(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004988
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】タッチ入力装置、振動調整方法、及び振動調整装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20230110BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
G06F3/041 480
G06F3/01 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102953
(22)【出願日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2021105718
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津山 靖智
(72)【発明者】
【氏名】原 晃
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA79
5E555BA04
5E555BB04
5E555CA11
5E555CB12
5E555DA24
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】ユーザにタッチ操作が受け付けられたことを狙いの触感で感受させることができる。
【解決手段】タッチ入力装置は、振動対象物と、前記振動対象物を振動させるためのボイスコイルアクチュエータと、任意の触感を得るための振動特徴データに基づいて生成された、狙いの触感を得るための振動データを取得し、前記ボイスコイルアクチュエータを制御する制御部と、を備え、前記任意の触感は、各種触感要素で表され、前記振動特徴データは、既存の評価対象物の前記触感要素と、前記評価対象物の挙動の特徴量とに基づいて、前記特徴量の重みが分析されたデータであり、前記制御部は、前記狙いの触感を表す各種触感要素と、前記振動特徴データとに基づいて生成された、所望な振動データを取得し、前記ボイスコイルアクチュエータを制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動対象物と、
前記振動対象物を振動させるためのボイスコイルアクチュエータと、
任意の触感を得るための振動特徴データに基づいて生成された、狙いの触感を得るための振動データを取得し、前記ボイスコイルアクチュエータを制御する制御部と、
を備え、
前記任意の触感は、各種触感要素で表され、
前記振動特徴データは、既存の評価対象物の前記触感要素と、前記評価対象物の挙動の特徴量とに基づいて、前記特徴量の重みが分析されたデータであり、
前記制御部は、前記狙いの触感を表す各種触感要素と、前記振動特徴データとに基づいて生成された、所望な振動データを取得し、前記ボイスコイルアクチュエータを制御する
タッチ入力装置。
【請求項2】
前記振動特徴データは、既存の評価対象物の前記触感要素の評価を目的変数とし、前記評価対象物の挙動の特徴量を説明変数とした重回帰分析により取得された、触感要素別の各特徴量の偏回帰係数である
請求項1に記載のタッチ入力装置。
【請求項3】
前記特徴量は、時間領域に関する特徴量、及び周波数領域に関する特徴量の少なくとも一方を含み、
前記制御部は、前記狙いの触感を表す各種触感要素と、前記振動特徴データとに基づいて、予め用意された基礎振動データの、時間領域に関する特徴量、及び周波数領域に関する特徴量の少なくとも一方を調整することにより、前記所望な振動データを生成する請求項1に記載のタッチ入力装置。
【請求項4】
前記触感要素は、クリック感、ストローク感、確実感、弾力感、スムーズ感及び好感の少なくとも1つであること、
を特徴とする請求項1に記載のタッチ入力装置。
【請求項5】
前記特徴量は、ピーク荷重、ボトム荷重、前記ピーク荷重と前記ボトム荷重の差、クリック率、ピーク変位、ボトム変位、前記ピーク変位と前記ボトム変位の差、ピーク加速度、ボトム加速度、前記ピーク加速度と前記ボトム加速度の差、前記ピーク加速度の立ち上がり時間、波形継続時間、波形面積、及び周波数ごとの振幅の少なくとも1つであること、
を特徴とする請求項1に記載のタッチ入力装置。
【請求項6】
前記制御部は、更に、予め計測された前記振動対象物の振動の伝達特性に基づいて生成された逆伝達特性を用いて、前記所望な振動データを補正すること、
を特徴とする請求項1に記載のタッチ入力装置。
【請求項7】
前記逆伝達特性は、タッチ位置に応じて生成された複数の前記逆伝達特性であり、
前記制御部は、タッチ位置に応じた前記逆伝達特性を用いて、前記所望な振動データを補正すること、
を特徴とする請求項6記載のタッチ入力装置。
【請求項8】
既存の評価対象物の挙動を測定する測定ステップと、
前記測定ステップの測定結果から前記評価対象物の挙動の特徴量を抽出する抽出ステップと、
前記評価対象物の触感を各種触感要素に分解して評価する触感要素評価ステップと、
前記評価対象物の前記触感要素と、前記評価対象物の挙動の特徴量とに基づいて、前記特徴量の重みを分析する分析ステップと、
を含む振動調整方法。
【請求項9】
分析した前記特徴量の重みに基づいて、任意の触感を得るための振動データを生成する生成ステップ
を更に含む請求項8記載の振動調整方法。
【請求項10】
振動対象物のエリア毎に、インパルス応答を測定し、前記エリアの振動の伝達特性を計算する伝達特性計算ステップと、
前記振動対象物のエリア毎に、前記エリアの振動の伝達特性の逆伝達特性を計算する逆伝達特性計算ステップと、
を更に含む請求項8又は請求項9記載の振動調整方法。
【請求項11】
既存の評価対象物の挙動を測定する測定部と、
前記測定部の測定結果から前記評価対象物の挙動の特徴量を抽出する抽出部と、
前記評価対象物の触感を各種触感要素に分解して評価する触感要素評価部と、
前記評価対象物の前記触感要素と、前記評価対象物の挙動の特徴量とに基づいて、前記特徴量の重みを分析する分析部と、
を含む振動調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、タッチ入力装置、振動調整方法、及び振動調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザインターフェースとして、タッチ入力装置がある。タッチ入力装置は、タッチ操作を受け付けるポインティングデバイスである。タッチ入力装置は、静電容量方式、抵抗膜方式、赤外線走査方式、超音波方式、又はそれらを複数組み合わせて、タッチパネル上のユーザの指が触れたタッチ位置を検出する。このタッチ入力装置は、液晶や有機EL等のディスプレイと重ね合わせられ、タッチパネルディスプレイの一構成要素として各種機器に備えられる。機器側では、タッチ位置がアイコン表示箇所であると判断されると、アイコンのタッチイベントに応じた処理が実行される。
【0003】
タッチ入力装置を用いたスイッチの設計は、所望画像及び大きさのアイコンをディスプレイ上の所望位置に表示させるソフトウェア上の設計で済む。そのため、タッチ入力装置を用いると、機械式プッシュスイッチと比べて設計が簡便になる。また、タッチ入力装置は、アイコンの位置、形状及び大きさ等の変更に柔軟に対応できる。このようなメリットから、近年では、機械式プッシュスイッチからタッチ入力装置に置き換わるケースが多くなってきている。
【0004】
但し、タッチ入力装置をタッチしたときに物理的に動く箇所はない。そのため、タッチ入力装置は、機械式プッシュスイッチのような作動感をユーザに与えることができない。そこで、タッチ入力装置は、バイブレータを備え、タッチが検出されると振動でユーザに応答する。しかし、タッチ入力装置において振動パターンが単一であると、タッチ入力装置がタッチを検出したことはわかるが、アイコンをタッチできたのか、アイコン以外のイベントと何ら関連づけられていない箇所をタッチしたのか認識できない。
【0005】
そこで、タッチ入力装置において、振動波形、振動振幅及び振動周波数を適宜に組み合わせた複数の振動パターンが用意される例がある(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1の例では、ユーザが触っている位置とホームポジションとのズレに応じた振動パターンでバイブレータを振動させる。ユーザは振動の違いでホームポジションに触れたか否かを判断できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、これまでの振動パターンは、アイコンをタッチしたユーザに直感的な作動感を与えてはいない。ユーザは、アイコンをタッチした場合と、それ以外とで生じる振動パターンの違いから、アイコンをタッチしたときの振動パターンを学習しているだけで、振動パターンが生じさせる触感からアイコンをタッチしたことを直感的に感受しているわけではない。そのため、ユーザがタッチ入力装置に慣れるまでは、振動パターンの変化は、ユーザに戸惑いすら与える。
【0008】
タッチ入力装置が作動感を与えることができない代わりに、ディスプレイを注視できる場合には、アイコンを点滅させたり、アイコンが押下されたアニメーションを表示させたりする等、画面変化の情報を追加することで、ユーザに直感的にアイコンのタッチを理解させている。しかし、ユーザがディスプレイを注視し難い場合もあるし、ユーザの指が邪魔になってしまう場合もある。
【0009】
