(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049743
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】流体フィルター装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 35/30 20060101AFI20230403BHJP
B29C 65/16 20060101ALI20230403BHJP
B01D 46/42 20060101ALI20230403BHJP
B29C 65/02 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
B01D35/30
B29C65/16
B01D46/42 Z
B29C65/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159675
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】肥後谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 皓太
(72)【発明者】
【氏名】大宅 翼
(72)【発明者】
【氏名】綿芝 良企
【テーマコード(参考)】
4D058
4D116
4F211
【Fターム(参考)】
4D058JA12
4D058JA19
4D058KA13
4D058LA01
4D116AA22
4D116BB01
4D116BC01
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4D116BC77
4D116DD02
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4F211AD16
4F211AD25
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4F211TD07
4F211TD08
4F211TD09
4F211TN22
4F211TN27
4F211TQ05
(57)【要約】
【課題】目が細かく腰のないフィルターであっても狙い通りに配設して高い濾過性能を確保するとともに、ケース半体同士の高い溶着強度を確保し、さらにs気密性に優れた流体フィルター装置を安価にかつ容易に製造できるようにする。
【解決手段】第1ケース半体10の第1溶着フランジ13上にフィルターシート材Fを張架し、第1内側溶着面14aにフィルターシート材Fを仮止めする。フィルターシート材Fにおける第1内側溶着面14aと第1外側溶着面15aとの間に対応する部位を切断することにより、第1内側溶着面14aに仮止めされたフィルターシートを得るとともに残りのフィルターシート材Fを取り除く。第1ケース半体10の第1溶着フランジ13と、第2ケース半体の第2溶着フランジとを重ね合わせて溶着する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体フィルター装置の筒状ケースを構成する第1ケース半体と第2ケース半体との間にフィルターシートを挟み、両ケース半体を溶着してなる流体フィルター装置の製造方法であって、
前記筒状ケースの内側に位置する第1内側溶着面と、該第1内側溶着面よりも前記筒状ケースの外側に位置する第1外側溶着面とを有する第1溶着フランジを備えた前記第1ケース半体と、前記筒状ケースの内側に位置する第2内側溶着面と、該第2内側溶着面よりも前記筒状ケースの外側に位置する第2外側溶着面とを有する第2溶着フランジを備えた前記第2ケース半体とを用意する準備工程と、
前記第1ケース半体の前記第1溶着フランジ上にフィルターシート材を張架し、前記第1内側溶着面に前記フィルターシート材を仮止めする仮止め工程と、
前記フィルターシート材における前記第1内側溶着面と前記第1外側溶着面との間に対応する部位を切断することにより、前記第1内側溶着面に仮止めされた前記フィルターシートを得るとともに残りの前記フィルターシート材を取り除く除去工程と、
前記第1ケース半体の前記第1溶着フランジと、前記第2ケース半体の前記第2溶着フランジとを重ね合わせ、前記第1外側溶着面と前記第2外側溶着面とを溶着するとともに、前記第1内側溶着面と前記第2内側溶着面とを溶着する溶着工程とを備えている流体フィルター装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の流体フィルター装置の製造方法において、
