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特開2023-49666半導体装置、電池監視システム、測定方法、及び均等化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049666
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】半導体装置、電池監視システム、測定方法、及び均等化方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20230403BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20230403BHJP
【FI】
G01R19/00 B
H02J7/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159540
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 敬紹
【テーマコード(参考)】
2G035
5G503
【Fターム(参考)】
2G035AA01
2G035AA20
2G035AB03
2G035AC01
2G035AD03
2G035AD10
2G035AD20
2G035AD28
2G035AD47
2G035AD56
5G503BA03
5G503BB01
5G503BB02
5G503FA06
5G503GA01
5G503HA01
(57)【要約】
【課題】昇圧回路の負荷の増加を抑制して、電圧測定精度を向上することができる。
【解決手段】電池監視システムの電池監視IC20は、電源電圧又は昇圧電圧により駆動され、かつ、組電池14の電池セルVcの何れか一つの一端に入力端子が接続される第1バッファアンプ30,第2バッファアンプ32を備える。制御部22は、第1バッファアンプ30,第2バッファアンプ32の入力端子に接続する電池セルVcを選択する。制御部22は、上位の電池セルVcが選択された場合、第1バッファアンプ30,第2バッファアンプ32を駆動するための電圧を、昇圧電圧に切り替え、上位の電池セル以外の電池セルVcが選択された場合、第1バッファアンプ30,第2バッファアンプ32を駆動するための電圧を、電源電圧に切り替える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧又は前記電源電圧より高い昇圧電圧により駆動され、かつ、複数の電池セルが直列に接続された組電池の前記複数の電池セルの何れか一つの一端に入力端子が接続されるバッファアンプと、
前記複数の電池セルから、前記バッファアンプの入力端子に接続する前記電池セルを選択する選択部と、
前記選択部により上位の電池セルが選択された場合、前記バッファアンプを駆動するための電圧を、前記昇圧電圧に切り替え、前記選択部により上位の電池セル以外の電池セルが選択された場合、前記バッファアンプを駆動するための電圧を、前記電源電圧に切り替える切替部と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記バッファアンプは、
前記電源電圧により駆動される第1トランジスタと、
前記昇圧電圧により駆動される第2トランジスタと、を含んで構成され、
前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタの各々のドレインが、出力端子に接続されている請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
複数の電池セルが直列に接続された組電池の前記複数の電池セルから、使用セルとして、少なくとも1つの電池セルを選択する選択部と、
電源電圧又は前記電源電圧より高い昇圧電圧により駆動され、かつ、前記使用セルとして選択されなかった前記電池セルを、不使用セルとするためのスイッチング素子であって、前記複数の電池セルの各々について設けられたスイッチング素子と、
を備え、
上位の電池セルについて設けられた前記スイッチング素子は、前記昇圧電圧により駆動され、
上位の電池セル以外の電池セルについて設けられた前記スイッチング素子は、前記電源電圧により駆動され、
前記選択部は、前記上位の電池セルを優先して前記使用セルとして選択する
半導体装置。
【請求項4】
複数の電池セルが直列に接続された組電池と、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の半導体装置と、
前記半導体装置に前記電池セルの電池電圧の測定を指示する診断部と、
を備えた電池監視システム。
【請求項5】
