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特開2023-49457透明管の製造方法および透明管の測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049457
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】透明管の製造方法および透明管の測定装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 23/047 20060101AFI20230403BHJP
   G01B 11/12 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
C03B23/047
G01B11/12 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159199
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】林 善史
【テーマコード(参考)】
2F065
4G015
【Fターム(参考)】
2F065AA26
2F065AA27
2F065BB08
2F065BB22
2F065CC23
2F065DD03
2F065GG07
2F065GG14
2F065GG16
2F065HH03
2F065HH13
2F065JJ09
2F065LL13
2F065LL15
2F065LL59
2F065LL62
2F065MM16
2F065QQ17
2F065QQ28
2F065QQ29
4G015BA01
(57)【要約】
【課題】透明管の内径および屈折率のうちの少なくとも一方を正確に測定する。
【解決手段】透明管としての管ガラスGtを測定する測定工程は、管ガラスGtの管長方向を横断するように平行光線L1を照射する工程と、平行光線L1のうち、管ガラスGtの外側を通過する直進光線M0および管ガラスGtを透過する透過光線M1を撮像部9で撮像する工程とを備える。透過光線M1は、管ガラスGtの内周面Gbで1回反射した後に直進光線M0と平行な光軸を有する一次屈折光線M11と、管ガラスGtの内周面Gbで2回反射した後に直進光線M0と平行な光軸を有する二次屈折光線M12とを含む。測定工程では、撮像部9の撮像データから、管ガラスGtの外周面Gaに接する直進光線M0のピーク位置、一次屈折光線M11のピーク位置および二次屈折光線M12のピーク位置をそれぞれ求め、これら3種のピーク位置に基づいて、管ガラスGtの内径および屈折率のうちの少なくとも一方を算出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明管を準備する準備工程と、前記透明管を測定する測定工程とを備える透明管の製造方法であって、
前記測定工程は、前記透明管の管長方向を横断するように平行光線を照射する工程と、前記平行光線のうち、前記透明管の外側を通過する直進光線および前記透明管を透過する透過光線を撮像部で撮像する工程とを備え、
前記透過光線は、互いに異なる2つの自然数をm、nとすると、前記透明管の内周面でm回反射した後に前記直進光線と平行な光軸を有する第一屈折光線と、前記透明管の内周面でn回反射した後に前記直進光線と平行な光軸を有する第二屈折光線とを含み、
前記測定工程では、前記撮像部の撮像データから、前記透明管の外周面に接する前記直進光線のピーク位置、前記第一屈折光線のピーク位置および前記第二屈折光線のピーク位置をそれぞれ求め、これら3種のピーク位置に基づいて、前記透明管の内径および屈折率のうちの少なくとも一方を算出することを特徴とする透明管の製造方法。
【請求項2】
前記測定工程では、前記透明管の外周面に接する前記直進光線のピーク位置、前記第一屈折光線のピーク位置および前記第二屈折光線のピーク位置に基づいて、前記透明管の内径および屈折率をそれぞれ算出する請求項1に記載の透明管の製造方法。
【請求項3】
前記第一屈折光線は、前記透明管の内周面で1回反射した後に前記直進光線と平行な光軸を有する光線であり、前記第二屈折光線は、前記透明管の内周面で2回反射した後に前記直進光線と平行な光軸を有する光線である請求項1又は2に記載の透明管の製造方法。