このように、タッチ入力装置には、アイコンをタッチできた場合などにおいて、ユーザがタッチされたことを直感的に感受させる方法が確立されていない。本発明は、以上のような問題を解決するために提案されたものであり、その目的は、ユーザにタッチ操作が受け付けられたことを狙いの触感で感受させることができるタッチ入力装置、振動調整方法、及び振動調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決すべく、本発明のタッチ入力装置は、振動対象物と、前記振動対象物を振動させるためのボイスコイルアクチュエータと、任意の触感を得るための振動特徴データに基づいて生成された、狙いの触感を得るための振動データを取得し、前記ボイスコイルアクチュエータを制御する制御部と、を備え、前記任意の触感は、各種触感要素で表され、前記振動特徴データは、既存の評価対象物の前記触感要素と、前記評価対象物の挙動の特徴量とに基づいて、前記特徴量の重みが分析されたデータであり、前記制御部は、前記狙いの触感を表す各種触感要素と、前記振動特徴データとに基づいて生成された、所望な振動データを取得し、前記ボイスコイルアクチュエータを制御する。
【0011】
触感要素とは、不特定多数の人が共有できる触感をいう。また、この触感を言語化、数値化、共通認識できればより良い。
【0012】
前記振動特徴データは、既存の評価対象物の前記触感要素の評価を目的変数とし、前記評価対象物の挙動の特徴量を説明変数とした重回帰分析により取得された、触感要素別の各特徴量の偏回帰係数であってもよい。
【0013】
前記特徴量は、時間領域に関する特徴量、及び周波数領域に関する特徴量の少なくとも一方を含み、前記制御部は、前記狙いの触感を表す各種触感要素と、前記振動特徴データとに基づいて、予め用意された基礎振動データの、時間領域に関する特徴量、及び周波数領域に関する特徴量の少なくとも一方を調整することにより、前記所望な振動データを生成するようにしてもよい。
【0014】
前記触感要素は、クリック感、ストローク感、確実感、弾力感、スムーズ感及び好感の少なくとも1つであってもよい。
【0015】
前記特徴量は、ピーク荷重、ボトム荷重、前記ピーク荷重と前記ボトム荷重の差、クリック率、ピーク変位、ボトム変位、前記ピーク変位と前記ボトム変位の差、ピーク加速度、ボトム加速度、前記ピーク加速度と前記ボトム加速度の差、前記ピーク加速度の立ち上がり時間、波形継続時間、波形面積、及び周波数ごとの振幅の少なくとも1つであってもよい。
【0016】
前記制御部は、更に、予め計測された前記振動対象物の振動の伝達特性に基づいて生成された逆伝達特性を用いて、前記所望な振動データを補正するようにしてもよい。
【0017】
前記逆伝達特性は、タッチ位置に応じて生成された複数の前記逆伝達特性であり、
前記制御部は、タッチ位置に応じた前記逆伝達特性を用いて、前記所望な振動データを補正してもよい。
【0018】
本発明の振動調整方法は、既存の評価対象物の挙動を測定する測定ステップと、前記測定ステップの測定結果から前記評価対象物の挙動の特徴量を抽出する抽出ステップと、前記評価対象物の触感を各種触感要素に分解して評価する触感要素評価ステップと、前記評価対象物の前記触感要素と、前記評価対象物の挙動の特徴量とに基づいて、前記特徴量の重みを分析する分析ステップと、を含む。
【0019】
上記振動調整方法は、分析した前記特徴量の重みに基づいて、任意の触感を得るための振動データを生成する生成ステップを更に含むようにしてもよい。
【0020】
上記振動調整方法は、振動対象物のエリア毎に、インパルス応答を測定し、前記エリアの振動の伝達特性を計算する伝達特性計算ステップと、前記振動対象物のエリア毎に、前記エリアの振動の伝達特性の逆伝達特性を計算する逆伝達特性計算ステップと、を更に含むようにしてもよい。
【0021】
本発明の振動調整装置は、既存の評価対象物の挙動を測定する測定部と、前記測定部の測定結果から前記評価対象物の挙動の特徴量を抽出する抽出部と、前記評価対象物の触感を各種触感要素に分解して評価する触感要素評価部と、前記評価対象物の前記触感要素と、前記評価対象物の挙動の特徴量とに基づいて、前記特徴量の重みを分析する分析部と、を含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ユーザにタッチ操作が受け付けられたことを狙いの触感で感受させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】タッチ入力装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】振動データの作成方法を示すフローチャートである。
【
図3】機械式プッシュスイッチのFS特性(Force-Stroke特性)を示すグラフ模式図である。
【
図4】機械式プッシュスイッチのAT特性(Acceleration-Time 特性)を示すグラフ模式図である。
【
図5】機械式プッシュスイッチのAT特性(Acceleration-Time特性)を周波数領域に変換したときのグラフ模式図である。
【
図6】振動調整装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図7】振動調整装置の詳細構成を示すブロック図である。
【
図8】時間領域調整部によるGUI画面を示す模式図である。
【
図9】時間領域調整データの内容を示す模式図である。
【
図10】周波数領域調整部によるGUI画面を示す模式図である。
【
図11】周波数領域調整データの内容を示す模式図である。
【
図12】振動データの詳細な生成動作を示すフローチャートである。
【
図13】時間領域調整部による他のGUI画面を示す模式図である。
【
図14】時間領域調整部による他のGUI画面を示す模式図である。
【
図15】時間領域調整部による他のGUI画面を示す模式図である。
【
図16】タッチ入力装置の動作を示すフローチャートである。
【
図17】振動調整装置の詳細構成を示すブロック図である。
【
図18】タッチ入力装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
(タッチ入力装置)
図1は、タッチ入力装置の構成を示すブロック図である。タッチ入力装置1は、ユーザのタッチ操作を受け付けるポインティングデバイスである。タッチ入力装置1は、マンマシンインターフェースとして各種機器に備えられている。例えば、タッチ入力装置1は、液晶や有機EL等のディスプレイと重ね合わせられ、タッチパネルディスプレイの一構成要素として各種機器に備えられている。
【0025】
このタッチ入力装置1は、タッチパネル11、制御部12、バイブレータ13及び記憶部14を備えている。そして、このタッチ入力装置1は、ユーザの指を用いたタッチ操作を受け付けると、振動によってタッチ操作に反応する。タッチパネル11は、静電容量方式、抵抗膜方式、赤外線走査方式、超音波方式、又はそれらを複数組み合わせて、ユーザの指が触れたタッチ位置を検出し、タッチ位置の座標を示すタッチ位置情報を制御部12に入力する。
【0026】
制御部12は、CPUやMPUとも呼ばれるプロセッサ、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はマイコンを含み構成されている。また、制御部12は、バイブレータ13を制御するサーボドライバ及びサーボアンプも含み構成されている。この制御部12は、タッチ入力装置1が搭載される各種機器側の構成要素を兼ねて備えられていてもよい。各種機器側の要素としての制御部12は、タッチパネル11を用いた入力イベントに対して、タッチ位置情報に応じた処理を実行する。
【0027】
タッチ入力装置1側の要素としての制御部12は、タッチ位置情報に応じてバイブレータ13を振動させる。バイブレータ13は、振動対象物としてタッチパネル11を振動させるために稼働し、バイブレータ13の振動がタッチパネル11に伝わる。記憶部14には、後述する分析装置4によって取得された振動特徴データに基づいて、後述する振動調整装置2が生成した振動データVdが記憶されている。記憶部14は、ハードディスクやSSD等の不揮発性のストレージである。振動データVdは、例えばWAVデータ等の振動波形のデータであり、非圧縮の状態で時系列順に振動強度が並ぶ。制御部12は、バイブレータ13を振動させるために、記憶部14から振動データVdを読み出し、振動データVdを電流又は電圧等の電気信号に変換して、バイブレータ13に入力する。バイブレータ13は電気信号によって振動駆動する。
【0028】
タッチ位置情報がアイコンのタッチを示している場合、制御部12は、機械式プッシュスイッチを押下した触感である狙いの触感を与えるための振動データVdを読み出して、この振動データVdに従ってバイブレータ13を振動させる。以下、例えば機械式プッシュスイッチを押下した触感である狙いの触感を与えるための振動データVdを、単に振動データVdという。
【0029】
この振動データVdは、機械式プッシュスイッチを押下したときの、機械式プッシュスイッチの挙動に近似した振動変化を内容として含む。例えば、振動データVdは、機械式プッシュスイッチにかかる荷重の時間変化の波形に近似したもの、及び、機械式プッシュスイッチにかかる振幅の時間変化の波形に近似したものの少なくとも一方を含む。または、振動データVdは、機械式プッシュスイッチの加速度の時間変化の波形に近似したもの、及び、機械式プッシュスイッチの振幅の時間変化の波形に近似したものの少なくとも一方を含む。
【0030】
即ち、振動データVdを、横軸を時間及び縦軸を振幅とした波形で示したとき、その波形は、例えば、機械式プッシュスイッチの挙動を、横軸を時間及び縦軸を荷重とした波形で表したとき、又は横軸を時間及び縦軸を加速度とした波形で表したときを基準にしている。
【0031】
機械式プッシュスイッチの概略挙動は、横軸を時間及び縦軸を荷重としたとき、ピーク荷重fpに向けて増加した後、ボトム荷重fbに向けて減少する。また、機械式プッシュスイッチの概略挙動は、横軸を時間及び縦軸を加速度としたとき、ピーク加速度Apに向けて増加した後、ボトム加速度Abに向けて減少する。振動データVdによる振動を、横軸を時間及び縦軸を振幅とした波形で示したとき、その波形の概略は、ピークに向けて増加した後、ボトムに向けて減少する。
【0032】
