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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049526
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/40 20060101AFI20230403BHJP
   A47C 7/02 20060101ALI20230403BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
A47C7/40
A47C7/02
B60N2/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159314
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(72)【発明者】
【氏名】加納 潤一
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084EB05
3B087BD02
3B087DE08
3B087DE09
(57)【要約】
【課題】座面に座る人の対象部位の疲労を軽減できる椅子を提供する。
【解決手段】椅子1は、座面21a及び背もたれ22を有する椅子本体2と、座面21aの圧力分布を計測する圧力センサ3と、座面21aに対する背もたれ22の背面22aの形状を変更する変更装置4と、処理装置5とを備える。処理装置5は、誘導処理を実行する。誘導処理は、座面21aに座る人の対象部位に関連する複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値のいずれか一つが所定の閾値以上となると、背もたれ22の背面22aの形状が、人の姿勢を、目標の姿勢に誘導する所定の形状となるように変更装置4を制御する。目標の姿勢は、複数の対象の筋肉のうち蓄積値が所定の閾値以上となった特定の対象の筋肉にかかる負荷が圧力センサ3で測定された座面21aの圧力分布に対応する現在の姿勢よりも小さい姿勢である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面及び背もたれを有する椅子本体と、
前記座面の圧力分布を計測する圧力センサと、
前記座面に対する前記背もたれの背面の形状を変更する変更装置と、
前記座面に座る人の対象部位に関連する複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値のいずれか一つが所定の閾値以上となると、前記背もたれの背面の形状が、前記人の姿勢を、前記複数の対象の筋肉のうち前記蓄積値が前記所定の閾値以上となった特定の対象の筋肉にかかる負荷が前記圧力センサで測定された前記座面の圧力分布に対応する現在の姿勢よりも小さい目標の姿勢に誘導する所定の形状となるように前記変更装置を制御する誘導処理を実行する処理装置と、
を備える、
椅子。
【請求項2】
前記処理装置は、前記誘導処理の実行後の前記現在の姿勢が前記目標の姿勢と異なる場合に、前記人の姿勢が前記目標の姿勢となるように、前記背もたれの背面の形状を前記所定の形状から変更する再誘導処理を実行する、
請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記処理装置は、
前記現在の姿勢に基づいて前記複数の対象の筋肉にかかる負荷を決定する筋肉負荷決定処理と、
前記筋肉負荷決定処理で決定された前記複数の対象の筋肉にかかる負荷と前記現在の姿勢の継続時間とに基づいて、前記複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値を算出する蓄積値算出処理と、
を実行する、
請求項1又は2に記載の椅子。
【請求項4】
前記複数の対象の筋肉にかかる負荷を測定する筋肉負荷センサをさらに備え、
前記処理装置は、前記筋肉負荷センサで測定された前記複数の対象の筋肉にかかる負荷と前記現在の姿勢の継続時間とに基づいて、前記複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値を算出する蓄積値算出処理を実行する、
請求項1又は2に記載の椅子。
【請求項5】
前記処理装置は、前記圧力センサで測定された前記座面の圧力分布に基づいて前記現在の姿勢を決定する姿勢決定処理を実行する、
請求項1~4のいずれか一つに記載の椅子。
【請求項6】
前記姿勢決定処理は、前記圧力センサで測定された前記座面の圧力分布に基づいて前記座面に座る人の属性を決定し、前記人の属性と前記圧力センサで測定された前記座面の圧力分布とに基づいて、前記現在の姿勢を決定する、
請求項5に記載の椅子。
【請求項7】
前記椅子本体の外部にある決定装置と接続可能な通信装置をさらに備え、
前記処理装置は、前記圧力センサで測定された前記座面の圧力分布を示す圧力分布情報を前記通信装置から前記決定装置に送信し、
前記決定装置は、前記処理装置から受信した前記圧力分布情報が示す前記座面の圧力分布に基づいて前記現在の姿勢を決定し、前記現在の姿勢を示す姿勢情報を生成して前記処理装置に送信し、
前記処理装置は、前記通信装置を通じて前記決定装置から受信した前記姿勢情報が示す前記現在の姿勢に基づいて、前記複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値を算出する蓄積値算出処理を実行する、
請求項1又は2に記載の椅子。
【請求項8】
前記決定装置は、前記姿勢情報が示す前記現在の姿勢に基づいて前記複数の対象の筋肉にかかる負荷を決定し、前記複数の対象の筋肉にかかる負荷を示す筋肉負荷情報を生成して前記処理装置に送信し、
前記処理装置は、前記通信装置を通じて前記決定装置から受信した前記筋肉負荷情報が示す前記複数の対象の筋肉にかかる負荷に基づいて前記蓄積値算出処理を実行する、
請求項7に記載の椅子。
【請求項9】
前記椅子本体の外部にある決定装置と接続可能な通信装置をさらに備え、
前記処理装置は、前記圧力センサで測定された前記座面の圧力分布に基づいて前記現在の姿勢を決定する姿勢決定処理を実行し、前記姿勢決定処理で決定された前記現在の姿勢を示す姿勢情報を前記通信装置から前記決定装置に送信し、
前記決定装置は、前記処理装置から受信した前記姿勢情報が示す前記現在の姿勢に基づいて前記複数の対象の筋肉にかかる負荷を決定し、前記複数の対象の筋肉にかかる負荷を示す筋肉負荷情報を生成して前記処理装置に送信し、
前記処理装置は、前記通信装置を通じて前記決定装置から受信した前記筋肉負荷情報が示す前記複数の対象の筋肉にかかる負荷に基づいて、前記複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値を算出する蓄積値算出処理を実行する、
請求項1又は2に記載の椅子。
【請求項10】
前記目標の姿勢は、前記複数の対象の筋肉のうち前記特定の対象の筋肉とは別の対象の筋肉に前記特定の対象の筋肉よりも大きな負荷がかかる姿勢である、
請求項1~9のいずれか一つに記載の椅子。
【請求項11】
前記目標の姿勢は、時間とともに前記特定の対象の筋肉の疲労が軽減される姿勢である、
請求項1~10のいずれか一つに記載の椅子。
【請求項12】
前記変更装置は、前記座面の向きに対する前記背もたれの背面の向きと前記背もたれの背面自体の形状との少なくとも一方を変更することによって、前記座面に対する前記背もたれの背面の形状を変更する
請求項1~11のいずれか一つに記載の椅子。
【請求項13】
前記変更装置は、水平面に対応する面と鉛直面に対応する面との少なくとも一方において前記座面の向きに対する前記背もたれの背面の向きを変更する駆動装置を備える、
請求項12に記載の椅子。
【請求項14】
前記変更装置は、前記背面の上端部、下端部、左端部及び右端部の少なくとも一つを前後方向に移動させる駆動装置を備える、
請求項12又は13に記載の椅子。
【請求項15】
前記対象部位は、前記人の腰と背中の少なくとも一方を含む、
請求項1~14のいずれか一つに記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、姿勢調整システムを開示する。特許文献1に開示された姿勢調整システムは、人が着席し得る椅子に連結されたセンサのセットを含む。姿勢調整システムは、センサのセットからデータを収集し、着席者と関連付けられる姿勢を反映する姿勢モデルを生成する。姿勢調整システムは、次いで、その姿勢を改善できる可能性のある、その人の姿勢に対する矯正を決定する。姿勢調整システムは、次いで、その人にそれらの矯正を示すか、あるいは、その人にこの姿勢矯正を反映する新しい姿勢を取らせるように椅子への一連の調整を適用する。
【0003】
特許文献2は、座席シートを開示する。特許文献2に開示された座席シートは、乗員の臀部を支持するシートクッションと、乗員の背中を支持するシートバックと、を備えた車両の座席シートにおいて、座席シートに着座している乗員の着座姿勢の態様を解析する着座姿勢解析手段と、シートクッションの傾きを可変制御するシートクッション制御手段と、シートバックの位置、および、座席シートの上下方向に対するシートバックの縦断面形状を可変制御するシートバック制御手段と、を有する。シートクッション制御手段は、着座姿勢解析手段による解析結果に基づいて、シートクッションの傾きを可変させる。シートバック制御手段は、シートクッション制御手段によるシートクッションの傾斜の可変に連動し、着座姿勢解析手段による解析結果に基づいて、シートバックの所定位置から上部を後方に傾斜させて、シートバックの縦断面形状を可変させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-78666号公報
【特許文献2】特開2020-164135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、人に姿勢矯正を反映する新しい姿勢を取らせることができる。特許文献2は、着座状態に応じた最適な座席シートの形状に変化させることができる。しかしながら、特許文献1及び特許文献2は、人の姿勢を単一の最適な姿勢に誘導するため、人の特定の筋肉に負荷が集中し、疲労が蓄積され得る。
【0006】
本開示は、座面に座る人の対象部位の疲労を軽減できる椅子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の椅子は、座面及び背もたれを有する椅子本体と、座面の圧力分布を計測する圧力センサと、座面に対する背もたれの背面の形状を変更する変更装置と、処理装置とを備える。処理装置は、座面に座る人の対象部位に関連する複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値のいずれか一つが所定の閾値以上となると、誘導処理を実行する。誘導処理は、背もたれの背面の形状が、人の姿勢を目標の姿勢に誘導する所定の形状となるように変更装置を制御する。目標の姿勢は、複数の対象の筋肉のうち蓄積値が所定の閾値以上となった特定の対象の筋肉にかかる負荷が圧力センサで測定された座面の圧力分布に対応する現在の姿勢よりも小さい姿勢である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の態様によれば、座面に座る人の対象部位の疲労を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1の椅子の構成例の概略的なブロック図
図2図1の椅子の変更装置の構成例の概略斜視図
図3図1の椅子の背面の形状の例の概略図
図4図1の椅子の背面の形状の例の概略図
図5図1の椅子の処理装置の動作の一例のフローチャート
図6図1の椅子の処理装置の姿勢決定処理の一例のフローチャート
図7図1の椅子の処理装置の筋肉負荷決定処理の一例のフローチャート
図8図1の椅子による人の姿勢の誘導の一例の説明図
図9図1の椅子による人の姿勢の誘導の一例の説明図
図10図1の椅子での筋肉にかかる負荷の蓄積値の時間変化の第1例のグラフ
図11図1の椅子での筋肉にかかる負荷の蓄積値の時間変化の第2例のグラフ
図12】実施の形態2の椅子の構成例の概略的なブロック図
図13図12の椅子の処理装置の動作の一例のフローチャート
図14】実施の形態3の椅子及び決定装置を備えるシステムの構成例の概略的なブロック図
図15図14の椅子の処理装置の動作の一例の前段のフローチャート
図16図14の椅子の処理装置の動作の一例の後段のフローチャート
図17図14の決定装置の動作の一例のフローチャート
図18】変形例1の変更装置の構成例の概略斜視図
