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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004952
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】MICタグによる空間配列決定
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20230110BHJP
   C12Q 1/6816 20180101ALI20230110BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230110BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230110BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6816 Z ZNA
C12Q1/686 Z
C12N15/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022101003
(22)【出願日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】21181309
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520094891
【氏名又は名称】ミルテニー バイオテック ベー.フェー. ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Miltenyi Biotec B.V. & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Friedrich-Ebert-Strasse 68, 51429 Bergisch Gladbach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハインリヒ シュピーカー
(72)【発明者】
【氏名】ザンドラ ハルプフェルト
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ロートマン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ボズィオ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS36
4B063QS39
(57)【要約】      (修正有)
【課題】組織の領域または組織内の個々の細胞におけるmRNAの分布を決定する方法提供する。
【解決手段】サンプル中のRNAまたはcDNA鎖の少なくとも一部の空間位置および配列情報を得るための方法であって、a.ブリッジオリゴヌクレオチドに部分的にハイブリダイズされ、オリゴヌクレオチドに結合可能なギャップ領域が形成される、第1の検出プローブオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせる工程と、b.サンプル中のRNAまたはcDNA鎖の空間情報を決定するバーコードオリゴヌクレオチドで、ギャップ領域を部分的に充填する工程と、c.第2の検出プローブオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせて、環状テンプレートを形成する工程と、d.環状テンプレートを、複数のコンカテマーを含むロロニー内でローリングサークル増幅可能なポリメラーゼにより増幅する工程と、e.ロロニーのヌクレオチド配列を決定する工程とを含む、方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のRNAまたはcDNA鎖((006))の少なくとも一部の空間位置および配列情報を得るための方法であって、
a.5~100個のヌクレオチドを含むブリッジオリゴヌクレオチド(205)に部分的にハイブリダイズされ、オリゴヌクレオチドに結合可能なギャップ領域(206)が形成される、50~1000個のヌクレオチドを含む第1の検出プローブオリゴヌクレオチド(204)を、その3’および/または5’末端で、少なくとも1つの前記RNAまたはcDNA鎖の相補的部分にハイブリダイズさせる工程と、
b.4~20個のヌクレオチドを含み、前記サンプル中の前記RNAまたはcDNA鎖の前記空間情報を決定する、1~16個のバーコードオリゴヌクレオチドで、前記ギャップ領域(206)を部分的に充填する工程と、
c.50~1000個のヌクレオチドを含む第2の検出プローブオリゴヌクレオチド(204’)を、その3’および/または5’末端で、同じまたはcDNA鎖の前記相補的部分に部分的にハイブリダイズさせかつそれぞれの他端で前記ブリッジオリゴヌクレオチド(205)に部分的にハイブリダイズさせて、環状テンプレートを形成する工程と、
d.前記環状テンプレートを、複数のコンカテマーを含むロロニー内でローリングサークル増幅可能なポリメラーゼにより増幅する工程と、
e.前記ロロニーのヌクレオチド配列を決定する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
サンプル中のRNAまたはcDNA鎖((006))の少なくとも一部の空間位置および配列情報を得るための方法であって、
f.それぞれ50~1000個のヌクレオチドを含む第1のオリゴヌクレオチド(204)および第2のオリゴヌクレオチド(204’)を含み、これらが5~100個のヌクレオチドを含む部分的にハイブリダイズされたブリッジオリゴヌクレオチド(205)により連結され、前記第1のオリゴヌクレオチド(204)と前記第2のオリゴヌクレオチド(204’)との間にブリッジギャップ領域(206)が形成される、検出プローブオリゴヌクレオチドの3’および5’末端を、前記少なくとも1つのRNAまたはcDNA鎖の前記相補的部分にハイブリダイズさせる工程と、
