(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049892
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】BIMデータ及び設計支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/12 20200101AFI20230403BHJP
G06F 30/13 20200101ALI20230403BHJP
G06F 111/16 20200101ALN20230403BHJP
【FI】
G06F30/12
G06F30/13
G06F111:16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159905
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 義之
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 香織
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅大
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146DC05
5B146DE06
5B146DG02
5B146DJ14
5B146EC04
5B146EC10
(57)【要約】
【課題】コンピュータを使って建築物の設計を柔軟に行うこと。
【解決手段】BIMアプリケーションを実行する端末装置は、排水口出口を備えた便器に関するBIMデータの属性情報に含まれるパラメータであって、排水口出口の長さを決定するパラメータを、ユーザによって入力された所定の範囲の値に応じて更新する。また、端末装置は、更新されたパラメータを反映させた便器の3次元形状を、BIMデータに含まれる形状情報に従って、表示部に表示させる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口出口を備えた便器に関するBIMデータであって、
ユーザの操作によって変更可能なパラメータであって、前記排水口出口の長さを決定するパラメータを含む属性情報と、
前記パラメータを反映させた前記便器の3次元形状を表示するための形状情報と、
を有することを特徴とするBIMデータ。
【請求項2】
コンピュータに、
排水口出口を備えた便器に関するBIMデータの属性情報に含まれるパラメータであって、前記排水口出口の長さを決定するパラメータを、ユーザによって入力された所定の範囲の値に応じて更新する更新手順と、
前記更新手順において更新された前記パラメータを反映させた前記便器の3次元形状を、前記BIMデータに含まれる形状情報に従って、表示部に表示させる表示制御手順と、
を実行させることを特徴とする設計支援プログラム。
【請求項3】
前記表示制御手順は、前記ユーザによって入力された値が前記所定の範囲に含まれない場合、前記値が不正であることを示す情報を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項2に記載の設計支援プログラム。
【請求項4】
前記表示制御手順は、前記更新手順において前記パラメータが初期の状態から更新されている場合、前記パラメータが更新済みであることを示す情報を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項2又は3に記載の設計支援プログラム。
【請求項5】
前記表示制御手順は、前記更新手順において前記パラメータが初期の状態から更新されていない場合、前記パラメータが更新されていないことを示す情報を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の設計支援プログラム。
【請求項6】
コンピュータに、
配管を備えた建物のBIMモデルに対して、排水口出口を備えた便器のBIMパーツを、ユーザの操作に従って配置した場合に、前記排水口出口に対応する第1の領域と前記建物の配管に対応する第2の領域とが干渉するか否かを判定する判定手順と、
前記判定手順において前記第1の領域と前記第2の領域とが干渉すると判定された場合、前記第1の領域と前記第2の領域とを重ねて表示部に表示させる表示制御手順と、
を実行させることを特徴とする設計支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BIMデータ及び設計支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建設業界において、業務のICT(Information and Communication Technology)化による生産性の向上を目的として、BIM(Building Information Modelling)の導入が進められている。
【0003】
