(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049849
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】設計支援装置
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20230403BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20230403BHJP
E04B 1/00 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/20
E04B1/00 ESW
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159839
(22)【出願日】2021-09-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年12月3日 2020年度GBRC構造技術セミナーにて公開 令和3年1月22日 JSCA関西 新年研究会にて公開 令和3年2月10日 JFEエンジニアリング株式会社 土木建築専門部会にて公開 令和3年3月12日 (一社)日本建築構造技術者協会関西出版「JSCA関西 4月号会誌」にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 元希
(72)【発明者】
【氏名】九嶋 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】川上 沢馬
(72)【発明者】
【氏名】石田 高義
(72)【発明者】
【氏名】前田 周作
(72)【発明者】
【氏名】陶山 春菜
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 琢也
(72)【発明者】
【氏名】木下 拓也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 嵩広
(72)【発明者】
【氏名】亀森 淳也
(72)【発明者】
【氏名】金子 侑樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】松岡 康友
(72)【発明者】
【氏名】平野 伯恭
(72)【発明者】
【氏名】松原 由典
(72)【発明者】
【氏名】池田 周英
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 孝
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146DC04
5B146DC05
5B146DJ02
5B146DJ14
(57)【要約】
【課題】複数の設計条件の各々に対し、適切なグループ数の構造部材を用いた建物の構造設計を比較する。
【解決手段】入力部10によって、設計対象の建物であって、複数の構造部材を含む建物をモデル化した建物モデル、及び前記設計対象の建物に関する複数の設計条件を受け付ける。グルーピング処理部28によって、前記複数の設計条件の各々に対し、前記設計条件に基づいて、前記建物の複数の構造部材の各々について、前記構造部材の断面構造を計算し、前記複数の構造部材を、同一の構造断面とすべき構造部材からなる複数のグループに分類するグルーピングを行う。そして、表示部30によって、前記複数の設計条件の各々についての前記グルーピングの結果を、比較可能に表示する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計対象の建物であって、複数の構造部材を含む建物をモデル化した建物モデル、及び前記設計対象の建物に関する複数の設計条件を受け付ける入力部と、
前記複数の設計条件の各々に対し、前記設計条件に基づいて、前記建物の複数の構造部材の各々について、前記構造部材の断面構造を計算し、前記複数の構造部材を、同一の構造断面とすべき構造部材からなる複数のグループに分類するグルーピングを行うグルーピング処理部と、
前記複数の設計条件の各々についての前記グルーピングの結果を、比較可能に表示する表示部と、
を含む設計支援装置。
【請求項2】
前記表示部は、前記複数の設計条件の各々についての前記グルーピングの結果として、歩掛り値、構造部材数、構造部材の種類数、又は前記建物モデルに対する応力解析の結果から得られる前記構造部材の特徴量を、比較可能に表示する請求項1記載の設計支援装置。
【請求項3】
前記グルーピング処理部は、
前記複数の設計条件の各々に対し、
前記設計条件に基づいて、前記建物の複数の構造部材の各々について、前記構造部材の断面構造を計算し、前記構造断面の計算結果を有する前記複数の構造部材を含む前記建物モデルに対する応力解析の結果から得られる、前記複数の構造部材の各々の特徴量に基づいて、前記グルーピングを行う請求項1又は2記載の設計支援装置。
【請求項4】