g.4~20個のヌクレオチドを含み、前記サンプル中の前記RNAまたはcDNAの前記空間情報を決定する、1~16個のバーコードオリゴヌクレオチドで、前記ブリッジギャップ領域(206)を充填して、環状テンプレートを形成する工程と、
h.前記環状テンプレートを、複数のコンカテマーを含むロロニー内でローリングサークル増幅可能なポリメラーゼにより増幅する工程と、
i.前記ロロニーの前記ヌクレオチド配列を決定する工程と
を含む、方法。
【請求項3】
前記検出プローブオリゴヌクレオチドが、それぞれ50~1000個のヌクレオチドを含む第1の検出プローブオリゴヌクレオチド(204)および第2の検出プローブオリゴヌクレオチド(204)を、それぞれの3’および5’末端で、前記少なくとも1つのRNAまたはcDNA鎖の相補的部分にハイブリダイズさせ、続いて、前記第1(204)と第2のオリゴヌクレオチド(204’)とを、前記ブリッジオリゴヌクレオチド(205)に部分的にハイブリダイズさせて連結させることにより、前記少なくとも1つのRNAまたはcDNA鎖にハイブリダイズされることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記検出プローブオリゴヌクレオチドが、
第1のオリゴヌクレオチド(204)を第2のオリゴヌクレオチド(204’)にライゲーションし、ついで、得られたオリゴヌクレオチドを前記少なくとも1つのRNAまたはcDNA鎖の前記相補的部分にハイブリダイズさせ、続いて、前記得られたオリゴヌクレオチドの未結合末端を前記ブリッジオリゴヌクレオチド(205)に部分的にハイブリダイズさせて連結させる
ことにより、前記少なくとも1つのRNAまたはcDNA鎖にハイブリダイズされることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記検出プローブオリゴヌクレオチドが前記少なくとも1つのRNAまたはcDNA鎖の前記相補的部分にハイブリダイズされ、これにより、前記検出プローブオリゴヌクレオチドの前記第1のオリゴヌクレオチド(204)と前記第2のオリゴヌクレオチド(204’)との間に1~150個のヌクレオチドのギャップ(207’)が形成されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記ギャップ(207’)が前記少なくとも1つのRNAまたはcDNA鎖の隣接部分に相補的なヌクレオチドで充填され、これにより、第1の標的配列(207)が得られることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのRNAまたはcDNAにハイブリダイズされた前記第1および/または第2のオリゴヌクレオチドの一部を使用して、第2の標的配列を得ることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記サンプル中の前記環状テンプレートの前記空間情報が、前記第1および/または第2の標的配列に連結されることを特徴とする、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
前記ブリッジギャップ領域(206)が、ハイブリダイズ後に光で前記光開裂性保護基を除去して、同じかまたは異なる光開裂性保護基を含むバーコードオリゴヌクレオチドを前記ブリッジオリゴヌクレオチド(205)の相補的部分にハイブリダイズさせることにより、少なくとも部分的に充填されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記環状テンプレートが、ローリングサークル増幅ポリメラーゼについてのプライミング部位として、バーコードオリゴヌクレオチドのうちの1つに相補的なプライマーオリゴヌクレオチドを提供する(ハイブリダイズさせる)ことにより選択的に増殖されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルが、表面に固定され、透過処理されることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記サンプルが組織として提供され、一本鎖環状テンプレートが、前記サンプルから単離され、ローリングサークル増幅によりex situで複製されることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記サンプルが組織として提供され、一本鎖環状テンプレートが、ローリングサークル増幅により前記組織上に複製されることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間配列決定の技術に関する。その目的は、組織の領域または組織内の個々の細胞におけるmRNAの分布を決定することである。
【0002】
空間配列決定は、細胞のmRNA含量をその組織状況との関係で直接配列決定することが可能な方法の総称である。これらの方法は、一方では、一種の高度に多重化された蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)アッセイにおける、細胞のmRNA発現プロファイルの分析に役立ちうる。
【0003】