振動データVdによる振動を、横軸を時間及び縦軸を振幅とした波形で示したとき、その波形は、ピーク位置、ピーク位置の高さ、ボトム位置、ボトム位置の低さ、ピーク位置へ向けた傾き、ピーク位置を過ぎた後の傾き、ボトム位置へ向けた傾きの一部又は全部が、触感要素に与える加速度および周波数等の特徴量を含んでいる。つまり触感の特徴の強調又は減衰がされた信号になっていることが好ましい。触感要素は例えば、機械式プッシュスイッチを押下した触感から測定した、クリック感、ストローク感、確実感、弾力感、スムーズ感及び好感等を含む。
【0033】
基礎振動データBdに、触感要素に与える周波数等の特徴量を強調又は減衰することで、所望な振動データを生成する。基礎振動データに特に限定はなく、ゲーム機に使用される振動データ、触感技術に使用される振動データ、あるいは機械式プッシュスイッチの挙動と一致又は近似する振動の振動データでもよい。また、基礎振動データは無振動の振動データでもよい。また、基礎振動データは、パルス波やサイン波であってもよい。
【0034】
このような振動データVdに従うバイブレータ13は、機械式プッシュスイッチを押下した触感である狙いの触感を与える振動態様を良好に再現する必要がある。そのため、バイブレータ13としては、電気信号に対する応答性及び位置精度が幅広い周波数帯域に亘って良好なボイスコイルアクチュエータが好ましい。ボイスコイルアクチュエータとしては、ムービングコイル方式やムービングマグネット方式が挙げられ、例えば、ムービングコイル方式として、ボイスコイルアクチュエータは、固定された磁性体と、当該磁性体が発生させる磁場内に配置され、コイルが巻回されたボビンから成る可動子とを備えており、コイルに流れた電気信号に応じたローレンツ力によりボビンを軸方向に直進運動させる。
【0035】
また、振動データVdは、製品やブランドのイメージにマッチした触感デザインに近づけるため、6つの触感要素に所望の強弱が付くように、既存の評価対象物としての機械式プッシュスイッチの挙動を基準に調整されている。6つの触感要素は、機械式プッシュスイッチを押下した触感である狙いの触感を構成する構成成分であり、クリック感、ストローク感、確実感、弾力感、スムーズ感及び好感から成る。
【0036】
クリック感は、押下したときの感覚の鋭さが大きいほど高くなる。ストローク感は、押下が深いほど高くなる。確実感は、スイッチオンになったことが分かり易いほど高くなる。弾力感は、押下したときの抗力が大きいほど高くなる。スムーズ感は、スムーズに押下できるほど高くなる。好感は、感触が好ましいほど高くなる。
【0037】
更に、機械式プッシュスイッチを押下した触感をタッチ位置で高品質で与えられるように、振動データVdには、バイブレータ13からタッチ位置までの振動の逆伝達特性が反映されたほうが好ましい。この逆伝達特性は、バイブレータ13からタッチ位置まで振動が伝達している間に、振動に反映されてしまう伝達特性を相殺する。
【0038】
(振動調整方法)
図2は、振動データVdの作成方法を示すフローチャートである。
図2に示すように、振動データVdの作成方法は、分析装置4による、各機械式プッシュスイッチの分析工程(ステップS01~ステップS06A及びS06B)と、振動調整装置2により分析結果に基づいて振動データVdを生成する生成工程(ステップS07~ステップS09)とに大別される。
【0039】
<分析装置による分析工程>
分析工程では、各種の機械式プッシュスイッチの挙動を測定する(ステップS01)。測定する挙動としては、例えば、FS特性(Force-Stroke特性)、FT特性(Force-Time特性)、ST特性(Stroke-Time特性)、AT特性(Acceleration-Time特性)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。なお、この機械式プッシュスイッチの挙動を測定するステップを「測定ステップ」という。
【0040】
FS特性は、機械式プッシュスイッチにかける荷重と変位との関係を示す。FT特性は、機械式プッシュスイッチにかける荷重と押下時間との関係を示す。ST特性は、機械式プッシュスイッチの変位量と押下時間との関係を示す。AT特性は、機械式プッシュスイッチの加速度と押下時間との関係を示す。FS特性の測定では、ロードセルを用いて微小速度で機械式プッシュスイッチを押し込んだ際の荷重と変位を測定すればよい。FT特性、ST特性及びAT特性は、フォースゲージ、レーザ変位計及び加速度センサを用いて測定すればよい。
【0041】
尚、既存の評価対象物としての測定対象は機械式プッシュスイッチに限られない。例えば、樹脂や布等の素材を測定対象にし、これら素材を押したときの好感等の測定を行ってもよい。
【0042】
次に、測定した挙動を解析し、各種の機械式プッシュスイッチの各種挙動の特徴量(以下、単に特徴量という。)を抽出する(ステップS02)。特徴量としては、ピーク荷重fp、ボトム荷重fb、荷重差分fd、クリック率Rc、ピーク変位Sp、ボトム変位Sb、変位差Sd、ピーク加速度Ap、ボトム加速度Ab、加速度差分Ad、立ち上がり時間Tr、波形継続時間Tl、波形面積S、周波数毎の振幅Wa、又はこれらの組み合わせが挙げられる。尚、特徴量としては、機械式プッシュスイッチの挙動を特徴付けるポイントであれば、これらに限られない。なお、測定ステップの測定結果から前記機械式プッシュスイッチの挙動の特徴量を抽出するステップのことを「抽出ステップ」という。
【0043】
図3に示すように、ピーク荷重fpは、機械式プッシュスイッチを変位させるのに必要な最大荷重である。ボトム荷重fbは、機械式プッシュスイッチを変位させるのに必要な最小荷重である。機械式プッシュスイッチでは、電極のバネが反転し接点がオンになる箇所で、ピーク荷重fpからボトム荷重fbへの遷移が発生する。荷重差分fdは、ピーク荷重fpとボトム荷重fbの差(fp-fb)である。クリック率Rcは、荷重差分fdをピーク荷重fpで除した値(fd/fp)である。ピーク変位Spは、ピーク荷重fpが生じるまでの機械式プッシュスイッチの変位である。ボトム変位Sbは、ボトム荷重fbが生じるまでの機械式プッシュスイッチの変位である。変位差Sdは、ピーク変位Spとボトム変位Sbの差(Sb-Sp)である。
【0044】
図4に示すように、ピーク加速度Apは、機械式プッシュスイッチが変位しているときの最大加速度である。ボトム加速度Abは機械式プッシュスイッチが変位しているときの最小加速度である。加速度差分Adは、ピーク加速度Apとボトム加速度Abとの差(Ap-Ab)である。立ち上がり時間Trは、機械式プッシュスイッチのピーク加速度Apに向けた変位開始からピーク加速度Apに達するまでの経過時間である。継続時間Tlは、機械式プッシュスイッチが変位している時間である。波形面積Sは、機械式プッシュスイッチの変位を横軸が時間で縦軸が加速度の関係で示したときの波形で囲まれた面積である。
【0045】
ピーク荷重fp、ボトム荷重fb、荷重差分fd、クリック率Rc、ピーク変位Sp、ボトム変位Sb及び変位差Sdといった特徴量は、FS特性から収集できる。ピーク加速度Ap、ボトム加速度Ab、加速度差分Ad、立ち上がり時間Tr、波形継続時間Tl及び波形面積Sといった特徴量は、AT特性から抽出できる。
【0046】
図5に示すように、周波数毎の振幅Waは、機械式プッシュスイッチの変位を横軸が時間で縦軸が加速度の関係を周波数領域に変換したときの各周波数の振幅である。周波数毎の振幅Waは、時間領域で表される挙動をフーリエ変換して周波数領域に変換し、周波数帯内の各振幅を平均することで得られる。各周波数帯の代表値は周波数帯内の中央値にすればよい。例えば、50Hzから150Hzの周波数帯内の各振幅値を平均し、この周波数帯の中央値である100Hzと振幅の平均値とを対応付ければよい。
【0047】
また、分析工程では、挙動測定による特徴量の抽出の他、各種の機械式プッシュスイッチの各触感要素を評価する(ステップS03)。この評価では、挙動の特徴量を測定した機械式プッシュスイッチと同じスイッチを複数の被験者に押下してもらう。そして、各機械式プッシュスイッチの触感を、クリック感、ストローク感、確実感、弾力感、スムーズ感及び好感の6つの触感要素に分解し、例えばセマンティック・ディファレンシャル法に従って、被験者に各触感要素を5段階評価させる。なお、機械式プッシュスイッチの触感を各種触感要素に分解して評価するステップのことを「触感要素評価ステップ」という。
【0048】
各種の機械式プッシュスイッチの挙動の各種特徴量と各種触感要素の評価が揃うと、触感要素を目的変数とし、各種特徴量を説明変数とし、重回帰分析によって触感要素と各種特徴量を線形結合で近似する(ステップS04A及びステップS04B)。なお、触感要素の評価を目的変数とし、前記特徴量を説明変数とした重回帰分析により、触感要素別に各特徴量の偏回帰係数を取得するステップのことを「分析ステップ」という。
【0049】
重回帰分析に際し、特徴量は、第1特徴量グループと第2特徴量グループに分ける。第1特徴量グループには、ピーク荷重fp、ボトム荷重fb、荷重差分fd、クリック率Rc、ピーク変位Sp、ボトム変位Sb、変位差Sd、ピーク加速度Ap、ボトム加速度Ab、加速度差分Ad、立ち上がり時間Tr、波形継続時間Tl及び波形面積Sが属する。第2特徴量グループには、周波数毎の振幅Waが属する。
【0050】
ステップS04A及びステップS04B以降は、第1特徴量グループの特徴量から選んだ説明変数を用いた重回帰分析と、第2特徴量グループの特徴量から選んだ説明変数を用いた重回帰分析とを別々に行う。
【0051】
ステップS04A及びステップS04Bにおいて、各機械式プッシュスイッチの目的変数の値は、全被験者が同じ触感要素に対して行った評価の平均値を用いる。平均値の算出に際し、外れ値は予め取り除いておく。説明変数は、平均0及び分散1に標準化して単位の違いによる影響を無くしておく。重回帰分析における説明変数は3つとし、3種類の特徴量の組み合わせごとに重回帰分析を行う。但し、説明変数を選択する上で、VIF値(Variance Inflation Factor値)が4以上となる説明変数の組み合わせは除外し、多重共線性を解消しておく。
