(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004989
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】塗膜剥離剤およびそれを用いる塗膜剥離方法
(51)【国際特許分類】
C11D 7/50 20060101AFI20230110BHJP
C09D 9/00 20060101ALI20230110BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20230110BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20230110BHJP
C11D 7/08 20060101ALI20230110BHJP
C11D 7/04 20060101ALI20230110BHJP
C07C 21/18 20060101ALN20230110BHJP
C07C 19/08 20060101ALN20230110BHJP
C07C 43/12 20060101ALN20230110BHJP
【FI】
C11D7/50
C09D9/00
C09D201/00
C11D7/26
C11D7/08
C11D7/04
C07C21/18
C07C19/08
C07C43/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102966
(22)【出願日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2021106085
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000192844
【氏名又は名称】神東塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】福永 幹男
(72)【発明者】
【氏名】木引 千裕
(72)【発明者】
【氏名】浅田 浩紀
【テーマコード(参考)】
4H003
4H006
4J038
【Fターム(参考)】
4H003DA05
4H003DA12
4H003DB03
4H003DC02
4H003EA03
4H003EA21
4H003EB04
4H003EB06
4H003ED02
4H003ED26
4H003ED28
4H003ED29
4H003FA04
4H006AA03
4H006AB80
4H006EA02
4H006EA03
4H006GP01
4H006GP20
4J038CG141
4J038DB001
4J038DD001
4J038DG001
4J038RA02
4J038RA03
4J038RA07
4J038RA12
4J038RA16
(57)【要約】
【課題】 簡便かつ効率的な合成樹脂上塗膜の塗膜剥離剤およびそれを用いる塗膜剥離方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、ハロゲン化合物と、有機溶媒と、分解促進剤と、水と、を含むことを特徴とする塗膜剥離剤ならびに、塗膜をハロゲン化合物と、有機溶媒と、分解促進剤と、水と、を含む塗膜剥離剤に浸漬させたのち、被塗物から剥離することを特徴とする塗膜の剥離方法である。
【選択図】 なし。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化合物と、有機溶媒と、分解促進剤と、水と、を含むことを特徴とする塗膜剥離剤。
【請求項2】
ハロゲン化合物がハイドロクロロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロエーテルの1種または2種以上であり、有機溶媒がアルコールであり、分解促進剤がアルカリまたは酸であることを特徴とする請求項1に記載の塗膜剥離剤。
【請求項3】
さらに、剥離強化剤を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の塗膜剥離剤。
【請求項4】
塗膜を、請求項1に記載の塗膜剥離剤に浸漬させたのち、被塗物から剥離することを特徴とする塗膜の剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗膜剥離剤およびそれを用いる塗膜剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂上に設けられた塗膜を剥離することは、資源の再利用、環境保護の面から見直されており、環境に負荷をかけない塗膜の剥離剤、剥離方法が求められている。
【0003】
たとえば、従来塗装されたPP(ポリプロピレン)バンパーは、粉砕して埋め立て処分されていたが、近年のリサイクル技術開発技術の進歩により、塗膜を剥離して、回収PPバンパーとして自動車部品に再利用されている。
【0004】
塗膜剥離方法として、強アルカリ、アルコール系溶剤、界面活性剤を含有した強アルカリ剥離剤に浸漬したのち、強酸に浸漬する方法が知られている(特許文献1)が、塗膜剥離技術は十分には進んでいるとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法は、優れた剥離効果を有するものであるが剥離のために2つの浸漬工程が必要であり、なお改善の余地があった。
【0007】
