IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士紡ホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-研磨パッド 図1
  • 特開-研磨パッド 図2
  • 特開-研磨パッド 図3
  • 特開-研磨パッド 図4
  • 特開-研磨パッド 図5
  • 特開-研磨パッド 図6
  • 特開-研磨パッド 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049880
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】研磨パッド
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/24 20120101AFI20230403BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230403BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20230403BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20230403BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20230403BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20230403BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20230403BHJP
【FI】
B24B37/24 C
H01L21/304 622F
C08G18/10
C08G18/00 F
C08G18/44
C08G18/48
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159888
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】川村 佳秀
(72)【発明者】
【氏名】立野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】栗原 浩
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見沢 大和
(72)【発明者】
【氏名】越智 恵介
(72)【発明者】
【氏名】川崎 哲明
【テーマコード(参考)】
3C158
4J034
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158EB12
3C158EB29
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA05
4J034CA15
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB08
4J034CC12
4J034CC26
4J034CC45
4J034CC52
4J034CC61
4J034CC62
4J034CC65
4J034CC67
4J034CD08
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DF02
4J034DG04
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA42
4J034QB01
4J034QB14
4J034QB19
4J034QC01
4J034RA19
5F057AA03
5F057AA24
5F057DA02
5F057EB03
5F057EB06
5F057EB07
(57)【要約】
【課題】
スクラッチの発生を抑制しつつ、優れた段差解消性能や優れた耐摩耗性を有する研磨パッドを提供する。
【解決手段】
イソシアネート末端プレポリマーと、硬化剤とを含むポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨層を有する研磨パッドであって、パルスNMR法によって40℃及び80℃で測定される前記研磨層における非晶相及び結晶相の含有重量割合を用いた以下の式(1):
【数1】
から得られる数値が0.70~1.30である、研磨パッド。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート末端プレポリマーと、硬化剤とを含むポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨層を有する研磨パッドであって、
パルスNMR法によって40℃及び80℃で測定される前記研磨層における非晶相及び結晶相の含有重量割合を用いた以下の式(1):
【数1】
から得られる数値が0.70~1.30である、研磨パッド。
【請求項2】
前記研磨層を40℃~80℃のおける動的粘弾性試験による測定で得られるtanδの最大値と最小値の差が0.030以下である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記NC40が、10~20重量%である、請求項1又は2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記NC80が、25~35重量%である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記研磨層はポリプロピレングリコール及びポリエーテルポリカーボネートジオールを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記ポリプロピレングリコールと前記ポリエーテルポリカーボネートジオールの合計に対する前記PEPCDの割合は80%未満である、請求項5に記載の研磨パッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨パッドに関する。本発明の研磨パッドは、光学材料、半導体デバイス、ハードディスク用のガラス基板等の研磨に用いられ、特に半導体ウエハの上に酸化物層、金属層等が形成されたデバイスを研磨するのに好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