前記設計条件は、検定比の目標値、保有耐力余裕度の目標値、繰り返し計算回数、柱軸力比の目標値、各階の変形角の目標値、柱梁ブレースのランク指定、又は強度の指定を含む請求項1~請求項3の何れか1項記載の設計支援装置。
【請求項5】
前記グルーピング処理部は、前記設計条件に対して前記断面構造を計算する際に、
前記構造断面の計算結果を有する前記複数の構造部材を含む前記建物モデルに対する応力解析の結果に基づいて、前記複数の構造部材の各々の断面構造を変更することを、前記設計条件を満たすまで繰り返す請求項1~請求項4の何れか1項記載の設計支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、強度部材が配設されるべき座標上の基線を特定し、要素部材と基線との位置関係からグループ化する要素部材を識別可能にして、個々の有限要素データに特別な識別タグを付すような手間暇を必要とする入力作業を必要とせず、基線の特定だけでグルーピング作業をコンピュータに実行させる骨組構造最適化設計装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、特定された、強度部材が配設されるべき座標上の基線から、要素部材のグルーピング作業を行う。しかし、上記特許文献1には、入力された複数の設計条件の各々に対し、構造部材の断面構造を計算し、構造部材のグルーピングを行い、その結果を比較可能に表示することについては記載されていない。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して、複数の設計条件の各々に対し、適切なグループ数の構造部材を用いた建物の構造設計を比較することができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る設計支援装置は、設計対象の建物であって、複数の構造部材を含む建物をモデル化した建物モデル、及び前記設計対象の建物に関する複数の設計条件を受け付ける入力部と、前記複数の設計条件の各々に対し、前記設計条件に基づいて、前記建物の複数の構造部材の各々について、前記構造部材の断面構造を計算し、前記複数の構造部材を、同一の構造断面とすべき構造部材からなる複数のグループに分類するグルーピングを行うグルーピング処理部と、前記複数の設計条件の各々についての前記グルーピングの結果を、比較可能に表示する表示部と、を含んで構成されている。
【0007】
本発明に係る設計支援装置によれば、入力部によって、設計対象の建物であって、複数の構造部材を含む建物をモデル化した建物モデル、及び前記設計対象の建物に関する複数の設計条件を受け付ける。グルーピング処理部によって、前記複数の設計条件の各々に対し、前記設計条件に基づいて、前記建物の複数の構造部材の各々について、前記構造部材の断面構造を計算し、前記複数の構造部材を、同一の構造断面とすべき構造部材からなる複数のグループに分類するグルーピングを行う。そして、表示部によって、前記複数の設計条件の各々についての前記グルーピングの結果を、比較可能に表示する。
【0008】
このように、受け付けた複数の設計条件の各々に対し、前記建物の複数の構造部材の各々について、前記構造部材の断面構造を計算し、建物モデルに対する応力解析の結果から得られる、前記複数の構造部材の各々の特徴量に基づいて、前記複数の構造部材を分類するグルーピングを行い、グルーピングの結果を、比較可能に表示することにより、複数の設計条件の各々に対し、適切なグループ数の構造部材を用いた建物の構造設計を比較することができる。
【0009】
本発明に係る設計支援装置において、前記設計条件は、検定比の目標値、保有耐力余裕度の目標値、繰り返し計算回数、柱軸力比の目標値、各階の変形角の目標値、柱梁ブレースのランク指定、又は強度の指定を含むことができる。これにより、検定比の目標値、保有耐力余裕度の目標値、繰り返し計算回数、柱軸力比の目標値、各階の変形角の目標値、柱梁ブレースのランク指定、又は強度の指定を満たす、建物の構造設計を支援することができる。
【0010】
本発明に係る設計支援装置において、前記表示部は、前記複数の設計条件の各々についての前記グルーピングの結果として、歩掛り値、構造部材数、構造部材の種類数、又は前記建物モデルに対する応力解析の結果から得られる前記構造部材の特徴量を、比較可能に表示することができる。これにより、複数の設計条件の各々について、歩掛り値、構造部材数、構造部材の種類数、又は前記建物モデルに対する応力解析の結果から得られる前記構造部材の特徴量を、比較可能に表示することができる。
【0011】
本発明に係る設計支援装置において、前記グルーピング処理部は、前記複数の設計条件の各々に対し、前記設計条件に基づいて、前記建物の複数の構造部材の各々について、前記構造部材の断面構造を計算し、前記構造断面の計算結果を有する前記複数の構造部材を含む前記建物モデルに対する応力解析の結果から得られる、前記複数の構造部材の各々の特徴量に基づいて、前記グルーピングを行うことができる。
【0012】