【0052】
各説明変数の組み合わせで重回帰分析を行うと、精度が高い重回帰分析の結果を選抜する(ステップS05A及びステップS05B)。選抜方法としては、例えば、自由度調整済決定係数Adj.R2を用いればよい。各重回帰分析の結果のうち、自由度調整済決定係数の最大値を検索し、この最大値との差が例えば0.2以内等の所定値以内の自由度調整済決定係数を持つ重回帰分析の結果を選抜する。なお、各重回帰分析の結果のうち、所定範囲内の自由度調整済決定係数Adj.R2を持つ重回帰分析の結果を選抜するステップのことを「回帰式選抜ステップ」という。また、回帰式選抜ステップは省略することもできる。
【0053】
更に、選抜された重回帰分析の結果から有意確率(すなわち、p値)が低い説明変数とその偏回帰係数を抽出する(ステップS06A及びステップS06B)。偏回帰係数の抽出のために、各回帰式のp値を算出する。そして、p値が例えば0.05未満等の所定値未満の説明変数に対する偏回帰係数を抽出する。同じ説明変数の偏回帰係数が複数ある場合は、平均値を用いる。なお、選抜ステップで選抜された重回帰分析の結果から、p値が所定値未満の説明変数を選抜するステップのことを「変数選抜ステップ」という。また、変数選抜ステップは省略することもできる。
【0054】
以上の分析工程により、第1特徴量グループから、触感要素別に説明変数の種類が1又は複数個選抜され、それら説明変数の偏回帰係数が得られる。また、第2特徴量グループから、触感要素別に説明変数の種類が1又は複数個選抜され、それら説明変数の偏回帰係数が得られる。選抜された説明変数の種類は、触感要素に大きな影響を与える特徴量の種類を示す。得られた偏回帰係数は、選抜された種類の特徴量が触感要素に与える相対的な影響度合いを示す。すなわち、分析工程によって、任意の触感を得るための振動特徴データとしての説明変数の種類とその偏回帰係数が得られる。分析工程によって得られた説明変数の種類とその偏回帰係数は、既存の機械式プッシュスイッチの挙動の特徴量の重みと触感要素の強弱との関係が分析されたデータである。
【0055】
<振動調整装置による生成工程>
分析工程の後の生成工程(ステップS07~ステップS09)では、
図6に示す振動調整装置2が用いられる。振動調整装置2には、分析工程において得られた説明変数の種類と偏回帰係数とを示す情報が触感要素別に入力される(ステップS07)。この振動調整装置2を用いて振動データVdを生成し(ステップS08)、生成した振動データVdをタッチ入力装置1の記憶部14に記憶させる(ステップS09)。
【0056】
なお、特徴量の種類を示す変更ポイント情報と前記偏回帰係数に基づく触感要素に対する影響度を対にして、当該の対を1又は複数組含む調整データを触感要素別に生成するステップを「調整データ生成ステップ」という(S07)。また、前記調整データに基づいて前記触感要素に強弱を付けた振動データを生成するステップを「調整データ生成ステップ」という(S08)。
【0057】
(振動調整装置)
図6は、振動調整装置2のハードウェア構成を示すブロック図である。この振動調整装置2は、所謂コンピュータであり、CPU又はMPU等のようにプログラムに従って処理を実行するプロセッサ2a、RAMとも呼ばれ、プロセッサが処理するプログラムやデータが展開される揮発性のメモリ2b、ハードディスクやSSD等のプログラムやデータを記憶する不揮発性のストレージ2cを備えている。
【0058】
また、振動調整装置2は、有機ELディスプレイや液晶ディスプレイ等のオペレータに対して視覚を通じて状況を伝達するモニタ2d、キーボードやマウス等のオペレータの操作を受け付ける操作部2e、タッチ入力装置1を接続するインターフェース2g、振動波形計測装置3を接続するインターフェース2fを備えている。
【0059】
<生成部>
そして、
図7に示すように、この振動調整装置2は、ストレージ2cに記憶されたプログラムを処理することにより、プロセッサ2aを含み構成される生成部20及び機器制御部21を備える。生成部20は、変換部22、基礎振動データ選択部23、触感調整部24及び補正部25を備え、振動データVdを生成する。触感調整部24は、時間領域調整部26及び周波数領域調整部27を備え、狙いの触感をオペレータ所望の態様に調整する。一方、ストレージ2cの記憶領域は、基礎振動データ記憶部28、調整データ記憶部29を備えている。
【0060】
変換部22は、機械式プッシュスイッチの挙動を振動変化で近似できるように振動データFtd又はFfdから振動データVcdを生成する。機械式プッシュスイッチの挙動は、分析工程(ステップS01~ステップS06A及びS06B)で得たFS特性、FT特性、ST特性、AT特性、又はこれらの組み合わせを用いてもよい。挙動データMdは、例えば、機械式プッシュスイッチの加速度の時間変化を示すAT特性データである。
【0061】
これに限られないが、加速度と振動の変換方法の一例を示すと、例えば変換部22は、加速度に対して、振動周波数、波形の振幅、又はこれら両方を反比例させる。機械式プッシュスイッチの加速度が小さい時間帯では、ユーザはスイッチが重く感じ、加速度が大きい時間帯では、ユーザはスイッチが軽く感じる。一方、振動周波数が大きいと、ユーザに与える衝撃は大きくなり、ユーザは衝撃を重さとして感知する。また、振動振幅が大きいほど、ユーザに与える衝撃は大きくなり、ユーザは衝撃を重さとして感知する。
【0062】
そこで、変換部22は、スイッチの加速度が小さい時間帯に対して、高周波、振幅大又はこれらの両方を有する振動波形を当てはめ、スイッチの加速度が大きい時間帯に対して、低周波、振幅小又はこれらの両方を有する振動波形を当てはめているものである。即ち、振動データVdは、スイッチの加速度が小さい時間帯に対して、高周波、振幅大又はこれらの両方を有する振動波形を有し、スイッチの加速度が大きい時間帯に対して、低周波、振幅小又はこれらの両方を有する振動波形を有することになる。
【0063】
振動データVdの変換元となる基礎振動データBdは、基礎振動データ記憶部28が記憶している。この基礎振動データBdは、前記挙動データそのものでもよいし、挙動データを元に加工して作成されたデータでもよいし、挙動データとは無関係にまったくの任意に作成された波形でもよい。基礎振動データBdは、基礎振動データ選択部23が生成してモニタ2dに表示させる選択GUI画面にリスト表示される。オペレータが操作部2eと選択GUI画面を用いて基礎振動データBdを選択すると、基礎振動データ選択部23は、選択された基礎振動データBdを基礎振動データ記憶部28から読み出す。また、基礎振動データ記憶部28には、挙動データを記憶させておくこともできる。
【0064】
基礎振動データ選択部23が読み出した基礎振動データBdは、変換部22によって直ちに振動データVdに変換されるようにしてもよい。一方で、時間領域調整部26、周波数領域調整部27またはこれらの両方によって触感要素の調整を受けてから、変換部22によって振動データFtd又はFfdを振動データVcdに変換されるようにしてもよい。
【0065】
時間領域調整部26は、オペレータが選んだ狙いの触感を表す触感要素の強弱に従って基礎振動データBdを調整する。
図8に示すように、時間領域調整部26は、触感要素の強弱を変更するGUI画面261を生成し、モニタ2dに表示させる。このGUI画面261の上半分には、機械式プッシュスイッチの触感要素の強弱を変更するフェーダー262が並んでいる。各フェーダー262は、クリック感、ストローク感、確実感、弾力感、スムーズ感及び好感に対応している。
【0066】
GUI画面261の下半分には、調整後の振動データの波形Ftdが波形表示される。時間領域調整部26は、オペレータが選んだ狙いの触感を表す触感要素の強弱に従って基礎振動データBdを調整した場合、GUI画面261の下半分に表示した基礎振動データBdを、調整後の振動データの波形Ftd又はFfdに更新する。
【0067】
狙いの触感を表す触感要素の強弱を基礎振動データBdに反映させる方法としては、例えば次の通りである。即ち、時間領域調整部26は、調整データ記憶部29から、時間領域調整データTdを読み出す。読み出される時間領域調整データTdは、操作されたフェーダー262に対応する。
図9に示すように、時間領域調整データTdは、変更ポイント情報Td1、影響度Td2及び触感要素タグTd3が含まれている。なお、調整データ記憶部29には、分析装置4で取得された振動特徴データとしての説明変数とその偏回帰係数とが保存されている。
【0068】
変更ポイント情報Td1は、分析工程の重回帰分析により第1特徴量グループから選抜された特徴量の種類である。影響度Td2は、変更ポイント情報Td1が示す特徴量の偏回帰係数である。触感要素タグTd3は、触感要素の種類を示す。このように、時間領域調整データTdは、触感要素タグTd3で特定され、変更ポイント情報Td1と影響度Td2として、重回帰分析で選抜された特徴量と偏回帰係数とが対になって含まれている。
【0069】
時間領域調整部26は、基礎振動データBdの各特徴量のうち、変更ポイント情報Td1が示す特徴量を、変更ポイント情報Td1と対になった影響度Td2とフェーダー262の操作量に応じて増幅する。フェーダー262の値が正の場合は該当する触感要素を強調する方向に、負の場合は該当する触感要素を抑制する方向に、変更ポイント情報Td1が示す特徴量を影響度Td2に基づいて変化させる。フェーダー262の値が0の場合は、変更ポイント情報Td1が示す特徴量に変化を与えない。そして、増幅後の振動データFtd又はFfdをGUI画面261の下半分に表示させる。
【0070】
例えば、時間領域調整部26は、基礎振動データBdがAT特性データである場合、ピーク加速度Apやボトム加速度Abを大きくしたり、小さくしたりし、加速度差分Adを拡げたり、縮めたりする。また、時間領域調整部26は、立ち上がり時間Trを早めたり、遅くしたりする。また、時間領域調整部26は、波形継続時間Tlに対する増幅割合に応じて、基礎振動データBdの全体を時間方向に伸縮させる。また、時間領域調整部26は、波形面積Sに対する増幅割合に応じて、基礎振動データBdの全体を加速度方向に伸縮させる。
