(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049761
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】教示用治具および教示方法
(51)【国際特許分類】
B23K 9/127 20060101AFI20230403BHJP
B23K 9/028 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
B23K9/127 509C
B23K9/028 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159704
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(71)【出願人】
【識別番号】305017815
【氏名又は名称】十一屋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 貴久
(72)【発明者】
【氏名】平松 剛
(72)【発明者】
【氏名】大附 和敬
(72)【発明者】
【氏名】田原 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一道
【テーマコード(参考)】
4E081
【Fターム(参考)】
4E081BA02
4E081BA27
4E081BB03
4E081DA05
4E081EA24
4E081FA14
(57)【要約】
【課題】異なるサイズ教示用の鋼管柱を準備することなく、溶接用ロボットアームの動作を簡単に教示することができる教示用治具と、これを用いた教示方法を提供する。
【解決手段】教示用治具10は、鋼管柱1の直線部L1~L4の少なくとも一部を形成するストレート部材15と、鋼管柱1の円弧状角部R1~R4を形成するとともに、ストレート部材15、15同士に連結されるコーナー部材20と、を有している。ストレート部材15は、直線部L1~L4に対応する部分の長さが異なる複数種の第1セットを有し、コーナー部材20は、円弧状角部R1~R4に対応する弧状部21の曲率半径が異なる複数種の第2セットを有し、鋼管柱1の形状に応じて選択して教示用治具10を作製する。作製した教示用治具10の治具本体11を鋼管柱1の突合せ部分2に見立ててロボットアーム40の動作を教示させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に配置された鋼管柱からなる柱同士の突合せ部分の溶接に用いられる溶接用ロボットアームに対して、前記突合せ部分に沿って前記溶接用ロボットアームの先端を移動させる、前記溶接用ロボットアームの動作を教示するための教示用治具であって、
前記鋼管柱は、軸方向と直交する断面において、複数の直線部と、前記直線部同士を繋ぐ円弧状角部と、を有した多角形の形状の外面を有しており、
前記教示用治具は、前記直線部の少なくとも一部を形成するストレート部材と、前記円弧状角部を形成するとともに、前記ストレート部材同士に連結されるコーナー部材と、を有し、
前記ストレート部材と前記コーナー部材とは、前記多角形の形状に応じた個数のストレート部材の第1セットと、前記多角形の形状に応じた個数の前記コーナー部材の第2セットと、で構成され、
前記第1セットと前記第2セットは、前記第1セットの前記ストレート部材と、前記第2セットの前記コーナー部材とを連結することにより、前記鋼管柱に相当する治具本体が作製されるものであり、
前記第1セットは、前記ストレート部材の前記直線部に対応する部分の長さが異なる複数種のセットを有しており、
前記第2セットは、前記円弧状角部に対応する部分の曲率半径が異なる複数種のセットを有していることを特徴とする教示用治具。
【請求項2】
前記コーナー部材の各端部は、前記直線部の一部を形成することを特徴とする請求項1に記載の教示用治具。
【請求項3】
前記ストレート部材と前記コーナー部材とが連結される少なくとも一方の部分は、軟磁性材料からなり、他方の部分には磁石が取り付けられていることを特徴とする請求項1また2に記載の教示用治具。
【請求項4】
前記ストレート部材または前記コーナー部材のいずれか一方の部材には、他方の部材の表面のうち、前記多角形の内側に位置する内面に当接する裏打ち板が固着されており、
前記裏打ち板と前記他方の部材とには、前記ストレート部材と前記コーナー部材とが連結されるように前記裏打ち板と前記他方の部材とを重ねた状態で、連結ボルトが挿通される挿通孔が形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の教示用治具。
【請求項5】
前記教示用治具は、前記治具本体を固定する固定柱を備えており、
前記ストレート部材と前記コーナー部材とが連結された状態で、前記各ストレート部材は、前記固定柱に着脱自在に固定されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の教示用治具。
【請求項6】
請求項1~5に記載のいずれか一項に記載の教示用治具を用いた教示方法であって、
