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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049866
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】インクジェットヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230403BHJP
【FI】
B41J2/01 205
B41J2/01 207
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159867
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 昭裕
(72)【発明者】
【氏名】川西 努
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA08
2C056EA21
2C056EB08
2C056EB39
2C056EB40
2C056EB58
2C056EC08
2C056EC79
2C056FA04
(57)【要約】
【課題】信頼性の高いインクジェットヘッドを提供する。
【解決手段】インクジェットヘッド400は、複数のノズル100のうちの吐出不良ノズルの位置情報が記憶される記憶部420と、記憶部420に記憶された吐出不良ノズルの位置情報に基づいて、印刷データ202の吐出不良ノズルの位置をマスクするマスク処理部430と、マスク処理部430でマスク処理された印刷データに基づいて、複数のノズル100のうちの駆動対象のノズルに電圧を印加する電圧印加制御部440とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された印刷データに基づいて複数のノズルからインクを吐出して印刷を行うインクジェットヘッドであって、
前記複数のノズルのうちの吐出不良ノズルの位置情報が記憶される記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記吐出不良ノズルの位置情報に基づいて、前記印刷データの前記吐出不良ノズルの位置をマスクするマスク処理部と、
前記マスク処理部でマスク処理された印刷データに基づいて、前記複数のノズルのうちの駆動対象のノズルに電圧を印加する電圧印加制御部とを備える、インクジェットヘッド。
【請求項2】
前記吐出不良ノズルの位置情報は、前記ノズルのインピーダンス値に基づいて特定された位置情報である、請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記吐出不良ノズルの位置情報は、前記ノズルの静電容量特性に基づいて特定された位置情報である、請求項2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記記憶部は、不揮発性メモリである、請求項1~3のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルからインクを吐出して印刷を行うインクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドは、ノズルからインクを吐出することで、対象物にインクを塗布する。従来より、インクジェットヘッドにおいて、不吐出または吐出が安定しないノズル(以下、「吐出不良ノズル」という)が発生する問題が知られている。
【0003】
特許文献1には、ノズルへのゴミの混入等に起因する吐出不良ノズルを検出するための所定のテストパターンを印刷し、その印刷結果をスキャンして吐出不良ノズルを特定し、ノズル補完等の補正処理を行うインクジェット印刷装置技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-155267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ノズルの吐出不良には、上記のゴミの混入に起因するものの他に、圧電素子と圧電部材との短絡のように駆動電圧を印加することにより破壊等を生じる恐れのある吐出不良が含まれる。
【0006】
特許文献1に開示される技術は、吐出不良ノズルを特定する場合に、いったん全ノズルで吐出を行う必要がある。そのため、上記の駆動電圧印加を禁止すべき吐出不良ノズルまで駆動してしまうという問題がある。
【0007】
