(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049760
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】微量気体流量計測装置
(51)【国際特許分類】
G01F 1/00 20220101AFI20230403BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
G01F1/00 H
A61M5/168 506
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159703
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】504077308
【氏名又は名称】安斎 聡
(71)【出願人】
【識別番号】518037530
【氏名又は名称】辻 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安斎 聡
【テーマコード(参考)】
2F030
4C066
【Fターム(参考)】
2F030CA04
2F030CB03
2F030CC11
2F030CE04
4C066AA10
4C066BB01
4C066CC10
4C066DD03
4C066HH30
4C066QQ27
4C066QQ42
(57)【要約】
【課題】患部に注射する際に注射針から注入される気体量を正確に計測することができる微量気体流量計測装置を提供する。
【解決手段】第一室2aおよび第二室2bを有するタンク部2と、気体供給装置10から排出される気体を第一室2aまたは第二室2b内に選択的に送る気体供給管3と、第二室2bから排出される気体を外部装置20に排出する気体排出管4と、第一室2a内の液面位置を検出する液面位置検出部5と、を備え、第一室2aの最大液面位置よりも、第二室2bの最大液面位置が高く、第一室2aおよび第二室2b内の気体圧力を同圧にするための第一の調整弁6と、気体排出管4の中途部に設けられた第二の調整弁7と、気体排出管4の排出側端部に設けられた第三の調整弁8と、を備え、第二室2b内に貯められた気体を、第二の調整弁7および第三の調整弁8を開にして、第一の調整弁6を閉にすることにより排出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一室および第二室を有し前記第一室および前記第二室が互いに下部で繋がり前記第一室内および前記第二室内に液体が入れられているタンク部と、
気体供給装置から排出される所定の気体を前記第一室または第二室内に選択的に送る気体供給管と、
前記第二室から排出される所定の気体を外部装置に排出する気体排出管と、
前記第一室内の液体の液面位置を検出する液面位置検出部と、
を備え、
前記第一室の最大液面位置よりも、前記第二室の最大液面位置が高く、
前記気体供給管の中途部に設けられた、第一室および第二室内の気体圧力を同圧にするための第一の調整弁と、
前記気体排出管の中途部に設けられた第二の調整弁と、
前記気体排出管の排出側端部に設けられた第三の調整弁と、を備え、
前記第二室内に貯められた気体を、第二の調整弁および第三の調整弁を開にして、第一の調整弁を閉にすることにより排出する、
ことを特徴とする微量気体流量測定装置。
【請求項2】
前記第一の調整弁、前記第二の調整弁、前記第三の調整弁、および前記液面位置検出部は制御装置に接続されており、
前記制御装置は、
前記外部装置に気体を排出する場合、第一の調整弁を閉にして、第二の調整弁および第三の調整弁を開にし、
次に、前記液面位置検出部により検出された前記第一室の液面位置が所定の高さ以下になった場合、前記第二の調整弁を閉とする
ことを特徴とする請求項1に記載の微量気体流量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射器などに微量の気体を注入する際に、所望の容積の微量気体を計測して注射器へ供給することができる微量気体流量計測装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、人体に対して治療を行う際に、気体を含んだ輸液を注入先である静脈へと注入する技術が公知となっている(例えば、特許文献1)。また、関節炎の患部に高濃度の水素を含んだ輸液を注射で注入する方法が公知となっている。
【0003】
さらに、近年、関節炎の治療において、輸液に水素を含ませるのではなく、直接水素ガスを患部に注射で注入する方法も開発されている。当該関節炎の治療において直接注入される水素ガスの量は非常に少量である。
【0004】