【請求項4】
前記透明管が、管ガラスである請求項1~3のいずれか1項に記載の透明管の製造方法。
【請求項5】
前記準備工程は、前記管ガラスを成形部で成形する成形工程を含む請求項4に記載の透明管の製造方法。
【請求項6】
前記測定工程では、前記成形部に連続する前記管ガラスを製造ライン上で測定する請求項5に記載の透明管の製造方法。
【請求項7】
透明管の測定装置であって、
前記透明管の管長方向を横断するように平行光線を照射する照射部と、
前記平行光線のうち、前記透明管の外側を通過する直進光線および前記透明管を透過する透過光線を撮像する撮像部と、
前記撮像部の撮像データに基づいて前記透明管を測定する測定部とを備え、
前記透過光線は、互いに異なる2つの自然数をm、nとすると、前記透明管の内周面でm回反射した後に前記直進光線と平行な光軸を有する第一屈折光線と、前記透明管の内周面でn回反射した後に前記直進光線と平行な光軸を有する第二屈折光線とを含み、
前記測定部は、前記撮像データから、前記透明管の外周面に接する前記直進光線のピーク位置、前記第一屈折光線のピーク位置および前記第二屈折光線のピーク位置をそれぞれ求め、これら3種のピーク位置に基づいて、前記透明管の内径および屈折率のうちの少なくとも一方を算出するように構成されていることを特徴とする透明管の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明管の製造方法および透明管の測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管ガラスの製造方法としては、例えばリドロー法が用いられる場合がある。リドロー法は、管状のガラス母材を加熱しながら線引きすることにより、管ガラスを得る方法である。
【0003】
この種の管ガラスの内径は、管ガラスの品質を管理するために用いられる。例えば特許文献1には、管ガラスのような透明管に所定の光線を照射して、透明管の内径を測定する方法が開示されている。詳細には、同文献では、まず、透明管の外側を通過する直進光線から透明管の外径を求める。次に、透明管を透過する透過光線のうち、透明管の内周面で反射した1種の光線(透明管の内周面で1回反射した屈折光、2回反射した屈折光および3回反射した屈折光のいずれか1つのみ)のピーク位置を求める。そして、このピーク位置および透明管の外径に加えて、既知の透明管の屈折率を用い、透明管の内径を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-84172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の方法の場合、透明管の内径を求めるためには、透明管の屈折率が必要不可欠となる。そして、同文献では、透明管の屈折率は、予め別の方法で測定された既知の一定値とされている。
【0006】
しかしながら、例えば、長尺な透明管を連続して成形するような場合、透明管の成分等が変動すれば、透明管の屈折率も同様に変動し得る。したがって、透明管の屈折率を既知の一定値として透明管の内径を求めた場合、透明管の内径を正確に測定できないという問題がある。
【0007】
また、上述のように透明管の屈折率が変動するような状況下では、透明管の品質を管理する上で、透明管の内径と同様に、透明管の屈折率を正確に測定することが望まれる場合もある。
【0008】
本発明は、透明管の内径および屈折率のうちの少なくとも一方を正確に測定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 上記の課題を解決するために創案された本発明は、透明管を準備する準備工程と、透明管を測定する測定工程とを備える透明管の製造方法であって、測定工程は、透明管の管長方向を横断するように平行光線を照射する工程と、平行光線のうち、透明管の外側を通過する直進光線および透明管を透過する透過光線を撮像部で撮像する工程とを備え、透過光線は、互いに異なる2つの自然数をm、nとすると、透明管の内周面でm回反射した後に直進光線と平行な光軸を有する第一屈折光線と、透明管の内周面でn回反射した後に直進光線と平行な光軸を有する第二屈折光線とを含み、測定工程では、撮像部の撮像データから、透明管の外周面に接する直進光線のピーク位置、第一屈折光線のピーク位置および第二屈折光線のピーク位置をそれぞれ求め、これら3種のピーク位置に基づいて、透明管の内径および屈折率のうちの少なくとも一方を算出することを特徴とする。