他方で、in situ配列決定により、特異的なmRNA結合プローブを使用して、mRNA配列情報の読み出しも可能である場合がある。このプローブは、特定のmRNAまたはcDNA配列の予め決められた部分のコピーを塞ぐことができる(“Gap-fill padlock probes”, Ke et al., Nature Methods 2013, doi:10.1038/nmeth.2563)。in situ配列決定法は全てシグナル増幅工程を必要とし、これは、ほとんどの場合、mRNAまたはcDNA結合プローブの環化および後続のローリングサークル増幅(RCA)により行われ、プローブ配列の複数のコピーを含むDNA分子、いわゆるナノボール、ロロニーまたはローリングサークル増幅産物(RCP)を生成する。これらは、nmまたはμmスケールのサイズを有する大きな分子であるため、1つの細胞内で形成することができるロロニーの数は、この細胞のサイズにより厳密に制限される。
【0004】
さらに、細胞内のロロニーの密度が高すぎる場合、配列決定手法の光学的検出工程の間の単一のmRNAシグナルの識別が非常に損なわれる。このことは、技術の主な欠点であるため、これを回避すべく、種々の技術、例えば、より小さなロロニーの設計または組織-ヒドロゲル複合体の生成および除去が開発されている(Asp et al., BioEssays 2020, DOI: 10.1002/bies.201900221)。しかしながら、これらの方法は、in situ配列決定の固有の空間的限界を依然として完全には回避できない。
【0005】
別のアプローチでは、in situシグナル増幅を回避する。in situ捕捉は、組織からのmRNA分子の、バーコード化プライマーのスポットで被覆された表面への移動によるものであり、配列決定されたmRNAが抽出された特定の組織領域へのex situ獲得配列情報のバックトラッキングが可能となる。それにもかかわらず、この方法も、RNA捕捉効率が制限されており、バーコード化捕捉スポットの比較的大きなサイズに起因して分解能が不十分である(単一細胞分析ができない)ため、制限されている(Asp et al., BioEssays 2020, DOI:10.1002/bies.201900221)。
【0006】
発明の概要
本発明は、光学的方法を使用して、遺伝子コードを配列に挿入する方法に関する。このコードを、コード化が実行された位置を探索するために使用することができる。本明細書における目的は、in situで測定可能なmRNA配列の数および発現動態に関する既存のin situ配列決定法の限界をほとんど克服することである。光学的コード化は、1μmの範囲の分解能と、各細胞が典型的なサイズの組織切片においてそれ自体のコードを受容するのに十分なコードの可変性とを有することができる。
【0007】
さらに、特異的なmRNA結合プローブの光学的コード化およびこれらのプローブ内に封入されたmRNA領域の逆転写媒介「コピー」を行うことができる。このため、この方法を、mRNAの分布をプロファイリング(単一の細胞の発現プロファイリング)するだけでなく、特定のmRNA切片の配列情報を決定(例えば、一塩基多型、SNP;単一の細胞の配列決定)するためにも使用することができる。
【0008】
本明細書に開示する方法の基本方式は、細胞中に存在するmRNAへのパッドロックプローブの結合に基づいている。これらを、以下、MICタグプローブ(Mismatch Cell Tagging(ミスマッチ細胞タグ)またはMismatch Code Tagging(ミスマッチコードタグ))と称するものとする。
【0009】
提案されたMICタグワークフローを、図1に示す:サンプル調製、組織染色および画像化(透過、蛍光)の後に、セグメント化またはクラスター分析および構造化照明のためのマスクの計算が続いて行われる。MICタグプローブは、細胞内の特定のmRNA分子に結合し、これにより、逆転写酵素媒介ギャップ充填(mRNA配列のMICタグプローブへのコピー)およびMICタグコードの周期的組み込み、MICタグプローブのローリングサークル増幅、MICタグコードの配列決定が可能となる。ギャップ充填により得られた配列およびMICタグコードは、画像に注釈付けされる。バイオインフォマティクス分析およびその結果と最初のサンプルソースとの関係により、ワークフローが完了する。
【0010】
MICタグプローブをmRNAに提供することが、本発明の本質的な部分であり、2つの一般的な変形例により達成することができる。
【0011】
本発明の第1の目的は、サンプル中のRNAまたはcDNA鎖(006)の少なくとも一部の空間位置および配列情報を得るための方法であって、
a.5~100個のヌクレオチドを含むブリッジオリゴヌクレオチド(205)に部分的にハイブリダイズされ、オリゴヌクレオチドに結合可能なギャップ領域(206)が形成される、50~1000個のヌクレオチドを含む第1の検出プローブオリゴヌクレオチド(204)を、その3’および/または5’末端で、少なくとも1つのRNAまたはcDNA鎖の相補的部分にハイブリダイズさせる工程と、
b.4~20個のヌクレオチドを含み、サンプル中のRNAまたはcDNA鎖の空間情報を決定する、1~16個のバーコードオリゴヌクレオチドで、ギャップ領域(206)を部分的に充填する工程と、
c.50~1000個のヌクレオチドを含む第2の検出プローブオリゴヌクレオチド(204’)を、その3’および/または5’末端で、同じまたはcDNA鎖の相補的部分に部分的にハイブリダイズさせかつそれぞれの他端でブリッジオリゴヌクレオチド(205)に部分的にハイブリダイズさせて、環状テンプレートを形成する工程と、
d.環状テンプレートを、複数のコンカテマーを含むロロニー内でローリングサークル増幅可能なポリメラーゼにより増幅する工程と、
e.ロロニーのヌクレオチド配列を決定する工程と
を含む、方法である。
【0012】