【0071】
周波数領域調整部27は、基礎振動データ選択部23で選択された基礎振動データBd又は前記基礎振動データBdが時間領域調整部26を経た振動データFtdをフーリエ変換により周波数領域に変換し、オペレータが選んだ狙いの触感を表す触感要素の強弱を反映して、時間領域の振動データFfdに逆フーリエ変換により戻す。
図10に示すように、周波数領域調整部27は、触感要素の強弱を変更するGUI画面271を生成し、モニタ2dに表示させる。
【0072】
このGUI画面271の上半分には、クリック感、ストローク感、確実感、弾力感、スムーズ感及び好感の6つの触感要素の強弱を変更するフェーダー272が並んでいる。フェーダー272をドラッグすることで、各触感要素の強弱が入力される。GUI画面271の下半分には、振動データFfdを周波数領域で表したスペクトルデータが表示される。周波数領域調整部27は、触感要素の強弱を変更した場合、GUI画面271の下半分に、調整後のスペクトルデータを表示させる。
【0073】
この周波数領域調整部27は、調整データ記憶部29から、操作されたフェーダー272に対応する触感要素の周波数領域調整データFrdを読み出す。
図11に示すように、周波数領域調整データFrdには、変更ポイント情報Frd1、影響度Frd2及び触感要素タグFrd3が含まれている。
【0074】
変更ポイント情報Frd1は、分析工程の重回帰分析により第2特徴量グループから選抜された周波数を表す。影響度Frd2は、変更ポイント情報Frd1が表す周波数の偏回帰係数である。触感要素タグFrd3は、触感要素の種類を示す。このように、周波数領域調整データFrdは、触感要素タグTd3で特定され、変更ポイント情報Frd1と影響度Frd2として、重回帰分析で選抜された周波数と偏回帰係数とが対に含まれている。
【0075】
周波数領域調整部27は、基礎振動データBdを周波数領域に変換して得たスペクトルデータの各周波数のうち、変更ポイント情報Frd1が示す周波数の振幅Waを、変更ポイント情報Frd1と対になった影響度Frd2とフェーダー272の操作量に応じて増幅する。そして、周波数領域調整部27は、増幅したスペクトルデータを逆フーリエ変換により振動データFfdに戻す。
【0076】
尚、基礎振動データBdは、時間領域調整部26の調整の次に、周波数領域調整部27で調整されてもよいし、周波数領域調整部27の調整の次に、時間領域調整部26で調整されてもよい。また、一方の調整の次に他方の調整を経て、これら調整を反映させたまま、一方の調整を更に重ねてもよい。
【0077】
<機器制御部>
機器制御部21は、インターフェース2gに接続されているタッチ入力装置1を制御する。この機器制御部21は、インターフェース2gに接続されたタッチ入力装置1の記憶部14に対して、生成部20が生成した振動データVdを記憶させる。また、機器制御部21は、機器制御部21の制御の一態様として、タッチ入力装置1の制御部12が備えるドライバに対して、生成部20が生成した振動データVdを入力可能となっている。
【0078】
そこで、基礎振動データ選択部23によって基礎振動データBdが選択される度に、時間領域調整部26を用いて触感要素に強弱が付けられる度に、また周波数領域調整部27を用いて触感要素に強弱が付けられる度に振動データFtd又はFfdに調整され、さらに変換部22が現状の振動データFtd又はFfdを振動データVcdに変換し、そして、補正部25により振動データVdとなり、さらに機器制御部21を通じて振動データVdに従ってバイブレータ13を振動させ、オペレータに、振動を試体験させてもよい。
【0079】
<生成部の補正部>
前記補正部25は、バイブレータ13からタッチ位置までの逆伝達特性データItdを生成する。この補正部25は、オペレータが振動波形計測装置3をタッチ入力装置1のタッチ位置に設置した後、バイブレータ13にインパルス信号を入力させ、振動波形計測装置3からインパルス応答Irを受け取る。インパルス応答Irをフーリエ変換等によって周波数成分G(p)を得て、H(p)=1/G(p)を計算し、H(p)を逆フーリエ変換することにより、逆伝達特性データItdを得る。
【0080】
そして、補正部25は、変換部22が生成した振動データVcdに逆伝達特性を反映させる。例えば、補正部25は、振動データVcdに逆伝達特性データItdを畳み込む。または、例えば、補正部25は、振動データVcdと逆伝達特性データItdとをラプラス変換してから乗算し、時間関数に戻す。
【0081】
補正部25による逆伝達特性データItdの生成は、基礎振動データ選択部23による基礎振動データBdの選択前であって、タッチ入力装置1が接続された後にしてもよい。この場合、基礎振動データ選択部23による基礎振動データBdの選択の際、時間領域調整部26による基礎振動データBdの調整の際、及び周波数領域調整部27の基礎振動データBdの調整の際、機器制御部21が振動を試体験させるときにタッチ入力装置1に送信する振動データVdに逆伝達特性データItdを反映させることができる。
【0082】
また、補正部25は、逆伝達特性データItdをタッチ領域ごとに生成してもよい。この場合、振動データVdは、タッチ領域ごとに生成される。そして、タッチ入力装置1の制御部12は、タッチ位置情報が属するタッチ領域を算出し、算出されたタッチ領域に対応する振動データVdを記憶部14から読み出して、電流又は電圧等の電気信号に変換するようにしてもよい。
【0083】
(振動調整装置を用いた振動データの生成態様)
このような振動調整装置2を用いた振動データVdの生成態様としては、
図12に示すように、まず、基礎振動データ選択部23は、基礎振動データBdを基礎振動データ記憶部28から読み出す(ステップS11)。操作部2eを用いたオペレータの操作に応じた基礎振動データBdが読み出される。
【0084】
GUI画面261において狙いの触感を表す触感要素の強弱を変更する操作が操作部2eを用いて入力された場合(ステップS12,Yes)、時間領域調整部26は、調整データ記憶部29から、強弱が変更された触感要素の触感要素タグTd33が付された時間領域調整データTdを読み出す(ステップS13)。読み出される時間領域調整データTdには、強弱が変更された触感要素の触感要素タグTd3が付されている。そして、時間領域調整部26は、この時間領域調整データTdに含まれる変更ポイント情報Td1と影響度Td2を参照して、基礎振動データBdに触感要素に強弱を付ける調整を行う(ステップS14)。
【0085】
GUI画面271において狙いの触感を表す触感要素の強弱を変更する操作が操作部2eを用いて入力された場合(ステップS15,Yes)、周波数領域調整部27は、基礎振動データBd又は基礎振動データBdが時間領域調整部26によって調整された振動データFtdを周波数領域に変換して周波数のスペクトルデータを得る(ステップS16)。また、周波数領域調整部27は、調整データ記憶部29から、強弱が変更された触感要素の触感要素タグFrd3が付された周波数領域調整データFrdを読み出す(ステップS17)。
【0086】
そして、周波数領域調整部27は、周波数領域調整データFrdに含まれる変更ポイント情報Frd1と影響度Frd2を参照して、基礎振動データBdを周波数領域に変換して得たスペクトルデータに触感要素に強弱を付ける調整を行う(ステップS18)。調整終了後、周波数領域調整部27は、スペクトルデータを時間領域に変換して振動データFfdに戻す(ステップS19)。
【0087】
振動態様の確定が指示された場合(ステップS20,Yes)、変換部22は、現状の振動データFtd又はFfdを振動データVcdに変換する(ステップS21)。例えば、モニタ2dの表示画面に振動態様の確定を指示するボタンが逐一表示されており、操作部2eを用いて当該ボタンが押下されることで、振動態様を確定させる。更に、補正部25は、逆伝達特性データItdが示す逆伝達特性を振動データVcdに反映させる(ステップS22)。振動データVcdが反映されることで、逆伝達特性が反映された振動データVdとなる。そして、機器制御部21は、接続されているタッチ入力装置1の記憶部14に振動データVdを記憶させる(ステップS23)。
【0088】
このように、時間領域調整部26及び周波数領域調整部27が基礎振動データBdを調整し、調整された振動データFtd又はFfdを変換部22が振動データVcdに変換するようにしたが、基礎振動データBdの調整と振動データVcdの変換の順番は入れ替えてもよい。
【0089】
そして、時間領域調整部26及び周波数領域調整部27が時間領域調整データTd及び周波数領域調整データFrdに基づき、基礎振動データBdを触感要素の強弱を付けるように調整し振動データFtd又はFfdとする。
【0090】
(変形態様)
また、時間領域調整部26は更に自由度を有する調整環境を提供するようにしてもよい。即ち、
図13に示すように、時間領域調整部26は、包絡線Leを指定するGUI画面263を生成し、モニタ2dに表示させる。この時間領域調整部26は、基礎振動データBdの包絡線Leを検波し、操作部2eの操作量に応じて包絡線Le全体を振幅上下方向にシフトさせ、又は包絡線Le全体にゲインをかける。このGUI画面263を用いた包絡線Leの指定では、波形面積Sの調整が可能となり、波形面積Sの影響度合いが大きい触感要素の強弱を付けることができる。
【0091】
図14に示すように、時間領域調整部26は、波形要素Weを組み合わせるGUI画面264を生成し、モニタ2dに表示させる。この時間領域調整部26は、操作部2eを用いてパラメータ設定された複数の波形要素Weを合成した波形を生成し、または複数の波形要素Weを基礎振動データBdとする。GUI画面264には、波形要素Weの周波数、振幅、周期数、正弦波や矩形波などの波形種別をパラメータとして入力できる。さらにこれらのパラメータの指定により形作られる波形要素Weのデータを、操作部2eを用いた操作に応じて1又は複数生成し、それら波形要素Weを合成して基礎振動データBdとする。
