(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049812
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 8/04 20060101AFI20230403BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20230403BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20230403BHJP
【FI】
F21S8/04 100
F21S2/00 437
F21S2/00 444
F21S2/00 434
F21S2/00 443
F21Y115:30
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159790
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100153176
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 重明
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(72)【発明者】
【氏名】西村 将利
(72)【発明者】
【氏名】岡垣 覚
【テーマコード(参考)】
3K244
【Fターム(参考)】
3K244AA05
3K244BA01
3K244BA48
3K244CA03
3K244DA01
3K244DA02
3K244DA05
3K244DA10
3K244EA02
3K244EA12
3K244EA21
3K244EA34
3K244EE04
3K244EE05
3K244HA01
3K244KA03
3K244KA07
3K244KA08
3K244KA11
3K244KA13
3K244KA15
(57)【要約】
【課題】 窓を介して見える空を再現する照明装置において、より小型化および構造の簡易化を実現するとともに、配置場所や配置する数に制限を設けずにより自然な造景を再現する。
【解決手段】 本開示にかかる照明装置(200)は、光源(1)と、入射した光を散乱させる散乱構造(例えば、粒子111)を有するとともに、少なくとも1つの光入射面(101a)と、散乱構造によって生じた散乱光を含む第1の出射光(L1)を出射する第1の光出射面(101b)と、第1の出射光とは異なる第2の出射光(L2)を出射する第2の光出射面(101c)とを有する拡散体(100)と、拡散体の周囲の少なくとも1つの位置に設けられ、光透過性部材を有する日なた形成部(3)と、第2の出射光を日なた形成部に向けて導光する折り返し部(2)と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
入射した光を散乱させる散乱構造を有するとともに、少なくとも1つの光入射面と、前記散乱構造によって生じた散乱光を含む第1の出射光を出射する第1の光出射面と、前記第1の出射光とは異なる第2の出射光を出射する第2の光出射面とを有する拡散体と、
前記拡散体の周囲の少なくとも1つの位置に設けられ、光透過性部材を有する日なた形成部と、
前記第2の出射光を前記日なた形成部に向けて導光する折り返し部と、を備える
ことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記第1の出射光は、前記第1の光出射面から前記第1の光出射面と面する空間に出射され、
前記第2の出射光の少なくとも一部は、前記折り返し部によって偏向されて前記日なた形成部から前記空間に向けて出射される
請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記第2の出射光は、前記拡散体に入射した光のうち前記散乱構造によって散乱されなかった光を含み、
前記第1の出射光の相関色温度は、前記第2の出射光の相関色温度よりも高い
請求項1または請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記第1の出射光の強度は、前期第2の出射光の強度よりも低い
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記光入射面は、前記第1の光出射面の第1の端部に位置し、
前記第2の光出射面は、前記第1の光出射面の前記第1の端部と対向する第2の端部に位置する
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記第1の光出射面が、矩形あるいは正方形である請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記光源と、前記日なた形成部とが、前記拡散体を挟んで対向する位置に配置される請求項1から請求項6のうちのいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項8】
前記第1の光出射面と前記日なた形成部との間の少なくとも1つの位置に、遮光部を備える請求項1から請求項7のうちのいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項9】
前記第2の光出射面から前記日なた形成部までの第2の出射光の光路上に、色変換部材を備える請求項1から請求項8のうちのいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項10】
前記日なた形成部は、暗部領域と明部領域とを含み、
前記日なた形成部に入射する光のうち前記暗部領域から前記照明装置の照射空間に向かう光の強度を、前記明部領域から前記照射空間に向かう光の強度よりも弱める光量調整部を備える
請求項1から請求項9のうちのいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項11】
前記散乱構造の大きさが、10nmから3000nmの範囲内である請求項1から請求項10のうちのいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項12】
前記第1の光出射面に対する前記日なた形成部の前面の角度が、90度から150度の範囲内である請求項1から請求項11のうちのいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項13】
前記第1の光出射面から出射される第1の出射光によって、前記第1の光出射面が窓越しに見える空を模擬し、
前記日なた形成部から出射される第2の出射光によって、前記日なた形成部が窓枠を照らす差し込み光を模擬する
請求項1から請求項12のうちのいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項14】
前記拡散体は、2以上の光入射面を有し、
前記第1の光出射面、前記第2の光出射面、前記折り返し部および前記日なた形成部は、前記2以上の光入射面のそれぞれに対応して複数設けられる
請求項1から請求項13のうちのいずれか1項に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明装置に関し、特に、窓を介して見える空などの自然な造景を模擬する照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窓を介して見える空などの自然な造景を模擬する照明装置がある(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1に記載の照明システムは、凹部を画定する1つまたは複数の側壁と、凹部の底面に位置する光透過又は光生成領域とを備える。さらに、該照明システムにおいて、側壁の少なくとも1つが、独立して制御可能な三角形発光領域から形成される矩形発光領域を有するとともに、側壁において光が供給される形状、コントラスト、強度または色を制御するための照明装置を備える。このような構成により、側壁上で、凹部の底面に位置する光透過又は光生成領域が実際の窓であったならば窓から差し込む太陽光(以下、差し込み光ともいう)によって形成される日なた領域と影領域とを模している。