【0010】
このようにすれば、透明管の外周面に接する直進光線のピーク位置と第一屈折率光線のピーク位置とから、屈折の法則に基づいて、透明管の内径、外径、屈折率の関係を示す第一関係式を導くことができる。同様に、透明管の外周面に接する直進光線のピーク位置と第二屈折率光線のピーク位置とから、屈折の法則に基づいて、透明管の内径、外径、屈折率の関係を示す第二関係式を導くことができる。ここで、透明管の外径は、透明管の外周面に接する直進光線のピーク位置から求めることができる。つまり、透明管の内径および屈折率という2つの未知数に対して、透明管の内径および屈折率の関係を示す式(第一関係式・第二関係式)が2つ得られるため、未知数である透明管の内径および/又は屈折率を算出できる。したがって、透明管の外周面に接する直進光線のピーク位置、第一屈折光線のピーク位置および第二屈折光線のピーク位置をそれぞれ求めれば、これら3種のピーク位置に基づいて、透明管の内径および屈折率のうちの少なくとも一方を正確に算出できる。
【0011】
(2) 上記の(1)の構成において、測定工程では、透明管の外周面に接する直進光線のピーク位置、第一屈折光線のピーク位置および第二屈折光線のピーク位置に基づいて、透明管の内径および屈折率をそれぞれ算出してもよい。
【0012】
このようにすれば、透明管の内径および屈折率を用いて、透明管の品質を評価できる。そのため、透明管の品質をより精度よく評価できる。
【0013】
(3) 上記の(1)又は(2)の構成において、第一屈折光線は、透明管の内周面で1回反射した後に直進光線と平行な光軸を有する光線であり、第二屈折光線は、透明管の内周面で2回反射した後に直進光線と平行な光軸を有する光線であることが好ましい。
【0014】
透明管の内周面で反射する屈折光線のピーク強度は、透明管の内周面での反射回数が増加するに連れて小さくなる。換言すれば、上記のように、第一屈折光線を、透明管の内周面で1回反射した後に直進光線と平行な光軸を有する光線(m=1)とし、第二屈折光線を、透明管の内周面で2回反射した後に直進光線と平行な光軸を有する光線(n=2)とすれば、屈折光線のピーク強度が十分に大きくなり、ピーク位置の測定精度が向上する。その結果、透明管の内径および/又は屈折率の算出精度が向上する。
【0015】
(4) (1)~(3)のいずれかの構成において、透明管は、管ガラスであってもよい。
【0016】
このようにすれば、例えば、光通信コネクタ用フェルール、光ファイバー保持用キャピラリ、光通信デバイス用ガラスチューブ等の寸法規格が厳しい分野においても、寸法規格を満たす管ガラスを安定的に供給することが可能となる。
【0017】
(5) 上記の(4)の構成において、準備工程は、管ガラスを成形部で成形する成形工程を含んでいてもよい。
【0018】
(6) 上記の(5)の構成において、測定工程では、成形部に連続する管ガラスを製造ライン上で測定することが好ましい。
【0019】
このようにすれば、管ガラスの測定を、管ガラスの製造ライン上での測定、すなわちオンライン方式で行うことができる。
【0020】
(7) 上記の課題を解決するために創案された本発明は、透明管の測定装置であって、透明管の管長方向を横断するように平行光線を照射する照射部と、平行光線のうち、透明管の外側を通過する直進光線および透明管を透過する透過光線を撮像する撮像部と、撮像部の撮像データに基づいて透明管を測定する測定部とを備え、透過光線は、互いに異なる2つの自然数をm、nとすると、透明管の内周面でm回反射した後に直進光線と平行な光軸を有する第一屈折光線と、透明管の内周面でn回反射した後に直進光線と平行な光軸を有する第二屈折光線とを含み、測定部は、撮像データから、透明管の外周面に接する直進光線のピーク位置、第一屈折光線のピーク位置および第二屈折光線のピーク位置をそれぞれ求め、これら3種のピーク位置に基づいて、透明管の内径および屈折率のうちの少なくとも一方を算出するように構成されていることを特徴とする。