【0092】
このGUI画面264を用いた操作では、ピーク荷重fp、ボトム荷重fb、荷重差分fd、クリック率Rc、ピーク変位Sp、ボトム変位Sb、変位差Sd、ピーク加速度Ap、ボトム加速度Ab、加速度差分Ad、立ち上がり時間Trの調整が可能となり、これら特徴量の影響度合いが大きい触感要素の強弱を付けることができる。
【0093】
図15に示すように、時間領域調整部26は、基礎振動データBdの時間方向への伸縮量を入力させるGUI画面265を生成し、モニタ2dに表示させる。この時間領域調整部26は、操作部2eを用いた操作量に応じて基礎振動データBdを時間方向へ伸縮させる。このGUI画面265を用いた伸縮量の指定では、波形継続時間T1の調整が可能となり、波形継続時間T1の影響度合いが大きい触感要素の強弱を付けることができる。
【0094】
図13乃至
図15に示すGUI画面263~265を用いた調整に際し、時間領域調整部26は、調整指標のガイダンスをモニタ2dに表示させるようにしてもよい。ガイダンスは、重回帰分析によって触感要素ごとに選抜された特徴量の種類と各特徴量の影響度を表示している。即ち、ガイダンスには、時間領域調整データTdに含まれる変更ポイント情報Td1と影響度Td2を、文字、数字、記号、図示等が、オペレータが理解できる形式で記述されている。
【0095】
尚、
図13乃至
図15に示すGUI画面263~265を用いることで、振動データBdを完全に人工的に生成することができる。即ち、機械式プッシュスイッチを測定して得た挙動データMdをベースとせずに、オペレータの操作に応じて基礎振動データBdを振動調整装置2上で最初から作成してもよい。
【0096】
(作用効果)
以上のようにして作成された振動データVdがタッチ入力装置1の記憶部14に記憶される。そして、
図16に示すように、タッチ入力装置1では、タッチ操作が入力されると(ステップS31)、タッチパネル11がタッチ操作を検出し(ステップS32)、タッチ位置情報を生成する(ステップS33)。タッチ位置情報は制御部12に入力され、制御部12は、タッチ位置情報に基づいてアイコンのタッチを判定する(ステップS34)。
【0097】
アイコンがタッチされたと判定されると(ステップS34,Yes)、制御部12は、タッチ位置情報が属するタッチ領域を計算する(ステップS35)。そして、制御部12は、計算されたタッチ領域に対応し、機械式プッシュスイッチを押下した触感である狙いの触感を与える振動データVdを読み出し(ステップS36)、電流又は電圧等の電気信号に変換する(ステップS37)。電気信号はバイブレータ13に入力され(ステップS38)、バイブレータ13は、電気信号に従って振動する(ステップS39)。
【0098】
尚、アイコンがタッチされていない場合には(ステップS34,No)、スイッチの押下とは異なる触感の振動を与える振動データVdを読み出して(ステップS40)、バイブレータ13を振動させればよい。スイッチの押下とは異なる触感の振動を与える振動データVdとしては、例えば振動周波数と振動振幅が終始一定の振動態様を内容とする。
【0099】
以上のように、振動データVdは、機械式プッシュスイッチの触感の特徴を得られる振動変化を内容として含んでいる。そして、バイブレータ13はボイスコイルアクチュエータであるため、振動データVdが示す振動変化を良好に再現している。そのため、このタッチ入力装置1を用いてタッチ操作を行ったユーザは、振動から、機械式プッシュスイッチを押下したときの馴染みある触感を感じ取ることができる。そのため、ユーザは触感によってアイコンのタッチが受け付けられたことを直感的に認識できる。
【0100】
また、機械式プッシュスイッチの挙動としては、機械式プッシュスイッチにかかる荷重の時間変化であるFT特性や、機械式プッシュスイッチの加速度の時間変化であるAT特性を採用した。そして、主観評価との重回帰分析で得られた触感特徴量で調整して、振動データVdを生成した。
【0101】
機械式プッシュスイッチを押下したときの挙動は、荷重や加速度の時間変化で取得することができ、これはバイブレータ13による振動で得ることができる加速度等との親和性が高いので、機械式プッシュスイッチを押下したときの触感をユーザに与えることができる。
【0102】
尚、振動データVdは、横軸を時間及び縦軸を振幅とした波形で示したとき、ピーク位置に向けて増加した後、ボトム位置に向けて減少する概略波形を示すようにすればよい。これによって、任意の触感をユーザに与えることができる。任意の触感は、実在する物に似せた感触でもよいし、触感要素を強調させたのみの感触であってもよい。
【0103】
但し、振動データVdは、横軸を時間及び縦軸を振幅とした波形で示したとき、ピーク位置、ピーク位置の高さ、ボトム位置、ピーク位置の低さ、ピーク位置へ向けた傾き、ピーク位置を過ぎた後の傾き、ボトム位置へ向けた傾きの一部又は全部が、任意の触感をユーザに与えることができる。任意の触感は、実在する物に似せた感触でもよいし、触感要素を強調させたのみの感触であってもよい。
【0104】
また、タッチ入力装置1は、バイブレータ13を制御する制御部12を備え、制御部12は、バイブレータ13からタッチ位置までの振動伝達の逆伝達特性を内容として含む振動データVdに従って、バイブレータ13を振動させるようにした。これにより、バイブレータ13とタッチ位置とが離れていても、機械式プッシュスイッチの触感の特徴を得られる振動をユーザに与えることができ、機械式プッシュスイッチを押下したときの高品位な触感を、ユーザに与えることができる。
【0105】
尚、逆伝達特性は、振動調整装置2の補正部25で振動データVcdに反映させるようにしたが、これに限られない。例えば、タッチ入力装置1の記憶部14には、1つの振動データVdと、タッチ位置に応じた複数の逆伝達特性のデータが記憶されている。制御部12は、タッチ位置と対になった逆伝達特性のデータと振動データVcdを読み出し、振動データVcdに逆伝達特性を反映させる処理を行ってから、電気信号に変換するようにしてもよい。反映処理は、補正部25と同じように、時間領域における畳み込みやラプラス空間における乗算等の公知処理を用いればよい。
【0106】
また、この振動データVdは、振動調整装置2によって生成するようにし、振動調整装置2は、機械式プッシュスイッチの触感の特徴を得られる振動変化を内容として含む振動データVdを生成する生成部20を備えるようにした。そして、この生成部20は、基礎振動データを記憶する基礎振動データ記憶部28と、基礎振動データBdを振動データFtd又はFfdに調整する触感調整部24と変換する変換部22を備えるようにした。
【0107】
これにより、機械式プッシュスイッチの触感の特徴を得て高精度で近似した振動データVdを生成することができ、機械式プッシュスイッチを押下したときの触感をより高精度で、ユーザに与えることができる。但し、波形を人工的にデザインして、そのデザイン結果に振動データVdの波形の近似させるようにしても、デザイン結果が機械式プッシュスイッチの触感の特徴が得られればユーザに機械式プッシュスイッチを押下した触感を与えることができる。
【0108】
尚、機械式プッシュスイッチの触感の特徴を得られる振動をバイブレータ13に発生させる方法として、この実施形態の他、例えば振動データFtd又はFfdを直接電圧信号に変換してバイブレータ13に入力するようにしてもよい。振動データFtd又はFfdが機械式プッシュスイッチの加速度の時間変化であるAT特性を示している場合、加速度の大きさに応じた電圧信号をバイブレータ13に入力するようにしてもよい。換言すると、変換部22を介さず、基礎振動データ選択部23に記憶されていた基礎振動データBdそのもの、時間領域調整部26を経た振動データFtd、周波数領域調整部27を経た挙動振動データFfd、若しくは時間領域調整部26と周波数領域調整部27を経た振動データFfd、又は補正部25を経た振動データVdを、振動データVdとして扱うようにしてもよい。
【0109】
また、生成部20は、機械式プッシュスイッチを押下した触感を構成する複数の触感要素を調整する触感調整部24を備え、触感調整部24は、狙いの触感を表す複数の触感要素の1つ又は複数の変更操作を受け付け、当該変更操作に従って、基礎振動データBdを調整するようにし、調整後の振動データFtd又はFfdを生成する。これにより、製品やブランドのイメージにマッチした高品位な触感デザインを実現することができる。また、所望の機械式プッシュスイッチを作製しなくとも、狙いの触感に近似した機械式プッシュスイッチから、狙いの触感を表現する振動データVdを簡便に作成することができる。
【0110】
この触感要素別の調整では、測定ステップ、抽出ステップ、触感要素評価ステップ、分析ステップ及び調整データ生成ステップを経て、時間領域調整データTd、周波数領域調整データFrd、又はこれらの両方に基づいて触感要素に強弱を付けるようにした。
【0111】
測定ステップでは、機械式プッシュスイッチの挙動を測定する。抽出ステップでは、測定ステップの測定結果から機械式プッシュスイッチの挙動の特徴量を抽出する。触感要素評価ステップでは、機械式プッシュスイッチの触感を各種触感要素に分解して評価する。分析ステップでは、触感要素の評価を目的変数とし、特徴量を説明変数とした重回帰分析により、触感要素別に各特徴量の偏回帰係数を取得する。調整データ生成ステップでは、特徴量を示す変更ポイント情報Frd1、Td1と偏回帰係数で表される影響度Frd2、Td2とを対にして複数組を含む調整データを触感要素別に生成する。
【0112】
このようにして生成された時間領域調整データTd、周波数領域調整データFrd、又はこれらの両方に基づいて調整することで、触感を減殺させることなく、また触感がまるで異なってしまうことなく、触感要素の強弱を付けることができる。但し、これに限らず、波形を横軸方向や縦軸方向に伸縮させたり、周波数、周期数、振幅、正弦波や矩形波等の種類の異なる各種波形要素を自由に生成して組み合わせるようにして、各種触感要素を調整するようにしてもよい。