本発明に係る設計支援装置において、前記設計条件は、検定比の目標値、保有耐力余裕度の目標値、繰り返し計算回数、柱軸力比の目標値、各階の変形角の目標値、柱梁ブレースのランク指定、又は強度の指定を含むことができる。
【0013】
本発明に係る設計支援装置において、前記グルーピング処理部は、前記設計条件に対して前記断面構造を計算する際に、前記構造断面の計算結果を有する前記複数の構造部材を含む前記建物モデルに対する応力解析の結果に基づいて、前記複数の構造部材の各々の断面構造を変更することを、前記設計条件を満たすまで繰り返すことができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の設計支援装置によれば、受け付けた複数の設計条件の各々に対し、前記建物の複数の構造部材の各々について、前記構造部材の断面構造を計算し、建物モデルに対する応力解析の結果から得られる、前記複数の構造部材の各々の特徴量に基づいて、前記複数の構造部材を分類するグルーピングを行い、グルーピングの結果を、比較可能に表示することにより、複数の設計条件の各々に対し、適切なグループ数の構造部材を用いた建物の構造設計を比較することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る学習装置及び設計支援装置を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る設計支援装置を示す機能ブロック図である。
【
図4】構造部材の部材情報を説明するための図である。
【
図5】断面構造計算用の学習済みモデルの例を示す図である。
【
図6】複数の設計条件に対するグルーピング結果を表示する画面の一例を示す図である。
【
図7】複数の設計条件に対するグルーピング結果に関する詳細情報を表示する画面の一例を示す図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態に係る学習装置を示す機能ブロック図である。
【
図9】本発明の第1の実施の形態に係る設計支援装置の設計支援処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の第1の実施の形態に係る設計支援装置における断面構造を変更する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】本発明の第1の実施の形態に係る設計支援装置におけるグルーピング処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】複数の建物モデルに対するグルーピング結果を表示する画面の一例を示す図である。
【
図14】複数の建物モデルに対するグルーピング結果に関する詳細情報を表示する画面の一例を示す図である。
【
図15A】グルーピング案に対するグルーピング結果の一例を示す図である。
【
図15B】グルーピング案に対するグルーピング結果の一例を示す図である。
【
図15C】グルーピング案に対するグルーピング結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
[第1の実施の形態]
<本発明の第1の実施の形態の設計支援装置の構成>
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る設計支援装置100は、CPU12、グラフィックカード13、GPU14、RAM16、HDD18、通信インタフェース21、及びこれらを相互に接続するためのバス23を備えている。
【0018】
CPU12、GPU14は、各種プログラムを実行する。RAM16は、CPU12による各種プログラムの実行時におけるワークエリア等として用いられる。記録媒体としてのHDD18には、後述する設計支援処理ルーチンを実行するためのプログラムを含む各種プログラムや各種データが記憶されている。
【0019】
本実施の形態における設計支援装置100を、設計支援処理ルーチンを実行するためのプログラムに沿って、機能ブロックで表すと、
図2に示すようになる。設計支援装置100は、入力部10、演算部20、及び出力部50を備えている。
【0020】
入力部10は、設計担当者の操作により、設計対象の建物であって、複数の構造部材(柱、梁、壁、ブレース等)を含む建物をモデル化した建物モデルの入力を受け付けるとともに、設計対象の建物に関する設計条件を複数受け付ける。
【0021】
例えば、設計担当者の操作により、建物モデルに対して、構造部材の種類(柱、梁、壁、ブレース等)毎に、複数の構造部材を配置させる。そして、設計担当者の操作により、
図3の入力画面により、複数の設計条件を受け付ける。
【0022】
例えば、設計条件は、検定比の目標値、保有耐力余裕度の目標値、繰り返し計算回数、柱軸力比の目標値、各階の変形角の目標値、柱梁ブレースのランク指定、又は強度の指定を含む。
【0023】