前記のように、関節炎の治療において患部に気体を注入する場合、必要な気体の容積はごく少量となる。このような微量の気体を従来の流量計で計測することは困難であった。例えば、従来の気体流量計測方式としては、電磁式、超音波式、コリオリ式、熱式、カルマン渦式、羽根式、浮き子式、差圧式等の方式が知られている。しかしいずれの計測方式も注射器のような供給気体の必要量が少ない場合に採用するには計測精度に問題があった。また、従来の計測装置では、必要量の気体を計測した場合であっても、当該計測装置から注入装置である注射器へ輸送する際にロスが発生し、計測した全量を注射器へ輸送できない場合があった。
【0005】
一方、一般的な気体流量計測装置として、気体流量計測装置が、第一室および第二室を有するタンク部を有し、タンク部に入った液体の液面位置の変化を基に、気体の単位時間当たりの空気量を算出するガス計測装置が公知となっている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2002-537933号公報
【特許文献2】特開2014-190802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の気体流量計測装置は、気体排出装置から排出される気体によって押しのけられる水位を計測することで、気体の時間当たりの排出量を計測していた。一方、第二室側の上方は外気と連通しており、第二室の液面には大気圧がかかっていた。このため、第一室および第二室の液面に係る気体圧力が異なっていた。
【0008】
また、関節炎の治療において、気体を患部に直接注入する際には、注射圧が必要となる。このため、一方が外気と連通して大気圧(0.1013MPa)との比較を行うと注射圧と大気圧が異なるため第一室に第二室側の水が逆流することがあった。そのため、微量な気体を正確に計測することができなかった。
【0009】
そこで、本発明はかかる課題に鑑み、所望の容積の微量気体を計測して外部装置へ供給することができる微量気体流量計測装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、本発明においては、第一室および第二室を有し前記第一室および前記第二室が互いに下部で繋がり前記第一室内および前記第二室内に液体が入れられているタンク部と、
気体供給装置から排出される所定の気体を前記第一室または第二室内に選択的に送る気体供給管と、
前記第二室から排出される所定の気体を外部装置に排出する気体排出管と、
前記第一室内の液体の液面位置を検出する液面位置検出部と、
を備え、
前記第一室の最大液面位置よりも、前記第二室の最大液面位置が高く、
前記気体供給管の中途部に設けられた、第一室および第二室内の気体圧力を同圧にするための第一の調整弁と、
前記気体排出管の中途部に設けられた第二の調整弁と、
前記気体排出管の排出側端部に設けられた第三の調整弁と、を備え、
前記第二室内に貯められた気体を、第二の調整弁および第三の調整弁を開にして、第一の調整弁を閉にすることにより排出するものである。
【0012】
また、本発明においては、好ましくは、前記第一の調整弁、前記第二の調整弁、前記第三の調整弁、および前記液面位置検出部は制御装置に接続されており、
前記制御装置は、
前記外部装置に気体を排出する場合、第一の調整弁を閉にし、第二の調整弁および第三の調整弁を開にし、
次に、前記液面位置検出部により検出された前記第一室の液面位置が所定の高さ以下になった場合、前記第二の調整弁を閉とするものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
本発明においては、気体供給装置から供給される気体の圧力を用いて、微量の気体を正確に計測して外部の機器に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る微量気体流量測定装置の全体的な構成を示した正面図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る微量気体流量測定装置の制御構成を示したブロック図。
【
図3】本発明の一実施形態に係る微量気体流量測定工程をしめしたフローチャート図。
【
図4】本発明の一実施形態に係るステップS10における微量気体流量測定装置の正面図。
【
図5】本発明の一実施形態に係るステップS20における微量気体流量測定装置の正面図。
【
図6】本発明の一実施形態に係るステップS31における微量気体流量測定装置の正面図。
【
図7】本発明の一実施形態に係る微量気体流量測定工程を終えた微量気体流量測定装置の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず、本発明の一実施形態にかかる微量気体流量測定装置1について説明する。