【0003】
また、特許文献2に記載の照明システムは、光源と、ランプ傘状構造とを備える。ランプ傘状構造は、スクリーン構造と底部体とを含み、底部体は、レイリー拡散体として働く拡散光発生体を有する。該照明システムにおいて、光源は、拡散光発生体の上面を全体的に、主光線の角度とされる約60度で照射するよう配置される。このような光源の配置とすることで、ユーザに、拡散光発生体から照射される拡散光を青空を模擬する光として認識させるとともに、拡散光発生体を透過する主光線を太陽からの直射光として認識させることができる。この構成において、拡散光発生体を見たユーザは、窓を模擬する拡散光発生体の向こう側に、疑似的に太陽が位置しているように見える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/055430号
【特許文献2】特開2015-207554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に示される構成は、窓越しに見える空を模擬する発光パネル部分(凹部の底面に位置する光透過又は光生成領域が相当)と、窓枠を照らす差し込み光を模擬する日なた領域と影領域とを形成する側壁部分とに、用途の異なる光源を配置する必要がある。具体的には、発光パネル部分に対して青空を模擬するための光源を配置するとともに、側壁部分に対して差し込み光を模擬する光源を配置する必要がある。窓越しの空を模擬する発光パネルと窓枠を照らす差し込み光を模擬する側壁とでは、ユーザに視覚させたい光の色や強度や分布が異なるため、それぞれに適した光源を配置することになる。このように、照明装置の複数箇所に異なる光源を配置する必要がある場合、光源から発する熱の解出機構や配線類などによる装置の大型化および構成の複雑化といった問題がある。また、光源が増えればそれだけ消費するエネルギーも増えるため、省エネの観点からも好ましくない。
【0006】
なお、特許文献2に示される構成は、発光パネルの出射面が空を模擬する散乱光を出射するだけでなく、太陽光の直射光を模擬する透過光も出射することで、観察者に空を模擬する発光パネルを介して太陽を覗いているかのように見せる構成である。したがって、観察者からみて、1つの窓を模擬する発光パネル(レイリー拡散体として働く拡散光発生体が相当)内に必ず太陽が位置することになるため、室内に天窓用と壁掛け用といった複数の窓を模擬するために複数の照明装置を配置することを考えた場合、自然な造景を再現できないという問題がある。すなわち、特許文献2に示される構成は、観察者に空を模擬する発光パネルを介して太陽を覗いているかのように見せるものであるために、配置場所や配置する数に制限がでてしまうといった問題がある。
【0007】
本開示は、上述した点に鑑みて、窓越しに見える空を模擬するための光源と、窓枠を照らす差し込み光を模擬するための光源を共通化してより小型化および構造の簡易化を実現できるとともに、配置場所や配置する数に制限を設けることなく自然な造景を再現できる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る照明装置は、光源と、入射した光を散乱させる散乱構造を有するとともに、少なくとも1つの光入射面と、前記散乱構造によって生じた散乱光を含む第1の出射光を出射する第1の光出射面と、前記第1の出射光とは異なる第2の出射光を出射する第2の光出射面とを有する拡散体と、前記拡散体の周囲の少なくとも1つの位置に設けられ、光透過性部材を有する日なた形成部と、前記第2の出射光を前記日なた形成部に向けて導光する折り返し部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、窓を介して見える空を再現する照明装置において、より小型化および構造の簡易化を実現できるとともに、配置場所や配置する数に制限を設けずに自然な造景を再現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1にかかる照明装置200の構成例を示す断面図である。
【
図2】拡散体内における光の光路の一例を示す説明図である。
【
図3】第2の出射光の日なた形成部までの光路を示す説明図である。
【
図4】照明装置200の他の例を示す構成図である。
【
図10】照明装置200の他の例を示す断面図である。
【
図11】照明装置200の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の各実施の形態は、例にすぎず、各実施の形態を適宜組み合わせること、および本開示で示す技術事項の範囲内で種々の変更を行うことが可能である。また、以下の各図面においては、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。また、以下の各実施の形態において、説明を容易にするために、各図中にXYZ直交座標系の座標軸を示す場合がある。その場合において、拡散体の主発光面の法線方向を-Y軸方向とする。なお、拡散体の主発光面の法線方向を、拡散体の主出射方向および該拡散体を備える照明装置の照明方向ともいう。また、該主出射方向に垂直な方向のうち拡散体に入射される光の進行方向に近い方向を+Z軸方向とする。
【0012】
ここで、拡散体の主発光面は、拡散体が備える光出射面のうち特に定めた面をいう。より具体的に、主発光面は、拡散体が光を出射する面である光出射面のうち、特に空を覗く窓、より技術的には天空を模擬した発光面としてユーザに視覚させたい面であればよい。
【0013】
例えば、主発光面は、2つの表面が側面でつながれた板形状の拡散体であれば、側面でつながれた2つの表面のうちの少なくとも一方である。なお、主発光面は、2以上であってもよい。例えば、主発光面は、2つの表面が側面でつながれた板形状の拡散体であれば、側面でつながれた2つの表面であってもよい。以下、拡散体が板形状である場合に、板形状の側面でつながれた2つの表面を主表面といい、該主表面の端部に接続され、板形状の側面を形成する面を、端面または側面という場合がある。
【0014】
また、例えば、主発光面は、2つの底面が側面でつながれた柱体の形状である棒形状の拡散体であれば、柱体の側面の少なくとも1つまたは一部の領域であってもよい。以下、拡散体が棒形状である場合に、棒形状の底面でつながれた側面(中空の場合は側面の外表面)を主表面といい、該主表面の端部に接続され、棒形状の底面を形成する面を、端面または側面という場合がある。
【0015】
例えば、拡散体の主発光面は、主表面のうち、該拡散体を備える照明装置が窓の代わりに設置されたときに法線方向が室内を向く表面またはその一部の領域であってもよい。
【0016】
なお、主発光面は平坦な面に限らず、例えば、曲面または傾斜面を含んでいてもよい。主発光面は、例えば、湾曲していたり、傾斜していてもよく、またそのような平坦面、曲面または傾斜面の組み合わせであってもよい。主発光面が平坦な面以外の場合、主発光面の法線方向は、中心部の法線方向または接平面の法線方向であってもよい。なお、円柱の側面すべてを主発光面とした場合など、主発光面がYZ断面におけるすべての外縁を形成している場合などには、主発光面の法線方向が放射状となることもある。
【0017】
実施の形態1.
