダーレジストが用いられる場合がある(特許文献1参照)。
一方で、この感光性樹脂組成物をフレキシブル配線基板に用いるためには、柔軟性(折り曲げ性)が要求される。そして、この感光性樹脂組成物の柔軟性を向上させた場合、耐フラックス性が欠点となってしまう傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
感光性樹脂組成物の耐フラックス性を向上させる手段としては、(i)樹脂の架橋密度を上げること、(ii)耐熱性骨格の樹脂を導入すること、および(iii)無機フィラーを導入することなどが挙げられる。しかしながら、いずれの手段も感光性樹脂組成物の柔軟性を低下させてしまう。一方で、感光性樹脂組成物の柔軟性を向上させる手段としては、(i)樹脂の架橋密度を下げること、および(ii)柔軟性骨格の樹脂を導入することなどが挙げられる。しかしながら、いずれの手段も感光性樹脂組成物の耐フラックス性を低下させてしまう。以上のように、ソルダーレジストにおいて、柔軟性と耐フラックス性とを両立することは困難であった。
【0005】
本発明は、十分な柔軟性を有し、かつ十分な耐フラックス性を有する感光性樹脂組成物、並びに、これを用いたフレキシブルプリント配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)有機フィラーと、(C)ポリイソシアネートと、(D)光重合開始剤と、(E)エポキシ化合物と、(F)反応性希釈剤とを含有し、前記(B)成分が、(B1)ウレタンビーズを含有し、前記(C)成分が、(C1)ブロックポリイソシアネートを含有する、感光性樹脂組成物が提供される。
【0007】
本発明の一態様によれば、前述の本発明の一態様に係る感光性樹脂組成物からなるソルダーレジスト膜を備える、フレキシブルプリント配線基板が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、十分な柔軟性を有し、かつ十分な耐フラックス性を有する感光性樹脂組成物、並びに、これを用いたフレキシブル配線基板を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
先ず、本実施形態の感光性樹脂組成物について説明する。
本実施形態の感光性樹脂組成物は、以下説明する(A)カルボキシル基含有感光性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)反応性希釈剤、(D)エポキシ化合物、および(E)カルボン酸付加物を含有するものである。
【0010】
[(A)成分]
本実施形態に用いる(A)カルボキシル基含有感光性樹脂は、特に限定されず、例えば、感光性の不飽和二重結合を1個以上有する感光性のカルボキシル基含有樹脂が挙げられる。カルボキシル基含有感光性樹脂としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能性エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部に、アクリル酸やメタクリル酸(以下、「(メタ)アクリル酸」ということがある。)のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させて、エポキシ(メタ)アクリレートなどのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得た後に、生成した水酸基にさらに多塩基酸またはその無水物を反応させて得られる、多塩基酸変性エポキシ(メタ)アクリレートなどの多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂が挙げられる。
【0011】
多官能性エポキシ樹脂は、2官能以上のエポキシ樹脂であればいずれでも使用可能である。また、エポキシ当量は、特に限定されないが、例えば、1000以下であり、好ましくは100以上500以下である。多官能性エポキシ樹脂には、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂(例えば、シリコーン変性エポキシ樹脂など)、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型などのエポキシ樹脂)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、о-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、および、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂にBr、Clなどのハロゲン原子を導入したものも使用可能である。
【0012】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸などが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応方法は特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸とを適当な希釈剤中で加熱することにより反応させることができる。
【0013】
多塩基酸または多塩基酸無水物は、エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応により生成した水酸基に反応することで、樹脂に遊離のカルボキシル基を導入させるものである。多塩基酸またはその無水物は特に限定されず、飽和、不飽和のいずれも使用可能である。多塩基酸には、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3-メチルテトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、3-エチルテトラヒドロフタル酸、4-エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、3-エチルヘキサヒドロフタル酸、4-エチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸およびジグリコール酸などが挙げられ、多塩基酸無水物としては、これらの無水物が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0014】