微量気体流量測定装置1は、気体供給装置10から供給される気体を一定量測定し、当該一定量を外部装置20に排出することで、所望の量の気体を正確に外部装置20に供給することができる装置である。当該外部装置20は、例えば、注射器である。気体は例えば水素である。
【0017】
微量気体流量測定装置1は、第一室2aおよび第二室2bを有し、第一室2aおよび第二室2bが互いに下部で繋がり、第一室2a内および第二室2b内に液体が入れられているタンク部2と、気体供給装置10から排出される所定の気体を第一室2aまたは第二室2b内に選択的に送る気体供給管3と、第二室2bから排出される所定の気体を外部装置20に排出する気体排出管4と、第一室2a内の液体の液面位置を検出する液面位置検出部5と、を備える。
【0018】
タンク部2は、液体として水が充填された二つの開口部2c・2dを有する容器であり、第一室2aおよび第二室2bを有する。第一室2aは筒状の部分であり、その上端に第一の開口部2cを備える。第一の開口部2cは、気体供給管3から分岐する第一の分岐通路3aと連通している。第一室2aの下端は連通部2eと連通している。第二室2bは筒状の部分であり、その上端に第二の開口部2dを備える。第二の開口部2dは、気体供給管3から分岐する第二の分岐通路3bと連通している。第二室2bの下端は連通部2eと連通している。連通部2eによって、第一室2aと第二室2bとの間は内部に格納した流体が移動可能に連通している。タンク部2の第一室2aおよび第二室2bに初期状態で格納される液体は水である。ただし水以外に油やアルコールであってもよい。
【0019】
第一室2aの容積は第二室2bの容積に比べて小さく第一の開口部2cは第二の開口部2dよりも低い位置にある。例えば、第一の開口部2cおよび第二の開口部2dの断面積をS、第一の開口部2cと第二の開口部2dの高さの差をd1とした場合、第二室2bの容積は第一室2aの容積よりもSd1だけ大きい。
【0020】
気体供給管3は、圧力を所定値まで上げた気体をタンク部2へ供給する管である。気体供給管3の上流端は、気体供給装置10に接続されている。気体供給装置10は、気体を貯蔵する気体貯蔵タンク11と、供給元バルブ12と、圧力を調節するレギュレータ13とを有している。
【0021】
気体供給管3は、第一の分岐通路3aと、第二の分岐通路3bとに分岐している。また、気体供給管3の下流端部は気体排出管4と連通している。また、第一の分岐通路3aに分岐している個所と第二の分岐通路3bに分岐している個所との間には第一の調整弁6が設けられている。
【0022】
気体排出管4は、排出量を調整された気体を外部装置20には移出するための通路である。気体排出管4の中途部には主に第二の分岐通路3bの圧力を逃がすための第二の調整弁7と、外部装置20との気体の流通の遮断を行う第三の調整弁8とが設けられている。
【0023】
気体排出管4の下流端部には外部装置20が接続されている。外部装置20は数mlから数十mlの気体を格納する格納部20aを有する装置であり、例えば、格納部20aとしてシリンダー部を有する注射器で構成されている。
【0024】
液面位置検出部5は、第一室2aに格納されている液体の液面高さを検出する装置であり、例えばレベルセンサで構成されている。液面位置検出部5は、液体の液面高さが所定の高さh1以下になった場合、検出された情報を制御装置9へ入力する。
【0025】
制御装置9は、例えばCPU等で構成されており、入力側には、液面位置検出部5が接続されており、出力側には、第一の調整弁6、第二の調整弁7、および第三の調整弁8のソレノイドが接続されている。
【0026】
次に、微量気体流量測定装置1を用いて外部装置20へ所定の量の気体を測り供給する方法について説明する。
【0027】
まず、供給元バルブ12と第一の調整弁6を開く(ステップS10)。供給元バルブ12と第一の調整弁6を開くことにより、気体供給装置10の気体貯蔵タンク11に貯蔵されていた気体の圧力が、レギュレータ13によって所定の圧力P1まで下げられた状態で気体供給管3に供給される。これにより、レギュレータ13よりも下流であって第二の調整弁7よりも上流の位置にある気体供給管3の第一の分岐通路3a、第二の分岐通路3bおよび第一の開口部2cおよび第二の開口部2dにおける圧力がP1で一定となる。
【0028】
このような状態においては、
図4に示すように、タンク部2の第一室2aの水面高さと第二室2bの水面高さとが同じになり、第二室2bの容積Sd1の部分に気体が格納される。このときの水面の高さをh0とする。
【0029】
