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特開2023-4979アレイ検知による短波長特徴X線回折装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004979
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】アレイ検知による短波長特徴X線回折装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/207 20180101AFI20230110BHJP
   G01N 23/20008 20180101ALI20230110BHJP
【FI】
G01N23/207
G01N23/20008
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101826
(22)【出願日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】202110709363.2
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521285296
【氏名又は名称】中国兵器工業第五九研究所
【氏名又は名称原語表記】THE 59TH INSTITUTE OF CHINA ORDNANCE INDUSTRY
【住所又は居所原語表記】33 Yuzhou Road, Jiulongpo District, Chongqing 400039, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】鄭 林
(72)【発明者】
【氏名】竇 世涛
(72)【発明者】
【氏名】陳 新
(72)【発明者】
【氏名】張 倫武
(72)【発明者】
【氏名】張 津
(72)【発明者】
【氏名】伍 太賓
(72)【発明者】
【氏名】車 路長
(72)【発明者】
【氏名】王 成章
(72)【発明者】
【氏名】周 ▲クン▼
(72)【発明者】
【氏名】趙 方超
(72)【発明者】
【氏名】何 長光
(72)【発明者】
【氏名】封 先河
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA18
2G001CA01
2G001DA08
2G001KA07
2G001KA08
2G001LA02
2G001SA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、アレイ検知による短波長特徴X線回折測定装置、及び当該装置による測定分析方法を開示する。
【解決手段】回折測定装置のアレイ検知器は、サンプル被測定部位物質によって回折されるとともに、受信コリメータの光通過孔を通過した回折線、受信コリメータの光通過孔を通過した他の迷光線、及び位置決め孔を通過した放射線のみを検知し受信し、光通過孔の第1のインナーコーン辺の延長線と、第2のインナーコーン辺との延長線は、入射X線ビームの中心線で交差し、交差点は装置の回折装置円の円心であり、サンプル被測定部位は装置の回折装置円の円心に位置し、前記方法は回折測定装置を使用する。本発明によれば、センチメートルレベルの厚さのサンプル内部の1つの部位の回折パターンを迅速に非破壊検出でき、サンプル内部の1つの部位の位相、テクスチャー、応力などの結晶体構成、及びその構成変化に対する迅速な非破壊検出分析を実現する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線照射システム、サンプル台及びX線検知システムを含む、アレイ検知による短波長特徴X線回折測定装置であって、
X線照射システムは、放射源と入射コリメータ(2)とを含み、放射源は、原子番号が55より大きい重金属ターゲットX線管(1)、供給電圧レベルが160kv以上である高圧電源及びそのコントローラを含み、X線照射システムが放出したX線は、入射コリメータ(2)を通過した後、入射X線ビーム(7)を形成し、サンプル台に固定されるサンプルの被測定部位に照射し、X線検知システムは、サンプル内部の被測定部位によって回折された短波長特徴X線強度、及びその分布を定時に測定し、X線検知システムは、受信コリメータ(4)、及び受信コリメータ(4)にマッチングするアレイ検知器(5)を含む短波長特徴X線回折測定装置であって、
前記アレイ検知器(5)は、サンプル被測定部位物質によって回折されるとともに、前記受信コリメータ(4)の光通過孔A(6)を通過した回折線(8)、及び前記受信コリメータ(4)の光通過孔A(6)を通過した他の迷光線のみを検知し受信し、
前記光通過孔A(6)の第1のインナーコーン辺(61)の延長線と、第2のインナーコーン辺(62)の延長線とは前記入射X線ビーム(7)の中心線で交差し、当該交差点は前記装置の回折装置円の円心であり、サンプル被測定部位は前記装置の回折装置円の円心に位置することを特徴とする短波長特徴X線回折測定装置。
【請求項2】
前記アレイ検知器(5)の各検知画素はいずれも単一光子測定であり、2つ以上のエネルギー閾値を有するマルチエネルギーアレイ検知器を使用し、設定したエネルギー閾値に基づき、各画素は何れも1本の短波長特徴X線を測定でき、又は、前記アレイ検知器(5)はエネルギー分散型アレイ検知器を使用することを特徴とする請求項1に記載の短波長特徴X線回折測定装置。
【請求項3】
前記入射コリメータ(2)の光通過孔B(21)は、円孔又は矩形孔であり、前記入射コリメータ(2)の長さは20mm~200mmであり、発散度合いは0.02°~0.5°であることを特徴とする請求項1に記載の短波長特徴X線回折測定装置。
【請求項4】
前記受信コリメータ(4)の長さは100mm~1200mmであり、前記受信コリメータ(4)の光通過孔A(6)の第1のインナーコーン辺(61)と、前記入射X線ビーム(7)との間の夾角はγであり、γの値の範囲は2°~10°であり、前記光通過孔A(6)の第1のインナーコーン辺(61)と第2のインナーコーン辺(62)との間の夾角はδであり、δの値の範囲は0.5°~6°であり、且つγ+δは12°以下であることを特徴とする請求項1に記載の短波長特徴X線回折測定装置。
【請求項5】
前記受信コリメータ(4)の中間部には位置決め孔(10)が設けられ、位置決め孔(10)の軸線は前記入射コリメータ(2)の中心線と重なって、位置決め孔(10)内にはX線吸収装置(11)がさらに設けられ、
前記入射コリメータ(2)、前記受信コリメータ(4)及び前記アレイ検知器(5)の遮蔽箱は何れも遮蔽要求を満たす重金属材料から製造され、他の部位、他の方向からの迷光であるX線を遮蔽し、X線が前記入射コリメータ(2)の光通過孔B(21)、前記受信コリメータ(4)の光通過孔A(6)、前記位置決め孔(10)及びそのX線吸収装置から通過してから、前記アレイ検知器(5)の遮蔽箱の受信ウインドウを介して、前記アレイ検知器(5)の検知領域に入るようにすることを特徴とする請求項4に記載の短波長特徴X線回折測定装置。
【請求項6】
前記X線照射システム、サンプル台及び前記X線検知システムは同一プラットフォームに固定され、サンプル(3)はサンプル台の平行移動ステージ(31)に固定され、平行移動ステージ(31)はΦ角回転ステージ(32)に固定され、Φ角回転ステージ(32)はΨ角回転ステージ(33)に固定され、Ψ角回転ステージ(33)は前記同一プラットフォームに固定され、Φ角回転ステージ(32)とΨ角回転ステージ(33)との回動軸は互いに垂直するとともに、回折装置円の円心(9)で交差することで、Φ角が回動するか、それともΨ角が回動するかに関わらず、サンプル(3)の被測定部位は常に回折装置円の円心(9)に位置し、その座標を(0,0,0)に設定し、
又は、
前記X線照射システム、前記X線検知システムは、Ψ角回転ステージ(33)に固定され、Ψ角回転ステージ(33)と、平行移動ステージ(31)とΦ角回転ステージ(32)とからなるサンプル台とは1つのプラットフォームに固定され、サンプル(3)はサンプル台の平行移動ステージ(31)に固定され、平行移動ステージ(31)はΦ角回転ステージ(32)に固定され、Φ角回転ステージ(32)は前記1つのプラットフォームに固定され、Φ角回転ステージ(32)とΨ角回転ステージ(33)との回動軸は互いに垂直するとともに、回折装置円の円心(9)で交差することで、Φ角が回動するか、それともΨ角が回動するかに関わらず、サンプル(3)の被測定部位は常に回折装置円の円心(9)に位置し、その座標を(0,0,0)に設定することを特徴とする請求項5に記載の短波長特徴X線回折測定装置。
【請求項7】
前記位置決め孔(10)の中心線と前記入射コリメータ(2)の中心線とは同一直線にあり、Ψ=0°の場合、平行移動ステージ(31)のZ軸に平行し、サンプルが回動するか、それとも平行移動するかに関わらず、回折されたデバイリング円心位置の座標は何れも変更されず、回折装置円の円心(9)からアレイ検知器(5)までの距離はtであり、tの値は150mm~1500mmであり、デバイリング円心位置の座標を(0,0,-t)に設定することを特徴とする請求項5に記載の短波長特徴X線回折測定装置。
【請求項8】
前記アレイ検知器(5)の各画素仕様範囲は0.02mm~0.2mmであり、前記アレイ検知器(5)はテルル化カドミウムアレイ検知器、テルル化カドミウム亜鉛アレイ検知器又はヒ化ガリウムアレイ検知器を使用することを特徴とする請求項7に記載の短波長特徴X線回折測定装置。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の短波長特徴X線回折測定装置の測定分析方法であって、以下のステップを含み、
ステップ1:サンプルの材質及び厚さに基づき、適切な波長の短波長特徴X線を選択し、前記アレイ検知器(5)の2つのエネルギー閾値を設定し、
ステップ2:サンプル(3)をサンプル台に固定し、サンプル被測定部を回折装置円の円心(9)に位置させ、
ステップ3:選択した短波長特徴X線に基づき、1.5倍ターゲット材励起電圧以上の管電圧を印加し、X線照射システムをオンにし、
ステップ4:露光して、被測定部位結晶体物質によって回折されたデバイリング又は回折パターンを測定し、ピークを決定し、粉末回折カードと比較して、被測定部位結晶体物質の位相を決定し、
ステップ5:被測定部位の主な位相のテクスチャー又は配向をテストしようとすると、Ψ角回転ステージ(33)を回動させることで、ステッピング走査測定を行って、露光し、異なるΨ角での被測定部位結晶体物質によって回折されたデバイリングを測定し、ピークを決定し、各回折結晶面デバイリングの各方向の回折強度を測定し、回折経路の長さに基づき、吸収校正を行って、校正後の各回折結晶面デバイリングの各方向の回折強度を取得し、これにより、主な位相の複数の強い回折結晶面と、比較的に強い回折結晶面との透過極線図を算出し、結晶系タイプに基づき、主な位相の複数の強い回折結晶面の透過極線図を選択し、対応する回折結晶面の完全極線図、又は配向分布関数(ODF)を算出し、
ステップ6:被測定部位の残留応力をテストしようとすると、主な位相の1つの(hkl)結晶面、又は複数の(hkl)結晶面の複数の方向歪みを測定し、弾性力学の応力歪み関係に基づき、サンプル被測定部位の応力テンソルσを算出し、
ステップ7:サンプル内部の別の1つの部位の内部位相、テクスチャー、応力をテストしようとすると、全ての測定対象となる部位のテストを完成するまで、ステップ4、ステップ5、及びステップ6を繰り返して、データを処理した後、サンプルの各部位の内部位相、テクスチャー、応力など、及びその分布を取得することを特徴とする測定分析方法。
【請求項10】
ステップ6において、平面応力状態にあるサンプルに対する残留応力テストは、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位の各結晶面によって回折されたデバイリング又は強い回折スポットに対してそれぞれ露光測定を1回行うだけで、サンプル被測定部位の応力テンソルσを測定でき、Ψ角回転ステージ(33)を回動させることで、サンプル被測定部位及び応力なしサンプルの対応する部位の表面法線方向は前記入射ビーム(7)と重なるようにし、そして、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位の各結晶面によって回折されたデバイリングに対してそれぞれ露光測定を行って、ピークを決定して、サンプル被測定部位各結晶面各方向の回折角2θs-hkl、及び応力なしサンプルの対応する部位の各結晶面の各方向の回折角2θ0-hklを取得し、式(1)に従って、歪みε(90°-θhkl、Φ)を算出し、式(2)、(3)に従って、サンプル被測定部位の応力テンソルσを算出し、