前記仮止め工程では、前記第1内側溶着面に前記フィルターシート材をレーザー溶着することによって仮止めする流体フィルター装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流体フィルター装置の製造方法において、
前記準備工程では、前記第1溶着フランジの前記第1内側溶着面と前記第1外側溶着面との間に段落ち部を有する前記第1ケース半体を用意し、
前記除去工程では、前記フィルターシート材を前記段落ち部に沿って切断する流体フィルター装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の流体フィルター装置の製造方法において、
前記準備工程では、前記第1溶着フランジの前記第1内側溶着面と前記第1外側溶着面との間の溝で前記段落ち部が構成されるとともに、前記第1内側溶着面と前記第1外側溶着面とが同一高さに設けられた前記第1ケース半体を用意する流体フィルター装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、各種流体を濾過する流体フィルター装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種流体を濾過する流体フィルター装置として、例えば特許文献1に開示されているように、流体が流入する流入口が形成された樹脂製の第1ケース半体と、流体が流出する流出口が形成された樹脂製の第2ケース半体と、両ケース半体の間に挟み込まれたシート状のフィルターとを備えたものが知られている。
【0003】
この流体フィルター装置の製造時には、まず、所定の形状に裁断されたフィルターと、両ケース半体とを用意する。その後、フィルターの周縁部を両ケース半体の接合面で挟み込んだ後、両接合面の近傍にケースの外側からレーザー光を照射して樹脂を溶融させる。溶融した樹脂が固化することで、フィルターが挟み込まれた状態で両ケース半体が一体化され、流体フィルター装置が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば必要な濾過性能を確保するためにフィルターの目を細かくすると、フィルターが柔らかくなり、いわゆる腰のないフィルターとなる。腰のないフィルターは、外力を加えなくても、自重によって容易に変形してしまい、所定の形状を維持するのが困難である。このような腰のないフィルターを特許文献1の両ケース半体の接合面にセットしようとすると、フィルター自体の変形によって当該フィルターの周縁部が接合面からずれてしまったり、フィルターにシワが発生し易くなる。フィルターの周縁部が接合面からずれてしまうと、フィルターを通過せずに下流側へ流れてしまう流体が発生して濾過性能の低下を招き、また、フィルターにシワが発生することによっても同様に濾過性能の低下を招く。
【0006】
また、特許文献1において、仮に両ケース半体の接合面の間にフィルターが介在してしまうと、フィルターが溶着時の邪魔になり、当該フィルターの存在によって両ケース半体の溶着強度が低下したり、ケースの気密性が低下するおそれもあった。
【0007】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、目が細かく腰のないフィルターであっても狙い通りに配設して高い濾過性能を確保するとともに、ケース半体同士の高い溶着強度を確保し、さらに気密性に優れた流体フィルター装置を安価にかつ容易に製造できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の第1の構成では、流体フィルター装置の筒状ケースを構成する第1ケース半体と第2ケース半体との間にフィルターシートを挟み、両ケース半体を溶着してなる流体フィルター装置の製造方法を前提とする。流体フィルター装置の製造方法は、前記筒状ケースの内側に位置する第1内側溶着面と、該第1内側溶着面よりも前記筒状ケースの外側に位置する第1外側溶着面とを有する第1溶着フランジを備えた前記第1ケース半体と、前記筒状ケースの内側に位置する第2内側溶着面と、該第2内側溶着面よりも前記筒状ケースの外側に位置する第2外側溶着面とを有する第2溶着フランジを備えた前記第2ケース半体とを用意する準備工程と、前記第1ケース半体の前記第1溶着フランジ上にフィルターシート材を張架し、前記第1内側溶着面に前記フィルターシート材を仮止めする仮止め工程と、前記フィルターシート材における前記第1内側溶着面と前記第1外側溶着面との間に対応する部位を切断することにより、前記第1内側溶着面に仮止めされた前記フィルターシートを得るとともに残りの前記フィルターシート材を取り除く除去工程と、前記第1ケース半体の前記第1溶着フランジと、前記第2ケース半体の前記第2溶着フランジとを重ね合わせ、前記第1外側溶着面と前記第2外側溶着面とを溶着するとともに、前記第1内側溶着面と前記第2内側溶着面とを溶着する溶着工程とを備えている。