BIMは、建築物を構成するオブジェクトについて、形状情報に加えて、名称、寸法、材料、部材の仕様、性能といった属性情報を持ったモデルを構築する手法である。
【0004】
なお、オブジェクトは、例えば壁及び設備のような建築要素に相当する。また、形状情報は、例えばCAD(Computer Aided Design)データに相当する。
【0005】
従来、コンピュータを使った建築物の設計を支援するための技術が提案されている。なお、BIMを使った設計は、コンピュータを使った建築物の設計の一例である。
【0006】
例えば、特許文献1には、BIMを用いた手洗いカウンターの設計において、設置スペースとボウルの許容数に応じてモデルの形状変更を制限する技術が開示されている。特許文献1に開示された技術によれば、設計における手戻りが抑止される。
【0007】
例えば、特許文献2には、接続機器(例えば、便器)が配置され、枝管の接続条件及び主管の接続経路が設定されると、枝管の経路を決定し、主管及び枝管の口径を計算し、当該口径に応じた継手を主管及び枝管と重複させて表示する技術が開示されている。特許文献2に開示された技術によれば、配管の設計を短時間で行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-5264号公報
【特許文献2】特開平8-83294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の技術では、コンピュータを使って建築物の設計を柔軟に行うことができない場合がある。
【0010】
例えば、特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、オブジェクトの所定の部分の長さを設計者が自由に変更することは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の一態様に係るBIMデータは、排水口出口を備えた便器に関するBIMデータであって、ユーザの操作によって変更可能であって、前記排水口出口の長さを決定するパラメータを含む属性情報と、前記パラメータを反映させた前記便器の3次元形状を表示するための形状情報と、を有する。
【0012】
実施形態の一態様に係る設計支援プログラムは、コンピュータに、排水口出口を備えた便器に関するBIMデータの属性情報に含まれるパラメータであって、前記排水口出口の長さを決定するパラメータを、ユーザによって入力された所定の範囲の値に応じて更新する更新手順と、前記更新手順において更新された前記パラメータを反映させた前記便器の3次元形状を、前記BIMデータに含まれる形状情報に従って、表示部に表示させる表示制御手順と、を実行させる。
【0013】
実施形態の一態様に係る設計支援プログラムは、コンピュータに、配管を備えた建物のBIMモデルに対して、排水口出口を備えた便器のBIMパーツを、ユーザの操作に従って配置した場合に、前記排水口出口に対応する第1の領域と前記建物の配管に対応する第2の領域とが干渉するか否かを判定する判定手順と、前記判定手順において前記第1の領域と前記第2の領域とが干渉すると判定された場合、前記第1の領域と前記第2の領域とを重ねて表示部に表示させる表示制御手順と、を実行させる。
【発明の効果】
【0014】
実施形態の一態様によれば、コンピュータを使って建築物の設計を柔軟に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態に係る設計支援システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るサーバの構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る端末装置の構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、BIMアプリケーションの実行画面の例を示す図である。
【
図6】
図6は、排水口出口の長さに関するパラメータを説明する図である。
【
図7】
図7は、BIMパーツの配置を説明する図である。
【
図8】
図8は、調整済みの排水口出口の例を示す図である。
【
図9】
図9は、配管と重なった排水口出口の例を示す図である。
【
図10】
図10は、設計支援処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本願に係るBIMデータ及び設計支援プログラムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態により限定されるものではない。
【0017】
まず、
図1を用いて、実施形態に係る設計支援システムの構成について説明する。
図1は、実施形態に係る設計支援システムの構成例を示す図である。
【0018】
図1に示すように、設計支援システム1は、サーバ10及び端末装置20を有する。サーバ10及び端末装置20の数は、
図1に示すものに限られない。
【0019】