複数の強い回折結晶面と比較的に強い回折結晶面(hkl)とのデバイリング又は強い回折スポットを同時に測定すると、複数の強い回折結晶面と比較的に強い回折結晶面(hkl)結晶面とのε(90°-θhkl、Φ)及びその分布を算出でき、取得した複数の強い回折結晶面と比較的に強い回折結晶面(hkl)結晶面とのε(90°-θhkl、Φ)及びその分布に基づき、対応する複数の応力テンソルσをそれぞれ算出でき、そして、算術平均方法又は最小二乗法計算を使用し、より正確な応力テンソル
【数1】
を算出することを特徴とする請求項9に記載の測定分析方法。
【請求項11】
強いテクスチャーが存在するサンプルに対する残留応力テストにおいて、歪みの測定方向はテクスチャー状況に基づき決定され、測定対象となる強い回折結晶面(hkl)を選択し、回折強度極大値方向が(hkl)結晶面極線図の最も外輪にあるとともに、2つの主応力εxx、εyy方向又は付近方向にあり、露光し測定して、ε(90°-θhkl、90°+α)、ε(90°-θhkl、β)を取得し、式(4)、(5)に従って、2つの主応力σxx、σyy方向の主歪みεxx及びεyyを算出し、εxx及びεyyを式(2)、(3)に代入し、最後、2つの主応力σxx、σyy、即ち、サンプル被測定部位の応力テンソルσを算出することを特徴とする請求項10に記載の測定分析方法。
【請求項12】
ステップ6において、一般応力状態にあるサンプルに対して、2つの異なるΨ角のみで、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位の各結晶面によって回折されたデバイリング又は強い回折スポットに対してそれぞれ露光測定を1回行うだけで、サンプル被測定部位の応力テンソルσを測定でき、まず、Ψ=Ψになるように、Ψ角回転ステージ(33)を回動させ、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位に対してそれぞれ露光し、各結晶面によって回折されたデバイリングを測定し、そして、サンプルをΨ=Ψ2まで回動させ、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位に対して再びそれぞれ露光し、各結晶面によって回折されたデバイリング又は強い回折スポットを測定し、ピークを決定し、(hkl)結晶面の6つの方向ピーク決め結果2θs-hkl及び2θ0-hklを選択し、式(1)に従って、6つの(Ψ、Φ)方向(hkl)結晶面の歪みε(Ψ、Φ)を算出し、式(6)に従って、連立一次方程式を解いて、歪みεij(i=x,y,z;j=x,y,z)を取得でき、εijに対して線形変換を行うと、3つの主歪みε XX、ε YY、ε ZZを取得でき、最後、式(7)に従って、サンプル被測定部位の応力テンソルσを算出することを特徴とする請求項9に記載の測定分析方法。
【請求項13】
強いテクスチャー材料が存在するサンプルに対する残留応力テストにおいて、歪みの測定方向はテクスチャー状況に基づき決定され、測定対象となる強い回折結晶面(hkl)の回折強度極大値方向を選択し、歪みを測定し、具体的に、Ψ角回転ステージ(33)を回動させることで、異なるΨ角のサンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位によって回折されたデバイリングに対して露光測定を行って、強い回折結晶面と比較的に強い回折結晶面(hkl)との6つの強い回折スポットを選択し、ピークを決定し、式(1)に従って、6つの方向歪みε(Ψ、Φ)を算出し、式(6)の連立一次方程式に従って、線形変換を行うと、3つの主歪みε XX、ε YY、ε ZZを取得でき、弾性力学式(7)に従って、最後、サンプル被測定部位の応力テンソルσ、又は3つの主応力σ XX、σ YY、σ ZZの大きさ及び方向を取得することを特徴とする請求項12に記載の測定分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線非破壊検出技術分野に関して、具体的に、アレイ検知による短波長特徴X線回折測定装置、及び当該装置による測定分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鄭林等が発表した、「精密成形工学」という定期刊行物の文献である「予め引張された厚いアルミ板の内部の残留応力と結晶粒方位の均一性の研究」は、SWXRD-1000型短波長X線回折装置を使用して、厚さが20mm~25mmである予め引張されたアルミ板の内部のある位置の物質によって回折されたWKα1回折強度の、回折角2θに沿う分布、即ち、回折スペクトルを定時的に非破壊検出することを紹介している。ところが、当該短波長X線回折装置を使用して検出すると、1回、1つの方向のWKα1回折強度しか測定できず、数十個の2θでのWKα1回折強度をステッピング走査し測定してこそ、被測定部位のAl(111)結晶面回折スペクトルのみを測定でき、Al(111)結晶面ピッチを算出でき、数十分かかる。当該位置の物質の完全な回折スペクトルを測定しようとすると、数時間がかかってステッピング走査を行う必要があり、そして、回折パターンの僅かな一部の回折情報しか測定できない。ともかく、上記回折スペクトルテスト分析技術には、測定時間が長すぎて、測定した回折情報が極めて少ないという問題が存在し、材料/ワークピース内部の位相、テクスチャー、残留応力などに対する定時的な非破壊検出分析は、より長い時間がかかって、当該技術の応用をひどく制約する。従って、回折情報をより迅速且つ多く取得するための方法及び装置は、当該技術分野の重点にある。
【0003】
また、文献CN111380880Aは回折装置を提供し、被測定サンプルの測定部位にX線を照射するX線照射システムと、X線が被測定サンプルの複数の部位で回折して形成した複数本の回折X線を検知することにより、被測定サンプルの複数の部位のX線回折強度分布を測定するX線検知システムとを含み、前記検知されるX線は短波長特徴X線であり、前記X線検知システムは平行光のアレイ検知システムである。当該装置を使用して、ワークピースの内部結晶体配向の均一性を迅速に検出できるが、それはサンプルの多部位の物質回折の1つの方向に対して同時にイメージングし、サンプルの1つの部位の物質回折の多方向の同時イメージング、及びサンプルの1つの部位の物質によって回折されたデバイリング又は回折パターンの同時イメージングを実現できず、同時にイメージングされるデバイリング又は回折パターンに基づき、サンプルの1つの部位の物質の位相、テクスチャー、応力などに対する迅速な非破壊検出分析を行うことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、アレイ検知による短波長特徴X線回折測定装置、及び当該装置による測定分析方法を提供することを目的とし、少なくともサンプル内部の位相、テクスチャー、応力を定時且つ迅速に非破壊検出、分析でき、従来の回折装置及び方法が定時且つ迅速な非破壊検出分析を実現できないという問題を解决する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の目的は以下に記載の技術案により実現される。
【0006】
X線照射システム、サンプル台及びX線検知システムを含む、アレイ検知による短波長特徴X線回折測定装置であって、
X線照射システムは放射源と入射コリメータとを含み、放射源は、原子番号が55より大きい重金属ターゲットX線管、供給電圧レベルが160kv以上である高圧電源、及びそのコントローラを含み、入射コリメータはサンプルに入射されるX線ビームの発散度合い、断面形状及び大きさを限定し、X線照射システムが放出したX線は、入射コリメータを通過した後、入射X線ビームを形成し、サンプル台に固定されるサンプル(本発明において、前記サンプルはいずれも被測定サンプルを指す)の被測定部位に照射し、X線検知システムはサンプル内部の被測定部位によって回折された短波長特徴X線強度、及びその分布を定時に測定し、X線検知システムは受信コリメータ、及び受信コリメータにマッチングするアレイ検知器を含む短波長特徴X線回折測定装置であって、
前記アレイ検知器は、サンプル被測定部位物質によって回折されるとともに、前記受信コリメータの光通過孔Aを通過した回折線、及び前記受信コリメータの光通過孔Aを通過した他の迷光線のみを検知し受信し、
前記光通過孔Aの第1のインナーコーン辺の延長線と、第2のインナーコーン辺の延長線とは前記入射X線ビームの中心線で交差し、当該交差点は前記装置の回折装置円の円心であり、サンプル被測定部位は前記装置の回折装置円の円心に位置することを特徴とする短波長特徴X線回折測定装置。
【0007】
好適な技術案として、前記アレイ検知器の各検知画素はいずれも単一光子測定であり、2つ又は2つ以上のエネルギー閾値を有するマルチエネルギーアレイ検知器を使用し、設定したエネルギー閾値に基づき、各画素は何れも1本の短波長特徴X線を測定でき、又は、前記アレイ検知器はエネルギー分散型アレイ検知器を使用し、その各画素は何れも1本又は複数本の短波長特徴X線を測定できる。より好適な技術案として、前記アレイ検知器には、迷光であるX線を遮蔽する遮蔽箱が装着される。
【0008】
好適な技術案として、前記入射コリメータの光通過孔Bは円孔又は矩形孔であり、前記入射コリメータの長さは20mm~200mmであり、発散度合いは0.02°~0.5°である。
【0009】
好適な技術案として、前記受信コリメータの長さは100mm~1200mmであり、前記受信コリメータの光通過孔Aの第1のインナーコーン辺と、前記入射X線ビームとの間の夾角はγであり、γの値の範囲は2°~10°であり、前記光通過孔Aの第1のインナーコーン辺と第2のインナーコーン辺との間の夾角はδであり、δの値の範囲は0.5°~6°であり、且つγ+δは12°以下である。
【0010】
操作を便利にして、検出結果の正確さをさらに向上させるために、前記受信コリメータの中間部には回折パターンの位置決め孔が設けられ、位置決め孔の軸線は入射X線ビームの中心線(即ち、前記入射コリメータ中心軸線)と重なって、位置決め孔内にはX線吸収装置がさらに設けられ、X線吸収装置は、アレイ検知器がハイスループットの入射X線ビームにより照射され損壊されることを防止する上に、X線吸収装置を通過した入射X線の強度分布を検知することで、透過X線の最大強度の位置を決定でき、即ち、回折が生じた際のデバイリング又は回折パターンの円心位置を決定でき、
前記入射コリメータ、前記受信コリメータ及び前記アレイ検知器の遮蔽箱は何れも遮蔽要求を満たす重金属材料から製造され、他の部位、他の方向からの迷光であるX線を遮蔽し、X線が前記入射コリメータの光通過孔B、前記受信コリメータの光通過孔A、前記位置決め孔及びそのX線吸収装置から通過してから、前記アレイ検知器の遮蔽箱の受信ウインドウを介して、前記アレイ検知器の検知領域に入るようにする。
【0011】
本発明の2つの好適な技術案として、前記X線照射システム、サンプル台及び前記X線検知システムは同一プラットフォームに固定され、サンプルはサンプル台の平行移動ステージに固定され、平行移動ステージはΦ角回転ステージに固定され、Φ角回転ステージはΨ角回転ステージに固定され、Ψ角回転ステージは前記同一プラットフォームに固定され、Φ角回転ステージとΨ角回転ステージとの回動軸は互いに垂直するとともに、回折装置円の円心で交差することで、Φ角が回動するか、それともΨ角が回動するかに関わらず、サンプルの被測定部位は常に回折装置円の円心に位置し、
又は、
前記X線照射システム、前記X線検知システムはΨ角回転ステージに固定され、Ψ角回転ステージと、平行移動ステージとΦ角回転ステージとからなるサンプル台とは1つのプラットフォームに固定され、サンプルはサンプル台の平行移動ステージに固定され、平行移動ステージはΦ角回転ステージに固定され、Φ角回転ステージは前記1つのプラットフォームに固定され、Φ角回転ステージとΨ角回転ステージとの回動軸は互いに垂直するとともに、回折装置円の円心で交差することで、Φ角が回動するか、それともΨ角が回動するかに関わらず、サンプルの被測定部位は常に回折装置円の円心に位置する。