一般的に、ノズルへのゴミの混入等は、定期的に確認されるので、駆動電圧印加を禁止すべきノズルの駆動が何度も行われることになり、信頼性がさらに低下する原因となる。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、駆動電圧を印加することにより破壊等を生じる恐れのある吐出不良ノズルの駆動を禁止して利用できる信頼性の高いインクジェットヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様では、入力された印刷データに基づいて複数のノズルからインクを吐出して印刷を行うインクジェットヘッドにおいて、前記複数のノズルのうちの吐出不良ノズルの位置情報が記憶される記憶部と、前記記憶部に記憶された前記吐出不良ノズルの位置情報に基づいて、前記印刷データの前記吐出不良ノズルの位置をマスクするマスク処理部と、前記マスク処理部でマスク処理された印刷データに基づいて、前記複数のノズルのうちの駆動対象のノズルに電圧を印加する電圧印加制御部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明のインクジェットヘッドによれば、吐出不良ノズルへの駆動電圧印加がされないように構成したので、信頼性の高いインクジェットヘッドを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】インクジェットヘッドの構成例を示したブロック図
図2】吐出部の構成を示す断面模式図
図3】マスク処理部の構成例を示したブロック図
図4A】インクジェットヘッドの等価回路図
図4B】インクジェットヘッドの等価回路図
図5】吐出不良ノズルの特定手順について示すフローチャート
図6図5のおけるインクジェットヘッドの制御について示すタイミングチャート
図7】記憶部に格納されたメモリマップの一例を示す図
図8】マスク処理の動作を説明するためのタイミングチャート
図9】マルチポートレジスタの構成例を示す図
図10】マスク処理部の動作を説明するためのタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0013】
<インクジェットヘッド>
図1は、実施形態におけるインクジェットヘッドの構成例を示したブロック図である。
【0014】
インクジェットヘッド400は、吐出部410と、記憶部420と、マスク処理部430と、電圧印加制御部440とを備える。インクジェットヘッド400は、例えば有機EL(Electro Luminescence)パネルの発光層の塗布工程などに用いられるインクジェット装置に搭載される。
【0015】
-吐出部-
図2に示すように、吐出部410は、複数のノズル100と、それぞれのノズル100に連通する圧力室110と、隔壁111と、ダイアフラム112と、圧電素子130と、圧電部材140と、共通電極160(図2では図示せず)とを備える。また、図示しないが、吐出部410は、液体の導入口を有する。
【0016】
ノズル100は、直径が10μm~50μmであり、100μm~500μmの間隔で100穴~300穴が並んで配置されている。
【0017】
隔壁111は、互いに隣接する圧力室110の間を仕切っており、圧電部材140により支えられている。
【0018】
圧電素子130は、共通電極160に印加された電圧を受けて、圧力室110の一部をなすダイアフラム112を振動させる。圧電素子130と圧電部材140とは、一つの圧電部材からダイシングによって分離されている。圧電素子130の静電容量は、数100pF程度である。
【0019】
次に、吐出部410の動作について説明する。
【0020】
まず、圧電素子130の裏側の共通電極160と圧電素子130との間に電圧が印加されると、圧電素子130が図2(a)の状態から図2(b)の状態に変形する。図2(b)では、図面内の一番左側の圧電素子130が変形した例を示す。
【0021】
図2(b)に示すように、圧電素子130の下部が変形すると、圧力室110の容積が小さくなり、圧力室110内の液体(例えば、インク)に圧力を加えることができる。その圧力で、圧力室110の中に存在するインクが液滴150として外部へ吐出される。
【0022】
-記憶部-
図1に戻り、記憶部420には、複数のノズル100のうちの吐出不良ノズルとして特定されたノズルの位置情報が記憶される。なお、本開示では、吐出不良ノズルとして、圧電素子130と圧電部材140の短絡等で吐出不良を生じているノズルのように駆動電圧の印加を禁止するのが望ましいノズルを対象としている。
【0023】
記憶部420は、不揮発性メモリ421で構成するのが好ましい。記憶部420に不揮発性メモリ421を用いることにより、吐出不良ノズルの特定回数を最小限にすることができる。不揮発性メモリ421は、インクジェットヘッド400の電源投入毎に読み出されてマスク処理が実施される。したがって、この不揮発性メモリ421に不吐出ノズルの位置情報を書き込んでおくことで、不吐出ノズルへの駆動電圧印加を常に禁止することができる。吐出不良ノズルの位置の特定方法については、後ほど説明する。
【0024】
-マスク処理部-
マスク処理部430は、記憶部420に記憶された吐出不良ノズルの位置情報に基づいて、印刷データ202の吐出不良ノズルの位置をマスクして無効化する処理を実行する。
【0025】
図3には、マスク処理部430の構成例及び記憶部420との情報のやり取りについて例示している。この例では、記憶部420は、不揮発性メモリ421で構成されている。
【0026】
図3に示すように、マスク処理部430は、DMAC(ダイレクトメモリアクセスコントローラ)431と、マルチポートレジスタ432と、シフトレジスタ433と、論理積ゲート434とを備える。
【0027】