【0021】
このようにすれば、既に述べた対応する構成と同様の作用効果を享受できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、透明管の内径および屈折率のうちの少なくとも一方を正確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態に係る透明管の製造方法に用いられる製造装置を示す図である。
図2図1のA-A断面図であって、本実施形態に係る透明管の測定装置を示す図である。
図3】撮影データの一例を示す図である。
図4】管ガラスと、管ガラスの外周面と接する直進光線との幾何学的な関係を示す図である。
図5】管ガラスと、一次屈折光線との幾何学的な関係を示す図である。
図6】管ガラスと、二次屈折光線との幾何学的な関係を示す図である。
図7】管ガラスと、三次屈折光線との幾何学的な関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る透明管の製造方法および透明管の測定装置について図面を参照しながら説明する。なお、図中のXYZは直交座標系である。X方向およびY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係る透明管の製造方法に用いられる製造装置1は、リドロー法を用いて、透明管としての管ガラスGを製造する装置である。
【0026】
製造装置1は、送り機構2と、加熱炉3と、引張ローラ4と、カッター5とを、上方からこの順に備える。
【0027】
送り機構2は、管状のガラス母材Gmを支持しながら、ガラス母材Gmを所定速度で下方に送り出す装置である。
【0028】
加熱炉3は、送り機構2の下降に伴って送り出されるガラス母材Gmを、送り機構2の下方でヒータ3aにより加熱して軟化させる装置であり、管ガラスを成形する成形部として機能する。
【0029】
引張ローラ4は、加熱炉3で軟化したガラス母材Gmに連続する長尺な管ガラスGtを、加熱炉3の下方で引っ張る装置である。これにより、軟化状態にあるガラス母材Gmが線引きされ、効率よく細管化される。なお、ガラス母材Gmの線引き速度は、例えば、送り機構2および/又は引張ローラ4により調整される。
【0030】
カッター5は、引張ローラ4の下方で長尺な管ガラスGtを所定長さで切断する装置である。これにより、長尺な管ガラスGtから、短尺な管ガラスGが順次得られる。
【0031】
製造装置1は、加熱炉3と引張ローラ4との間で管ガラスGtを測定する測定装置6をさらに備える。なお、本実施形態では、測定装置6を管ガラスGtの製造ライン上で使用するオンライン方式の測定を例示するが、測定装置6は、管ガラスGtの製造ライン以外で使用するオフライン方式の測定にも適用できる。
【0032】
図2に示すように、測定装置6は、管ガラスGtの管長方向を横断するように平行光線L1を照射する照射部7と、平行光線L1のうち、管ガラスGtの外側を通過する直進光線M0および管ガラスGtを透過する透過光線M1を受光するテレセントリック光学系8と、テレセントリック光学系8によって集光された直進光線M0および透過光線M1を入力することにより撮影データを出力する撮像部9と、撮影データに基づいて管ガラスGtの外径、内径および屈折率を測定する測定部10とを備える。
【0033】
本実施形態では、照射部7とテレセントリック光学系8とは、大気中に置かれた管ガラスGtを挟んで、X方向に延びる同一直線上で対向するように配置されている。
【0034】
照射部7は、LED等の光源11と、光源11から出射された光線(拡散光線)L0から、管ガラスGtを横断する平面に沿って伝播する平行光線L1を生成するコリメータレンズ12とを備える。平行光線L1の光軸は、X方向と平行である。本実施形態では、光源11およびコリメータレンズ12は、筐体13に収容されている。
【0035】