複数種の前記第1セットと、複数種の第2セットとから、前記鋼管柱の形状に応じた前記第1および第2セットを選択し、
選択した前記第1および第2セットにより、前記鋼管柱に相当する前記治具本体を作製し、
前記治具本体を前記柱同士の前記突合せ部分に見立てて、前記治具本体の外周面に沿った経路に対して間隔を空けて、前記溶接用ロボットアームの先端を接触させることにより、前記溶接用ロボットアームの動作を教示することを特徴とする教示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管柱からなる柱同士の突合せ部分の溶接に用いられるロボットアームの動作を教示するための教示用治具と、これを用いた教示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設現場などにおいて、上下に配置された鋼管柱からなる柱同士の突合せ部分は、溶接により固定されている。このような溶接方法として、ロボットアームを用いた溶接方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、鋼管の周りを1周するガイドレールを鋼管に固定し、ガイドレールに沿って溶接ロボットを移動させて鋼管同士の突合せ部分を溶接する溶接システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1では、上下に配置された鋼管柱からなる柱同士の突合せ部分に沿わせて溶接ロボットの溶接トーチを移動させるため、鋼管柱のサイズ(径)に応じて溶接トーチの移動経路に沿った溶接ロボットの動作を、設定することになる。ここで、溶接ロボットに溶接用ロボットアームを用いた場合、このような設定は、建設現場外において、溶接される柱と同等の教示用の鋼管柱を準備し、準備した鋼管柱の外周面に沿わせて、ロボットアームの動作を教示することにより、行われる。
【0006】
しかしながら、ロボットアームの動作の教示を行う場合、建設現場には、溶接すべき複数のサイズの鋼管柱があり、鋼管柱の板厚(肉厚)に応じて、鋼管柱の角部の曲率も様々な大きさになる。このため、これらの鋼管柱に合わせて、教示用の鋼管柱を準備しなければならない。
【0007】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、異なるサイズ教示用の鋼管柱を準備することなく、溶接用ロボットアームの動作を簡単に教示することができる教示用治具と、これを用いた教示方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決すべく、本発明に係る教示用治具は、上下に配置された鋼管柱からなる柱同士の突合せ部分の溶接に用いられる溶接用ロボットアームに対して、前記突合せ部分に沿って前記溶接用ロボットアームの先端を移動させる、前記溶接用ロボットアームの動作を教示するための教示用治具であって、前記鋼管柱は、軸方向と直交する断面において、複数の直線部と、前記直線部同士を繋ぐ円弧状角部と、を有した多角形の形状の外面を有しており、前記教示用治具は、前記直線部の少なくとも一部を形成するストレート部材と、前記円弧状角部を形成するとともに、前記ストレート部材同士に連結されるコーナー部材と、を有し、前記ストレート部材と前記コーナー部材とは、前記多角形の形状に応じた個数のストレート部材の第1セットと、前記多角形の形状に応じた個数の前記コーナー部材の第2セットと、で構成され、前記第1セットと前記第2セットは、前記第1セットの前記ストレート部材と、前記第2セットの前記コーナー部材とを連結することにより、前記鋼管柱に相当する治具本体が作製されるものであり、前記第1セットは、前記ストレート部材の前記直線部に対応する部分の長さが異なる複数種のセットを有しており、前記第2セットは、前記円弧状角部に対応する部分の曲率半径が異なる複数種のセットを有していることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、柱同士の突合せ部分に見立てた治具本体に沿わせて、溶接用ロボットアームの先端(溶接トーチ)を移動させる経路を設定し、ロボットアームの動作を教示することができる。ここで、本発明では、ストレート部材で構成される第1セットと、コーナー部材で構成される第2セットとは、複数種のセットで構成されているため、鋼管柱に合わせて、複数種のストレート部材およびコーナー部材から選択して治具本体を作製することができる。この結果、実際に溶接するサイズに応じた教示用の鋼管柱を準備しなくても、この鋼管柱のサイズに応じて作製した教示用治具は、軽量であり、作業性もよく、安全性も高い。このような結果、このような教示用治具を用いて、安価かつ簡単に溶接用ロボットアームの動作を、予め教示することができる。
【0010】
ここで、教示用治具のコーナー部材は、特に限定されるものではないが、好ましい態様としては、前記コーナー部材の各端部は、前記直線部の一部を形成することを特徴とする。
【0011】
この態様によれば、第1セットのストレート部材と、第2セットのコーナー部材とを連結する連結部分が、円弧状角部の両端からオフセットした直線部に形成され、コーナー部材の途中に、円弧状角部の両端が形成される。この結果、作製された治具本体に対して、円弧状角部の両端のより正確な位置を特定することができる。これにより、溶接用ロボットアームの動作を、より正確に教示することができる。
