(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049825
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】橋梁の下支え構造
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20230403BHJP
E01C 1/04 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
E01D22/00 B
E01C1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159810
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(71)【出願人】
【識別番号】394014641
【氏名又は名称】カネカケンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】原口 望
(72)【発明者】
【氏名】東原 健一
(72)【発明者】
【氏名】津田 暁
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059GG40
2D059GG56
(57)【要約】
【課題】下支え構造により橋梁の真下の地盤に掛かる荷重を低減させて、下支え構造を安定化し得る構造を実現する。
【解決手段】本発明の下支え構造(10)は、橋梁(B1)の下方の橋脚(B2)間の空間に配置されたボックスカルバート(1)と、ボックスカルバート(1)の真下に配置された発泡樹脂材ブロック(3)と、掘削部(G1)と、を備え、発泡樹脂材ブロック(3)は、掘削部(G1)に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの橋台間、2つの橋脚間、または橋台と橋脚との間に架けられた橋梁の下支え構造であって、
前記橋梁の下方の空間に配置されたボックスカルバートと、
前記ボックスカルバートの真上および真下の何れかに配置された発泡樹脂材と、
地盤掘削部と、を備え、
前記ボックスカルバートおよび前記発泡樹脂材のうち下側に配された部材は、前記地盤掘削部に配置されている、橋梁の下支え構造。
【請求項2】
前記発泡樹脂材は、前記ボックスカルバートの真下に配置された、請求項1に記載の橋梁の下支え構造。
【請求項3】
少なくとも前記橋梁と前記ボックスカルバートまたは前記発泡樹脂材との間を充填する第1充填材を備えた、請求項1または2に記載の橋梁の下支え構造。
【請求項4】
前記発泡樹脂材上に配置されるコンクリート床版を備えた、請求項1~3の何れか1項に記載の橋梁の下支え構造。
【請求項5】
前記コンクリート床版と前記ボックスカルバートとの間に形成された高さ調節のための空間と、
前記空間を充填する第2充填材と、を備えた、請求項4に記載の橋梁の下支え構造。
【請求項6】
2つの橋台間、2つの橋脚間、または橋台と橋脚との間に架けられた橋梁の下支え構造の製造方法であって、
橋梁の真下の地盤を掘削し、地盤掘削部を形成する掘削工程と、
前記地盤掘削部に発泡樹脂材およびボックスカルバートの何れか一方の第1部材を配置する配置工程と、
前記第1部材の真上であり、かつ、前記橋梁の下方の空間に、発泡樹脂材およびボックスカルバートのうち前記第1部材と異なる第2部材を設置する設置工程と、を含む、橋梁の下支え構造の製造方法。
【請求項7】
前記配置工程では、前記第1部材として発泡樹脂材を配置する、請求項6に記載の橋梁の下支え構造の製造方法。
【請求項8】
少なくとも前記橋梁と前記第2部材との間に第1充填材を充填する充填工程を含む、請求項6または7に記載の橋梁の下支え構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の下支え構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、老朽化した橋梁が社会問題化している。橋梁を架け替えるためには、まず、仮設橋梁を建設し、次いで、既設橋梁を取り壊し、新たな橋梁を建設して仮設橋梁を解体撤去する。しかし、このような方法では、多大な工期および費用が掛かる。
【0003】