光学材料、半導体ウエハ、半導体デバイス、ハードディスク用基板の表面を平坦化するための研磨法として、化学機械研磨(chemical mechanical polishing,CMP)法が一般的に用いられている。
CMP法について、図1を用いて説明する。図1のように、CMP法を実施する研磨装置1には、研磨パッド3が備えられ、当該研磨パッド3は、保持定盤16及び被研磨物8がずれないように保持するリテーナリング(図1では図示しない)に保持された被研磨物8に当接するとともに、研磨を行う層である研磨層4と研磨層4を支持するクッション層6を含む。研磨パッド3は、被研磨物8が押圧された状態で回転駆動され、被研磨物8を研磨する。その際、研磨パッド3と被研磨物8との間には、スラリー9が供給される。スラリー9は、水と各種化学成分や硬質の微細な砥粒の混合物(分散液)であり、その中の化学成分や砥粒が流されながら、被研磨物8との相対運動により、研磨効果を増大させるものである。スラリー9は溝又は孔を介して研磨面に供給され、排出される。
【0003】
ところで、半導体デバイスの研磨に用いられる研磨層の材料として、イソシアネート成分(トルエンジイソシアネート(TDI)など)及び高分子量ポリオール(ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)など)を含むプレポリマーと、ジアミン系硬化剤(4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)など)とを反応させて得られる硬質ポリウレタン材料が用いられる。この硬質ポリウレタン材料は、高分子量ポリオールで形成されるソフトセグメントと、ウレタン結合やウレア結合で形成されるハードセグメントにより構成されている。近年、半導体デバイスの配線の微細化に伴い、従来の研磨層又は研磨パッドでは、段差解消性能が不十分である場合があり、さらなる検討がなされている。
【0004】
特許文献1は、パルスNMR法で測定して得られる結晶相(S相)が70%を超える含有割合である研磨層を用いることにより、熱による硬度変化が少なくなり、その結果十分な研磨ができる、傷がつきにくくなる、といった安定的に研磨できる研磨パッドが開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1を検討した結果、常温で結晶相70%を超えるという条件のみでは、スクラッチが発生しやすいことがわかった。これは、研磨中に異物が混入したときに、異物により温度が上昇することにより、結晶相、中間相、非晶相の存在割合が変化する場合があるからである。
【0006】
また、耐久性の観点からは研磨パットは硬い方が好ましいが、硬すぎると、被研磨物に存在する凹凸を解消するような特性(段差解消性能)がなく、研磨し続けても一向に段差が解消されないという不具合も生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】再表 2016/158348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、研磨層の結晶相、中間相、非晶相の割合を検討し、40℃における非晶相の含有重量割合と、80℃における非晶相の含有重量割合を用いた所定の式によって得られる値が、所定の範囲内に場合、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を達成した。すなわち、本発明は以下を包含する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1] イソシアネート末端プレポリマーと、硬化剤とを含むポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨層を有する研磨パッドであって、
パルスNMR法によって40℃及び80℃で測定される前記研磨層における非晶相及び結晶相の含有重量割合を用いた以下の式(1):
【数1】
から得られる数値が0.70~1.30である、研磨パッド。
[2] 前記研磨層を40℃~80℃のおける動的粘弾性試験による測定で得られるtanδの最大値と最小値の差が0.030以下である、[1]に記載の研磨パッド。
[3] 前記NC40が、10~20重量%である、[1]又は[2]に記載の研磨パッド。
[4] 前記NC80が、25~35重量%である、[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の研磨パッド。
[5] 前記研磨層はポリプロピレングリコール及びポリエーテルポリカーボネートジオールを含む、[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の研磨パッド。
[6]前記前記ポリプロピレングリコールと前記ポリエーテルポリカーボネートジオールの合計に対する前記PEPCDの割合は80%未満である、[5]に記載の研磨パッド。
【発明の効果】
【0010】
本発明の研磨パッドは、優れた段差解消性能や優れた耐摩耗性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、研磨の状態を示す模式図である。
図2図2は、研磨パッドの断面図である。
図3図3は、段差解消性能を説明する図である。
図4図4は、実施例3の得られたtanσの結果である。
図5図5は、比較例1の得られたtanσの結果である。
図6図6は、実施例及び比較例の段差解消性能を示すグラフである(Cu配線幅100μmに対して絶縁膜の幅100μmの配線の被研磨物を用いた場合)。