上記した多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂もカルボキシル基含有感光性樹脂として使用できる。また、必要に応じて、上記した多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂のカルボキシル基に、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有するグリシジル化合物を反応させることにより、ラジカル重合性不飽和基を更に導入して、感光性をより向上させたカルボキシル基含有感光性樹脂としてもよい。
【0015】
この感光性をより向上させたカルボキシル基含有感光性樹脂は、前記グリシジル化合物の反応によって、ラジカル重合性不飽和基が多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂骨格の側鎖に結合することから、光重合反応性が高く、優れた感光特性を有することができる樹脂となる。1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物としては、特に限定されないが、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレートモノグリシジルエーテルなどが挙げられる。なお、グリシジル基は1分子中に複数有していてもよい。上記した1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0016】
カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価は、特に限定されないが、例えば、確実なアルカリ現像の点から、30mgKOH/g以上であることが好ましく、40mgKOH/g以上であることが特に好ましい。一方、この酸価は、アルカリ現像液による露光部の溶解防止の点から、200mgKOH/g以下であることが好ましく、150mgKOH/g以下であることが特に好ましい。
【0017】
また、カルボキシル基含有感光性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば、硬化物の強靭性および指触乾燥性の点から、3000以上であることが好ましく、5000以上であることが特に好ましい。一方、この重量平均分子量は、円滑なアルカリ現像性の点から、200000以下であることが好ましく、50000以下であることが特に好ましい。なお、カルボキシル基含有感光性樹脂の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定される標準ポリスチレン換算値である。
【0018】
カルボキシル基含有感光性樹脂として市販されているものには、例えば、サイクロマー(ACA)Z-251(ダイセル・オルネクス社製)、ZCR-1601H、ZAR-2000、ZFR-1122、ZFR-1124、FLX-2089(以上、日本化薬社製)、リポキシSP-4621、SP-4785(昭和電工社製)が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0019】
カルボキシル基含有感光性樹脂は、感光性樹脂組成物の主成分であり、その配合量は、特に限定されないが、例えば、感光性樹脂組成物100質量%に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが特に好ましい。
【0020】
[(B)成分]
本実施形態に用いる(B)有機フィラーは、(B1)ウレタンビーズを含有することが必要である。この(B1)成分は、貯蔵保管時の分散性の観点から、疎水性シリカで被膜されていることが好ましい。また、(B1)成分は、外表面の少なくとも一部領域では、ウレタンビーズがコア部を形成し、シリカがシェル部を形成しているコアシェル構造を有していることが好ましい。また、ウレタンビーズの外表面を被覆している全シリカのうち20質量%以上が疎水性シリカであることが好ましい。すなわち、シリカ100質量%のうち20質量%以上が疎水性シリカで構成されていることが好ましい。
【0021】
ウレタンビーズを被覆する全シリカのうちの疎水性シリカの割合は、感光性樹脂組成物の吸水率をさらに低減でき、絶縁信頼性にさらに優れた硬化膜を形成できるという観点から、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。ウレタンビーズを被覆する全シリカのうちの疎水性シリカの割合の上限値としては、高いほど好ましいが、例えば、100質量%が挙げられる。
ウレタンビーズを被覆するシリカに使用できる、疎水性シリカ以外のシリカとしては、表面処理されていない未処理シリカ、すなわち親水性シリカが挙げられる。
【0022】
ウレタンビーズの、疎水性シリカを含めた全シリカの被覆率は、特に限定されないが、その下限値は、より確実に貯蔵保管中の分散性に優れる感光性樹脂組成物を得ることができるという観点から、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、8.0質量%以上であることがさらに好ましく、12質量%以上であることが特に好ましい。一方で、ウレタンビーズの全シリカの被覆率の上限値は、より確実に折り曲げ性に優れた硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物を得るという観点から、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましく、18質量%以下であることが特に好ましい。