MICタグプローブは、部分的に相補的に結合した「ブリッジ」(図2におけるブリッジオリゴヌクレオチド(205))により連結された、前述の特異的なmRNA結合部位のうちの1つをそれぞれ含む2つのプローブ(204,204’)からなることができる。このブリッジプライマーの配列は、全てのMICタグプローブについて同じである場合がある。プローブ上のその結合領域に対するブリッジオリゴヌクレオチド(205)の親和性および結合効率を、ロックド核酸(LNA)またはペプチド核酸(PNA)をブリッジオリゴマー配列に組み込むことにより向上させることができる。
【0013】
本発明の第2の目的は、サンプル中のRNAまたはcDNA鎖((006))の少なくとも一部の空間位置および配列情報を得るための方法であって、
f.それぞれ50~1000個のヌクレオチドを含む第1のオリゴヌクレオチド(204)および第2のオリゴヌクレオチド(204’)を含み、これらが5~100個のヌクレオチドを含む部分的にハイブリダイズされたブリッジオリゴヌクレオチド(205)により連結され、第1のオリゴヌクレオチド(204)と第2のオリゴヌクレオチド(204’)との間にブリッジギャップ領域(206)が形成される、検出プローブオリゴヌクレオチドの3’および5’末端を、少なくとも1つのRNAまたはcDNA鎖の相補的部分にハイブリダイズさせる工程と、
g.4~20個のヌクレオチドを含み、サンプル中のRNAまたはcDNAの空間情報を決定する、1~16個のバーコードオリゴヌクレオチドで、ブリッジギャップ領域(206)を充填して、環状テンプレートを形成する工程と、
h.環状テンプレートを、複数のコンカテマーを含むロロニー内でローリングサークル増幅可能なポリメラーゼにより増幅する工程と、
i.ロロニーのヌクレオチド配列を決定する工程と
を含む、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】MICタグワークフローを示す図である。サンプル調製、組織染色および画像化。
図2】パッドロック形成およびMICタグプローブのギャップ充填の変形例を示す図である。
図3】MICタグコード化を示す図である。
図4】ギャップ充填、コード化およびブリッジプライマー除去後のMICタグプローブを示す図である。
図5】MICタグロロニーの配列決定を示す図である。
図6】MICタグコードのための加速された配列決定手法を示す図である。
図7】MICタグプローブの並列コード化変形例を示す図である。
図8】固有分子識別子(UMI)のMICタグプローブ配列への組み込みを示す図である。
図9】プライマー制御MICタグコード化を示す図である。
【0015】
発明を実施するための形態
以下において、検出プローブオリゴヌクレオチドは、「MICタグプローブ」と称され、ブリッジオリゴヌクレオチド(205)は、複数の「MICタグディジット」またはより短く「ディジット」を含有し、ギャップ領域(206)は、「MICタグスニップス」またはより短く「スニップス」と称されるバーコードオリゴヌクレオチドで充填される。
【0016】
検出プローブオリゴヌクレオチドを生成するための変形例を、図2A図2Dに示す。
【0017】
図2Aに、パッドロックを示す。検出プローブオリゴヌクレオチド(204)は、少なくとも1つのRNAまたはcDNA鎖(005)の相補的部分(006)に結合する結合領域(203)を有する。検出プローブオリゴヌクレオチドは、部分的にハイブリダイズされ、オリゴヌクレオチドに結合可能なギャップ領域(206)を形成するブリッジオリゴヌクレオチド(205)を備える。
【0018】
図2Bに、パッドロックの一般的な概念および形状を示す。第1(204)および第2(204’)の検出プローブオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのRNAまたはcDNA鎖(005)の相補的部分(006)および(006’)に結合する結合領域(203)および(203’)を有する。最終的な検出プローブオリゴヌクレオチドは、第1(204)および第2(204’)の検出プローブオリゴヌクレオチドを、ブリッジオリゴヌクレオチド(205)に部分的にハイブリダイズさせることにより生成される。ここで、オリゴヌクレオチドに結合可能なギャップ領域(206)が形成される。
【0019】
図2Bに示されている実施形態の第1の変形例では、検出プローブオリゴヌクレオチドは、それぞれ50~1000個のヌクレオチドを含む第1の検出プローブオリゴヌクレオチド(204)および第2の検出プローブオリゴヌクレオチド(204’)を、それぞれの3’および5’末端で、少なくとも1つのRNAまたはcDNA鎖の相補的部分にハイブリダイズさせ、続いて、第1(204)と第2のオリゴヌクレオチド(204’)とを、ブリッジオリゴヌクレオチド(205)に部分的にハイブリダイズさせて連結させることにより、少なくとも1つのRNAまたはcDNA鎖にハイブリダイズされる。
【0020】
図2Bに示されている実施形態の第2の変形例では、検出プローブオリゴヌクレオチドは、第1のオリゴヌクレオチド(204)を第2のオリゴヌクレオチド(204’)(部分203および203’)にライゲーションし、ついで、得られたオリゴヌクレオチドを少なくとも1つのRNAまたはcDNA鎖の相補的部分にハイブリダイズさせ、続いて、得られたオリゴヌクレオチドの非結合末端をブリッジオリゴヌクレオチド(205)に部分的にハイブリダイズさせて連結することにより、少なくとも1つのRNAまたはcDNA鎖にハイブリダイズされる。
【0021】
図2Aに示された変形例では、検出プローブオリゴヌクレオチドならびに/または少なくとも1つのRNAもしくはcDNAにハイブリダイズされた第1および/もしくは第2のオリゴヌクレオチドの一部が、第2の標的配列を得るために使用される。
【0022】