以下、本開示にかかる実施の形態1による照明装置について、図面を参照して説明する。
【0018】
<照明装置200の構成>
図1は、実施の形態1にかかる照明装置200の構成例を示す断面図である。例えば、
図1に示す照明装置200が屋内の天井面に取り付けられる場合、+Y軸方向が天井側であり、-Y軸方向が屋内側である。また、この場合のZX平面は天井面に平行な面であってもよい。また、例えば、
図1に示す照明装置200が屋内の壁面に取り付けられる場合、+Y軸方向が壁面側であり、-Y軸方向が屋内側である。また、この場合のZX平面は壁面に平行な面であってもよい。
【0019】
実施の形態1にかかる照明装置200は、光源1と、拡散体100と、折り返し部2と、日なた形成部3とを備える。また、照明装置200は、背面板4と、遮光部5とをさらに備えてもよい。また、照明装置200は、さらに、各部材を保持する保持部6を備えている。
【0020】
<拡散体100>
拡散体100は、光入射面101aと、光出射面101bとを有する。
図1に示す例において、主発光面は光出射面101bである。なお、主発光面は面101bの一部の領域であってもよい。
【0021】
以下、拡散体100に入射する光を光Liと呼ぶ場合がある。また、拡散体100内で生じる散乱光を光Lsと呼ぶ場合がある。また、以下では、拡散体100内を導光する光を光Ltまたは伝搬光Ltと呼ぶ場合がある。ここで、「導光」とは、ある媒質内に入射した光を当該媒質内の所定の光路に従って伝搬することをいう。また、以下では、拡散体100の主発光面(
図1の例では、光出射面101b。第1の光出射面ともいう)から出射される光Lsを、第1の出射光または光L1と呼ぶ。また、後述するように、拡散体100の光入射面の対向側に位置する第2の光出射面(
図1の例では、光出射面101c)から出射される光を、第2の出射光または光L2と呼ぶ。
【0022】
図2は、拡散体100内における光の光路の一例を示す説明図である。
図2に示すように、拡散体100は、光源1から発せられた光Liを端面の1つである光入射面101aから入射し、光Ltとして内部で導光しながら、その一部を散乱して第1の出射光(L1)として光出射面101bから出射する。
【0023】
図2に示す例では、光Liは、拡散体100の主発光面である光出射面101bの端部側(具体的には、拡散体100の端面に相当する光入射面101a)から+Z軸方向に入射される。光Liに対する拡散体100の散乱作用により、光Lsが生じる。このような光Lsが光出射面101bから出射されることによって、拡散体100を自然な空に近い光を放つ発光体として視覚させる。以下、所望の光L1を出射する発光体としての拡散体100を、発光体100または発光パネル100という場合がある。また、以下、主発光面が形成される面を前面、その反対側の面を背面と呼ぶ場合がある。
【0024】
光源1から放射される光は、拡散体100の光入射面101aから拡散体100に入射し、拡散体100内を導光する。また、拡散体100内を導光する光は、少なくともその一部が散乱されて拡散体100から出射される。より具体的には、拡散体100内を導光する光は拡散体100内で散乱されることにより散乱光となり、少なくともその一部が第1の出射光(光L1)として光出射面101bから出射される。ここで、光出射面101bは、拡散体100が有する散乱構造によって散乱された光Lsの少なくとも一部を出射する。
【0025】
また、拡散体100に入射した光、拡散体100内を導光する光および拡散体100内で散乱された光のうち、光出射面101bから出射される光を除いた光の少なくとも一部が、光出射面101cから第2の出射光として出射される。より具体的には、拡散体100に入射した光、拡散体100内を導光する光および拡散体100内で散乱された光のうち、光入射面101aに対向する位置に配される光出射面101cに到達した光の少なくとも一部が、該光出射面101cから出射される。
【0026】
例えば、拡散体100の光入射面101aから入射した光Liは、光Ltとして、面101b(前面)と面101d(背面)とで反射されて導光される。光Ltは、例えば、全反射によって導光される。拡散体100内を導光する光Ltの一部は、拡散体100が備える散乱構造によって散乱され、光L1として光出射面101bから出射する。局所的にみると、拡散体100内を導光する光Ltのうち散乱されなかった光、または散乱されたが光出射面101bから出射されなかった光の一部は、さらに拡散体100内を透過、導光する。該光は、例えば拡散体100が有する別の散乱構造で散乱されて光L1として光出射面101bから出射する。このように、拡散体100に入射した光は散乱構造によって多重散乱される。一方、拡散体100の光出射面101bから出射されない光は、少なくともその一部が、光入射面101aに対向する端面に到達する。
【0027】
本例では、光入射面101aに対向する端面に、拡散体100に入射した光のうち光出射面101bから出射されない光を外部に出射するための光出射面101cが設けられている。本例において、光出射面101bが第1の光出射面であり、光出射面101cが第2の光出射面である。光出射面101cから出射された光は、後述する折り返し部2によって偏向され、差し込み光を模擬する光として日なた形成部3から出射される。
【0028】
拡散体100において、第1の光出射面(光出射面101b)は、空を模擬する第1の出射光を出射する面である。また、第2の光出射面(光出射面101c)は、差し込み光を模擬する第2の出射光を出射する面である。
【0029】
このように、照明装置200は、拡散体100の端面から光を入射し、拡散体100の主表面から空を模擬する第1の出射光を出射する構成を採っていることによって、拡散体100の背面側から光を入射する構成と比べて薄型化できる。さらに、照明装置200は、主表面から空を模擬する散乱光とともに太陽光の直射光を模擬する光を出射する構成とは異なり、日なた形成部3で太陽光の差し込み光を表現する構成を採っていることにより、観察者が発光パネルを介して疑似太陽を覗かずとも、自然な造景を再現できる。したがって、配置場所や配置する数に制限を設けることなく自然な造景を再現できる。
【0030】
拡散体100の例としては、光を透過、反射及び導光させつつ、その一部を拡散(散乱)させる光透光性部材である導光パネルが挙げられる。より具体的な例としては、透明樹脂などの基材と光を散乱するための散乱構造とを有するものが挙げられる。散乱構造の例は、基材と異なる屈折率を持つ粒子、結晶、ゾルゲル硬化された酸化物などの組成物、ボイド(穴、空隙)、凹凸構造などである。なお、拡散体100は、散乱能を有する構造体であれば具体的な構成は限定されない。
【0031】
拡散体100は、例えば、内部が屈折材及び散乱構造で満たされていてもよい。屈折材の例としては、透明樹脂、硝子、又はシリコーン材が挙げられる。拡散体の材料は、光透過性を有すれば材質は問わない。光の利用効率の観点から、拡散体の材料の光透過性は高いほど望ましい。また、拡散体100は光源近傍に配置されることから、拡散体の材料は、耐熱性に優れた材料が望ましい。
【0032】