DMAC431は、データバス438を介して不揮発性メモリ421及びマルチポートレジスタ432に接続されている。DMAC431は、不揮発性メモリ421に記憶された吐出不良ノズルの位置情報を読み出して、マルチポートレジスタ432に書き込む。ここでは、DMAC431からマルチポートレジスタ432への書き込み完了後のデータを「出力データ435」という。
【0028】
シフトレジスタ433には、データクロック信号203とデータロード信号204とが入力される。シフトレジスタ433は、データロード信号204の指令に基づいて、出力データ435をロードする。その後、シフトレジスタ433は、データクロック信号203に同期して、出力データ435を所定のノズル対応順にしたがって論理積ゲート434にシフト出力する。ここでは、シフトレジスタ433から論理積ゲート434に出力されるシリアルデータを「出力データ436」という。
【0029】
論理積ゲート434では、出力データ436と印刷データ202との論理積演算が行われる。このとき、出力データ436のノズル対応順と、印刷データ202のノズル対応順とが一致するようにタイミングの調整が行われる。これにより、印刷データ202のうち、記憶部420に記憶されていた吐出不良ノズルのデータ部分がマスク処理されて出力される。ここでは、マスク処理されて論理積ゲート434から出力される補正後の印刷データ202を「補正印刷データ437」という。
【0030】
補正印刷データ437は、ノズル100の数に対応したビット数の時系列シリアル形式のデータであり、データクロック信号203に同期した信号である。
【0031】
-電圧印加制御部-
電圧印加制御部440は、マスク処理部430から出力された補正印刷データ437に基づいて、吐出部410の各ノズル100に駆動電圧信号201を選択的に印加する。図1及び図4Aを参照しつつ、具体的に説明する。
【0032】
図4Aは、インクジェットヘッドの等価回路図の一例を示す。図4Aにおいて、圧電素子130、圧電部材140及び共通電極160(図2では図示せず)は、前述の図2及びその説明と同一の構成要素であり、電気的な等価回路で示している。また、図4Aでは、ノズルが100穴の例を示す。
【0033】
図1及び図4Aに示すように、電圧印加制御部440には、論理積ゲート434から出力された補正印刷データ437が入力される。さらに、電圧印加制御部440には、入力信号として、駆動電圧信号201、データクロック信号203及びデータロード信号204が入力される。
【0034】
図4Aに示すように、電圧印加制御部440は、100ビットのシフトレジスタ441と、100ビットのフリップフロップ442と、100個の制御スイッチ443とを備える。制御スイッチ443には、例えば、最大電流定格20mAのものを用いる。
【0035】
シフトレジスタ441は、データクロック信号203に同期して補正印刷データ437を取り込み、出力先を順次シフトさせてパラレルデータに変換する。図4Aの例では、補正印刷データ437を100ビットのパラレルデータQA0~QA99に変換し、フリップフロップ442に出力する。
【0036】
フリップフロップ442は、データロード信号204の指令に基づいて、シフトレジスタ441から出力されたパラレルデータQA0~QA99を一括してラッチし、パラレル変換データQB0~QB99として出力する。データロード信号204は、フリップフロップ442のラッチ指令信号である。
【0037】
制御スイッチ443は、駆動電圧信号201を選択的に各圧電素子130に印加するスイッチ素子である。制御スイッチ443として、例えば、アナログスイッチ素子が好適に用いられる。例えば、ノズルが100穴の場合、それぞれのノズル100に対応して圧電素子130が設けられる。そして、それぞれの圧電素子130に対応して、制御スイッチ443が設けられ、個別にオンオフされる。
【0038】
例えば、図4Aの例では、圧電素子130及び圧電部材140として、パラレル変換データQB0で駆動される圧電素子131と、パラレル変換データQB1で駆動される相互間が短絡された圧電素子132とを含む。そして、圧電素子131には、制御スイッチ443として、パラレル変換データQB0でオンオフ制御される制御スイッチ444が接続され、圧電素子132には、制御スイッチ443として、パラレル変換データQB1でオンオフ制御される制御スイッチ445が接続されている。この場合、パラレル変換データQB0により制御スイッチ444がオン制御されると、圧電素子131が対応するノズル100(例えば、1番目のノズル100)から液滴を吐出させる。同様に、パラレル変換データQB1により制御スイッチ445がオン制御されると、圧電素子132が対応するノズル100(例えば、2番目のノズル100)から液滴を吐出させる。
【0039】
<不吐出ノズルの特定方法>
次に、複数のノズル100の中から不吐出ノズルを特定する方法について説明する。
【0040】
図4Aに示すように、不吐出ノズルの特定は、LCRメータ500及び制御部510をインクジェットヘッド400に接続して実行する。LCRメータ500には、エヌエフ回路設計ブロック社製ZM2371等を用いることができる。
【0041】