【0012】
さらに、前記位置決め孔の中心線と前記入射コリメータの中心線とは同一直線にあり、Ψ=0°の場合、平行移動ステージのZ軸に平行し、サンプルが回動するか、それとも平行移動するかに関わらず、回折されたデバイリング円心位置の座標は何れも変更されず、即ち、入射X線ビームの、アレイ検知器に達する座標位置は変更されず、図6に示すように、デバイリング円心位置の座標を(0,0,0)に設定する。前記装置の回折装置円の円心から、アレイ検知器までの距離tは150mm~1500mmであり、即ち、サンプル被測定部位からアレイ検知器までの距離はtである。
【0013】
本発明に記載の装置は被測定部位によって回折されたデバイリングを直観的に測定でき、X線回折フラットパネルカメラが撮影したものに類似する回折パターン(diffractionpattern)を取得する。露光し回折パターンを測定した場合、(hkl)結晶面のある方向の回折ピークをピーク決定した後、デバイリング円心座標(x、y、-t)を取得し、図6に示すように、当該回折ピークの回折角2θは
【数1】
を満たすため、ピークを決定してその座標(x、y、-t)を取得した後、回折角2θを算出できる。
【0014】
好適な技術案として、前記アレイ検知器の各画素仕様範囲は0.02mm~0.2mmであり、前記アレイ検知器はテルル化カドミウムアレイ検知器、テルル化カドミウム亜鉛アレイ検知器又はヒ化ガリウムアレイ検知器を使用する。
【0015】
上記短波長特徴X線回折測定装置による測定分析方法は、短波長特徴X線の透過回折法を使用し、そのステップは以下の通り、
ステップ1:サンプルの材質及び厚さに基づき、適切な波長の短波長特徴X線(例えば、タングステンターゲットX線管が放射するWkα、又はウランターゲットX線管が放射するUkαなど)を選択し、前記アレイ検知器の2つのエネルギー閾値を設定することで、アレイ検知器の各画素が、選択した短波長特徴X線(例えばWkα又はWkα、或いは、Ukα若しくはUkαなど)を検知する。
ステップ2:サンプルをサンプル台に固定し、サンプル被測定部を回折装置円の円心に位置させる。
ステップ3:選択した短波長特徴X線に基づき、1.5倍ターゲット材励起電圧以上の管電圧を印加し、X線照射システムをオンにする。
ステップ4:露光し、被測定部位結晶体物質によって回折されたデバイリング又は回折パターンを測定し、ピークを決定し、粉末回折カードと比較して、被測定部位結晶体物質の位相を決定する。
ステップ5:被測定部位の主な位相のテクスチャー又は配向をテストしようとすると、Ψ角回転ステージを回動させることで、ステッピング走査測定を行って、露光し、異なるΨ角での被測定部位結晶体物質によって回折されたデバイリングを測定し、ピークを決定し、各回折結晶面デバイリングの各方向の回折強度を測定し、回折経路の長さに基づき、吸収校正を行って、校正後の各回折結晶面デバイリングの各方向の回折強度を取得し、これにより、主な位相の複数の強い回折結晶面と、比較的に強い回折結晶面との透過極線図を算出し、結晶系タイプに基づき、主な位相の複数の強い回折結晶面の透過極線図を選択し、対応する回折結晶面の完全極線図、又は配向分布関数(ODF)を算出する。
注釈:晶系が異なるため、対称性が異なって、対称性が高い結晶系であるほど、対応する回折結晶面の完全極線図、又は配向分布関数(ODF)を算出するための透過極線図の数が少なくて、上記異なるθで、被測定部位結晶体物質によって回折されたデバイリングの測定で、計算を必要とする主な位相回折結晶面(デバイリング)の数が少なく、例えば、fcc結晶系に対して、3つの強い回折結晶面の透過極線図のみをテストすれば、計算し、対応する完全極線図又は配向分布関数(ODF)を取得でき、(111)、(200)、(220)結晶面などを測定した三強線の透過極線図のみを利用すれば、対応する回折結晶面の完全極線図、又は配向分布関数(ODF)を算出できる。
ステップ6:被測定部位の残留応力をテストしようとすると、主な位相の1つの(hkl)結晶面、又は複数の(hkl)結晶面の複数の方向歪みを測定し、弾性力学の応力歪み関係に基づき、サンプル被測定部位の応力テンソルσを算出する。
(1)平面応力状態にあるサンプルに対する残留応力テスト。
(a)強くないテクスチャー材料のサンプルに対して、Ψ角回転ステージをそれぞれ回動させることで、サンプル、応力なしサンプルを回動させ、これによって、サンプル被測定部位及び応力なしサンプルの対応する部位の表面法線方向は入射ビームと重なって、露光し、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位の各結晶面によって回折されたデバイリング又は強い回折スポットをそれぞれ測定し、ピークを決定し、サンプル被測定部位の各結晶面の各方向の回折角2θs-hkl、及び応力なしサンプルの対応する部位の各結晶面の各方向の回折角2θ0-hklを取得し、ある(hkl)結晶面(例えば、Al(111)結晶面)に対して、歪みに基づき、
【数2】
サンプル被測定部位の表面法線方向との夾角が90°-θhklであることを算出し、サンプル被測定部位の表面法線方向を軸として取り囲まれた(hkl)結晶面の各方向歪みε(90°-θhkl、Φ)、及びその分布を取得する。
式において、ds-hklはサンプル被測定部位の被測定方向の(hkl)結晶面ピッチであり、d0-hklは応力なしサンプルの対応する部位の対応する方向の対応する結晶面ピッチであり、Δdhklはサンプル被測定部位の被測定方向の(hkl)結晶面ピッチの変化量である。
短波長特徴X線の波長が0.02nm程度に短いことに基づき、ほとんどの物質の強い回折結晶面と、比較的に強い回折結晶面との回折角2θは一般的に11°より小さく、即ち、θhkl<5.5°(例えば、選択された短波長特徴X線がWkα1であり、結晶面Al(111)に対する回折角2θ111≒5.12°、θ111≒2.56°)であるため、上記算出した当該(hkl)結晶面の各方向歪みε(90°-θhkl、Φ)と、サンプル被測定部位表面法線方向に垂直する当該(hkl)結晶面の各方向歪みε(90°、Φ)との差が小さく、即ち、5.5°より小さく、等しいと見なしてもよく(0°≦Φ≦180°)、即ち、ε(90°、Φ)=ε(90°-θhkl、Φ)である。
弾性力学の平面応力問題の応力-歪み関係に基づき、xy平面において、既知するように、x軸、y軸はそれぞれ主応力方向であり、x方向の歪みεxx、即ち、ε(90°-θhkl、90°)、及びy方向の歪みεyy、即ち、ε(90°-θhkl、0°)をそれぞれ測定してから、以下の式に基づき、2つの主応力σxx、σyyを算出する。
【数3】
【数4】
式において、Ehklは(hkl)結晶面の弾性率であり、νhklは(hkl)結晶面のポアソン比である。
測定された当該(hkl)結晶面(例えばAl(111)結晶面)の2つの主応力の方向歪みε(90°-θhkl、90°)及びε(90°-θhkl、0°)に基づき、それぞれ式(2)、(3)に従って、サンプル被測定部位表面法線方向に垂直する2つの主応力σxx、σyy、即ち、サンプル被測定部位の平面応力テンソルσを算出する。
2つの主応力の方向は未知であれば、弾性力学理論に従って、3つの方向の歪みのみを測定すれば、2つの主応力及び1つのせん断応力の大きさ、方向を測定でき、即ち、サンプル被測定部位の平面応力テンソルσである。
注釈:(Ψ、Φ)は(hkl)結晶面極線図での座標を利用して結晶面方向を示し、X軸はY軸に垂直し、圧延板材を例として、(90°、0°)は圧延方向RDを示し(一般的に、Y軸と重なるように定義される)、(90°、90°)は横方向TDを示し(一般的に、X軸と重なるように定義される)、Ψは法線方向ND(一般的に、Z軸と重なるように定義される)から外れた角度であり、明らかに、0°≦Ψ≦90°であり、ΦはND方向を軸(Z軸)として反時計回りに回転し、RD方向(Y軸)から開始する角度であり、明らかに0°≦Φ<360°である。
さらに、複数の強い回折結晶面と比較的に強い回折結晶面(hkl)とのデバイリング又は強い回折スポットを同時に測定すると、複数の強い回折結晶面と比較的に強い回折結晶面(hkl)結晶面とのε(90°-θhkl、Φ)及びその分布を算出でき、取得した複数の強い回折結晶面と比較的に強い回折結晶面(hkl)結晶面のε(90°-θhkl、Φ)及びその分布に基づき、それぞれ計算することで、対応する複数の応力テンソルσを取得でき、そして、算術平均方法又は最小二乗法を使用し、より正確な応力テンソル
【数5】
を算出でき、即ち、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位に対してそれぞれ露光測定を1回行うと、当該応力テンソル
【数6】
を測定できる。
b)強いテクスチャーが存在するサンプルに対して、歪みの測定方向はテクスチャー状況に基づき決定され、回折強度極大値(大きな極密度又は強い回折スポット)方向が(hkl)結晶面極線図の最も外輪にあるとともに、2つの主応力εxx、εyy方向又は付近方向にある測定対象となる強い回折結晶面(hkl)を選択する。
Ψ角回転ステージを回動させることで、サンプルを回動させ、これによって、サンプル被測定部位の表面法線方向が入射ビームと重なって、それぞれ露光し、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位の各結晶面によって回折されたデバイリング又は強い回折スポットを測定し、デバイリングでの強い回折スポットにピークを決定し、α角及びβ角を決定し、α角は、極密度極大値がx軸に偏向した角度であり、β角は別の極密度極大値がy軸に偏向した角度であり、例えば、圧延アルミ板Al(111)極線図の最も外輪での横方向(TD)、及び圧延方向(RD)から20°程度外れた方向(例えば、α=0°、β=20°)である。
a)に記載の方法に従って、ε(90°-θhkl、90°+α)、ε(90°-θhkl、β)を測定し、同様、θhkl<5.5°、即ち、ε(90°-θhkl、Φ)=ε(90°、Φ)に鑑みると、測定した歪みε(90°-θhkl、90°+α)をεαと記して、測定した歪みε(90°-θhkl、β)をεβと記して、以下の2つの式に代入し
【数7】
【数8】
これによって、2つの主応力σxx、σyy方向の主歪みεxx及びεyyを算出でき、εxx及びεyyを式(2)、(3)に代入し、最後、2つの主応力σxx、σyy、即ち、サンプル被測定部位の応力テンソルσを算出する。
ともかく、平面応力状態にあるサンプルに対して、θを回動させることで、サンプルを回動させ、これによって、サンプル被測定部位の表面法線方向が入射ビームと重なって、即ち、入射サンプルに垂直し、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位の各結晶面によって回折されたデバイリング又は強い回折スポットに対してそれぞれ露光測定を1回行うと、式(2)、(3)に従って、計算してサンプル被測定部位表面法線方向に垂直するサンプル被測定部位の平面応力テンソルσを取得できる。
(2)一般応力状態にあるサンプルに対して、テスト対象となる回折結晶面として、比較的に強い回折結晶面(hkl)を選択し、少なくとも6つの(Ψ、Φ)方向の歪みを測定し、6つのΨ角は全て同様ではなく、その最大Ψと最小Ψとの差はできるだけ大きくし、6つのΦ角の差もできるだけ大きくし、2つの異なるΨ角のみで、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位の各結晶面によって回折されたデバイリング又は強い回折スポットに対してそれぞれ露光測定を1回行うと、サンプル被測定部位の応力テンソルσを測定できる。
(a)強くないテクスチャー材料のサンプルに対して、まず、Ψ=Ψ1まで回動させ、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位に対してそれぞれ露光し、各結晶面によって回折されたデバイリングを測定し、そして、サンプルをΨ=Ψ2まで回動させ、ΨとΨとの差はできるだけ大きくし、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位に対して再び露光し、各結晶面によって回折されたデバイリングをそれぞれ測定し、ピークを決定し、(hkl)結晶面の6つの方向の位置決め結果2θs-hkl及び2θ0-hklを選択し、式(1)に従って、6つの(Ψ、Φ)方向(hkl)結晶面の歪みε(Ψ、Φ)を算出し、歪みは以下の通り、