拡散体100は、複数種類の散乱構造を含むことができる。その場合において、拡散体100は、複数種類の散乱構造の平均サイズを以下に示すサイズオーダーとしてもよいし、複数種類の散乱構造のうちいずれかの一種類のサイズを以下に示すサイズオーダーとしてもよい。なお、前者の場合であっても、複数種類の散乱構造の少なくとも一種類は、以下に示すサイズオーダーであるのが好ましい。
【0033】
拡散体100は、例えば、基材110および粒子111を含む。粒子111は、例えば、ナノ粒子である。「ナノ粒子」とは、ナノメール(nm)オーダーの大きさをもつ粒子である。ナノ粒子は、一般的には、1nmから数百nmの大きさの粒子をいう。粒子111は、例えば、粒径がナノオーダーの粒子である。また、粒子111は、例えば、マイクロ粒子であってもよい。「マイクロ粒子」とは、マイクロメートル(μm)オーダーの大きさをもつ粒子である。マイクロ粒子は、一般的には、1μmから数千μm(例えば、5mm以下)の大きさをいう。ただし、粒子の大きさが大きすぎると、拡散体100内における粒子の存在が目立つようになり、ざらつき感が生じるなど視認性が悪くなる。したがって、粒子111の大きさは、3000nm以下が望ましい。
【0034】
粒子111は、球形または別の形状をとり得る。
【0035】
粒子111は、例えば、無機酸化物である。無機酸化物は、例えば、ZnO、TiO2、ZrO2、SiO2、Al2O3などである。
【0036】
粒子111は、拡散体100内に入射された光Liを散乱させて光Lsとする。また、粒子111は、拡散体100内を伝搬される光Ltを散乱させて光Lsとする。
【0037】
基材110は、粒子111を含んでいる。粒子111は、基材110に添加されていてもよい。粒子111は、例えば、基材110に分散されている。
【0038】
基材110は、特に限定されないが、例えば透明材料である。基材110は、必ずしも光Liの波長すべてにおいて透明である必要はない。一例として、基材110は、光Liの波長のうちの特定波長に吸収があってもよい。
【0039】
基材110は、導光距離5mmにおける透過率(直進透過率)が、設計波長において90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がさらに好ましい。ここで、設計波長は、入射光の波長のうちの予め定めた波長であればよい。設計波長は、1つの波長に限定されず、複数の波長や幅をもった波長(波長帯)でもよい。設計波長は、例えば、入射光が白色の光の場合、450nm、550nmおよび650nmのうちの1つまたは2つ以上の波長でもよい。なお、設計波長は、450nm、550nmおよび650nmの3つの波長でもよい。
【0040】
基材110は、例えば、固体である。基材110は、例えば、熱可塑性ポリマー、熱硬化性樹脂または光重合性樹脂などを用いた樹脂板であってもよい。また、樹脂板としては、アクリル系ポリマー、オレフィン系ポリマー、ビニル系ポリマー、セルロース系ポリマー、アミド系ポリマー、フッ素系ポリマー、ウレタン系ポリマー、シリコーン系ポリマーまたはイミド系ポリマーなどを用いることができる。拡散体100は、例えば、このような基材110の硬化前の材料に粒子111を分散させた状態で硬化処理を行うことで形成されていてもよい。なお、基材110は、固体に限定されず、液体、液晶またゲル状の物質でもよい。
【0041】
また、拡散体100は、例えば、ゾルゲル法により作られる多孔質材料、有機分子分散材料、有機無機ハイブリッド材料(有機無機複合材料とも呼ばれる)または金属粒子分散材料により形成されていてもよい。一例として、拡散体100は、有機・無機ハイブリッド樹脂であってもよく、例えば、樹脂と無機酸化物のハイブリッド樹脂であってもよい。この場合、拡散体100は、粒子111相当の物質として、無機酸化物の材料と有機化合物とを含む基材110をベースとしてゾルゲル硬化によって生成された無機酸化物を有する。なお、このような製造過程によって生成される微細な孔なども散乱構造とみなしてもよい。
【0042】
また、拡散体100は、例えば、基材110の表面に微細な凹凸が形成されたものであってもよい。
【0043】
また、拡散体100は、少なくとも1つの表面に反射防止コート、防汚コート、遮熱コート、撥水加工など、透光性の機能性コーティングが施されていてもよい。また、拡散体100は、窓としての機能性(耐衝撃性、耐水性、耐熱性など)を考慮して、例えば、2枚の透明基材(例えば、ガラス板)に挟まれた構成であってもよい。この場合、拡散体100は、合わせガラスの中間膜であってもよい。
【0044】
<散乱現象の例>
以下、一例として、拡散体100が透明樹脂内部に散乱粒子を分散させた構成であるときの散乱現象を説明する。光入射面101aより拡散体100に入射した光Liは、光Ltとして拡散体100内を導光する。拡散体100内を導光する光Ltのうち、少なくとも一部は散乱粒子で散乱する。このとき、該光は、角度および光の波長に対する依存性を持って散乱する。例えば、衝突する光(ここでは、光Lt)の波長に対して散乱粒子の大きさが十分小さい場合、散乱光Lsは等方的であり散乱角度の依存性が小さく、また相対的に波長の短い光の散乱強度が波長の長い光の散乱強度よりも高くなる。
【0045】
一方で、衝突する光の波長に対して散乱粒子の大きさが近しい場合、散乱光Lsは、前方散乱の程度が後方散乱に比べて相対的に大きく、また散乱強度については上記と同様、相対的に波長の短い光の方が波長の長い光よりも高くなる。なお、光の波長に対して散乱粒子の大きさが大きくなるほど、前方散乱の程度が大きくなるとともに、散乱強度の波長依存性が小さくなる。
【0046】
相対的に、光Liの波長が散乱粒子の大きさよりも大きい場合の該散乱粒子による散乱強度は、光Liの波長が散乱粒子の大きさよりも小さい場合の該散乱粒子による散乱強度よりも低くなる。そのため、例えば、幅広い波長スペクトルを含む光Ltが光入射面101aに入射した場合、短波長の光Ltが長波長の光Ltよりも優先的に散乱される。この場合、拡散体100の光出射面101bから出射される光(第1の出射光)の相関色温度は、拡散体100に入射される光Liの相関色温度より高くなる。このような色温度の関係は、観察者に、第1の出射光が出射される拡散体100の主発光面を、自然な空を覗く窓として視認させるために有効である。一方で、拡散体100の光出射面101cから出射される光(第2の出射光)は、拡散体100に入射した光のうち、第1の出射光を除く拡散体100内で散乱した光(例えば、前方散乱光)の一部と、散乱されなかった光(導光光)とを含むため、第1の出射光の色温度よりも低く、かつ拡散体100に入射される光Liの相関色温度より高い。このような色温度の関係(特に、第1の出射光と第2の出射光との間の色温度の関係)は、観察者に、第2の出射光が出射される日なた形成部3を、太陽光の差し込み光に照らされた窓枠として視認させるために有効である。
【0047】
さらに、本実施形態の構成によれば、第1の出射光の強度の角度依存性により、さらに自然な空を再現できる。例えば、本実施形態の照明装置200が屋内の天井に取り付けられた場合を考える。光源1が光入射面101a近傍に固定された状態を想定し、下から観察者が第1の光出射面(光出射面101b)を観察したとする。観察者は第1の光出射面を観察した場合、第1の出射光(光L1)により当該第1の光出射面を青空と視認できる。第1の光出射面の法線方向である真下から観察した場合に比べ、法線方向(-Y軸方向)から光Liの進行方向(+Z軸方向)に近づき斜め方向から観察すると、より高い輝度が観察される。この輝度の変化は自然な空においても発生する現象であり、自然な空を観察した場合に高度および太陽との位置関係次第で青空の輝度は変化する。したがって、これまで説明した拡散体100の光入射面101aと光出射面101bの関係によれば、薄型でありつつ、さらに自然な空を再現できる。