図7図7は、実施例及び比較例の段差解消性能を示すグラフである(Cu配線幅50μmに対して絶縁膜の幅50μmの配線の被研磨物を用いた場合)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、発明を実施するための形態に限定されるものではない。
【0013】
<<研磨パッド>>
研磨パッド3の構造について図2を用いて説明する。研磨パッド3は、図2のように、研磨層4と、クッション層6とを含む。研磨パッド3の形状は円盤状が好ましいが、特に限定されるものではなく、また、大きさ(径)も、研磨パッド3を備える研磨装置1のサイズ等に応じて適宜決定することができ、例えば、直径10cm~2m程度とすることができる。
なお、本発明の研磨パッド3は、好ましくは図2に示すように、研磨層4がクッション層6に接着層7を介して接着されている。
研磨パッド3は、クッション層6に配設された両面テープ等によって研磨装置1の研磨定盤10に貼付される。研磨パッド3は、研磨装置1によって被研磨物8を押圧した状態で回転駆動され、被研磨物8を研磨する。
【0014】
<研磨層>
(構成)
研磨パッド3は、被研磨物8を研磨するための層である研磨層4を備える。研磨層4を構成する材料は、ポリウレタン樹脂発泡体である。ポリウレタン樹脂発泡体の材料、製造方法等は後述する。
研磨層4の大きさ(径)は、研磨パッド3と同様であり、直径10cm~2m程度とすることができ、研磨層4の厚みは、通常1~5mm程度とすることができる。
研磨層4は、研磨装置1の研磨定盤10と共に回転され、その上にスラリー9を流しながら、スラリー9の中に含まれる化学成分や砥粒を、被研磨物8と一緒に相対運動させることにより、被研磨物8を研磨する。
研磨層4は、中空微小球体4A(発泡)が分散されている。また、研磨層4は、乾式成型されているものである。
【0015】
(溝加工)
本発明の研磨層4の被研磨物8側の表面には、必要に応じ溝加工を設けることが好ましい。溝は、特に限定されるものではなく、研磨層4の周囲に連通しているスラリー排出溝、及び研磨層4の周囲に連通していないスラリー保持溝のいずれでもよく、また、スラリー排出溝とスラリー保持溝の両方を有してもよい。スラリー排出溝としては、格子状溝、放射状溝などが挙げられ、スラリー保持溝としては、同心円状溝、パーフォレーション(貫通孔)などが挙げられ、これらを組み合わせることもできる。
【0016】
(ショアD硬度)
本発明の研磨層4のショアD硬度は、特に限定されるものではないが、例えば、20~100であり、好ましくは30~80であり、さらに好ましくは40~70である。ショアD硬度が小さい場合には、低圧研磨加工で微細な凹凸を平坦化することが難しくなる。また、端部ダレに影響がでる場合もある。ショアD硬度が高すぎると、被研磨物8に強く擦りつけられ被研磨物8の加工面にスクラッチが発生する可能性がある
【0017】
本発明の研磨パッド3においては、中空微小球体4Aを用いて、ポリウレタン樹脂成形体内部に気泡を内包させる。中空微小球体とは、空隙を有する微小球体を意味する。中空微小球体4Aの形状には、球状、楕円状、及びこれらに近い形状のものが含まれる。例としては、既膨張タイプのもの、及び、未膨張の加熱膨張性微小球状体を加熱膨張させたものが挙げられる。
【0018】
(結晶相、中間相、非晶相)
本発明の研磨パッドの研磨層において、40℃で測定される非晶相の含有重量割合(NC40)、80℃で測定される非晶相の含有重量割合(NC80)、40℃で測定される結晶相の含有重量割合(CC40)、80℃で測定される結晶相の含有重量割合(CC80)を用いる式(1)により得られる値は、0.70~1.30である。
【0019】
【数1】
【0020】
式(1)の意味は、40℃及び80℃における非晶相と結晶相の比をそれぞれ求め、80℃における比が40℃における比よりも大きく、その大きさが、0,70~1.30を満たすことである。
【0021】
研磨は、40℃程度で行われるが、研磨の進行に伴って摩擦により研磨パッドの温度が80℃程度に上昇することがある。
式(1)の値が、0.7未満及び1.30よりも大きい場合は、温度変化に伴って非晶相と結晶相のバランスが悪化することにより、段差解消性能及び耐摩耗性が悪化することとなる。
【0022】
上記式(1)により得られる値の下限は、好ましくは0.80以上であり、より好ましくは0.90以上である。上記式(1)により得られる値の上限は、好ましくは1.29以下であり、より好ましくは1.28以下である。
【0023】
研磨層のNC40は、10~20重量%であることが好ましい。NC40が10~20重量%であれば、研磨パッドが適した硬さとなり段差解消性能が良くなるため好ましい。
また、研磨層のNC80は、25~35重量%であることが好ましい。NC80が25重量%以上35重量%以下だと、ソフトセグメントの一定量の非晶相の量を有するため、優れた段差解消性能、耐摩耗性を示す。
【0024】
また、本発明において、研磨層の結晶相、中間相、非晶相の割合は、パルスNMRによる測定で行われる。パルスNMR測定では、スピン-スピン緩和時間が0.03ms未満である相(ショート相)(S相)、スピン-スピン緩和時間が0.03ms以上0.2ms未満である相(ミドル相)(M相)、スピン-スピン緩和時間が0.2ms以上である相(ロング相)(L相)に発泡ポリウレタンを分けて、それぞれの相の含有重量割合を求める。なお、S相、M相、及びL相の含有割合については、例えば、主として結晶相がパルスNMR測定においてS相となって観測され、主として非晶相(アモルファス相)がL相となって観測され、主として中間相がパルスNMR測定においてM相となって観測される。また、主としてハードセグメント部分がパルスNMR測定においてS相となって観測され、主としてソフトセグメント部分がL相となって観測される。
なお、上記のスピン-スピン緩和時間は、例えば、JEOL製の「JNM-MU25」を用い、Solid Echo法による測定を実施することなどで求めることができる。