複数の電池セルが直列に接続された組電池における前記電池セルの各々の電圧を測定する測定方法であって、
前記複数の電池セルから、測定対象セルを選択し、
電源電圧又は前記電源電圧より高い昇圧電圧により駆動され、かつ、前記複数の電池セルの何れか一つに入力端子が接続される第1バッファアンプの入力端子に、前記測定対象セルの一端を接続し、
前記電源電圧又は前記昇圧電圧により駆動され、かつ、前記複数の電池セルの何れか一つに入力端子が接続される第2バッファアンプの入力端子に、前記測定対象セルの他端を接続し、
前記第1バッファアンプの出力と、前記第2バッファアンプの出力とを比較して、前記測定対象セルの電圧を測定し、

前記第1バッファアンプの入力端子に接続される電池セルが、上位の電池セルである場合、前記第1バッファアンプを駆動するための電圧を、前記昇圧電圧に切り替え、前記第1バッファアンプの入力端子に接続される電池セルが、上位の電池セル以外の電池セルである場合、前記第1バッファアンプを駆動するための電圧を、前記電源電圧に切り替え、
前記第2バッファアンプの入力端子に接続される電池セルが、上位の電池セルである場合、前記第2バッファアンプを駆動するための電圧を、前記昇圧電圧に切り替え、前記第2バッファアンプの入力端子に接続される電池セルが、上位の電池セル以外の電池セルである場合、前記第2バッファアンプを駆動するための電圧を、前記電源電圧に切り替える
測定方法。
【請求項6】
複数の電池セルが直列に接続された組電池における前記電池セルの各々の電圧を均等化する均等化方法であって、
前記複数の電池セルから、使用セルとして、少なくとも1つの電池セルを、上位の電池セルを優先して選択し、
前記使用セルとして選択されなかった前記電池セルの各々を、不使用セルとするためのスイッチング素子を、電源電圧又は前記電源電圧より高い昇圧電圧により駆動し、
測定対象の使用セルを選択し、
前記電源電圧又は前記昇圧電圧により駆動され、かつ、前記複数の電池セルの何れか一つに入力端子が接続される第1バッファアンプの入力端子に、前記測定対象の使用セルの一端を接続し、
前記電源電圧又は前記昇圧電圧により駆動され、かつ、前記複数の電池セルの何れか一つに入力端子が接続される第2バッファアンプの入力端子に、前記測定対象の使用セルの他端を接続し、
前記第1バッファアンプの出力と、前記第2バッファアンプの出力とを比較して、前記測定対象の使用セルの電圧を測定し、前記測定対象の使用セルの電圧が所定の範囲内となるように、前記測定対象の使用セルの前記スイッチング素子をオンオフさせ、

上位の電池セルについて設けられた前記スイッチング素子は、前記昇圧電圧により駆動され、
上位の電池セル以外の電池セルについて設けられた前記スイッチング素子は、前記電源電圧により駆動される均等化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、電池監視システム、測定方法、及び均等化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電池セルの監視・制御を行うための電池監視用の半導体装置がある。このような電池監視用の半導体装置として、例えば車両等に搭載される電池セルを監視・制御するための電池監視IC(Integral Circuit)が知られている。
【0003】
当該電池監視ICでは、電池セルの高電位側の電池電圧と、低電位側の電池電圧とをアナログレベルシフタ等の比較部によって比較することにより、両電圧の差分に基づいて当該電池セルの電池電圧の測定を行うものがある。ここで、電池電圧をバッファアンプを介して比較部に入力させることにより、電池電圧の測定精度を向上させることが行われている。
【0004】
この際に用いられる電池監視ICのバッファアンプを駆動する電源電圧に、監視対象の電池セルの高電位側(複数の電池セルを有する場合は最も高電位側)から入力される入力電圧を用いることがある。この場合、当該バッファアンプの出力電圧にオフセット電圧が生じ、電池電圧の測定精度が低下する場合がある。
【0005】
これに対して、特許文献1には、入力電圧と同電位からの昇圧を行う昇圧回路を備える電池監視システムが記載されている。特許文献1に記載された技術では、入力電圧と同電位からの昇圧回路で昇圧した電源電圧によってバッファアンプを駆動させることにより、当該バッファアンプの出力電圧に生じるオフセット電圧を抑制し、電池電圧の測定精度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-118055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実効電池容量の向上のため、電池監視ICには電圧測定精度の向上が要求されている。また多くの電池セルを短周期で監視するために測定の高速化が要求されている。