【0048】
なお、上記の例を第1の出射光の強度の角度依存性を用いて表現すると、以下のようになる。第1の出射光が+Z軸方向に進むときの当該第1の出射光の出射角度を0degとし、第1の出射光が第1の光出射面の法線方向(
図2の例では、-Y軸方向)に進むときの当該第1の出射光の出射角度を90degとすると、出射角度が45degのときの第1の出射光の強度は、出射角度が90degのときの第1の出射光の強度よりも大きい。例えば、出射角度が90degのときの第1の出射光の強度に対する、出射角度が45degのときの第1の出射光の強度比は1.01倍から10倍までの範囲内が好ましく、1.1倍から5倍までの範囲内がさらに好ましい。
【0049】
このような第1の出射光の強度の角度依存性を考慮した場合、拡散体100の好適な構成例として、散乱構造の大きさ(粒子の場合は粒子径)は、10nmから3000nmまでの範囲内であって、更に好ましくは50nmから2000nmまでの範囲内であってもよい。
【0050】
また、拡散体100は、入射光に対してレイリー散乱又はそれに類似する散乱を利用して青空などの自然の空の色味(例えば、透明感のある青色など)を再現するものであってもよい。レイリー散乱は、散乱粒子に入射した光のうち、短波長の光が優先して散乱される散乱現象である。例えば、可視光の波長帯(350nm~850nm程度)の光を入射したとき、青色の波長帯の光が優先して散乱される。この場合であっても、照明装置200の光源1が可視光を出射するとき、拡散体100から出射される光L1は、光源1が有する相関色温度よりも高い相関色温度を有する。ここで、レイリー散乱は、粒子の大きさが光の波長よりも小さい場合に生じる散乱現象である。つまり、拡散体100への入射光として可視光の波長帯の光を用いる場合、青空を模擬する好適な散乱光を得るためには、拡散体100の散乱構造の大きさ(粒子の場合、粒子径)は10nm~800nmの範囲内あることが望ましい。
【0051】
なお、観察者による第1の光出射面の観察角度変化が少ない場合、第1の光出射面の面内の輝度変化は小さい方が好ましい。その場合、拡散体100の拡散の強さを散乱構造の大きさ、量(濃度)等で調整し、第1の出射光の強度が第2の出射光の強度よりも低くなるように設定してもよい。また、後述するように、拡散体100が光入射面を2以上備えることにより、第1の光出射面に対する第1の出射光の面内輝度変化を小さくできる。このような方法によっても、薄型でありつつ、より自然な空を再現することができる。
【0052】
例えば、拡散体100の厚さを100mm以下とできる。また、例えば、拡散体100の厚さは、20mm以下でもよく、10mm以下も可能である。さらに、例えば、拡散体100の厚さは5mm以下も可能である。さらに、例えば、光源1のサイズ(Y軸方向の長さ)が小さい場合や、光Liがレーザー光源から発せられる光や集光されたスポット光のように、入射面における照射範囲が小さい光である場合には、拡散体100の厚さは1mm以下も可能である。
【0053】
また、拡散体100を、窓を通して見る晴天時の青空を模擬する照明パネルと想定すると、明部領域302は晴天時の窓枠の日なた領域、暗部領域301は晴天時の窓枠の日陰領域を模擬できることが好ましい。このような場合において、点灯時の拡散体100の光L1による照明機能に対して点灯時の明部領域302すなわち疑似日なた領域が明るく、同時に明部領域302から出射される光L2が拡散体100の第1の光出射面から出射される光L1よりも低色温度であることは、容易に想像できる。例えば、晴天時の青空の輝度は、5000[cd/m2]程度であり、窓枠部材に多く用いられる白色拡散反射面での日なた領域の輝度は、30000[cd/m2]程度である。また、晴天時の青空を視認するときの光の色温度は、20000[K]程度で、白色拡散反射面において日なた領域を視認するときの光の色温度は、5000[K]程度である。そのため、拡散体100の第1の光出射面と明部領域302との輝度及びそれらから発する光の色温度の大小関係は、上記の通りに維持されることが望ましい。ただし、窓を通してみる空は晴天時の青空に限らず、雨天時又は雲天時又はこれらの両方も含めると、拡散体100の第1の光出射面と明部領域302との間の輝度(又はそれらから出射される光束)の比率は、20:1から1:30の範囲内がより好ましい。
【0054】
また、例えば、点灯時の拡散体100の第1の光出射面の輝度は100[cd/m2]~6000[cd/m2]、より好ましくは500[cd/m2]~3000[cd/
m2]であってもよい。これに対して、点灯時の明部領域302の輝度は300[cd/m2]~30000[cd/m2]、より好ましくは1000[cd/m2]~12000[cd/m2]であってもよい。また、拡散体100の第1の光出射面から出射される光L1の相関色温度は10000[K]~100000[K]、より好ましくは20000[K]~80000[K]であってもよい。これに対して、明部領域302から出射される光L2の相関色温度は2000[K]~7000[K]、より好ましくは2500[K]~6500[K]であってもよい。
【0055】
また、拡散体100の第1の光出射面が発する光L1と明部領域302が発する光L2の相関色温度の差は、20000K以上かつ98000K以下であってもよい。さらに、点灯時の明部領域302と暗部領域301の輝度(又は光束)の比は、100:1から20:1の範囲内であることが望ましく、約10:1であることがより望ましい。ただし、この関係性は、晴天時に成立する条件であり、曇り、夜などの条件ではこの限りではない。
【0056】
<日なた形成部3>
日なた形成部3は、拡散体100の前面側を含む拡散体100の周囲の少なくとも1つの位置に設けられる光学部材である。ここで、拡散体100の周囲は、拡散体100の側面と面する空間、前面と面する空間及び背面と面する空間を含む概念である。日なた形成部3は、例えば、第1の光出射面と面する空間を向く側である表側の面が、照明装置200の観察者から視認可能なように配置される。なお、第1の光出射面と面する空間は、第1の出射光が出射される空間であり、以下、単に照射空間と呼ぶ場合がある。日なた形成部3は、例えば、窓枠を構成する面のうち窓側を向く面(側壁)を模したフレーム状部材であってもよい。
【0057】
日なた形成部3は、例えば、拡散体100の前方の所定領域に設けられてもよい(
図1参照)。また、日なた形成部3は、例えば、拡散体100の側方の所定領域に設けられてもよい(後述する
図7参照)。
【0058】
日なた形成部3は、照明装置200の照射空間(光出射面101bと面する空間)を囲うように配置されてもよい。例えば、日なた形成部3は、拡散体100の周囲において、該照射空間の外縁を区画するように配置されてもよい。ここで、拡散体100の周囲を、例えば、500mm以内の空間としてもよい。
【0059】