【0025】
<tanδ>
本発明の研磨層は、研磨層全体を引張モードで周波数10rad/sec、温度20~100℃による動的粘弾性試験を行った際に、貯蔵弾性率E’と損失弾性率E’’の比であるtanδについて、40~80℃の範囲における最大値(tanδmax)と最小値(tanδmin)の差が0.030以下であることが好ましい。
【0026】
tanδは、E’’(損失弾性率)とE’(貯蔵弾性率)との比(E’’/E’)である。研磨熱等の熱エネルギーにより、研磨層の温度が上昇すると、研磨層の非晶相の割合が大きくなり、E’(貯蔵弾性率)に対してE’’(損失弾性率)が大きくなることが予想され、その場合は、tanδの値は大きくなることが予想される。
しかしながら、本発明の研磨パッドに用いられる研磨層のtanδは、40~80℃において、40℃から80℃に温度が上昇するにつれ、若干減少する傾向にある(例えば、図4参照)。そして、その減少率は非常に小さいものであり、40~80℃におけるtanδの最大値(tanδmax)と最小値(tanδmin)の差が0.030以下である。40℃から80℃の範囲にわたり、最大値(tanδmax)と最小値(tanδmin)の差が0.030以下であれば、80℃のような研磨時の温度であっても、優れた段差解消性能を維持することができる傾向にある。
【0027】
tanδは、動的粘弾性試験(DMA)によって研磨層を引張モードで測定する。動的粘弾性試験(DMA)は、試料に時間によって変化(振動)する歪みまたは応力を与えて、それによって発生する応力または歪みを測定することにより、試料の力学的な性質を測定する方法である。引張モードで測定することにより、被研磨物に対して横方向の動きを評価し、それにより、段差解消性能にアプローチするものである。
【0028】
<クッション層>
(構成)
本発明の研磨パッド3は、クッション層6を有する。クッション層6は、研磨層4の被研磨物8への当接をより均一にすることが望ましい。クッション層6の材料としては、樹脂;前記樹脂を基材に含浸させた含浸材;合成樹脂やゴム等の可撓性を有する材料;及び前記樹脂を用いたスポンジ材が挙げられる。上記樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリブタジエン、シリコーン等の樹脂や天然ゴム、ニトリルゴム、ポリウレタンゴム等のゴムなどが挙げられる。
【0029】
クッション層6は気泡構造を有する発泡体等としてもよい。気泡構造としては、不織布等の内部に空隙が形成されたものの他、湿式成膜法により形成された涙型気泡を有するスウェード状のものや、微細な気泡が形成されたスポンジ状のものを好ましく用いることができる。
これらの中でも、ポリウレタンを不織布に含侵させたものやスポンジ状のものをクッション層とすると、研磨層との相性が良いため、段差解消性能を維持しつつ、高い研磨レートを得ることができる。
【0030】
<接着層>
接着層7は、クッション層6と研磨層4を接着させるための層であり、通常、両面テープ又は接着剤から構成される。両面テープ又は接着剤は、当技術分野において公知のもの(例えば、接着シート)を使用することができる。
研磨層4およびクッション層6は、接着層7で貼り合わされている。接着層7は、例えば、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系から選択される少なくとも1種の粘着剤で形成することができる。例えば、アクリル系粘着剤が用いられ、厚みが0.1mmに設定することができる。
【0031】
本発明の研磨パッドは、段差解消性能や耐摩耗性に優れたものである。
ここで、段差解消性能とは、研磨に伴い段差(凹凸)を有するパターンウエハの段差がなくなるまでの時間を指標とする性能のことを言う。段差解消性能を測定する実験の模式図を図3に示す。被研磨物において3500オングストロームの段差がある場合、段差解消性能が高い研磨パッド(点線)と、相対的に段差解消性能が低い研磨パッド(実線)を用いた場合の段差の解消状態を示す。図3の(a)の時点では差がないものの、研磨が進み、研磨量が2000オングストロームのときに、良好な段差解消性能がある研磨パッド(点線)は、相対的に段差解消性能が低い研磨パッド(実線)に比べて、段差がなくなるまでの時間が短いことが示されており((b))、段差解消性能が高い研磨パッドは、相対的に早く段差が解消する((c))。点線で示す研磨パッドは、実線の研磨パッドよりも相対的に段差解消性能が高いと言える。
【0032】
そして、耐摩耗性とは、研磨層(研磨パッド)の摩耗に対する耐性のことを言う。
【0033】
<<研磨パッドの製造方法>>
本発明の研磨パッド3の製造方法について説明する。
【0034】
<研磨層の材料>
研磨層4の材料としては、ポリウレタン樹脂発泡体を用いる。具体的な主成分の材料としては、例えば、イソシアネート末端プレポリマーと硬化剤とを反応させて得られる材料を挙げることができる。また、発泡させるため、材料の中に発泡剤を加える。
【0035】
以下、研磨層4の製造方法については、イソシアネート末端プレポリマーと硬化剤を用いた例を用いて説明する。
【0036】
イソシアネート末端プレポリマーと硬化剤とを用いた研磨層4の製造方法としては、例えば、少なくともイソシアネート末端プレポリマー、添加剤、硬化剤を準備する材料準備工程;少なくとも、前記イソシアネート末端プレポリマー、添加剤、硬化剤を混合して成形体成形用の混合液を得る混合工程;前記成形体成形用混合液から研磨層4を成形する硬化工程、を含む製造方法が挙げられる。
【0037】
以下、材料準備工程、混合工程、成形工程に分けて、それぞれ説明する。
【0038】
<材料準備工程>
本発明の研磨層4の製造のために、ポリウレタン樹脂発泡体の原料として、イソシアネート末端プレポリマー、硬化剤を準備する。ここで、イソシアネート末端プレポリマーは、ポリウレタン樹脂発泡体を形成するための、ウレタンプレポリマーである。