ε(Ψ)=a εxx+b εyy+c εyy+2aεxy+2bεyz+2cεzx……………………(6)

式において、a、b、cはそれぞれ歪みε(Ψ)の、X、Y、Zでの方向余弦であり、a=sinΨcosΦ、b=sinΨsinΦ、c=cosΦである。
測定した6つの方向の歪みε(Ψ、Φ)及びその方向余弦を式(6)に代入し、連立一次方程式を解いて、歪みεij(i=x,y,z;j=x,y,z)を取得でき、εijに対して線形変換を行うと、3つの主歪みε XX、ε YY、ε ZZを取得でき、最後、公式(7)に従って、サンプル被測定部位の応力テンソルσ(又は3つの主応力σ XX、σ YY、σ ZZの大きさ及び方向)を算出し、
【数9】
式(7)におけるEは(hkl)結晶面の弾性率であり、νは(hkl)結晶面のポアソン比である。
明らかに、3つの主応力σ XX、σ YY、σ ZZの方向を既知すれば、3つの(Ψ、Φ)方向の歪みのみを測定し、サンプル被測定部位の応力テンソルσを取得できる。サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位に対してそれぞれ露光測定を2回行うと、当該応力テンソルσを測定できる。
さらに、複数の強い回折結晶面と比較的に強い回折結晶面(hkl)とのデバイリングを同時に測定するため、複数のε(Ψ、Φ)を算出でき、対応する複数の応力テンソルσを取得でき、算術平均方法又は最小二乗法計算を使用し、より正確な応力テンソル
【数10】
を算出し、即ち、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位に対してそれぞれ露光測定を2回行うと、当該応力テンソル
【数11】
を正確に測定できる。
(b)強いテクスチャー材料が存在するサンプルに対する残留応力テストにおいて、上記歪みの測定方向はテクスチャー状況に基づき決定され、測定対象となる強い回折結晶面(hkl)の回折強度極大値(大きな極密度又は強い回折スポット)方向を選択して歪みを測定する。
Ψを回動させることで、露光して、異なるΨ角のサンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位によって回折されたデバイリングを測定し、強い回折結晶面と比較的に強い回折結晶面(hkl)との6つの強い回折スポット、即ち、6つの回折強度極大値又は強い回折スポットの方向を選択し、ピークを決定し、式(1)に従って、6つの方向の歪みε(Ψ、Φ)を算出し、式(6)の連立一次方程式に従って、線形変換を行うと、3つの主歪みε XX、ε YY、ε ZZを取得でき、弾性力学式(7)に従って、最後、サンプル被測定部位の応力テンソルσ(又は3つの主応力σ XX、σ YY、σ ZZの大きさ及び方向)を取得する。
ここで、6つの方向の歪みは同一{h1k1l1}結晶面ファミリではなくてもよく、即ち、いくつかの方向歪みは(h)結晶面で測定され、他の方向歪みは(h)結晶面で測定され、歪みから応力を計算する式において、測定した歪みに対応する弾性率Ehkl、ポアソン比νhklを使用する。
注釈:応力なしサンプルの製造について、対応する標準規定又は文献紹介を参照し、焼鈍又は線切断の方式で製造されてもよい。
ステップ7:サンプル内部の別の1つの部位の内部位相、テクスチャー、応力をテストしようとすると、全ての測定対象となる部位のテストを完成するまで、ステップ4、ステップ5、及びステップ6を繰り返して、コンピュータを利用してデータを処理し、サンプルの各部位の内部位相、テクスチャー、応力など、及びその分布を取得する。
【発明の効果】
【0016】
有益な效果について、本発明を使用すれば、センチメートルレベルの厚さのサンプル内部の1つの部位の回折パターン、即ち、回折された1つ又は複数のデバイリング又は回折スポットを迅速に非破壊検出でき、サンプル内部の1つの部位の位相、テクスチャー、応力などの結晶体構成及びその構成変化に対する迅速な非破壊検出分析を実現し、技術背景に記載の技術及び装置の検知効率より、10倍以上向上し、且つ、露光ごとに測定した回折情報はより多く、正確であり、検出効率及び精度を大幅に向上させる。本発明を使用すれば、サンプルの1つの部位の物質回折の多方向の同時イメージング、及びサンプルの1つの部位の物質によって回折されたデバイリング又は回折パターンの同時イメージングを実現し、同時イメージングされるデバイリング又は回折パターンに基づき、サンプルの1つの部位の物質の位相、テクスチャー、応力などの迅速な非破壊検出分析を行うことができる。本発明の技術案を使用すれば、材料/ワークピース内部の位相、テクスチャー、応力など、及びその分布に対する迅速な非破壊検出分析の操作過程は簡単且つ確実であり、より重要なのは、本発明が提供する装置及びその方法において、その装置の構成は簡単であり、コストが低く、高エネルギー同期放射の硬X線回折装置及び技術の商品化が困難であり、普及されにくくて、背景技術が開示した技術案のテスト効率が低下するという欠陥を克服し、企業、大学、研究機関に、高エネルギー同期放射の硬X線回折装置に類似する機能、相当する検知効率を有する装置及び方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の回折装置の模式図である。
図2】本発明の回折装置の入射コリメータの円形光通過孔の断面模式図である。
図3】本発明の回折装置の入射コリメータの矩形光通過孔の断面模式図である。
図4】本発明の受信コリメータの平面図(受信コリメータの細い直径端から観察)である。
図5】本発明の受信コリメータの径方向断面模式図である。
図6】本発明の回折装置のアレイ検知器が回折角2θを測定する模式図である。
図7】サンプル内部で測定した結晶面(hkl)の配向座標系の模式図である。
図8】サンプル内部で測定した結晶面(hkl)配向の、極線図での表徴である。
図9】本発明の実施例が使用する測定及び計算ブロック図である。
図10】圧延アルミ板の典型的なテクスチャー{111}極線図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下は、図面及び具体的な実施例を結合して本発明をさらに説明し、以下の実施例は本発明の保護範囲に対する限定ではなく、当業者が本発明の内容に基づき完成した非本質的な改良及び調整も本発明の保護範囲内に該当する。
【0019】
実施例1
本実施例はまず、アレイ検知による短波長特徴X線回折測定装置を説明する。図1図5に示すように、X線照射システム、サンプル台及びX線検知システムなどを含み、X線照射システムが放出したX線が入射コリメータ2を通過した後形成した入射X線7は、サンプル台に固定されるサンプル3の被測定部位に照射し、X線検知システムは、サンプル内部の被測定部位によって回折された短波長特徴X線強度、及びその分布を定時に測定する。なお、X線照射システムは放射源、及び入射コリメータ2を含み、入射コリメータ2はサンプル3に入射されるX線ビームの発散度合い、断面の形状及び大きさを限定し、放射源は原子番号が55より大きい重金属ターゲットX線管1、供給電圧レベルが160kv以上である高圧電源及びそのコントローラを含み、X線検知システムは、受信コリメータ4及び受信コリメータ4にマッチングするアレイ検知器5を含み、X線ビーム7は垂直してX線検知システムに入射する。X線照射システム、サンプル台及びX線検知システムは同一プラットフォーム又は同一スタンドに固定される。
アレイ検知器5は、サンプル被測定部位の物質によって回折されるとともに、受信コリメータ4の光通過孔6を通過した回折線8、及び受信コリメータ4の光通過孔6を通過した他の迷光線を検知し受信し、当該X線検知システムは、入射X線ビーム7の中心線が光通過孔6の中心軸線であり、光通過孔6のインナーコーン辺61と光通過孔6のインナーコーン辺62との延長線が、入射X線ビーム7の中心線での1点に交差し、当該点が、装置の回折装置円の円心9であり、サンプル被測定部位が装置の回折装置円の円心9に位置することを、特徴とする。
X線照射システムはX線装置であり、そのX線管の陽極ターゲット材は、原子番号が46より大きいタングステン、金、ウランなどの重金属材料から製造され、120kV~600kVの電圧で、短波長X線を放出する。
アレイ検知器5の各検知画素はいずれも単一光子測定であり、2つ以上のエネルギー閾値を有するマルチエネルギーアレイ検知器であり、設定したエネルギー閾値に基づき、その各画素は何れも1本の短波長特徴X線を測定でき、また、アレイ検知器5はさらにエネルギー分散型アレイ検知器を使用してもよく、即ち、各画素は何れも複数のエネルギースペクトルを測定できる。アレイ検知器5の各画素のサイズ仕様範囲は0.02mm~0.2mmである。アレイ検知器5はテルル化カドミウムアレイ検知器、又はテルル化カドミウム亜鉛アレイ検知器、又はヒ化ガリウムアレイ検知器である。
装置の回折装置円の円心9からアレイ検知器5までの距離tは150mm~1500mmである。
受信コリメータ4の中間部には位置決め孔10が設けられ、位置決め孔10の軸線は入射コリメータ2の中心線と重なって、位置決め孔10内にはX線吸収装置11がさらに設けられている。X線吸収装置11は、アレイ検知器5がハイスループットの入射X線ビーム7により照射され損壊されることを防止する上に、X線吸収装置9を通過した入射X線12の強度分布を検知することで、透過X線12の最大強度の位置を決定でき、即ち、回折が生じた際のデバイリングの円心位置を決定できる。
入射コリメータ2、受信コリメータ4及びアレイ検知器5の遮蔽箱51は何れも十分に厚く、大きな原子番号のタングステン、鉛、金などの重金属材料から製造され、X線が入射コリメータ2の光通過孔21、受信コリメータ4の光通過孔6及び位置決め孔10から通過してから、アレイ検知器5の遮蔽箱51の受信ウインドウから通過して、アレイ検知器5の検知領域に入るようにし、他の方向のX線を遮蔽する。
サンプル3は、サンプル台の平行移動ステージ31に固定され、平行移動ステージ31はΦ角回転ステージ32に固定され、Φ角回転ステージ32はΨ角回転ステージ33に固定され、Φ角回転ステージ32とΨ角回転ステージ33との回動軸は互いに垂直し、回折装置円の円心9に交差し、これによって、Φ角が回動するか、それともΨ角が回動するかに関わらず、サンプル3の被測定部位は常に回折装置円の円心9に位置する。位置決め孔10の中心線と入射コリメータ2の中心線とは同一直線にあり、Ψ=0°である場合、平行移動ステージ31のZ軸に平行する。
【0020】
具体的な応用方式において、入射コリメータ2の光通過孔21は単一の円孔又は矩形孔であり、入射コリメータ2の長さは20mm~200mmであり、入射コリメータ2の発散度合いは0.02°~0.5°であり、受信コリメータ4の長さは100mm~1200mmであり、その光通過孔6のインナーコーン辺61と入射X線ビーム7との間の夾角はγであり、γの値の範囲は2°~10°であり、光通過孔6のインナーコーン辺61とインナーコーン辺62との間の夾角はδであり、δの値の範囲は0.5°~6°であり、且つγ+δは12°以下である。
【0021】
当該短波長特徴X線回折測定装置は、コンピュータにより運動及び測定を制御し、その平行移動ステージ31、Φ角回転ステージ32、及びΨ角回転ステージ33の動作はいずれもコンピュータにより制御、及び実行され、プログラムに従って測定分析を行って、図9は関する測定制御、計算フローブロック図を示す。
【0022】
当該短波長特徴X線回折測定装置を使用すれば、測定部位によって回折されたデバイリングを直観的に測定でき、X線回折フラットパネルカメラに類似する回折パターンdiffractionpatternを取得する。
【0023】
実施例2
本実施例のサンプルは、厚さが測定可能な最大厚さより小さい結晶体材料製品を使用し、例えば鉄製品は、UKαを使用してテストする場合、その測定可能な最大厚さは10mm程度である。
【0024】
実施例の回折装置に基づき、入射コリメータ2の光通過孔21は単一の円孔であり、入射コリメータ2の長さは20mm~200mmであり、入射コリメータ2の発散度合いは0.02°~0.5°であり、受信コリメータ4の長さは100mm~1200mmであり、その光通過孔6のインナーコーン辺61と入射X線ビーム7との間の夾角はγであり、γの値の範囲は2°~10°であり、光通過孔6のインナーコーン辺61とインナーコーン辺62との間の夾角はδであり、δの値の範囲は0.5°~6°である。
【0025】