このため、例えば特許文献1には、大型のボックスカルバートおよび充填材を併用して、道路を共用しながら橋梁を下支えする技術が提案されている。また、同じく、道路を共用しながら橋梁を下支えする技術として、例えば特許文献2には、EPS(発泡ポリスチレン)等の発泡樹脂材とウレタン充填材との併用により橋梁下を盛土化する技術も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-196799号公報
【特許文献2】特開2016-56595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の技術では、ボックスカルバートおよび充填材の自重によって(すなわち橋梁を下支えする構造の重さによって)、地盤沈下が誘発される可能性がある。このような地盤沈下に対して、橋梁の支持地盤の改良または支持基盤に対する杭基礎の構築等による対策が考えられる。しかし、支持地盤の真上に橋梁があるので、支持基盤に大型の重機を設置することができず、上記対策は困難である。また、特許文献2に記載の発泡樹脂材と充填材との併用により橋梁下を補強する技術においても、橋梁の真下の空間を有効利用できなくなるのに加え、発泡樹脂材や充填材が軽量であるといえども、増加荷重が発生する。
【0006】
本発明の一態様は、橋梁を下支えする橋梁の下支え構造において、当該下支え構造により橋梁の真下の地盤に掛かる荷重を低減させて、将来的に橋梁の荷重が加わっても大きな変状なく将来的に耐え得る構造を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る橋梁の補強構造は、2つの橋台間、2つの橋脚間、または橋台と橋脚との間に架けられた橋梁の下支え構造であって、前記橋梁の下方の空間に配置されたボックスカルバートと、前記ボックスカルバートの真上および真下の何れかに配置された発泡樹脂材と、地盤掘削部と、を備え、前記ボックスカルバートおよび前記発泡樹脂材のうち下側に配された部材は、前記地盤掘削部に配置されている。
【0008】
前記橋梁の下支え構造では、前記発泡樹脂材は、前記ボックスカルバートの真下に配置されていてもよい。
【0009】
前記橋梁の下支え構造は、少なくとも前記橋梁と前記ボックスカルバートとの間を充填する第1充填材を備えていてもよい。
【0010】
前記橋梁の下支え構造は、前記発泡樹脂材上に配置されるコンクリート床版を備えていてもよい。
【0011】
前記橋梁の下支え構造は、前記コンクリート床版と前記ボックスカルバートとの間に形成された高さ調節のための空間と、前記空間を充填する第2充填材と、を備えていてもよい。
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る橋梁の下支え構造の製造方法は、2つの橋台間、2つの橋脚間、または橋台と橋脚との間に架けられた橋梁の下支え構造の製造方法であって、橋梁の真下の地盤を掘削し、地盤掘削部を形成する掘削工程と、前記地盤掘削部に発泡樹脂材およびボックスカルバートの何れか一方の第1部材を配置する配置工程と、前記第1部材の真上であり、かつ、前記橋梁の下方の空間に、発泡樹脂材およびボックスカルバートのうち前記第1部材と異なる第2部材を設置する設置工程と、を含む。
【0013】
前記橋梁の下支え構造の製造方法において、前記配置工程では、前記第1部材として発泡樹脂材を配置してもよい。
【0014】
前記橋梁の下支え構造の製造方法は、少なくとも前記橋梁と前記第2部材との間に第1充填材を充填する充填工程を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、橋梁を下支えする橋梁の下支え構造において、当該下支え構造により橋梁の真下の地盤に掛かる荷重を低減させて、将来的に橋梁の荷重が加わっても大きな変状なく将来的に耐え得る構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態1に係る橋梁の下支え構造の構成および下支え構造の製造方法を示し、101~103は、下支え構造の製造方法の各種工程を模式的に示す正面断面図であり、104は、下支え構造の概略構成を示す正面断面図および側断面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る下支え構造の変形例の概略構成を示す正面断面図および側断面図である。