【0009】
この構成によれば、流体フィルター装置が備えているフィルターシートよりも大きなフィルターシート材を事前に用意し、このフィルターシート材を第1ケース半体の第1内側溶着面に仮止めできる。これにより、後工程で、フィルターシート材における第1内側溶着面と第1外側溶着面との間に対応する部位を切断して所定形状のフィルターシートを得た時、そのフィルターシートの変形が抑制されるとともに、フィルターシートの第1内側溶着面からのずれが抑制される。そして、第1溶着フランジと第2溶着フランジとを重ね合わせて第1外側溶着面と第2外側溶着面、第1内側溶着面と第2内側溶着面をそれぞれ溶着することで、フィルターシートが第1内側溶着面と第2内側溶着面によって所定位置に保持されるので、高い濾過性能が得られる。また、第1外側溶着面と第2外側溶着面の間にはフィルターシートが介在していないので、第1外側溶着面と第2外側溶着面との溶着強度が高まるとともに、高い気密性が得られる。
【0010】
本開示の第2の側面に係る仮止め工程では、前記第1内側溶着面に前記フィルターシート材をレーザー溶着することによって仮止めすることができる。
【0011】
すなわち、レーザー溶着に用いるレーザー光は、出力や走査速度、焦点の大きさ等の変更が可能なので、フィルターシート材を仮止めする際の条件設定が細かく行える。したがって、例えばフィルターシート材の種類に合わせて最適な仮止め条件を選択し、フィルターシートを容易にかつ確実に仮止めできる。
【0012】
本開示の第3の側面に係る準備工程では、前記第1溶着フランジの前記第1内側溶着面と前記第1外側溶着面との間に段落ち部を有する前記第1ケース半体を用意し、前記除去工程では、前記フィルターシート材を前記段落ち部に沿って切断することができる。
【0013】
この構成によれば、フィルターシート材を段落ち部に沿って切断すればよいので、切断が容易に行える。また、段落ち部では、フィルターシート材が第1溶着フランジから離れているので、例えばレーザー光により切断した後のフィルターシート材が第1溶着フランジに溶け付き難くなり、切断後のフィルターシート材を容易に取り除くことができる。
【0014】
本開示の第4の側面に係る準備工程では、前記第1溶着フランジの前記第1内側溶着面と前記第1外側溶着面との間の溝で前記段落ち部が構成されるとともに、前記第1内側溶着面と前記第1外側溶着面とが同一高さに設けられた前記第1ケース半体を用意する。
【0015】
この構成によれば、溶着工程において、第1外側溶着面と第2外側溶着面、第1内側溶着面と第2内側溶着面を同じ条件で効率よく溶着できる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、フィルターシート材を第1ケース半体の第1内側溶着面に仮止めした後、切断して不要部分を取り除いてから両ケース半体を溶着するようにしたので、目が細かく腰のないフィルターであっても両ケース半体に対して狙い通りに配設して高い濾過性能を確保できるとともに、ケース半体同士の高い溶着強度と気密性に優れた流体フィルター装置を安価にかつ容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る製造方法で製造された流体フィルター装置の斜視図である。
【
図3】
図2のA部に相当する断面を示しており、仮止め工程を説明する図である。
【
図4】フィルターシート材の切断要領を説明する
図3相当図である。
【
図6A】溶着フランジ同士を合わせた状態を説明する
図3相当図である。
【
図7】仮止め工程の変形例に係る
図3相当図である。
【
図9A】溶着フランジの変形例に係る
図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る流体フィルター装置の製造方法によって製造された流体フィルター装置1を示すものであり、また、
図2は、流体フィルター装置1の縦方向の断面図である。流体フィルター装置1は、例えば自動車のパワーステアリング装置の内部を循環するパワーステアリングオイルや、トランスミッションの内部のオイル等を濾過する場合に使用されるものであるが、これら以外のオイル、水、気体等の各種流体を濾過する場合にも使用することが可能であり、その用途は特に限定されない。
【0020】
流体フィルター装置1は、筒状ケース2と、フィルターシート3(