【0023】
疎水性シリカとしては、疎水性の置換基を有するシリカであれば、特に限定されない。疎水性シリカとしては、例えば、より確実に、貯蔵保管中の分散性に優れつつ、吸水率を低減できる感光性樹脂組成物を得ることができ、また、より確実に、折り曲げ性と絶縁信頼性に優れた硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物を得るという観点から、モノアルキルシリル基で表面改質されているモノアルキルシロキシル化シリカ、ジアルキルシリル基で表面改質されているジアルキルシロキシル化シリカ、トリアルキルシリル基で表面改質されているトリアルキルシロキシル化シリカ、(メタ)アクリルシリル基で表面改質されている(メタ)アクリルシロキシル化シリカ、ジアルキルシロキサン基で表面改質されているシリカ、および、ジアルキルポリシロキサン基で表面改質されているシリカなどが好ましい。このうち、さらに確実に、貯蔵保管中の分散性に優れつつ、吸水率を低減できる感光性樹脂組成物を得ることができ、また、さらに確実に、折り曲げ性と絶縁信頼性に優れた硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物を得ることができるという観点から、モノアルキルシリル基で表面改質されているモノアルキルシロキシル化シリカ、ジアルキルシリル基で表面改質されているジアルキルシロキシル化シリカ、または、(メタ)アクリルシリル基で表面改質されている(メタ)アクリルシロキシル化シリカが特に好ましい。
【0024】
また、上記したジアルキル及びトリアルキルにおける各アルキルの炭素数は、特に限定されないが、1以上10以下の炭素数であることが好ましく、1以上5以下の炭素数であることがより好ましく、1以上3以下の炭素数であることが特に好ましい。また、上記したモノアルキルの炭素数は、特に限定されないが、1以上20以下の炭素数であることが好ましく、3以上15以下の炭素数であることがより好ましく、5以上10以下の炭素数であることが特に好ましい。
上記した疎水性シリカは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
シリカで被覆されたウレタンビーズの平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、シリカで被覆されたウレタンビーズを感光性樹脂組成物中に分散させやすいという観点から、1μm以上10μm以下であることが好ましく、2μm以上7μm以下であることがより好ましく、3μm以上5μm以下であることが特に好ましい。
【0026】
(B1)成分の配合量は、柔軟性の更なる向上という観点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、5質量部以上80質量部以下であることが好ましく、12質量部以上65質量部以下であることがより好ましく、25質量部以上50質量部以下であることが特に好ましい。
【0027】
(B)成分は、本発明の課題を達成できる範囲において、(B1)成分以外に、その他の有機フィラー(以下(B2)成分とも称する)をさらに含有してもよい。(B2)成分としては、シリコーンゴムパウダーなどが挙げられる。ただし、柔軟性の観点から、(B)成分は、(B1)成分のみからなることが好ましい。また、(B1)成分の配合量の合計は、(B)成分100質量%に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0028】
(B)成分の配合量は、柔軟性の更なる向上という観点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、5質量部以上80質量部以下であることが好ましく、12質量部以上65質量部以下であることがより好ましく、25質量部以上50質量部以下であることが特に好ましい。
【0029】
[(C)成分]
本実施形態に用いる(C)ポリイソシアネートは、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物である。
この(C)成分は、(C1)ブロックポリイソシアネートを含有することが必要である。ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネートにブロック剤を反応させることにより得られる。
【0030】
イソシアネート化合物としては、1,6-ヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’-水酸化ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,6-フェニレンジイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、および、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
ブロック剤としては、アルコ-ル類、フェノ-ル類、ε-カプロラクタム、オキシム類、活性メチレン類、メルカプタン類、アミン類、イミド類、酸アミド類、イミダゾ-ル類、尿素類、カルバミン酸塩類、イミン類、および亜硫酸塩類などが挙げられる。
【0031】
(C1)成分としては、耐フラックス性およびポットライフの観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート系ブロックポリイソシアネートが好ましい。ヘキサメチレンジイソシアネート系ブロックポリイソシアネートとしては、旭化成社製のデュラネートSBN-70D、およびSBB-70Pなどが挙げられる。
【0032】