図19】変形例2の変更装置の構成例の概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1.実施の形態]
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0011】
[1.1 実施の形態1]
[1.1.1 構成]
図1は、実施の形態1の椅子1の構成例の概略的なブロック図である。図1の椅子1は、脚のない座椅子型である。椅子1は、人が持ち運び可能な重さ及び大きさを有する。つまり、椅子1は、可搬型である。椅子1は、例えば、床に、又は、オフィスチェア等の別の椅子の座面に、置いて使用可能である。椅子1は、様々な着座環境において利用可能である。
【0012】
図1の椅子1は、椅子本体2と、圧力センサ3と、変更装置4と、処理装置5と、記憶装置6とを備える。図1では、図を見やすくするために、処理装置5と記憶装置6とが椅子本体2の外部に描かれているが、椅子本体2に内蔵される。
【0013】
図1の椅子本体2は、座部21と背もたれ22とを有する。座部21は、座面21aを有する。本実施の形態において、座面21aは、座面21aに座る人の両大腿部と臀部に接触可能な大きさである。背もたれ22は、背面22aを有する。背面22aは、背もたれ22において座面21aに座る人の背に接触可能な面である。本実施の形態において、背面22aは、座面21aに座る人の背中と腰に接触可能な大きさである。以下では、説明を分かりやすくするために、背面22aの向きは、座面21aに座る人の上下左右の向きを基準にする。
【0014】
圧力センサ3は、座部21の座面21aの圧力分布を計測する。人が座面21aに座っている場合、座面21aの圧力分布は、座面21aに座る人により座面21aにかけられる圧力の分布を示す。座面21aの圧力分布は、座面21aに座る人の姿勢を反映する。座面21aに座る人の姿勢の例としては、直立姿勢(図8のP11参照)、前傾姿勢(図8のP17参照)、後傾姿勢(図8のP15参照)、腰を丸めた姿勢(図8のP12参照)、腰を丸めた前傾姿勢(図8のP14参照)、腰を丸めた後傾姿勢(図8のP16参照)、左ひねり姿勢(図9のP22参照)、右ひねり姿勢(図9のP24参照)、足組姿勢が挙げられる。直立姿勢は、人が背筋を伸ばして座面21aに座っている姿勢である。前傾姿勢は、座面21aに座る人の背筋が伸びているが上半身が前に傾いている姿勢である。後傾姿勢は、座面21aに座る人の背筋が伸びているが上半身が後ろに傾いている姿勢である。腰を丸めた姿勢は、座面21aに座る人の上半身が前後に傾いていないが腰が丸くなっている姿勢である。腰を丸めた前傾姿勢は、座面21aに座る人の腰が丸くなって上半身が前に傾いている姿勢である。腰を丸めた後傾姿勢は、座面21aに座る人の腰が丸くなって上半身が後ろに傾いている姿勢である。左ひねり姿勢は、座面21aに座る人の左肩が前、右肩が後ろとなるように腰をひねっている姿勢である。右ひねり姿勢は、座面21aに座る人の右肩が前、左肩が後ろとなるように腰をひねっている姿勢である。足組姿勢は、座面21aに座る人が足を組んでいる姿勢である。
【0015】
圧力分布から姿勢を評価するためのパラメータの例としては、平均値、有効圧力範囲、及び重心位置が挙げられる。平均値は、座面21a全体にかかる圧力の平均値である。体重が重い人ほど平均値が大きくなる。有効圧力範囲は、座面21a上で圧力がかかっている面積の割合である。体格の大きい人ほど有効圧力範囲が大きくなる。重心位置は、座面21a上での圧力分布の重心の位置である。椅子に深く着座する傾向がある人ほど背面側に重心位置が存在する。圧力分布から姿勢を評価するためのパラメータは、平均値、有効圧力範囲、及び重心位置に限定されず、その他の種々の指標から1以上選択されてよい。
【0016】
例えば、直立姿勢を基準とすると、前傾姿勢では体重が足側に移動するため、圧力の平均値が小さくなり重心位置は前に偏る。後傾姿勢では体重が背面側に移動するため、重心位置が背面側に偏る。腰を丸めた姿勢では、人の身体において座面21aと接する部位が弛緩するため有効圧力範囲が大きくなる。足組姿勢では、片足が浮くため体重が座面21aにかからず、圧力の平均値が小さくなるとともに有効圧力範囲も小さくなり、重心位置が片足に偏る。一例として、直立姿勢、前傾姿勢、後傾姿勢、腰を丸めた姿勢、及び足組姿勢に関しては、直立姿勢を基準とすれば、圧力分布には表1に示す傾向が見られる。
【0017】
【表1】
【0018】
表1から明らかなように、座面21aの圧力分布は座面21aに座る人の姿勢と相関がある。
【0019】
本実施の形態において、圧力センサ3は、例えば、マトリクス状に配置された複数の圧力検知素子を備える。一例として、圧力センサ3は。16×16のマトリクス状に配置された圧力検知素子を備える。これによって、座部21の座面21aの圧力分布の計測が可能となる。
【0020】
変更装置4は、座面21aに対する背もたれ22の背面22aの形状を変更する。変更装置4は、座面21aの向きに対する背もたれ22の背面22aの向きと背もたれ22の背面22a自体の形状との少なくとも一方を変更することによって、座面21aに対する背もたれ22の背面22aの形状を変更する。
【0021】
図2は、変更装置4の構成例の概略斜視図である。図2の変更装置4は、第1~第4背板部411~414と、駆動装置42とを備える。
【0022】
第1~第4背板部411~414は、背もたれ22の一部を構成する。第1~第4背板部411~414の各々は、矩形の板状である。第1背板部411の前面は、背面22aの右上部分に対応する。第2背板部412の前面は、背面22aの左上部分に対応する。第3背板部413の前面は、背面22aの右下部分に対応する。第4背板部414の前面は、背面22aの左下部分に対応する。第1及び第2背板部411,412は、背面22aの上端部に対応する変更装置4の上端部4aを構成する。第3及び第4背板部413,414は、背面22aの下端部に対応する変更装置4の下端部4bを構成する。第1及び第3背板部411,413は、背面22aの右端部に対応する変更装置4の右端部4cを構成する。第2及び第4背板部412,414は、背面22aの左端部に対応する変更装置4の左端部4dを構成する。
【0023】
変更装置4の下端部4b(第3及び第4背板部413,414)は、水平方向に対応する第1回転軸A1の周りに回転可能に座部21に結合される。本実施の形態では、第1及び第2背板部411,412の前面の向きが互いに一致し、第3及び第4背板部413,414の前面の向きが互いに一致している場合に、第1回転軸A1の周りの回転が可能となる。変更装置4の上端部4a(第1及び第2背板部411,412)と下端部4b(第3及び第4背板部413,414)とは、水平方向に対応する第2回転軸A2の周りに互いに回転可能に結合される。本実施の形態では、第1及び第2背板部411,412の前面の向きが互いに一致し、第3及び第4背板部413,414の前面の向きが互いに一致している場合に、第2回転軸A2の周りの回転が可能となる。変更装置4の右端部4c(第1及び第3背板部411,413)と左端部4d(第2及び第4背板部412,414)とは、鉛直方向に対応する第3回転軸A3の周りに互いに回転可能に結合される。本実施の形態では、第1及び第3背板部411,413の前面の向きが互いに一致し、第2及び第4背板部412,414の前面の向きが互いに一致している場合に、第3回転軸A3の周りの回転が可能となる。
【0024】
駆動装置42は、第1~第3モータ421~423と、モータ制御装置424とを備える。第1モータ421は、変更装置4の下端部4bを座部21に対して第1回転軸A1の周りに回転させる。第1モータ421は、鉛直面に対応する面において座面21aの向きに対する背もたれ22の背面22aの向きを変更する。第1モータ421は、背面22aの上端部、下端部、左端部及び右端部をまとめて前後方向に移動させる。第2モータ422は、変更装置4の上端部4a及び下端部4bの一方を他方に対して第2回転軸A2の周りに回転させる。第2モータ422は、鉛直面に対応する面において座面21aの向きに対する背もたれ22の背面22aの向きを変更する。第2モータ422は、背面22aの上端部をまとめて前後方向に移動させる。第3モータ423は、変更装置4の右端部4c及び左端部4dの一方を他方に対して第3回転軸A3の周りに互いに回転させる。第3モータ423は、水平面に対応する面において座面21aの向きに対する背もたれ22の背面22aの向きを変更する。第3モータ423は、背面22aの左端部及び右端部を前後方向に移動させる。モータ制御装置424は、第1~第3モータ421~423の回転量を調整する。モータ制御装置424は、第1~第3モータ421~423をそれぞれ独立に制御する。モータ制御装置424は、従来周知の構成であってよいから詳細な説明は省略する。
【0025】
図3及び図4は、変更装置4による椅子1の背面22aの形状の例の概略図である。特に、図3は、椅子1を側方から見た場合の、椅子1の背面22aの形状の例を示し、図4は、椅子1を上方から見た場合の、椅子1の背面22aの形状の例を示す。
【0026】
図3のA及び図4のAは、椅子1の背面22aの第1形状を示す。第1形状は、座面21aに座る人を直立姿勢に誘導し得る。第1形状では、第1~第4背板部411~414の前面の向きが互いに一致し、座面21aに対する変更装置4の前面(上端部4a、下端部4b、右端部4c、左端部4dの前面)の角度が直角である。第1形状は、平面形状である。第1形状は、背面22aの形状の基準となる。
【0027】
図3のB~Gは、椅子1の背面22aの第2~第7形状を示す。第2~第7形状では、変更装置4の上端部4aの第1及び第2背板部411,412の前面の向きが互いに一致し、変更装置4の下端部4bの第3及び第4背板部413,414の前面の向きが互いに一致する。
【0028】
図3のBの第2形状は、座面21aに座る人を、前傾姿勢に誘導し得る。第2形状では、座面21aに対する変更装置4の上端部4aの前面の角度と座面21aに対する変更装置4の下端部4bの前面の角度は互いに等しく、いずれも鋭角である。第2形状は、平面形状である。第2形状は、例えば、第1形状から、第1モータ421により第1回転軸A1の周りに変更装置4の下端部4bを座面21aに近付く向きに回転させることで、達成される。
【0029】
図3のCの第3形状は、座面21aに座る人を、直立姿勢に誘導し得る。第3形状では、座面21aに対する変更装置4の下端部4bの前面の角度は鋭角である。座面21aに対する変更装置4の上端部4aの前面の角度は、座面21aに対する変更装置4の下端部4bの前面の角度より大きい。座面21aに対する変更装置4の下端部4bの前面の角度は鋭角である。第3形状は、鉛直面において、平面形状ではなく、山形状である。第3形状は、第1形状から、第1モータ421により第1回転軸A1の周りに変更装置4の下端部4bを座面21aに近付く向きに回転させ、第2モータ422により第2回転軸A2の周りに変更装置4の上端部4aを座面21aから離れる向きに回転させることで、達成される。
【0030】
図3のDの第4形状は、座面21aに座る人を、腰を丸めた後傾姿勢に誘導し得る。第4形状では、座面21aに対する変更装置4の下端部4bの前面の角度は鈍角である。座面21aに対する変更装置4の上端部4aの前面の角度は、座面21aに対する変更装置4の下端部4bの前面の角度より小さい。第4形状は、鉛直面において、平面形状ではなく、谷形状である。第4形状は、第1形状から、第1モータ421により第1回転軸A1の周りに変更装置4の下端部4bを座面21aから離れる向きに回転させ、第2モータ422により第2回転軸A2の周りに変更装置4の上端部4aを座面21aに近付く向きに回転させることで、達成される。
【0031】
図3のEの第5形状は、座面21aに座る人を、腰を丸めた姿勢に誘導し得る。第5形状では、座面21aに対する変更装置4の上端部4aの前面の角度は鋭角である。座面21aに対する変更装置4の下端部4bの前面の角度は直角である。第5形状は、鉛直面において、平面形状ではなく、谷形状である。第5形状は、第1形状から、第2モータ422により第2回転軸A2の周りに変更装置4の上端部4aを座面21aに近付く向きに回転させることで、達成される。
【0032】
図3のFの第6形状は、座面21aに座る人を、腰を丸めた前傾姿勢に誘導し得る。第6形状では、座面21aに対する変更装置4の下端部4bの前面の角度は鋭角である。座面21aに対する変更装置4の上端部4aの前面の角度は、座面21aに対する変更装置4の下端部4bの前面の角度より小さい。第6形状は、鉛直面において、平面形状ではなく、谷形状である。第6形状は、第1形状から、第1モータ421により第1回転軸A1の周りに変更装置4の下端部4bを座面21aに近付く向きに回転させ、第2モータ422により第2回転軸A2の周りに変更装置4の上端部4aを座面21aに近付く向きに回転させることで、達成される。
