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  • 特開-溶銑の脱りん方法 図1
  • 特開-溶銑の脱りん方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049462
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】溶銑の脱りん方法
(51)【国際特許分類】
   C21C 1/02 20060101AFI20230403BHJP
   C21C 5/28 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
C21C1/02 110
C21C5/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159209
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】久志本 惇史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】黒川 佑馬
【テーマコード(参考)】
4K014
4K070
【Fターム(参考)】
4K014AA03
4K014AB03
4K014AC17
4K014AD27
4K014AE01
4K070BA12
4K070EA03
(57)【要約】
【課題】安価に、かつ効率よく低りん鋼を溶製するための溶銑の脱りん方法を提供する。
【解決手段】脱りん吹錬において、溶銑中Siの酸化で生成されるSiO2および脱りん吹錬前に投入する、石灰源を含む副材に含まれるSiO2の質量と、前記石灰源中のCaO純分の質量との比である装入塩基度を1.7~2.2とし、転炉スラグとして、CaO/SiO2が3.0以上、CaOとSiO2の濃度の合計が50質量%以上、P25濃度が2.0質量%未満、残部がFetO、Al23、MnO、MgO、Sおよび不可避的不純物で構成される転炉スラグを溶銑トンあたり10~30kg使用する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上吹きランスを具備した転炉型精錬装置において溶銑を装入し、少なくとも転炉スラグを含む石灰源を投入するとともに前記上吹きランスから酸素を吹き付けて前記溶銑の脱りん吹錬を実施し、生成した脱りんスラグの一部を炉傾動により排滓した後に石灰源を追装して脱炭吹錬を実施し、脱炭吹錬後の溶鋼中P濃度が0.020質量%未満の低りん鋼を溶製する溶銑の脱りん方法であって、
前記脱りん吹錬において、溶銑中Siの酸化で生成されるSiO2および脱りん吹錬前に投入する、前記石灰源を含む副材に含まれるSiO2の質量と、前記石灰源中のCaO純分の質量との比である装入塩基度を1.7~2.2とし、
前記転炉スラグとして、CaO/SiO2が3.0以上、CaOとSiO2の濃度の合計が50質量%以上、P25濃度が2.0質量%未満、残部がFetO(酸化鉄FeO、Fe23の総和)、Al23、MnO、MgO、Sおよび不可避的不純物で構成される転炉スラグを溶銑トンあたり10~30kg使用することを特徴とする、溶銑の脱りん方法。
【請求項2】
前記転炉スラグは、80質量%以上の割合で粒径が5~30mmであることを特徴とする、請求項1に記載の溶銑の脱りん方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に中間排滓を行う操業での溶銑の脱りん方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、P濃度が0.02質量%未満の低りん鋼を溶製する場合、リサイクルスラグに含まれるP25により復りんが生じてしまうため、当該鋼種を溶製する際の脱りん吹錬では、リサイクルスラグを用いずに全量新規の石灰を用いてスラグ塩基度を調整している。そのため、低りん鋼を溶製する場合には多量の石灰を必要とし、コストが多くかかってしまう。
【0003】