図2に示す)とを備えている。筒状ケース2は、本実施形態では円筒状であるが、これに限らず、角筒状であってもよいし、複雑な断面形状を持った筒状であってもよい。また、本実施形態の説明では、筒状ケース2の軸線が上下方向に延びている場合について説明するが、これは説明の便宜を図るためにそのように記載しているだけであり、使用時の姿勢や製造時の姿勢を限定するものではない。筒状ケース2の軸線は、例えば水平であってもよいし、傾斜していてもよい。また、筒状ケース2の軸線は直線状である必要はなく、図示しないが、屈曲した筒状ケースであってもよい。
【0021】
筒状ケース2は、第1ケース半体10と、第2ケース半体20とで構成されている。筒状ケース2の軸線が上下方向に延びている場合、第1ケース半体10は、筒状ケース2の下側部分を構成する部材となり、第2ケース半体20は、筒状ケース2の上側部分を構成する部材となるが、これに限らず、図示しないが、第1ケース半体が筒状ケース2の上側部分を構成する部材、第2ケース半体が筒状ケース2の下側部分を構成する部材であってもよい。筒状ケース2の軸線が水平方向に延びている場合、第1ケース半体10は、筒状ケース2の水平方向一方側の部分を構成する部材となり、第2ケース半体20は、筒状ケース2の水平方向他方側の部分を構成する部材となる。つまり、筒状ケース2の分割構造はどのような構造であってもよい。
【0022】
第1ケース半体10及び第2ケース半体20は、例えばPA6、PA66等のナイロン樹脂を射出成形してなるものであるが、第1ケース半体10及び第2ケース半体20を構成する樹脂材はナイロン樹脂に限られるものではなく、熱溶着可能な材料であればよい。また、第1ケース半体10及び第2ケース半体20の成形方法についても射出成形に限られるものではなく、別の成形方法で成形されたものであってもよい。
【0023】
第1ケース半体10は、下壁部11と、下壁部11の周縁部から上方へ延びる下側周壁部12と、下側周壁部12の上端部に設けられた下側溶着フランジ(第1溶着フランジ)13とを備えている。下壁部11、下側周壁部12及び下側溶着フランジ13は一体成形されている。下壁部11には、下方へ突出する下側管部11aが設けられている。下側管部11aの内部空間は、筒状ケース2の内部空間の下部に連通している。下側管部11aの下端部は下方に向けて開口しており、この開口部は流体を筒状ケース2の内部空間へ流入させるための流入口11bである。
【0024】
下側周壁部12は筒状ケース2の周方向に連続して設けられている。下側溶着フランジ13は、下側周壁部12の上端部から筒状ケース2の径方向外方へ向けて延出するとともに、周方向に連続して延びている。下側溶着フランジ13の延出方向は水平であるが、傾斜していてもよい。下側溶着フランジ13の上面には、筒状ケース2の内側に位置する第1内側突条部14と、筒状ケース2の外側に位置する第1外側突条部15とが設けられている。第1内側突条部14及び第1外側突条部15は、それぞれ周方向に連続して延びている。また、第1内側突条部14と第1外側突条部15とは径方向に間隔をあけて設けられており、第1内側突条部14と第1外側突条部15との間には上方に開放する第1溝16が設けられている。この第1溝16は、周方向に連続した環状をなしており、本発明の段落ち部を構成している。
【0025】
図3に示すように、第1内側突条部14の上面は、筒状ケース2の内側に位置する第1内側溶着面14aとされている。また、第1外側突条部15の上面は、第1内側溶着面14aよりも筒状ケース2の外側に位置する第1外側溶着面15aとされている。第1内側溶着面14a及び第1外側溶着面15aも周方向に連続した環状をなしている。また、第1内側溶着面14aと、第1外側溶着面15aとは、同一高さに設けられており、例えば第1内側溶着面14aを通る仮想面を想定したとき、その仮想面上に第1外側溶着面15aが位置付けられている。
【0026】
第1内側溶着面14aは、フィルターシート3が仮止めされる面、及びフィルターシート3が仮止め後に溶着される面であるとともに、後述する第2内側溶着面24aに溶着される面でもある。一方、第1外側溶着面15aは、フィルターシート3が溶着されない面であり、後述する第2外側溶着面25aに溶着される面である。
【0027】
第1外側溶着面15aの幅と第1内側溶着面14aの幅とは同じに設定されている。なお、第1外側溶着面15aの幅が第1内側溶着面14aの幅よりも広く設定されていてもよいし、第1内側溶着面14aの幅が第1外側溶着面15aの幅よりも広く設定されていてもよい。
【0028】