【0039】
以下、各成分について説明する。
【0040】
(イソシアネート末端プレポリマー)
イソシアネート末端プレポリマーは、下記ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを、通常用いられる条件で反応させることにより得られる化合物であり、ウレタン結合とイソシアネート基を分子内に含むものである。また、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の成分がイソシアネート末端プレポリマーに含まれていてもよい。
【0041】
イソシアネート末端プレポリマーとしては、市販されているものを用いてもよく、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて合成したものを用いてもよい。前記反応に特に制限はなく、ポリウレタン樹脂の製造において公知の方法及び条件を用いて付加重合反応すればよい。例えば、40℃に加温したポリオール化合物に、窒素雰囲気にて撹拌しながら50℃に加温したポリイソシアネート化合物を添加し、30分後に80℃まで昇温させ更に80℃にて60分間反応させるといった方法で製造することができる。
なお、イソシアネート末端プレポリマーは、NCO当量が、300~600程度であることが好ましい。したがって、イソシアネート末端プレポリマーが、市販品の場合は、NCO当量が上記範囲を満たすものが好ましく、合成によって製造する際は、下記する原料を適宜割合で用いることにより、上記範囲のNCO当量にすることが好ましい。
【0042】
(ポリイソシアネート化合物)
本明細書において、ポリイソシアネート化合物とは、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物を意味する。
ポリイソシアネート化合物としては、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有していれば特に制限されるものではない。例えば、分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物としては、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネー卜(MDI)、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、キシリレン-1、4-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン-1,2-ジイソシアネート、ブチレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、p-フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン-1,4-ジイソチオシアネート、エチリジンジイソチオシアネート等を挙げることができる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、複数のポリイソシアネート化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
なお、ポリイソシアネート化合物としては、2,4-TDI及び/又は2,6-TDIを含むことが好ましい。
【0044】
(プレポリマーの原料としてのポリオール化合物)
本明細書において、ポリオール化合物とは、分子内に2つ以上の水酸基(OH)を有する化合物を意味する。
プレポリマーとしてのウレタン結合含有ポリイソシアネート化合物の合成に用いられるポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール等のジオール化合物、トリオール化合物等;ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(又はポリテトラメチレンエーテルグリコール)(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエーテルポリカーボネートジオール(PEPCD)等のポリエーテルポリオール化合物を挙げることができる。なお、PEPCDは、下記一般式で表される化合物である。
【0045】
【化1】
【0046】
上記式において、m、nは単位の繰り返し数を表し、それぞれ独立に実数を表す。PEPCDは一種でも使用することができ、二種以上を組み合わせて使用することもできる。これらの中でも、PPG及びPEPCDが好ましく、PPGとPEPCDの組み合わせが好ましい。
上記成分の中でも、上記式(1)を0.70~1.30に調整しやすい観点で、PPG及びPEPCDが好ましく、PPGとPEPCDの組み合わせが好ましい。
PPGやPEPCD等の上記ポリオールの数平均分子量(Mn)は、特に限定されることはなく、例えば、500~3000であることが好ましく、より好ましくは800~2500とすることが好ましい。ここで、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)により測定することができる。なお、ポリウレタン樹脂からポリオール化合物の数平均分子量を測定する場合は、アミン分解等の常法により各成分を分解した後、GPCによって推定することもできる。
【0047】
(添加剤)
上記したように、研磨層4の材料として、酸化剤等の添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0048】
(硬化剤)
本発明の研磨層4の製造方法では、混合工程において硬化剤(鎖伸長剤ともいう)をイソシアネート末端プレポリマーなどと混合させる。硬化剤を加えることにより、その後の成形体成形工程において、イソシアネート末端プレポリマーの主鎖末端が硬化剤と結合してポリマー鎖を形成し、硬化する。