そこで、脱りん吹錬において、リサイクルスラグを用いる様々な技術が提案されている。特許文献1には、P濃度が0.02質量%未満の低りん溶銑を脱りんして生成された高塩基度スラグを、再び他鋼種の脱りん吹錬に戻し、塩基度が2以下の条件で脱りん吹錬を行う技術が開示されている。特許文献2には、脱りん吹錬において転炉スラグをリサイクルする際に、転炉スラグを5~50mmに調整し、吹錬後のスラグ塩基度が2以上、かつスラグ中のT.Feが10~15質量%となるように吹錬を行う技術が開示されている。また、特許文献3には、脱炭吹錬後のスラグを残し、石灰、ドロマイト、造塊スラグ等の固化材を投入して脱炭スラグを固化させ、そのまま脱りん吹錬を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-237525号公報
【特許文献2】特開2004-124145号公報
【特許文献3】特許第6421634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、リサイクルスラグを用いて脱りん吹錬を行う場合には、できるだけP25の少ないリサイクルスラグを用いれば、復りんを抑えることができる。しかしながら、特にMURC法のように中間排滓を行う操業では、スラグの泡立ちによるスラグ溢れ(以後、スロッピング)が生じた時点で吹錬を継続できなくなり、中間排滓前の時点で溶銑中のP濃度を十分に低くすることが困難であるため、操業条件に制約が多い。そのため、P25の少ないリサイクルスラグを用いるだけでは、効率よく低りん鋼を溶製することができない。
【0006】
特許文献1に記載の方法は、溶銑を脱りん炉で脱りん処理した後に脱炭炉に移して脱炭処理を行うプロセスを前提としており、中間排滓を容易にするためのスラグ組成を考慮していないため、脱りん処理後に中間排滓を行い同一炉で脱炭処理を行う操業において安定的に低りん鋼を得ることはできない。同様に、特許文献2に記載の方法は中間排滓を行う操業を想定しておらず、中間排滓を容易にするためのスラグ組成を考慮していないため、中間排滓を行う操業において効率よく低りん鋼を溶製することができない。さらに、特許文献3では、脱りん処理後に中間排滓を行い同一炉で脱炭処理を行うプロセスを基本とし、脱炭処理した後の出鋼後に脱炭スラグを転炉内に残し、ドロマイト等のスラグ固化剤およびAl23を含有する造塊スラグを投入してスラグを固化させ、次回脱りん処理のための溶銑装入時にスラグが突沸することを防止しながらスラグリサイクルを実施する方法が記載されている。しかしながら、ホットリサイクルスラグに対してスラグ固化剤を添加して固める一方でAl23を含有する造塊スラグを添加して溶融を促進する方法は、スラグ固化・溶融の制御に難しさがあり、Al23を含有する造塊スラグを添加することによってスラグ量が増大して脱りん処理におけるスロッピングを早期化させるため、安定した低りん化を目的とする場合には最善の方法ではない。
【0007】
本発明は前述の問題点を鑑み、安価に、かつ効率よく低りん鋼を溶製するための溶銑の脱りん方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、リサイクルスラグを用いて効率よく脱りん吹錬を行うための条件についいて鋭意検討を行った。その結果、中間排滓を行う操業において、適切な塩基度、転炉スラグの組成及び量などが存在することが判明し、本発明に至った。
【0009】
本発明は以下の通りである。
(1)
上吹きランスを具備した転炉型精錬装置において溶銑を装入し、少なくとも転炉スラグを含む石灰源を投入するとともに前記上吹きランスから酸素を吹き付けて前記溶銑の脱りん吹錬を実施し、生成した脱りんスラグの一部を炉傾動により排滓した後に石灰源を追装して脱炭吹錬を実施し、脱炭吹錬後の溶鋼中P濃度が0.020質量%未満の低りん鋼を溶製する溶銑の脱りん方法であって、
前記脱りん吹錬において、溶銑中Siの酸化で生成されるSiO2および脱りん吹錬前に投入する、前記石灰源を含む副材に含まれるSiO2の質量と、前記石灰源中のCaO純分の質量との比である装入塩基度を1.7~2.2とし、