【0012】
より好ましい態様としては、前記ストレート部材と前記コーナー部材とが連結される少なくとも一方の部分は、軟磁性材料からなり、他方の部分には磁石が取り付けられている。
【0013】
この態様によれば、ストレート部材とコーナー部材とが連結される少なくとも他方の部分に取り付けられている永久磁石により、軟磁性材料からなる一方の部分が吸着されるので、ストレート部材とコーナー部材を簡単な操作で確実に連結することができる。しかも、連結が瞬時に行えるため操作性に優れている。たとえば、ストレート部材とコーナー部材とが連結される部分は、たとえば、ストレート部材とコーナー部材とが連結される部分はこれらの端面であってもよく、これらの側面(例えば内周側の側面)であってもよい。
【0014】
より好ましい態様としては、前記ストレート部材または前記コーナー部材のいずれか一方の部材には、他方の部材の表面のうち、前記多角形の内側に位置する内面に当接する裏打ち板が固着されており、前記裏打ち板と前記他方の部材とには、前記ストレート部材と前記コーナー部材とが連結されるように前記裏打ち板と前記他方の部材とを重ねた状態で、連結ボルトが挿通される挿通孔が形成されている。
【0015】
この態様によれば、ストレート部材およびコーナー部材の、いずれか一方の部材には、他方の部材の表面のうち、多角形の内側に位置する内面に当接する裏打ち板が固着されている。このため、裏打ち板と他方の部材とを重ねた状態で連結ボルトを挿通することにより、ストレート部材とコーナー部材とを確実に連結することができる。
【0016】
さらに好ましい態様としては、前記教示用治具は、前記治具本体を固定する固定柱を備えており、前記ストレート部材と前記コーナー部材とが連結された状態で、前記各ストレート部材は、前記固定柱に着脱自在に固定されている。
【0017】
この態様によれば、ストレート部材と、コーナー部材とを連結して作製した治具本体を、固定柱に着脱自在に固定しているため、固定柱に、異なるサイズの治具本体を選択して固定することができる。このため、異なるサイズの柱に対応した治具本体であっても、溶接用ロボットアームの動作を同じようにして教示することができる。
【0018】
また、本発明に係る教示方法は、前記したいずれかに記載の教示用治具を用いた教示方法であって、複数種の前記第1セットと、複数種の第2セットとから、前記鋼管柱の形状に応じた前記第1および第2セットを選択し、選択した前記第1および第2セットにより、前記鋼管柱に相当する前記治具本体を作製し、前記治具本体を前記柱同士の前記突合せ部分に見立てて、前記治具本体の外周面に沿った経路に対して、間隔を空けて前記溶接用ロボットアームの先端を接触させることにより、前記溶接用ロボットアームの動作を教示することを特徴とする。
【0019】
この教示方法によれば、鋼管柱の直線部の少なくとも一部を形成するストレート部材と、鋼管柱の円弧状角部を形成するとともに、ストレート部材同士に連結されるコーナー部材と、を組み合わせて連結することで、鋼管柱に相当する複数種の治具本体を作製することができる。教示用治具の治具本体の外周面に沿った経路に対して間隔を空けて、溶接用ロボットアームの先端を接触させることにより、建設現場とは異なる場所で、建設現場の柱に応じた教示用の鋼管柱を準備することなく、溶接用ロボットアームの動作を溶接用ロボットに簡単かつ安価に教示することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る教示用治具によれば、異なるサイズ教示用の鋼管柱を準備することなく、溶接用ロボットアームの動作を簡単に教示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る教示用治具を用いて鋼管柱の突合せ部分を溶接する柱の要部立面図である。
【
図2】(a)は
図1に示す鋼管柱の突合せ部分を溶接するロボットアームの溶接トーチの移動経路の一例を示す柱の水平方向断面図、(b)は鋼管柱の水平方向断面図である。
【
図3】本発明に係る教示用治具の一実施形態の平面図である。
【
図4】
図3に示す教示用治具のA-A線に沿う一部を破断した立面図である。
【
図5】
図3、
図4に示す教示用治具の治具本体の要部斜視図である。
【
図6】
図5に示す治具本体の1つのコーナー部材の分解状態の斜視図である。
【
図7】
図3、
図4に示す教示用治具のストレート部材のサイズの異なる複数種のセットの平面図である。
【
図8】
図3、
図4に示す教示用治具のコーナー部材のサイズの異なる複数種のセットの平面図である。
【
図9】本実施形態に係る教示方法を説明するための教示用治具と、溶接用ロボットアームと、を示した模式的斜視図である。
【
図10】本実施形態に係る教示用治具を用いた教示方法の説明図である。
【
図11】
図3、
図4に示す教示用治具とサイズの異なるストレート部材、コーナー部材を用いた他の実施形態の教示用治具の平面図である。
【
図12】