硬化剤としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、4-メチル-2,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ベンゼンジアミン、2-メチル-4,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ベンゼンジアミン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[3-(イソプロピルアミノ)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(1-メチルプロピルアミノ)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(1-メチルペンチルアミノ)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2-ビス(3,5-ジアミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,6-ジアミノ-4-メチルフェノール、トリメチルエチレンビス-4-アミノベンゾネート、及びポリテトラメチレンオキサイド-di-p-アミノベンゾネート等の多価アミン化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-4,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールメタン、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール等の多価アルコール化合物が挙げられる。また、多価アミン化合物が水酸基を有していてもよく、このようなアミン系化合物として、例えば、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等を挙げることができる。多価アミン化合物としては、ジアミン化合物が好ましく、例えば、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(メチレンビス-o-クロロアニリン)(以下、MOCAと略記する。)を用いることがさらに好ましい。
【0049】
なお、プレポリマーの原料として、2種以上のポリオールを使用する場合は、2種以上のポリオールを混合して、この混合物にポリイソシアネート化合物を反応させたものを用いてもよいし、2種類以上のポリオールをそれぞれポリイソシアネート化合物と反応させたのち、それを混合して、硬化させる方法であってもよい。
【0050】
研磨層4は、外殻を有し、内部が中空状である中空微小球体4Aを、材料を用いることにより成形することができる。中空微小球体4Aの材料としては、市販のものを使用してもよく、常法により合成することにより得られたものを使用してもよい。中空微小球体4Aの外殻の材質としては、特に制限されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエーテルアクリライト、マレイン酸共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル及び有機シリコーン系樹脂、並びにそれらの樹脂を構成する単量体を2種以上組み合わせた共重合体(例えば、アクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体など挙げられる)が挙げられる。また、市販品の中空微小球体としては、以下に限定されないが、例えば、エクスパンセルシリーズ(アクゾ・ノーベル社製商品名)、マツモトマイクロスフェア(松本油脂(株)社製商品名)などが挙げられる。
中空微小球体4Aに含まれる気体としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭化水素が挙げられ、具体的にはイソブタン、ペンタン、イソペンタンなどが挙げられる。
【0051】
中空微小球体4Aの形状は特に限定されず、例えば、球状及び略球状であってもよい。中空微小球体4Aの平均粒径は、特に制限されないが、好ましくは5~200μmであり、より好ましくは5~80μmであり、さらに好ましくは5~50μmであり、特に好ましくは5~35μmである。なお、平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えばスペクトリス(株)製、マスターサイザ-2000)により測定することができる。
【0052】
中空微小球体4Aの材料は、イソシアネート末端プレポリマー100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは1~5質量部、さらにより好ましくは1~4質量部となるように添加する。
【0053】
また、上記の成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲において、従来使用されている発泡剤を、中空微小球体4Aと併用してもよく、下記混合工程中に前記各成分に対して非反応性の気体を吹き込んでもよい。該発泡剤としては、水の他、炭素数5又は6の炭化水素を主成分とする発泡剤が挙げられる。該炭化水素としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサンなどの鎖状炭化水素や、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素が挙げられる。
【0054】
<混合工程>
混合工程では、前記準備工程で得られた、イソシアネート末端プレポリマー、添加剤、硬化剤を混合機内に供給して攪拌・混合する。混合工程は、上記各成分の流動性を確保できる温度に加温した状態で行われる。
【0055】
<成形工程>