前記転炉スラグとして、CaO/SiO2が3.0以上、CaOとSiO2の濃度の合計が50質量%以上、P25濃度が2.0質量%未満、残部がFetO(酸化鉄FeO、Fe23の総和)、Al23、MnO、MgO、Sおよび不可避的不純物で構成される転炉スラグを溶銑トンあたり10~30kg使用することを特徴とする、溶銑の脱りん方法。
(2)
前記転炉スラグは、80質量%以上の割合で粒径が5~30mmであることを特徴とする、上記(1)に記載の溶銑の脱りん方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安価に、かつ効率よく低りん鋼を溶製するための溶銑の脱りん方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】脱りん効率の改善方法を説明するための図である。
図2】装入塩基度と脱Si外酸素量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態においては、上吹きランスを具備した転炉型精錬装置において、まず溶銑の脱りん吹錬を実施し、生成した脱りんスラグの一部を炉傾動により中間排滓する。そして、後に石灰源を追装して脱炭吹錬を実施し、脱炭吹錬後の溶鋼中P濃度が0.020質量%未満の低りん鋼を溶製する。溶銑の脱りん吹錬では、石灰源として転炉スラグおよび新規の石灰(生石灰など)を投入する。
【0013】
脱りん処理と脱炭処理とを分離し、中間排滓を行う操業での脱りん吹錬では、操業上スラグおよび溶銑の状態から求まるみかけの平衡P濃度に対して溶銑中のP濃度が高くなる。よって、スラグ組成や溶銑温度を変更することによって化学平衡の改善を図ることは脱りん改善への効果が小さい。そこで、図1に示すように、(1)酸素供給量を増やす方法、あるいは(2)Pの物質移動を促進させることが脱りん効率の改善に有効である。
【0014】
そこで、脱りん吹錬の時間を延ばして酸素供給量を増やすためには、吹錬時間確保のネックとなるスロッピングの発生時期を遅延させることが重要である。図2には、装入CaO/SiO2(装入塩基度)と脱Si外酸素量(上吹き送酸した酸素量のうち、溶銑Siの酸化に消費された酸素分を除外した酸素量)との関係を示す。図2における脱Si外酸素量は、脱りん吹錬を開始してからスロッピングが発生するまでの酸素供給量を表している。また、装入塩基度とは、溶銑中Siの酸化で生成するSiO2および脱りん吹錬前に投入する副材に含まれるSiO2の質量と、石灰源中のCaO純分の質量との比を表す。ここで副材とは、脱りん吹錬時に投入されるリサイクルスラグ(転炉スラグ)や珪石などが含まれる。また、石灰源には、上記転炉スラグのみならず、新規の石灰(生石灰など)も含まれる。図2に示すように、装入塩基度が大きいほどスロッピングの発生時期が遅延して、酸素供給量を増加させることができる。
【0015】
一方で、脱りんスラグの塩基度が高いと、固相の増加、溶融スラグの粘度低下により、スロッピングが発生しにくくなることで中間排滓率が著しく低下してしまう。また、スラグ塩基度の増加で、脱りん吹錬初期のスラグの液相率も低下するため、Pの物質移動も停滞してしまう。そこで、脱りん時間を確保するために装入塩基度を高位としつつ、Pの物質移動を促進させる手法として、本実施形態では石灰源として転炉スラグを活用する。但し、転炉スラグ中にはP25を含んでおり、復りんをなるべく防止するために、なるべくスラグ中P25濃度が低いものを分別することが前提となる。
【0016】
ここで、石灰源として生石灰と転炉スラグとを用いる場合に、転炉スラグの割合を変えた場合の脱りん挙動、スラグ塩基度、スラグの液相率を調査したところ、石灰源に生石灰のみを用いた場合と比較して、転炉スラグが多くなるほど液相率が上昇し、脱りん挙動が改善した。この要因としては、転炉スラグの方が生石灰よりも溶解速度が緩やかであるため、スラグ塩基度が低く推移して液相量を維持できたことが考えられる。