【0008】
ここで、回路の高速化、高精度化には電流の増加が必要となる。また測定経路の複線化によりシステム測定サイクルの短縮や機能安全の改善を行うと、回路ブロックの増加により電流が増加する。
【0009】
昇圧電源の負荷電流増加に対応するには、昇圧回路の転送電荷の増加が必要であり、昇圧電圧幅の増加または昇圧容量の増加が必要となる。既存の回路と共用していた場合、昇圧電圧幅の変更のために、別途新たな電圧出力回路が必要となり、チップ面積の増加によりコストが上昇する。また、昇圧容量の増加のためには、外部部品コストが上昇する。また、昇圧電圧幅の増加及び昇圧容量の増加のいずれの場合にも、スイッチング素子のオン抵抗の低減が必要となり、スイッチング素子の面積増によりチップコストが上昇する。
【0010】
本発明は、上述した問題を解決するために提案されたものであり、昇圧回路の負荷の増加を抑制して、電圧測定精度を向上することができる、半導体装置、電池監視システム、測定方法、及び均等化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、第1の発明の半導体装置は、電源電圧又は前記電源電圧より高い昇圧電圧により駆動され、かつ、複数の電池セルが直列に接続された組電池の前記複数の電池セルの何れか一つの一端に入力端子が接続されるバッファアンプと、前記複数の電池セルから、前記バッファアンプの入力端子に接続する前記電池セルを選択する選択部と、前記選択部により上位の電池セルが選択された場合、前記バッファアンプを駆動するための電圧を、前記昇圧電圧に切り替え、前記選択部により上位の電池セル以外の電池セルが選択された場合、前記バッファアンプを駆動するための電圧を、前記電源電圧に切り替える切替部と、を備える。
【0012】
第2の発明の半導体装置は、複数の電池セルが直列に接続された組電池の前記複数の電池セルから、使用セルとして、少なくとも1つの電池セルを選択する選択部と、電源電圧又は前記電源電圧より高い昇圧電圧により駆動され、かつ、前記使用セルとして選択されなかった前記電池セルを、不使用セルとするためのスイッチング素子であって、前記複数の電池セルの各々について設けられたスイッチング素子と、を備え、上位の電池セルについて設けられた前記スイッチング素子は、前記昇圧電圧により駆動され、上位の電池セル以外の電池セルについて設けられた前記スイッチング素子は、前記電源電圧により駆動され、前記選択部は、前記上位の電池セルを優先して前記使用セルとして選択する。
【0013】
また、第3の発明の電池監視システムは、複数の電池セルが直列に接続された組電池と、上記の半導体装置と、前記半導体装置に前記電池セルの電池電圧の測定を指示する診断部と、を備える。
【0014】
また、本発明の測定方法は、複数の電池セルが直列に接続された組電池における前記電池セルの各々の電圧を測定する測定方法であって、前記複数の電池セルから、測定対象セルを選択し、電源電圧又は前記電源電圧より高い昇圧電圧により駆動され、かつ、前記複数の電池セルの何れか一つに入力端子が接続される第1バッファアンプの入力端子に、前記測定対象セルの一端を接続し、前記電源電圧又は前記昇圧電圧により駆動され、かつ、前記複数の電池セルの何れか一つに入力端子が接続される第2バッファアンプの入力端子に、前記測定対象セルの他端を接続し、前記第1バッファアンプの出力と、前記第2バッファアンプの出力とを比較して、前記測定対象セルの電圧を測定し、前記第1バッファアンプの入力端子に接続される電池セルが、上位の電池セルである場合、前記第1バッファアンプを駆動するための電圧を、前記昇圧電圧に切り替え、前記第1バッファアンプの入力端子に接続される電池セルが、上位の電池セル以外の電池セルである場合、前記第1バッファアンプを駆動するための電圧を、前記電源電圧に切り替え、前記第2バッファアンプの入力端子に接続される電池セルが、上位の電池セルである場合、前記第2バッファアンプを駆動するための電圧を、前記昇圧電圧に切り替え、前記第2バッファアンプの入力端子に接続される電池セルが、上位の電池セル以外の電池セルである場合、前記第2バッファアンプを駆動するための電圧を、前記電源電圧に切り替える。
【0015】