【
図3】本発明の実施形態2に係る下支え構造の概略構成を示す正面断面図および側断面図である。
【
図4】本発明の実施形態3に係る下支え構造の概略構成を示す正面断面図および側断面図である。
【
図5】本発明の実施形態4に係る下支え構造の概略構成を示す正面断面図および側断面図である。
【
図6】本発明の実施形態5に係る下支え構造の概略構成を示す正面断面図および側断面図である。
【
図7】本発明の実施形態6に係る下支え構造の概略構成を示す正面断面図および側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態および実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。尚、本明細書においては特記しない限り、数値範囲を表わす「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)、B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。
【0018】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る橋梁の下支え構造10の構成および下支え構造10の製造方法を示している。
図1の101~103は、下支え構造10の製造方法の各種工程を模式的に示す正面断面図であり、
図1の104は、下支え構造10の概略構成を示す正面断面図および側断面図である。
【0019】
図1の104に示すように、下支え構造10の対象となる橋Bは、橋梁B1と、少なくとも2つの橋脚B2と、を備え、橋梁B1が橋脚B2間に架けられた構成である。ここで、「橋脚間」とは、一方の橋脚B2と他方の橋脚B2との間だけでなく、橋台と橋脚B2との間、一方の橋台と他方の橋台との間を意味する。すなわち、橋梁B1は、2つの橋台間、2つの橋脚間、または橋台と橋脚との間に架けられたものである。橋梁B1は、既設の橋梁であり、従来公知の用途で使用されるものであれば特に限定されない。橋梁B1は、幹線道路や高速道路といった道路橋でも、鉄道橋でも、水路橋であってもよい。また、橋梁B1を構成する材料は、コンクリートであってもよく、鋼材であってもよい。
【0020】
下支え構造10は、少なくとも2つの橋脚B2間に橋梁B1を補強するための構造である。老朽化が進んだ橋梁B1の改修工事として、橋梁B1の架け替え、補修、または補強のための工事が行われる。橋梁B1においては、工事に伴う長期間の通行止め等の交通規制を行う必要がある。本実施形態に係る下支え構造10により、既設の橋梁B1の撤去が不要となるため、最小限の交通規制にて橋梁B1の補強が可能である。
【0021】
下支え構造10は、ボックスカルバート1と、コンクリート床版2と、発泡樹脂で構成される発泡樹脂材ブロック3と、掘削部G1(地盤掘削部)と、を備えている。ボックスカルバート1は、橋梁B1の下方の橋脚B2間の空間に配置されている。発泡樹脂材ブロック3は、掘削部G1に配置されているとともに、ボックスカルバート1の真下に配置されている。なお、発泡樹脂材ブロック3は、ボックスカルバート1の真上に配置されていてもよい(下記実施形態6参照)。すなわち、発泡樹脂材ブロック3は、ボックスカルバート1の真上および真下の何れかに配置されている。そして、ボックスカルバート1および発泡樹脂材ブロック3のうち下側に配された部材(以下、下側部材と称する場合もある)は、掘削部G1に配置されている。
【0022】
ここでいう「掘削部G1に配置されている」構成とは、掘削部G1に対して、直接的に(地盤面G2に接触して)下側部材が配置された構成に加え、下側部材が間接的に配置された構成も包含する。下側部材がボックスカルバート1である場合、掘削部G1に対して下側部材が間接的に配置された構成は、例えば、基礎コンクリートを介してボックスカルバート1が地盤面G2に配置された構成が挙げられる。また、下側部材が発泡樹脂材ブロック3である場合、掘削部G1に対して下側部材が間接的に配置された構成は、例えば、整地された砂を介して発泡樹脂材ブロック3が地盤面G2に配置された構成が挙げられる。
【0023】