照射部7は、管ガラスGtを含む横断平面全域に複数の平行光線L1が同時に存在する平行光線群を構成する。換言すれば、照射部7は、光線を走査するためのポリゴンミラーなどの走査ミラーを備えていない。平行光線L1が伝播する管ガラスGtを横断する平面は、管ガラスGtの管軸と直交する平面であることが好ましい。
【0036】
テレセントリック光学系8は、物体側レンズ14と、像側レンズ15と、物体側レンズ14と像側レンズ15との間に位置する両レンズ14,15の焦点位置Fに配置された絞り16とを備える。つまり、本実施形態では、テレセントリック光学系8は、いわゆる両側テレセントリック光学系である。これにより、管ガラスGtとテレセントリック光学系8との間の距離(厳密には、管ガラスGtの中心位置と、物体側レンズ14の中心位置との間の距離)WDが変化しても、管ガラスGtの像の大きさは実質的に変化しない。本実施形態では、テレセントリック光学系8は、筐体17に収容されている。
【0037】
なお、図2において、各レンズ14,15のレンズ構成(レンズ枚数やレンズ形状等)は、簡略化して図示している。テレセントリック光学系8は、物体側レンズ14と、物体側レンズ14の焦点位置Fに配置された絞り16とを備え、像側レンズがテレセントリック性能を有さない、いわゆる物体側テレセントリック光学系であってもよい。
【0038】
撮像部9は、テレセントリック光学系8によって集光された直進光線M0および透過光線M1が入力されると、その画素位置での輝度(光量レベル)を測定する撮像素子である。撮像部9は、例えば図3に示すように、測定された光線の輝度に応じた複数のピーク(信号ピーク)P0,P10~P13を有する撮像データを出力する。なお、撮像部9の画素数、テレセントリック光学系8に含まれるレンズ14,15のレンズ倍率等の性能は、管ガラスGtの寸法や必要精度に合わせて選定される。
【0039】
測定部10は、撮像データに含まれるピークP0,P11~P13のピーク位置を求め、これらピーク位置に基づいて管ガラスGtの外径、内径および屈折率を測定(演算)する。ここで、本実施形態では、管ガラスGtの外径および内径は、直径を意味するが、半径であってもよい。なお、測定部10は、例えば、パーソナルコンピュータやタブレット端末などの演算装置により構成され、撮像部9と有線又は無線で接続される。
【0040】
次に、以上のように構成された製造装置1を用いた透明管の製造方法を説明する。
【0041】
本実施形態に係る製造方法は、透明管としての管ガラスGtを準備する準備工程と、管ガラスGtを測定する測定工程とを含む。
【0042】
準備工程は、リドロー法により、ガラス母材Gmから管ガラスGtを成形する成形工程を含む。詳細には、ガラス母材Gmを送り機構2により所定速度で下方に送り出しながら、加熱炉3で加熱して軟化させる。その後、この軟化したガラス母材Gmを引張ローラ4で下方に線引きすることにより、管ガラスGtを成形する。管ガラスGtは、カッター5で所定長さごとに切断され、製品となる管ガラスGが順次得られる。
【0043】
管ガラスGは、例えば、光通信コネクタ用フェルール、光ファイバー保持用キャピラリ、光通信デバイス用ガラスチューブ等として利用される。
【0044】
管ガラスGtの外径(直径)は、0.1~10.0mmであることが好ましく、0.2~7.0mmであることがより好ましく、0.3~5.0mmであることが更に好ましい。一方、管ガラスGtの内径(直径)は、0.01~8.0mmであることが好ましく、0.015~5.0mmであることがより好ましく、0.02~3.5mmであることが更に好ましい。なお、切断前の管ガラスGtの外径および内径は、切断後の管ガラスGの外径および内径と実質的に同じである。
【0045】
測定工程では、成形部としての加熱炉3に位置するガラス母材Gmに連続する管ガラスGtを製造ライン上で測定する。つまり、測定工程では、オンライン方式の測定を行う。測定工程では、加熱炉3と引張ローラ4との間に位置する管ガラスGtを測定する。これは、加熱炉3に近い位置で管ガラスGtを測定し、その測定結果を製造条件の各種パラメータの調整に迅速にフィードバックするためである。なお、測定工程では、引張ローラ4とカッター5との間に位置する管ガラスGtを測定するようにしてもよい。