本発明者は、簡便かつ効率的な合成樹脂上の塗膜剥離方法について鋭意研究の結果、塗装された合成樹脂製バンパーを、ハロゲン化合物、アルコールおよびアルカリまたは酸を含む混合物中に浸漬すると、効率的に塗膜を剥離できることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、ハロゲン化合物と、有機溶媒と、分解促進剤と、水と、を含むことを特徴とする塗膜剥離剤である。
【0009】
また、本発明は、ハロゲン化合物がハイドロクロロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロエーテルから選ばれる1種または2種以上であり、有機溶媒がアルコールであり、分解促進剤がアルカリまたは酸であることを特徴とする。
また、本発明は、さらに、剥離強化剤を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、塗膜を、前記塗膜剥離剤に浸漬させたのち、被塗物から剥離することを特徴とする塗膜の剥離方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、剥離剤中に浸漬するだけで、合成樹脂上に設けられた塗膜を効率的に剥離できる。また、浸漬という一操作で塗膜が剥離するので、操作が簡便である。
【0012】
加えて、合成樹脂と塗膜との密着性をあげるためのプライマーまで剥離できるので、得られる回収品は、高品質であるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の剥離剤は、ハロゲン化合物と、有機溶媒と、分解促進剤と、水と、を含む。
【0014】
その比率は特に限定されないが、たとえば剥離剤中に、ハロゲン化合物が20~90重量部、分解促進剤が0.1~20重量部、有機溶媒が10~60重量部、水が0.1~15重量部含まれるものがあげられる。
【0015】
また、好ましくは、剥離剤中に、ハロゲン化合物が25~70重量部、分解促進剤が0.5~10重量部、有機溶媒が30~50重量部、水が0.5~10重量部含まれるものがあげられる。
【0016】
本発明において、ハロゲン化合物としては、フッ素化合物、塩素化合物、臭素化合物があげられるが、環境への影響を考慮すると、フッ素化合物が好ましく、具体的にはたとえばハイドロクロロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテルなどがあげられる。
このうち、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカンフルオロオクタン、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタンなどがとりわけ好ましい。
【0017】
ハロゲン化合物は、市販のものを使用することができ、たとえばアモレアAS300(登録商標、AGC株式会社製)、アサヒクリンAC-6000(登録商標、AGC株式会社製)、ノベック7300(スリーエムジャパン株式会社製)などがあげられる。これらのハロゲン化合物はそれぞれ単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0018】
また、本発明において、有機溶媒としては、ハロゲン化合物と相溶性のあるものであればよく、特に限定されない。
【0019】
かかる有機溶媒としては、親水性有機溶媒があげられ、親水性有機溶媒としては、アルコール、エーテル、エステルがあげられる。アルコールとしては芳香族アルコールまたは脂肪族アルコールがあげられ、芳香族アルコールとしては、ベンジルアルコール、アニスアルコール、トルイルアルコールなどがあげられ、脂肪族アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコールなどがあげられる。これらの芳香族および脂肪族アルコールは置換基を有していてもよく、たとえばメチル基、メトキシ基を有するアルコールであってもよい。さらにはエチレングリコールなども用いることができる。
【0020】
またエーテルとしてはジメチルエーテルがあげられる。エステルとしてはギ酸メチルエステル、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルエステルなどがあげられる。
【0021】
このうち、メチルアルコール、エチルアルコール、3-メトキシ―3―メチル―1-ブチルアルコールなどが好ましい。有機溶媒はそれぞれ単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0022】
本発明において、分解促進剤としては、被塗物上の塗膜の分解を促進し、剥離を促進するものをいう。分解促進剤としては、アルカリまたは酸があげられ、アルカリとしては水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの水酸化アルカリ金属、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化アルカリ土類金属があげられる。また、アンモニア、有機アミン類などもアルカリとして用いることができる。
【0023】
酸としては、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、シュウ酸、ギ酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などの有機酸があげられる。
【0024】