ここでいう「発泡樹脂材ブロック3は、ボックスカルバート1の真上および真下の何れかに配置されている」とは、定義として、上方から見てボックスカルバート1と発泡樹脂材ブロック3の積層体とが少なくとも一部の領域で重なるように、発泡樹脂材ブロック3がボックスカルバート1の上方および下方の何れかに配置されていることをいう。上方から見た、ボックスカルバート1と発泡樹脂材ブロック3の積層体との重なり領域は、ボックスカルバート1の中心を含むことが好ましい。なお、本明細書の「真下」または「真上」に関わる表現(例えば、「発泡樹脂材ブロック3の真上」「橋梁B1の真下」等)は、前記定義を適用し得る。
【0024】
発泡樹脂材ブロック3は、地面から上に向かって複数積層されている。また、コンクリート床版2は、発泡樹脂材ブロック3の真上に設けられている。すなわち、
図1の104に示すように、コンクリート床版2は、ボックスカルバート1と発泡樹脂材ブロック3との間に配されている。また、下支え構造10では、ボックスカルバート1の真下には掘削部G1が形成されている。掘削部G1は、発泡樹脂材ブロック3が設置される地盤面G2を有し、発泡樹脂材ブロック3の設置空間を形成している。掘削部G1の地盤面G2にて、発泡樹脂材ブロック3は、積層して配置されている。
【0025】
下支え構造10では、橋梁B1とボックスカルバート1との間には、後述する充填材が充填される。橋梁B1は、通常、橋脚B2によって支持されている。しかし、下支え構造10が備えられることにより、橋梁B1は、橋脚B2に加え、ボックスカルバート1および充填材によって支持される。それゆえ、橋梁B1の真下の地盤Gには、橋脚B2の荷重に加え、ボックスカルバート1および充填材の追加荷重が掛かる。このため、地盤Gに掛かる追加荷重により、ボックスカルバート1および充填材が沈下する、あるいは、橋梁B1の引き込み沈下が発生するおそれがある。
【0026】
ここで、本実施形態に係る下支え構造10によれば、橋梁B1の真下の地盤Gに掘削部G1が形成され、当該掘削部G1にあった地盤が発泡樹脂材ブロック3に置換されている。このため、掘削部G1の真下の地盤面G2に掛かる荷重を軽減(キャンセル)することができる。その結果、橋梁B1を下支する下支え構造10において、当該下支え構造10の荷重を低減させて、下支え構造10の真下の地盤Gを安定化することができる。特に地盤Gが軟弱地盤である場合、下支え構造10により橋梁B1の真下の地盤面G2に掛かる荷重が増加しても橋梁B1の引き込み沈下を抑制できる。このように、本実施形態によれば、橋梁B1を下支えする橋梁B1の下支え構造10において、当該下支え構造10により橋梁B1の真下の地盤に掛かる荷重を低減させて、将来的に橋梁B1の荷重が加わっても大きな変状なく将来的に耐え得る構造を実現できる。
【0027】
ボックスカルバート1は、コンクリート構造物であり、橋Bにおける橋梁B1と橋脚B2との間の空間に収まるように構成された筒状の支持枠である。本実施形態に係る下支え構造10によれば、橋梁B1の真下に筒状のボックスカルバート1が配置されているので、例えば流水用途や通路等で、橋梁B1の真下の空間を有効利用することができる。さらには、下支え構造10の軽量化を実現できる。
【0028】
ボックスカルバート1は、橋梁B1と橋脚B2との間の空間に収まるように構成されていれば、従来公知の構成を採用することができる。ボックスカルバート1は、単一のコンクリート二次製品で構成されていてもよいし、複数のコンクリート二次製品が一体的に構成されたコンクリート二次製品の複合体であってもよい。また、現場で型枠を組んで製造されたコンクリート構造物であってもよい。
【0029】
コンクリート床版2は、発泡樹脂材ブロック3の上方にボックスカルバート1を据え付けるための不陸調整、荷重分散、および施工時の浮力低減のために、最上部の発泡樹脂材ブロック3の上に設けられる。コンクリート床版2の厚さ(鉛直方向)は、100mm~300mmであることが好ましい。また、コンクリート床版2は、強度を向上させるために、好ましくはその内部に基盤材として格子状の鉄筋が埋設されている。鉄筋の被り厚さは、鉄筋の酸化による劣化防止の観点から、40mm以上であることが好ましい。なお、下支え構造10は、最上部の発泡樹脂材ブロック3の上にコンクリート床版2が設けられた構成に限定されず、発泡樹脂材ブロック3の高さ毎に、中間のコンクリート床版が設けられた構成であってもよい。このような構成では、中間のコンクリート床版の上に設置した最上部の発泡樹脂材ブロック3に最上部のコンクリート床版が設けられている。