図2等に示すように、第2ケース半体20は、上壁部21と、上壁部21の周縁部から下方へ延びる上側周壁部22と、上側周壁部22の下端部に設けられた上側溶着フランジ(第2溶着フランジ)23とを備えている。上壁部21、上側周壁部22及び上側溶着フランジ23は一体成形されている。上壁部21には、上方へ突出する上側管部21aが設けられている。上側管部21aの内部空間は、筒状ケース2の内部空間の上部に連通している。上側管部21aの上端部は上方に向けて開口しており、この開口部は筒状ケース2の内部空間の流体を外部へ流出させるための流出口21bである。
【0029】
上側周壁部22は筒状ケース2の周方向に連続して設けられている。上側周壁部22の下端部の径と、下側周壁部12の上端部の径とは同じに設定されている。また、上側溶着フランジ23は、下側溶着フランジ13に対して上方から重ね合わされる部分であり、上側溶着フランジ23と下側溶着フランジ13とは同じ径とされている。上側溶着フランジ23は、上側周壁部22の下端部から筒状ケース2の径方向外方へ向けて延出するとともに、周方向に連続して延びている。上側溶着フランジ23の延出方向は、下側溶着フランジ13と同様であればよく、水平に延出していなくてもよい。上側溶着フランジ23の下面には、筒状ケース2の内側に位置する第2内側突条部24と、筒状ケース2の外側に位置する第2外側突条部25とが設けられている。第2内側突条部24及び第2外側突条部25は、それぞれ周方向に連続して延びている。また、第2内側突条部24と第2外側突条部25とは径方向に間隔をあけて設けられており、第2内側突条部24と第2外側突条部25との間には下方に開放する第2溝26が設けられている。この第2溝26は、周方向に連続した環状をなしている。第2溝26は、第1溝16と共に、後述する溶着時に生じたバリが収容されるバリ収容部となる。
【0030】
図6Aに示すように、第2内側突条部24の下面は、筒状ケース2の内側に位置する第2内側溶着面24aとされている。また、第2外側突条部25の下面は、第2内側溶着面24aよりも筒状ケース2の外側に位置する第2外側溶着面25aとされている。第2内側溶着面24a及び第2外側溶着面25aも周方向に連続した環状をなしている。また、第2内側溶着面24aと、第2外側溶着面25aとは、第1内側溶着面14a及び第1外側溶着面15aと同様に、同一高さに設けられている。第2外側溶着面25aには、下方へ突出する溶着用リブ25bが周方向に連続する環状に設けられている。
【0031】
第2内側溶着面24aは、仮止め後のフィルターシート3が溶着される面であるとともに、上記第1内側溶着面14aに溶着される面でもある。一方、第2外側溶着面25aは、フィルターシート3が溶着されない面であり、上記第1外側溶着面15aに溶着される面である。また、第2外側溶着面25aの幅と第2内側溶着面24aの幅とは、上記第1外側溶着面15a及び第1内側溶着面14aと同様に設定されている。
【0032】
尚、
図2は、下側溶着フランジ13と上側溶着フランジ23とを溶着した後の状態を示しているので、第1内側溶着面14a、第1外側溶着面15a、第2内側溶着面24a及び第2外側溶着面25aを構成していた部分は溶融している。
【0033】
フィルターシート3は、特に限定されるものではないが、例えば200メッシュ以上の目が細かい金属製の網、樹脂製の網、不織布等で構成されている。このような目が細かい網は、柔軟で自重によって容易に変形してしまう。フィルターシート3の外形状は、その外周縁部が第1内側溶着面14aの外周縁部よりも若干外側に位置するように、かつ、第1外側溶着面15aの内周縁部よりも内側に位置するように設定されている。言い換えると、フィルターシート3の外周縁部は、第1溝16内に位置するようになっている。これにより、フィルターシート3の外周縁部が第1外側溶着面15aに達することはないので、当該第1外側溶着面15aに溶着されることはない。
【0034】
フィルターシート3は、下側溶着フランジ13と上側溶着フランジ23とで上下方向(厚み方向)に挟まれている。また、フィルターシート3は、事前に裁断されたものではなく、後述するように、第1ケース半体10にセットされて仮止めされた後に、上記所定形状となるように切断されたものである。
【0035】
(流体フィルター装置の製造方法)
次に、上記のように構成された流体フィルター装置1の製造方法について説明する。まず、
図3に示すように、第1ケース半体10と、第2ケース半体20(
図6Aに示す)とを用意するとともに、フィルターシート材Fを用意する。フィルターシート材Fは、
図2に示すフィルターシート3の素材であり、フィルターシート3よりも十分に大きな原反材料である。また、第1ケース半体10を保持するセット治具100と、フィルターシート材Fを保持するクランプ200と、フィルターシート材Fを押さえる押さえ治具300と、レーザー溶着装置400とを用意する。以上が準備工程である。
【0036】