また、本発明の均等化方法は、複数の電池セルが直列に接続された組電池における前記電池セルの各々の電圧を均等化する均等化方法であって、前記複数の電池セルから、使用セルとして、少なくとも1つの電池セルを、上位の電池セルを優先して選択し、前記使用セルとして選択されなかった前記電池セルの各々を、不使用セルとするためのスイッチング素子を、電源電圧又は前記電源電圧より高い昇圧電圧により駆動し、測定対象の使用セルを選択し、前記電源電圧又は前記昇圧電圧により駆動され、かつ、前記複数の電池セルの何れか一つに入力端子が接続される第1バッファアンプの入力端子に、前記測定対象の使用セルの一端を接続し、前記電源電圧又は前記昇圧電圧により駆動され、かつ、前記複数の電池セルの何れか一つに入力端子が接続される第2バッファアンプの入力端子に、前記測定対象の使用セルの他端を接続し、前記第1バッファアンプの出力と、前記第2バッファアンプの出力とを比較して、前記測定対象の使用セルの電圧を測定し、前記測定対象の使用セルの電圧が所定の範囲内となるように、前記測定対象の使用セルの前記スイッチング素子をオンオフさせ、上位の電池セルについて設けられた前記スイッチング素子は、前記昇圧電圧により駆動され、上位の電池セル以外の電池セルについて設けられた前記スイッチング素子は、前記電源電圧により駆動される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、昇圧回路の負荷の増加を抑制して、電圧測定精度を向上することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施の形態に係る電池監視ICの一例の回路図である。
図2】第1バッファアンプ及び第2バッファアンプの出力端子側の内部回路の具体的一例の回路図である。
図3】本実施の形態の電池監視ICにおける電池電圧診断処理の流れの一例のフローチャートである。
図4】第2の実施の形態に係る電池監視ICの部分回路の一例の回路図である。
図5】第2の実施の形態の電池監視ICにおける電池電圧均等化処理の流れの一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本実施の形態の電池監視システム及び電池監視用の半導体装置(以下、「電池監視IC」という)について詳細に説明する。本実施の形態の電池監視システム(電池監視IC)は、電池LSI(組電池等)を使用する製品に適用可能であり、このような製品としては、パーソナルコンピュータ、車、自動二輪車、及び電動工具等が挙げられる。
【0019】
[第1の実施の形態]
本実施の形態の電池監視IC20の詳細な構成について説明する。図1には、本実施の形態の組電池14、電池監視IC20、及び診断部18の一例の回路図を示す。
【0020】
組電池14は、直列に接続された5個の電池セルVc1~Vc5(総称する場合は「電池セルVc」という。)を含んでいる。電池セルVc1~Vc5は、電池セルVc1を最下段とし、電池セルVc5を最上段として直列に接続されている。電池セルVcの具体的一例としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等が挙げられる。なお、図1では、組電池14の電池セルVcの数であるn=5の場合を具体例として示しているが、組電池14に含まれる電池セルVcの数nは、特に限定されるものではない。
【0021】
電池セルVc1~Vc5の各々は、電池監視IC20に接続されている。例えば、電池監視IC20の入力端子21には、電池セルVc1の低電位側の電圧V0が入力される。また、入力端子21には、電池セルVc2の低電位側の電圧と同義である電池セルVc1の高電位側の電圧V1が入力される。
【0022】
さらに、電池監視IC20の電源端子23には、電池セルVc5の高電位側が接続されている。
【0023】
電池監視IC20は、制御部22、昇圧部50、セル選択SW26、比較部28、第1バッファアンプ30、及び第2バッファアンプ32を備えている。制御部22が、切替部の一例である。
【0024】
昇圧部50は、電源端子23から一端に入力された電源電圧VCCを昇圧した昇圧電圧VCCUPを他端から出力する機能を有する。昇圧部50は、昇圧回路24を備える。昇圧部50の一端には、電源端子23を介して組電池14の最高電位に応じた電源電圧VCCが入力される。昇圧回路24は、電源電圧VCCを昇圧電圧VCCUP(VCC<VCCUP)に昇圧する。昇圧部50は、昇圧回路24により昇圧された昇圧電圧VCCUPを他端から第1バッファアンプ30、32に供給する機能を有する。本実施の形態の昇圧部50は、具体例として、一端に入力された電源電圧VCCを5Vほど昇圧した昇圧電圧VCCUP(VCC+5=VCCUP)を他端から出力する。また、電源電圧VCCも、第1バッファアンプ30、32に供給される。
【0025】
セル選択SW26は、スイッチング素子SW0、SW1_1、SW1_2、SW2_1、SW2_2、SW3_1、SW3_2、SW4_1、SW4_2、SW5を備える。以下では、セル選択SW26が備えるこれらのスイッチング素子を総称する場合は、「セル選択SW26のスイッチング素子SW」という。
【0026】