【0033】
図3のGの第7形状は、座面21aに座る人を、後傾姿勢に誘導し得る。第7形状では、座面21aに対する変更装置4の上端部4aの前面の角度と座面21aに対する変更装置4の下端部4bの前面の角度は互いに等しく、いずれも鈍角である。第7形状は、鉛直面において平面形状である。第7形状は、例えば、第1形状から、第1モータ421により第1回転軸A1の周りに変更装置4の下端部4bを座面21aから離れる向きに回転させることで、達成される。
【0034】
図4のB~Dは、椅子1の背面22aの第8~第10形状を示す。第8~第10形状では、変更装置4の右端部4cの第1及び第3背板部411,413の前面の向きが互いに一致し、変更装置4の左端部4dの第2及び第4背板部412,414の前面の向きが互いに一致する。
【0035】
図4のBの第8形状は、座面21aに座る人を、左ひねり姿勢に誘導し得る。第8形状では、変更装置4の左端部4dが右端部4cより前方に突出する。第8形状は、水平面において、平面形状ではなく、谷形状である。第8形状は、第1形状から、第3モータ423により第3回転軸A3の周りに変更装置4の左端部4dを前方に回転させることで、達成される。
【0036】
図4のCの第9形状は、座面21aに座る人を、右ひねり姿勢に誘導し得る。第9形状では、変更装置4の右端部4cが左端部4dより前方に突出する。第9形状は、水平面において、平面形状ではなく、谷形状である。第9形状は、第1形状から、第3モータ423により第3回転軸A3の周りに変更装置4の右端部4cを前方に回転させることで、達成される。
【0037】
図4のDの第10形状は、座面21aに座る人を、直立姿勢に誘導し得る。第10形状では、変更装置4の右端部4c及び左端部4dの両方が第1形状の右端部4c及び左端部4dより前方に突出する。第10形状は、水平面において、平面形状ではなく、谷形状である。第10形状は、第1形状から、第3モータ423により第3回転軸A3の周りに変更装置4の右端部4c及び左端部4dを前方に回転させることで、達成される。
【0038】
変更装置4では、座面21aに対する背もたれ22の背面22aの形状の変更により、座面21aに座る人に姿勢の変更を促すことができる。
【0039】
記憶装置6は、処理装置5が利用する情報及び処理装置5で生成される情報を記憶するために用いられる。記憶装置6は、1以上のストレージ(非一時的な記憶媒体)を含む。ストレージは、例えば、ハードディスクドライブ、光学ドライブ、及びソリッドステートドライブ(SSD)のいずれであってもよい。
【0040】
記憶装置6に記憶される情報は、姿勢推定モデルM1と、筋肉負荷推定モデルM2とを含む。図1では、記憶装置6が、姿勢推定モデルM1と、筋肉負荷推定モデルM2との全てを記憶している状態を示している。姿勢推定モデルM1と、筋肉負荷推定モデルM2とは常に記憶装置6に記憶されている必要はなく、処理装置5で必要とされるときに記憶装置6に記憶されていればよい。
【0041】
姿勢推定モデルM1は、座面21aの圧力分布の入力に対して座面21aに座る人の姿勢を出力するように構成される。姿勢推定モデルM1は、座面21aの圧力分布を説明変数、座面21aに座る人の姿勢を目的変数とするモデルである。本実施の形態では、姿勢推定モデルM1は、座面21aの圧力分布の入力に対して座面21aに座る人の姿勢を出力するように学習された学習済みモデルに基づいて生成される。姿勢推定モデルM1は、座面21aの圧力分布の入力に対して座面21aに座る人の姿勢を出力するように学習された学習済みモデルそれ自体であってもよいし、当該学習済みモデルの再利用モデル又は蒸留モデルであってもよい。例えば、姿勢推定モデルM1は、座面21aの圧力分布を入力、座面21aに座る人の姿勢を正解とする学習用データセットを用いた教師あり学習を実行することによって生成される学習済みモデルである。学習済みモデルは、学習済みパラメータが組み込まれた推論プログラムである。推論プログラムは、例えば、回帰モデルである。回帰モデルの例としては、決定木、線形回帰、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、ガウス過程回帰、ニューラルネットワーク等が挙げられる。線形回帰の例としては、多重線形回帰、リッジ(Ridge)回帰、ラッソ(Lasso)回帰が挙げられる。学習済みパラメータは、学習用データセットを学習用プログラムに対して入力することで、一定の目的のために機械的に調整されることで生成される。
【0042】
本実施の形態では、人の属性毎に姿勢推定モデルM1が用意される。上述したように、圧力分布から姿勢を評価するためのパラメータとしては、平均値、有効圧力範囲、及び重心位置が挙げられる。体重が重い人ほど、座面21a全体にかかる平均値が大きくなる。体格の大きい人ほど有効圧力範囲が大きくなる。椅子に深く着座する傾向がある人ほど背面側に重心位置が存在する。そのため、人の属性は、例えば、体重が重いか軽いか、体格が大きいか小さいか、椅子に深く座る傾向があるかないか等により分類されてよい。人の属性に対応する姿勢推定モデルM1を用いることで、姿勢の推定の精度の向上が図れる。
【0043】
筋肉負荷推定モデルM2は、座面21aに座る人の姿勢の入力に対して座面21aに座る人の複数の対象の筋肉にかかる負荷を出力するように構成される。複数の対象の筋肉は、人の対象部位に関連する筋肉である。対象部位は、椅子1による疲労の軽減の対象となる人の身体の部位である。対象部位は、例えば、人の腰と背中の少なくとも一方を含む。複数の対象の筋肉は、人の対象部位に関連する筋肉である。複数の対象の筋肉は、例えば、人の対象部位に身体構造的に直接的又は間接的に関連する筋肉である。人の対象部位に直接的に関連する筋肉は、例えば、対象部位自体の筋肉であってよい。人の対象部位に間接的に関連する筋肉は、例えば、対象部位自体の筋肉ではないが、対象部位自体の筋肉と関連することで対象部位に影響を及ぼす可能性がある筋肉であってよい。筋肉負荷推定モデルM2は、座面21aに座る人の姿勢を説明変数、座面21aに座る人の対象部位に関連する複数の対象の筋肉にかかる負荷を目的変数とするモデルである。本実施の形態では、筋肉負荷推定モデルM2は、座面21aに座る人の姿勢と座面21aに座る人の対象部位に関連する複数の対象の筋肉にかかる負荷との対応関係を規定するテーブルである。表2は、筋肉負荷推定モデルM2の一例を示す。表2において、筋肉A,B,Cは、人の対象部位に関連する複数の対象の筋肉の例である。表2において、「2」は、負荷が大きいことを示す。「1」は、負荷が中程度であることを示す。「0」は、負荷がないことを示す。
【0044】
【表2】
【0045】
本実施の形態では、人の属性毎に筋肉負荷推定モデルM2が用意される。人の属性は、姿勢推定モデルM1と同様に、例えば、体重が所定の基準値よりも重いか軽いか、体格に関連する値(例えば、太ももの太さ等)が所定の基準値よりも大きいか小さいか、椅子に深く座る傾向があるかないか等により分類されてよい。人の属性に対応する筋肉負荷推定モデルM2を用いることで、筋肉負荷の推定の精度の向上が図れる。
【0046】
処理装置5は、椅子1の動作、特に椅子1の変更装置4の動作を制御する。処理装置5は、記憶装置6にアクセス可能である。処理装置5は、演算回路であって、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。1以上のプロセッサが(1以上のメモリ又は記憶装置6に記憶された)プログラムを実行することで、処理装置5としての機能を実現する。プログラムは、ここでは記憶装置6に予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0047】
図5は、処理装置5の動作の一例のフローチャートである。処理装置5は、姿勢決定処理S12と、筋肉負荷決定処理S13と、蓄積値算出処理S14と、誘導処理S16と、再誘導処理S19とを実行可能である。以下、図5のフローチャートを参照して、処理装置5の動作について説明する。
【0048】
処理装置5は、圧力センサ3から座面21aの圧力分布を取得する(S11)。処理装置5は、例えば、所定の時間間隔で圧力センサ3から座面21aの圧力分布を取得する。処理装置5は、圧力センサ3からの座面21aの圧力分布に基づいて人が座面21aに座ったかどうかを判定してよい。処理装置5は、人が座面21aに座ったと判定した場合に、姿勢決定処理S12を実行してよい。
【0049】
処理装置5は、圧力センサ3から座面21aの圧力分布を取得すると、姿勢決定処理S12を実行する。姿勢決定処理S12は、圧力センサ3で測定された座面21aの圧力分布に基づいて、座面21aに座る人の現在の姿勢を決定する。
【0050】
図6は、姿勢決定処理S12の一例のフローチャートである。姿勢決定処理S12では、処理装置5は、圧力センサ3で測定された座面21aの圧力分布に基づいて座面21aに座る人の属性を決定する(S21)。人の属性を決定するにあたっては、座面21aに座る人の姿勢は、直立姿勢であるとよい。そのため、椅子1の使用時には、人が座面21aに直立姿勢で座るように、背もたれ22の背面22aの形状は第1形状に設定されているとよい。処理装置5は、記憶装置6に記憶された複数の姿勢推定モデルM1から、ステップS21で決定した人の属性に対応する姿勢推定モデルM1を選択する(S22)。処理装置5は、ステップS22で選択した姿勢推定モデルM1に、圧力センサ3で測定された座面21aの圧力分布を入力し、姿勢推定モデルM1から出力される人の姿勢を、座面21aに座る人の現在の姿勢として決定する(S23)。このように、姿勢決定処理S12は、圧力センサ3で測定された座面21aの圧力分布に基づいて座面21aに座る人の属性を決定し、人の属性と圧力センサ3で測定された座面21aの圧力分布とに基づいて、人の現在の姿勢を決定する。
【0051】
処理装置5は、姿勢決定処理S12で人の姿勢を決定すると、筋肉負荷決定処理S13を実行する。筋肉負荷決定処理S13は、座面21aに座る人の現在の姿勢に基づいて、座面21aに座る人の対象部位に関連する複数の対象の筋肉にかかる負荷を決定する。
【0052】
図7は、筋肉負荷決定処理S13の一例のフローチャートである。筋肉負荷決定処理S13では、処理装置5は、記憶装置6に記憶された複数の筋肉負荷推定モデルM2から、姿勢決定処理S12のステップS21で決定した人の属性に対応する筋肉負荷推定モデルM2を選択する(S31)。処理装置5は、ステップS31で選択した筋肉負荷推定モデルM2に、姿勢決定処理S12で決定された人の現在の姿勢を入力し、筋肉負荷推定モデルM2から出力される複数の対象の筋肉にかかる負荷を、座面21aに座る人の複数の対象の筋肉にかかる負荷として決定する(S32)。このように、筋肉負荷決定処理S13は、人の現在の姿勢に基づいて複数の対象の筋肉にかかる負荷を決定する。
【0053】
処理装置5は、筋肉負荷決定処理S13で負荷を決定すると、蓄積値算出処理S14を実行する。蓄積値算出処理S14は、筋肉負荷決定処理S13で決定された複数の対象の筋肉にかかる負荷と現在の姿勢の継続時間とに基づいて、複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値を算出する。筋肉に負荷がかかり続けることで筋疲労が蓄積される。筋疲労は負荷の大きさと経過時間の積で表される。よって、筋肉の負荷の蓄積値は、筋疲労の指標である。負荷の蓄積値の算出には、負荷に応じた単位時間当たりの負荷の蓄積値が利用される。負荷が大きければ、単位時間当たりの負荷の蓄積値が大きく設定される。負荷がなければ、単位時間当たりの負荷の蓄積値がマイナスの値に設定される。これは、負荷がない場合には疲労が回復することを考慮している。ただし、蓄積値の最小値は0である。表2を参照すれば、負荷が「2」の場合、単位時間当たりの負荷の蓄積値は、1分当たり2であってよい。負荷が「1」の場合、単位時間当たりの負荷の蓄積値は、1分当たり1であってよい。負荷が「0」の場合、単位時間当たりの負荷の蓄積値は、1分当たり-4であってよい。
【0054】