セット治具100には、第1ケース半体10の下側溶着フランジ13が嵌まる凹部100aが上方に開放するように形成されている。この凹部100aに第1ケース半体10の下側溶着フランジ13を上方から嵌めることで、第1ケース半体10を所定位置に位置決めすることができる。
【0037】
クランプ200は、下側クランプ材201と上側クランプ材202とを備えており、下側クランプ材201と上側クランプ材202とが上下方向に接離可能になっている。下側クランプ材201と上側クランプ材202を上下に離した状態にしてから、下側クランプ材201と上側クランプ材202の間にフィルターシート材Fを差し込み、その後、下側クランプ材201と上側クランプ材202を接近させた状態にすることで、フィルターシート材Fをクランプ200でクランプして保持できる。
【0038】
押さえ治具300は、図示しない駆動機構によって上下方向に移動可能に構成されており、第1ケース半体10の第1外側突条部15を上方から押圧する位置と、第1外側突条部15から上方へ離れた位置とに切り替えられる。押さえ治具300の下端部の形状は、第1内側突条部14を覆わないように設定されている。
【0039】
レーザー溶着装置400は、レーザー発信器401と、レーザー発信器401を制御する制御部402と、レーザー発信器401から出力されたレーザー光Lを目標位置へ照射するためのレーザーノズル403とを有している。制御部402により、レーザー光Lの出力、焦点の大きさ等を制御することができるようになっている。例えばユーザがレーザー光Lの出力、焦点の大きさを個別に入力すると、その入力値を制御部402が受け付ける。制御部402は、ユーザが入力したレーザー光Lの出力及び焦点の大きさとなるように、レーザー発信器401を制御することで、所望のレーザー光Lをレーザーノズル403から出力できる。
【0040】
また、レーザーノズル403は例えばロボット等からなる駆動装置(図示せず)によって所定の軌跡を描くように移動させることができるようになっている。この時の移動軌跡、及び移動速度(レーザー光Lの走査速度)は、ユーザによって任意に設定できる。
【0041】
準備工程の際、押さえ治具300は上方へ移動させておく。その後、第1ケース半体10をセット治具100に保持させる。また、クランプ200で保持したフィルターシート材Fを第1ケース半体10の上に配置する。しかる後、押さえ治具300を下方へ移動させて、第1ケース半体10の第1外側突条部15を上方から押圧する位置に切り替えると、第1外側突条部15の上にはフィルターシート材Fが配置されているので、フィルターシート材Fが第1外側突条部15の第1外側溶着面15aに押さえ付けられる。これにより、第1ケース半体10の下側溶着フランジ13上にフィルターシート材Fを張架することができる。また、第1ケース半体10を所定位置に位置決めして安定させることができる。
【0042】
フィルターシート材Fを張架した後、レーザー溶着装置400を作動させてレーザーノズル403から第1内側突条部14の第1内側溶着面14aに向けてレーザー光Lを出力する。第1内側溶着面14aの上には、フィルターシート材Fが配置されているので、フィルターシート材Fがレーザー光Lを吸収して発熱する。また、第1内側溶着面14aも同様に発熱する。このときの単位時間当たり発熱量はレーザー光Lの出力、焦点の大きさ、走査速度によって調整することができ、第1内側溶着面14aを溶融させてフィルターシート材Fを第1内側溶着面14aに溶着させて仮止め可能な発熱量に設定されている。樹脂が固化すると、フィルターシート材Fが第1内側突条部14に仮止めされる。これがレーザー溶着による仮止め工程である。
【0043】
仮止め工程におけるレーザー光Lの出力、焦点の大きさ、走査速度は、仮止め用の条件である。この仮止め用の条件の一例を挙げると、レーザー装置は株式会社キーエンス製MD-F5200の50Wタイプを用い、例えばレーザー光Lの出力は40W、焦点の大きさはスポット可変を0mmで設定、走査速度は0.2m/秒、レーザー光を走査する回数は1回/周等である。フィルターシート材Fが樹脂や不織布の場合、フィルターシート材Fが焼損しないように、上記仮止め用の条件を設定する。
【0044】
仮止め工程では、レーザー光Lを第1内側溶着面14aに沿って環状に走査してフィルターシート材Fを環状に溶着してもよいし、レーザー光Lを第1内側溶着面14aに沿って移動させながら、断続して照射し、フィルターシート材Fを点状に溶着してもよい。
【0045】
フィルターシート材Fの仮止め後、
図4に示すように、押さえ治具300によるフィルターシート材Fの押さえを解除する。尚、この
図4では、押さえ治具300を示していない。