セル選択SW26のスイッチング素子SWは、制御部22から出力された制御信号により、オンまたはオフされる。スイッチング素子SW1_2、SW2_2、SW3_2、SW4_2、SW5の各々は、オン状態の場合に入力端子21~21と、第1バッファアンプ30の非反転入力端子と、を接続する。また、スイッチング素子SW0、SW1_1、SW2_1、SW3_1、SW4_1の各々は、オン状態の場合に入力端子21~21と、第2バッファアンプ32の非反転入力端子と、を接続する。
【0027】
第1バッファアンプ30の非反転入力端子には、セル選択SW26が接続されている。また、第2バッファアンプ32の非反転入力端子には、セル選択SW26が接続されている。
【0028】
比較部28は、抵抗素子R1、R2、R3、R4と、アンプ40と、入力部60、62と、出力部64と、を備える。
【0029】
アンプ40の非反転入力端子には、第1バッファアンプ30の出力端子が接続されており、第1バッファアンプ30から出力された電圧が抵抗素子R1を介して入力される。抵抗素子R2は、一方の端子がアンプ40の非反転入力端子と抵抗素子R1との間に接続され、他方の端子がGND(基準電位VSS)に接続されている。また、アンプ40の反転入力端子には、第2バッファアンプ32の出力端子が接続されており、第2バッファアンプ32から出力された電圧が、抵抗素子R3を介して入力される。さらに、アンプ40の出力端子と反転入力端子とは、抵抗素子R4を介して接続されている。
【0030】
比較部28からは、第1バッファアンプ30の出力端子から出力された電圧と第2バッファアンプ32から出力された電圧との差に応じた出力Voutが、出力端子41を介して診断部18に出力される。
【0031】
図2に、第1バッファアンプ30、32の出力端子側の内部回路を示す。第1バッファアンプ30、32の出力端子側の内部回路は同一構成である。図2に示すように、第1バッファアンプ30、32の出力端子300に、NMOSトランジスタM0、電源電圧VCCを電源とするPMOSトランジスタM1、及び昇圧電圧VCCUPを電源とするPMOSトランジスタM2の各々のドレインが接続されている。PMOSトランジスタM1が、第1トランジスタの一例であり、PMOSトランジスタM2が、第2トランジスタの一例である。
【0032】
PMOSトランジスタM1、M2の何れか一方のみが動作する。PMOSトランジスタM1、M2の何れを動作させるかが、制御部22から出力された制御信号により切り替えられる。
【0033】
PMOSトランジスタM2を動作させる場合には、PMOSトランジスタM1をパワーダウンさせる。一方、PMOSトランジスタM1を動作させる場合には、PMOSトランジスタM2をパワーダウンさせる。
【0034】
次に、本実施の形態の電池監視IC20の動作について説明する。
【0035】
まず、本実施の形態の電池監視IC20による電池セルVc1~Vc5の電池電圧の診断について説明する。診断を行うタイミングは特に限定されないが、例えば、予め定められたタイミング毎に定期的に行ってもよい。
【0036】
本実施の形態の電池監視システムの診断部18では、電池セルVc1~Vc5の各々を測定対象として電池電圧の測定が行われる。
【0037】
診断部18における電池電圧診断処理の流れの一例を図3に示す。電池電圧診断処理は、電池セルVc1~Vc5の各々を測定対象として繰り返し行われる。
【0038】
ステップS100では、制御部22から出力される制御信号により、測定対象の電池セルVc1~Vc5のうちの測定対象となる電池セルに応じて、セル選択SW26のスイッチング素子SWのオンオフを制御する。例えば、電池セルVc2の電圧値(V2-V1=Vc2)を測定する場合、セル選択SW26のスイッチング素子SW1_1及びSW2_2がオン状態になり、その他のスイッチング素子SWがオフ状態になる。また、電池セルVc5の電圧値(V5-V4=Vc5)を測定する場合、セル選択SW26のスイッチング素子SW4_1及びSW5がオン状態になり、その他のスイッチング素子SWがオフ状態になる。
【0039】
次のステップS102では、制御部22から出力される制御信号により、第1バッファアンプ30の駆動電圧を切り替える。例えば、上位の電池セル(例えば、電池セルVc4又は電池セルVc5)の電圧値を測定する場合、PMOSトランジスタM2を動作させることにより、第1バッファアンプ30の駆動電圧を、昇圧電圧VCCUPに切り換える。上位の電池セル以外の電池セル(例えば、電池セルVc1~電池セルVc3)の電圧値を測定する場合、PMOSトランジスタM1を動作させることにより、第1バッファアンプ30の駆動電圧を、電源電圧VCCに切り換える。
【0040】