図3の入力画面では、検定比の目標値、保有耐力余裕度の目標値、偏心率の調整有無、柱梁耐力比の目標値、S柱のグルーピング層数、繰り返し計算回数、RC部材の検討実施の有無、耐力壁の検討実施の有無、一次設計時のτレベルの目標値、及び柱長期軸力比の目標値を受け付ける例を示している。また、この入力画面では、各階について、変形角の目標値、柱梁ブレースのランク指定、及び強度の指定を受け付ける例を示している。
【0024】
本実施の形態では、入力部10は、上記入力画面により、設計条件を繰り返し受け付けることにより、複数の設計条件を受け付ける。
【0025】
演算部20は、断面構造計算部22、グルーピング処理部28、及び表示部30を備えている。断面構造計算部22及びグルーピング処理部28は、グルーピング処理部の一例である。
【0026】
断面構造計算部22は、建物モデルの構造部材の各々について、構造部材の部材情報に基づいて、後述する学習装置200により予め学習した断面構造計算用の学習済みモデルを用いて、構造部材の断面構造を計算し、計算結果を表示する。例えば、計算結果として、計算された断面構造を反映した構造部材を、建物のボリュームに重畳させて視覚的に表示したり、計算された構造部材の断面構造を用いた、数量、重さ、コストの計算結果を表示したりする。
【0027】
断面構造計算用の学習済みモデルは、部材情報(
図4の長さL、角度θ、建物内の位置(高さ方向の位置、平面上の位置)、階高、部材密度(スパン)、負担面積、荷重条件、所属するフレームのせん断力負担率、等)を入力データとし、断面構造を表す断面情報(
図4の部材幅D、部材成B、部材厚t、材料強度、部材重量、部材性能、等)とを出力データとする(
図5参照)。例えば、
図5に示されるように、モデルの一例としてニューラルネットワークを用いることができ、学習アルゴリズムの一例としてディープラーニングを用いることができ、学習用データの部材情報を入力したときに、当該学習用データの断面情報が出力されるように、断面構造計算用の学習済みモデルが学習される。
【0028】
そして、断面構造計算部22は、受け付けた複数の設計条件の各々に対し、当該設計条件を満たすように、建物モデルの構造部材の各々の断面構造を変更する。
【0029】
具体的には、断面構造計算部22は、構造断面の計算結果を有する複数の構造部材を含む建物モデルに対して、応力解析を行い、応力解析の結果に基づいて、設計条件を満たすように、各構造部材の断面構造を変更する。これを、受け付けた複数の設計条件の各々に対し、当該設計条件を満たすまで繰り返す。
【0030】
グルーピング処理部28は、受け付けた複数の設計条件の各々に対し、構造断面の計算結果を有する複数の構造部材を含む建物モデルに対する応力解析の結果から得られる、複数の構造部材の各々の特徴量に基づいて、複数の構造部材を、同一の断面構造とすべき構造部材からなる複数のグループに分類するグルーピングを行う。
【0031】
具体的には、構造部材の種類毎に、グルーピングさせるべき構造部材群の特徴量の分布に基づいて、グルーピングを行う。このグルーピングが、受け付けた複数の設計条件の各々に対し、繰り返し行われ、複数の設計条件の各々に対してグルーピング結果が得られる。グルーピングのアルゴリズムの一例として、クラスタリング手法を用いることができる。
【0032】
例えば、構造断面の計算結果を有する複数の構造部材を含む建物モデルに対して、応力解析を行い、応力解析の結果に基づいて、構造部材群の特徴量を求め、構造部材の種類毎に、構造部材群の特徴量の分布に基づいて、構造部材群のクラスタリングを行い、同一クラスタの構造部材の断面構造を統一するように、断面構造を変更し、変更後の構造断面を有する複数の構造部材を含む建物モデルに対して、応力解析を行い、応力解析の結果を出力する。特徴量は、応力解析の結果として得られる、長期軸力、短期モーメント、短期軸力や、柱の長さ、柱の座標などを含む。
【0033】
表示部30は、複数の設計条件の各々についてのグルーピングの結果を、比較可能に表示する。
具体的には、表示部30は、
図6に示すように、複数の設計条件の各々についてのグルーピングの結果として、歩掛り値、構造部材数、構造部材の種類数、又は前記建物モデルに対する応力解析の結果から得られる前記構造部材の特徴量を、比較可能に表示する。
図6では、複数の設計条件の各々について、断面構造計算部22及びグルーピング処理部28の各処理の実行状態、歩掛り値、構造部材数、構造部材の種類数、及び建物モデルに対する応力解析の結果から得られる構造部材の特徴量(耐震要素水平力負担率平均値、検定比)を表示する例を示している。
【0034】
また、
図7に示すように、歩掛り値、構造部材数、構造部材の種類数、又は前記建物モデルに対する応力解析の結果から得られる前記構造部材の特徴量の関係をグラフにして表示してもよい。
図7左に、歩掛り値と構造部材の種類数の関係を表すグラフを表示する例を示している。このグラフは、設計条件の各々について得られた歩掛り値と構造部材の種類数の組み合わせをプロットしたものである。また、
図7右に、グラフ上で選択されたプロットに対応する設計条件についてのグルーピング結果の詳細情報(建物モデルの上面図、検定比分布など)を表示する例を示している。