図11に示す教示用治具のB-B線に沿う一部を破断した立面図である。
【
図13】教示用治具の他の実施形態の1つのコーナー部材の分解状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る教示用治具の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
まず、
図1を参照して、鋼管柱の突合せ部分近傍の構成について、詳細に説明する。
図1は、鋼管柱の突合せ部分の要部立面図である。
【0023】
図1において、鋼管柱1は、上下に配置された鋼管柱からなる柱同士の突合せ部分2を備えている。下部鋼管柱1Aおよび上部鋼管柱1Bは、四角形の角形鋼管柱であるが、これに限定されるものではなく、たとえば、四角形以外の多角形の角形鋼管柱(具体的には四面以上の多角形鋼管)であってもよく、角部にR部(曲率を有した)角形鋼管柱であれば特に限定されるものではない。
【0024】
下部鋼管柱1Aの上端面2aは、概ね水平方向に沿った平坦面(水平面)であり、上部鋼管柱1Bの下端面2bは、水平方向に沿って傾斜したテーパ面であり、上端面2aと下端面2bと間には、溶接用の開先2cが形成されている。下部鋼管柱1Aは、たとえば、コンクリート基礎1Cから鉛直状態に立設されており、上部鋼管柱1Bは、仮固定治具5により下部鋼管柱1Aと固定されている。下部鋼管柱1Aと上部鋼管柱1Bとを開先2cに沿って、溶接した後、仮固定治具5は、鋼管柱1から取り除かれる。なお、下部鋼管柱1Aが、コンクリート基礎1Cから立設した例を示したが、これに限られるものではなく、たとえば、下階の鋼管柱と柱継手を介して連結されていてもよい。
【0025】
下部鋼管柱1Aと上部鋼管柱1Bは、四角形の角形鋼管柱であり、4つの平面部と4つの湾曲部によって形成された多角形鋼管から構成されている。4つの平面部は、前面3Aと、前面3Aに隣接する両側面3B、3Cと、両側面3B、3Cに隣接し前面3Aと平行な背面3Dとを有し、前面3A、両側面3B、3Cおよび背面3Dが4つの湾曲面3Eを介して連続する断面四角形状に形成されている。
【0026】
下部鋼管柱1Aと上部鋼管柱1Bの外周面の平面部、すなわち、前面3A、両側面3B、3C、背面3Dの所定位置には、複数(ここでは4つ)の突片(エレクションピースともいう)4A、4Bが溶接されている。この突片4A、4Bは、下部鋼管柱1Aおよび上部鋼管柱1B同士を仮固定するために設けられている。上下に配置された2つの突片4A、4Bには、仮固定治具5が取り付けられ、下部鋼管柱1Aと上部鋼管柱1Bは仮固定状態となっている。
【0027】
仮固定治具5は、上下方向に延設されており、上側の端部はボルト6等を用いて突片4Aに締結されており、下側の端部はボルト6等を用いて突片4Bに締結されている。仮固定治具5は、ここでは詳細な説明を省略するが、上下に配置された2つの突片4A、4B同士の間の距離を調節可能に構成されていてもよい。これにより、上下に配置された下部鋼管柱1Aおよび上部鋼管柱1B同士の隙間を調節することが可能であるとともに、上側に配置された上部鋼管柱1Bの傾きを調節することが可能である。なお、仮固定治具5は下部鋼管柱1Aと上部鋼管柱1B同士の突合せ部分2の溶接が完了した際、または突合せ部分2の溶接途中であっても、下部鋼管柱1Aと上部鋼管柱1B同士の間の接合強度が建設中の建物を支持するのに十分な大きさになった際に、突片4A、4Bから取り外される。
【0028】
つぎに、このように仮固定された鋼管柱1の突合せ部分2の溶接について、
図2を参照して説明する。
図2(a)は、溶接工程の概略構成を示す説明図、
図2(b)は、鋼管柱の水平方向の模式的断面図である。
図2において、下部鋼管柱1A、上部鋼管柱1Bは、水平方向の断面において、前面3Aと、前面3Aに隣接する両側面3B、3Cと、両側面3B、3Cに隣接し前面3Aと平行な背面3Dとを有し、前面3A、両側面3B、3Cおよび背面3Dが4つの湾曲面3Eを介して連続する断面四角形状に形成されている。
【0029】
ここで、
図2(b)を参照して、鋼管柱1A(1B)の水平方向の断面について説明する。鋼管柱1A(1B)は、前記のとおり、4つの平面部と4つの湾曲部によって形成された多角形鋼管から構成され、前面3A、両側面3B、3Cと、背面3Dおよび4つの湾曲面3Eで全周が形成されている。前面3Aが直線部L1を形成し、側面3Bが直線部L2を形成し、背面3Dが直線部L3を形成し、側面3Cが直線部L4を形成している。また、4つの湾曲面3Eは、円弧状角部R1、R2、R3、R4を形成している。詳細には後述するが、治具本体の円弧状角部を形成するコーナー部材は、円弧状角部と直線部の少なくとも一部を含む形状となる。
【0030】
図2(a)において、ロボットアーム40(40A、40B)で、鋼管柱1の突合せ部分2を溶接するべく、鋼管柱1の下部鋼管柱1Aを所定の間隔を有して挟むように、下部鋼管柱1Aに一対のレール31が固定される。レール31は、リニアガイドレールであり、レール31には、台車(スライダ)32が取り付けられ、台車32は、図示しないモータにより、レール31に沿って走行自在となっている。
【0031】
なお、