【0046】
図2に示すように、測定工程は、照射部7を用いて管ガラスGtの管長方向を横断するように平行光線L1を照射する工程と、平行光線L1のうち、管ガラスGtの外側を通過した直進光線M0および管ガラスGtを透過した透過光線M1をテレセントリック光学系8で受光する工程と、テレセントリック光学系8によって集光された直進光線M0および透過光線M1を撮像部9に入力して撮影データを出力する工程と、測定部10を用いて撮影データから管ガラスGtの外径、内径および屈折率を測定する工程とを備える。なお、テレセントリック光学系8は、平行光線L1と平行な光軸を有する光線のみを撮像部9まで導く。
【0047】
直進光線M0は、管ガラスGtの影響を受けないため、平行光線L1と平行な光軸を維持する。つまり、直進光線M0は、テレセントリック光学系8を介して撮像部9で受光される。
【0048】
透過光線M1は、管ガラスGtの外周面Gaおよび内周面Gbで屈折することなく管ガラスGtの中空部を直進し、平行光線L1と平行な光軸を有する非屈折光線M10を含む。つまり、非屈折光線M10は、テレセントリック光学系8を介して撮像部9で受光される。
【0049】
透過光線M1は、管ガラスGt内に入射後に内周面Gbで全反射して外へ出て、再び平行光線L1と平行な光軸を有する屈折光線M11~M13を含む。詳細には、屈折光線M11は、管ガラスGtの内周面Gbで一回反射した一次屈折光線である。屈折光線M12は、管ガラスGtの外周面Gaでの一回の反射を伴いながら、管ガラスGtの内周面Gbで二回反射した二次屈折光線である。屈折光線M13は、管ガラスGtの外周面Gaでの二回の反射を伴いながら、管ガラスGtの内周面Gbで三回反射した三次屈折光線である。つまり、これら屈折光線M11~M13は、テレセントリック光学系8を介して撮像部9で受光される。
【0050】
なお、透過光線M1は、管ガラスGtの外周面Gaや内周面Gbで屈折や反射して外へ出るが、管ガラスGtに照射前の平行光線L1と平行な光軸を有さなくなる光線を含む。しかしながら、これらの光線は、例えば、テレセントリック光学系8の絞り16によって遮断され、撮像部9で受光されない。
【0051】
したがって、図3に示すように、撮像部9の撮像データは、直進光線M0のピークP0と、非屈折光線M10のピークP10と、一次屈折光線M11のピークP11と、二次屈折光線M12のピークP12と、三次屈折光線M13のピークP13とを主として含む。そして、直進光線M0、一次屈折光線M11、二次屈折光線M12および三次屈折光線M13は、非屈折光線M10によって2つに分割される管ガラスGtの第一半筒状部(図中の上半分)Gt1と、第二半筒状部(図中の下半分)Gt2とにそれぞれ生じる。したがって、直進光線M0および各屈折光線M11~M13のそれぞれのピークP0,P11~P13は、非屈折光線M10のピークP10を中心として略対称となる位置で対をなす。なお、屈折光線M11~M13のピークP11~P13の強度は、一次屈折光線M11、二次屈折光線M12および三次屈折光線M13の順に小さくなる傾向にある(P11>P12>P13)。
【0052】
そして、一次屈折光線M11の一対のピークP11のピーク間距離h1、二次屈折光線M12の一対のピークP12のピーク間距離h2および三次屈折光線M13の一対のピークP13のピーク間距離h3の中から選択された2つのピーク間距離と、管ガラスGtの外周面と接する直進光線M0のピークP0(厳密にはピークP0の立ち上がり部分)のピーク間距離h0を撮像データから求める。その後、求めた3種のピーク間距離(例えば、h0,h1,h2)に基づいて管ガラスGtの外径、内径および屈折率を測定(演算)する。ここで、「ピーク間距離」とは、対をなすピークにおける一方側のピーク位置と他方側のピーク位置との間の距離を意味する。
【0053】
以下、管ガラスGtの外径(直径)をD、内径(直径)をr、屈折率nとして、具体的な測定方法を説明する。
【0054】
図4に示すように、管ガラスGtの外周面と接する直進光線M0のピーク間距離h0は、管ガラスGtの外径Dに等しい。つまり、ピーク間距離h0から管ガラスGtの外径を求めることができる。