【0035】
<本発明の第1の実施の形態の学習装置の構成>
上記
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る学習装置200は、設計支援装置100と同様に、CPU12、グラフィックカード13、GPU14、RAM16、HDD18、通信インタフェース21、及びこれらを相互に接続するためのバス23を備えている。
【0036】
CPU12、GPU14は、各種プログラムを実行する。RAM16は、CPU12による各種プログラムの実行時におけるワークエリア等として用いられる。記録媒体としてのHDD18には、学習処理を実行するためのプログラムを含む各種プログラムや各種データが記憶されている。
【0037】
本実施の形態における学習装置200を、学習処理を実行するためのプログラムに沿って、機能ブロックで表すと、
図8に示すようになる。学習装置200は、入力部110、演算部120、及び出力部150を備えている。
【0038】
入力部110は、建物の実績情報から構造部材(柱、梁、壁、ブレース等)の各々について得られる、構造部材の位置情報を含む部材情報と、構造部材の断面構造との組み合わせを含む学習用データを入力として受け付ける。
【0039】
演算部120は、学習部122を備えている。
【0040】
学習部122は、入力部10により受け付けた複数の学習用データに基づいて、構造部材の種類毎に、断面構造計算用の学習済みモデルを得る。
【0041】
本実施の形態では、構造部材の種類(柱、梁、壁、ブレース等)毎に、断面構造計算用の学習済みモデルを生成し、設計支援装置100に対して、出力部150により出力する。
【0042】
<学習装置の動作>
次に、本発明の第1の実施の形態に係る学習装置200の動作について説明する。
【0043】
入力部110によって、建物の実績情報から構造部材(柱、梁、壁、ブレース等)の各々について得られる、構造部材の位置情報を含む部材情報と、構造部材の断面構造との組み合わせを含む学習用データを入力として受け付ける。そして、学習部122は、入力部110により受け付けた複数の学習用データに基づいて、断面構造計算用の学習済みモデルを得る。
【0044】
<設計支援装置の動作>
次に、本発明の第1の実施の形態に係る設計支援装置100の動作について説明する。
【0045】
入力部10によって、設計担当者の操作により、設計対象の建物であって、複数の構造部材(柱、梁、壁、ブレース等)を含む建物をモデル化した建物モデルの入力を受け付けるとともに、設計対象の建物に関する複数の設計条件を受け付けると、設計支援装置100によって、
図9に示す設計支援処理ルーチンが実行される。
【0046】
まず、ステップS100において、断面構造計算部22は、入力された複数の構造部材を含む建物モデルを取得する。
【0047】
ステップS102では、断面構造計算部22は、建物モデルの構造部材の各々について、構造部材の部材情報に基づいて、断面構造計算用の学習済みモデルを用いて、構造部材の断面構造を計算し、計算結果を表示する。
【0048】
そして、ステップS104~S106が、複数の設計条件の各々を対象として繰り返される。
ステップS104では、断面構造計算部22は、対象の設計条件を満たすように、上記ステップS102で計算された建物モデルの構造部材の各々の断面構造を変更する。
【0049】
ステップS106では、グルーピング処理部28は、構造断面の計算結果を有する複数の構造部材を含む建物モデルに対する応力解析の結果から得られる、複数の構造部材の各々の特徴量に基づいて、複数の構造部材を、同一の断面構造とすべき構造部材からなる複数のグループに分類するグルーピングを行う。
【0050】
ステップS108では、受け付けた全ての設計条件について、上記ステップS102~S106を実行したか否かを判定する。上記ステップS102~S106を実行していない設計条件が存在する場合には、当該設計条件を対象として上記ステップS102へ戻る。一方、受け付けた全ての設計条件について、上記ステップS102~S106を実行した場合には、ステップS109へ進む。
【0051】
ステップS109では、表示部30は、複数の設計条件の各々についてのグルーピングの結果を、比較可能に表示し、設計支援処理ルーチンを終了する。
【0052】
上記ステップS104は、
図10に示す処理ルーチンによって実現される。
【0053】
ステップS110では、断面構造計算部22は、各構造部材の断面構造を変更する。
【0054】
ステップS112では、断面構造計算部22は、構造断面の計算結果又は変更結果を有する複数の構造部材を含む建物モデルに対して、応力解析を行う。
【0055】
ステップS114では、断面構造計算部22は、応力解析の結果に基づいて、対象の設計条件を満たすか否かを判定する。対象の設計条件を満たさない場合には、上記ステップS110へ戻る。一方、対象の設計条件を満たす場合には、対象の設計条件を満たす各構造部材の断面構造が得られたと判断し、当該処理ルーチンを終了する。