本実施例が提供するテスト分析方法は、短波長特徴X線の透過法を使用し、そのステップは以下を含み、
ステップ1:サンプルの材質及び厚さに基づき、適切な波長の短波長特徴X線(例えば、タングステンターゲットX線管が放射するWkα、又はウランターゲットX線管が放射するUkαなど)を選択し、アレイ検知器5の2つのエネルギー閾値を設定することで、アレイ検知器の各画素が、選択した短波長特徴X線、例えばWkα、又はUkαなどを検知するようにする。
ステップ2:サンプル3をサンプル台に固定し、コンピュータによって制御し、X、Y、Z平行移動システムを利用してサンプル被測定部を回折装置円の円心に位置させる。
ステップ3:選択した短波長特徴X線に基づき、1.5倍ターゲット材励起電圧以上の管電圧を印加し、X線照射システムをオンにする。
ステップ4:コンピュータにより、被測定部位結晶体物質によって回折されたデバイリングに対して露光測定を行って、ピークを決定し、粉末回折カードと比較して、被測定部位結晶体物質の位相を決定するように制御する。
ステップ5:被測定部位の主な位相のテクスチャーをテストしようとすると、コンピュータは測定分析を行って、Ψを回動させることで、ステッピング走査測定を行って、異なるΨ方向の被測定部位結晶体物質によって回折されたデバイリングに対して露光測定を行って、ピークを決定し、各回折結晶面デバイリングの各方向の回折強度を測定し、回折経路の長さに基づき、吸収校正を行って、校正後の各回折結晶面デバイリングの各方向の回折強度を取得する。これに基づき、主な位相の複数の強い回折結晶面と、比較的に強い回折結晶面との透過極線図を算出し、結晶系タイプに基づき、主な位相の複数の強い回折結晶面の透過極線図を選択し、回折結晶面に対応する完全極線図又は配向分布関数ODFを算出するように制御する。
注釈:結晶系が異なるため、対称性が異なって、対称性が高い結晶系であるほど、回折結晶面に対応する完全極線図又は配向分布関数ODFを算出するための透過極線図の数が少なくて、上記異なるθで、被測定部位結晶体物質によって回折されたデバイリングの測定で、計算を必要とする主な位相回折結晶面の数が少ない。例えば、fcc結晶系に対して、3つの強い回折結晶面の透過極線図のみをテストすれば、対応する完全極線図又は配向分布関数ODFを算出でき、111、200、220結晶面などを測定した三強線の透過極線図のみを利用すれば、回折結晶面に対応する完全極線図又は配向分布関数ODFを算出できる。
ステップ6:被測定部位の残留応力をテストしようとすると、コンピュータにより測定分析を行うように制御する。
(1)強くないテクスチャー材料サンプルに対する残留応力テスト;
a)、平面応力状態にあるサンプルに対して、Ψ角を回動させることで、サンプルを回動させ、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位の表面法線方向が入射ビーム7と重なるようにし、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位の各結晶面によって回折されたデバイリングをそれぞれ露光測定を行って、ピークを決定し、サンプル被測定部位の各結晶面の各方向の回折角2θs-hkl、及び応力なしサンプルの対応する部位の各結晶面の各方向の回折角2θ0-hklを取得し、ある(hkl)結晶面、例えばAl(111)結晶面に対して、歪みに基づき

ε=(sinθ0-hkl/sinθs-hkl)-1……………………(1)

サンプル被測定部位の表面法線方向との夾角は90°-θhklであり、サンプル被測定部位の表面法線方向を軸として取り囲まれたhkl結晶面の各方向歪みε(90°-θhkl、Φ)、及びその分布を算出する。
短波長特徴X線の波長が0.02nm程度に短いことに基づき、ほとんどの物質の強い回折結晶面と、比較的に強い回折結晶面との回折角2θは11°より小さく、即ち、θhkl<5.5°であり、例えば、選択された短波長特徴X線はWkα1であり、結晶面Al(111)に対する回折角2θ111≒5.12°、θ111≒2.56°であるため、上記算出した当該hkl結晶面の各方向歪みε(90°-θhkl、Φ)と、サンプル被測定部位表面法線方向に垂直する当該hkl結晶面の各方向歪みε(90°、Φ)との差が小さく、即ち、5.5°より小さく、等しいと見なしてもよく、即ち、0°≦Φ≦180°であり、ε(90°、Φ)ε=(90°-θhkl、Φ)である。
弾性力学の平面応力問題の応力-歪み関係に基づき、xy平面において、既知するように、x軸、y軸はそれぞれ主応力方向であり、x方向の歪みεxx、即ちε(90°-θhkl、90°)、及びy方向の歪みεyy、即ち、ε(90°-θhkl、0°)をそれぞれ測定してから、以下の式に基づき
【数12】
【数13】
2つの主応力σxx、σyyを算出し、Ehklはhkl結晶面の弾性率であり、νhklはhkl結晶面のポアソン比である。
測定された当該hkl結晶面、例えばAl111結晶面の2つの主応力方向歪みε(90°-θhkl、90°)及びε(90°-θhkl、0°)に基づき、それぞれ式(2)、(3)に従って、サンプル被測定部位表面法線方向に垂直する2つの主応力σxx、σyy、即ち、サンプル被測定部位の平面応力テンソルσを算出する。
2つの主応力の方向は未知であれば、弾性力学理論に従って、3つの方向の歪みのみを測定すれば、2つの主応力及び1つのせん断応力の大きさ、方向を測定でき、即ち、サンプル被測定部位の平面応力テンソルσを測定できる。
注釈:図7図8に示すように、(Ψ、Φ)はhkl結晶面極線図での座標を利用して結晶面方向を示し、X軸はY軸に垂直し、圧延板材を例として、(90°、0°)は圧延方向RDを示し、一般的に、Y軸と重なるように定義し、(90°、90°)は横方向TDを示し、一般的に、X軸と重なるように定義し、Ψは法線方向NDから外れ一般的に、Z軸と重なるように定義する角度である。明らかに、0°≦Ψ≦90°であり、ΦはND方向を軸としてZ軸反時計回りに回転し、RD方向、Y軸から開始する角度である。
さらに、複数の強い回折結晶面と比較的に強い回折結晶面hklとのデバイリングを同時に測定すると、複数の強い回折結晶面と比較的に強い回折結晶面hkl結晶面とのε(90°-θhkl、Φ)及びその分布を算出でき、取得した複数の強い回折結晶面と比較的に強い回折結晶面hkl結晶面とのε(90°-θhkl、Φ)及びその分布に基づき、それぞれ計算することで、対応する複数の応力テンソルσを取得でき、平均値を取ると、より正確な応力テンソル
【数14】
を取得でき、即ち、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位に対してそれぞれ露光測定を1回行うと、当該応力テンソル
【数15】
を測定できる。
b)強いテクスチャーが存在するサンプルに対して、歪みの測定方向はテクスチャー状況に基づき決定され、回折強度極大値(大きな極密度又は強い回折スポット)方向が(hkl)結晶面極線図の最も外輪にあるとともに、2つの主応力εxx、εyy方向又は付近方向にある測定対象となる強い回折結晶面(hkl)を選択する必要がある。
Ψ角を回動させることで、サンプルを回動させ、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位の表面法線方向が入射ビーム7と重なるようにし、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位の各結晶面によって回折されたデバイリングに対して、それぞれ露光測定を行って、デバイリングでの強い回折スポットにピークを決定し、α角及びβ角を決定し、図10に示すように、α角は、極密度極大値がx軸に偏向した角度であり、β角は別の極密度極大値がy軸に偏向した角度であり、例えば、圧延アルミ板Al{111}極線図の最も外輪での横方向TD、及び圧延方向RDから20°ほど外れた方向であり、例えば、α=0°β=20°である。
a)の方法に従って、ε(90°-θhkl、90°+α)、ε(90°-θhkl、β)を測定し、同様に、θhkl<5.5°、即ち、ε(90°、Φ)=ε(90°-θhkl、Φ)に鑑みると、測定した歪みε(90°-θhkl、90°+α)をεαと記して、測定した歪みε(90°-θhkl、β)をεβと記して、以下の2つの式に代入し、
【数16】
【数17】
これによって、2つの主応力σxx、σyy方向の主歪みεxx及びεyyを算出でき、εxx及びεyyを式2、3に代入し、最後に、2つの主応力σxx、σyy、即ち、サンプル被測定部位の応力テンソルσを算出する。
ともかく、平面応力状態にあるサンプルに対して、Ψを回動させることで、サンプル3を回動させ、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位の表面法線方向が入射ビーム7と重なるようにし、即ち、サンプル3に垂直して入射し、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位の各結晶面によって回折されたデバイリングに対してそれぞれ露光測定を1回行って、式(2)、(3)に従って、計算してサンプル被測定部位表面法線方向に垂直するサンプル被測定部位の平面応力テンソルσを取得できる。
(2)、一般応力状態にあるサンプルに対して、テスト対象となる回折結晶面として、強い又は比較的に強い回折結晶面(hkl)を選択し、少なくとも6つの(Ψ、Φ)方向の歪みを測定し、6つのΨ角は全て同様ではなく、6つのΦ角的差できるだけ大きくする必要がある。
a)強くないテクスチャー材料のサンプルに対して、まず、Ψ=Ψ1まで回動させ、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位に対してそれぞれ露光し、各結晶面によって回折されたデバイリングを測定し、そして、サンプルをΨ=Ψ2まで回動させ、ΨとΨとの差はできるだけ大きくし、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位に対して再び露光し、各結晶面によって回折されたデバイリングをそれぞれ測定し、ピークを決定し、hkl結晶面の6つの方向のピーク決め結果2θs-hkl及び2θ0-hklを選択し、式(1)に従って計算して、6つの(Ψ、Φ)方向hkl結晶面の歪みε(Ψ、Φ)を取得する。歪みは以下の通りであり、

ε(Ψ)=a εxx+b εyy+c εyy+2aεxy+2bεyz+2cεzx………………(6)

そのうち、a、b、cはそれぞれ歪みε(Ψ)の、X、Y、Zでの方向余弦であり、a=sinΨcosΦ、b=sinΨsinΦ、c=cosΨである。
測定した6つの方向の歪みε(Ψ、Φ)及びその方向余弦を式6に代入し、連立一次方程式を解いて、歪みεij(i=x,y,z;j=x,y,z)を取得でき、εijに対して線形変換を行うと、3つの主歪みε XX、ε YY、ε ZZを取得でき、最後、サンプル被測定部位の応力テンソルσ、又は3つの主応力σ XX、σ YY、σ ZZの大きさ及び方向を取得する。
【数18】
式(7)におけるEは(hkl)結晶面の弾性率であり、νは(hkl)結晶面のポアソン比である。
明らかに、3つの主応力σ XX、σ YY、σ ZZの方向を既知すれば、3つのΨ、Φ方向の歪みのみを測定すれば、サンプル被測定部位の応力テンソルσを算出でき、即ち、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位に対してそれぞれ露光測定を2回行うと、サンプル被測定部位の応力テンソルσを測定できる。
さらに、複数の強い回折結晶面と比較的に強い回折結晶面(hkl)のデバイリングを同時に測定するため、複数のε(Ψ、Φ)を算出でき、対応する複数の応力テンソルσを取得でき、平均値を取ると、より正確な応力テンソル
【数19】
を取得でき、即ち、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位に対してそれぞれ露光測定を2回行うと、当該応力テンソル
【数20】
を正確に測定できる。
b)強いテクスチャー材料サンプルに対する残留応力テストにおいて、歪みの測定方向はテクスチャー状況に基づき決定され、測定対象となる強い回折結晶面(hkl)の回折強度極大値(大きな極密度又は強い回折スポット)方向を選択して歪みを測定する必要がある。