LCRメータ500は、交流信号源501と電流計502とを備える。交流信号源501の出力は、インクジェットヘッド400の駆動電圧信号201に接続される。電流計502の入力は共通電極160に接続される。
【0042】
制御部510は、静電容量測定の制御及び測定結果から吐出不良ノズルの特定を行い、特定した吐出不良ノズルの情報を記憶部420に記録する。制御部510は、例えば、パーソナルコンピュータと専用ソフトウェアで構成される。
【0043】
交流信号源501は、出力として周波数10KHz程度、実効値2.5V程度に設定される。前述のとおり、圧電素子130の静電容量は、数100pF程度である。したがって、圧電素子130と圧電部材140とが短絡した場合において、静電容量が2倍に増大すると、制御スイッチ444等が駆動する負荷のインピーダンスZは、以下の値となる。
【0044】
Z=1/(10KHz×2×π×数100pF×2)≒80kΩ
このときの測定による負荷電流は約30μA程度となる。これは、前述の制御スイッチ443の最大電流定格20mAに対して十分小さい。
【0045】
このように、インクジェットヘッド400に過大な負荷をかけない測定条件で不吐出ノズルの特定ができるので、吐出不良ノズル特定時のインクジェットヘッド破壊等を防止することができる。なお、吐出不良ノズルの特定に用いる特性値は静電容量に限定されるものでない。例えば、抵抗値やインピーダンスの絶対値成分等の複数の特性値を単独または組み合わせて吐出不良ノズルの特定精度を向上させることができる。
【0046】
次に、吐出不良ノズルの特定方法の具体的な処理手順について図5のフローチャートを用いて説明する。ここでは、動作説明のために、圧電素子131及び圧電部材141は正常に動作し、圧電素子132と圧電部材142とが短絡されているとする(図4B参照)。
【0047】
ステップS11では、図6(a)に示すように印刷データ202、データクロック信号203及びデータロード信号204の制御を実行し、すべての制御スイッチ443がオフ状態となる。その後、LCRメータ500を用いて静電容量Coffを測定する。ここで測定される静電容量Coffは、回路の浮遊容量成分に相当する。
【0048】
ステップS12では、図6(b)に示す制御を実行することで、制御スイッチ444がオン状態となる(図4B参照)。さらに、測定対象ノズルを表すための指標値Nを1に初期化する。指標値Nは、N=1のとき測定対象が1番目のノズル100であることを表す。
【0049】
ステップS13では、静電容量CNを測定する。ここでは、ステップS12で制御スイッチ444のみがオン状態となっているので、静電容量CNは圧電素子131の静電容量と、先に測定した静電容量Coffとの合算値となる。
【0050】
ステップS14では、静電容量CNの値から静電容量Coffの値を減算して制御スイッチ444のみの静電容量が算出され、基準値Crefとの比較が行われる。基準値Crefは、正常な圧電素子130の静電容量仕様から決定される値であり、インクジェットヘッドによって異なる。この例では、以下の基準値Crefを用いる。
【0051】
Cref=1.5×(圧電素子130の静電容量平均値)
この例では、圧電素子131と圧電部材141は正常に分離されているため、測定値CNは上記の「圧電素子130の静電容量平均値」にほぼ等しくなる。したがって、測定値CNが基準値Cref以下となり、1番目のノズル100は、正常吐出ノズルとして判定される。
【0052】
ステップS15では、最終測定回を検出するために現在の指標値Nの値と全ノズル数(ここでは、100)とが比較される。この時点ではN=1なので、フローはステップS16に進む。
【0053】
ステップS16では、図6(c)の制御を実行して、シフトレジスタ441の出力を1ビットシフトさせ、制御スイッチ444をオフに制御し、制御スイッチ445をオンに制御する。また、指標値Nを1つ増加させる。
【0054】
次のステップS13(2回目)では、1回目の動作と同様に静電容量CNを測定する。このとき制御スイッチ445がオン状態なので、静電容量CNは、圧電素子132と不正規の圧電素子(圧電部材142)の並列静電容量と、静電容量Coffとの合算値となる。
【0055】
ステップS14(2回目)では、静電容量CNから静電容量Coffを減算した値が上記の「圧電素子130の静電容量平均値」の約2倍となり、基準値Crefより大きくなるため、フローはステップS17に進む。
【0056】
ステップS17では、そのときの指標値N(ここではN=2)の値を付吐出ノズル番号として記憶する。
【0057】
以上のようにして、指標値Nがノズル数である100に達するまで同様の処理を繰り返し実施する。これにより、静電容量CNが基準値Crefを超過したすべての指標値Nが吐出不良ノズルの位置を示す吐出不良番号として記憶される。
【0058】
指標値Nが100に到達すると、ループ処理を抜ける。そして、次のステップS18では、検出されたすべての吐出不良ノズルの指標番号を、図7に示すようなビットマップ情報に変換し、記憶部420に書き込んで吐出不良ノズル検出処理を終了する。
【0059】