また、サーバ10と端末装置20は、ネットワークNを介して接続されている。ネットワークNは、例えばインターネットである。
【0020】
サーバ10は、端末装置20にBIMデータを提供する。また、端末装置20は、サーバ10から取得したBIMデータを用いて、BIMアプリケーションを実行する。端末装置20は、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット型端末等である。
【0021】
BIMアプリケーションは、BIMを用いて建築物の設計を行うためのアプリケーションである。例えば、BIMアプリケーションは、Autodesk(登録商標)社のRevit(登録商標)である。
【0022】
BIMデータは、BIMアプリケーションにおいてBIMパーツを構築するためのデータである。BIMデータには、BIMパーツの3次元形状を表示するための形状情報及びパラメータの集合である属性情報が含まれる。
【0023】
BIMパーツは、建築物のBIMモデルに配置される建築要素ごとに作成されるものであってもよい。
【0024】
図1に示すように、端末装置20は、開発者又は設計者によって操作される。
【0025】
例えば、開発者は、設備機器メーカに所属し、端末装置20にインストールされたBIMアプリケーションを用いて、設備機器に関するBIMデータを作成する。
【0026】
また、例えば、設計者は、設計事務所及び建設会社等に所属し、端末装置20にインストールされたBIMアプリケーションを用いて、建築物の設計を行う。例えば、設計者は、BIMデータから構築したBIMパーツを、建築物のBIMモデルに配置する操作を行う。
【0027】
図2を用いて、サーバ10の構成を説明する。
図2は、実施形態に係るサーバの構成例を示す図である。
【0028】
図2に示すように、サーバ10は、通信部11、記憶部12及び制御部13を有する。
【0029】
通信部11は、ネットワークを介して、他の装置との間でデータ通信を行う。例えば、通信部11はNIC(Network Interface Card)である。
【0030】
記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)、光ディスク等の記憶装置、又は、SSD(Solid State Drive)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリである。
【0031】
記憶部12は、サーバ10で実行されるOS(Operating System)及び各種プログラムを記憶する。記憶部12は、形状情報121及び属性情報122を記憶する。
【0032】
形状情報121及び属性情報122はBIMデータに含まれる。
図3を用いて、BIMデータについて説明する。
図3は、BIMデータを説明する図である。
【0033】
図3の例では、BIMデータの形状情報121は、便器の3次元形状を表示するための情報である。例えば、形状情報121は3DCADデータである。また、
図3の例では、BIMデータの属性情報122は、便器に関するパラメータの集合である。
【0034】
また、属性情報122は、パラメータの名称と値を含む。例えば、
図3には、パラメータ「給水単位」の値が「5.000000」であることが示されている。
【0035】
制御部13は、サーバ10全体を制御する。制御部13は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により実現される。
【0036】
制御部13は、プログラムを実行することで、例えば格納部131及び提供部132として機能する。
【0037】
格納部131は、形状情報121及び属性情報122を記憶部12に格納する。例えば、格納部131は、端末装置20を介して開発者によって提供されたBIMデータを、形状情報121及び属性情報122として記憶部12に格納する。
【0038】
提供部132は、形状情報121及び属性情報122を端末装置20に提供する。例えば、Webサイトを介してサーバ10に対してBIMデータのダウンロードの要求があった場合、提供部132は、形状情報121及び属性情報122をBIMデータとして提供する。
【0039】
図4を用いて、端末装置20の構成を説明する。
図4は、実施形態に係る端末装置の構成例を示す図である。
【0040】
図4に示すように、端末装置20は、通信部21、入力部22、表示部23、記憶部24及び制御部25を有する。
【0041】
通信部21は、ネットワークを介して、他の装置との間でデータ通信を行う。例えば、通信部11はNICである。
【0042】
入力部22は、ユーザからのデータの入力を受け付ける。例えば、入力部22は、マウス及びキーボード等の入力装置である。なお、以降の説明において特に説明がない場合、ユーザは設計者を意味するものとする。
【0043】
表示部23は、画面を表示する。例えば、表示部23は、ディスプレイ等の表示装置である。
【0044】