Ψを回動させることで、露光して、異なるΨ角のサンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位によって回折されたデバイリングを測定し、強い回折結晶面と比較的に強い回折結晶面(hkl)との6つの強い回折スポット、即ち、6つの回折強度極大値の強い回折スポットを選択し、ピークを決定し、6つの方向の歪みε(Ψ、Φ)を測定し、線形変換を行うと、3つの主歪みε XX、ε YY、ε ZZを取得でき、弾性力学式7に従って、最後に、サンプル被測定部位の応力テンソルσ、又は3つの主応力σ XX、σ YY、σ ZZの大きさ及び方向を取得する。
ここで、6つの方向の歪みは同一{h1k1l1}結晶面ファミリではなくてもよく、即ち、いくつかの方向歪みは(h)結晶面を使用して測定し、他の方向歪みは(h)結晶面を使用して測定し、歪みから応力を計算する式において、測定された歪みに対応する弾性率Ehkl、ポアソン比νhklを使用する。
ステップ7:サンプル内部の別の1つの部位の内部位相、テクスチャー、応力をテストしようとすると、全ての測定対象となる部位のテストを完成するまで、ステップ4、ステップ5、及びステップ6を繰り返して、コンピュータを利用してデータを処理し、サンプルの各部位の内部位相、テクスチャー、応力など、及びその分布を取得する。
【0026】
実施例3
本実施例のサンプルは、厚さが測定可能な最大厚さより小さい結晶体材料製品であり、例えば、アルミ製品に対して、WKαを使用してテストする場合、その測定可能な最大厚さは40mm程度である。本実施例が使用する装置は実施例1と基本的に同様であり、相違点はただ以下の通りであり、
前記X線照射システム、前記X線検知システムはΨ角回転ステージ33に固定され、Ψ角回転ステージ33と、平行移動ステージ31とΦ角回転ステージ32とからなるサンプル台とは1つのプラットフォームに固定され、サンプル3はサンプル台的平行移動ステージ31に固定され、平行移動ステージ31はΦ角回転ステージ32に固定され、Φ角回転ステージ32は前記1つのプラットフォームに固定され、Φ角回転ステージ32とΨ角回転ステージ33との回動軸は互いに垂直し、回折装置円の円心9に交差し、これによって、Φ角が回動するか、それともΨ角が回動するかに関わらず、サンプル3の被測定部位は常に回折装置円の円心9に位置する。
そのテスト分析方法のステップについて実施例2を参照する。
【0027】
実施例4
本実施例のサンプルは、20mmの厚さを有する200mmRD方向*200mmRD方向の圧延アルミ板であり、平面応力状態にあり、その主応力、主歪みの方向はそれぞれ圧延方向RD、横方向TDである。回折結晶面はAl(111)結晶面であり、図10はその典型的なテクスチャー{111}極線図である。極線図の最も外輪で、図7及び図8の歪み、応力方向を参照し、図10に示すように、(90°、90°)及び(90°、270°)方向で、α=0°又は180°であり、即ち、横方向はAl(111)結晶面回折強度の極大値方向であり、(90°、-18.5°)、(90°、18.5°)及び(90°、161.5°)、(90°、198.5°)方向、即ち、圧延方向から18.5°外れた方向はAl(111)結晶面回折強度の極大値方向である。
本実施例が使用する装置及び方法について実施例1を参照し、相違点は主に各パラメータの選択にあり、具体的に以下の通り、
使用する回折装置は、225KVの反射型タングステンターゲットX線装置1+入射コリメータ2からなるX線照射システム、平行移動ステージ31+Φ角回転ステージ32+Ψ角回転ステージ33からなるサンプル台、受信コリメータ4+アレイ検知器5+アレイ検知器の遮蔽箱51からなるX線検知システムなどを含む。装置はコンピュータプログラムにより測定分析を制御する。X線照射システム、サンプル台及びX線検知システムは同一プラットフォーム又は同一スタンドに固定される。
入射X線7は垂直してX線検知システムに入射し、アレイ検知器5は、サンプル被測定部位物質によって回折されるとともに、受信コリメータ4の環状光通過孔6を通過した回折線8を検知し受信し、他の方向からの散放射線は何れも受信コリメータ4及びアレイ検知器5の遮蔽箱51により遮蔽され、入射X線7の中心線は環状光通過孔6の中心軸線であり、光通過孔6のインナーコーン辺61と光通過孔6のアウターコーン辺62との延長線は入射X線7の中心線での1点に交差し、当該点が、装置の回折装置円の円心9であり、サンプル3被測定部位が装置の回折装置円の円心9に位置する。
サンプル3はサンプル台の平行移動ステージ31に固定され、平行移動ステージ31はΦ角回転ステージ32に固定され、Φ角回転ステージ32はΨ角回転ステージ33に固定され、Ψ角回転ステージ33は前記同一プラットフォームに固定され、Φ角回転ステージ32とΨ角回転ステージ33との回動軸は互いに垂直し、回折装置円の円心9に交差し、これによって、Φ角が回動するか、それともΨ角が回動するかに関わらず、サンプル3の被測定部位は常に回折装置円の円心9に位置する。
アレイ検知器5は2mmの厚さを有するテルル化カドミウムのアレイ検知器であり、その各検知画素のサイズは何れも0.1mm*0.1mmであり、その各検知画素は何れも単一光子測定であり、2つのエネルギー閾値を有するデュアルエネルギアレイ検知器であり、その各画素は何れも回折されたWkα特徴X線を測定できる。
入射コリメータ2の長さは100mmであり、その光通過孔21の横断面は単一の正方形孔であり、その辺長は0.2mmであり、当該入射コリメータ2の発散度合いは0.45°である。
受信コリメータ4の長さは200mmであり、その光通過孔6の横断面は単一の環状孔であり、そのインナーコーン辺61の半頂角はγであり、即ち、インナーコーン辺61と入射X線ビーム7との間の夾角はγであり、その値は4.5°であり、光通過孔6のインナーコーン辺61とインナーコーン辺62との間の夾角はδであり、その値は1.5°であり、サンプル3に近接する受信コリメータ4の小端の環状孔半径はそれぞれ3.93mm、5.25mmであり、アレイ検知器5に取り付けられる受信コリメータ4の大端の環状孔半径はそれぞれ19.67mm、26.28mmであり、サンプル3の被測定部位、即ち、回折装置円の円心9から、受信コリメータ4の小端までの距離は50mmであり、回折装置円心9からアレイ検知器5までの距離は250mmである。
受信コリメータ4の中間部には、直径が1mmである円形位置決め孔10が設けられ、その位置決め孔10の軸線は、入射コリメータ2の光通過孔21の中心線と重なって、位置決め孔10内にはX線吸収装置11がさらに設けられている。X線吸収装置11、アレイ検知器5がハイスループットの入射X線ビーム7により直接的に照射され損壊されることを防止する上に、X線吸収装置11を通過した入射X線12の強度分布を検知することで、X線吸収装置9を透過した入射X線ビームの最大強度の位置を決定でき、即ち、回折が生じた際のデバイリングの円心位置を決定できる。
入射コリメータ2、受信コリメータ4及びアレイ検知器5の遮蔽箱51は何れも、十分な厚さを有するタングステン、鉛、金などの重金属材料から製造され、X線が入射コリメータ2の光通過孔21を通過し、受信コリメータ4の光通過孔6を通過した回折線8、及びまた位置決め孔10及びそのX線吸収装置11を通過した入射X線12が、アレイ検知器5の遮蔽箱の受信ウインドウを介してアレイ検知器5の検知領域に入るようにし、他の部位、他の方向からの迷光であるX線を遮蔽する。
【0028】
本実施例のテスト分析方法において、ステップは以下を含み、
ステップ1:サンプルは、20mmの厚さを有する200mm*200mmの圧延アルミ板であり、検知光子のエネルギーの上限、下限閾値をそれぞれ55keV、61keVに設定し、短波長特徴X線Wkαを選択し、アレイ検知器の各画素はWkαを検知する。圧延アルミ板の結晶粒が太いため、以下の回折スペクトルの露光測定において、ワブラー法を利用して、回折に参加する結晶粒の数を増やし、結晶粒の太さの測定に対する影響を抑制する。
ステップ2:20mmの厚さを有する200mmRD方向*200mmTD方向の圧延アルミ板をサンプル台に固定することで、入射線は垂直してアルミ板に入射し、TD方向はX軸に平行し、RD方向はY軸に平行し、X、Y、Z平行移動システムを利用して、その被測定部位置を回折装置円の円心に位置させる。
ステップ3:管電圧を200Kv、管電流を4mAに設定し、X線照射システムをオンにする。
ステップ4:コンピュータにより測定分析を行うように制御し、サンプルに対して露光測定を100s行って、被測定部位結晶体物質によって回折されたデバイリングを測定し、ピークを決定し、粉末回折カードと比較して、被測定部位結晶体物質のデバイリングは、主な位相がf.c.c.晶系であるAl111に属すると、決定する。
ステップ5:コンピュータにより測定分析を行うように制御し、Ψを回動させることで、ステッピング走査測定を行って、それぞれ200s露光し、異なるΨ箇所の被測定部位結晶体物質によって回折されたデバイリングを測定し、ピークを決定し、各回折結晶面デバイリングの各方向の回折強度を測定し、そのテクスチャーが圧延テクスチャーであるように測定する。
ステップ6:コンピュータにより測定分析を行うように制御し、平面応力状態にある強いテクスチャー圧延アルミ板内部の残留応力をテストし、その主応力方向はそれぞれ圧延方向RD、横方向TDであり、2つの方向の歪み測定によって、2つの主応力を算出できる。θ111≒2.56°に鑑みると、Al(111)結晶面の各方向歪みε(90°-θ111、Φ)と、サンプル被測定部位表面法線方向に垂直する当該111結晶面の各方向歪みε(90°、Φ)との差は小さく、等しいと見なしてもよく、即ち、ε(90°、Φ)=ε(90°-θ111、Φ)であるため、2つの(90°-θ111、Φ)方向の歪み測定によって、2つの主応力を算出でき、具体的に以下の通り、
a:平行移動ステージ31が動くことで、サンプル被測定部位を回折装置円の円心9に平行移動させ、Ψを回動させることで、サンプルをΨ=0°まで回動させることで、入射ビーム7は垂直してサンプルに入射し、サンプル被測定部位を通過し、露光測定を200s行って、Al(111)結晶面によって回折されたデバイリングを測定し、測定したAl(111)結晶面によって回折されたデバイリングに、6つの回折強度極大値方向が存在し、それぞれ2つの横方向TDの付近α=0°である際の(90°-θ111、90°)、(90°-θ111、270°)方向、及び4つの圧延方向RDの付近β=18.5°である際の(90°-θ111、-β)、(90°-θ111、β)、(90°-θ111、180°-β)、(90°-θ111、180°+β)方向であり、ピークを決定し、サンプル被測定部位の2つの横方向TD付近でα角外れた方向の2θs-111TDα、4つの圧延方向RD付近でβ角外れた方向の2θs-111RDβをそれぞれ取得する。
b:平行移動ステージが動くことで、応力なしサンプルの対応する部位を回折装置円の円心に平行移動させ、Ψを回動させることで、サンプルをΨ=0°まで回動させ、これによって、入射ビーム7は垂直に応力なしサンプルに入射し、応力なしサンプルの対応する部位を通過し、同じように、露光測定を200s行うと、応力なしサンプルの対応する厚さ部位の2つの横方向TD付近でα角外れた方向の2θ0-111TDα、4つの圧延方向RD付近でβ角外れた方向の2θ0-111RDβを測定して算出できる。
c:サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する厚さ部位のピーク決め結果から、1つの横方向TD付近でα角外れた方向の位置決め結果2θs-111TD、2θ0-111TD、及び1つの圧延方向RD付近でβ角外れた方向の位置決め結果2θs-111RDβ、2θ0-111RDβ、又は2つの横方向TDピーク決め結果の算術平均、及び4つの圧延方向RDからα角外れたピーク決定結果の算術平均をそれぞれ選択し、式(1)ε=(sinθ0-111/sinθs-111)-1に従って、それぞれサンプル被測定部位横方向TD付近でα角外れた方向の歪みεα=ε(90°-θ111、90°)、及び圧延方向RD付近でβ角外れた方向の歪みεβ=ε(90°-θ111、18.5°)を取得し、この場合、α=0°、β=18.5°である。
d:測定した歪みεα、εβ及びα=0°及びβ=18.5°を式(4)、(5)に代入すると、サンプル被測定部位の2つの主歪みεxx及びεyyを算出でき、εxx及びεyyを式(2)、(3)に代入すると、サンプル被測定部位の2つの主歪みσxx及びσyy、即ち、σTD及びσRDを算出でき、サンプル被測定部位の応力テンソルσを取得する。