処理装置5は、座面21aに座る人の対象部位に関連する複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値のいずれか一つが所定の閾値以上となったかどうかを判断する(S15)。所定の閾値は、例えば、人が筋肉の疲労を感じる前に人に姿勢の変更を促すように設定されてよい。所定の閾値が小さくなればなるほど人に姿勢の変更を促す頻度が増えるため、所定の閾値は姿勢の変更の頻度と疲労の蓄積を考慮して適宜設定される。
【0055】
処理装置5は、座面21aに座る人の対象部位に関連する複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値のいずれか一つが所定の閾値以上となると(S15:YES)、誘導処理S16を実行する。
【0056】
誘導処理S16は、背もたれ22の背面22aの形状が、座面21aに座る人の姿勢を、目標の姿勢に誘導する所定の形状となるように変更装置4を制御する。目標の姿勢は、複数の対象の筋肉のうち蓄積値が所定の閾値以上となった特定の対象の筋肉にかかる負荷が圧力センサ3で測定された座面21aの圧力分布に対応する現在の姿勢よりも小さい姿勢である。目標の姿勢は、椅子1により誘導可能な複数の姿勢から種々の条件を考慮して選択され得る。目標の姿勢は、例えば、複数の対象の筋肉のうち特定の対象の筋肉とは別の対象の筋肉に特定の対象の筋肉よりも大きな負荷がかかる姿勢であってよい。特に、目標の姿勢は、複数の対象の筋肉のうち特定の対象の筋肉にかかる負荷が最も小さくなる姿勢であってよい。目標の姿勢は、時間とともに特定の対象の筋肉の疲労が軽減される姿勢であってよい。目標の姿勢は、複数の対象の筋肉のうち負荷の蓄積値が最も小さい対象の筋肉の負荷が最も大きくなる姿勢であってよい。一例として、上記の表2の例において、人の姿勢が直立姿勢で、筋肉Aが特定の対象の筋肉である場合には、筋肉Aにかかる負荷が最も小さくなる腰を丸めた姿勢が目標の姿勢として選択されてよい。
【0057】
図8は、椅子1による人Pの姿勢の誘導の一例の説明図である。特に、図8は、椅子1を側方から見た場合の人Pの姿勢に関する。図8は、椅子1が別の椅子の座面に置かれているが、椅子1が床の上に置かれていても同様である。また、人Pの姿勢が足組やあぐらを伴っている場合も同様である。
【0058】
図8の状態P11では、人Pの姿勢が直立姿勢であり、椅子1の背面22aの形状が第1形状(図3のA参照)である。図8の状態P12では、人Pの姿勢が腰を丸めた姿勢であり、椅子1の背面22aの形状が第5形状(図3のE参照)である。図8の状態P13では、人Pの姿勢が直立姿勢であり、椅子1の背面22aの形状が第3形状(図3のC参照)である。図8の状態P14では、人Pの姿勢が腰を丸めた前傾姿勢であり、椅子1の背面22aの形状が第6形状(図3のF参照)である。図8の状態P15では、人Pの姿勢が後傾姿勢であり、椅子1の背面22aの形状が第7形状(図3のG参照)である。図8の状態P16では、人Pの姿勢が腰を丸めた後傾姿勢であり、椅子1の背面22aの形状が第4形状(図3のD参照)である。図8の状態P17では、人Pの姿勢が前傾姿勢であり、椅子1の背面22aの形状が第2形状(図3のB参照)である。
【0059】
図8の状態P11において、腰を丸めた姿勢が目標の姿勢として選択された場合、背面22aの形状は、第1形状から第5形状に変更される。これによって、人Pの背中の上部が背もたれ22により押されて、人Pの姿勢が直立姿勢から腰を丸めた姿勢に誘導され、状態P12となる(T1)。
【0060】
図8の状態P12において、直立姿勢が目標の姿勢として選択された場合、背面22aの形状は、第5形状から第3形状に変更される。これによって、人Pの背中の下部が背もたれ22により押されて、人Pの姿勢が腰を丸めた姿勢から直立姿勢に誘導され、状態P13となる(T2)。
【0061】
図8の状態P12において、腰を丸めた前傾姿勢が目標の姿勢として選択された場合、背面22aの形状は、第5形状から第6形状に変更される。これによって、背もたれ22が前に倒されて、人Pの姿勢が腰を丸めた姿勢から腰を丸めた前傾姿勢に誘導され、状態P14となる(T3)。
【0062】
図8の状態P14において、直立姿勢が目標の姿勢として選択された場合、背面22aの形状は、第6形状から第3形状に変更される。これによって、人Pの背中の下部が背もたれ22により押されて、人Pの姿勢が腰を丸めた前傾姿勢から直立姿勢に誘導され、状態P13となる(T4)。
【0063】
図8の状態P11において、腰を丸めた前傾姿勢が目標の姿勢として選択された場合、背面22aの形状は、第1形状から第6形状に変更される。これによって、人Pの背中の上部が背もたれ22により押されるとともに背もたれ22が前に倒されて、人Pの姿勢が直立姿勢から腰を丸めた前傾姿勢に誘導され、状態P14となる(T5)。
【0064】
図8の状態P15において、直立姿勢が目標の姿勢として選択された場合、背面22aの形状は、第7形状から第1形状に変更される。これによって、背もたれ22が前に倒されて、人Pの姿勢が後傾姿勢から直立姿勢に誘導され、状態P11となる(T6)。逆に、図8の状態P11において、後傾姿勢が目標の姿勢として選択された場合、背面22aの形状は、第1形状から第7形状に変更される。これによって、背もたれ22が後ろに倒されて、人Pの姿勢が直立姿勢から後傾姿勢に誘導され、状態P11となる。
【0065】
図8の状態P16において、直立姿勢が目標の姿勢として選択された場合、背面22aの形状は、第4形状から第1形状に変更される。これによって、人Pの背中の下部が背もたれ22により押されるとともに背もたれ22が前に倒されて、人Pの姿勢が腰を丸めた後傾姿勢から直立姿勢に誘導され、状態P11となる(T7)。逆に、図8の状態P11において、腰を丸めた後傾姿勢が目標の姿勢として選択された場合、背面22aの形状は、第1形状から第4形状に変更される。これによって、人Pの姿勢が直立姿勢から腰を丸めた後傾姿勢に誘導され、状態P16となる。
【0066】
図8の状態P12において、前傾姿勢が目標の姿勢として選択された場合、背面22aの形状は、第5形状から第2形状に変更される。これによって、背もたれ22が前に倒されて、人Pの姿勢が腰を丸めた姿勢から前傾姿勢に誘導され、状態P17となる(T8)。
【0067】
図8の状態P11において、前傾姿勢が目標の姿勢として選択された場合、背面22aの形状は、第1形状から第2形状に変更される。これによって、背もたれ22が前に倒されて、人Pの姿勢が直立姿勢から前傾姿勢に誘導され、状態P17となる(T9)。
【0068】
図8の状態P14において、前傾姿勢が目標の姿勢として選択された場合、背面22aの形状は、第6形状から第2形状に変更される。これによって、人Pの背中の下部が背もたれ22により少し押されて、人Pの姿勢が腰を丸めた前傾姿勢から前傾姿勢に誘導され、状態P17となる(T10)。
【0069】
図8の状態P17において、直立姿勢が目標の姿勢として選択された場合、背面22aの形状は、第2形状から第3形状に変更される。これによって、人Pの背中の下部が背もたれ22により押されて、人Pの姿勢が前傾姿勢から直立姿勢に誘導され、状態P13となる(T11)。
【0070】
図9は、椅子1による人Pの姿勢の誘導の一例の説明図である。特に、図9は、椅子1を上方から見た場合の人Pの姿勢に関する。図9は、椅子1が別の椅子の座面に置かれているが、椅子1が床の上に置かれていても同様である。また、図9は、人Pの姿勢が足組やあぐらを伴っていたり、左右反転したりした場合も同様に適用できる。
【0071】
図9の状態P21では、人Pの姿勢が直立姿勢であり、椅子1の背面22aの形状が第1形状(図4のA参照)である。図9の状態P22では、人Pの姿勢が左ひねり姿勢であり、椅子1の背面22aの形状が第8形状(図4のB参照)である。図9の状態P23では、人Pの姿勢が直立姿勢であり、椅子1の背面22aの形状が第10形状(図4のD参照)である。図9の状態P24では、人Pの姿勢が右ひねり姿勢であり、椅子1の背面22aの形状が第1形状(図4のA参照)である。図9の状態P25では、人Pの姿勢が直立姿勢であり、椅子1の背面22aの形状が第8形状(図4のB参照)である。
【0072】
図9の状態P21において、左ひねり姿勢が目標の姿勢として選択された場合、背面22aの形状は、第1形状から第8形状に変更される。これによって、人Pの背中の左側が背もたれ22により押されて、人Pの姿勢が直立姿勢から左ひねり姿勢に誘導され、状態P22となる(T21)。
【0073】
図9の状態P22において、直立姿勢が目標の姿勢として選択された場合、背面22aの形状は、第8形状から第10形状に変更される。これによって、人Pの背中の右側が背もたれ22により押されて、人Pの姿勢が左ひねり姿勢から直立姿勢に誘導され、状態P23となる(T22)。
【0074】
図9の状態P24において、直立姿勢が目標の姿勢として選択された場合、背面22aの形状は、第1形状から第8形状に変更される。これによって、人Pの背中の左側が背もたれ22により押されて、人Pの姿勢が右ひねり姿勢から直立姿勢に誘導され、状態P25となる(T23)。
【0075】
処理装置5は、誘導処理S16を実行することによって、座面21aに座る人の姿勢を、目標の姿勢に誘導する。
【0076】
処理装置5は、誘導処理S16の実行後、圧力センサ3から座面21aの圧力分布を取得し、圧力センサ3で測定された座面21aの圧力分布に基づいて、座面21aに座る人の現在の姿勢を決定する(S17)。本実施の形態では、処理装置5は、ステップS22で選択した姿勢推定モデルM1に、圧力センサ3で測定された座面21aの圧力分布を入力し、姿勢推定モデルM1から出力される人の姿勢を、座面21aに座る人の現在の姿勢として決定する。
【0077】
処理装置5は、ステップS17で決定した現在の姿勢が目標の姿勢になっているかどうかを判定する(S18)。ステップS17で決定した現在の姿勢が目標の姿勢になっている場合(S18:YES)、処理装置5は、筋肉負荷決定処理S13に戻り、ステップS17で決定した現在の姿勢に基づいて筋肉の負荷を決定する。
【0078】
処理装置5は、ステップS17で決定した現在の姿勢が目標の姿勢になっていない場合(S18:NO)、再誘導処理S19を実行する。つまり、処理装置5は、誘導処理S16の実行後の現在の姿勢が目標の姿勢と異なる場合に、再誘導処理S19を実行する。再誘導処理S19は、人の姿勢が目標の姿勢となるように、背もたれ22の背面の形状を所定の形状から変更する。
【0079】
例えば、図8の状態P11において、腰を丸めた姿勢が目標の姿勢として選択された場合、背面22aの形状は、第1形状から第5形状に変更される。これによって、人の背中の上部が背もたれ22により押されて、人の姿勢が直立姿勢から腰を丸めた姿勢に誘導される。しかしながら、場合によっては、人の姿勢が腰を丸めた姿勢ではなく、前傾姿勢になる場合がある。この場合には、図3のEの第5形状において、座面21aに対する変更装置4の上端部4aを座面21aから離れる向きに回転させて、変更装置4の上端部4aの前面の角度を直角に近付ける。これによって、人の姿勢を前傾姿勢から腰を丸めた姿勢に誘導してよい。
【0080】
例えば、図8の状態P11において、前傾姿勢が目標の姿勢として選択された場合、背面22aの形状は、第1形状から第2形状に変更される。これによって、背もたれ22が前に倒されて、人の姿勢が直立姿勢から前傾姿勢に誘導される。しかしながら、場合によっては、人の姿勢が前傾姿勢ではなく、腰を丸めた姿勢になる場合がある。この場合には、図3のBの第2形状において、座面21aに対する変更装置4の上端部4aを座面21aから離れる向きに回転させるとともに座面21aに対する変更装置4の下端部4bを座面21aに近付く向きに回転させる。これによって、人の姿勢を腰を丸めた姿勢から前傾姿勢に誘導してよい。
【0081】
再誘導処理S19によって人の姿勢を目標の姿勢に誘導しようとしている間も、筋肉には継続して負荷がかかっており、疲労は蓄積される。そのため、再誘導処理S19の実行期間においては、人の現在の姿勢に基づいて筋肉の負荷を決定し、蓄積値を更新する。これによって、人の筋肉の負荷の蓄積値の連続性を保つことができる。
【0082】
処理装置5は、再誘導処理S19の実行後、ステップS17に戻る。
【0083】