図2Aに示されている実施形態とは異なり、図2Bに示されている実施形態は、mRNA(005)にハイブリダイズされると、第1のオリゴヌクレオチド(204)と第2のオリゴヌクレオチド(204’)との間にギャップ(207’)を備える。
【0023】
この変形例は図2Cに示されており、ここで、検出プローブオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのRNAまたはcDNA鎖の相補的部分にハイブリダイズされ、これにより、検出プローブオリゴヌクレオチドの第1のオリゴヌクレオチド(204)と第2のオリゴヌクレオチド(204’)との間に1~150個のヌクレオチドのギャップ(207’)が形成される。
【0024】
ついで、ギャップ(207’)を、少なくとも1つのRNAまたはcDNA鎖の隣接部分に相補的なヌクレオチドで逆転写酵素(208)により充填して、第1の標的配列(207)を得ることができる。ついで、第1のオリゴヌクレオチド(204)および第2のオリゴヌクレオチド(204’)の最終ライゲーションを、DNAリガーゼ(209)により行う。
【0025】
図2Dに、その第1の目的に係る本発明の方法を示す。本明細書において、第1の検出プローブオリゴヌクレオチド(204)は、その3’および/または5’末端(203)で、少なくとも1つのRNAまたはcDNA鎖(005)の相補的部分((006))にハイブリダイズされる。第1の検出プローブオリゴヌクレオチド(204)を、ブリッジオリゴヌクレオチド(205)と共に予め提供し、mRNA鎖(005)にハイブリダイズさせることができる。
【0026】
代替的には、第1の検出プローブオリゴヌクレオチド(204)が、最初に、少なくとも1つのRNAまたはcDNA鎖(005)の相補的部分((006))にハイブリダイズされ、ついで、ブリッジオリゴヌクレオチド(205)に部分的にハイブリダイズされる。
【0027】
両方の場合において、オリゴヌクレオチドに結合可能なギャップ領域(206)が形成される。
【0028】
すなわち、図2(A)は、1つのmRNA結合部位を有するMICタグプローブを示し、図2(B)は、2つの直接に隣接するmRNA領域にハイブリダイズされた2つのmRNA結合部位を有するMICタグプローブを示し、図2(C)は、MICタグプローブギャップの充填を示す。MICタグプローブが、特異的なmRNA種の2つの直接に隣接しないmRNA領域に結合した後、ギャップ充填のためのcDNA合成が、逆転写酵素により行われる。DNAリガーゼにより、鎖が連結される。
【0029】
この種の一本鎖DNAプローブは、mRNAの2つの隣接領域または近接するが直接に隣接しない2つの領域とハイブリダイズする2つの特異的なmRNA結合領域を含有する。ついで、プローブ結合が近接するが直接に隣接しない2つの領域で生じた際に生成されたギャップを、逆転写酵素により、封入されたmRNAに相補的な配列で「充填」(「ギャップ充填」)することができる。
【0030】
続いて、プローブは、後続のローリングサークル増幅を可能にするDNAリガーゼ(図2における209)により環化される。
【0031】
下記のプロセス工程において、ギャップ領域(206)は段階的に充填され、相補的配列(MICタグスニップス)の断片を、各工程において、相補的MICタグディジットに挿入し、これを光で固定する。例えば、合成プロセスによる配列決定に使用される環状化学とは対照的に、一実施形態では、単一のデオキシヌクレオチドが挿入されず、小さなオリゴヌクレオチド(MICタグスニップス)が挿入される。
【0032】
したがって、ブリッジギャップ領域(206)を、ハイブリダイズ後に光で光開裂性保護基を除去して、同じかまたは異なる光開裂性保護基を含むバーコードオリゴヌクレオチドをブリッジオリゴヌクレオチド(205)の相補的部分にハイブリダイズさせることにより、少なくとも部分的に充填することができる。
【0033】
ミスマッチング
MICタグスニップス(バーコードオリゴヌクレオチド)は、その長さに応じて、対応するMICタグディジットと1つ以上のミスマッチを有することができるが、ブリッジオリゴヌクレオチドの(ほぼ)相補的部分に依然として特異的に結合するのに十分な配列長を有するべきである。
【0034】
「ミスマッチ」という用語は、少なくとも1つの非相補的ヌクレオチドを有するバーコードオリゴヌクレオチドを指す。
【0035】
MICタグスニップスは、好ましい比率のMICタグスニップス:ミスマッチ=10:1bpを有する1つまたは2つのミスマッチを含有することができる。ミスマッチバージョンに加えて、MICタグスニップスは、別の変形例として機能するマッチングコードも含有することができる。
【0036】
その関連するMICタグディジットとの特異的ハイブリダイゼーションを確実にするために、スニップスは、他のディジットを結合することができないように設計される必要がある。スニップスにおけるミスマッチの代替として、ブリッジプライマーも、スニップスミスマッチに相補的な位置にユニバーサル塩基を含有するように設計することができる。
【0037】
これらのMICタグスニップスのアニーリングは周期的プロセス内で行われ、このアニーリングは、各周期において、空間的に構造化された別の光パターンで組織サンプルを処理することにより、組織サンプルの構造化照明によってトリガされる。「構造化照明」および「空間的に構造化された光パターン」は、サンプルの一部または選択された領域のみを照明することを指す。例えば、図1に、画像化100に供される組織ドナー001から得られた(場合により、染色された)組織切片002を示す。この画像化100により、セグメント化またはクラスター分析、すなわち、本発明の方法によりさらに調査されるべきサンプルの部分の選択が可能となる。このようなセグメント化/クラスタリング/選択により、構造化照明および/または空間的に構造化された光パターンのためのマスクの計算が可能となる。