【0030】
発泡樹脂材ブロック3は、下支え構造10(ボックスカルバート1等)の荷重、橋梁B1、交通荷重等に耐え得る、軽量性、強度および柔軟性を有する材質で形成されていれば特に限定されない。発泡樹脂材ブロック3の材料は、例えば、発泡ポリスチレン(EPS)であることが好ましい。下支え構造10には、例えば、長さ2m、幅1m、厚さ0.5mの発泡樹脂材ブロック3の複数を積み上げてなる積層体として設けられていることが好ましい。これにより、発泡樹脂材ブロック3を人力にて容易に施工することができる。
【0031】
次に、本実施形態に係る下支え構造10の製造方法について、説明する。当該製造方法は、少なくとも2つの橋脚B2間に架けられた橋梁B1の下支え構造10の製造方法であって、橋梁B1の真下に発泡樹脂材ブロック3およびボックスカルバート1の何れか一方の第1部材を配置する配置工程と、前記第1部材の真上であり、かつ、橋梁B1の下方の空間に、発泡樹脂材ブロック3およびボックスカルバート1のうち前記第1部材と異なる第2部材を設置する設置工程と、を含む、方法であれば、特に限定されない。
【0032】
以下では、前記配置工程にて、前記第1部材として発泡樹脂材ブロック3を配置する例について、説明する。すなわち、この例での下支え構造10の製造方法は、橋梁B1の真下に発泡樹脂材ブロック3を配置する配置工程と、発泡樹脂材ブロック3の真上であり、かつ、橋梁B1の下方の橋脚B2間の空間にボックスカルバート1を設置する設置工程と、を含む。
図1の101~103は、下支え構造10の製造方法の一例を示す。
【0033】
下支え構造10の製造方法では、まず、
図1の101に示すように、ボックスカルバート1の真下の地盤Gを掘削し、発泡樹脂材ブロック3を配置する空間(すなわち掘削部G1)を形成する(掘削工程)。より具体的には、掘削工程では、橋梁B1の真下にある、ボックスカルバート1の設置予定箇所の地盤Gを掘削する。掘削工程における地盤Gの掘削手法は、従来公知の任意の掘削技術を適用することができる。また、掘削工程では、発泡樹脂材ブロック3を水平に並べることができるように、掘削部G1の地盤面G2等の基礎を整地する。
【0034】
次いで、
図1の102に示すように、掘削工程にて形成された掘削部G1の地盤面G2に発泡樹脂材ブロック3を積層配置する(配置工程)。配置工程では、掘削部G1における整地した地盤面G2に発泡樹脂材ブロック3を隙間無く水平に並べる。発泡樹脂材ブロック3の積み上げ高さは、特に限定されず、橋脚B2の地盤Gの地面よりも低くても高くてもよい。例えば、発泡樹脂材ブロック3の積み上げ高さは、下支え構造10自体の増加荷重分、又は、下支え構造10及び橋梁B1の増加荷重分をキャンセルできるように、適宜設計される。発泡樹脂材ブロック3同士は、互いにずれないように、緊結金具を用いて互いに連結することによって固定する。また、発泡樹脂材ブロック3と掘削部G1の傾斜面等との隙間を埋めるために、砕石や現地の発生土等を充填する。
【0035】
次いで、
図1の103に示すように、最上段の発泡樹脂材ブロック3の上にコンクリート床版2を設置する(床版設置工程)。この工程では、まず、最上段の発泡樹脂材ブロック3の上に、コンクリート床版2の補強部材である鉄筋を配置する。即ち、配筋を行う(配筋工程)。配筋は、鉄筋かぶりを考慮して、発泡樹脂材ブロック3の上に数十mm、例えば40mmの台(図示しない)を複数、規則的に配置し、その上に鉄筋を載置することによって行う。続いて、所定の高さとなるまでコンクリートを打設し、硬化させる(養生する)ことにより、コンクリート床版2を形成する。
【0036】
次いで、