日なた形成部3は、拡散体100の前方、後方又は側方において拡散体100と隙間なく配置されてもよい。このとき、拡散体100と日なた形成部3とは、例えば緩衝材等を挟んで接続されてもよい。このようにすることで、不要な光が照明装置200の照射空間内に出射されることを防ぐことができる。
【0060】
日なた形成部3は、少なくとも光透過性部材を有する。日なた形成部3は、拡散体100の第2の光出射面(光出射面101c)から出射され、後述する折り返し部2によって偏向された第2の出射光(光L2)を、照射空間(光出射面101bと面する空間)に向けて出射する。なお、
図1に示す例は、日なた形成部3が光透光性部材により形成される例である。また、日なた形成部3は、さらに光透過拡散部材を有していてもよい。その場合、日なた形成部3は、拡散体100の第2の光出射面(光出射面101c)から出射され、後述する折り返し部2によって偏向された第2の出射光(光L2)を、拡散透過又は拡散反射させることで照射空間に向けて出射する。光透過拡散部材は、例えば、透過散乱シートのようなシート材やフィルム材で構成され、日なた形成部3の該空間側の面上に配置される。また、日なた形成部3は、光透過拡散部材として内部に散乱粒子を含んでいてもよい。光利用効率を向上させるために、日なた形成部3の透過率は高いことが望ましい。
【0061】
<折り返し部2>
折り返し部2は、拡散体100の第2の光出射面(光出射面101c)から出射された第2の出射光(光L2)を、日なた形成部3に向かう光に偏向する導光部材である。折り返し部2は、少なくとも1つの反射面を有する。折り返し部2は、例えば、表面に反射膜又は反射構造を備える光学部材であってもよい。例えば、折り返し部2は、アルミニウム等の反射率の高い部材で構成されてもよいし、後述する
図6に示すような内部反射を行う屈折材で構成されてもよい。
【0062】
図3は、第2の出射光の日なた形成部3までの光路を示す説明図である。
図3に示す例では、照明装置200は、2つの折り返し部2を備えている。このように、第2の出射光(光L2)は少なくとも1つ以上の折り返し部2により日なた形成部3に向かって導光される。
【0063】
なお、折り返し部2は、第2の出射光に加えて、拡散体100の第2の光出射面以外の面から出射される光や、拡散体100を介さずに光源1から折り返し部2が形成される拡散体100の端部側に到達した光などを、日なた形成部3に向かって導光してもよい。例えば、拡散体100の背面と後述する背面板4(背面板4を設けない構成であれば、保持部6)との間に隙間がある構成の場合、該隙間を通って光源1からの光Liが、拡散体100の光入射面101aの対向端部側である折り返し部2が形成される端部側に到達する場合がある。そのような場合に、折り返し部2は、第2の出射光に加えて、該隙間を通って光源1から折り返し部2が形成される端部側に到達した光Liを、日なた形成部3に向かって導光してもよい。
【0064】
<光源1>
光源1は、拡散体100の主発光面が形成される面101bの端部を構成する端面に対向して備えられる。例えば、光源1は、拡散体100への入射光となる光Liを出射する発光面を備え、該発光面が拡散体100の端面に対向するように配置される。なお、1つの拡散体100に対して複数の光源1を備えることも可能である。本実施の形態では、1つの拡散体100に対して入射光Liを放射する一群(1つの場合を含む)の光源または発光素子をまとめて光源1と呼ぶ。
【0065】
光源1は、拡散体100への入射光である光Liを出射する。光源1は、例えば、光Liとして白色光を出射する。また、光源1は、例えば、光Liとして所定の相関色温度Tciの光を発してもよい。
【0066】
相関色温度Tciは、例えば、6500Kである。また、相関色温度Tciは、例えば、5000Kである。各光源の発する光の相関色温度は、同一であってもよいし、各々異なっていてもよい。
【0067】
光源1から出射される光Liの色は白色以外の色でもよい。例えば、光源1は、白色光源と緑色系の光源を含むことができる。また、光源1は、白色光源、緑色の光源および橙色の光源を含むことができる。また、光源1は、異なる色温度の白色光源を含むことができる。例えば、光源1は、高色温度の白色光源と低色温度の白色光源とを含むことができる。
【0068】
ここで、高色温度の白色と低色温度の白色との色温度の差は、例えば、8800Kである。高色温度の白色の相関色温度は、例えば、14400Kである。高色温度の白色の相関色温度は、例えば、11500K以上である。また、高色温度の白色の相関色温度は、例えば、19000K以下である。低色温度の白色の相関色温度は、例えば、5600Kである。低色温度の白色の相関色温度は、例えば、5500K以上である。また、低色温度の白色の相関色温度は、例えば、6050K以下である。
【0069】
なお、上述した光源1の構成例および光源1から出射される光Liの色温度の例はあくまで一例であり、所望の第1の出射光および第2の出射光が得られるよう、拡散体100の構成と併せて適宜調整される。
【0070】
なお、光源1は、拡散体100の1つの端面に対向して配設されてもよいし、拡散体100の2以上の端面に対向して配設されてもよい(後述する
図8参照)。なお、第1の光出射面からの第1の出射光の均一照射の観点から、拡散体100の主表面形状が長方形である場合、光源1は、拡散体100の主表面の長手方向の辺に接続される端面に対向して設けられることが好ましい。この場合、拡散体100の主表面の長手方向の辺に接続される端面に光入射面101aが形成される。
【0071】
また、
図8に示すように、光源1を拡散体100の2以上の端面に対向して配設する場合、該端面は互いに対向しない端面であってもよい。
【0072】
照明装置200が備える光源1として、例えば、白熱電球、ハロゲンランプ、又は蛍光ランプなどの管球光源を用いてもよい。また、光源1として、例えば、発光ダイオード(Light Emitting Diode(LED))又はレーザーダイオード(Laser Diode(LD))などの半導体光源を用いてもよい。つまり、光源1の構造・原理等は、特に限定されることなく、いかなる光源を用いてもよい。ただし、二酸化炭素(CO2)の排出と燃料の消費を抑えるといった環境への負荷を軽減する観点から、光源1としては、半導体光源が望ましい。半導体光源は、従来のハロゲンバルブに代表されるランプ光源に比べて発光効率が高く、また、小型化及び軽量化が容易である観点から、半導体光源が望ましい。半導体光源は、従来のランプ光源に比べて指向性が高く、光学系を小型化及び軽量化できる。
【0073】
また、例えば、ZEB(Zero Energy Building)を考慮して、光Liを、外光(太陽光など)を導光した光で代用することも可能である。外光の導光には、外光を取り込み所定の方向に出射する採光部材や導光体を利用できる。その場合、光源1は、そのような採光部材や導光体の光出射面であってもよい。
【0074】
<背面板4>
既に説明したように、照明装置200は、背面板4を備えてもよい。背面板4は、拡散体100の背面側(本例では、-y軸方向)に備えられる。背面板4は、拡散体100の背面(面101d)に対向して備えられてもよい。なお、背面板4と拡散体100との距離は近い方が好ましい。なお、背面板4は、拡散体100の背面側に設けられる光反射部材または光吸収部材の一例である。
【0075】
背面板4は、反射機能を有するか不透明であり、透過率は望ましくは50%以下であり、さらに望ましくは10%以下である。