【0038】
本発明の方法における更なる下流では、構造化照明および/または空間的に構造化された光パターンのために得られた情報が、MICタグコード生成のための光処理(102)の間に利用される。これにより、パッドロックプローブ201の環化が可能となり、最終的に、RCA後に、ロロニー202の形成が可能となる。構造化照明の助けを借りて、サンプル202の選択された領域/細胞のみが、ロロニーの次世代配列決定(100)および配列分析(101)に供される。
【0039】
MICタグスニップスの結合動力学は、光開裂性基が除去されない場合、例えば温度を上昇させることによりスニップスを分離し洗い流すことができるように調節される。露光が行われた場合、ブリッジオリゴヌクレオチド内のその対応するMICタグディジットとハイブリダイズされたMICタグスニップスが、プローブ内に固定される。光開裂性基がパターン化照明により分離され、この部位でのリガーゼ反応が可能となるためである。最後に、MICタグスニップスの個々の組み合わせにより、組織切片内または細胞内でさえ、MICタグプローブの位置をコード化するMICタグコードが決定される。
【0040】
MICタグコード化のプロセスを、図3に示す:4つの特異的ギャップ充填オリゴのうちの1つが、結合し、ギャップ充填されたMICタグプローブに加えられる。このオリゴは、塩基ミスマッチを全く有さないか、1つまたは2つの塩基ミスマッチを有するかのいずれかである。このスキームにより、16種類のミスマッチプローブを、各MICタグディジットについて設計することができる。これらのミスマッチプローブは、4つのMICタグディジット結合領域(I~IV)のうちの1つに結合する。単一細胞を照明することにより、光開裂が誘引され、DNAリガーゼによるMICタグスニップスの組み込みが可能となる。
【0041】
標的鎖の逆転写酵素によるギャップ充填が既に行われたMICタグプローブから出発して、MICタグスニップスは、幾つかのスニップスからなるコードが書き込まれるまで、周期的なプロセスで構築される。図3に示された例では、スニップスの変動性は16であり、これを、2つのミスマッチおよびブリッジ内の4つの結合領域(MICタグディジット)により達成することができる。したがって、65536種類の値を有することができるコードを書き込むには、4×16サイクルが必要となる。
【0042】
コード化が完了した後、全てのMICタグプローブ、すなわち環状テンプレートが、組織サンプルから単離される、すなわち除去される。ブリッジオリゴヌクレオチドを、例えば熱誘引二本鎖融解により、環状テンプレートから分離することができる。代替的な変形例において、ブリッジオリゴヌクレオチドは、ローリングサークル増幅を誘引するためのプライマー配列を備え、このため、環状テンプレート/MICタグプローブ上に残存することができる。
【0043】
図4に、MICタグスニップス(217)を担持する単離されたMICタグプローブを示す。MICタグスニップス(217)は、そのmRNA鎖を起源とする組織構造、細胞または細胞内領域からの情報を提供する。加えて、MICタグプローブのmRNA結合部位((006)、(006’))間のギャップ充填(207)によるcDNA合成により、標的とするmRNAの最終的な突然変異またはSNP(一塩基多型)に関する情報が含められる(図4、207)。
【0044】
原則として、この方法は、同時に検査されるmRNAの種類の数に関して限定されるものではなく、個々のmRNA発現レベルに関して限定されるものではない。その結果、ハウスキーピング遺伝子としての高レベルの発現者がそのプロセスを損なうことはないであろう。同時に個々に検査される細胞数は、選択されたコード長により制限される。この制限は、シーケンサの能力およびスループットのみである。
【0045】
配列決定
本発明の方法における1つの工程は、ロロニーのヌクレオチドの配列を決定することに向けられる、すなわち、MICタグプローブ上にコード化された情報が配列決定により読み出される。配列決定のための1つの方法は、sequencing by synthesis法(SBS)であってよい。読み出しシグナルを増加させるために、MICタグプローブ配列の増幅を行うことができる。クローン増幅のための1つの方法は、単離されたMICタグプローブのローリングサークル増幅(RCA)であってよい。この増幅は、ロロニーに対する配列決定プロセスを開始する前に行われる。
【0046】
図5に、MICタグロロニーの配列決定を示す。2つの配列決定プライマーにより、ギャップ充填cDNA配列(218,218’)およびMICタグコード(219,219’)の連続配列決定が導かれる。
【0047】
本発明の変形例では、MICタグコードの配列を、標的遺伝子の配列(ギャップ充填配列)とは別個に読み取ることができる。これを、配列決定手法を2つの異なる配列決定プライマーによる2つのランに分割することにより実現することができる。
【0048】
MICタグコード配列決定の加速
MICタグスニップスの配列決定を、ミスマッチ領域の前後のマッチングコードが4つの塩基のうちの3つ(例えば、G、T、C)の配列のみからなる場合、加速させることができる。下記の配列において、Mは、塩基G、A、Cのうちの1つについてのプレースホルダであり、Xは、ミスマッチングコードについてのプレースホルダである。
【0049】
MMMMMTXXMMMMM(MICタグスニップス、M={G,A,C}およびX={A,G,T,C}
【0050】