記憶部24は、HDD、光ディスク等の記憶装置、又は、SSD、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリである。
【0045】
記憶部24は、端末装置20で実行されるOS及び各種プログラムを記憶する。記憶部24は、形状情報241、属性情報242及びアプリケーション情報243を記憶する。
【0046】
形状情報241及び属性情報242は、サーバ10から提供されたBIMデータに含まれる。
【0047】
アプリケーション情報243は、BIMアプリケーションを実行するための情報である。例えば、アプリケーション情報243は、端末装置20においてBIMアプリケーションを実行するためのファイルの集合である。
【0048】
図5は、BIMアプリケーションの実行画面の例を示す図である。
図5に示すように、表示部23に表示されるBIMアプリケーションの実行画面には、プロパティウィンドウ231及び描画領域232が含まれる。
【0049】
プロパティウィンドウ231は、BIMパーツに関する属性情報242の表示及び変更を行うためのウィンドウである。また、描画領域232は、形状情報241に従って、BIMパーツの3次元形状の投影図が描画される領域である。
【0050】
ここで、実施形態におけるBIMデータは、排水口出口を備えた便器に関するBIMデータであるものとする。また、BIMデータは、形状情報241及び属性情報242を含む。
【0051】
属性情報242は、ユーザの操作によって変更可能なパラメータであって、排水口出口の長さを決定するパラメータを含む。形状情報241は、パラメータを反映させた便器の3次元形状を表示するための情報である。例えば、形状情報241は3DCADデータである。
【0052】
図6は、排水口出口の長さに関するパラメータを説明する図である。
図6の「排水口出口長」、「調整判定」、「エラー判定」は、排水口出口の長さに関するパラメータの一例である。
【0053】
パラメータ「排水口出口長」の値は、開発者によって決定された固定値であってもよいし、設計者によって手動で入力された値であってもよいし、式に従って動的に決定される値であってもよい。
【0054】
パラメータ「排水口出口長」は、3次元形状における排水口出口の長さに相当する。パラメータ「排水口出口長」は、設計者が変更可能であるものとする。
【0055】
パラメータ「調整判定」は、排水口出口の長さが調整済みであるか否かを示すパラメータである。パラメータ「排水口出口長」の値が初期値と異なる場合、排水口出口の長さが調整済みであるということができる。
【0056】
パラメータ「調整判定」の式「IF(NOT(排水口出口長=200.0),"調整済み","未調整")」は、パラメータ「排水口出口長」の値が初期値である「200.0」に等しい場合、パラメータ「調整判定」の値が「未調整」となり、パラメータ「排水口出口長」の値が初期値である「200.0」と異なる場合、パラメータ「調整判定」の値が「調整済み」となることを意味している。
【0057】
パラメータ「エラー判定」は、パラメータ「排水口出口長」の値が不正であるか否かを示すパラメータである。
【0058】
パラメータ「エラー判定」の式「IF(排水口出口長<0,"エラー","")」は、パラメータ「排水口出口長」の値が0未満である場合、パラメータ「エラー判定」の値が「エラー」となり、パラメータ「排水口出口長」の値が0未満でない場合、パラメータ「エラー判定」の値が空文字となることを意味している。
【0059】
制御部25は、端末装置20全体を制御する。制御部25は、例えば、CPU、MPU、GPU、ASIC、FPGA等により実現される。
【0060】
制御部25は、取得部251、表示制御部252及び更新部253として機能する。また、取得部251、表示制御部252及び更新部253は、設計支援プログラムを実行する。
【0061】
なお、設計支援プログラムは、BIMアプリケーションの1つの機能として実現されてもよい。また、設計支援プログラムは、BIMアプリケーションのアドインプログラムであってもよい。
【0062】
取得部251は、サーバ10からBIMデータを取得する。取得部251は、取得したBIMデータを形状情報241及び属性情報242として記憶部24に格納する。
【0063】
表示制御部252は、表示制御手順及び判定手順を実行する。また、更新部253は、更新手順を実行する。
【0064】
表示制御部252は、形状情報241に基づき、BIMパーツである便器の3次元形状の投影図を描画領域232に表示させる。また、表示制御部252は、属性情報242に基づき、BIMパーツである便器の各パラメータの情報をプロパティウィンドウ231に表示させる。
【0065】
図7は、BIMパーツの配置を説明する図である。
図7は、描画領域232におけるBIMパーツの配置例を示している。
【0066】
図7に示すように、表示制御部252は、便器50を建物の壁60の近傍に配置する。便器50には、排水口出口51が備えられている。また、壁60には配管61が備えられている。
【0067】