このうち、水酸化アルカリ金属、無機酸が好ましく、とりわけ水酸化ナトリウム、硫酸が好ましいがこれに限定されない。これらの分解促進剤は水溶液として用いることができ、その濃度は、本発明における前記配合量を考慮して適宜決定することができる。
【0025】
さらに本発明の剥離剤には、剥離強化剤を含んでいてもよい。剥離強化剤は、合成樹脂と塗膜のいずれかまたは双方を膨潤させて、塗膜の剥離を容易にするものであって、沸点が100℃以上のものが好ましい。かかる剥離強化剤としては、たとえばシクロヘキサノン、ジメチルホルムアミドなどがあげられる。
【0026】
剥離強化剤は、特に限定されず、塗膜の剥離状況に応じて適宜増減することができ、前記ハロゲン化合物と、有機溶媒と、分解促進剤と、水との合計重量100重量部に対して0~600重量部となる量を配合することができる。
【0027】
本発明の剥離剤においては界面活性剤を含んでいてもよく、かかる界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などがあげられる。
【0028】
とりわけ両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が好ましく、両面界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤、多価アルコール型界面活性剤が挙げられる。また、これらの界面活性剤はそれぞれ単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0029】
本発明の剥離剤は、ハロゲン化合物、有機溶媒、分解促進剤、さらには剥離強化剤を適宜混合することにより容易に製造することができ、特に限定されないが、好ましい一例を示すとすれば、有機溶媒に、攪拌下、ハロゲン化合物を加え、さらに分解促進剤と水とを加えることにより、製造することができる。
【0030】
かくして得られた本発明の塗膜剥離剤(以下、単に剥離剤という)を用いることにより、被塗物上に設けられた塗膜の剥離を容易に行うことができる。
【0031】
本発明において、剥離対象となる塗膜としては、合成樹脂製の部材上に設けられた塗膜であればよく特に限定されず、少なくとも高分子材料からなる塗膜であれば好適、かつ容易に剥離することができる。
【0032】
かかる高分子材料からなる塗膜としては、ポリウレタン系塗料、アクリル系塗料、エポキシ系塗料、フタル酸系塗料およびポリエステル系塗料のいずれか、またはこれら2種以上の塗料を混合した塗料で構成される塗膜があげられる。
【0033】
これらの塗膜は、被塗物が合成樹脂である場合において、密着性をあげるために塗膜と被塗物との間に設けられるポリオレフィン系塗料や酸変性ポリオレフィン樹脂などのプライマー塗料からなる塗膜をさらに有するものであっても好適に剥離することができる。また、耐チッピング性、素地隠蔽性を目的として塗膜と被塗物との間に設けられるアクリル系塗料、エポキシ系塗料、フタル酸系塗料などの下塗り塗料からなる塗膜をさらに有するものであっても好適に剥離することができる。
【0034】
剥離は、塗膜が設けられた被塗物をそのまま、または分割、粉砕、粒子化などの手段により、適度な大きさとしたのち、剥離剤に浸漬することにより実施することができる。
【0035】
剥離剤に浸漬する被塗物の大きさは特に限定されないが、剥離の効率や操作性を考慮すると、概ね0.1~3cm程度の大きさとすればよく、好ましくは0.5~2cm程度、とりわけ0.7~1.5cm程度の大きさとするのが好ましい。
【0036】
また、剥離処理する被塗物と、剥離剤との比率は、特に限定されないが、剥離の効率や操作性を考慮すると、剥離処理する被塗物に対して、容量比で、概ね0.8~3倍程度の量を使用するのが好ましく、とりわけ1~2倍程度の量を使用するのが好ましい。
【0037】
被塗物の本発明の剥離剤への浸漬は、常温ないし加温下に行うことができ、加温下に行うと剥離時間が短縮できるので好ましい。加温は20~90℃程度で行うことができるほか、加圧下に加温することもできる。
【0038】
剥離時間は、被塗物の大きさ、塗膜の厚み、塗膜の種類などによって異なるが、たとえば剥離を常温で行う場合には、1日~数日間浸漬すればよく、加温下、例えば50℃~90℃で行う場合には、概ね0.25~5時間程度で剥離が進行、完了する。
【0039】
剥離の進行状態は、適宜確認して、塗膜の剥離や劣化が十分でないときには、適宜浸漬時間を延長することにより、容易に剥離を完了させることができる。
【0040】
また、剥離に際しては、被塗物を剥離剤に浸漬しつつ、同時に物理的処理を加えることもできるほか、被塗物を剥離液に浸漬する前に物理的処理をしてもよく、または浸漬後に物理的処理をしてもよい。
【0041】
物理的処理としては、浸漬を攪拌下に行うことによる被塗物同士の接触、さらに攪拌下に分散メディアを加えて被塗物同士の接触と前記分散メディアと被塗物との接触を組合せることなどがあげられる。分散メディアとしては、たとえばガラスビーズやジルコニウムビーズなどがあげられ、直径0.3~3mmのものが好ましい。
【0042】
前記撹拌は、剥離剤と被塗物とを攪拌羽根つき容器に入れて攪拌羽根を攪拌してもよく、また剥離剤と被塗物とをホッパ―中で撹拌させることによっても実施することができる。
【0043】
さらには、浸漬中に超音波を照射することもできる。この超音波照射は、前記被塗物同士を接触させる処理、被塗物同士の接触と前記分散メディアとの接触とを併用する処理、において、実施することもできる。