図1の104に示すように、コンクリート床版2の上にボックスカルバート1を設置する(設置工程)。設置工程では、橋梁B1および橋脚B2・B2とボックスカルバート1の空洞部分を構成する壁部とが同じ方向になるように、ボックスカルバート1を配置する。設置工程では、ボックスカルバート1とコンクリート床版2との間に高さ調節用の空間が形成されるように、コンクリート床版2の上にボックスカルバート1を設置することが好ましい。なお、ボックスカルバート1を設置後、この高さ調節用の空間には、充填材が充填される。ボックスカルバート1のコンクリート床版2への設置方法は、従来公知の任意の方法を採用することができる。例えば、ボックスカルバート1が上述したコンクリート二次製品である場合、コンクリート床版2の上にて複数のコンクリートパーツを一体化し、ボックスカルバート1を形成してもよい。また、予め、コンクリート床版2の外側(橋梁B1の真下の空間以外の空間)にて、コンクリート床版2の上にて複数のコンクリートパーツを一体化しボックスカルバート1を形成し、形成したボックスカルバート1をコンクリート床版2の上へ移動させてもよい。このとき、ボックスカルバート1の移動方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。例えば、コンクリート床版2へ案内するレールを形成し、当該レールに沿ってボックスカルバート1をコンクリート床版2へ移動させてもよい。また、球体や円筒体をボックスカルバート1の真下に配置した状態で、ボックスカルバート1をコンクリート床版2へ移動させてもよい。ボックスカルバート1の移動方法は、例えば、特開2011-102468号公報に開示された方法が挙げられる。
【0037】
このようにして製造された下支え構造10は、当該下支え構造10の荷重を低減させて、下支え構造10の真下の地盤Gを安定化することができる。また、下支え構造10によれば、老朽化した橋梁の改修等の公共交通インフラ整備が可能となるため、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)に貢献することが可能となる。
【0038】
図2は、変形例としての下支え構造10Aの概略構成を示す正面断面図および側断面図である。
図2に示す下支え構造10Aは、橋梁B1および橋脚B2と下支え構造10Aとの間の空間が充填材M1・M2によって充填された構成である。下支え構造10Aの製造方法は、上述した工程に加え、少なくとも橋梁B1とボックスカルバート1との間に充填材M1を充填する充填工程を含む。
【0039】
図2に示すように、下支え構造10Aは、上部遮断壁4Aと、充填材M1(第1充填材)と、中部遮断壁4Bと、充填材M2(第1充填材)と、を備えている点が、
図1に示す下支え構造10と異なる。充填材M1は、橋梁B1とボックスカルバート1の上面との間を充填する充填材である。また、充填材M2は、ボックスカルバート1の側面を覆う充填材である。また、上部遮断壁4Aと中部遮断壁4Bとは、地盤Gの垂直方向において互いに連結して立設している。
【0040】
上部遮断壁4Aは、充填材M1が充填される空間を規定する。また、中部遮断壁4Bは、充填材M2が充填される空間を規定する。上部遮断壁4Aは、橋梁B1とボックスカルバート1の上面との間の空間を取り囲むように形成されており、上面視において橋梁B1と離間し隙間が形成されている。このため、充填材M1は、上面視における橋梁B1と上部遮断壁4Aとの隙間を介して充填されることになる。
【0041】
また、中部遮断壁4Bは、地盤Gから立設しており、ボックスカルバート1の周囲を囲むように形成されている。中部遮断壁4Bは、ボックスカルバート1の開口部分を覆うように形成されている。このため、充填材M2は、ボックスカルバート1の開口部分も含め、ボックスカルバート1と中部遮断壁4Bとの間の空間を充填する。
【0042】
充填材M1は、ボックスカルバート1の上面と橋梁B1の下面との間に隙間なく充填されるモルタル、気泡混合軽量土、又は、発泡ウレタン等の硬化物である。充填材M2は、充填材M1と同様の材料である。ボックスカルバート1の上面と橋梁B1の下面との間に充填材M1が充填されることによって、ボックスカルバート1に橋梁B1の荷重が効率よく伝達する。そして、これにより、ボックスカルバート1による橋梁B1の補強強度が向上する。そして、ボックスカルバート1の側面を覆う充填材M2が設けられることにより、橋梁B1の補強強度がさらに向上する。
【0043】
なお、下支え構造10は、少なくとも橋梁B1とボックスカルバート1との間を充填する充填材M1を備えていればよい。下支え構造10に求められる補強強度に応じて、充填材M2は適宜設けられ得る。また、充填材M2の代わりに、上述した発泡樹脂材ブロックが配置されていてもよい。