また、長さL1は、パラメータ「排水口出口長」が初期の状態にある場合、すなわちパラメータ「排水口出口長」の値が初期値の「200.0」である場合の排水口出口の長さである。
【0068】
ここで、排水口出口は、排水経路の終端部に設けることが一般的である。また、実際の施工において排水口出口と配管が接続される場合、接続部分には接続しろが必要である。
【0069】
一方、BIMアプリケーション上では、接続部分の接続しろを表現することができない場合がある。その場合、便器50及び排水口出口51を、
図7に示す位置からさらに配管61側に移動させることができない。
【0070】
これに対し、配管61を短く設計することで便器50及び排水口出口51を壁60に近付けることも考えられるが、その場合接続しろが考慮されず、配管61が短くなりすぎて施工が困難になってしまう。
【0071】
実施形態では、パラメータ「排水口出口長」の値を変更することで、排水口出口51の長さを調整することができる。これにより、
図8に示すように、接続しろを考慮した設計が可能になる。
【0072】
ここで、更新部253は、排水口出口を備えた便器に関するBIMデータの属性情報242に含まれるパラメータであって、排水口出口の長さを決定するパラメータを、ユーザによって入力された所定の範囲の値に応じて更新する。
【0073】
そして、表示制御部252は、更新部253によって更新されたパラメータを反映させた便器の3次元形状を、BIMデータに含まれる形状情報241に従って、表示部23に表示させる。これにより、排水口出口の調整が実現される。
【0074】
図8は、調整済みの排水口出口の例を示す図である。
図8の例では、排水口出口の長さがL1からL2に調整されている。L2は、接続しろの長さに相当する。ここでは、L1=200.0、L2=100.0であるものとする。
【0075】
図6の初期状態において、パラメータ「調整判定」の値は「未調整」である。また、表示制御部252は、パラメータ「調整判定」の値が「未調整」であることをプロパティウィンドウ231に表示させる。
【0076】
このように、表示制御部252は、更新部253によってパラメータが初期の状態から更新されていない場合、パラメータが更新されていないことを示す情報を表示部23に表示させる。
【0077】
図6の1回目の変更において、更新部253は、ユーザの入力に応じてパラメータ「排水口出口長」の値を「200.0」から「100.0」に更新する。これにより、パラメータ「調整判定」の値は「未調整」から「調整済み」に変化する。また、表示制御部252は、パラメータ「調整判定」の値が「調整済み」であることをプロパティウィンドウ231に表示させる。
【0078】
このように、表示制御部252は、更新部253によってパラメータが初期の状態から更新されている場合、パラメータが更新済みであることを示す情報を表示部23に表示させる。
【0079】
さらに、
図6の2回目の変更において、更新部253は、ユーザの入力に応じてパラメータ「排水口出口長」の値を「200.0」から「-10.0」に更新する。これにより、パラメータ「エラー判定」の値は空文字から「エラー」に変化する。また、表示制御部252は、パラメータ「エラー判定」の値が「エラー」であることをプロパティウィンドウ231に表示させる。
【0080】
このように、表示制御部252は、ユーザによって入力された値が所定の範囲に含まれない場合、値が不正であることを示す情報を表示部23に表示させる。
【0081】
図6の例では、所定の範囲は「0以上」である。一方で、所定の範囲は、上限が定められたものであってもよい。
【0082】
なお、表示制御部252は、パラメータが更新済みであること、パラメータが更新されていないこと、及び値が不正であることを、プロパティウィンドウ231を介さずに通知してもよい。
【0083】
例えば、表示制御部252は、ポップアップメッセージの表示、画面上の図形及びテキストの色の変化等により通知を行ってもよい。
【0084】
さらに、端末装置20は、パラメータが更新済みであること、パラメータが更新されていないこと、及び値が不正であることを、メッセージの読み上げ及び警告音といった音声により通知してもよい。
【0085】
(変形例)
図9のように、表示制御部252は、排水口出口51と配管61を重ねて表示させてもよい。
図9は、配管と重なった排水口出口の例を示す図である。
【0086】
これにより、表示制御部252は、配管61の内部に排水口出口51が挿入されたこと(排水口出口51が配管61にはめ込まれたこと)を表現することができる。
【0087】
なお、この機能は、アドインプログラムによって実現されてもよいし、既存のBIMアプリケーションのカスタマイズによって実現されてもよい。
【0088】
具体的には、表示制御部252は、まず、配管を備えた建物のBIMモデルに対して、排水口出口を備えた便器のBIMパーツを、ユーザの操作に従って配置した場合に、排水口出口に対応する第1の領域と建物の配管に対応する第2の領域とが干渉するか否かを判定する。