ステップ7:当該アルミ板サンプル内部の他の部位の応力をテストしようとすると、全ての測定対象となる部位のテストを完成するまで、a、b、c、dを繰り返して、当該アルミ板サンプル内部応力など、及びその分布を取得する。
【0029】
実施例5
本実施例のサンプルは6mmの厚さを有する配向結晶化される100mm*15mmのニッケル基超合金である。本実施例が使用する装置は実施例3の装置と類似し、主な相違点は以下の通り、
(1)225KVの反射型金ターゲットX線装置1を放射源とし、Aukαの回折パターンを測定する。
(2)入射コリメータ2の長さは50mmであり、その光通過孔21の横断面は単一の円形孔であり、その直径は0.05mmであり、当該入射コリメータ2の発散度合いは0.11°である。
(3)アレイ検知器5は3mmの厚さを有するヒ化ガリウムのアレイ検知器であり、その各検知画素のサイズは何れも0.055mm*0.055mmであり、その各検知画素は何れも単一光子測定であり、2つのエネルギー閾値を有するデュアルエネルギアレイ検知器であり、その各画素は何れも回折されたAukα特徴X線を測定できる。
(4)受信コリメータ4の長さは300mmであり、その光通過孔6の横断面は単一の環状孔であり、そのインナーコーン辺61の半頂角γ、即ち、インナーコーン辺61と入射X線ビーム7との間の夾角γ=3.5°であり、光通過孔6のインナーコーン辺61とインナーコーン辺62との間の夾角δ=4.0°であり、サンプル3に近接する小端の環状孔半径はそれぞれ6.1mm、13.2mmであり、アレイ検知器5に取り付けられる大端の環状孔半径はそれぞれ24.5mm、52.7mmであり、サンプル3の被測定部位、即ち、回折装置円の円心9から、受信コリメータ4の小端までの距離は100mmであり、回折装置円の円心9からアレイ検知器5までの距離は400mmである。
(5)受信コリメータ4の中間部には、直径が2mmである円形位置決め孔10が設けられ、その位置決め孔10の軸線は入射コリメータ2の光通過孔21の中心線と重なって、位置決め孔10内にはX線吸収装置11がさらに設けられている。X線吸収装置11、アレイ検知器5がハイスループットの入射X線ビーム7により直接的に照射され損壊されることを防止する上に、X線吸収装置11を通過した入射X線12の強度分布を検知することで、X線吸収装置11を透過した入射X線ビーム12の最大強度の位置を決定でき、即ち、回折が生じた際のデバイリングの円心位置を決定できる。
【0030】
当該テスト分析方法について、実施例4を参照し、主な相違点は以下の通り、
(1)ステップ1:サンプルは、6mmの厚さを有する100mm*15mmのニッケル基超合金であり、検知光子のエネルギーの上限、下限閾値をそれぞれ65keV、73keVに設定し、短波長特徴X線Aukαを選択し、アレイ検知器の各画素はAukαを検知する。
(2)ステップ2:長さ方向はX軸に平行し、幅方向はY軸に平行する。
(3)ステップ3:管電圧200Kvを、管電流を12mAに設定し、X線照射システムをオンにする。
(4)ステップ4:サンプルに対して露光測定を200s行うと、三強線の比較によって、被測定部位結晶体物質の主な位相が簡単立方晶系のAlNi及びf.c.c.晶系のNiであると決定する。
(5)ステップ5:異なるΨ角の各回折結晶面のデバイスポット又はリングの各方向の回折強度を測定、強い配向テクスチャーであると決定する。
(6)ステップ6:上記ステップ5のテスト結果から、選択されたAlNiの6つの強い回折スポットは、異なる回折結晶面及び回折方向の6つの強い回折スポットであり、それぞれサンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位に対して、露光測定を400s行って、合計、露光測定を12回行って、6つの方向の歪みを測定し算出し、式(6)に代入し、連立一次方程式を解いて、歪みεij(i=x,y,z;j=x,y,z)を取得でき、εijに対して線形変換を行うと、3つの主歪みε XX、ε YY、ε ZZ及びその方向を取得でき、計算されたε XX、ε YY、ε ZZを公式(7)に代入すれば、サンプル被測定部位の応力テンソルσ、又は3つの主応力σ XX、σ YY、σ ZZの大きさ及び方向を算出できる。
ここで、計算に用いられる弾性率Ehkl及びポアソン比νhklはそれぞれ対応する結晶面hklの値である。
【0031】
実施例6
本実施例のサンプルは8mmの厚さを有する400mmRD方向*300mmTD方向の低炭素圧延鋼板であり、平面応力状態にあり、その主応力方向はそれぞれRD、TDである。本実施例が使用する装置は実施例4の装置と類似し、主な相違点は以下の通り、
(1)320KVの反射型ウランターゲットX線装置1を放射源とし、Ukαの回折パターンを測定する。
(2)入射コリメータ2の長さは75mmであり、その光通過孔21の横断面は単一の円形孔であり、その直径は0.05mmであり、当該入射コリメータ2の発散度合いは0.08°である。
(3)アレイ検知器5は2mmの厚さを有するテルル化カドミウムアレイ検知器であり、その各検知画素のサイズは何れも0.075mm*0.075mmであり、その各検知画素は何れも単一光子測定であり、2つのエネルギー閾値を有するデュアルエネルギアレイ検知器であり、その各画素は何れも回折されたUkα特徴X線を測定できる。
(4)受信コリメータ4の長さは675mmであり、その光通過孔6の横断面は単一の環状孔であり、そのインナーコーン辺61の半頂角γ、即ち、インナーコーン辺61と入射X線ビーム7との間の夾角γ=3.0°であり、光通過孔6のインナーコーン辺61とインナーコーン辺62との間の夾角δ=4.0°であり、サンプル3に近接する小端の環状孔半径はそれぞれ3.9mm、9.2mmであり、アレイ検知器5に取り付けられる大端の環状孔半径はそれぞれ39.3mm、92.1mmであり、サンプル3の被測定部位、即ち、回折装置円の円心9から受信コリメータ4の小端までの距離は75mmであり、回折装置円の円心9からアレイ検知器5までの距離は750mmである。
(5)受信コリメータ4の中間部には、直径が2mmである円形位置決め孔10が設けられることで、X線吸収装置11を透過した入射X線ビーム12の最大強度の位置を決定し、即ち、回折が生じた際のデバイリングの円心位置を決定できる。
【0032】
本実施例が使用するテスト分析方法について、実施例4を参照し、主な相違点は以下の通り、
(1)ステップ1:サンプルは8mmの厚さを有する400mmRD方向*300mmTD方向の低炭素圧延鋼板であり、平面応力状態にあり、その主応力方向はそれぞれRD、TDであり、検知光子のエネルギーの上限、下限閾値をそれぞれ93keV、103keVに設定し、短波長特徴X線Aukαを選択し、アレイ検知器の各画素はAukαを検知する。
(2)ステップ3:管電圧を280Kv、管電流を5mAに設定し、X線照射システムをオンにする。
(3)ステップ4:サンプルに対して露光測定を900s行って、三強線の比較に基づき、被測定部位結晶体物質の主な位相がb.c.c.晶系のα-Feであると決定する。
(4)ステップ5:Ψを回動させることで、サンプル3を回動させ、これによって、入射ビーム7は垂直してサンプルに入射し、サンプル被測定部位を通過し、且つ垂直して応力なしサンプルに入射し、その対応する部位を通過し、それぞれ露光測定を1200s行って、サンプル被測定部位及び応力なしサンプルの対応する部位のα-Fe(110)、α-Fe(200)、α-Fe(211)などの強い回折結晶面によって回折されたデバイリングを測定する。
(5)測定したサンプル被測定部位α-Fe(110)結晶面によって回折されたデバイリングで、4つの回折強度極大値方向が存在し、即ち、2つの横方向TD付近の(90°-θ110、90°)、(90°-θ110、270°)方向、及び2つの圧延方向RD付近の(90°-θ110、0°)、(90°-θ110、180°)方向であり、θ110は約1.78°であり、ピークを決定し、サンプル被測定部位の2つの横方向TD付近の2θs-110TD、2つの圧延方向RD付近の2θs-110RDをそれぞれ取得し、同じように、測定した応力なしサンプルの対応する部位α-Fe(110)結晶面によって回折されたデバイリングで、応力なしサンプルの対応する部位の2つの横方向TD付近の2θ0-110TD、2つの圧延方向RD付近の2θ0-110RDをそれぞれ取得する。
(6)サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する厚さ部位のピーク決め結果から、1つの横方向TDピーク決め結果及び1つの圧延方向RDのピーク決め結果、又は2つの横方向TDピーク決め結果の算術平均及び2つの圧延方向RDから外れたピーク決め結果の算術平均をそれぞれ選択し、ε=(sinθ0-110/sinθs-110)-1に従って、それぞれサンプル被測定部位横方向TDの歪みε(90°-θ110、90°)及び圧延方向RDの歪みε(90°-θ110、0°)を算出する。
(7)θ110≒1.78°<5.5°に鑑みると、εTD=ε(0°、90°)9=ε(90°-θ110、90°)、εRD=ε(90°、0°)=ε(90°-θ110、0°)にし、測定した歪みεTD及びεRDを式(2)、(3)に代入し、2つの方向の主応力σTD及びσRD、即ち、サンプル被測定部位のテンソルσを算出する。
(8)同様に、測定したサンプル被測定部位α-Fe(200)又はα-Fe(211)結晶面によって回折されたデバイリングで、複数の回折強度極大値方向で、歪みを測定し、式(4)、(5)に従って、2つの主歪みεTD及びεRDを計算し、式(2)、(3)に従って、2つの方向の主応力σTD及びσRD、即ち、サンプル被測定部位のテンソルσを算出する。正確さを向上させるために、これらの算術平均を取って、サンプル被測定部位の2つの方向の主応力σTD及びσRD、即ち、応力テンソルσを取得する。
【0033】
実施例4の測定装置及び方法を使用して、20mmの厚さを有するアルミ板内部の1つの部位(被測定部位)のAl(111)結晶面回折スペクトルを測定することを例として、ほんの数分しかかからなく、テスト効率は、背景技術の開示文献の技術案より10倍ほど高くて、両回転ステージの高精度測角器を必要とせず、構成及び操作方式を大幅に簡単化する。
【0034】
以上説明した短波長特徴X線回折測定装置および短波長特徴X線回折測定装置の測定分析方法は、以下のように表現することができる。
【0035】
第1態様の短波長特徴X線回折測定装置は、
X線照射システム、サンプル台及びX線検知システムを含む、アレイ検知による短波長特徴X線回折測定装置であって、
X線照射システムは、放射源と入射コリメータ(2)とを含み、放射源は、原子番号が55より大きい重金属ターゲットX線管(1)、供給電圧レベルが160kv以上である高圧電源及びそのコントローラを含み、X線照射システムが放出したX線は、入射コリメータ(2)を通過した後、入射X線ビーム(7)を形成し、サンプル台に固定されるサンプルの被測定部位に照射し、X線検知システムは、サンプル内部の被測定部位によって回折された短波長特徴X線強度、及びその分布を定時に測定し、X線検知システムは、受信コリメータ(4)、及び受信コリメータ(4)にマッチングするアレイ検知器(5)を含む短波長特徴X線回折測定装置であって、
前記アレイ検知器(5)は、サンプル被測定部位物質によって回折されるとともに、前記受信コリメータ(4)の光通過孔A(6)を通過した回折線(8)、及び前記受信コリメータ(4)の光通過孔A(6)を通過した他の迷光線のみを検知し受信し、
前記光通過孔A(6)の第1のインナーコーン辺(61)の延長線と、第2のインナーコーン辺(62)の延長線とは前記入射X線ビーム(7)の中心線で交差し、当該交差点は前記装置の回折装置円の円心であり、サンプル被測定部位は前記装置の回折装置円の円心に位置することを特徴とする。
【0036】
第2態様の短波長特徴X線回折測定装置は、
第1態様の短波長特徴X線回折測定装置において、
前記アレイ検知器(5)の各検知画素はいずれも単一光子測定であり、2つ以上のエネルギー閾値を有するマルチエネルギーアレイ検知器を使用し、設定したエネルギー閾値に基づき、各画素は何れも1本の短波長特徴X線を測定でき、又は、前記アレイ検知器(5)はエネルギー分散型アレイ検知器を使用することを特徴とする。
【0037】
第3態様の短波長特徴X線回折測定装置は、