このように、処理装置5は、人が座面21aに座ると、座面21aの圧力分布から人の現在の姿勢を決定する(S12)。次に、処理装置5は、決定した姿勢からどの筋肉にどれくらいの負荷がかかっているかを決定する(S13)。時間が経過すると負荷が蓄積されて筋疲労が大きくなる。そこで、処理装置5は、決定した各筋肉の負荷と経過時間から、いずれかの筋肉の筋疲労を示す蓄積値が所定の閾値を超えているか判断する(S14,S15)。蓄積値が所定の閾値を超えている筋肉がある場合(S15:YES)、処理装置5は、蓄積値が所定の閾値を超えていない他の筋肉へ負荷を分散させるように、椅子1の背面22aの形状を変更し人の姿勢の変更を誘導する(S16)。ただし、背面22aの形状を変化させても人が目標の姿勢になってくれるとは限らない。そのため、処理装置5は、座面21aの圧力分布から人の現在の姿勢を決定し(S17)、現在の姿勢が目標の姿勢になっているかを確認する(S18)。現在の姿勢が目標の姿勢になっていない場合(S18:NO)、処理装置5は、再び背面22aの形状を変化させる(S19)。その結果、着座時の負荷が他筋肉に分散されるため、長時間の着座が可能となる。
【0084】
本実施の形態の椅子1は、着座姿勢において、背面22aの形状を能動的に変化させて、座面21aに座っている人の対象部位の疲労を軽減し、例えば、腰痛悪化防止を図ることができる。
【0085】
[1.1.2 動作]
次に図10及び図11を参照して、椅子1の動作、特に処理装置5の動作の例について説明する。
【0086】
図10は、椅子1での筋肉にかかる負荷の蓄積値の時間変化の第1例のグラフである。図10の第1例では、姿勢決定処理S12により座面21aに座る人の現在の姿勢が直立姿勢と決定され、筋肉負荷決定処理S13により表2の筋肉負荷推定モデルM2に基づいて筋肉の負荷が決定される。
【0087】
図10において、G11は筋肉Aの蓄積値、G12は筋肉Bの蓄積値、G13は筋肉Cの蓄積値のグラフである。図10において、Vthは所定の閾値を示す。図10では所定の閾値Vthは4である。
【0088】
処理装置5は、筋肉負荷決定処理S13の後に蓄積値算出処理S14を実行し、直立姿勢に対応する筋肉の負荷に基づいて筋肉A,B,Cの負荷の蓄積値を算出する。表2に示すように、直立姿勢では、筋肉Aの負荷は2、筋肉Bの負荷は1、筋肉Cの負荷は0である。負荷が「2」の場合、単位時間当たりの負荷の蓄積値は、1分当たり2に設定される。負荷が「1」の場合、単位時間当たりの負荷の蓄積値は、1分当たり1に設定される。負荷が「0」の場合、単位時間当たりの負荷の蓄積値は、1分当たり-4に設定される。ただし、負荷の蓄積値の最小値は0である。
【0089】
初期状態(0分)では、筋肉A,B,Cの負荷の蓄積値はいずれも0である。初期状態から1分経過後、筋肉Aの負荷の蓄積値は2、筋肉Bの負荷の蓄積値は1、筋肉Cの負荷の蓄積値は0である。初期状態から2分経過後、筋肉Aの負荷の蓄積値は4、筋肉Bの負荷の蓄積値は2、筋肉Cの負荷の蓄積値は0である。
【0090】
筋肉Aの負荷の蓄積値が所定の閾値Vthに達したため(S15:YES)、処理装置5は誘導処理P16を実行する。一例として、処理装置5は、腰を丸めた姿勢を目標の姿勢として選択する。表2に示すように、腰を丸めた姿勢では、筋肉Aの負荷は0、筋肉Bの負荷は2、筋肉Cの負荷は1である。腰を丸めた姿勢は、直立姿勢、腰を丸めた姿勢、及び、前傾姿勢のうち、負荷の蓄積値が所定の閾値Vth以上となった筋肉Aの負荷が最も小さくなる姿勢である。
【0091】
処理装置5は、誘導処理S16の実行後に現在の姿勢の決定をし(S17)、現在の姿勢が目標の姿勢(ここでは腰を丸めた姿勢)になっていれば(S18:YES)、筋肉負荷決定処理S13により表2の筋肉負荷推定モデルM2に基づいて筋肉の負荷を決定し、蓄積値算出処理S14を実行する。これにより、処理装置5は、腰を丸めた姿勢に対応する筋肉の負荷に基づいて筋肉A,B,Cの負荷の蓄積値を算出する。直立姿勢から腰を丸めた姿勢への変更から1分経過後(初期状態から3分経過後)、筋肉Aの負荷の蓄積値は0、筋肉Bの負荷の蓄積値は4、筋肉Cの負荷の蓄積値は1である。
【0092】
筋肉Bの負荷の蓄積値が所定の閾値Vthに達したため(S15:YES)、処理装置5は誘導処理P16を実行する。一例として、処理装置5は、前傾姿勢を目標の姿勢として選択する。表2に示すように、前傾姿勢では、筋肉Aの負荷は1、筋肉Bの負荷は0、筋肉Cの負荷は2である。前傾姿勢は、直立姿勢、腰を丸めた姿勢、及び、前傾姿勢のうち、負荷の蓄積値が所定の閾値Vth以上となった筋肉Bの負荷が最も小さくなる姿勢である。
【0093】
処理装置5は、誘導処理S16の実行後に現在の姿勢の決定をし(S17)、現在の姿勢が目標の姿勢(ここでは前傾姿勢)になっていれば(S18:YES)、筋肉負荷決定処理S13により表2の筋肉負荷推定モデルM2に基づいて筋肉の負荷を決定し、蓄積値算出処理S14を実行する。これにより、処理装置5は、前傾姿勢に対応する筋肉の負荷に基づいて筋肉A,B,Cの負荷の蓄積値を算出する。腰を丸めた姿勢から前傾姿勢への変更から1分経過後(初期状態から4分経過後)、筋肉Aの負荷の蓄積値は1、筋肉Bの負荷の蓄積値は0、筋肉Cの負荷の蓄積値は3である。腰を丸めた姿勢から前傾姿勢への変更から1分30秒経過後(初期状態から4分30秒経過後)、筋肉Aの負荷の蓄積値は1.5、筋肉Bの負荷の蓄積値は0、筋肉Cの負荷の蓄積値は4である。
【0094】
筋肉Cの負荷の蓄積値が所定の閾値Vthに達したため(S15:YES)、処理装置5は誘導処理P16を実行する。一例として、処理装置5は、直立姿勢を目標の姿勢として選択する。直立姿勢は、直立姿勢、腰を丸めた姿勢、及び、前傾姿勢のうち、負荷の蓄積値が所定の閾値Vth以上となった筋肉Cの負荷が最も小さくなる姿勢である。
【0095】
処理装置5は、誘導処理S16の実行後に現在の姿勢の決定をし(S17)、現在の姿勢が目標の姿勢(ここでは前傾姿勢)になっていれば(S18:YES)、筋肉負荷決定処理S13により表2の筋肉負荷推定モデルM2に基づいて筋肉の負荷を決定し、蓄積値算出処理S14を実行する。これにより、処理装置5は、前傾姿勢に対応する筋肉の負荷に基づいて筋肉A,B,Cの負荷の蓄積値を算出する。前傾姿勢から直立姿勢への変更から1分経過後(初期状態から5分30秒経過後)、筋肉Aの負荷の蓄積値は3.5、筋肉Bの負荷の蓄積値は1、筋肉Cの負荷の蓄積値は0である。前傾姿勢から直立姿勢への変更から1分15秒経過後(初期状態から5分45秒経過後)、筋肉Aの負荷の蓄積値は4、筋肉Bの負荷の蓄積値は1.25、筋肉Cの負荷の蓄積値は0である。
【0096】
筋肉Aの負荷の蓄積値が所定の閾値Vthに達したため(S15:YES)、処理装置5は誘導処理P16を実行する。処理装置5は、腰を丸めた姿勢を目標の姿勢として選択する。直立姿勢から腰を丸めた姿勢への変更から1分経過後(初期状態から6分45秒経過後)、筋肉Aの負荷の蓄積値は0、筋肉Bの負荷の蓄積値は3.25、筋肉Cの負荷の蓄積値は1である。
【0097】
このように、椅子1では、蓄積値が所定の閾値Vthに達した筋肉への負荷が少なくなり、他の筋肉に負荷がかかるように座面21aに座る人の姿勢を誘導することで各筋肉の蓄積値が所定の閾値Vthを超えずに長時間着座することが可能となる。
【0098】
図11は、椅子1での筋肉にかかる負荷の蓄積値の時間変化の第2例のグラフである。図11の第2例では、姿勢決定処理S12により座面21aに座る人の現在の姿勢が直立姿勢と決定され、筋肉負荷決定処理S13により表2の筋肉負荷推定モデルM2に基づいて筋肉の負荷が決定される。
【0099】
図11において、G21は筋肉Aの蓄積値、G22は筋肉Bの蓄積値、G23は筋肉Cの蓄積値のグラフである。図11において、Vthは所定の閾値を示す。図11では所定の閾値Vthは4である。
【0100】
処理装置5は、筋肉負荷決定処理S13の後に蓄積値算出処理S14を実行し、直立姿勢に対応する筋肉の負荷に基づいて筋肉A,B,Cの負荷の蓄積値を算出する。初期状態(0分)では、筋肉A,B,Cの負荷の蓄積値はいずれも0である。
【0101】
初期状態から2分経過後、筋肉Aの負荷の蓄積値は4、筋肉Bの負荷の蓄積値は2、筋肉Cの負荷の蓄積値は0である。
【0102】
筋肉Aの負荷の蓄積値が所定の閾値Vthに達したため(S15:YES)、処理装置5は誘導処理P16を実行する。一例として、処理装置5は、腰を丸めた姿勢を目標の姿勢として選択する。
【0103】
処理装置5は、誘導処理S16の実行後に現在の姿勢の決定をする(S17)。ここでは、現在の姿勢が前傾姿勢であり、目標の姿勢(腰を丸めた姿勢)になっていない(S18:NO)。この場合、処理装置5は、再誘導処理S19を実行する。再誘導処理S19によって、誘導処理S16の実行から1分経過後(初期状態から3分経過後)、人の姿勢が目標の姿勢(腰を丸めた姿勢)になる。
【0104】
本実施の形態では、再誘導処理S19の実行期間においては、人の現在の姿勢に基づいて筋肉の負荷を決定し、蓄積値を更新する。再誘導処理S19の実行期間(初期状態から2分経過後から3分経過後の間)において、人の現在の姿勢は腰を丸めた姿勢である。そのため、再誘導処理S19の実行期間は、腰を丸めた姿勢に対応する負荷が各筋肉にかかる。したがって、再誘導処理S19の実行期間において、筋肉Aの負荷の蓄積値は1増加し、筋肉Bの負荷の蓄積値は2減少し、筋肉Cの負荷の蓄積値は2増加する。その結果、初期状態から3分経過後、筋肉Aの負荷の蓄積値は5、筋肉Bの負荷の蓄積値は0、筋肉Cの負荷の蓄積値は2である。
【0105】
初期状態から3分経過後からは、人の現在の姿勢が目標の姿勢である腰を丸めた姿勢になる。そのため、初期状態から4分経過後、筋肉Aの負荷の蓄積値は1、筋肉Bの負荷の蓄積値は2、筋肉Cの負荷の蓄積値は3である。
【0106】
このように、誘導処理S16により背面22aの形状を変化させても人が目標の姿勢になってくれるとは限らない。そのため、処理装置5は、誘導処理S16後のステップS17において座面21aの圧力分布から人の現在の姿勢を決定し、ステップS18において現在の姿勢が目標の姿勢になっているかを判定する。人の現在の姿勢が目標の姿勢になっていない場合(ステップS18:NO)、処理装置5は、再誘導処理S19を実行して、再び背面22aの形状を変化させる。このように背面22aの形状を変化させて誘導した姿勢が目標の姿勢と異なることを判定し、再び背面22aの形状を変化させて目標の姿勢に誘導することで各筋肉の負荷の蓄積値が所定の閾値Vthを大きく上回らずに長時間着座することが可能となる。
【0107】
以上述べたように、椅子1では、人が座面21aに座ってから人の姿勢を決定した後、ステップS13~S19を人が椅子1から離れるまで継続することで、各筋肉への負荷を分散し続け、各筋肉の負荷の蓄積値が所定の閾値Vthを大幅に超えずに長時間着座することが可能となる。特に、ポストコロナ環境における在宅勤務の定着により、着座時間が増加するとともに身体的負荷が増加し、腰痛を発症、または悪化させる傾向がある。在宅勤務においては、住宅事情などにより椅子ではなく、床の上に着座するなど様々な着座環境が存在する。そのため、着座環境に依存せずに腰痛悪化を防止する必要がある。さらに、着座環境が必ずしも固定ではないため、カメラや光センサなど、椅子以外に設置する必要のあるセンサを使わずに腰痛悪化を防止することが求められる。このような観点から、椅子以外の機器を必要とせず、持ち運びが可能な小型の椅子に腰痛悪化を防止する機能が求められる。本実施の形態の椅子1は、これらの要求を満たすことが可能であり、在宅勤務等において様々な着座環境がある場合に、着座環境に依存せずに長時間着座することができ、有用である。
【0108】
[1.1.3 効果等]
以上述べた椅子1は、座面21a及び背もたれ22を有する椅子本体2と、座面21aの圧力分布を計測する圧力センサ3と、座面21aに対する背もたれ22の背面22aの形状を変更する変更装置4と、処理装置5とを備える。処理装置5は、座面21aに座る人の対象部位に関連する複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値のいずれか一つが所定の閾値以上となると、誘導処理S16を実行する。誘導処理S16は、背もたれ22の背面22aの形状が、人の姿勢を目標の姿勢に誘導する所定の形状となるように変更装置4を制御する。目標の姿勢は、複数の対象の筋肉のうち蓄積値が所定の閾値以上となった特定の対象の筋肉にかかる負荷が圧力センサ3で測定された座面21aの圧力分布に対応する現在の姿勢よりも小さい姿勢である。この構成は、座面21aに座る人の対象部位の疲労を軽減できる。
【0109】
椅子1において、処理装置5は、誘導処理S16の実行後の現在の姿勢が目標の姿勢と異なる場合に、人の姿勢が目標の姿勢となるように、背もたれ22の背面22aの形状を所定の形状から変更する再誘導処理S19を実行する。この構成は、座面21aに座る人の対象部位の疲労を軽減できる可能性が向上する。
【0110】