【0089】
例えば、
図7の状態において、ユーザが便器50及び排水口出口51を配管61側にL2だけ移動させる操作を行った場合、表示制御部252は、排水口出口51の長さL2の第1の領域と、配管61の長さL2の第2の領域とが干渉すると判定する。
【0090】
そして、表示制御部252は、第1の領域と第2の領域とが干渉すると判定した場合、
図9のように第1の領域と第2の領域とを重ねて表示部23に表示させる。
【0091】
図10は、設計支援処理の流れを示すフローチャートである。端末装置20は、設計支援プログラムにより設計支援処理を実行することができる。
【0092】
まず、端末装置20は、サーバ10からBIMデータを取得する(ステップS101)。次に、端末装置20は、BIMアプリケーションを起動する(ステップS102)。
【0093】
続いて、端末装置20は、BIMデータに従って便器の3次元形状を表示する(ステップS103)。
【0094】
ここで、端末装置20は、ユーザが便器の排水口出口長の値を変更するまで(ステップS104、No)、3次元形状を表示し続け待機する(ステップS103)。
【0095】
端末装置20は、ユーザが便器の排水口出口長の値を変更した場合(ステップS104、Yes)、変更後の値に従ってBIMデータを更新する(ステップS105)。その後、端末装置20は、ステップS103に戻る。
【0096】
これまで説明してきたように、BIMデータは、排水口出口を備えた便器に関するBIMデータであって、ユーザの操作によって変更可能なパラメータであって、排水口出口の長さを決定するパラメータを含む属性情報と、パラメータを反映させた便器の3次元形状を表示するための形状情報と、を有する。
【0097】
このように、ユーザは、端末装置20を使って、便器の排水口出口の長さを接続先の配管に合わせて変更することができる。その結果、実施形態によれば、コンピュータを使って建築物の設計を柔軟に行うことができる。
【0098】
設計支援プログラムは、コンピュータに、排水口出口を備えた便器に関するBIMデータの属性情報に含まれるパラメータであって、排水口出口の長さを決定するパラメータを、ユーザによって入力された所定の範囲の値に応じて更新する更新手順と、更新手順において更新されたパラメータを反映させた便器の3次元形状を、BIMデータに含まれる形状情報に従って、表示部に表示させる表示制御手順と、を実行させる。
【0099】
このように、ユーザは、端末装置20を使って、便器の排水口出口の長さを接続先の配管に合わせて変更することができる。その結果、実施形態によれば、コンピュータを使って建築物の設計を柔軟に行うことができる。
【0100】
表示制御手順は、ユーザによって入力された値が所定の範囲に含まれない場合、値が不正であることを示す情報を表示部に表示させる。これにより、排水口出口の長さとして施工不可能な値が設定されることを抑止することができる。
【0101】
表示制御手順は、更新手順においてパラメータが初期の状態から更新されている場合、パラメータが更新済みであることを示す情報を表示部に表示させる。これにより、製品として実在する便器の排水口出口の長さと、設計に用いられているBIMデータにおける便器の排水口出口の長さが異なっていることをユーザに意識させることができる。
【0102】
表示制御手順は、更新手順においてパラメータが初期の状態から更新されていない場合、パラメータが更新されていないことを示す情報を表示部に表示させる。これにより、排水口出口の長さが変更されず、接続しろが考慮されない設計が行われることを抑止することができる。
【0103】
設計支援プログラムは、コンピュータに、配管を備えた建物のBIMモデルに対して、排水口出口を備えた便器のBIMパーツを、ユーザの操作に従って配置した場合に、排水口出口に対応する第1の領域と建物の配管に対応する第2の領域とが干渉するか否かを判定する判定手順と、判定手順において第1の領域と第2の領域とが干渉すると判定された場合、第1の領域と第2の領域とを重ねて表示部に表示させる表示制御手順と、を実行させる。
【0104】
これにより、BIMデータを変更することなく便器の排水口出口と配管との接続しろを考慮した設計を行うことが可能になる。
【0105】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細及び代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0106】
N ネットワーク
1 設計支援システム
10 サーバ
11、21 通信部
12、24 記憶部
13、25 制御部
20 端末装置
22 入力部
23 表示部
50 便器
51 排水口出口
60 壁
61 配管
121、241 形状情報
122、242 属性情報
131 格納部
132 提供部
231 プロパティウィンドウ
232 描画領域
243 アプリケーション情報
251 取得部
252 表示制御部
253 更新部