次のステップS104では、制御部22から出力される制御信号により、第2バッファアンプ32の駆動電圧を切り替える。例えば、上位の電池セル(例えば、電池セルVc4又は電池セルVc5)の電圧値を測定する場合、PMOSトランジスタM2を動作させることにより、第2バッファアンプ32の駆動電圧を、昇圧電圧VCCUPに切り換える。上位の電池セル以外の電池セル(例えば、電池セルVc1~電池セルVc3)の電圧値を測定する場合、PMOSトランジスタM2を動作させることにより、第2バッファアンプ32の駆動電圧を、電源電圧VCCに切り換える。
【0041】
次のステップS106では、出力Voutを測定する。
【0042】
比較部28のアンプ40の非反転入力端子には、第1バッファアンプ30から出力された電圧が入力される。一方、アンプ40の反転入力端子には、第2バッファアンプ32から出力された電圧が入力される。
【0043】
従って、アンプ40からは、第1バッファアンプ30から出力された電圧と、第2バッファアンプ32から出力された電圧との差分に応じた電圧が出力Voutとして診断部18に出力される。例えば、電池セルVc5の電圧値を測定する場合、第1バッファアンプ30から出力された電圧V5と、第2バッファアンプ32から出力された電圧V4との差分に応じた電圧が出力Voutとして診断部18に出力される。診断部18は出力Voutを測定する。
【0044】
次のステップS108では、出力Voutが所定の範囲内であるか否かを判断する。例えば、測定対象の電池セルの電圧が正常である場合、出力Voutは、測定対象の電池セルとして予め定められた電圧になる。そこで、実験等により得られた許容範囲を加味して、出力Voutが、測定対象の電池セルとして予め定められた電圧から所定の範囲内の場合は、測定対象の電池セルの電圧が正常であると診断部18が判断する。
【0045】
出力Voutが所定の範囲内の場合は、肯定判定となりステップS110へ移行する。ステップS110で診断部18は、測定対象の電池セルの電圧が正常であると診断した後、本電池電圧診断処理を終了する。
【0046】
一方、出力Voutが所定の範囲内ではない(範囲外)場合は、否定判定となりステップS112へ移行する。ステップS112で診断部18は、測定対象の電池セルの電圧が異常であると診断した後、本電池電圧診断処理を終了する。
【0047】
このように、本実施の形態の電池監視ICによれば、複数の電池セルから、第1バッファアンプ及び第2バッファアンプの入力端子に接続する電池セルを選択し、上位の電池セルが選択された場合、第1バッファアンプ及び第2バッファアンプを駆動するための電圧を、昇圧電圧に切り替え、上位の電池セル以外の電池セルが選択された場合、第1バッファアンプ及び第2バッファアンプを駆動するための電圧を、電源電圧に切り替える。これにより、昇圧回路の負荷の増加を抑制して、電圧測定精度を向上することができる。
【0048】
また、バッファアンプを駆動するための電圧を、時分割で切り替えることにより、昇圧電圧の使用時間を限定することで、昇圧回路への平均負荷電流を軽減し、昇圧回路への要求特性を最小化することができる。これにより、昇圧回路の必要能力を低減し面積を削減することができる。
【0049】
また、測定対象として選択する電池セルに応じて、駆動する電圧として、電源電圧と昇圧電圧を使い分ける。バッファアンプについて、駆動するための電圧として、組電池の最高位電位に応じた電源電圧を用いて、出力電圧の精度が悪化するのは、出力電圧及び入力電位が電源電圧に近い場合のみであり選択セルが上位側の電池セルのときである。選択セルが下位側の電池セルのときは、電源電圧を、駆動する電圧として用いても問題ない。従って、選択セルに応じて、駆動する電圧を切り替えることで、昇圧電圧を供給するセルを限定し、全ての電池セルを連続して測定する場合における昇圧回路の平均負荷電流を低減することができる。
【0050】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係る電池監視ICについて説明する。第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
第2の実施の形態では、組電池のうちの使用セルを選択できる点と、使用セルの電圧の均等化処理を行う点とが、第1の実施の形態と異なっている。
【0052】
図4には、本実施の形態の組電池214及び電池監視IC20の一部の回路図を示す。
【0053】
電池監視IC20のセル選択SW26と、組電池214との間に、均等化NMOS224が設けられている。
【0054】
図示を省略するが、電池監視IC20は、第1の実施の形態と同様に、制御部22、昇圧部50、比較部28、第1バッファアンプ30、及び第2バッファアンプ32を更に備えている。制御部22が、選択部の一例である。