図2(a)には示していないが、後述する
図9に示すように、レール31の下方には、レール31に沿って、補強部材72が取り付けられており、レール31は、一対の支持梁73、73と交差するように、補強部材72を介して一対の支持梁73、73に支持される。一対の支持梁73、73は、鋼管柱を挟むように、鋼管柱の固定されるものであり、ロボットアーム40の動作を教示する際には、固定柱12を挟むように、固定柱12に固定される。
【0032】
台車32、32には、一対の溶接用のロボットアーム40(40A、40B)が走行可能に装着されている。台車32の走行制御、後述するロボットアーム40の駆動制御、ロボットアーム40の先端に取り付けられたトーチ50による溶接条件に応じた溶接等は、制御装置(図示せず)により行われる。ロボットアーム40は、6軸で回動する多関節ロボットであり、溶接機に接続された溶接用ロボットアームである。
図2では、各レール31にロボットアーム40A、40Bが装着されている。
【0033】
ロボットアーム40は、台車32に取り付けられる基台と、基台に載置され、基台に対して旋回する旋回台41と、を備えている。旋回台41には、ロアアーム42が枢動自在に取り付けられている。ロアアーム42の先端には、関節部43が枢動自在に取り付けられている。関節部43には、アッパアーム44が、長手方向を軸心として回動自在に取り付けられている。ロボットアーム40Aは溶接範囲Aの溶接を実施し、ロボットアーム40Bは溶接範囲Bの溶接を実施するように構成されている。
【0034】
さらに、アッパアーム44の先端には、エンドエフェクタとなる溶接機のトーチ50を支持する支持アーム45が取り付けられている。支持アーム45は、アッパアーム44に対して、トーチ50には、溶接ワイヤを送給するケーブル91(後述する
図9参照)が接続されており、ケーブルの基端は溶接ワイヤを送給する送給装置(図示せず)に接続されている。
【0035】
ロボットアーム40のトーチ50の移動経路(溶接経路)は、周方向に沿って周回する開先2c(の溶接ライン)を、複数の溶接区間1L、1R、溶接区間2L、2Rに分割される。本実施形態では、エレクションピース4A、4Bを挟んだ4つの区間で開先2cの溶接ラインを分割している。なお、溶接ラインの分割は、前記の溶接ラインに限られるものでなく、レールに対して柱の平面部が平行でなく、略45度の角度で配置されたものでもよい。また、開先2cの溶接ラインを、4つの溶接区間に分割したが、溶接のし易さ、隙間の変化等などに応じて、作業者が、溶接区間を適切な数で分割してもよい。
【0036】
つぎに、柱同士の突合せ部分2をロボットアーム40の溶接トーチを突合せ部分2に沿わせて移動させるための教示用治具10について、
図3から
図6を参照して説明する。
図3は教示用治具10の平面図、
図4は
図3のA-A線に沿う立面図、
図5は教示用治具の治具本体を示す斜視図、
図6は
図5の治具本体の1つのコーナー部材を示す分解状態の斜視図である。
【0037】
下部鋼管柱1Aと上部鋼管柱1Bは、前記のように4つの平面部と4つの湾曲部によって形成された多角形鋼管から構成されている。すなわち、鋼管柱1は、軸方向と直交する断面において、
図2(b)に示すように、前面3A、両側面3B、3Cと、両側面3B、3Cに隣接し前面3Aと平行な背面3Dに相当する複数の直線部L1~L4と、直線部同士を繋ぐ円弧状角部R1~R4と、を有した多角形の形状の外面を有している。
【0038】
教示用治具10は、前記した鋼管柱1の外周面に相当する枠状の治具本体11と、治具本体11の中心部に位置し、治具本体11を着脱自在に固定する固定柱12とを備えている。治具本体11は、ストレート部材15とコーナー部材20により構成されている。本実施形態では、鋼管柱1は、多角形として、四角形の角形鋼管からなるため、多角形の形状に応じた個数として、治具本体11は、4つのストレート部材15と、ストレート部材15同士を連結する4つのコーナー部材20とで構成される。これらの8つの部材により、鋼管柱1の外周と同じ形状の枠状になっている。
【0039】
より詳細には、ストレート部材15は、たとえば、軟磁性材料を含む金属板材で形成され、直線部L1~L4の一部を形成する平板状の直線材16と、直線材16に接合され、支持する支持材17とを備えている。コーナー部材20も、軟磁性材料を含む金属板材で形成され、鋼管柱1の4つの湾曲面3E(の円弧状角部R1~R4)と同じ曲率半径を有する弧状部21と、弧状部21の両端から所定の長さで延在する直線状の線状部22、22と、が形成されている。したがって、コーナー部材20の各端部には、鋼管柱1の直線部L1~L4の一部に対応する部分が、線状部22、22として形成されている。ここで、軟磁性材料としては、たとえば鉄系材料などの磁石に吸着する材料を含むものであれば、その材料の種類は、特に限定されるものではなく、たとえば、樹脂材料に軟磁性粉末が分散していてもよい。ストレート部材15およびコーナー部材20は、軟磁性材料からなってもよく、これらのうち、後述する磁石によって連結される部分が、少なくとも軟磁性材料からなっていればよい。
【0040】