【0044】
また、前記と異なる方法として、剥離剤に被塗物を浸漬したのち被塗物を分離し、これに酸化アルミニウム粉末などの研磨剤を含む高圧水を噴霧してもよい。
【0045】
さらに、また本発明においては、前記被塗物の粉砕、剥離剤への浸漬、物理的処理の付加、剥離して分離した塗膜の除去を、連続して実施することもできる。
【0046】
かくして、被塗物から塗膜が剥離すると、塗膜が剥離した被塗物は沈み、剥離した塗膜が液面に浮かび上がるので、これを除去することにより、剥離が完了する。
【0047】
前記剥離した塗膜の除去において、剥離のために分散メディアを用いた場合には、剥離した塗膜を液面から除去したのち、容器内に沈む塗膜が剥離した被塗物と分散メディアとを、比重法により分離すればよい。
【0048】
比重法によるときは、剥離した塗膜を液面から除去した剥離剤に、比重の大きい塩類水溶液を加えて液全体の比重を、被塗物よりも大きくすると、分散メディアのみが沈澱したままとなり、塗膜が剥離した被塗物が液面に浮かび上がるので、これを採集することにより、塗膜が剥離した被塗物を回収することができる。
【0049】
かかる塩類水溶液としては、たとえば飽和食塩水があげられる。さらには、分散メディアと塗膜が剥離した被塗物とを、一旦剥離剤から分離して、前記比重の大きい塩類水溶液に分散して、液面に浮かぶ塗膜が剥離した被塗物を回収することもできる。
【0050】
さらには、前記剥離後の剥離剤中に残存する被塗物と剥離された塗膜との混合物を、一旦剥離剤から分離して、乾燥し、サイクロンなどの風力を利用して、剥離された塗膜のみを除去して、塗膜が剥離した被塗物を回収してもよい。あるいは、前記剥離のために分散メディアを用いた場合であっても、剥離した塗膜を液面から除去する前に、比重の大きい塩類溶液を加えて、剥離剤液面に、剥離した塗膜および塗膜が剥離した被塗物の両者を浮遊させ、前記両者を必要に応じて洗浄などをしたのち乾燥し、サイクロンなどの風力を利用して、剥離された塗膜のみを除去して、塗膜が剥離した被塗物を回収してもよい。
【0051】
あるいは、分散メディアのサイズと被塗物のサイズとを調整することにより、前記比重法によることなく、剥離液中の剥離塗膜と、塗膜が剥離した被塗物とを、篩過という簡単な操作で、分別することができる。
【0052】
塗膜を剥離した被塗物は、そのままでまたは洗浄した後に、乾燥することにより、再利用が可能となる。乾燥はこの技術分野において汎用される方法、たとえば回転式乾燥機などによる乾燥など、によって実施することができる。
【0053】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0054】
実施例1~13および比較例1~5
表1~表4に記載の組成を用いて本発明の剥離剤および比較例の剥離剤を製造し、試験片に対する剥離効果を確認した。
【0055】
<試験片の作製>
ポリプロピレン基材にプライマーとしてアスカレックス3800-1(関西ペイント株式会社製、樹脂製部材用プライマー)を、膜厚5~10μmとなるよう塗布し、室温で5分間乾燥した後、上塗り塗料としてWBC713D-3(関西ペイント株式会社製、ソリッドベース)を膜厚30~35μmとなるよう塗布し、80℃で30分間乾燥した後、3日間放置した。ついで、シュレッダーで粉砕し、平均粒径が5~15mmの塗膜を有するポリプロピレン粉体を作製した。
【0056】
<剥離試験方法>
実施例1~12および比較例1~5
表1,2および表4の剥離剤170gを入れた200mlの三角フラスコに、試験片として上記ポリプロピレン粉体50gと長さ3cmのスターラーチップとを入れ、約50℃の加熱条件下で4時間撹拌して浸漬した。ついで、500mlのトールビーカーに移し替えて、平均粒径1mmのガラスビーズを剥離液と同容量加え、直径3cmのディスパーを用いて室温にて1時間撹拌した。その後、試験片を取り出し、目視にて塗膜の剥離状態を確認し、評価した。
【0057】
<評価基準>
塗膜剥離後の試験片を目視で確認し、次の基準で評価した。
◎:プライマー塗料、上塗り塗料とも完全に除去されていた。
○:上塗り塗料は除去されていたが、プライマー塗料はわずかに残存していた。
×:上塗り塗料は除去されていたが、プライマー塗料は半分程度残存していた。
【0058】
結果は表1,2および表4に示すとおりである。
【0059】
【0060】
【0061】
実施例13
容量1Lのガラス瓶に、表3に示す組成の剥離剤230g、ポリプロピレン粉体30gおよび平均粒径1mmのガラスビーズ300gを入れ、約70℃の加熱条件下で直径約5cmのディスパーを用いて回転数2000rpm程度で0.5時間撹拌した。その後、試験片を取り出し目視にて塗膜の剥離状態を確認し、評価した。
試験片は、プライマー塗料、上塗り塗料とも完全に除去されていた。
【0062】
【0063】
【0064】
上記表1~4から、ハロゲン化合物と、有機溶媒と、分解促進剤と、水とを含む本発明の塗膜剥離剤は、ポリプロピレン製の試験片に設けられた上塗り塗膜およびプライマー塗膜を、簡便な操作で剥離するという優れた効果を奏することがわかった。また、前記塗膜剥離剤にさらに剥離強化剤をくわえた実施例13は、剥離強化剤を含まない実施例1の剥離効果をさらに増強していることがわかった。他方、ハロゲン化合物と、有機溶媒と、分解促進剤と、水とのいずれかを欠いた比較例では剥離が不十分でなく、本発明に比較して剥離効果が劣ることがわかった。