次に、外部装置20に気体を供給する際には、第二の調整弁7を開き、第一の調整弁6を閉じる。そして第三の調整弁8を開く(ステップS20)。これにより、第一の調整弁6よりも下流側の圧力が外部装置20内の圧力P2と同一となる。
【0030】
一方、第一の調整弁6よりも上流側の圧力P1が外部装置20内の圧力P2よりも高いままであるため、
図5の黒塗り矢印で示すように第一室2aの水位が低下し、第二室2bの水位が上昇する。
【0031】
次に、液面位置検出部5により第一室2aの水位が所定の高さh1よりも高いか否かについて判別する(ステップS30)。所定の高さh1よりも高い場合には、第二の調整弁7を開け続け再びステップS30の判断を行う。
【0032】
第一室2aの水位が下がり液面位置検出部5によって測定された水位が所定の高さh1よりも低くなった場合には第二の調整弁7を閉じる(ステップS31)。これにより、気体排出管4への気体の供給は止まる。ステップS31を終了した場合、さらに第三の調整弁8も閉じることで、
図7に示すように、外部装置20である注射器を取り外すことが可能となる。これにより、注射器を用いた患部への水素の注入が可能となる。
【0033】
ステップS30を開始してからステップS31を行うまでの外部装置20への気体の排出量は、第一室2aの水の減少量と等しくなる。つまり、
図6に示されるように、第一室2aの断面積をS、ステップS30開始時の液面高さをh0、所定の高さをh1とした場合、排出された気体の容積はS(h0-h1)となる。なお、本実施形態においては、第一室2aの断面積と、第二室2bの断面積はSであり等しいため、第二室2bの液面高さの増加量も(h0-h1)となる。
【0034】
このように構成することにより、S(h0-h1)の容積の気体が外部装置20である注射器へ送られることとなる。タンク部2に入れる水の量を変更することにより、h0は容易に変更可能であり、所望の気体を容易に測り取ることが可能となる。
【0035】
例えば、複数の外部装置20に気体を供給する場合には、再びステップS10から工程を開始する。これにより、複数の外部装置20に自動的に正確に測定した気体を供給することが可能となる。
【0036】
以上のように、第一室2aおよび第二室2bを有し、第一室2aおよび第二室2bが互いに下部で繋がり第一室2a内および第二室2b内に液体が入れられているタンク部2と、気体供給装置10から排出される所定の気体を第一室2aまたは第二室2b内に選択的に送る気体供給管3と、第二室2bから排出される所定の気体を外部装置20に排出する気体排出管4と、第一室2a内の液体の液面位置を検出する液面位置検出部5と、を備え、第一室2aの最大水位よりも、第二室2bの最大水位が高く、気体供給管3の中途部に設けられた、第一室2aおよび第二室2b内の気体圧力を同圧にするための第一の調整弁6と、気体排出管4の中途部に設けられた第二の調整弁7と、気体排出管4の排出側端部に設けられた第三の調整弁8と、を備え、第二室2b内に貯められた気体を、第二の調整弁7および第三の調整弁8を開にして、第一の調整弁6を閉にすることにより排出するものである。
このように構成することにより、気体供給装置10から供給される気体の圧力を用いて、微量の気体を正確に計測して外部の機器に供給することができる。より詳細には、気体貯蔵タンク11内の圧力をレギュレータ13によって調整した後、気体の圧力を用いて第二室2bの第二の開口部2d内に気体を貯蔵し、第二の調整弁7および第三の調整弁8を開にして、第一の調整弁6を閉にすることにより外部装置20内の圧力と供給気体圧力との差圧によって気体を供給することができる。
【0037】
また、第一の調整弁6、第二の調整弁7、第三の調整弁8、および液面位置検出部5は制御装置9に接続されており、制御装置9は、外部装置20に気体を排出する場合、第一の調整弁6を閉にし、第二の調整弁7および第三の調整弁8を開にし、次に、液面位置検出部5により検出された第一室2aの水位が所定の高さh1以下になった場合、第二の調整弁7を閉とするものであってもよい。
このように構成することにより、液面位置検出部5によって測定した高さに対応する容積の気体を正確に計測して外部の機器に供給することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 微量気体流量測定装置
2 タンク部
2a 第一室
2b 第二室
2c 第一の開口部
2d 第二の開口部
3 気体供給管
3a 第一の分岐通路
3b 第二の分岐通路
4 気体排出管
5 液面位置検出部
6 第一の調整弁
7 第二の調整弁
8 第三の調整弁
9 制御装置
10 気体供給装置
11 気体貯蔵タンク
12 供給元バルブ
13 レギュレータ
20 外部装置
20a 格納部