弧状部21は、4分の1円弧で形成されており、円弧を形成する内角が90度であるため、線状部22、22は直交するように伸びている。4つのコーナー部材20は、4つのストレート部材15の直線材16と同じ断面形状である。すなわち、
図6に示すように、コーナー部材20の線状部22の厚さt、高さhと、ストレート部材15の直線材16の厚さt、高さhとが等しく形成されている。
【0041】
コーナー部材20は、
図5等に示されるように、弧状部21の両端部に線状部22、22が連続して形成されており、コーナー部材20の各端部は、鋼管柱1の4つの平面部(前面3A、両側面3B、3Cおよび背面3D)を構成する直線部の一部L1~L4を形成している。すなわち、
図2(b)に示されるように、コーナー部材20は、たとえば前面3Aが構成する直線部L1と、側面3Bが構成する直線部L2に跨るように形成されており、線状部22、22は、前面3Aと側面3Bの直線部L1、L2の一部を形成している。
【0042】
教示用治具10の4つのストレート部材15と4つのコーナー部材20とは、永久磁石25で吸着される構成となっている。本実施形態では、
図6に示すように、4つのコーナー部材20の両端部(端面)に永久磁石25が皿ねじ26等で固着されている。永久磁石25は、たとえばサマリウムコバルトや、ネオジウム等の硬磁性材料が用いられ、4つのストレート部材15と4つのコーナー部材20を強固に連結固定するものである。これにより、ストレート部材15とコーナー部材20とを、永久磁石25により、簡単な操作で確実に連結することができる。なお、永久磁石25は、4つのストレート部材15側に固定してもよい。また、本実施形態では、永久磁石25を例示したが、たとえば、電磁石により、ストレート部材15とコーナー部材20戸を連結してもよく、永久磁石25と電磁石の双方を用いて、これらを連結固定してもよい。
【0043】
固定柱12は、
図4に示すように、教示用治具10の治具本体11を固定するものであり、水平方向に延在するベース13Aと、ベース13Aから鉛直方向に延在する柱部13Bと、を有している。なお、柱部13Bには、直交する4方向に向かって、水平方向に沿って延在するアーム部14が、接合されている。4つのアーム部14に、治具本体11の4つの支持材17が中継板18を介して固定されることで、治具本体11は固定柱12に着脱自在となっている。中継板18には、アーム部14が延在する方向に、取り付け調整用の長孔が形成されており、これにより、異なるサイズの治具本体11を、固定柱12に取り付けることができる。
【0044】
つぎに、前記した実施形態に示す治具本体11では、第1セットの4つのストレート部材15と、第2セットの4つのコーナー部材20で構成する例を示すが、教示用治具の治具本体11は、第1セットの4つのストレート部材15と、第2セットの4つのコーナー部材20のほかに、第1セットおよび第2セットを、それぞれ複数種のセットで有している。具体的には、第1セットは、ストレート部材15の直線部L1~L4に対応する直線材16の長さが異なる複数種のセットを有しており、第2セットは、円弧状角部R1~R4に対応する弧状部21の曲率半径が異なるとともに線状部22、22の長さが異なる複数種のセットを有している。ここで、第2セットで弧状部21の曲率半径が異なる複数種のセットを有している理由としては、溶接の対象となる実際の鋼管柱の円弧状角部の曲率半径が、鋼管柱の板厚(肉厚)に依存しているからである。たとえば、プレス成形角形鋼管(BCP)からなる鋼管柱の場合、r=3.5t(r:曲率半径、t:板厚)の関係を満たし、このような鋼管柱の形状を、後述する教示用治具により、再現することができる。
【0045】
これらの複数種のセットについて、
図7と、
図8を参照して以下に説明する。
図7は、教示用治具の複数種のストレート部材の平面図、
図8は教示用治具の複数種のコーナー部材の平面図である。なお、
図7と、
図8は、異なる縮尺で描かれている。
【0046】
図7に示す各第1セットのストレート部材15A~15Iは、直線材16の長手方向の長さが異なる複数種のものであり、固定柱12に固定される支持材17は同じ形状となっている。たとえば、(a)では直線材16の長さは254mmであり、(b)では304mm、(c)では354mm、(d)では404mm、(e)では454mm、(f)では504mm、(g)では554mm、(h)では604mm、(i)では654mmに設定されている。
【0047】
図8に示す各第2セットのコーナー部材20A~20Gは、弧状部21と線状部22、22で形成されている。たとえば、コーナー部材20A~20Gは、それぞれ弧状部21の曲率半径が相違しているとともに線状部22、22の長さが相違している。具体的には、(a)では、弧状部21が140mmの曲率半径の円弧で形成され、線状部22、22の長さはそれぞれ30mmに設定されている。
【0048】
さらに、
図8の(b)では、弧状部21の曲率半径126mm、線状部22、22の長さ44mm、(c)では、弧状部21の曲率半径112mm、線状部22、22の長さ58mm、(d)では、弧状部21の曲率半径98mm、線状部22、22の長さ72mm、(e)では、弧状部21の曲率半径87.5mm、線状部22、22の長さ82.5mm、(f)では、弧状部21の曲率半径77mm、線状部22、22の長さ93mm、(g)では、弧状部21の曲率半径66.5mm、線状部22、22の長さ103.5mmとなっている。