【0056】
上記ステップS106は、
図11に示す処理ルーチンによって実現される。
【0057】
ステップS120では、グルーピング処理部28は、構造断面の計算結果を有する複数の構造部材を含む建物モデルに対して、応力解析を行う。
【0058】
ステップS122では、グルーピング処理部28は、応力解析の結果に基づいて、構造部材群の特徴量を取得する。
【0059】
ステップS124では、グルーピング処理部28は、構造部材の種類毎に、構造部材群の特徴量の分布に基づいて、構造部材群のクラスタリングを行う。
【0060】
ステップS126では、グルーピング処理部28は、同一クラスタの構造部材の断面構造を統一するように、各構造部材の断面構造を変更する。
【0061】
ステップS128では、グルーピング処理部28は、変更後の構造断面を有する複数の構造部材を含む建物モデルに対して、応力解析を行い、応力解析の結果を出力し、当該処理ルーチンを終了する。
【0062】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係る設計支援装置によれば、受け付けた複数の設計条件の各々に対し、建物の複数の構造部材の各々について、構造部材の断面構造を計算し、建物モデルに対する応力解析の結果から得られる、複数の構造部材の各々の特徴量に基づいて、複数の構造部材を分類するグルーピングを行い、グルーピングの結果を、比較可能に表示することにより、複数の設計条件の各々に対し、適切なグループ数の構造部材を用いた建物の構造設計を比較することができる。
【0063】
また、受け付けた設計条件に基づいて、建物の複数の構造部材の各々について、構造部材の断面構造を計算し、建物モデルに対する応力解析の結果から得られる、複数の構造部材の各々の特徴量に基づいて、複数の構造部材を分類するグルーピングを行うことにより、設計条件の入力だけで、適切なグループ数の構造部材を用いた建物の構造設計を支援することができる。
【0064】
[第2の実施の形態]
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態の設計支援装置及び学習装置の構成は、第1の実施の形態と同様の構成となるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0065】
第2の実施の形態では、教師あり学習を用いてグルーピングを行う点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0066】
<本発明の第2の実施の形態の学習装置の構成>
本発明の第2の実施の形態に係る学習装置200の入力部110は、上記第1の実施の形態と同様に、断面構造計算用の学習用データを入力として受け付ける。また、入力部110は、建物の実績情報から構造部材について得られる、すべての構造部材のうちの2つの構造部材からなる構造部材ペアの各々についての、2つの構造部材の各々の構造部材情報に基づいてグルーピングされているか否かを判断した判断結果と、2つの構造部材の各々の構造部材情報と、を含む学習用データを入力として受け付ける。
【0067】
具体的には、建物の実績情報から、すべての構造部材のうちの2つの構造部材からなる構造部材ペアについて、2つの構造部材の部材情報(上記
図4の長さL、角度θ、建物内の位置(高さ方向の位置、平面上の位置)、階高、部材密度(スパン)、負担面積、その他部材を特徴付ける情報(上記
図4の部材幅D、部材成B、部材厚tなど))と、2つの構造部材の各々の構造部材情報に基づいてグルーピングされているか否かを判断した判断結果とを含む学習用データを作成しておく。そして、構造部材ペア毎に、2つの構造部材の部材情報とグルーピングされているか否かの判断結果との組み合わせを含む学習用データを受け付ける。
【0068】
本実施の形態では、この学習用データを、構造部材の種類(柱、梁、壁、ブレース等)毎に受け付ける。
【0069】
学習部122は、上記第1の実施の形態と同様に、断面構造計算用の学習済みモデルを得る。
【0070】
また、学習部122は、学習用データに基づいて、グルーピング用の学習済みモデルを得る。
【0071】
具体的には、
図12に示すように、グルーピング用の学習済みモデルは、2つの構造部材の特徴量を入力データとし、当該2つの構造部材をグルーピングすべき度合いを出力データとする。例えば、モデルの一例としてニューラルネットワークを用いることができ、学習アルゴリズムの一例としてディープラーニングを用いることができる。構造部材の種類(柱、梁、壁、ブレース等)毎に、グルーピング用の学習済みモデルを生成する。
【0072】
<本発明の第2の実施の形態の設計支援装置の構成>
第2の実施の形態の設計支援装置100のグルーピング処理部28は、構造部材の種類(柱、梁、壁、ブレース等)毎に、生成したすべての構造部材のうちの2つの構造部材からなる構造部材ペアの各々について、2つの構造部材の各々の特徴量とグルーピング用の学習済みモデルとに基づいて、グルーピングすべき度合いを計算し、指定されたグループ数になるように、グルーピングすべき度合いの降順に、構造部材ペアをグルーピングする。