図7(a)は、記憶部420に記録される吐出不良ノズルの配置を示すメモリマップの一例である。図7(a)では、各ノズルが1ビットで表現され、正常吐出を「1」、吐出不良を「0」として100ノズルのデータが配置されている。例えば、前述の指標値N=1の場合の検出結果は、アドレスAのD0ビット(「ノズル1」と表記された位置)に記録される。例えば、指標N=2の場合にのみ吐出不良となるヘッドの場合、図7(b)に示すようにアドレスAのD1ビットのみが「0」として記録される。
【0060】
<不吐出ノズルのマスク処理方法>
次に、印刷データ202に対して吐出不良ノズルのマスク処理を行う動作について図8図10を参照しつつ説明する。なお、説明を容易にするために、全ノズル100から液滴が吐出される全ノズル吐出時の動作を例にとって説明する。また、不揮発性メモリ421に記憶されている吐出不良ノズルの位置情報は、前述の図7(b)に示したメモリマップであるとする。
【0061】
図8に示すように、インクジェットヘッド400の電源が投入されると、DMAC431はRDをアサートして、Rアドレスに「A」、Wアドレスに「0」を出力する。これにより、不揮発性メモリ421に記憶された図7(b)のメモリマップから、アドレスAのデータ「FD(16進数)」が読み出される。
【0062】
次に、DMAC431は、WRをアサートして、読みだしたデータをマルチポートレジスタ432に書き込む。図9には、マルチポートレジスタ432の構成例を示す。マルチポートレジスタ432は、デコーダ910と複数のレジスタ920とを備える。
【0063】
例えば、Wアドレスが「0」の場合、レジスタ920の中の「レジスタ0」が選択され、デコーダ910により、その「レジスタ0」にデータ「FD」が書き込まれる。
【0064】
図9に示すように、マルチポートレジスタ432の「レジスタ0」のD[7:0]は出力データ435の最下位バイトに配置されている。したがって、出力データ435として、「x_xxxx_xxxx_xxxx_xxxx_xxxx_xxFD」(16進数標記,xは不定)が出力される。
【0065】
DMAC431は、同様にして、RアドレスとWアドレスがそれぞれ「A+12」と「12」に達するまで、データの読み出しと書き込みを繰り返し実施する。これにより、DMAC431による処理完了時の出力データ435として、「F_FFFF_FFFF_FFFF_FFFF_FFFF_FFFD」が出力される。
【0066】
次に、印刷データ202のマスク処理時におけるシフトレジスタ433及び論理積ゲート434の動作について説明する。印刷データ202は、吐出対象ノズルをデータ「1」、非吐出ノズルはデータ「0」で表す1ビットシリアルデータである。印刷データ202は、データクロック信号203に同期して、1番目のノズル100に対応するデータを起点としてノズル100の番号順に順次入力される。なお、前述のとおり、この例では、全ノズル吐出時を例にとって説明するので、印刷データ202はすべての立ち上がりエッジで「1」である。
【0067】
シフトレジスタ433は、データロード信号204の指令に基づいて、前述の出力データ435である「F_FFFF_FFFF_FFFF_FFFF_FFFF_FFFD」をロードする。そして、データクロック信号203の立ち下がりエッジに同期して順次下位ビットより出力データ436としてシフト出力する。
【0068】
図10に示すように、出力データ436のノズル対応順と印刷データ202のノズル対応順は一致している。したがって、論理積ゲート434により、出力データ436と印刷データ202との論理積演算を行うことにより、印刷データ202のうちの吐出不良ノズル2に該当する部分が「0」にマスク処理された補正印刷データ437を得ることができる。
【0069】
図4Aに示すように、補正印刷データ437は、電圧印加制御部440を介して吐出部410での液滴の吐出動作に反映される。これにより、印刷データ202の値によらずに、吐出不良ノズルに対応する制御スイッチ443(この例では、制御スイッチ445)は常にオフになる。すなわち、吐出不良ノズルに対する駆動電圧の印加を禁止することができる。
【0070】
以上のように、本実施形態のインクジェットヘッド400では、複数のノズル100のうちの不吐出ノズルの位置情報を、従来の印刷によるノズル駆動に比較して十分に低い電力で実行が可能な静電容量測定値を用いて特定している。これにより、インクジェットヘッド400の破壊等を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上説明したように、本開示のインクジェットヘッドは、高精細な画素を有する有機ELディスプレイパネルの製造へ用いることができる。つまり、有機ELディスプレイパネルの発光層の塗布や、UV硬化性インクなどを用いる加飾インクや樹脂封止インクの塗布、導電性インクの塗布、化粧用途の水性インクの塗布などに用いることができる。
【符号の説明】
【0072】
100 ノズル
202 印刷データ
400 インクジェットヘッド
420 記憶部
421 不揮発性メモリ
430 マスク処理部
440 電圧印加制御部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10