(C1)成分の配合量は、十分な硬化性を得るという観点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、1質量部以上75質量部以下であることが好ましく、5質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上35質量部以下であることが特に好ましい。
【0033】
(C1)成分の(B1)成分に対する質量比((C1)/(B1))は、柔軟性と耐フラックス性とのバランスの観点から、1/6以上3以下であることが好ましく、1/5以上2以下であることがより好ましく、1/4以上3/2以下であることが特に好ましい。
(C1)成分および(B1)成分の合計の配合量は、柔軟性の更なる向上という観点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、20質量部以上120質量部以下であることが好ましく、30質量部以上100質量部以下であることがより好ましく、45質量部以上80質量部以下であることが特に好ましい。
【0034】
(C)成分は、本発明の課題を達成できる範囲において、(C1)成分以外に、その他のポリイソシアネート(以下(C2)成分とも称する)をさらに含有してもよい。(C2)成分としては、イソシアネート基がブロックされていないポリイソシアネートなどが挙げられる。ただし、ポットライフの観点から、(C)成分は、(C1)成分のみからなることが好ましい。また、(C1)成分の配合量の合計は、(C)成分100質量%に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0035】
(C)成分の配合量は、十分な硬化性を得るという観点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、1質量部以上75質量部以下であることが好ましく、5質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上35質量部以下であることが特に好ましい。
【0036】
[(D)成分]
本実施形態に用いる(D)光重合開始剤としては、特に限定されず、適宜公知のものを使用できる。この光重合開始剤としては、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(0-アセチルオキシム)、フェ
ニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルフォリノプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、およびP-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0037】
(D)成分の配合量は、特に限定されないが、例えば、感光性および解像性の観点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、0.2質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.4質量部以上6質量部以下であることがより好ましく、0.6質量部以上4質量部以下であることが特に好ましい。
【0038】
[(E)成分]
本実施形態に用いる(E)エポキシ化合物は、エポキシ基を有する化合物である。このエポキシ化合物により、アルカリ可溶性透明樹脂組成物の硬化物の架橋密度を上げることができる。
エポキシ化合物には、例えば、エポキシ樹脂を挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、ビスフェノールA型変性柔軟性エポキシ樹脂、核水添ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂)、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、p-tert-ブチルフェノールノボラック型)、ビスフェノールF型やビスフェノールS型エポキシ樹脂(ビスフェノールFやビスフェノールSにエピクロルヒドリンを反応させて得られたエポキシ樹脂)、脂環式エポキシ樹脂(シクロヘキセンオキシド基、トリシクロデカンオキシド基、シクロペンテンオキシド基などを有する脂環式エポキシ樹脂)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、および、アダマンタン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0039】
(E)成分の配合量は、十分な硬化性を得るという観点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、1質量部以上75質量部以下であることが好ましく、10質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。
【0040】
[(F)成分]
本実施形態に用いる(F)反応性希釈剤は、例えば、光重合性モノマーであり、1分子当たり少なくとも1つの重合性二重結合を有する化合物である。反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の光硬化性を向上できる。
【0041】
反応性希釈剤としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリルレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、および、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
(F)成分の配合量は、特に限定されないが、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下であることが好ましく、10質量部以上30質量部以下であることが特に好ましい。
【0043】