【0076】
背面板4は拡散反射体であることが望ましく、より望ましくは白色拡散反射体である。背面板4は光吸収体であってもよい。背面板4は、例えば、例えばアルミニウム等の反射率の高い金属部材で構成されてもよい。なお、背面板4は、平板形状に限定されない。背面板4は、例えば、湾曲していたり、傾斜していてもよく、またそのような平坦面、曲面または傾斜面の組み合わせであってもよい。また、背面板4は、例えば反射シートのようなシート材やフィルム材で構成されてもよい。またはこのとき、背面板4は鏡面反射作用を有してもよいし、拡散反射作用を有してもよい(例えば、ランバート反射やガウス反射などの反射作用)。
【0077】
なお、背面板4は、開閉状態が変更可能であってもよい。背面板4が開閉可能に備えられることにより、ユーザが背面側空間を視認したいときや外光を取り込みたいときに背面板4を開状態にして、拡散体100を介して背面側空間を視認させたり、外光を取り込ませたりすること、照明装置200を窓としても利用できる。背面板4は、例えばブラインドやシャッターのように、背面板4を折りたたんだり、戸袋に収納したりすることによって開閉状態が変更可能であってもよい。
【0078】
背面板4は、例えば液晶シャッターのように、背面板4への印加電圧によって遮蔽状態が変更可能であってもよい。背面板4は、例えば液晶パネルのように、背面板4への印加電圧によって遮蔽状態が変更可能であってもよい。
【0079】
また、背面板4は、保持部6内において、拡散体100と一体に支持されていてもよい。その場合において、背面板4は、拡散体100と一体になって開閉可能に支持されていてもよい。
【0080】
背面板4は、例えば、拡散体100に入射した光のうち、透過、導光または散乱作用により面101d(背面)から出射する光を-Y軸方向に向かって反射させる。背面板4によって反射した光は、拡散体100の透過、導光または散乱作用により光L1や光L2に変換され得るため、これにより、照明装置全体の光利用効率の向上を図ることができる。
また、照明装置200が窓としても利用される場合、背面側に光が出射されることは、屋外など背面側に居る人にとって光害となる可能性もある。そのような場合に、背面板4により、背面側への光漏れを低減することができる。
【0081】
<遮光部5>
既に説明したように、照明装置200は、遮光部5を備えてもよい。遮光部5は、反射材または光吸収材で構成される。遮光部5は、第1の出射光(光L1)が照射空間を介して日なた形成部3に入射するのを抑制するために設けられる。また、遮光部5は、第2の出射光(光L2)が日なた形成部3と面する空間(これは照射空間を含む概念である)を介して拡散体100に入射するのを抑制するために設けられる。
【0082】
遮光部5は、例えば、拡散体100(特に、第1の光出射面)と日なた形成部3との間の少なくとも1つの位置に備えられる。遮光部5は、遮光部5を設けずに第1の出射光(光L1)の出射可能範囲すべてに第1の出射光が出射された場合に、第1の出射光が日なた形成部3に到達することになる光路上の少なくとも1つ位置に、該光路を塞ぐように設けられるのが好ましい。また、遮光部5は、遮光部5を設けずに第2の出射光(光L2)の出射可能範囲すべてに第2の出射光が出射された場合に、第2の出射光が拡散体100の第1の光出射面に到達することになる光路上の少なくとも1つ位置に、該光路を塞ぐように設けられるのが好ましい。なお、
図1には、遮光部5を、拡散体100の主表面上に設ける例が示されている。
【0083】
このような遮光部5を設けて、第1の光出射面から出射される第1の出射光が有する照明機能と日なた形成部3から出射される第2の出射光が有する照明機能とを分離することで、拡散体100および日なた形成部3への不要な光の映り込みを抑制することができる。
【0084】
<変形例>
図4は、実施の形態1に係る照明装置200の他の例を示す構成図である。
図4に示すように、照明装置200は、色変換部材7をさらに備えてもよい。色変換部材7は、日なた形成部3から良好な色温度の光を出射させるために、拡散体100から出射された第2の出射光(光L2)を変換する。具体的には、拡散体100から出射された第2の出射光を、該第2の出射光が有する相関色温度よりも低い相関色温度を有する光に変換する。以下、色変換部材7の変換前の第2の出射光を光L21、色変換部材7の変換前の第2の出射光を光L22という場合がある。ここで、光L22の色温度は、光L21の色温度よりも低い。色変換部材7は、例えば、カラーフィルターや、蛍光体素子が封入された透明樹脂やシートである。色変換部材7は、光利用効率の向上を図るために透過率が高いことが望ましい。
【0085】
色変換部材7は、例えば、拡散体100の第2の光出射面(光出射面101c)から日なた形成部3までの第2の出射光の光路上に設けられる。なお、
図4には、色変換部材7が、日なた形成部3の背面に接して配置される例が示されている。なお、色変換部材7の配置はこの限りではない。色変換部材7は、例えば、第2の光出射面に接して配置されてもよく、その場合において、拡散体100と一体に形成されていてもよい。
【0086】
また、
図5および
図6は、折り返し部2の他の例を示す構成図である。上述した例では、折り返し部2が有する反射面が平面であったが、折り返し部2が有する反射面の形状は平面形状に限定されず、例えば曲面形状であってもよい。また、折り返し部2は、
図6に示すように、屈折材によって構成される導光部材であってもよい。その場合、第2の出射光は、導光部材の内部を導光しながら、導光部材の内面反射を利用して日なた形成部3に導かれる。導光部材は、例えば、多面体であってもよい。導光部材は、例えば透過率の高い透明樹脂で構成されてもよい。
【0087】
また、
図7は、日なた形成部3の他の例を示す構成図である。上述した例では、日なた形成部3が拡散体100の第1の光出射面(光出射面101b)に対して垂直(90度)に配置されていたが、日なた形成部3は、第1の光出射面に対して傾斜するように配置されてもよい。このとき、日なた形成部3の傾斜角度θは、YZ平面上で第1の光出射面が有する角度を基準として、90度~150度が望ましい。ここで、θは、第1の光出射面に対する日なた形成部3の前面(照射空間側の面)の角度であってもよい。
【0088】
これは、照明装置200が天井あるいは壁面に取り付けられた場合に、日なた形成部3から出射される第2の出射光を照明光として利用するためである。さらに、窓から差し込む太陽光により日なた形成部3が照らされている状態を模擬することで、より自然な造景を再現するためである。
【0089】
また、
図8は実施の形態1にかかる照明装置200の例を示す正面図であり、
図9は、
図8に示す照明装置200の斜視図である。
図8に示すように、例えば、照明装置200は、拡散体100の主発光面が有する複数の辺に対して、1つ以上の光源を備えることができる。
図8には、拡散体100の主発光面が有する4辺(辺a~d)のうち、対向関係にない2辺(辺aと辺b)に対して、光源が配置される例が示されている。なお、日なた形成部3は、4辺それぞれに対応する端部の周囲に設けられている。
図8では、辺a側に設けられる光源1を光源1a、辺b側に設けられる光源1を光源1aとして示している。また、