【0046】
次いで、フィルターシート材Fにおける第1内側溶着面14aと第1外側溶着面15aとの間に対応する部位を切断する。すなわち、まず、レーザー光Lの出力、焦点の大きさ、走査速度を、フィルターシート材Fの切断が可能な値にしておく。この時のレーザー光Lの出力、焦点の大きさ、走査速度は、切断用の条件であり、この切断用の条件の一例を挙げると、例えばレーザー光Lの出力は40W、焦点の大きさはスポット可変を0mmで設定、走査速度は0.12~0.17m/秒、レーザー光を走査する回数は1回/周等である。レーザー光Lによるエネルギー密度が仮止め工程に比べて高くなるように、切断用の条件が設定されている。レーザー溶着装置400自体は、仮止め工程のときのものと同じものを利用できる。
【0047】
そして、レーザー光Lを第1溝16内に向けて照射するように、当該第1溝16に沿って移動させると、フィルターシート材Fが第1溝16に沿って切断される。このように、フィルターシート材Fを第1溝16に沿って切断すればよいので、切断が容易に行える。フィルターシート材Fを切断することで、第1内側溶着面14aに仮止めされたフィルターシート3を得ることができる。
【0048】
また、残りのフィルターシート材Fを取り除く。具体的には、
図5に示すように、クランプ200で残りのフィルターシート材Fを保持したまま、クランプ200をセット治具100に対して上方へ移動させるか、セット治具100をクランプ200に対して下方へ移動させることで、残りのフィルターシート材Fを取り除くことができる。このとき、フィルターシート材Fにおけるレーザー光Lが照射される位置と、第1外側溶着面15aの内周縁部との距離がα離れているので、フィルターシート材Fに発生する熱が第1外側溶着面15aに伝わり難く、フィルターシート材Fが第1外側溶着面15aに溶着しない。また、第1溝16では、フィルターシート材Fが下側溶着フランジ13から離れているので、例えばレーザー光Lにより切断した後のフィルターシート材Fが下側溶着フランジ13に溶け付き難くなり、切断後のフィルターシート材Fを容易に取り除くことができる。これが除去工程である。
【0049】
その後、溶着工程に移行する。溶着工程では、第1ケース半体10を超音波溶着セット治具101に乗せ換える。超音波溶着セット治具101には、第1ケース半体10の下側溶着フランジ13が嵌まる凹部101aが上方に開放するように形成されている。
図6Aに示すように、第2ケース半体20を第1ケース半体10の上方から持ってきて、第1ケース半体10の下側溶着フランジ13と、第2ケース半体20の上側溶着フランジ23とを重ね合わせる。第1外側溶着面15aと第2外側溶着面25aの溶着用リブ25bとを押し付けて両者を溶着する。また、第1内側溶着面14aと第2内側溶着面24aとを溶着する。溶着方法としては、例えば超音波溶着法を適用できる。超音波溶着法では、超音波溶着ホーン500を用意する。超音波溶着ホーン500は、第2ケース半体20の上側溶着フランジ23の上面に押し当てる。この状態で超音波溶着ホーン500を振動させることにより、第1外側溶着面15aと第2外側溶着面25aとの間、第1内側溶着面14aと第2内側溶着面24aとの間に摩擦熱が発生し、第1外側溶着面15aと第2外側溶着面25aとが溶融するとともに、第1内側溶着面14aと第2内側溶着面24aとが溶融する。樹脂が固化することで、第1外側溶着面15aと第2外側溶着面25aとが全周に亘って気密に溶着され、また、第1内側溶着面14aと第2内側溶着面24aとが全周に亘って溶着される。フィルターシート3には、第1内側溶着面14aと第2内側溶着面24aとの溶融樹脂が入り込むので、固化後、フィルターシート3が筒状ケース2に堅固に保持される。溶着時に筒状ケース2内へ向けて発生したバリWは、第1溝16及び第2溝26に収容される。
【0050】
(仮止め工程の変形例)
上記仮止め工程では、レーザー光Lを使用してフィルターシート材Fを仮止めしたが、これに限らず、例えば
図7に示すように、熱プレスを使用してフィルターシート材Fを仮止めしてもよい。この変形例では、樹脂の溶融温度以上に加熱可能なプレス型550を用意する。そして、仮止め工程において、プレス型550をフィルターシート材Fに押し当てて第1内側溶着面14aを加熱する。これにより、第1内側溶着面14aを溶融させてフィルターシート材Fを溶着させることができる。
【0051】
(溶着工程の変形例)
上記溶着工程では、超音波溶着法を使用して下側溶着フランジ13と上側溶着フランジ23とを溶着したが、これに限らず、例えば