【0017】
以上のように本実施形態においては、酸素供給量を増やして吹錬時間を確保するとともに、石灰源として転炉スラグを活用してPの物質移動を促進させることによって、安価に、かつ効率よく脱りん反応を促進させることができる。
【0018】
次に、本実施形態における脱りん吹錬での詳細な条件について説明する。
【0019】
(装入塩基度:1.7~2.2)
図2に示したように、装入塩基度が高いほど脱りん吹錬時のスロッピングが遅延し、酸素供給量を増やすことができる。そのため、P濃度が0.02質量%未満の低りん鋼を製造するためには、装入塩基度を1.7以上とする。一方で、装入塩基度が2.2を超えると、逆にスロッピングが殆ど生じず、中間排滓率が著しく悪化してしまう。そのため装入塩基度の上限は2.2とする。
【0020】
(転炉スラグの塩基度:3.0以上)
石灰源として投入する転炉スラグの塩基度が3.0を下回ると、脱りんスラグ内部の組織としてダイカルシウムシリケート(以下C2S)が多量に生成してしまい、脱りん吹錬で投入した際の溶解速度が著しく低下してしまう。また、脱りんスラグの塩基度(装入塩基度)を上記の範囲に調整するために多くの転炉スラグが必要になってしまう場合がある。一方、塩基度が3.0以上であれば、SiO2に対しCaOが余剰に存在するため、スラグ組織として低融点のCaO-FeOが存在し、一定の溶解速度を確保することができる。なお、転炉スラグの塩基度の上限については特に限定しないが、上述のように装入塩基度に範囲が存在し、かつ後述のように転炉スラグの投入量にも加減が存在することから、実質的に上限が存在する。
【0021】
(転炉スラグ中のCaOとSiO2の濃度の合計:50質量%以上)
CaOとSiO2の濃度の合計が50質量%未満であると、脱りんスラグの塩基度を調整するのに多くの転炉スラグが必要になることに加え、相対的にFetO(酸化鉄FeO、Fe23の総和)が増加する。このため溶解速度が大きくなりすぎてしまい、脱りんスラグの実塩基度が高くなって脱りんスラグの液相率が低下してしまう。このため、転炉スラグ中のCaOとSiO2の濃度の合計が50質量%以上とする。
【0022】
(転炉スラグ中のP25濃度:2.0質量%未満)
転炉スラグ中のP25濃度が高いと、溶銑への復りんが増えてしまい、その多くが脱炭吹錬に持ち越されてしまう。これにより、転炉吹錬トータルでの脱りん能が低下してしまう。したがって、転炉スラグ中のP25濃度は2.0質量%未満とする。
【0023】
ここで、上記のような組成範囲を満たす転炉スラグの分別方法について説明する。一般的な脱炭スラグのP25濃度は3質量%前後であるため、転炉スラグ中のP25濃度を2質量%未満にするためには、例えば低りん鋼向けの吹錬で生成された脱炭スラグに絞ってスラグを分別する必要がある。スラグの分別方法については特に限定されず、複数の吹錬で生じたスラグを混合してもよく、上記の組成範囲を満たす転炉スラグであればどのように転炉スラグを用いてもよい。
【0024】
(転炉スラグのその他の成分)
転炉スラグのその他の成分としては、FetO、Al23、MnO、MgO、Sおよび不可避的不純物が挙げられる。これらの濃度については特に限定しないが、CaOとSiO2の濃度の合計、およびP25濃度が上述の条件を満たしていればよい。
【0025】
(転炉スラグの量:10~30kg/t)
投入する転炉スラグの量が10kg/t未満であると、脱りんスラグの液相率が低位となり、脱りん改善効果が得られない。一方で、投入する転炉スラグの量が30kg/tを超えると、脱りんスラグの量を抑えながら上記の範囲の装入塩基度を調整するのが困難になり、相対的に転炉スラグからの復りん量も増加してしまう。また、上記の範囲に装入塩基度を調整しようとすると、転炉スラグの量が増えその溶解に時間を要するため、スラグ塩基度が低い時間が長くなり、脱りんの遅れやスロッピングの早期発生による脱りん時間の不足が起こりやすい。
【0026】
(転炉スラグの粒径:転炉スラグの80質量%以上が5~30mm)