本実施形態の感光性樹脂組成物では、上記(A)成分~(F)成分に加えて、必要に応じて、体質顔料、硬化促進剤、各種添加剤、難燃剤、着色剤、および非反応性希釈剤などを配合することができる。
【0044】
体質顔料としては、タルク、硫酸バリウム、アルミナ、およびマイカなどが挙げられる。硬化促進剤としては、三フッ化ホウ素-アミンコンプレックス、ジシアンジアミド(DICY)およびその誘導体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)およびその誘導体、グアナミンおよびその誘導体、メラミンおよびその誘導体、アミンイミド(AI)、並びにポリアミンなどが挙げられる。各種添加剤としては、シリコーン系、炭化水素系およびアクリル系などの消泡剤、(メタ)アクリル系ポリマーおよび有機ベントナイトなどの有機系充填剤、並びに、ポリカルボン酸アマイド等のチキソ性付与剤などが挙げられる。
【0045】
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、およびリン系の難燃剤などが挙げられる。感光性樹脂組成物をフレキシブルプリント配線基板に使用する場合、板厚の厚いリジッド基板に使用する場合と比較して、高度の難燃性が要求される。そのため、感光性樹脂組成物には、難燃剤を配合することが好ましい。難燃剤は、水酸化アルミニウム、およびリン系の難燃剤を併用することが好ましい。リン系の難燃剤としては、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、2,3-ジブロモプロピル-2,3-クロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの含ハロゲン系リン酸エステル;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェートなどのノンハロゲン系脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリス(トリメチルフェニル)ホスフェート、トリス(t-ブチルフェニル)ホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェートなどのノンハロゲン系芳香族リン酸エステル;トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタンなどのホスフィン酸の金属塩、ジフェニルビニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリアルキルホスフィンオキサイド、トリス(ヒドロキシアルキル)ホスフィンオキサイドなどのホスフィンオキサイド系化合物などが挙げられる。このうち、有機リン酸塩系の難燃剤が好ましい。難燃剤の配合量は、特に限定されないが、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、2質量部以上60質量部以下であることが好ましく、5質量部以上45質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上30質量部以下であることが特に好ましい。
【0046】
着色剤は、顔料であってもよく、色素であってもよく、特に限定されない。また、着色剤の色彩は、白色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、橙色着色剤、赤色着色剤、紫色着色剤、および黒色着色剤など、いずれの色彩の着色剤も使用可能である。上記着色剤には、無機系着色剤としては、白色着色剤である酸化チタン、黒色着色剤であるカーボンブラック、アセチレンブラックなどが挙げられる。また、有機系着色剤としては、例えば、緑色着色剤であるフタロシアニングリーン、青色着色剤であるフタロシアニンブルーやリオノールブルーなどのフタロシアニン系、橙色着色剤であるクロモフタルオレンジなどのジケトピロロピロール系などが挙げられる。
【0047】
非反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の粘度、塗工性、または乾燥性などを調節するための成分である。非反応性希釈剤として、例えば、有機溶剤を挙げることができる。有機溶剤には、メチルエチルケトンなどのケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類、セロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトールなどのカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などが挙げられる。非反応性希釈剤の配合量は、特に限定されないが、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、2質量部以上50質量部以下であることが好ましく、5質量部以上25質量部以下であることが特に好ましい。
【0048】
上記した本実施形態の感光性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されない。例えば、上記各成分を所定割合で配合後、室温にて、三本ロール、ボールミル、サンドミルなどの混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサーなどの攪拌手段により混練または混合して製造することができる。また、前記混練または混合の前に、必要に応じて、予備混練または予備混合してもよい。
【0049】
[フレキシブルプリント配線基板]
次に、本実施形態のフレキシブルプリント配線基板について説明する。
本実施形態のフレキシブルプリント配線基板は、前述した本実施形態の感光性樹脂組成物からなるソルダーレジスト膜を備えるものである。そして、本実施形態のフレキシブルプリント配線基板は、前述した本実施形態の感光性樹脂組成物を用いて、ソルダーレジスト膜を形成することによって作製できる。