図8に示すように、熱板溶着法を使用してもよい。この変形例では、樹脂の溶融温度以上に加熱可能な熱板560と、熱板溶着用の第1セット治具561及び第2セット治具562を用意する。第1セット治具561には、第1ケース半体10の下側溶着フランジ13が嵌まる凹部561aが上方に開放するように形成されている。また、第2セット治具562には、第2ケース半体20の上側溶着フランジ23が嵌まる凹部562aが下方に開放するように形成されている。
【0052】
第1ケース半体10を第1セット治具561に保持し、第2ケース半体20を第2セット治具562に保持した状態で、下側溶着フランジ13と上側溶着フランジ23とを上下方向に所定の間隔をあけて配置する。その状態で、下側溶着フランジ13と上側溶着フランジ23との間に熱板560を入れて各部を加熱した後、熱板560を抜く。その後、下側溶着フランジ13と上側溶着フランジ23とを重ね合わせることにより、第1外側溶着面15aと第2外側溶着面25aとを溶着できるとともに、第1内側溶着面14aと第2内側溶着面24aとを溶着できる。
【0053】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、フィルターシート材Fを第1ケース半体10の下側溶着フランジ13上に張架した状態でレーザー光Lを使用して第1内側溶着面14aに仮止めすることができる。これにより、後の除去工程で、フィルターシート材Fにおける第1内側溶着面14aと第1外側溶着面15aとの間に対応する部位を切断して所定形状のフィルターシート3を得た時、そのフィルターシート3の変形が抑制されるとともに、フィルターシート3の第1内側溶着面14aからのずれが抑制される。
【0054】
そして、下側溶着フランジ13と上側溶着フランジ23とを重ね合わせて第1外側溶着面15aと第2外側溶着面25a、第1内側溶着面14aと第2内側溶着面24aをそれぞれ溶着することで、フィルターシート3が第1内側溶着面14aと第2内側溶着面24aによって所定位置に保持されるので、高い濾過性能が得られる。また、第1外側溶着面15aと第2外側溶着面25aの間にはフィルターシート3が介在していないので、第1外側溶着面15aと第2外側溶着面25aとの溶着強度が高まるとともに、第1外側溶着面15aと第2外側溶着面25aとの間に高い気密性が得られる。
【0055】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0056】
図9A及び
図9Bは、溶着フランジの変形例を示すものである。第1ケース半体10の下側溶着フランジ130の上面には、筒状ケース2の内側に位置する第1内側突条部140が設けられており、第1内側突条部140の上面は、筒状ケース2の内側に位置する第1内側溶着面140aとされている。
【0057】
また、第1ケース半体10の下側溶着フランジ130の上面には、第1内側突条部140よりも外側に段落ち部160が段差状に形成されている。さらに、第1ケース半体10の下側溶着フランジ130の上面には、段落ち部160よりも外側に第1外側溶着面150aが形成されている。段落ち部160が形成されているので、フィルターシート材Fをレーザー光Lで切断する時に、切断した後のフィルターシート材Fが下側溶着フランジ130に溶け付き難くなり、切断後のフィルターシート材Fを容易に取り除くことができる。
【0058】
一方、第2ケース半体20の上側溶着フランジ230の下面には、筒状ケース2の内側に位置する第2内側溶着面240aが設けられている。この第2内側溶着面240aが第1内側溶着面140aに溶着される。また、第2ケース半体20の上側溶着フランジ230の下面には、第2内側溶着面240aよりも外側に第2外側突条部250が設けられている。第2外側突条部250の下面は、筒状ケース2の外側に位置する第2外側溶着面250aとされている。第2外側溶着面250aには、第1外側溶着面150aに溶着される溶着用リブ250bが設けられている。この変形例の場合も上述した仮止め工程、除去工程、溶着工程を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したように、本発明に係る流体フィルター装置の製造方法は、各種流体を濾過する流体フィルター装置を製造する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 流体フィルター装置
2 筒状ケース
3 フィルターシート
10 第1ケース半体
13 下側溶着フランジ(第1溶着フランジ)
14a 第1内側溶着面
15a 第1外側溶着面
16 第1溝(段落ち部)
20 第2ケース半体
23 上側溶着フランジ(第2溶着フランジ)
24a 第2内側溶着面
25a 第2外側溶着面
F フィルターシート材