実際の破砕分級の負荷や脱りん効率を考慮すると、転炉スラグの粒径は30mm以下とすることが好ましい。ただし、あまり粒径を小さくしすぎると、集塵ロスにより転炉スラグの添加歩留まりが低下してしまう。したがって転炉スラグの粒径は、転炉スラグの80質量%以上が5~30mmであることが好ましい。
【0027】
(その他の条件)
脱りん吹錬中の上吹き送酸速度の範囲は、スロッピングの発生時期などを考慮して一般的な吹錬条件とし、具体的には、80~150Nm3/h/tとすることが好ましい。また、石灰源として上記転炉スラグ以外に生石灰などの石灰を投入して装入塩基度を上記の範囲に調整するが、脱りんスラグ中のSiO2量を調整するために、珪石などを投入してもよい。
【実施例0028】
次に、本発明の実施例について説明するが、この条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するための一条件例であり、本発明は、この実施例の記載に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する種々の手段にて実施することができる。
【0029】
表1に示す組成の溶銑300tを転炉型精錬容器に装入し、表1に示す量および組成の転炉スラグおよび生石灰を投入して上吹きランスから80~150Nm3/h/tの送酸速度で酸素を吹き付け、脱りん吹錬を実施した。脱りん吹錬の後、中間排滓を実施して脱りんスラグの一部を排出した。なお、中間排滓率は表1に示した結果であった。その後、生石灰などの副材を再装入し、上吹きランスから200~220Nm3/h/tの送酸速度で酸素を吹き付け、脱炭吹錬を実施した。また、転炉スラグとして脱炭スラグを用い、30~90mmまたは5~30mmに破砕分級し、80質量%以上がこれらの範囲となるような脱炭スラグを用意した。そして、30~90mmに分級した脱炭スラグを投入する際には転炉のスクラップシュートより投入し、5~30mmに分級した脱炭スラグを投入する際には転炉の炉上バンカーより投入した。
【0030】
発明の効果については、脱炭吹錬後の溶鋼中P濃度が0.020質量%未満で効果ありと判断し、0.015質量%未満で発明の効果が顕著に得られたと判断した。
【0031】
【表1】
【0032】
表1中の下線は、本発明の条件を満たしていないことを表している。Ch.No.1~8は、溶鋼中P濃度が0.020質量%未満となり、発明の効果が得られた。特にCh.6~8では、より細かい粒度の転炉スラグを用いたため、溶鋼中P濃度が0.015質量%未満となり、発明の効果がより顕著に得られた。
【0033】
一方、Ch.No.9は転炉スラグの塩基度が低すぎたため、ダイカルシウムシリケート(以下C2S)が多量に生成して溶解速度が低すぎたことから、脱りん吹錬終了後の溶銑中P濃度が高くなってしまった。Ch.10は転炉スラグ中のCaOとSiO2の濃度の合計が低すぎたため、相対的にFetOが増加し、溶解速度が高くなり過ぎて液相率が下がったため、脱りん吹錬終了後の溶銑中P濃度が高くなってしまった。Ch.11は転炉スラグ中のP25濃度が高すぎたため、復りんの影響により脱りん吹錬終了後の溶銑中P濃度が高くなってしまった。
【0034】
Ch.12は転炉スラグの量が少なかったことから脱りんスラグの液相率を十分に上げることができなかったため、脱りん吹錬終了後の溶銑中P濃度が高くなってしまった。Ch.13は転炉スラグの量が多すぎたことで、スラグ塩基度が低い時間が長くなり、脱りんの遅れおよびスロッピングの早期発生により脱P不良が生じてしまった。
【0035】
Ch.14は装入塩基度が低すぎたため、スロッピングが早まって吹錬時間を十分に確保できず、脱りん吹錬終了後の溶銑中P濃度が高くなってしまった。Ch.15は装入塩基度が高すぎたため、脱りんスラグが硬化してスロッピングがほとんど起こらず、中間排滓率が低かった。そのため、脱りん吹錬終了後の溶銑中P濃度が低かったものの、脱炭吹錬後の溶鋼中P濃度は高かった。
図1
図2