第1態様または第2態様の短波長特徴X線回折測定装置において、
前記入射コリメータ(2)の光通過孔B(21)は、円孔又は矩形孔であり、前記入射コリメータ(2)の長さは20mm~200mmであり、発散度合いは0.02°~0.5°であることを特徴とする。
【0038】
第4態様の短波長特徴X線回折測定装置は、
第1態様から第3態様のいずれか1つの短波長特徴X線回折測定装置において、
前記受信コリメータ(4)の長さは100mm~1200mmであり、前記受信コリメータ(4)の光通過孔A(6)の第1のインナーコーン辺(61)と、前記入射X線ビーム(7)との間の夾角はγであり、γの値の範囲は2°~10°であり、前記光通過孔A(6)の第1のインナーコーン辺(61)と第2のインナーコーン辺(62)との間の夾角はδであり、δの値の範囲は0.5°~6°であり、且つγ+δは12°以下であることを特徴とする。
【0039】
第5態様の短波長特徴X線回折測定装置は、
第4態様の短波長特徴X線回折測定装置において、
前記受信コリメータ(4)の中間部には位置決め孔(10)が設けられ、位置決め孔(10)の軸線は前記入射コリメータ(2)の中心線と重なって、位置決め孔(10)内にはX線吸収装置(11)がさらに設けられ、
前記入射コリメータ(2)、前記受信コリメータ(4)及び前記アレイ検知器(5)の遮蔽箱は何れも遮蔽要求を満たす重金属材料から製造され、他の部位、他の方向からの迷光であるX線を遮蔽し、X線が前記入射コリメータ(2)の光通過孔B(21)、前記受信コリメータ(4)の光通過孔A(6)、前記位置決め孔(10)及びそのX線吸収装置から通過してから、前記アレイ検知器(5)の遮蔽箱の受信ウインドウを介して、前記アレイ検知器(5)の検知領域に入るようにすることを特徴とする。
【0040】
第6態様の短波長特徴X線回折測定装置は、
第5態様の短波長特徴X線回折測定装置において、
前記X線照射システム、サンプル台及び前記X線検知システムは同一プラットフォームに固定され、サンプル(3)はサンプル台の平行移動ステージ(31)に固定され、平行移動ステージ(31)はΦ角回転ステージ(32)に固定され、Φ角回転ステージ(32)はΨ角回転ステージ(33)に固定され、Ψ角回転ステージ(33)は前記同一プラットフォームに固定され、Φ角回転ステージ(32)とΨ角回転ステージ(33)との回動軸は互いに垂直するとともに、回折装置円の円心(9)で交差することで、Φ角が回動するか、それともΨ角が回動するかに関わらず、サンプル(3)の被測定部位は常に回折装置円の円心(9)に位置し、その座標を(0,0,0)に設定し、
又は、
前記X線照射システム、前記X線検知システムは、Ψ角回転ステージ(33)に固定され、Ψ角回転ステージ(33)と、平行移動ステージ(31)とΦ角回転ステージ(32)とからなるサンプル台とは1つのプラットフォームに固定され、サンプル(3)はサンプル台の平行移動ステージ(31)に固定され、平行移動ステージ(31)はΦ角回転ステージ(32)に固定され、Φ角回転ステージ(32)は前記1つのプラットフォームに固定され、Φ角回転ステージ(32)とΨ角回転ステージ(33)との回動軸は互いに垂直するとともに、回折装置円の円心(9)で交差することで、Φ角が回動するか、それともΨ角が回動するかに関わらず、サンプル(3)の被測定部位は常に回折装置円の円心(9)に位置し、その座標を(0,0,0)に設定することを特徴とする。
【0041】
第7態様の短波長特徴X線回折測定装置は、
第5態様または第6態様の短波長特徴X線回折測定装置において、
前記位置決め孔(10)の中心線と前記入射コリメータ(2)の中心線とは同一直線にあり、Ψ=0°の場合、平行移動ステージ(31)のZ軸に平行し、サンプルが回動するか、それとも平行移動するかに関わらず、回折されたデバイリング円心位置の座標は何れも変更されず、回折装置円の円心(9)からアレイ検知器(5)までの距離はtであり、tの値は150mm~1500mmであり、デバイリング円心位置の座標を(0,0,-t)に設定することを特徴とする。
【0042】
第8態様の短波長特徴X線回折測定装置は、
第7態様の短波長特徴X線回折測定装置において、
前記アレイ検知器(5)の各画素仕様範囲は0.02mm~0.2mmであり、前記アレイ検知器(5)はテルル化カドミウムアレイ検知器、テルル化カドミウム亜鉛アレイ検知器又はヒ化ガリウムアレイ検知器を使用することを特徴とする。
【0043】
第9態様の測定分析方法は、
第1態様から第8態様のいずれか1つの短波長特徴X線回折測定装置の測定分析方法であって、以下のステップを含み、
ステップ1:サンプルの材質及び厚さに基づき、適切な波長の短波長特徴X線を選択し、前記アレイ検知器(5)の2つのエネルギー閾値を設定し、
ステップ2:サンプル(3)をサンプル台に固定し、サンプル被測定部を回折装置円の円心(9)に位置させ、
ステップ3:選択した短波長特徴X線に基づき、1.5倍ターゲット材励起電圧以上の管電圧を印加し、X線照射システムをオンにし、
ステップ4:露光して、被測定部位結晶体物質によって回折されたデバイリング又は回折パターンを測定し、ピークを決定し、粉末回折カードと比較して、被測定部位結晶体物質の位相を決定し、
ステップ5:被測定部位の主な位相のテクスチャー又は配向をテストしようとすると、Ψ角回転ステージ(33)を回動させることで、ステッピング走査測定を行って、露光し、異なるΨ角での被測定部位結晶体物質によって回折されたデバイリングを測定し、ピークを決定し、各回折結晶面デバイリングの各方向の回折強度を測定し、回折経路の長さに基づき、吸収校正を行って、校正後の各回折結晶面デバイリングの各方向の回折強度を取得し、これにより、主な位相の複数の強い回折結晶面と、比較的に強い回折結晶面との透過極線図を算出し、結晶系タイプに基づき、主な位相の複数の強い回折結晶面の透過極線図を選択し、対応する回折結晶面の完全極線図、又は配向分布関数(ODF)を算出し、
ステップ6:被測定部位の残留応力をテストしようとすると、主な位相の1つの(hkl)結晶面、又は複数の(hkl)結晶面の複数の方向歪みを測定し、弾性力学の応力歪み関係に基づき、サンプル被測定部位の応力テンソルσを算出し、
ステップ7:サンプル内部の別の1つの部位の内部位相、テクスチャー、応力をテストしようとすると、全ての測定対象となる部位のテストを完成するまで、ステップ4、ステップ5、及びステップ6を繰り返して、データを処理した後、サンプルの各部位の内部位相、テクスチャー、応力など、及びその分布を取得することを特徴とする。
【0044】
第10態様の測定分析方法は、
第9態様の測定分析方法において、
ステップ6において、平面応力状態にあるサンプルに対する残留応力テストは、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位の各結晶面によって回折されたデバイリング又は強い回折スポットに対してそれぞれ露光測定を1回行うだけで、サンプル被測定部位の応力テンソルσを測定でき、Ψ角回転ステージ(33)を回動させることで、サンプル被測定部位及び応力なしサンプルの対応する部位の表面法線方向は前記入射ビーム(7)と重なるようにし、そして、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位の各結晶面によって回折されたデバイリングに対してそれぞれ露光測定を行って、ピークを決定して、サンプル被測定部位各結晶面各方向の回折角2θs-hkl、及び応力なしサンプルの対応する部位の各結晶面の各方向の回折角2θ0-hklを取得し、式(1)に従って、歪みε(90°-θhkl、Φ)を算出し、式(2)、(3)に従って、サンプル被測定部位の応力テンソルσを算出し、
複数の強い回折結晶面と比較的に強い回折結晶面(hkl)とのデバイリング又は強い回折スポットを同時に測定すると、複数の強い回折結晶面と比較的に強い回折結晶面(hkl)結晶面とのε(90°-θhkl、Φ)及びその分布を算出でき、取得した複数の強い回折結晶面と比較的に強い回折結晶面(hkl)結晶面とのε(90°-θhkl、Φ)及びその分布に基づき、対応する複数の応力テンソルσをそれぞれ算出でき、そして、算術平均方法又は最小二乗法計算を使用し、より正確な応力テンソル
【数21】
を算出することを特徴とする。
【0045】
第11態様の測定分析方法は、
第10態様の測定分析方法において、
強いテクスチャーが存在するサンプルに対する残留応力テストにおいて、歪みの測定方向はテクスチャー状況に基づき決定され、測定対象となる強い回折結晶面(hkl)を選択し、回折強度極大値方向が(hkl)結晶面極線図の最も外輪にあるとともに、2つの主応力εxx、εyy方向又は付近方向にあり、露光し測定して、ε(90°-θhkl、90°+α)、ε(90°-θhkl、β)を取得し、式(4)、(5)に従って、2つの主応力σxx、σyy方向の主歪みεxx及びεyyを算出し、εxx及びεyyを式(2)、(3)に代入し、最後、2つの主応力σxx、σyy、即ち、サンプル被測定部位の応力テンソルσを算出することを特徴とする。
【0046】
第12態様の測定分析方法は、
第9態様の測定分析方法において、
ステップ6において、一般応力状態にあるサンプルに対して、2つの異なるΨ角のみで、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位の各結晶面によって回折されたデバイリング又は強い回折スポットに対してそれぞれ露光測定を1回行うだけで、サンプル被測定部位の応力テンソルσを測定でき、まず、Ψ=Ψになるように、Ψ角回転ステージ(33)を回動させ、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位に対してそれぞれ露光し、各結晶面によって回折されたデバイリングを測定し、そして、サンプルをΨ=Ψ2まで回動させ、サンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位に対して再びそれぞれ露光し、各結晶面によって回折されたデバイリング又は強い回折スポットを測定し、ピークを決定し、(hkl)結晶面の6つの方向ピーク決め結果2θs-hkl及び2θ0-hklを選択し、式(1)に従って、6つの(Ψ、Φ)方向(hkl)結晶面の歪みε(Ψ、Φ)を算出し、式(6)に従って、連立一次方程式を解いて、歪みεij(i=x,y,z;j=x,y,z)を取得でき、εijに対して線形変換を行うと、3つの主歪みε XX、ε YY、ε ZZを取得でき、最後、式(7)に従って、サンプル被測定部位の応力テンソルσを算出することを特徴とする。
【0047】
第13態様の測定分析方法は、
第12態様の測定分析方法において、
強いテクスチャー材料が存在するサンプルに対する残留応力テストにおいて、歪みの測定方向はテクスチャー状況に基づき決定され、測定対象となる強い回折結晶面(hkl)の回折強度極大値方向を選択し、歪みを測定し、具体的に、Ψ角回転ステージ(33)を回動させることで、異なるΨ角のサンプル被測定部位、応力なしサンプルの対応する部位によって回折されたデバイリングに対して露光測定を行って、強い回折結晶面と比較的に強い回折結晶面(hkl)との6つの強い回折スポットを選択し、ピークを決定し、式(1)に従って、6つの方向歪みε(Ψ、Φ)を算出し、式(6)の連立一次方程式に従って、線形変換を行うと、3つの主歪みε XX、ε YY、ε ZZを取得でき、弾性力学式(7)に従って、最後、サンプル被測定部位の応力テンソルσ、又は3つの主応力σ XX、σ YY、σ ZZの大きさ及び方向を取得することを特徴とする。
【符号の説明】
【0048】
1 ・・・X線管
2 ・・・入射コリメータ
21 ・・・入射コリメータの光通過孔
3 ・・・サンプル
31 ・・・平行移動ステージ
32 ・・・Φ角回転ステージ
33 ・・・Ψ角回転ステージ
4 ・・・受信コリメータ
5 ・・・アレイ検知器
51 ・・・アレイ検知器の遮蔽箱
6 ・・・受信コリメータの光通過孔
61 ・・・光通過孔のインナーコーン面
62 ・・・光通過孔のアウターコーン面
7 ・・・入射コリメータを通過した入射X線
8 ・・・受信コリメータを通過した回折線
9 ・・・回折装置円の円心
10 ・・・受信コリメータでの位置決め孔
11 ・・・X線吸収装置
12 ・・・X線吸収装置を通過した透過線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10