成形体成形工程では、前記混合工程で調製された成形体成形用混合液を30~100℃に予熱した型枠内に流し込み一次硬化させた後、100~150℃程度で10分~5時間程度加熱して二次硬化させることにより硬化したポリウレタン樹脂(ポリウレタン樹脂発泡体)を成形する。このとき、イソシアネート末端プレポリマー、硬化剤が反応してポリウレタン樹脂を形成することにより該混合液は硬化する。
イソシアネート末端プレポリマーは、粘度が高すぎると、流動性が悪くなり混合時に略均一に混合することが難しくなる。温度を上昇させて粘度を低くするとポットライフが短くなり、却って混合斑が生じて得られる発泡体に形成される、中空微小球体4Aの大きさにバラツキが生じる。反対に粘度が低すぎると混合液中で気泡が移動してしまい、得られる発泡体に略均等に分散した、中空微小球体4Aを形成することが難しくなる。このため、プレポリマーは、温度50~80℃における粘度を500~10000mPa・sの範囲に設定することが好ましい。このことは、例えば、プレポリマーの分子量(重合度)を変えることで粘度を設定することができる。プレポリマーは、50~80℃程度に加熱され流動可能な状態とされる。
【0056】
成形工程では、必要により注型された混合液を型枠内で反応させ発泡体を形成させる。このとき、プレポリマーと硬化剤との反応によりプレポリマーが架橋硬化する。
【0057】
成形体を得た後、シート状にスライスして複数枚の研磨層4を形成する。スライスには、一般的なスライス機を使用することができる。スライス時には研磨層4の下層部分を保持し、上層部から順に所定厚さにスライスされる。スライスする厚さは、例えば、0.8~2.5mmの範囲に設定されている。厚さが50mmの型枠で成型した発泡体では、例えば、発泡体の上層部および下層部の約10mm分をキズ等の関係から使用せず、中央部の約30mm分から10~25枚の研磨層4が形成される。硬化成型ステップで内部に中空微小球体4Aが略均等に形成された発泡体が得られる。
【0058】
得られた研磨層4の研磨面に、必要により溝加工を施す。研磨面に対して所要のカッターを用いて切削加工等を行うことで、任意のピッチ、幅、深さを有する溝を形成することができる。スラリー保持溝としては、例えば同心円状に形成した円形溝が挙げられ、スラリー排出溝としては、例えば格子状に形成した直線溝や研磨層の中心から放射状に形成した直線溝などが挙げられる。
【0059】
このようにして得られた研磨層4は、その後、研磨層4の研磨面とは反対側の面に両面テープが貼り付けられる。両面テープに特に制限はなく、当技術分野において公知の両面テープの中から任意に選択して使用することが出来る。
【0060】
<クッション層6の製造方法>
上記のとおり、クッション層6の材質としては、ポリエチレン、ポリエステル等の樹脂繊維(不織布織布、可撓性フィルム等)にウレタン等の樹脂溶液を含浸させた含浸材;ウレタン等の樹脂材料を用いたスウェード材;及びウレタン等の材料を用いたスポンジ材が挙げられる。本発明において、クッション層6は、公知のものを利用でき、製造方法も公知のものを使用することができる。
【0061】
<接合工程>
接合工程では、形成された研磨層4およびクッション層6を接着層7で貼り合わせる(接合する)。接着層7には、例えば、アクリル系粘着剤を用い、厚さが0.1mmとなるように接着層7を形成する。すなわち、研磨層4の研磨面と反対側の面にアクリル系粘着剤を略均一の厚さに塗布する。研磨層4の研磨面Pと反対側の面と、クッション層6の表面(スキン層が形成された面)と、を塗布された粘着剤を介して圧接させて、研磨層4およびクッション層6を接着層7で貼り合わせる。そして、円形等の所望の形状に裁断した後、汚れや異物等の付着が無いことを確認する等の検査を行い、研磨パッド3を完成させる。
【実施例0062】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0063】
各実施例及び比較例において、特段の指定のない限り、「部」とは「質量部」を意味するものとする。
【0064】
また、NCO当量とは、“(ポリイソシアネート化合物の質量(部)+ポリオール化合物の質量(部))/[(ポリイソシアネート化合物1分子当たりの官能基数×ポリイソシアネート化合物の質量(部)/ポリイソシアネート化合物の分子量)-(ポリオール化合物1分子当たりの官能基数×ポリオール化合物の質量(部)/ポリオール化合物の分子量)]”で求められるNCO基1個当たりのプレポリマー(PP)の分子量を示す数値である。
【0065】
(研磨層について)
イソシアネート化合物として、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI);ポリオール化合物として、PPG,PEPCDを反応させて、イソシアネート末端プレポリマー1及び2を用意した(ウレタンプレポリマーの調製に使用した成分は表1を参照)。表2の割合で調製したイソシアネート末端プレポリマー100部のそれぞれに、殻部分がアクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体からなり、殻内にイソブタンガスが内包された既膨張タイプの中空微小球体2.7部を添加混合し、混合液を得た。得られた混合液を第1液タンクに仕込み、60℃保温した。次に、第1液とは別途に、硬化剤としてMOCA23.5部を、第2液タンク内に入れ、120℃で加熱溶融させて保温した。第1液タンク、第2液タンクの夫々の液体を、注入口を2つ具備した混合機に夫々の注入口からプレポリマー中の末端イソシアネート基に対する硬化剤に存在するアミノ基及び水酸基の当量比を表わすR値が0.9となるように注入した。注入した2液を混合攪拌しながら予熱した成形機の金型へ注入した後、型締めをし、30分間、80℃にて加熱し一次硬化させた。一次硬化させた成形物を脱型後、オーブンにて120℃で4時間二次硬化し、ウレタン成形物を得た。得られたウレタン成形物を25℃まで放冷した後に、再度オーブンにて120℃で5時間加熱してから1.3mmの厚みにスライスし、表2で示す研磨層1乃至5を得た。また、各研磨層の密度及びショアD硬度を表3に示し、結晶相、中間層、非晶相の割合を表4に示す。なお、パルスNMR測定の測定方法及び条件は、下記のとおりである。