前述した本実施形態の感光性樹脂組成物は、十分な柔軟性を有し、かつ十分な耐フラックス性を有するため、フレキシブルプリント配線基板の製造に特に好適に用いることができる。
【0050】
具体的には、先ず、フレキシブルプリント配線基板に、フレキシブルプリント配線基板上の全面に本実施形態の感光性樹脂組成物を塗布し、その後予備乾燥をして、塗膜を形成する。
ここで、塗膜の塗布方法としては、スクリーン印刷法、バーコータ法、アプリケータ法、ブレードコータ法、ナイフコータ法、ロールコータ法、グラビアコータ法、およびスプレーコータ法などが挙げられる。
予備乾燥の条件は、感光性樹脂組成物の種類に応じて異なり、特に限定されないが、例えば、60℃以上80℃以下の範囲の温度で、15分間以上60分間以下の範囲で加熱すればよい。このような予備乾燥により、感光性樹脂組成物中の溶剤などを揮散させて、タックフリーな塗膜を形成できる。
塗膜の厚み(DRY膜厚)は、特に限定されないが、通常、5μm以上200μm以下であり、好ましくは、10μm以上70μm以下である。
【0051】
なお、塗膜を形成する際に、ドライフィルムを用いてもよい。ドライフィルムは、支持フィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエステルフィルムなどの熱可塑性樹脂フィルム)と、この支持フィルムに塗工された感光性樹脂組成物層と、この感光性樹脂組成物層を保護するカバーフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエステルフィルムなどの熱可塑性樹脂フィルム)と、を有する積層構造となっている。そして、ドライフィルムのカバーフィルムを剥がしながら感光性樹脂組成物層とフレキシブルプリント配線基板をはり合わせることで、フレキシブルプリント配線基板上に塗膜を形成できる。
【0052】
次に、感光性樹脂組成物の塗膜上に、回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルムを密着させ、その上から紫外線を照射する。
このときの露光量は、感光性樹脂組成物の種類や露光装置の種類に応じて、適宜設定できる。例えば、露光量は、10mJ/cm2以上1000mJ/cm2以下であることが好ましい。
【0053】
次に、希アルカリ水溶液で非露光領域を除去することにより、露光後の塗膜を現像する。これにより、塗膜に回路パターンに対応した開口部を設けることができる。
現像方法としては、例えば、スプレー法、およびシャワー法などが挙げられる。
希アルカリ水溶液としては、例えば、0.5質量%以上5質量%以下の炭酸ナトリウム水溶液などが挙げられる。
【0054】
次いで、現像後のフレキシブルプリント配線基板に熱処理(以下場合により、ポストキュアともいう)を行う。これにより、フレキシブルプリント配線基板上に目的とするパターンを有する絶縁被膜(ソルダーレジスト膜)を形成させることができる。
熱処理条件としては、感光性樹脂組成物の種類に応じて異なり、特に限定されない。例えば、熱処理炉としては、熱風循環式の乾燥機、および遠赤外線炉などを採用できる。また、熱風循環式の乾燥機を用いる場合、熱処理温度は、130℃以上170℃以下であることが好ましく、熱処理時間は、30分間以上120分間以下であることが好ましい。さらに、遠赤外線炉を用いる場合、熱処理温度は、200℃以上250℃以下であることが好ましく、熱処理時間は、3分間以上10分間以下であることが好ましい。
【実施例0055】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0056】
((A)成分)
カルボキシル基含有感光性樹脂A:グリシジルメタクリレートを付加した酸変性クレゾールノボラック型エポキシアクリレート樹脂(固形分65質量%、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート17.5質量%、石油ナフサ17.5質量%)、商品名「リポキシSP-4785」、昭和電工社製
カルボキシル基含有感光性樹脂B:酸変性ウレタン化エポキシメタクリレート樹脂、商品名「FLX-2089」、日本化薬社製
((B1)成分)
有機フィラーA:下記調製例1で得られたウレタンビーズ
((B2)成分)
有機フィラーB:シリコーンゴムパウダー、商品名「EP-2601」、東レ・ダウコーニング社製
((C1)成分)
ポリイソシアネートA:ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート(固形分70質量%(ブロック剤0.4%)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル30質量%)、商品名「デュラネートSBN-70D」、旭化成社製
ポリイソシアネートB:ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート(固形分70質量%(ブロック剤1.2%)、1-メトキシー2-プロピルアセテート30質量%)、商品名「デュラネートSBB-70P」、旭化成社製
((C2)成分)
ポリイソシアネートC:ポリイソシアネート、商品名「TPA-100」、旭化成社製
((D)成分)
光重合開始剤A:2,4-ジエチルチオキサントン、商品名「Chemcure DETX」、日本シイベルヘグナー社製
光重合開始剤B:2-メチル1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノープロパン-1-オン、商品名「Irgacure907」、BASF社製
((E)成分)
エポキシ化合物A:ビフェニル型エポキシ樹脂、商品名「YX-4000」、三菱化学社製
エポキシ化合物B:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、商品名「N-695」、DIC社製
((F)成分)