椅子1において、処理装置5は、現在の姿勢に基づいて複数の対象の筋肉にかかる負荷を決定する筋肉負荷決定処理S13と、筋肉負荷決定処理S13で決定された複数の対象の筋肉にかかる負荷と現在の姿勢の継続時間とに基づいて、複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値を算出する蓄積値算出処理S14とを実行する。この構成は、処理装置5の演算処理により筋肉の負荷を決定でき、外部装置又は追加の要素が必要ないため、椅子1の構成の簡素化が図れる。
【0111】
椅子1において、処理装置5は、圧力センサ3で測定された座面21aの圧力分布に基づいて現在の姿勢を決定する姿勢決定処理S12を実行する。この構成は、処理装置5の演算処理により姿勢を決定でき、外部装置が必要ないため、椅子1の構成の簡素化が図れる。
【0112】
椅子1において、姿勢決定処理S12は、圧力センサ3で測定された座面21aの圧力分布に基づいて座面21aに座る人の属性を決定し、人の属性と圧力センサ3で測定された座面21aの圧力分布とに基づいて、現在の姿勢を決定する。この構成は、処理装置5の演算処理による姿勢の決定の精度を向上できる。
【0113】
椅子1において、目標の姿勢は、複数の対象の筋肉のうち特定の対象の筋肉とは別の対象の筋肉に特定の対象の筋肉よりも大きな負荷がかかる姿勢である。この構成は、座面21aに座る人の対象部位の疲労を軽減できる可能性が向上する。
【0114】
椅子1において、目標の姿勢は、時間とともに特定の対象の筋肉の疲労が軽減される姿勢である。この構成は、座面21aに座る人の対象部位の疲労を軽減できる可能性が向上する。
【0115】
椅子1において、変更装置4は、座面21aの向きに対する背もたれ22の背面22aの向きと背もたれ22の背面22a自体の形状との少なくとも一方を変更することによって、座面21aに対する背もたれ22の背面22aの形状を変更する。この構成は、座面21aに座る人の対象部位の疲労を軽減できる可能性が向上する。
【0116】
椅子1において、変更装置4は、水平面に対応する面と鉛直面に対応する面との少なくとも一方において座面21aの向きに対する背もたれ22の背面22aの向きを変更する駆動装置42を備える。この構成は、座面21aに座る人の対象部位の疲労を軽減できる可能性が向上する。
【0117】
椅子1において、変更装置4は、背面22aの上端部、下端部、左端部及び右端部の少なくとも一つを前後方向に移動させる駆動装置42を備える。この構成は、座面21aに座る人の対象部位の疲労を軽減できる可能性が向上する。
【0118】
椅子1において、対象部位は、人の腰と背中の少なくとも一方を含む。この構成は、座面21aに座る人の腰の疲労を軽減できて、腰痛の防止又は腰痛の悪化の防止が図れる。
【0119】
[1.2 実施の形態2]
[1.2.1 構成]
図12は、実施の形態2の椅子1Aの構成例の概略的なブロック図である。図12の椅子1Aは、椅子本体2と、圧力センサ3と、変更装置4と、処理装置5Aと、記憶装置6と、筋肉負荷センサ7とを備える。
【0120】
筋肉負荷センサ7は、座面21aに座る人の対象部位の複数の対象の筋肉にかかる負荷を測定する。本実施の形態において、筋肉負荷センサ7は、背もたれ22に配置される。筋肉負荷センサ7は、例えば、非接触の筋電位センサである。なお、筋肉負荷センサ7は、座面21aに座る人の対象部位の複数の対象の筋肉にかかる負荷を測定できれば、特に限定されない。
【0121】
図13は、処理装置5Aの動作の一例のフローチャートである。処理装置5Aは、姿勢決定処理S42と、蓄積値算出処理S44と、誘導処理S46と、再誘導処理S49とを実行可能である。以下、図13のフローチャートを参照して、処理装置5Aの動作について説明する。
【0122】
処理装置5Aは、圧力センサ3から座面21aの圧力分布を取得する(S41)。
【0123】
処理装置5Aは、圧力センサ3から座面21aの圧力分布を取得すると、姿勢決定処理S42を実行する。姿勢決定処理S42は、実施の形態1において説明した姿勢決定処理S12と同様である。
【0124】
処理装置5Aは、姿勢決定処理S42で人の姿勢を決定すると、筋肉負荷センサ7から座面21aに座る人の対象部位の複数の対象の筋肉にかかる負荷の測定値を取得する(S43)。
【0125】
処理装置5Aは、筋肉負荷センサ7から負荷の測定値を取得すると、蓄積値算出処理S44を実行する。蓄積値算出処理S44は、筋肉負荷センサ7で測定された複数の対象の筋肉にかかる負荷と現在の姿勢の継続時間とに基づいて、複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値を算出する。
【0126】
このようにして、処理装置5Aは、筋肉負荷センサ7での負荷の測定値に基づいて、蓄積値を算出する。処理装置5Aは、算出した蓄積値に基づいて、図13のステップS46~S49を実行可能である。図13のステップS46~S49は、図5のステップS16~S19と同様である。
【0127】
本実施の形態の椅子1Aは、筋肉負荷センサ7により、リアルタイムで、座面21aに座る人の筋肉への負荷を直接計測する。そのため、筋肉の負荷の推定精度が向上する。椅子1Aによれば、より高精度に筋肉の疲労箇所を分散し続けることができ、座面21aに座る人の対象部位の疲労を軽減できる可能性が向上し、長時間着座することが可能となる。
【0128】
[1.2.2 効果等]
以上述べた椅子1Aは、前記複数の対象の筋肉にかかる負荷を測定する筋肉負荷センサ(7)をさらに備える。前記処理装置(5A)は、前記筋肉負荷センサ(7)で測定された前記複数の対象の筋肉にかかる負荷と前記現在の姿勢の継続時間とに基づいて、前記複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値を算出する蓄積値算出処理(S44)を実行する。この構成は、筋肉の負荷の正確な測定を可能にするから、座面(21a)に座る人(P)の対象部位の疲労を軽減できる可能性が向上する。
【0129】
[1.3 実施の形態3]
[1.3.1 構成]
図14は、実施の形態3の椅子1B及び決定装置10Bを備えるシステムの構成例の概略的なブロック図である。
【0130】
図14の椅子1Bは、椅子本体2と、圧力センサ3と、変更装置4と、処理装置5Bと、通信装置8とを備える。
【0131】
通信装置8は、決定装置10Bと通信可能に接続される。通信装置8は、通信ネットワーク9を通じた決定装置10Bとの通信に用いられる。通信装置8は、1以上の通信インタフェースを備える。通信装置8は、通信ネットワーク9に接続可能であり、通信ネットワーク9を通じた通信を行う機能を有する。通信装置8は、所定の通信プロトコルに準拠している。所定の通信プロトコルは、周知の様々な有線及び無線通信規格から選択され得る。
【0132】
通信ネットワーク9は、インターネットを含み得る。通信ネットワーク9は、単一の通信プロトコルに準拠したネットワークだけではなく、異なる通信プロトコルに準拠した複数のネットワークで構成され得る。通信プロトコルは、周知の様々な有線及び無線通信規格から選択され得る。有線通信規格の例としては、イーサネット(登録商標)等の規格が挙げられる。無線通信規格の例としては、IEEE802.11、4G、又は5G等の規格が挙げられる。通信ネットワーク9は、リピータハブ、スイッチングハブ、ブリッジ、ゲートウェイ、ルータ等のデータ通信機器を含み得る。
【0133】
図15及び図16は、処理装置5Bの動作の一例のフローチャートである。処理装置5Bは、蓄積値算出処理S54と、誘導処理S56と、再誘導処理S65とを実行可能である。
【0134】
図14の決定装置10Bは、通信装置11と、記憶装置12と、演算装置13とを備える。決定装置10Bは、例えば、1又は複数のサーバで実現される。
【0135】
通信装置11は、椅子1Bと通信可能に接続される。通信装置11は、通信ネットワーク9を通じた椅子1Bとの通信に用いられる。通信装置11は、1以上の通信インタフェースを備える。通信装置11は、通信ネットワーク9に接続可能であり、通信ネットワーク9を通じた通信を行う機能を有する。通信装置11は、所定の通信プロトコルに準拠している。所定の通信プロトコルは、周知の様々な有線及び無線通信規格から選択され得る。
【0136】
記憶装置12は、演算装置13が利用する情報及び演算装置13で生成される情報を記憶するために用いられる。記憶装置12は、1以上のストレージ(非一時的な記憶媒体)を含む。ストレージは、例えば、ハードディスクドライブ、光学ドライブ、及びソリッドステートドライブ(SSD)のいずれであってもよい。
【0137】
記憶装置12に記憶される情報は、姿勢推定モデルM1と、筋肉負荷推定モデルM2とを含む。図14では、記憶装置12が、姿勢推定モデルM1と、筋肉負荷推定モデルM2との全てを記憶している状態を示している。姿勢推定モデルM1と、筋肉負荷推定モデルM2とは常に記憶装置12に記憶されている必要はなく、演算装置13で必要とされるときに記憶装置12に記憶されていればよい。
【0138】
演算装置13は、決定装置10Bの動作を制御する。演算装置13は、記憶装置12にアクセス可能である。演算装置13は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。1以上のプロセッサが(1以上のメモリ又は記憶装置12に記憶された)プログラムを実行することで、演算装置13としての機能を実現する。プログラムは、ここでは記憶装置12に予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0139】
演算装置13は、姿勢推定モデルM1と、筋肉負荷推定モデルM2との更新を行ってよい。一例として、新たな学習用データセットを利用した追加学習により、姿勢推定モデルM1を更新することができ、姿勢推定モデルM1による推定の高精度化が図れる。一例として、新たな実験データを利用して筋肉負荷推定モデルM2を更新することができ、筋肉負荷推定モデルM2による推定の高精度化が図れる。
【0140】
図17は、演算装置13の動作の一例のフローチャートである。演算装置13は、姿勢決定処理S72と、筋肉負荷決定処理S73とを実行可能である。
【0141】
以下、図15図17のフローチャートを参照して、椅子1B及び決定装置10Bの動作について説明する。
【0142】
図15に示すように、椅子1Bにおいて、処理装置5Bは、圧力センサ3から座面21aの圧力分布を取得する(S51)。処理装置5Bは、圧力センサ3から座面21aの圧力分布を取得すると、圧力センサ3で測定された座面21aの圧力分布を示す圧力分布情報を通信装置8から決定装置10Bに送信する(S52)。なお、処理装置5Bは、圧力センサ3からの座面21aの圧力分布に基づいて人が座面21aに座ったかどうかを判定してよい。処理装置5は、人が座面21aに座ったと判定した場合に、次の処理(S52)を実行してよい。
【0143】
図17に示すように、決定装置10Bにおいて、演算装置13は、椅子1Bの処理装置5Bから圧力分布情報を受信したかどうかを判定する(S71)。演算装置13は、椅子1Bの処理装置5Bから圧力分布情報を受信すると(S71:YES)、処理装置5Bから受信した圧力分布情報が示す座面21aの圧力分布に基づいて現在の姿勢を決定し、現在の姿勢を示す姿勢情報を生成する(S72)。ステップS72での現在の姿勢の決定の仕方は、実施の形態1で説明した姿勢決定処理S12と同様である。さらに、演算装置13は、姿勢情報が示す現在の姿勢に基づいて複数の対象の筋肉にかかる負荷を決定し、複数の対象の筋肉にかかる負荷を示す筋肉負荷情報を生成する(S72)。ステップS73での筋肉にかかる負荷の決定の仕方は、実施の形態1で説明した筋肉負荷決定処理S13と同様である。演算装置13は、ステップ72で生成した姿勢情報及びステップS73で生成した筋肉負荷情報を、処理装置5Bに送信する(S74)。このように、決定装置10Bは、処理装置5Bから受信した圧力分布情報が示す座面21aの圧力分布に基づいて現在の姿勢を決定し、現在の姿勢を示す姿勢情報を生成して処理装置5Bに送信する。決定装置10Bは、姿勢情報が示す現在の姿勢に基づいて複数の対象の筋肉にかかる負荷を決定し、複数の対象の筋肉にかかる負荷を示す筋肉負荷情報を生成して処理装置5Bに送信する。
【0144】
図15に示すように、椅子1Bにおいて、処理装置5Bは、決定装置10Bの演算装置13から姿勢情報及び筋肉負荷情報を受信したかどうかを判定する(S53)。処理装置5Bは、姿勢情報及び筋肉負荷情報を受信すると(S53:YES)、通信装置8を通じて決定装置10Bから受信した姿勢情報が示す現在の姿勢と、通信装置8を通じて決定装置10Bから受信した筋肉負荷情報が示す複数の対象の筋肉にかかる負荷とに基づいて、複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値を算出する蓄積値算出処理S54を実行する。