【0113】
尚、分析ステップでは、抽出ステップで抽出された特徴量の一部を説明変数として選んで、前記特徴量の組み合わせごとに重回帰分析を行うようにした。そして、各重回帰分析の結果のうち、自由度調整済決定係数Adj.R2の最大値との差が所定値以内の自由度調整済決定係数Adj.R2を持つ重回帰分析の結果を選抜する回帰式選抜ステップを備えるようにした。
【0114】
また、選抜ステップで選抜された重回帰分析の結果から、p値が所定値未満の説明変数を選抜する変数選抜ステップを備え、調整データ生成ステップでは、変数選抜ステップで選抜された結果に基づき、時間領域調整データTdや周波数領域調整データFrdを触感要素別に生成するようにした。
【0115】
これらにより、触感要素により重要な影響を与える特徴量の組み合わせと影響度を取得でき、触感を減殺させることなく、また触感がまるで異なってしまうことなく、触感要素の強弱をより精度良く付けることができる。また、重回帰分析の精度が良好であれば、重回帰分析で求めた偏回帰係数から直接時間領域調整データTdや周波数領域調整データFrdを生成することが可能である。
【0116】
また、抽出ステップでは、測定ステップの測定結果と当該測定結果をフーリエ変換した結果とから特徴量を抽出し、分析ステップでは、測定ステップの測定結果の前記特徴量を説明変数とした第1の重回帰分析と、フーリエ変換した結果の前記特徴量を説明変数とした第2の重回帰分析とを分けて行った。そして、第1の重回帰分析の結果に基づく時間領域調整データTdに基づいて、振動データVdに触感要素別の強弱を付け、第2の重回帰分析の結果に基づく周波数領域調整データFrdに基づいて、振動データVdに触感要素別の強弱を付けるようにした。
【0117】
このように、時間領域における特徴量と周波数領域における特徴量とを区別して、別々に調整に用いることにより、触感を減殺させることなく、また触感がまるで異なってしまうことなく、触感要素の強弱をより精度良く付けることができる。
【0118】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0119】
第2実施形態では、振動調整装置側で、振動データの分析から、任意の触感を与える振動データの生成まで行う点が、第1実施形態と主に異なっている。
【0120】
図17に示すように、振動調整装置200は、測定部210、抽出部212、触感要素評価部214、分析部216、及び生成部20を備えている。
【0121】
測定部210は、上記第1実施形態の分析装置4と同様に、既存の評価対象物としての機械式プッシュスイッチの挙動を測定した測定結果を取得する。
【0122】
抽出部212は、上記第1実施形態の分析装置4と同様に、測定部210の測定結果から機械式プッシュスイッチの挙動の特徴量を抽出する。
【0123】
触感要素評価部214は、上記第1実施形態の分析装置4と同様に、機械式プッシュスイッチの触感を各種触感要素に分解して評価する。
【0124】
分析部216は、上記第1実施形態の分析装置4と同様に、機械式プッシュスイッチの触感要素と、機械式プッシュスイッチの挙動の特徴量とに基づいて、特徴量の重みを分析する。
【0125】
分析部216は、振動波形計測装置3を用いて、振動対象物としてのタッチ入力装置1のエリア毎に、インパルス応答を測定し、当該エリアの振動の伝達特性を計算する。また、分析部216は、タッチ入力装置1のエリア毎に、当該エリアの振動の伝達特性の逆伝達特性を計算する。
【0126】
生成部20は、各種触感要素で表される任意の触感を得るための振動特徴データに基づいて、任意の触感を得るための振動データを生成する。ここで、特徴量は、時間領域に関する特徴量、及び周波数領域に関する特徴量を含む。
【0127】
具体的には、生成部20は、任意の触感毎に、当該触感を表す各種触感要素と、振動特徴データとに基づいて、予め用意された基礎振動データの、時間領域に関する特徴量、及び周波数領域に関する特徴量を調整することにより、所望な振動データを生成する。
【0128】
ここで、振動特徴データは、機械式プッシュスイッチの触感要素と、機械式プッシュスイッチの挙動の特徴量とに基づいて、特徴量の重みが分析されたデータである。具体的には、振動特徴データは、機械式プッシュスイッチの触感要素の評価を目的変数とし、機械式プッシュスイッチの挙動の特徴量を説明変数とした重回帰分析により取得された、触感要素別の各特徴量の偏回帰係数である。
【0129】
また、生成部20は、タッチ入力装置1のエリア毎に、当該エリアについて生成された逆伝達特性を用いて、任意の触感毎に生成した所望な振動データを補正し、タッチ入力装置1に記憶させる。
【0130】
タッチ入力装置1の制御部12は、ユーザの指を用いたタッチ操作を受け付けると、各種触感要素で表される任意の触感を得るための振動特徴データに基づいて生成された、狙いの触感を得るための振動データを取得し、バイブレータ13としてのボイスコイルアクチュエータを制御する。
【0131】
なお、第2の実施の形態に係る調整振動装置及びタッチ入力装置の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0132】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る調整振動装置は、既存の評価対象物である機械式プッシュスイッチの挙動を測定して、機械式プッシュスイッチの挙動の特徴量を抽出し、機械式プッシュスイッチの触感を各種触感要素に分解して評価し、機械式プッシュスイッチの触感要素と、機械式プッシュスイッチの挙動の特徴量とに基づいて、特徴量の重みを分析する。また、タッチ入力装置は、狙いの触感を表す各種触感要素と、特徴量の重みとに基づいて生成された、所望な振動データを取得し、ボイスコイルアクチュエータを制御する。これにより、ユーザにタッチ操作が受け付けられたことを狙いの触感で感受させることができる。
【0133】
なお、第2の実施の形態に係る調整振動装置は、複数の装置が組み合わされて構成されてもよい。例えば、調整振動装置は、既存の評価対象物の挙動を測定する測定装置と、測定装置の測定結果から評価対象物の挙動の特徴量を抽出する抽出装置と、評価対象物の触感を各種触感要素に分解して評価する触感要素評価装置と、評価対象物の触感要素と、評価対象物の挙動の特徴量とに基づいて、特徴量の重みを分析する分析装置と、から構成されてもよい。
【0134】
なお、上記の実施形態では、調整振動装置側で、任意の触感を与える振動データを生成する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。タッチ入力装置1側で狙いの触感を与える振動データを生成してもよい。この場合には、タッチ入力装置1は、ユーザの操作により狙いの触感を受け付け、制御部12は、狙いの触感を表す各種触感要素と、振動特徴データとに基づいて、予め用意された基礎振動データの、時間領域に関する特徴量、及び周波数領域に関する特徴量を調整することにより、所望な振動データを生成する。
【0135】
具体的には、タッチ入力装置1は、ユーザの操作により狙いの触感を予め受け付けておく。そして、タッチ入力装置1では、タッチ操作が入力されると、
図18に示すように、予め受け付けた狙いの触感を表す各種触感要素を取得し(ステップS201)、特徴量の重みを取得する(ステップS202)。そして、取得した特徴量の重みに基づいて、基礎振動データの特徴量を調整することにより、狙いの触感を与える振動データを生成する(S203)。そして、タッチ操作が行われたタッチ領域に応じた逆伝達特性を用いて、振動データを補正し、補正後の振動データで、バイブレータ13としてのボイスコイルアクチュエータを制御する(ステップS204)。
【0136】
尚、バイブレータ13が振動させる振動対象物としてタッチパネル11を例示したが、これに限らずに各種機器を振動対象物とすることができる。例えば、振動対象物としては、タッチパネル11の他、ゲーム機のコントローラ等の触感デバイスも含まれる。また、マッサージ器や電動理美容器具も含まれる。
【0137】
また、重回帰分析により、特徴量の重みを取得する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。他の分析手法により、特徴量の重みを取得するようにしてもよい。
【0138】
(他の実施形態)
以上のように本発明の実施形態を説明したが、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。そして、この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0139】
第1実施形態では、制御部12には、狙いの触感を表す各種触感要素と、振動特徴データとが入力されて、制御部12は、入力された情報に基づいて所望な振動データVdを生成し、ボイスコイルアクチュエータを制御する例を示した。しかし、制御部には、狙いの触感を表す各種触感要素と、振動特徴データとが予め記憶され、制御部は、記憶された情報に基づいて所望な振動データを生成し、ボイスコイルアクチュエータを制御するようにしてもよい。
【0140】
上記の実施の形態に関して、更に以下を開示する。
【0141】
本発明の振動調整方法は、振動対象物と振動対象物を振動させるバイブレータとを備える装置が記憶する振動データを生成する振動調整方法であって、測定対象の挙動を測定する測定ステップと、前記測定ステップの測定結果から前記測定対象の挙動の特徴量を抽出する抽出ステップと、前記測定対象の触感を各種触感要素に分解して評価する触感要素評価ステップと、前記触感要素の評価を目的変数とし、前記特徴量を説明変数とした重回帰分析により、触感要素別に各特徴量の偏回帰係数を取得する分析ステップと、前記特徴量の種類を示す変更ポイント情報と前記偏回帰係数に基づく触感要素に対する影響度を対にして、当該対を1又は複数組含む調整データを触感要素別に生成する調整データ生成ステップと、前記調整データに基づいて前記触感要素に強弱を付けた振動データを生成する調整ステップと、を備えること、を特徴とする。