【0055】
組電池214は、直列に接続された10個の電池セルVc1~Vc14(総称する場合は「電池セルVc」という。)を含んでいる。電池セルVc1~Vc14は、電池セルVc1を最下段とし、電池セルVc14を最上段として直列に接続されている。図4では、組電池214の電池セルVcの数が14である場合を具体例として示しているが、組電池214に含まれる電池セルVcの数は、特に限定されるものではない。
【0056】
電池セルVc1~Vc14の各々は、電池監視IC20に接続されている。例えば、電池監視IC20の入力端子21には、電池セルVc1の低電位側の電圧V0が入力される。また、入力端子21には、電池セルVc2の低電位側の電圧と同義である電池セルVc1の高電位側の電圧V1が入力される。
【0057】
セル選択SW226は、スイッチング素子SW0、SW1_1、SW1_2、SW2_1、SW2_2、・・・、SW13_1、SW13_2、SW14を備える。以下では、セル選択SW226が備えるこれらのスイッチング素子を総称する場合は、「セル選択SW226のスイッチング素子SW」という。
【0058】
セル選択SW226のスイッチング素子SWは、制御部22から出力された制御信号により、オンまたはオフされる。スイッチング素子SW1_1、SW2_1、・・・、SW13_1、SW14の各々は、オン状態の場合に入力端子21~2114と、第1バッファアンプ30の非反転入力端子と、を接続する。また、スイッチング素子SW0、SW1_2、SW2_2、・・・、SW13_2の各々は、オン状態の場合に入力端子21~2113と、第2バッファアンプ32の非反転入力端子と、を接続する。
【0059】
均等化NMOS224は、電源電圧又は昇圧電圧により駆動され、かつ、使用セルとして選択されなかった電池セルを、不使用セルとするためのNMOSトランジスタN1~N14(総称する場合は「NMOSトランジスタN」という。)を含んでいる。NMOSトランジスタN1~N14は、電池セルVc1~Vc14に対応して設けられている。NMOSトランジスタN1~N14は、電池セルを不使用セルとするためのスイッチング素子の一例である。
【0060】
本実施の形態では、上位の電池セル(例えば、電池セルVc13~Vc14)に対して、昇圧電圧VCCUPによりNMOSトランジスタNを駆動し、上位の電池セル以外の電池セル(例えば、電池セルVc1~Vc12)に対して、電源電圧VCCによりNMOSトランジスタNを駆動する。また、使用しない電池セルVcに対応するNMOSトランジスタNを駆動することにより、使用しない電池セルVcの両端子間を短絡する。例えば、電池セルVcn~Vcmを不使用セルとする場合には、NMOSトランジスタNn~Nmを駆動し、電池セルVcn-1とVcm+1とを接続するように短絡する。なお、電池監視IC20外部で同電位になっているため、対応するNMOSトランジスタNにより、使用しない電池セルVcの両端子間を短絡しなくても良い。
【0061】
制御部22は、上位の電池セルVcを優先して使用セルとして選択する。
【0062】
ここで、制御部22により上位の電池セルを優先して使用セルとして選択する理由について説明する。
【0063】
電池セルVcのセル電圧の均等化に際し、最上位の電池セルVc14の両端子間をNMOSトランジスタN14で短絡する場合、ソース側が電源電圧に近くなり、NMOSトランジスタN14をオンするゲート電圧として電源電圧では不足するため、昇圧電圧が必要となる。下位の電池セルの両端子間をNMOSトランジスタNで短絡する場合には電源電圧で足りるため、昇圧電圧が必要とされるのは最上位の電池セル及び近傍の電池セルとなる。
【0064】
また、使用セル数を可変にし、使用セル数が少ない設定である場合、上位側から非使用セルとして両端子間を短絡すると、その選択数に応じて、駆動するNMOSトランジスタNの数が増えるため、昇圧電源の負荷電流は大きくなる。
【0065】
例えば、上位2つの電池セルの両端子間を短絡する際に昇圧電圧が必要で、使用セル数が7~14の間で可変の場合、上位2つの電池セルを非使用セルとして両端子間を短絡すると、昇圧電源の負荷電流は大きくなる。
【0066】
そこで、本実施の形態では、制御部22は、上位の電池セルを優先して使用セルとして選択する。例えば、使用セル数が可変で使用セル数が少ない設定とする場合は、電源電圧VCCをNMOSトランジスタの駆動電源とする中間の電池セル(例えば、電池セルVcm~Vcn)の各々の両端子間を短絡する。
【0067】
また、使用セルの電池電圧を均等化する場合には、対応するNMOSトランジスタNのオンオフにより、使用セルの電池電圧が所定範囲内になるように調整する。
【0068】