反応性希釈剤A:カプロラクトン変性アクリレート、商品名「DPCA-30」、日本化薬社製
反応性希釈剤B:ウレタンアクリレート、商品名「KRM8296」、ダイセル・オルネクス社製
(他の成分)
難燃剤A:水酸化アルミニウム、商品名「BF013」、日本軽金属社製
難燃剤B:有機リン酸塩、商品名「エクソリット OP-935」、クラリアントジャパン社製
着色剤A:フタロシアニン化合物、商品名「LIONOL BLUE FG-7351」、東洋インキ製造社製
着色剤B:カーボンブラック、商品名「MA14」、三菱化学社製
硬化促進剤A:ジシアンジアミド、商品名「DICY-7」、三菱化学社製
硬化促進剤B:メラミン、日産化学工業社製
消泡剤:シリコーン系消泡剤、商品名「KS-66」、信越化学工業社製
非反応性希釈剤:ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、商品名「EDGAC」、三洋化成品社製
【0057】
[調製例1]
疎水性シリカとして、ジメチルシロキシル化シリカ(商品名「アエロジルR974」、日本アエロジル株式会社、平均一次粒子径0.012μm)10gを均一に溶媒100gに分散後、イソシアネート化合物20gとアルコール類20gを反応させて、ポリウレタン球体を得た。得られたポリウレタン球体を含む乳化液を、ホモジナイザーにて均一に分散後、乾燥させることで、シリカの被覆率10質量%のウレタンビーズ(平均粒子径3μm)を調製した。なお、シリカの被覆率は、600℃2時間の完全燃焼後の灰分より求めた。
【0058】
[実施例1]
カルボキシル基含有感光性樹脂A150質量部、有機フィラーA40質量部、ポリイソシアネートA20質量部、光重合開始剤A1質量部、光重合開始剤B3質量部、エポキシ化合物A20質量部、エポキシ化合物B15質量部、反応性希釈剤A30質量部、難燃剤A18質量部、難燃剤B15質量部、着色剤A2質量部、着色剤B8質量部、硬化促進剤A1質量部、硬化促進剤B6質量部、消泡剤3質量部および非反応性希釈剤30質量部を容器に投入し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールを用いて室温にて混合し分散させて感光性樹脂組成物を得た。
そして、フレキシブルプリント配線基板(ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製の「カプトン100H」)、フィルム厚:25μm、導体(Cu箔)厚:12.5μm)を、5質量%硫酸水溶液により表面処理後、スクリーン印刷法にて、得られた感光性樹脂組成物を、DRY膜厚が20~23μmとなるように塗布した。塗布後、BOX炉にて80℃で20分間の予備乾燥を行った。予備乾燥後、塗膜上に露光装置(オルボテック社製のLDI露光装置「Nuvogo1000R」(光源:レーザー))にて、露光量が100~500mJ/cm2の条件で露光をした。露光後、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて、現像温度30℃、スプレー圧0.2MPa、現像時間60秒間の条件で、現像した。その後、BOX炉にて150℃で60分間のポストキュアを行い、基板上にソルダーレジスト膜を形成して、評価用基板を作製した。
【0059】
[実施例2~6]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物および評価用基板を得た。
[比較例1~7]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物および評価用基板を得た。
【0060】
<感光性樹脂組成物の評価>
感光性樹脂組成物の評価(耐フラックス性、柔軟性、ゲル化)を以下のような方法で行った。得られた結果を表1に示す。なお、比較例4については、ゲル化の評価が悪く、使用できないものであったので、耐フラックス性および柔軟性の評価を行わなかった。
(1)耐フラックス性
評価用基板のうち、銅箔上で、ソルダーレジストパターンで直径0.8mmφの開口部を形成した部分の周辺部を試験対象とした。ソルダーレジスト膜の開口部の周辺部の上に直径6.5mmφ、厚み0.1mmのメタルマスクでフラックス(ロジン系フラックス)を塗布した。フラックスを塗布した周囲を厚み1.5mmのカプトンテープで1辺8mmのダムを形成した。カプトンテープのダムの上に1辺12mmのFR4基材のフタを置き、テープで固定し、試験片とした。この試験片を、260℃ピークで15秒間以上キープする温度プロファイルのリフロー炉にて、熱処理を行った。冷却後、フタを外し、試験片を観察し、ソルダーレジスト膜の開口部の剥離の有無を確認した。そして、以下の基準に従って、耐フラックス性を評価した。
〇:ソルダーレジスト膜に、剥離がない。
×:ソルダーレジスト膜に、剥離がある。
(2)柔軟性
評価用基板を、ハゼ折りにより、180°折り曲げ(25mm幅で折り、その後500g荷重をかける)を繰り返して行い、その際のクラックの発生の有無を、目視および200倍の光学顕微鏡で観察した。そして、以下の基準に従って、柔軟性を評価した。
◎:5回目の折り曲げの後でも、クラックが発生しなかった。
○:3回目から5回目のいずれかの折り曲げの後で、クラックが発生した。
△:2回目の折り曲げの後で、クラックが発生した。
×:1回目の折り曲げの後で、クラックが発生した。
(3)ゲル化
感光性樹脂組成物を試料とし、この試料の製造から温度50℃、24時間後のゲル化の有無を評価した。
○:感光性樹脂組成物がゲル化しなかった。
×:感光性樹脂組成物がゲル化した。
【0061】
【0062】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物を用いた場合(実施例1~6)には、耐フラックス性、柔軟性およびゲル化の全ての結果が良好であることが確認された。そのため、本発明によれば、十分な柔軟性を有し、かつ十分な耐フラックス性を有する感光性樹脂組成物が得られることが確認された。