【0066】
(密度)
研磨層の密度(g/cm)は、日本工業規格(JIS K 6505)に準拠して測定した。
(ショアD硬度)
研磨層のショアD硬度は、日本工業規格(JIS-K-6253)に準拠して、D型硬度計を用いて測定した。ここで、測定試料は、少なくとも総厚さ4.5mm以上になるように、必要に応じて複数枚の研磨層を重ねることで得た。
【0067】
(パルスNMR測定)
装置 Bruker社 Minispec mq20 (20MHz)
繰り返し時間 4秒
測定手法 Solid echo法
積算回数 16回
測定温度 40℃、80℃
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
(動的粘弾性測定(tanδ))
研磨層1~5をサンプルとして、DMA(動的粘弾性測定)を行った。設定温度23℃(21~25℃)、設定相対湿度50%(45~55%)の恒温恒湿槽中で40時間保持した乾燥状態のサンプルを得た。
通常の大気雰囲気下(乾燥状態)で、引張モードにより測定した。その他の条件は以下のとおりである。得られたE’’(損失弾性率)及びE’(貯蔵弾性率)の比(E’’/E’)を計算し、tanδを求めた。実施例3の結果は、図4に示し、比較例1の結果は、図5に示す。各データの最大値、最小値、及びその差をまとめたものを表5に記載する。
装置:RSA-G2(TAインスツルメンツ社)
サンプルサイズ:縦5cm×横0. 5cm×厚み0.125cm
試験モード:引張モード
周波数:10rad/sec(1.6Hz)
測定温度:20~100℃
歪範囲:0.10%
試験長:1cm
昇温速度:5.0℃/min
初荷重:148g
測定間隔:2point/℃
【0073】
【表5】
【0074】
(クッション層について)
ウレタン樹脂(DIC社製、製品名「C1367」)を含む樹脂溶液(DMF溶媒)に、密度0.15g/cm3のポリエステル繊維からなる不織布を浸漬した。浸漬後、1対のローラ間を加圧可能なマングルローラを用いて、不織布から樹脂溶液を絞り落として、不織布に樹脂溶液を略均一に含浸させた。次いで、樹脂溶液を含浸した不織布を、室温の水からなる凝固液に浸漬することにより、樹脂を湿式凝固させ、樹脂含浸不織布を得た。その後、樹脂含浸不織布を凝固液から取り出し、更に水からなる洗浄液で洗浄することにより樹脂中のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を除去して、乾燥させた。乾燥後、バフ処理により樹脂含浸不織布表面のスキン層を除去し、樹脂含浸不織布からなる厚さ1.3mmのクッション層を得た。
【0075】
(実施例及び比較例)
研磨層1~5およびクッション層を厚さ0.1mmの両面テープ(PET基材の両面にアクリル系樹脂からなる接着層を備えるもの)で接合し、クッション層と接着層の反対側の面に両面テープを貼り合わせて実施例1乃至3及び比較例1及び2の研磨パッドを製造した。
【0076】
(摩耗試験)
得られた研磨パッドについて、小型摩擦摩耗試験機を用いて、下記条件にて摩耗試験を行った。摩耗試験後、研磨層の厚み(摩耗量)を測定した。その結果を表6に示す。
【0077】
(摩耗試験条件)
使用研磨機:小型摩擦摩耗試験機
圧子側:PAD(17φ)
定盤側:♯180サンドペーパー
荷重:300g
液:水
流量:45ml/分
定盤回転数:40rpm
時間:10分
厚み測定荷重:300g
【0078】
【表6】
【0079】
プレポリマー中のPPG配合比率を上げていくと摩耗量が大きくなり、耐摩耗性が悪化する。PPGの配合比率が低めの場合、摩耗量の増加が抑えられていることがわかった。
【0080】
(段差解消性能試験)
実施例及び比較例の研磨パッドを、研磨装置の所定位置にアクリル系接着剤を有する両面テープを介して設置し、下記研磨条件にて研磨加工を施した。段差解消性能は、100μm/100μmのディッシングを段差・表面粗さ・微細形状測定装置(KLAテンコール社製、P-16+)で測定することにより評価した。評価結果を図6に示す。
7000オングストローム膜厚、3000オングストロームの段差を有するパターンウエハに対して、1回の研磨量が1000オングストロームになるように研磨レートを調整して研磨を実施し、段階的に研磨を行い都度ウエハの段差測定を実施した。縦軸のStep Heightは、段差を示す。
図6は100/100はCu配線幅100μmに対して絶縁膜の幅100μmの配線、図7は50/50はCu配線幅50μmに対して絶縁膜の幅50μmの配線となり数字が小さいほど配線が微細になっていることを示す。
【0081】
(研磨条件)
使用研磨機:F-REX300X(荏原製作所社製)
Disk:A188(3M社製)
研磨剤温度:20℃
研磨定盤回転数:90rpm
研磨ヘッド回転数:81rpm
研磨圧力:3.5psi
研磨スラリー:CSL-9044C(CSL-9044C原液:純水=重量比1:9の混合液を使用)(富士フイルムプラナーソリューションズ製)
研磨スラリー流量:200ml/min
研磨時間:60秒
被研磨物:上述のパターンウエハ
パッドブレーク:32N 10分
コンディショニング:In-situ 18N 16スキャン、Ex-situ 32N 4スキャン
【0082】
図6の結果より、実施例1~3の研磨パッドは、比較例1の研磨パッドと同等で、比較例2の研磨パッドと比べて、優れた段差解消性能を有することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、研磨パッドの製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【0084】
1 研磨装置
3 研磨パッド
4 研磨層
4A 中空微小球体
6 クッション層
7 接着層
8 被研磨物
9 スラリー
10 研磨定盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7