【0142】
前記分析ステップでは、前記抽出ステップで抽出された前記特徴量の一部を説明変数として選んで、前記特徴量の組み合わせごとに重回帰分析を行うようにしてもよい。
【0143】
前記分析ステップでは、各重回帰分析の結果のうち、所定範囲内の自由度調整済決定係数Adj.R2を持つ重回帰分析の結果を選抜する回帰式選抜ステップを備え、前記調整データ生成ステップでは、前記回帰式選抜ステップで選抜された結果に基づき、前記調整データを触感要素別に生成するようにしてもよい。
【0144】
前記分析ステップでは、重回帰分析の結果から、p値が所定値未満の説明変数を選抜する変数選抜ステップを備え、前記調整データ生成ステップでは、前記変数選抜ステップで選抜された結果に基づき、前記調整データを触感要素別に生成するようにしてもよい。
【0145】
前記分析ステップでは、前記測定ステップの測定結果の前記特徴量を説明変数とした第1の重回帰分析を行い、前記調整データ生成ステップでは、前記第1の重回帰分析の結果に基づく前記調整データを生成するようにしてもよい。
【0146】
前記抽出ステップでは、前記測定ステップの測定結果と当該測定結果をフーリエ変換した結果とから特徴量を抽出し、前記分析ステップでは、前記フーリエ変換した結果の前記特徴量を説明変数とした第2の重回帰分析とを行い、前記調整データ生成ステップでは、前記第2の重回帰分析の結果に基づく前記調整データを生成するようにしてもよい。
【0147】
前記抽出ステップでは、前記測定ステップの測定結果と当該測定結果をフーリエ変換した結果とから特徴量を抽出し、前記分析ステップでは、前記測定ステップの測定結果の前記特徴量を説明変数とした第1の重回帰分析と、前記フーリエ変換した結果の前記特徴量を説明変数とした第2の重回帰分析とを行い、前記調整データ生成ステップでは、前記第1の重回帰分析の結果に基づく前記調整データと、前記第2の重回帰分析の結果に基づく前記調整データとを生成するようにしてもよい。
【0148】
前記調整ステップでは、前記第1の重回帰分析の結果に基づく前記調整データに基づいて、基礎振動データに触感要素別の強弱を付けるようにしてもよい。
【0149】
前記調整ステップでは、前記第2の重回帰分析の結果に基づく前記調整データに基づいて、前記基礎振動データに触感要素別の強弱を付けるようにしてもよい。
【0150】
前記調整ステップでは、前記第1の重回帰分析の結果に基づく前記調整データに基づいて、基礎振動データに触感要素別の強弱を付け、更に、前記第2の重回帰分析の結果に基づく前記調整データに基づいて、前記基礎振動データに触感要素別の強弱を付けるようにしてもよい。
【0151】
前記触感要素は、クリック感、ストローク感、確実感、弾力感、スムーズ感及び好感であるようにしてもよい。
【0152】
前記特徴量は、前記ピーク荷重、ボトム荷重、前記ピーク荷重と前記ボトム荷重の差、クリック率、ピーク変位、ボトム変位、前記ピーク変位と前記ボトム変位の差、ピーク加速度、ボトム加速度、前記ピーク加速度と前記ボトム加速度の差、前記ピーク加速度の立ち上がり時間、波形継続時間、波形面積、又は周波数ごとの振幅であるようにしてもよい。
【0153】
前記振動データに反映させる逆伝達特性を生成する補正ステップを更に備え、前記補正ステップでは、前記タッチ入力装置の振動の伝達特性を計測し、前記伝達特性の前記逆伝達特性を生成するようにしてもよい。
【0154】
前記補正ステップでは、タッチ位置に応じて複数の前記逆伝達特性を生成するようにしてもよい。
【0155】
また、本発明のタッチ入力装置は、振動対象物と、任意の触感を得るために調整された振動データを記憶する振動データ記憶部と、前記振動データに従って前記振動対象物を振動させるボイスコイルアクチュエータと、を備えること、を特徴とする。
【0156】
前記振動データには、基礎振動データが含まれ、前記基礎振動データに触感要素を与える特徴量を強弱させて、所望な振動データを生成し、前記ボイスコイルアクチュエータを制御する制御部を更に備えるようにしてもよい。
【0157】
前記ボイスコイルアクチュエータを制御する制御部を備え、前記制御部は、前記振動対象物がタッチされたと判定したときに、前記振動データに従って前記ボイスコイルアクチュエータを制御するようにしてもよい。
【0158】
前記振動データは、機械式プッシュスイッチにかかる荷重の時間変化、又は機械式プッシュスイッチの加速度の時間変化に近似する、振幅の時間変化を内容として含むようにしてもよい。
【0159】
前記振動データは、横軸を時間及び縦軸を振幅とした波形で示したとき、ピーク位置、ピーク位置の高さ、ボトム位置、ピーク位置の低さ、ピーク位置へ向けた傾き、ピーク位置を過ぎた後の傾き、ボトム位置へ向けた傾きの一部又は全部が、機械式プッシュスイッチの挙動と近似した内容を含むようにしてもよい。
【0160】
前記振動データは、横軸を時間及び縦軸を振幅とした波形で示したときピークに向けて増加した後、ボトムに向けて減少する概略波形を示すようにしてもよい。
【0161】
前記ボイスコイルアクチュエータを制御する制御部を備え、前記制御部は、前記ボイスコイルアクチュエータからタッチ位置までの振動伝達の逆伝達特性を内容として含む前記振動データに従って、前記ボイスコイルアクチュエータを振動させるようにしてもよい。
【0162】
また、本発明の振動調整装置は、振動対象物と当該振動対象物を振動させるバイブレータとを備えるタッチ入力装置が記憶する振動データを生成する振動調整装置であって、機械式プッシュスイッチの挙動に近似した振動変化を内容として含む前記振動データを生成する生成部を備えること、を特徴とする。
【0163】
前記生成部は、振動データを作成する元となる前記基礎振動データと前記基礎振動データを前記振動データに調整する触感調整部を備えるようにしてもよい。
【0164】
前記基礎振動データに、前記挙動データが含まれるようにしてもよい。
【0165】
前記挙動データは、機械式プッシュスイッチにかかる荷重の時間変化、又は機械式プッシュスイッチの加速度の時間変化であり、前記触感調整部は、前記挙動データの時間変化に近似して、振幅が時間変化する前記振動データを生成するようにしてもよい。
【0166】
前記触感調整部は、機械式プッシュスイッチを押下した触感を構成する複数の触感要素を調整し、前記触感調整部は、前記複数の触感要素の1つ又は複数の変更操作を受け付け、当該変更操作に従って、前記基礎振動データを調整するようにしてもよい。
【0167】
前記触感調整部は、クリック感、ストローク感、確実感、弾力感、スムーズ感及び好感を含む前記触感要素の変更操作を受け付けるようにしてもよい。
【0168】
前記触感調整部は、時間領域で波形を調整する時間領域調整部を有するようにしてもよい。
【0169】
前記時間領域調整部は、横軸を時間とする波形の時間方向に沿った伸縮処理、横軸を時間とする波形の縦軸方向に沿った伸縮処理を行う。又は周波数、周期数、振幅波形の種類若しくはこれらの複数が異なる波形要素の合成処理を行うようにしてもよい。
【0170】
波形の特徴量の種類を示す変更ポイント情報と当該特徴量の影響度との対が1又は複数組含まれる時間領域調整データを記憶する時間領域調整データ記憶部を備え、前記時間領域調整部は、前記変更ポイント情報に基づいて前記挙動データから前記特徴量を抽出し、前記影響度に基づいて前記特徴量を変化させるようにしてもよい。
【0171】
前記特徴量は、ピーク荷重、ボトム荷重、前記ピーク荷重と前記ボトム荷重の差、クリック率、ピーク変位、ボトム変位、前記ピーク変位と前記ボトム変位の差、ピーク加速度、ボトム加速度、前記ピーク加速度と前記ボトム加速度の差、前記ピーク加速度の立ち上がり時間、波形継続時間又は波形面積であるようにしてもよい。
【0172】
前記触感調整部は、周波数領域で波形を調整する周波数領域調整部を有するようにしてもよい。
【0173】
周波数を示す変更ポイント情報と前記周波数の影響度の対が1又は複数組含まれる周波数領域調整データを記憶する周波数調整データ記憶部を備え、前記周波数領域調整部は、前記基礎振動データ又は前記基礎振動データに時間調整を掛けたデータを周波数領域に変換し、前記変更ポイント情報の周波数の振幅を前記影響度に基づいて前記特徴量を変化させ、時間領域に戻すようにしてもよい。
【0174】
前記生成部は、前記タッチ入力装置の振動伝達特性の逆伝達特性を生成し、前記振動データに反映させる補正部を有するようにしてもよい。
【0175】
前記補正部は、タッチ位置に応じて複数の前記逆伝達特性を生成するようにしてもよい。
【0176】
本発明によれば、機械式プッシュスイッチを押下した触感を振動によってユーザに与えることできる。機械式プッシュスイッチを押下した触感は、ユーザにとって馴染みがあり、タッチ操作が受け付けられたことを直感的に感受できる。
【符号の説明】
【0177】
1 タッチ入力装置
11 タッチパネル
12 制御部
13 バイブレータ
14 記憶部
2、200 振動調整装置
20 生成部
21 機器制御部
22 変換部
23 基礎振動データ選択部
24 触感調整部
25 補正部
26 時間領域調整部
27 周波数領域調整部
28 基礎振動データ記憶部
29 調整データ記憶部
210 測定部
212 抽出部
214 触感要素評価部
216 分析部
3 振動波形計測装置
Md 挙動データ
Bd 基礎振動データ
Ftd 時間調整後振動データ
Ffd 周波数調整後振動データ、又は時間調整後の周波数調整後振動データ
Vcd 変換後振動データ
Vd 振動データ
Td 時間領域調整データ
Td1 変更ポイント情報
Td2 影響度
Td3 触感要素タグ
Frd 周波数領域調整データ
Wa 振幅
Frd2 影響度
Frd3 触感要素タグ
Itd 逆伝達特性データ