合成による配列決定に適用される環状化学物の文脈において、組み込まれたヌクレオチドは、通常、塩基特異的フルオロフォアおよびターミネーター(本明細書において、A、G、C、Tで示される)で修飾され、これにより、その位置が読み取られるまで、更なるポリメラーゼ媒介鎖伸長がブロックされる。上記で与えられた変形例におけるMICタグスニップスを読み取る場合、色素およびターミネーターを含まないヌクレオチドT、G、CとAとの混合物を適用することができる。ついで、これらは、Tが生じるまで組み込まれ、常にミスマッチに先行し、Aを組み込むことにより更なる伸長が妨げられる。
【0051】
ついで、配列のミスマッチ部分を、ターミネーターおよび蛍光色素で修飾されたヌクレオチドの混合物を使用することにより検出することができる。ついで、T、G、C、A混合物を再度添加し、鎖伸長を、次のMICタグスニップスにおける次のミスマッチ位置の前にある次のTまで進行させる。
【0052】
これにより、本質的に、MICタグコード中のミスマッチ位置を配列決定するために必要なサイクル数を減少させることができる。この戦略を使用して、周期的組み込みのデフェージングが回避され、補正される。読み取られるべき第1のMICタグスニップス配列を、配列決定プライマーがミスマッチ配列の直前に結合し、このため、T、G、C、Aによる最初のパディングの必要性を排除するようにも設計することができる。
【0053】
本発明のこの変形例を、図6に示す。この場合、例えば2つの連続するミスマッチが、MICタグスニップスに存在する。図6に、MICタグコードのための加速配列決定手法を示す。特異的配列決定プライマーにより誘導されて、ターミネーター(T、C、G、A)で蛍光標識されたヌクレオチドが、3サイクルで添加されて、合成アプローチによる配列決定におけるミスマッチ検出が可能となる。次の工程では、非標識および非終結ヌクレオチド(T、C、G)およびターミネーター(A)で蛍光標識されたAが添加され、鎖がDNAポリメラーゼにより充填される。Aの結合により、この工程が停止する。次のミスマッチ位置に到達したことを示すためである。再度、ターミネーター(T、C、G、A)で蛍光標識されたヌクレオチドが、3サイクルで添加されて、合成アプローチによる配列決定におけるミスマッチ検出が可能となる。このアプローチは、MICタグコード全体が配列決定され、ミスマッチ領域を除いて、その配列内にチミジンを含まない特別に設計されたMICタグスニップスが必要となるまで繰り返される。
【0054】
この変形例では、例として、下記の配列が利用される。
【0055】
配列番号1:配列決定プライマー221の3’末端:5’-...TGATCATG-3’(10ヌクレオチド未満、配列表なし)
配列番号2:第1のMICタグスニップス(ミスマッチヌクレオチド224を有する):3’-GCTAGTACTCGAGCC-5’
配列番号3:第2のMICタグスニップス(ミスマッチヌクレオチド224’を有する):3’-GCAACGGCCTAGCCTG-5’
配列番号4:第3のMICタグスニップスの3’末端:3’-CGCAAAGGCT...-5’
配列番号5:(標識ヌクレオチド222を使用する)合成手法による配列決定において生成された相補的配列の5’末端:5’-...TGATCATGAGCTCGGCGTTGCCGGATCGGTCGCGTTTCCGA...-3’
【0056】
種々のMICタグコード
MICタグコードを、種々のMICタグスニップスの組み合わせにより生成することができる。本明細書において、スニップスの変動性Nは、異なるスニップスの数を表す。好ましくは、異なるスニップスの数は、N=2、4または16である。MICタグディジットの数M(結合領域の数)は、1~32の範囲にありうる。ついで、MICタグコードの総変動性は、NMである。コードの書き込みに必要なサイクル数は、N×Mである。
【0057】
コード生成の加速
MICタグディジット(結合部位)それぞれに(N-1)種類のMICタグスニップスを組み込んだ後、最後の種類のMICタグスニップスを、光を適用することなく組み込むことができる。最初のN-1ステップ内で既に照明された領域の相補的実体に関連するためである。これを、光開裂性基を有さないスニップスを提供することにより利用することができる。ついで、この非光開裂性スニップスを、次のMICタグディジットのための第1の(光開裂性)MICタグスニップスと共に提供することができる。これを1回のサイクルとしてカウントすると、必要なサイクルがN×M-M+1=(N-1)×M+1に減少する。最後のサイクルにおいて、光を適用することなく、MICタグコードが完了するであろう。この方法は、N=2の場合に特に有用であり、この場合、N×M-M+1=M+1となる。
【0058】
下記の表に、本発明の方法の変形例の例およびMICタグコード化に必要なサイクル数に対するその効果を示す。
【0059】
【表1】
【0060】
エラー処理
MICタグコードが書き込まれると、MICタグスニップスが組み込まれたときに、エラーが発生する場合がある。MICタグスニップスのうちの1つが挿入されない場合、プローブは環化されず、RCAを起こすことができず、続いての配列決定情報が生成されないであろう。
【0061】
誤ったMICタグスニップスが挿入された場合、コードは正しい細胞を示さないであろう。この制限は、先のセクションで概説されたコード生成の加速が適用されない場合にのみ有効である。
【0062】
すなわち、MICタグスニップスが挿入されない場合、パッドロックは形成されず、期間内に配列決定に供されないであろう。その限りにおいて、本発明の方法は、組み込みエラー処理を有する。
【0063】
加えて、他の誤り訂正方法を含ませることも意味がある場合がある。例えば、2つ目の同一コードを異なる位置でブリッジに同時に挿入することができ、その結果、コードを内部的に検証することができる。また、コード長を長くし、冗長化による誤り訂正を付加することも可能である。
【0064】