【0073】
具体的には、グルーピング処理部28は、構造部材の種類(柱、梁、壁、ブレース等)毎に、すべての構造部材のうちの2つの構造部材からなる構造部材ペアの各々について、2つの構造部材の各々の構造部材情報と当該構造部材の種類のグルーピング用の学習済みモデルとに基づいて、グルーピングすべき度合いを計算する。
【0074】
例えば、構造部材ペア毎に、2つの構造部材の部材情報(長さ、角度、建物内の位置(高さ方向の位置、平面上の位置)、階高、部材密度(スパン)、負担面積、その他部材を特徴付ける情報)をグルーピング用の学習済みモデルに入力して、グルーピングすべき度合いを求める。
【0075】
そして、グルーピング処理部28は、構造部材の種類(柱、梁、壁、ブレース等)毎に、指定されたグループ数になるように、グルーピングすべき度合いの降順に、構造部材ペアの2つの構造部材を同一グループとすることを繰り返す。これにより、指定されたグループ数のグルーピング結果が得られる。また、グルーピングの数の指定を順に変更して、同様に、構造部材ペアをグルーピングする。これにより、複数のグルーピング案に対するグルーピング結果が得られる。
【0076】
第2の実施の形態の設計支援装置100及び学習装置200の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0077】
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態に係る設計支援装置によれば、受け付けた設計条件に基づいて、建物の複数の構造部材の各々について、構造部材の断面構造を計算し、建物モデルに対する応力解析の結果から得られる、複数の構造部材の各々の特徴量に基づいて、グルーピングすべき度合いを計算し、複数の構造部材を分類するグルーピングを行うことにより、設計条件の入力だけで、適切なグループ数の構造部材を用いた建物の構造設計を支援することができる。
【0078】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0079】
例えば、上述した実施形態では、一つの建物モデルに対して、受け付けた設計条件の各々について、構造部材の断面構造の計算、及びグルーピングを行う場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。複数の建物モデルに対して、受け付けた少なくとも1つの設計条件の各々について、構造部材の断面構造の計算、及びグルーピングを行うことを繰り返し、建物モデル間においてもグルーピングの結果を比較可能に表示してもよい(
図13、
図14)。
【0080】
図13では、モデルA、B、C、Dの各々に対して、受け付けた少なくとも1つの設計条件を各々表示する例を示している。また、
図14では、複数の建物モデルに対するグルーピングの結果として、歩掛り値、構造部材数、構造部材の種類数、又は前記建物モデルに対する応力解析の結果から得られる前記構造部材の特徴量の関係をグラフにして表示する例を示している。
図14左に、複数の建物モデルに対するグルーピングの結果として、歩掛り値と構造部材の種類数の関係を表すグラフを表示する例を示している。このグラフは、設計条件の各々について得られた歩掛り値と構造部材の種類数の組み合わせをプロットしたものである。また、
図14右に、グラフ上で選択されたプロットに対応する設計条件についてのグルーピング結果の詳細情報(建物モデルの上面図、検定比分布など)を表示する例を示している。
【0081】
また、グルーピングに関するパラメータからなる複数のパラメータセットが予め定めておき、複数のパラメータセットの各々に対し、当該パラメータセットを用いたグルーピングを行うことにより、グルーピング結果を複数求めるようにしてもよい(
図15)。
【0082】
パラメータセットは、例えば、クラスタリングに関するKの値や、各特徴量に対する重みからなる重みベクトルを含む。
【0083】
図15A~
図15Cでは、3つのパラメータセットに対する3つのグルーピング結果を表示する例を示している。
図15A~
図15Cの下側には、上側のグルーピング結果のうちの破線で示す矩形の枠部分を拡大したものが示されている。
【0084】
また、上述した実施形態では、学習装置と設計支援装置とが別々の装置として構成されている場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、学習装置と設計支援装置とを一つの装置として構成してもよい。
【0085】
また、本発明のプログラムは、記憶媒体に格納して提供するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10、110 入力部
12 CPU
20、120 演算部
22 断面構造計算部
28 グルーピング処理部
30 表示部
100 設計支援装置
122 学習部
200 学習装置