【0055】
一方、図5に示すように、一次屈折光線M11において、管ガラスGtの外周面Gaにおける入射角をθ11、屈折角をθ12とすると、幾何学的な関係および屈折の法則により、以下の関係式が得られる。
h1/2=D/2×sin(θ11)…(1)
sin(θ11)=nsin(θ12)…(2)
r/2×cos(α1)=D/2×sin(θ12)…(3)
α1=θ11-θ12…(4)
【0056】
これらの式(1)~(4)より、以下の式(5)が得られる。
r=h1/[ncos{Arcsin(h1/D)
-Arcsin(h1/(nD))}]…(5)
【0057】
また、図6に示すように、二次屈折光線M12において、管ガラスGtの外周面Gaにおける入射角をθ21、屈折角をθ22とすると、幾何学的な関係および屈折の法則により、以下の関係式が得られる。
h2/2=D/2×sin(θ21)…(6)
sin(θ21)=nsin(θ22)…(7)
r/2×sin(α2)=D/2×sin(θ22)…(8)
2(α2-θ22)+θ21=90°…(9)
【0058】
これらの式(6)~(9)より、以下の式(10)が得られる。
r=h2/[nsin{π/4-1/2×Arcsin(h2/D)
+Arcsin(h2/(nD))}]…(10)
【0059】
さらに、図7に示すように、三次屈折光線M13において、管ガラスGtの外周面Gaにおける入射角をθ31、屈折角をθ32とすると、幾何学的な関係および屈折の法則により、以下の関係式が得られる。
h3/2=D/2×sin(θ31)…(11)
sin(θ31)=nsin(θ32)…(12)
r/2×sin(α3)=D/2×sin(θ32)…(13)
3(α3-θ32)+θ31=90°…(14)
【0060】
これらの式(11)~(14)より、以下の式(15)が得られる。
r=h3/[nsin{π/6-1/3×Arcsin(h3/D)
+Arcsin(h3/(nD))}]…(15)
【0061】
ここで、D(=h0)、h1~h3は、撮像データから得られる既知の値である。そのため、上記の式(5)、(10)、(15)の中から選択された任意の2式を連立させ、未知数であるrとnについて解くことにより、rおよびnを算出できる。これにより、管ガラスGtの外径に加えて、内径および屈折率を求めることができる。つまり、屈折率の変動の影響を受けずに、管ガラスGtの内径を高精度に測定できる。また、外気の状態が一定であれば、管ガラスGtの成分が変動しても管ガラスGtの屈折率も高精度に測定できる。屈折率は、管ガラスGtの密度の算出に利用できる。
【0062】
管ガラスGtの内径および屈折率を高精度に測定する観点からは、ピーク強度の大きい一次屈折光線M11および二次屈折光線M12を用いて、rおよびnを算出することが好ましい。つまり、上記の式(5)および(10)の2式を連立させ、rおよびnを算出することが好ましい。
【0063】
なお、測定部10において、管ガラスGtの内径rを自動演算する場合には、例えば、(5)、(10)、(15)の中から選択された2式を連立させて屈折率nを予め消去した内径rに関する多項式を用いる。同様に、測定部10において、管ガラスGtの屈折率nを自動演算する場合には、例えば、(5)、(10)、(15)の中から選択された2式を連立させて内径rを予め消去した屈折率nに関する多項式を用いる。
【0064】
以上の方法で求められた管ガラスGtの外径、内径および屈折率は、管ガラスGtの製造条件にフィードバックされ、必要に応じて製造条件の各種パラメータ(例えば線引き速度など)が調整される。
【0065】
なお、本発明の実施形態に係るガラス物品の製造方法について説明したが、本発明の実施の形態はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を施すことが可能である。
【0066】
上記の実施形態では、透明管としての管ガラスの内径および屈折率を測定する場合を説明したが、内径および屈折率のいずれか一方のみを測定するようにしてもよい。ただし、管ガラスの内径は、管ガラスの品質を管理する上で重要なパラメータであるため、少なくとも内径を測定することが好ましい。