この変形例において、ブリッジオリゴヌクレオチドは、同じMICタグスニップスについて少なくとも2つの同一の結合領域を含有し、これらは、特異的結合反応を確実にするために同時にアクセス可能である。この場合も、1つのMICタグスニップスが正しく挿入されなければ、各パッドロックが形成されず、配列決定に供されないであろう。
【0065】
この点に関して、図7に、並列に同一に記載された2つの同一領域を有するMICタグプローブを示す。この場合、両方のコードが同一である箇所にそれらの配列のみを割り当てることが可能である。これにより、特に、異なるサンプル領域間で非常に異なるmRNA発現プロファイルを有するサンプルにおいて、そのコントラストが不正確なコードにより平準化されることが防止される。
【0066】
遺伝コードの読み出しには、読み出しエラーの問題がある。これらのエラーは、MICタグコードおよびmRNA配列において生じうる。したがって、RCAにより産生された鎖を酵素的に切断し、配列決定のために再度RCAにより各鎖から複数の鎖を生成することが有用でありうる。ついで、エラー訂正をMICタグコードとmRNA配列との両方に行うことができるように、MICタグプローブ中に固有分子識別子(UMI)を含ませることが有用である。この変形例は、固有分子識別子(UMI)226をMICタグプローブ配列に組み込んだ状態で、図8に示されている。UMIを、ロロニーの酵素消化後に元のMICタグプローブを特定するために使用することができる。
【0067】
代替的なコード化アプローチ
提案されたMICタグ手法に加えて、代替的な方法を、in situでMICタグプローブにコードを書き込むために使用することができる。これまでに記載したMICタグ手法の1つの変形例を、図9に示す。本明細書において、リガーゼ媒介MICタグスニップスの組み込みを、予め組み込まれる必要がある追加のプライマーにより制御することができる。MICタグスニップスとして、これらのプライマーは、特定の波長光を有する照明により除去される光不安定性基を有し、この光不安定性基により、DNAリガーゼによる鎖へのその後続の組み込みが可能となる。光不安定性基に場合により結合されたフルオロフォアの放出を検出することができ、内部対照として使用することができる。
【0068】
図9で言及された追加のプライマーの代わりに、光開裂性基を有する単一のヌクレオチドを使用することができる。プライマーおよびブリッジプローブの相補鎖とハイブリダイズし、DNAリガーゼによりプローブに組み込まれるMICタグスニップスとは対照的に、ヌクレオチドは、DNAポリメラーゼにより組み込まれる必要がある。
【0069】
図9に、プライマー制御されたMICタグコード化を伴う本発明の変形例を示す。本明細書において、光不安定性基で修飾されたプライマーは、第1のMICタグディジットに隣接する一本鎖領域にハイブリダイズされる。光により、プライマーに結合された光不安定性基の開裂が誘引される。プライマーは、DNAリガーゼにより鎖に組み込まれ、ついで、第1のスニップスが添加され、第1のディジットとハイブリダイズする。この工程は、ディジットI位置における全ての異なるスニップスが組み込まれるまで繰り返される。ここで、第1の工程は、ディジットIIにおける異なる種類のスニップスIIの組み込みを調製するために繰り返される。複数のサイクル後、MICタグコードが完了し、MICタグプローブが最終的にライゲーションされる。
【符号の説明】
【0070】
図面の用語集
生物、組織および組織内容物
001 組織ドナー
002 染色組織切片
003 細胞
004 細胞核
005 mRNA
006 mRNA上のMICタグプローブ結合部位
技術的手法
100 画像化
101 セグメント化またはクラスター分析、構造化照明のためのマスクの計算
102 MICタグコード生成のための光処理
103 ロロニーの次世代配列決定
104 配列分析
105 周期的バーコード化
試薬および生成物
200 cDNAギャップ充填および個々のコード化前のMICタグプローブ
201 cDNAギャップ充填および個々のコード化後のMICタグプローブ
202 ロロニーまたはローリングサークル増幅産物(RCP)
203 特異的なmRNA結合部位
204 MICタグプローブ骨格
205 MICタグプローブ骨格末端にハイブリダイズしたブリッジオリゴヌクレオチド
206 MICタグプローブ骨格にブリッジオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションにより形成されたギャップ
207 cDNA(またはcDNAのギャップ、207’)
208 逆転写酵素
209 DNAリガーゼ
210 ギャップ充填後のMICタグプローブ
211 MICタグディジット(I~IV)を有するブリッジプライマー
212 光不安定性保護基を有するオリゴヌクレオチドまたはMICタグスニップス
213 MICタグスニップスから光不安定性保護基を開裂させる集束光
214 開裂型光不安定性保護基
215 光不安定性保護基を含まないMICタグスニップス
216 MICタグプローブに組み込まれたMICタグスニップス
217 MICタグコード
218 配列決定プライマー結合部位
219 mRNA結合部位およびcDNAの配列決定手法
220 MICタグコードの配列決定手法
221 配列決定プライマー
222 (光不安定性)保護基を有するヌクレオチド
223 ヌクレオチド
224 MICタグコード中の可変ヌクレオチド(「ミスマッチ」)
225 DNAリガーゼ活性を支持するスプリントオリゴヌクレオチド
226 固有分子識別子(UMI)
227 制限部位
228 制限酵素
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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【外国語明細書】