【0044】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0045】
図3は、本実施形態に係る下支え構造10Bの概略構成を示す正面断面図および側断面図である。
図3に示すように、下支え構造10Bは、橋梁B1とボックスカルバート1との間にのみ充填材M1が充填されている点が、実施形態1に係る下支え構造10Aと異なる。
【0046】
充填材M1の充填空間を規定する上部遮断壁4Cは、ボックスカルバート1の上面から立設し、橋梁B1の下面に接している。下支え構造10Bでは、充填材M1は、ボックスカルバート1の上面全体に亘って充填されている。
【0047】
本実施形態に係る下支え構造10Bであっても、当該下支え構造10Bの荷重を低減させて、下支え構造10Bの真下の地盤Gを安定化することができる。よって、本実施形態によれば、橋梁B1を下支えする橋梁B1の下支え構造10Bにおいて、当該下支え構造10Bにより橋梁B1の真下の地盤に掛かる荷重を低減させて、将来的に橋梁B1の荷重が加わっても大きな変状なく将来的に耐え得る構造を実現できる。
【0048】
〔実施形態3〕
図4は、本実施形態に係る下支え構造10Cの概略構成を示す正面断面図および側断面図である。
図4に示すように、下支え構造10Cは、橋梁B1とボックスカルバート1との間の空間のうち一部の空間に充填材M1が充填されている点が、実施形態1に係る下支え構造10Aと異なる。
【0049】
図4に示すように、充填材M1の充填空間を規定する上部遮断壁4Dは、ボックスカルバート1の上面から立設し、橋梁B1の下面に接している。上部遮断壁4Dは、ボックスカルバート1の上面に4つ設けられている。これにより、ボックスカルバート1の上面において、充填材M1の充填領域が2つ存在することになる。そして、下支え構造10Cでは、橋梁B1とボックスカルバート1との間の空間のうち、橋梁B1、ボックスカルバート1、および上部遮断壁4Dに囲まれた2つの空間に充填材M1が充填されている。
【0050】
本実施形態に係る下支え構造10Cであっても、当該下支え構造10Cの荷重を低減させて、下支え構造10Cの真下の地盤Gを安定化することができる。よって、本実施形態によれば、橋梁B1を下支えする橋梁B1の下支え構造10Cにおいて、当該下支え構造10Cにより橋梁B1の真下の地盤に掛かる荷重を低減させて、将来的に橋梁B1の荷重が加わっても大きな変状なく将来的に耐え得る構造を実現できる。
【0051】
〔実施形態4〕
図5は、本実施形態に係る下支え構造10Dの概略構成を示す正面断面図および側断面図である。
図5に示すように、下支え構造10Dは、ボックスカルバート1とコンクリート床版2の間の空間に充填材M3(第2充填材)が充填されている点が、実施形態1に係る下支え構造10Aと異なる。
【0052】
図5に示すように、下支え構造10Dは、高さ調節部材2Aと、充填材M3と、を備えている。そして、ボックスカルバート1の下面とコンクリート床版2の上面とが離間している。高さ調節部材2Aは、ボックスカルバート1の下面とコンクリート床版2の上面との間の空間を規定し、コンクリート床版2の上面から立設し、ボックスカルバート1の下面を支えている。ボックスカルバート1の下面、下部遮断壁4E、およびコンクリート床版2の上面によって囲まれた空間は、ボックスカルバート1の位置調整を行うための高さ調節用の空間である。例えば、高さ調節部材2Aは、コンクリート床版2上の4方に配置され、ボックスカルバート1の高さ位置を調節し、水平方向の出来形を確保した後に、前記空間に、充填材M3が充填される。
【0053】
なお、ボックスカルバート1とコンクリート床版2との離間方法は、従来公知の任意の方法を採用することができる。例えば、ジャッキによりボックスカルバート1とコンクリート床版2とを離間してもよい。
【0054】
本実施形態に係る下支え構造10Dであっても、当該下支え構造10Dの荷重を低減させて、下支え構造10Dの真下の地盤Gを安定化することができる。よって、本実施形態によれば、橋梁B1を下支えする橋梁B1の下支え構造10Dにおいて、当該下支え構造10Dにより橋梁B1の真下の地盤に掛かる荷重を低減させて、将来的に橋梁B1の荷重が加わっても大きな変状なく将来的に耐え得る構造を実現できる。
【0055】
なお、