【0049】
本実施形態では、これらの複数種の第1セットのストレート部材15A~15Iおよび第2セットのコーナー部材20A~20Gを選択して、組み合わせることで、多種多様のサイズ(600~1000mm)の鋼管柱1に対応する教示用治具10を作製することができる。なお、弧状部21の曲率半径だけでなく弧状部21の円弧の長さを変化させることで多種多様な多角形鋼管にも対応できるようになる。
【0050】
前記のように構成された本実施形態の教示用治具10を用いた教示方法について以下に説明する。
まず、上述したように、上下に配置された鋼管柱1からなる柱同士の突合せ部分2を溶接するときは、
図2に示されるレール31に搭載されたロボットアーム40A、40Bを使用し、鋼管柱1の開先2cに沿ってロボットアームのトーチ50を移動させて、溶接経路を設定する。
図2の例では、ロボットアーム40Aは溶接範囲Aの領域を分担し、ロボットアーム40Bは溶接範囲Bの領域を分担するように設定される。
【0051】
本実施形態では、建設現場の鋼管柱で教示作業をする必要はなく、
図9に示すように、例えば、建設現場とは異なる作業所にレール31に載置されたロボットアーム40A、40Bを設置する。具体的には、ロボットアーム40A、40Bは、溶接する鋼管柱に対して、建設現場と同じ位置関係となるように、設置されている。このように設置されたロボットアーム40A、40Bに、
図9に示すように、固定柱12に、教示用治具10を固定し、ティチングペンダント(図示せず)等を用いて、作業者は、ロボットアーム40A、40Bに、溶接経路に沿ったロボットアーム40A、40Bの動作を教示させる。
【0052】
具体的には、溶接しようとしているサイズの鋼管柱1に合わせて、
図7、
図8に示す複数種第1セットのストレート部材15と、複数種の第2セットのコーナー部材20から必要なサイズの部材を選択する。そして、
図10に示すように、選択された第1セットの4つのストレート部材15と、第2セットの4つのコーナー部材20を、これらの端面において、永久磁石25で吸着させて連結し、枠状の治具本体11を作製する。作製された治具本体11を固定柱12のアーム部14に固定し、所定のサイズの教示用治具10を構成する。具体的には、中継板18に形成された長孔に支持材17の挿通孔を合わせてボルトナットで締結するとともに、中継板18の長孔とアーム部14の長孔を合わせてボルトナットで締結して、治具本体11を固定柱12に固定する。
【0053】
作製された治具本体11は、鋼管柱1と同様に、複数の直線部と、直線部同士を繋ぐ円弧状角部と、を有した多角形の形状の外面を有しており、溶接しようとする鋼管柱1に見合うものとなっている。本実施形態の教示方法では、作業所等の水平な基盤19上に教示用治具10を固定し、治具本体11を柱の突合せ部分2に見立てて、治具本体11の外周面に沿った経路において、間隔を空けてトーチ50の先端を接触させることにより、溶接用ロボットアームの動作を教示させる。
【0054】
具体的には、
図10に示すように、治具本体11を構成するストレート部材15の直線材16と、コーナー部材20の線状部22に対して、間隔を空けてロボットアーム40のプローブ(先端)を接触させる。具体的には、線状部22の位置P1、P2にプローブを接触させ、2点で線状部22を経路として特定する。さらに、隣接する弧状部21の位置P3、P4、P5にプローブを接触させ、3点で弧状部21を経路として特定する。さらに、隣接する線状部22の位置P6、P7にプローブを接触させ、2点で線状部22を経路として特定する。このように、治具本体11の外周面に沿った経路において、ロボットアーム40の動作を教示させることができる。このようにして、順次、位置P1~P16まで、順にプローブを接触させながら、ロボットアーム40の動作を教示させることができる。
【0055】
このようにして、教示用治具10の治具本体11を用いて、溶接範囲A、Bを経路として教示させ、治具本体11の外周面に沿った全周の経路を教示させることができる。このように、本実施形態の教示用治具10を用いることで溶接用ロボットアーム40の先端を、間隔を空けて接触させ、建設現場でなくても作業所等で容易にロボットアーム40の動作を教示させることができる。
【0056】
つぎに、教示用治具10の他の実施形態について説明する。たとえば、
図11、
図12に示される教示用治具10Aは、
図7のストレート部材15Iと、
図8のコーナー部材20Gとを組み合わせて作製したものである。
図11に示される大型の鋼管柱に相当する教示用治具10Aから、
図3から
図5に示される小型の鋼管柱に相当する教示用治具10等の複数種の教示用治具を容易に組み合わせて、溶接用のロボットアームの動作を教示するための教示用治具を作製することができる。
【0057】
この実施形態の教示用治具10Aの治具本体11Aは、前記した実施形態の治具本体11と比較して外形が大きく形成されている。このため、治具本体11Aを構成するストレート部材15の支持材17と、固定柱12のアーム部14とを繋ぐ中継板18Aは、