【0145】
処理装置5Bは、座面21aに座る人の対象部位に関連する複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値のいずれか一つが所定の閾値以上となったかどうかを判断する(S55)。
【0146】
処理装置5Bは、座面21aに座る人の対象部位に関連する複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値のいずれか一つが所定の閾値以上となると(S55:YES)、誘導処理S56を実行する。誘導処理S56は、実施の形態1において説明した誘導処理S16と同様である。
【0147】
図16に示すように、処理装置5Bは、誘導処理S56の実行後、圧力センサ3から座面21aの圧力分布を取得し(S61)、圧力センサ3で測定された座面21aの圧力分布を示す圧力分布情報を通信装置8から決定装置10Bに送信する(S62)。
【0148】
決定装置10Bでは、演算装置13が図17のステップS71~74を実行して、処理装置5Bに姿勢情報及び筋肉負荷情報を送信する。
【0149】
図16に示すように、椅子1Bにおいて、処理装置5Bは、決定装置10Bの演算装置13から姿勢情報を受信すると(S63:YES)、姿勢情報が示す現在の姿勢が目標の姿勢になっているかどうかを判定する(S64)。姿勢情報が示す現在の姿勢が目標の姿勢になっている場合(S64:YES)、処理装置5Bは、蓄積値算出処理S54に戻り、決定装置10Bから受信した姿勢情報及び筋肉負荷情報に基づいて筋肉の負荷を決定する。
【0150】
処理装置5Bは、姿勢情報が示す現在の姿勢が目標の姿勢になっていない場合(S64:NO)、再誘導処理S65を実行する。誘導処理S65は、実施の形態1において説明した再誘導処理S19と同様である。
【0151】
以上述べた実施の形態3においては、椅子1Bとは別の決定装置10Bが姿勢推定モデルM1を用いた姿勢の決定及び筋肉負荷推定モデルM2を用いた筋肉にかかる負荷の決定を行う。そのため、椅子1Bの処理装置5Bの演算負荷が軽減される。また、決定装置10Bは、機械学習等により姿勢推定モデルM1及び筋肉負荷推定モデルM2の高精度化を行うことができる。したがって、実施の形態3では、より高精度な姿勢推定及び筋肉負荷推定を実現でき、より高精度に筋肉の疲労箇所を分散し続け、長時間着座することが可能となる。
【0152】
[1.3.2 効果等]
以上述べた椅子1Bは、椅子本体2の外部にある決定装置10Bと接続可能な通信装置8をさらに備える。処理装置5Bは、圧力センサ3で測定された座面21aの圧力分布を示す圧力分布情報を通信装置8から決定装置10Bに送信する。決定装置10Bは、処理装置5Bから受信した圧力分布情報が示す座面21aの圧力分布に基づいて現在の姿勢を決定し、現在の姿勢を示す姿勢情報を生成して処理装置5Bに送信する。処理装置5Bは、通信装置8を通じて決定装置10Bから受信した姿勢情報が示す現在の姿勢に基づいて、複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値を算出する蓄積値算出処理S54を実行する。この構成は、処理装置5Bの演算負荷を軽減できる。
【0153】
椅子1Bにおいて、決定装置10Bは、姿勢情報が示す現在の姿勢に基づいて複数の対象の筋肉にかかる負荷を決定し、複数の対象の筋肉にかかる負荷を示す筋肉負荷情報を生成して処理装置5Bに送信する。処理装置5Bは、通信装置8を通じて決定装置10Bから受信した筋肉負荷情報が示す複数の対象の筋肉にかかる負荷に基づいて蓄積値算出処理S54を実行する。この構成は、処理装置5Bの演算負荷を軽減できる。
【0154】
[2.変形例]
本開示の実施の形態は、上記実施の形態に限定されない。上記実施の形態は、本開示の課題を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施の形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0155】
[2.1 変形例1]
図18は、変形例1の変更装置4Cの構成例の概略斜視図である。図18の変更装置4Cは、背板415と、駆動装置43とを備える。
【0156】
背板415は、背もたれ22の一部を構成する。背板415は、矩形の板状である。背板415の大きさは、座面21aに座る人の背中と腰に接触可能な大きさである。背板415の前面全体が、背面22a全体に対応する。
【0157】
駆動装置43は、第1~第4エアバッグ431~434と、エアバッグ制御装置435とを備える。第1エアバッグ431は、背板415の前面において、背面22aの左上部分に対応する位置に配置される。第2エアバッグ432は、背板415の前面において、背面22aの右上部分に対応する位置に配置される。第3エアバッグ433は、背板415の前面において、背面22aの左下部分に対応する位置に配置される。第4エアバッグ434は、背板415の前面において、背面22aの右下部分に対応する位置に配置される。第1~第4エアバッグ431~434は、内部空間の空気量が変化することで膨張又は収縮する。第1~第4エアバッグ431~434により、背面22aの左上部分、右上部分、左下部分、及び右上部分のそれぞれを前後方向に移動させることができる。第1~第4エアバッグ431~434の膨張又は収縮の組み合わせにより、背面22aの上端部、下端部、左端部及び右端部の少なくとも一つを前後方向に移動させることが可能となる。エアバッグ制御装置435は、第1~第4エアバッグ431~434の内部空間の空気量を調節する。エアバッグ制御装置435は、例えば、エアポンプから第1~第4エアバッグ431~434への吸気、及び、第1~第4エアバッグ431~434からの排気を制御する。
【0158】
変更装置4Cは、変更装置4と同様に、座面21aに対する背もたれ22の背面22aの形状の変更により、座面21aに座る人に姿勢の変更を促すことができる。
【0159】
[2.2 変形例2]
図19は、変形例2の変更装置4Dの構成例の概略斜視図である。図19の変更装置4Dは、第1及び第2背板部416,417と、駆動装置42D,43とを備える。
【0160】
第1及び第2背板部416,417は、背もたれ22の一部を構成する。第1及び第2背板部416,417の各々は、矩形の板状である。第1背板部416は、背面22aの上端部に対応する変更装置4の上端部4aを構成する。第2背板部417は、背面22aの下端部に対応する変更装置4の下端部4bを構成する。
【0161】
変更装置4の下端部4b(第2背板部417)は、水平方向に対応する第1回転軸A1の周りに回転可能に座部21に結合される。変更装置4の上端部4a(第1背板部416)と下端部4b(第2背板部417)とは、水平方向に対応する第2回転軸A2の周りに互いに回転可能に結合される。
【0162】
駆動装置42Dは、第1及び第2モータ421,422と、モータ制御装置424とを備える。第1モータ421は、変更装置4の下端部4bを座部21に対して第1回転軸A1の周りに回転させる。第1モータ421は、鉛直面に対応する面において座面21aの向きに対する背もたれ22の背面22aの向きを変更する。第1モータ421は、背面22aの上端部、下端部、左端部及び右端部をまとめて前後方向に移動させる。第2モータ422は、変更装置4の上端部4a及び下端部4bの一方を他方に対して第2回転軸A2の周りに回転させる。第2モータ422は、鉛直面に対応する面において座面21aの向きに対する背もたれ22の背面22aの向きを変更する。第2モータ422は、背面22aの上端部をまとめて前後方向に移動させる。モータ制御装置424は、第1~第3モータ421~423の回転量を調整する。モータ制御装置424は、第1~第3モータ421~423をそれぞれ独立に制御する。モータ制御装置424は、従来周知の構成であってよいから詳細な説明は省略する。
【0163】
駆動装置43は、第1~第4エアバッグ431~434と、エアバッグ制御装置435とを備える。第1エアバッグ431は、第1背板部416の前面において、背面22aの左端部に対応する位置に配置される。第2エアバッグ432は、第1背板部416の前面において、背面22aの右端部に対応する位置に配置される。第3エアバッグ433は、第2背板部417の前面において、背面22aの左端部に対応する位置に配置される。第4エアバッグ434は、第2背板部417の前面において、背面22aの右端部に対応する位置に配置される。第1~第4エアバッグ431~434の膨張又は収縮の組み合わせにより、背面22aの上端部、下端部、左端部及び右端部の少なくとも一つを前後方向に移動させることが可能となる。エアバッグ制御装置435は、第1~第4エアバッグ431~434の内部空間の空気量を調節する。エアバッグ制御装置435は、例えば、エアポンプから第1~第4エアバッグ431~434への吸気、及び、第1~第4エアバッグ431~434からの排気を制御する。
【0164】
以上述べた変更装置4Dは、変更装置4と同様に、座面21aに対する背もたれ22の背面22aの形状の変更により、座面21aに座る人に姿勢の変更を促すことができる。
【0165】
[2.3 その他の変形例]
一変形例において、椅子本体2の座部21及び背もたれ22の形状は、特に限定されない。座部21は、人が座る座面21aを有していればよく、素材や形状、硬さ等は適宜変更されてよい。背もたれ22は、背面22aを有していればよく、素材や形状、硬さ等は適宜変更されてよい。椅子本体2には、必要に応じて、カバー等が設けられてよい。例えば、本明細書にかかる椅子にカバーを設けることにより、椅子は全体として背もたれ付きのクッションのような形状を採り得る。
【0166】
一変形例において、椅子本体2は、脚を備えてもよい。つまり、椅子本体2は、座椅子に限定されない。椅子本体2は、一人がけの椅子の形状ではなく、複数人がけの椅子の形状を有してもよい。この場合、椅子本体2は、想定される人数に応じた座面21aを有するから、座面21a毎に背面22aの形状を変更することで、一人がけの椅子の場合と同様に、人に姿勢の変更を促すことが可能となる。
【0167】
一変形例において、圧力センサ3は、座部21に内蔵されてもよいし、座部21の外部に配置されてもよい。
【0168】
一変形例において、変更装置4は、背もたれ22に内蔵されてもよいし、背もたれ22の外部に配置されてもよい。変更装置4が、背もたれ22そのものであってもよい。
【0169】
一変形例において、処理装置5は、椅子本体2に内蔵されてもよいし、椅子本体2の外部に配置されてもよい。処理装置5は、圧力センサ3と変更装置4とに有線又は無線により接続されていればよい。
【0170】
一変形例において、記憶装置6のストレージは、内蔵型、外付け型、及びNAS(network-attached storage)型のいずれであってもよい。なお、椅子1は、複数の記憶装置6を備えてよい。複数の記憶装置6には情報が分散されて記憶されてよい。
【0171】
一変形例において、姿勢推定モデルM1は、必ずしも人の属性毎に設けられる必要はない。姿勢推定モデルM1は、データ科学の技術を利用する学習済みモデルに限らず、理論科学、実験科学、及び計算科学(シミュレーション)の少なくとも一つに基づいて設計されるモデルから構築されてもよい。
【0172】
一変形例において、筋肉負荷推定モデルM2は、データテーブルに限らず、学習済みモデルそれ自体であってもよいし、当該学習済みモデルの再利用モデル又は蒸留モデルであってもよい。例えば、筋肉負荷推定モデルM2は、座面21aに座る人の姿勢を入力、座面21aに座る人の対象部位の複数の特定の筋肉にかかる負荷を正解とする学習用データセットを用いた教師あり学習を実行することによって生成される学習済みモデルであってよい。筋肉負荷推定モデルM2は、データ科学の技術を利用する学習済みモデルに限らず、理論科学、実験科学、及び計算科学(シミュレーション)の少なくとも一つに基づいて設計されるモデルから構築されてもよい。一例として、筋肉負荷推定モデルM2は、筋骨格モデルを用いたシミュレーションの結果を用いて構成されてよい。
【0173】
一変形例において、処理装置5は、筋肉の負荷の蓄積値の算出に影響を及ぼさないような座面21aに座る人の一時的な姿勢の変化を無視してよい。実施の形態1の一変形例において、処理装置5は、再誘導処理P19を行う機能を備えていなくてもよい。この点は、実施の形態2,3においても同様である。