図5に示す構成では、橋梁B1の下面とボックスカルバート1の上面との間の空間には、充填材が設けられていない。しかし、本実施形態に係る下支え構造10Dは、
図5に示された構成に限定されず、橋梁B1の下面とボックスカルバート1の上面との間の空間に充填材が設けられた構成であってもよい。
【0056】
〔実施形態5〕
図6は、本実施形態に係る下支え構造10Eの概略構成を示す正面断面図および側断面図である。
図6に示すように、下支え構造10Eは、斜面上に構築された橋梁を下支えする構造である。
【0057】
図6に示すように、下支え構造10Eでは、橋梁B1とボックスカルバート1との間にのみ充填材M1が充填されている。充填材M1の充填空間を規定する上部遮断壁4Fは、ボックスカルバート1の上面から立設し、橋梁B1の下面に接している。下支え構造10Eでは、充填材M1は、ボックスカルバート1の上面全体に亘って充填されている。
【0058】
また、
図6に示すように、発泡樹脂材ブロック3は、地盤Gの傾斜面を掘削し、掘削部G3を形成した後に配置されている。
【0059】
壁面材5は、発泡樹脂材ブロック3の壁面側に固定される平板状の部材であり、下支え構造10Eの耐久性および耐候性を高める機能を有している。壁面材5は、H型鋼に押出成形セメント板を取り付ける構造や、発泡樹脂材ブロック3に繊維補強セメント板を装着する構造等、従来の発泡樹脂を活用した軽量盛土構造で実施される壁面構造を採用できる。
【0060】
本実施形態に係る下支え構造10Eでは、下支え構造10Eにより橋梁B1の真下の掘削部G3に掛かる荷重の低減効果がある。
【0061】
〔実施形態6〕
図7は、本実施形態に係る下支え構造10Fの概略構成を示す正面断面図および側断面図である。
図7に示すように、下支え構造10Fは、ボックスカルバート1の真上に発泡樹脂材ブロック3が配置されている点が、実施形態1に係る下支え構造10Aと異なる。
【0062】
図7に示すように、下支え構造10Fでは、ボックスカルバート1が地盤Gに埋設されている。そして、発泡樹脂材ブロック3は、ボックスカルバート1の上面から上に向かって複数積層されている。また、コンクリート床版2は、発泡樹脂材ブロック3の真上に設けられている。
【0063】
また、壁面材5は、地盤Gから上方に立設し、発泡樹脂材ブロック3の壁面側に固定されている。壁面材5は、橋梁B1の下面に接している。
【0064】
充填材M1は、橋梁B1の下面と、コンクリート床版2と、壁面材5とにより形成された空間内に充填される。
【0065】
本実施形態に係る下支え構造10Fであっても、当該下支え構造10Fの荷重を低減させて、下支え構造10Fの真下の地盤Gを安定化することができる。よって、本実施形態によれば、橋梁B1を下支えする橋梁B1の下支え構造10Fにおいて、当該下支え構造10Fにより橋梁B1の真下の地盤に掛かる荷重を低減させて、将来的に橋梁B1の荷重が加わっても大きな変状なく将来的に耐え得る構造を実現できる。
【0066】
また、実施形態1に係る製造方法では、配置工程にて、掘削工程にて形成された掘削部G1に発泡樹脂材ブロック3を積層配置していた。しかし、前記配置工程では、掘削部に発泡樹脂材およびボックスカルバートの何れか一方の第1部材を配置していればよく、特に本実施形態に係る製造方法では、前記第1の部材としてボックスカルバート1を配置する。すなわち、本実施形態に係る下支え構造10Fの製造方法は、橋梁B1の下方の掘削部にボックスカルバート1を配置する配置工程と、ボックスカルバート1の真上であり、かつ、橋梁B1の下方の橋脚B2間の空間に発泡樹脂材ブロック3を設置する設置工程と、を含む。
【0067】
なお、本実施形態に係る下支え構造10Fは、暗渠排水等のためにボックスカルバート1を使用する場合に好適に使用される。
【0068】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1 ボックスカルバート
2 コンクリート床版
3 発泡樹脂材ブロック(発泡樹脂材)
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F 下支え構造
B1 橋梁
B2 橋脚
G 地盤
G1 掘削部(地盤掘削部)
G3 掘削部(傾斜面の地盤掘削部)
M1、M2 充填材(第1充填材)
M3 充填材(第2充填材)