次に、本実施の形態の電池監視IC20の動作について説明する。
【0069】
まず、本実施の形態の電池監視IC20による電池セルVc1~Vc14の電池電圧の均等化について説明する。均等化を行うタイミングは特に限定されないが、例えば、予め定められたタイミング毎に定期的に行ってもよい。
【0070】
本実施の形態の電池監視システムの診断部18における電池電圧均等化処理の流れの一例を図5に示す。ここで、使用セル数が設定されているものとする。なお、第1の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0071】
ステップS200では、制御部22から出力される制御信号により、使用セル数に応じて、上位の電池セルVcを優先して、使用セルとして選択し、不使用セルに対応するNMOSトランジスタNをオンさせる。このとき、上位の電池セルVc以外の電池セルVcが不使用セルとなる場合には、電源電圧VCCにより、対応するNMOSトランジスタNが駆動される。また、上位の電池セルVcも不使用セルとなる場合には、昇圧電圧VCCUPにより、対応するNMOSトランジスタNが駆動される。
【0072】
ステップS100では、制御部22から出力される制御信号により、使用セルのうちの測定対象となる電池セルVcに応じて、セル選択SW226のスイッチング素子SWのオンオフを制御する。
【0073】
次のステップS102では、制御部22から出力される制御信号により、第1バッファアンプ30の駆動電圧を切り替える。
【0074】
次のステップS104では、制御部22から出力される制御信号により、第2バッファアンプ32の駆動電圧を切り替える。
【0075】
次のステップS106では、出力Voutを測定する。
【0076】
次のステップS108では、出力Voutが所定の範囲内であるか否かを判断する。出力Voutが所定の範囲内の場合は、肯定判定となりステップS204へ移行する。一方、出力Voutが所定の範囲内ではない(範囲外)場合は、否定判定となりステップS202へ移行する。
【0077】
ステップS202で、診断部18は、測定対象の電池セルVcの電圧に応じて、制御部22から制御信号を出力し、測定対象の電池セルVcに対応するNMOSトランジスタNのオンオフにより、測定対象の電池セルVcの電池電圧が所定範囲内になるように調整する。
【0078】
ステップS204で、診断部18は、全ての使用セルを測定対象として上記ステップS100~S202の処理を実行したか否かを判定する。上記ステップS100~S202の処理を実行していない使用セルが存在する場合には、当該使用セルを測定対象として上記ステップS100へ戻る。
【0079】
一方、全ての使用セルを測定対象として上記ステップS100~S202の処理を実行した場合には、本電池電圧均等化処理を終了する。
【0080】
このように、本実施の形態の電池監視ICによれば、組電池から、使用セルとして、上位の電池セルを優先して選択し、上位の電池セルについて設けられた、不使用セルとするためのスイッチング素子は、昇圧電圧により駆動され、上位の電池セル以外の電池セルについて設けられた、不使用セルとするためのスイッチング素子は、電源電圧により駆動される。これにより、昇圧回路の負荷の増加を抑制して、電圧測定精度を向上することができる、
【0081】
また、電池電圧均等化処理では、通常のセル電圧測定動作及び通常のセル均等化動作を行う。ここで、セル数を可変とし、不使用にするための、かつ、電池電圧均等化のためのNMOSトランジスタのうち、上位の電池セルに対するNMOSトランジスタのみ、昇圧電圧で駆動し、使用セルとして、上位の電池セルを優先して選択する。この構成において、使用セル数を少なく設定するときに、電源電圧で駆動されるNMOSトランジスタに対応する中間の電池セルを非使用とすることで、昇圧電圧で駆動するNMOSトランジスタに対応する最上位セル近傍の電池セルのうち、非使用とする電池セルを必要最小限のセルに限定する。これにより、昇圧電圧の使用時間を限定することで、昇圧回路への平均負荷電流を軽減し、昇圧回路への要求特性を最小化することができる。
【符号の説明】
【0082】
14 組電池
18 診断部
20 電池監視IC
22 制御部
24 昇圧回路
26,226 セル選択SW
28 比較部
30 第1バッファアンプ
32 第2バッファアンプ
50 昇圧部
214 組電池
224 均等化NMOS
300 出力端子
M0 NMOSトランジスタ
M1、M2 PMOSトランジスタ
N,N1~N14 NMOSトランジスタ
SW0,SW1_1,SW1_2~SW14 スイッチング素子
VCC 電源電圧
VCCUP 昇圧電圧
Vc,Vc1~Vc14 電池セル
図1
図2
図3
図4
図5