図8では、辺a側端部の周囲に設けられる日なた形成部3を日なた形成部3a、辺b側端部の周囲に設けられる日なた形成部3を日なた形成部3b、辺c側端部の周囲に設けられる日なた形成部3を日なた形成部3c、辺d側端部の周囲に設けられる日なた形成部3を日なた形成部3dとして示している。ここで、辺aと辺cは互いに対向しており、辺bと辺dは互いに対向している。
【0090】
本例において、光源1aから出射された光は、拡散体100の辺a側端部に設けられた光入射面から入射する。そして、拡散体100内に入射した光の一部が、対向する辺c側端部に設けられた第2の光出射面から第2の出射光(光L2)として出射され、折り返し部2を通って日なた形成部3cから出射される。また、光源1bから出射された光は、拡散体100の辺b側端部に設けられた光入射面から入射する。そして、拡散体100内に入射した光の一部が、対向する辺d側端部に設けられた第2の光出射面から第2の出射光として出射され、折り返し部2を通って日なた形成部3dから出射される。すなわち、日なた形成部3a、3b、3c、3dのうち、日なた形成部3cと日なた形成部3dから第2の出射光が出射されることにより、日なた形成部3cと日なた形成部3dとが発光する。これにより、日なた形成部3cと日なた形成部3dとは、太陽光に照らされているように模擬することができる。
【0091】
このとき、日なた形成部3cからは-Z方向に向かって第2の出射光が出射され、日なた形成部3dからは+X軸方向に向かって第2の出射光が出射される。本例の場合、照明装置200は、図中の角度で示される太陽光Crが差し込んでいるように模擬することができる。図中の模擬された太陽光Crは、-X軸方向、-Y軸方向、および+Z軸方向に向かって差し込んでいるようにみえる。
【0092】
なお、日なた形成部3cから-Z方向に向かって出射される第2の出射光が、対向する辺a側に設けられた日なた形成部3aの表面をほのかに照らすように構成してもよい。同様に、日なた形成部3dからX方向に向かって出射される第2の出射光が、対向する辺b側に設けられた日なた形成部3bの表面をほのかに照らすように構成してもよい。窓枠を照らす差し込み光の照り返しによって、対向する面が照らされる現象は、実際に日差しの強い日中に見られる現象である。このように構成することにより、より自然な造景を再現できる。
【0093】
なお、本例において、第1の出射光(光L1)は、第1の光出射面から-Y軸方向に向かって等方的に出射される。
【0094】
また、
図10は、実施の形態1にかかる照明装置200の他の例を示す断面図である。
図11は、
図10に示す照明装置200を+Z軸方向から見た断面図である。なお、
図11(A)は、
図10に示す照明装置200の物理的な構成例を示す断面図であり、
図11(B)は、
図10に示す照明装置200の機能的な構成例を示す断面図である。また、
図12は、観察者から見た
図10に示す照明装置200の例を示す斜視図である。
【0095】
図10および
図11(A)に示すように、照明装置200は、光量調整部8をさらに備えることができる。また、本例において、日なた形成部3は、暗部領域301と明部領域302とを含む。ここで、暗部領域301は、日なた形成部3上で太陽からの差し込み光によって形成される日影を模擬する領域である。明部領域302は、日なた形成部3上で差し込み光によって形成される日なたを模擬する領域である。
【0096】
光量調整部8は、日なた形成部3に入射される光のうち暗部領域301から照明装置200の照射空間(光出射面101bと面する空間)に向かう光の強度を、明部領域302から該照射空間に向かう光の強度よりも弱める光制限部材であってもよい。光制限部材は、マスクとも呼ばれる。光量調整部8は、日なた形成部3に入射する光が、日なた形成部3の前面(照射空間側の面)またはその裏側である背面に入射して、日なた形成部3の前面から照射空間に向かう光として出射されるまでの光路上の少なくとも暗部領域301に対応する領域に配置される。ここで、上記光路には、光路上には、拡散体100から日なた形成部3までの光路だけでなく、第1の日なた形成部3から照射空間を挟んで対向する第2の日なた形成部3までの光路、日なた形成部3内の光路および日なた形成部3の表面が含まれる。
【0097】
また、このような光路上の暗部領域301に対応する領域とは、そのような光路上の任意の位置(光の進行方向における位置)において、該光路を進む光がその領域を通過すると、日なた形成部3上の暗部領域301から照射空間に向かう光となる領域をいう。同様に、このような光路上の明部領域302に対応する領域とは、そのような光路上の任意の位置(光の進行方向における位置)において、該光路を進む光がその領域を通過すると、日なた形成部3上の明部領域302から照射空間に向かう光となる領域をいう。
。
【0098】
光量調整部8は、例えば、第2の出射光(光L2)の一部が、日なた形成部3に到達するのを防ぐ遮光機能を有する。光量調整部8は、入射される光の少なくとも一部を吸収又は反射する光学部材であってもよい。光利用効率の向上を図るため、光量調整部8は、反射率の高い部材で構成されるのが好ましい。
【0099】
このような光量調整部8を設けることによって、少なくとも1つの日なた形成部3に形成される暗部領域301を、当該日なた形成部3または他の日なた形成部3に形成される明部領域302よりも暗い領域として観察者に視認させる。
【0100】
なお、
図10および
図11(A)に示す例では、光量調整部8が、日なた形成部3の裏面に接して配置されている。本例の場合、日なた形成部3上に形成される暗部領域301は、光量調整部8と同等の形状を有することになる(
図11(B)参照)。
【0101】
また、
図12は、
図8に示す例と同様、拡散体100の隣接する2辺(辺aおよび辺c)に光源を備えた場合の観察者から見た照明装置200の例を示す斜視図である。本例において、日なた形成部3cおよび日なた形成部3dでは、それぞれ暗部領域301と明部領域302とに発光状態が分割される。すなわち、日なた形成部3cでは、暗部領域301cと明部領域302cとに発光状態が分割され、日なた形成部3dでは、暗部領域301dと明部領域302dとに発光状態が分割される。なお、暗部領域301c、明部領域302c、暗部領域301dおよび明部領域302dの形状は、模擬される太陽光Crが、遮光部5や保持部6により遮光されたときの窓枠の状態を模しているのが好ましい(なお、
図10も参照)。
【0102】
このような光量調整部8を備えることにより、拡散体による空模擬機能とより一体になることができ、より自然な天窓や壁窓を再現することができる。
【0103】
以上のように、上記の実施の形態およびその変形例によれば、窓越しに見える空を模擬するための光源と、窓枠を照らす差し込み光を模擬するための光源を共通化してより小型化および構造の簡易化を実現できるとともに、配置場所や配置する数に制限を設けることなく自然な造景を再現できる。
【符号の説明】
【0104】
200 照明装置
100 拡散体
101a 光入射面
101b 光出射面(第1の光出射面)
101c 光出射面(第2の光出射面)
101d 背面
110 基材
111 粒子
1、1a、1b 光源
2 折り返し部
3、3a、3b、3c、3d 日なた形成部
301 暗部領域
302 明部領域
4 背面板
5 遮光部
6 保持部
7 色変換部材
8 光量調整部