図5に示す中継板18に比べて長尺に形成されている。本実施形態でも、同様に、中継板18Aに形成された長孔に支持材17の挿通孔を合わせてボルトナットで締結するとともに、中継板18の長孔とアーム部14の長孔を合わせてボルトナットで締結して治具本体11Aを固定柱12に固定する。
【0058】
このようにして、外形の大きい大型の鋼管柱1の場合でも、大型の治具本体11Aを用いて、ロボットアーム40の先端を移動させる溶接用ロボットアームの動作を、建設現場に限らず作業所等で容易に教示することができる。
【0059】
以上、本実施形態によれば、ストレート部材15で構成される第1セットと、コーナー部材20で構成される第2セットとは、複数種のセットで構成されているため、鋼管柱1に合わせて、複数種のストレート部材15およびコーナー部材20から選択して治具本体11を作製することができる。この結果、実際に溶接するサイズに応じた教示用の鋼管柱を準備しなくても、この鋼管柱1のサイズに応じて作製した教示用治具10により、安価かつ簡単にロボットアーム40の動作を、予め教示することができる。
【0060】
さらに、本実施形態では、第1セットのストレート部材15と、第2セットのコーナー部材20とを連結する連結部分が、円弧状角部R1~R4の両端からオフセットした直線部L1~L4に形成され、コーナー部材20の途中に、円弧状角部R1~R4の両端が形成される。この結果、作製された治具本体11に対して、円弧状角部R1~R4の両端のより正確な位置を特定することができる。これにより、ロボットアーム40の動作を、より正確に教示することができる。
【0061】
つぎに、
図13を参照して、教示用治具の他の実施形態について説明する。
図13は、教示用治具の他の実施形態の治具本体を示す要部斜視図である。
図13において、教示用治具は、治具本体11Bを構成するコーナー部材20とストレート部材15に特徴がある。
【0062】
前記した実施形態では、治具本体11を構成するストレート部材15とコーナー部材20は、軟磁性材料からなり、ストレート部材15とコーナー部材20とが連結される少なくとも一方の端面には、永久磁石25が取り付けられている。これに対して、この教示用治具の治具本体11Bでは、ストレート部材またはコーナー部材のいずれか一方の部材には、他方の部材の表面のうち、多角形(四角形)の内側に位置する内面に当接する裏打ち板27が溶接等で固着されている。
【0063】
本実施形態では、コーナー部材20の内周側の面には、コーナー部材20の縦方向幅より狭い幅の裏打ち板27が、コーナー部材20の端面より、ストレート部材15側に突出するように固着されている。裏打ち板27には、ストレート部材15と連結するための連結ボルト28を挿通する貫通孔27aが形成されている。一方、ストレート部材15の直線材16には、裏打ち板27の貫通孔27aとともに連結ボルト28を挿通するための貫通孔16aが形成されている。
【0064】
このようにして、裏打ち板27とストレート部材15とを重ねた状態で、裏打ち板27とストレート部材15に形成された貫通孔27a、16aに、連結ボルト28が挿通し、ストレート部材15とコーナー部材20とが連結される。より具体的には、コーナー部材20の端面にストレート部材15の端面を当接させ、ストレート部材15の貫通孔16aから連結ボルト28を挿通し、裏打ち板27の貫通孔27aを通してナットを締めることで、ストレート部材15とコーナー部材20とを連結することができる。この実施形態では、治具本体11Bを構成するストレート部材15とコーナー部材20との結合状態を安定させることができる。なお、裏打ち板27はコーナー部材20に固着されているが、ストレート部材15に固着されるように構成してもよい。
【0065】
なお、この実施形態では、ストレート部材15とコーナー部材20とは、軟磁性材料から形成される必要は特にないが、軟磁性材料から形成してもよく、この場合、この実施形態において、永久磁石25を併用してもよい。
【0066】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【0067】
たとえば、教示用治具10において、治具本体11と固定柱12とを固定する構成で、アーム部14と支持材17とを中継板18を介して固定する例を示したが、支持材17を内周側にさらに延在させて、アーム部14を外周側にさらに延在させることで中継板を省略し、アーム部14に支持材17を直接固定するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1:鋼管柱、1A:下部鋼管柱、1B:上部鋼管柱、2:突合せ部分、3A:前面、3B、3C:両側面、3D:背面、3E:湾曲面、10、10A:教示用治具、11、11A、11B:治具本体、12:固定柱、15、15A~15I:ストレート部材、16:直線材、17:支持材、20、20A~20G:コーナー部材、21:弧状部、22:線状部、25:永久磁石、27:裏打ち板、40、40A、40B: (溶接用)ロボットアーム、L1~L4:直線部、R1~R4:円弧状角部