【0067】
上記の実施形態では、透過光線が、透明管の内周面で1回反射した後に直進光線と平行な光軸を有する一次屈折光線と、透明管の内周面で2回反射した後に直進光線と平行な光軸を有する二次屈折光線と、透明管の内周面で3回反射した後に直進光線と平行な光軸を有する三次屈折光線とを含む場合を説明したが、これに限定されない。透過光線は、互いに異なる2つの自然数をm、nとすると、透明管の内周面でm回反射した後に直進光線と平行な光軸を有する第一屈折光線と、透明管の内周面でn回反射した後に直進光線と平行な光軸を有する第二屈折光線とを含んでいればよい。この場合も、屈折の法則から導出される、透明管の内径、透明管の外周面に接する直進光線のピーク間距離および第一屈折光線のピーク間距離の関係を示す透明管の屈折率を含む第一関係式と、屈折の法則から導出される、透明管の内径、透明管の外周面に接する直進光線のピーク間距離および第二屈折光線のピーク間距離の関係を示す透明管の屈折率を含む第二関係式との連立方程式から、未知数である内径および屈折率の少なくとも一方を算出できる。ただし、mおよびnの数が大きくなりすぎると、撮像データに含まれるピーク強度が小さくなるため、mおよびnは、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。また、「第一関係式と第二関係式との連立方程式」には、これら連立方程式から得られる屈折率を予め消去した内径に関する第一多項式と、内径を予め消去した屈折率に関する第二多項式とを用いる場合も含まれる。
【0068】
上記の実施形態において、照射部は、平行光線を生成できるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、照射部は、LED等の光源をY方向に沿ってライン状に複数配列したライン光源を備えるものであってもよい。また、照射部は、レーザ発光部から出射されたレーザ光を走査ミラーによって、透明管を横断する平面上に走査するものであってもよい。
【0069】
上記の実施形態において、光学系は、直進光線および透過光線を撮像部に導くことができるものであれば特に限定されない。ただし、透明管の外径、内径および屈折率を高精度に測定する観点からは、テレセントリック光学系を用いることが好ましい。
【0070】
上記の実施形態では、リドロー法を用いて透明管を成形する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。透明管の成形工程では、ダンナー法、ダウンドロー法、アップドロー法などの他の公知の成形方法を適用できる。
【0071】
上記の実施形態では、透明管として管ガラスを例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、透明管は、樹脂管などであってもよい。ここで、透明管の厚み1mmでの透過率は、150nm~20μmの範囲のいずれかの波長において20%以上であることが好ましく、200nm~1800nmの範囲のいずれかの波長における透過率が30%以上であることがより好ましく、380nm~780nmのいずれかの波長における透過率が40%以上であることが更に好ましい。
【0072】
上記の実施形態において、透明管を準備する準備工程は、予め所定長さに切断された透明管を準備する工程であってもよい。この場合、透明管を測定する測定工程は、予め所定長さに切断された透明管を測定する。
【符号の説明】
【0073】
1 製造装置
2 送り機構
3 加熱炉
4 引張ローラ
5 カッター
6 測定装置
7 照射部
8 テレセントリック光学系
9 撮像部
10 測定部
11 光源
12 コリメータレンズ
14 物体側レンズ
15 像側レンズ
16 絞り
Gt 管ガラス(透明管)
M0 直進光線
M1 透過光線
M11 一次屈折光線
M12 二次屈折光線
M13 三次屈折光線
P0 直進光線のピーク
P11 一次屈折光線のピーク
P12 二次屈折光線のピーク
P13 三次屈折光線のピーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7