【0174】
実施の形態3の一変形例において、決定装置10Bは、筋肉負荷の決定(S73)を実行せずに、姿勢の決定(S72)だけを実行してもよい。この場合、処理装置5Bは、通信装置8を通じて決定装置10Bから受信した姿勢情報が示す現在の姿勢に基づいて、複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値を算出する蓄積値算出処理S54を実行する。
【0175】
実施の形態3の一変形例において、決定装置10Bは、姿勢の決定(S72)を実行せずに、筋肉負荷の決定(S73)だけを実行してもよい。この場合、処理装置5Bは、圧力センサ3で測定された座面21aの圧力分布に基づいて現在の姿勢を決定する姿勢決定処理S12を実行し、姿勢決定処理S12で決定された現在の姿勢を示す姿勢情報を通信装置8から決定装置10Bに送信する。決定装置10Bは、処理装置5Bから受信した姿勢情報が示す現在の姿勢に基づいて複数の対象の筋肉にかかる負荷を決定し(S73)、複数の対象の筋肉にかかる負荷を示す筋肉負荷情報を生成して処理装置5Bに送信する。処理装置5Bは、通信装置8を通じて決定装置10Bから受信した筋肉負荷情報が示す複数の対象の筋肉にかかる負荷に基づいて、複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値を算出する蓄積値算出処理S54を実行する。
【0176】
実施の形態1の一変形例において、椅子1は、変更装置4に加えて、又は、変更装置4に代えて、座面21aに座る人に目的の姿勢を、視覚と聴覚との少なくとも一方を通じて指示するように構成されてよい。このような指示は、処理装置5が、椅子本体2に設けられる画面やスピーカを通じて出力してもよいし、通信装置を通じて人が所有する端末装置から出力させてもよい。椅子1が、変更装置4の代わりに指示を出力する場合には、背もたれ22は必須ではない。この点は、実施の形態2,3においても同様である。
【0177】
[3.態様]
上記実施の形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施の形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0178】
第1の態様は、椅子(1;1A;1B)であって、座面(21a)及び背もたれ(22)を有する椅子本体(2)と、前記座面(21a)の圧力分布を計測する圧力センサ(3)と、前記座面(21a)に対する前記背もたれ(22)の背面(22a)の形状を変更する変更装置(4;4C;4D)と、前記座面(21a)に座る人(P)の対象部位に関連する複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値のいずれか一つが所定の閾値以上となると、前記背もたれ(22)の背面(22a)の形状が、前記人(P)の姿勢を、前記複数の対象の筋肉のうち前記蓄積値が前記所定の閾値以上となった特定の対象の筋肉にかかる負荷が前記圧力センサ(3)で測定された前記座面(21a)の圧力分布に対応する現在の姿勢よりも小さい目標の姿勢に誘導する所定の形状となるように前記変更装置(4;4C;4D)を制御する誘導処理(S16;S46;S56)を実行する処理装置(5;5A;5B)とを備える。この態様は、座面(21a)に座る人(P)の対象部位の疲労を軽減できる。
【0179】
第2の態様は、第1の態様に基づく椅子(1;1A;1B)である。第2の態様において、前記処理装置(5;5A;5B)は、前記誘導処理(S16;S46;S56)の実行後の前記現在の姿勢が前記目標の姿勢と異なる場合に、前記人(P)の姿勢が前記目標の姿勢となるように、前記背もたれ(22)の背面(22a)の形状を前記所定の形状から変更する再誘導処理(S19;S49;S65)を実行する。この態様は、座面(21a)に座る人(P)の対象部位の疲労を軽減できる可能性が向上する。
【0180】
第3の態様は、第1又は第2の態様に基づく椅子(1)である。第3の態様において、前記処理装置(5)は、前記現在の姿勢に基づいて前記複数の対象の筋肉にかかる負荷を決定する筋肉負荷決定処理(S13)と、前記筋肉負荷決定処理(S13)で決定された前記複数の対象の筋肉にかかる負荷と前記現在の姿勢の継続時間とに基づいて、前記複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値を算出する蓄積値算出処理(S14)とを実行する。この態様は、処理装置(5)の演算処理により筋肉の負荷を決定でき、外部装置又は追加の要素が必要ないから、椅子(1)の構成の簡素化が図れる。
【0181】
第4の態様は、第1又は第2の態様に基づく椅子(1A)である。第4の態様において、前記椅子(1A)は、前記複数の対象の筋肉にかかる負荷を測定する筋肉負荷センサ(7)をさらに備える。前記処理装置(5A)は、前記筋肉負荷センサ(7)で測定された前記複数の対象の筋肉にかかる負荷と前記現在の姿勢の継続時間とに基づいて、前記複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値を算出する蓄積値算出処理(S44)を実行する。この態様は、筋肉の負荷の正確な測定を可能にするから、座面(21a)に座る人(P)の対象部位の疲労を軽減できる可能性が向上する。
【0182】
第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか一つに基づく椅子(1;1A)である。第5の態様において、前記処理装置(5;5A)は、前記圧力センサ(3)で測定された前記座面(21a)の圧力分布に基づいて前記現在の姿勢を決定する姿勢決定処理(S12;S42)を実行する。この態様は、処理装置(5;5A)の演算処理により姿勢を決定でき、外部装置が必要ないから、椅子(1;1A)の構成の簡素化が図れる。
【0183】
第6の態様は、第5の態様に基づく椅子(1;1A)である。第6の態様において、前記姿勢決定処理(S12;S42)は、前記圧力センサ(3)で測定された前記座面(21a)の圧力分布に基づいて前記座面(21a)に座る人(P)の属性を決定し、前記人(P)の属性と前記圧力センサ(3)で測定された前記座面(21a)の圧力分布とに基づいて、前記現在の姿勢を決定する。この態様は、処理装置(5;5A)の演算処理による姿勢の決定の精度を向上できる。
【0184】
第7の態様は、第1又は第2の態様に基づく椅子(1B)である。第7の態様において、前記椅子(1B)は、前記椅子本体(2)の外部にある決定装置(10B)と接続可能な通信装置(8)をさらに備える。前記処理装置(5B)は、前記圧力センサ(3)で測定された前記座面(21a)の圧力分布を示す圧力分布情報を前記通信装置(8)から前記決定装置(10B)に送信する。前記決定装置(10B)は、前記処理装置(5B)から受信した前記圧力分布情報が示す前記座面(21a)の圧力分布に基づいて前記現在の姿勢を決定し、前記現在の姿勢を示す姿勢情報を生成して前記処理装置(5B)に送信する。前記処理装置(5B)は、前記通信装置(8)を通じて前記決定装置(10B)から受信した前記姿勢情報が示す前記現在の姿勢に基づいて、前記複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値を算出する蓄積値算出処理(S54)を実行する。この態様は、処理装置(5B)の演算負荷を軽減できる。
【0185】
第8の態様は、第7の態様に基づく椅子(1B)である。第8の態様において、前記決定装置(10B)は、前記姿勢情報が示す前記現在の姿勢に基づいて前記複数の対象の筋肉にかかる負荷を決定し、前記複数の対象の筋肉にかかる負荷を示す筋肉負荷情報を生成して前記処理装置(5B)に送信する。前記処理装置(5B)は、前記通信装置(8)を通じて前記決定装置(10B)から受信した前記筋肉負荷情報が示す前記複数の対象の筋肉にかかる負荷に基づいて前記蓄積値算出処理(S54)を実行する。この態様は、処理装置(5B)の演算負荷を軽減できる。
【0186】
第9の態様は、第1又は第2の態様に基づく椅子(1B)である。第9の態様において、前記椅子(1B)は、前記椅子本体(2)の外部にある決定装置(10B)と接続可能な通信装置(8)をさらに備える。前記処理装置(5B)は、前記圧力センサ(3)で測定された前記座面(21a)の圧力分布に基づいて前記現在の姿勢を決定する姿勢決定処理(S12)を実行し、前記姿勢決定処理(S12)で決定された前記現在の姿勢を示す姿勢情報を前記通信装置(8)から前記決定装置(10B)に送信する。前記決定装置(10B)は、前記処理装置(5B)から受信した前記姿勢情報が示す前記現在の姿勢に基づいて前記複数の対象の筋肉にかかる負荷を決定し、前記複数の対象の筋肉にかかる負荷を示す筋肉負荷情報を生成して前記処理装置(5B)に送信する。前記処理装置(5B)は、前記通信装置(8)を通じて前記決定装置(10B)から受信した前記筋肉負荷情報が示す前記複数の対象の筋肉にかかる負荷に基づいて、前記複数の対象の筋肉にかかる負荷の蓄積値を算出する蓄積値算出処理(S14)を実行する。この態様は、処理装置(5B)の演算負荷を軽減できる。
【0187】
第10の態様は、第1~第9の態様のいずれか一つに基づく椅子(1;1A;1B)である。第10の態様において、前記目標の姿勢は、前記複数の対象の筋肉のうち前記特定の対象の筋肉とは別の対象の筋肉に前記特定の対象の筋肉よりも大きな負荷がかかる姿勢である。この態様は、座面(21a)に座る人(P)の対象部位の疲労を軽減できる可能性が向上する。
【0188】
第11の態様は、第1~第10の態様のいずれか一つに基づく椅子(1;1A;1B)である。第11の態様において、前記目標の姿勢は、時間とともに前記特定の対象の筋肉の疲労が軽減される姿勢である。この態様は、座面(21a)に座る人(P)の対象部位の疲労を軽減できる可能性が向上する。
【0189】
第12の態様は、第1~第11の態様のいずれか一つに基づく椅子(1;1A;1B)である。第12の態様において、前記変更装置(4;4C;4D)は、前記座面(21a)の向きに対する前記背もたれ(22)の背面(22a)の向きと前記背もたれ(22)の背面(22a)自体の形状との少なくとも一方を変更することによって、前記座面(21a)に対する前記背もたれ(22)の背面(22a)の形状を変更する。この態様は、座面(21a)に座る人(P)の対象部位の疲労を軽減できる可能性が向上する。
【0190】
第13の態様は、第12の態様に基づく椅子(1;1A;1B)である。第13の態様において、前記変更装置(4;4C;4D)は、水平面に対応する面と鉛直面に対応する面との少なくとも一方において前記座面(21a)の向きに対する前記背もたれ(22)の背面(22a)の向きを変更する駆動装置(42;42D)を備える。この態様は、座面(21a)に座る人(P)の対象部位の疲労を軽減できる可能性が向上する。
【0191】
第14の態様は、第12又は第13の態様に基づく椅子(1;1A;1B)である。第14の態様において、前記変更装置(4;4C;4D)は、前記背面(22a)の上端部、下端部、左端部及び右端部の少なくとも一つを前後方向に移動させる駆動装置(42;42D;43C;43D)を備える。この態様は、座面(21a)に座る人(P)の対象部位の疲労を軽減できる可能性が向上する。
【0192】
第15の態様は、第1~第14の態様のいずれか一つに基づく椅子(1;1A;1B)である。第15の態様において、前記対象部位は、前記人(P)の腰と背中の少なくとも一方を含む。この態様は、座面(21a)に座る人(P)の腰の疲労を軽減できて、腰痛の防止又は腰痛の悪化の防止が図れる。
【0193】
上記の第2~第15の態様は任意の要素であり、必ずしも必須ではない。
【産業上の利用可能性】
【0194】
本開示は、椅子に関する。具体的には、背もたれを有する椅子に、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0195】
1,1A,1B 椅子
2 椅子本体
21a 座面
22 背もたれ
22a 背面
3 圧力センサ
4,4C,4D 変更装置
5,5A,5B 処理装置
7 筋肉負荷センサ
8 通信装置
10B 決定装置
P 人
S12,S42 姿勢決定処理
S13 筋肉負荷決定処理
S14,S44,S54 蓄積値算出処理
S16,S46,S56 誘導処理
S19,S49,S65 再誘導処理
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19