IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神戸製鋼所の特許一覧

<>
  • 特開-タイヤ試験機の精度検査方法 図1
  • 特開-タイヤ試験機の精度検査方法 図2
  • 特開-タイヤ試験機の精度検査方法 図3
  • 特開-タイヤ試験機の精度検査方法 図4
  • 特開-タイヤ試験機の精度検査方法 図5
  • 特開-タイヤ試験機の精度検査方法 図6
  • 特開-タイヤ試験機の精度検査方法 図7
  • 特開-タイヤ試験機の精度検査方法 図8
  • 特開-タイヤ試験機の精度検査方法 図9
  • 特開-タイヤ試験機の精度検査方法 図10
  • 特開-タイヤ試験機の精度検査方法 図11
  • 特開-タイヤ試験機の精度検査方法 図12
  • 特開-タイヤ試験機の精度検査方法 図13
  • 特開-タイヤ試験機の精度検査方法 図14
  • 特開-タイヤ試験機の精度検査方法 図15
  • 特開-タイヤ試験機の精度検査方法 図16
  • 特開-タイヤ試験機の精度検査方法 図17
  • 特開-タイヤ試験機の精度検査方法 図18
  • 特開-タイヤ試験機の精度検査方法 図19
  • 特開-タイヤ試験機の精度検査方法 図20
  • 特開-タイヤ試験機の精度検査方法 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049898
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】タイヤ試験機の精度検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20230403BHJP
【FI】
G01M17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159916
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【弁理士】
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】藤原 英人
(57)【要約】
【課題】一のタイヤを試験位置から搬出することなく、スピンドルとタイヤとの位相を変えて試験機の精度検査を行うことが可能なタイヤ試験機の精度検査方法を提供する。
【解決手段】タイヤ試験機1の精度検査方法では、一のタイヤに対する1回目の試験が終了すると、上スピンドル22がタイヤTから上方に離間する。その後、下スピンドル21およびタイヤTが所定の角度だけ回転する。更に、搬送コンベア8が上昇してタイヤTを一時的に保持した状態で、下スピンドル21の位相が上スピンドル22の位相に合うように調整される。タイヤTが再び下スピンドル21に支持され、上スピンドル22が下降することで、2回目の試験が実行される。
【選択図】図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のタイヤ試験位置においてタイヤの回転中心軸が上下方向に延びる姿勢である水平姿勢とされた前記タイヤを前記回転中心軸回りに回転させ前記タイヤに所定の試験を行うタイヤ試験機の精度検査方法であって、
前記タイヤ試験機として、前記水平姿勢とされたタイヤを前記タイヤ試験位置を通るように水平方向に搬送可能な搬送部と、前記タイヤが前記回転中心軸回りに回転可能なように前記タイヤ試験位置において前記水平姿勢とされた前記タイヤの下側部分を支持する下スピンドルと、前記タイヤ試験位置において前記水平姿勢とされた前記タイヤの上側部分を支持する上スピンドルとを有するものを準備する準備工程と、
前記搬送部によって一のタイヤを前記タイヤ試験位置に搬入する搬入工程と、
前記搬送部を前記下スピンドルに対して上下方向に相対移動させ、前記一のタイヤを搬送部から前記下スピンドルに受け渡す第1受け渡し工程と、
前記上スピンドルを前記下スピンドルに対して相対的に下降させ、前記下スピンドルおよび前記上スピンドルによって前記一のタイヤを挟持するタイヤ挟持工程と、
前記下スピンドルと前記一のタイヤと前記上スピンドルとを一体で回転させ、前記一のタイヤに前記試験を行い、試験データを取得する試験工程と、
前記上スピンドルを前記下スピンドルに対して相対的に上昇させ、当該上スピンドルを前記タイヤから離間させる上スピンドル離間工程と、
前記下スピンドルを前記上スピンドルに対して所定の角度相対回転させる下スピンドル回転工程と、
前記搬送部を前記下スピンドルに対して上下方向に相対移動させ、前記一のタイヤを前記下スピンドルから前記搬送部に受け渡す第2受け渡し工程と、
前記一のタイヤに対して予め設定された試験回数だけ前記試験を行うように、前記第1受け渡し工程、前記タイヤ挟持工程、前記試験工程、前記上スピンドル離間工程、前記下スピンドル回転工程および前記第2受け渡し工程を、順に繰り返す繰り返し工程と、
前記繰り返し工程を経て取得された前記試験回数分の前記試験データに基づいて、前記タイヤ試験機の精度を解析する解析工程と、
を備える、タイヤ試験機の精度検査方法。
【請求項2】
前記第1受け渡し工程の前に、前記上スピンドルと前記下スピンドルとの位相を所定の特定位相に合わせる位相調整工程を更に備え、
前記繰り返し工程は、前記一のタイヤに対して予め設定された試験回数だけ前記試験を行うように、前記位相調整工程、前記第1受け渡し工程、前記タイヤ挟持工程、前記試験工程、前記上スピンドル離間工程、前記下スピンドル回転工程および前記第2受け渡し工程を、順に繰り返すことを含む、請求項1に記載のタイヤ試験機の精度検査方法。
【請求項3】
前記準備工程は、
前記下スピンドルおよび前記上スピンドルのうちの一方のスピンドルとして、前記下スピンドルおよび前記上スピンドルのうちの前記一方のスピンドルとは異なる他方のスピンドルに挿入される挿入部であって当該挿入部の外周面を構成する挿入外周面を含み前記回転中心軸を中心とした円柱状の挿入部を有するものを準備することと、
前記他方のスピンドルとして、前記回転中心軸の軸方向において前記一方のスピンドルの前記挿入部に対向する開口部と当該開口部を通じて前記挿入部を受け入れ可能な内部空間とをそれぞれ画定する円筒状のスピンドル内周面と、前記スピンドル内周面の少なくとも一部を構成し、前記一方のスピンドルを前記軸方向において拘束するように前記内部空間に挿入された前記挿入部をロックすることが可能なロック部とを有するものを準備することと、
を含む、請求項2に記載のタイヤ試験機の精度検査方法。
【請求項4】
前記準備工程は、
前記一方のスピンドルとして、前記挿入部が、
前記回転中心軸の軸方向にそれぞれ延びるとともに前記タイヤの回転方向に互いに間隔をおいて配置され前記挿入外周面の一部をそれぞれ構成する複数の挿入係合部であって、前記回転方向に沿ってそれぞれ延びるとともに前記軸方向に互いに隣接して配置された複数の係合突起をそれぞれ含む複数の挿入係合部と、
前記複数の挿入係合部のうち前記回転方向において互いに隣接する挿入係合部同士の間に前記軸方向に延びるようにそれぞれ配置され前記挿入外周面の一部をそれぞれ構成する複数の挿入凹部であって、前記軸方向から見て前記複数の挿入係合部に対して径方向内側に窪んだ形状をそれぞれ有する複数の挿入凹部と、
を有するものを準備することと、
前記他方のスピンドルとして、前記ロック部が、
前記スピンドル内周面において前記軸方向にそれぞれ延びるとともに前記回転方向に互いに間隔をおいて配置された複数のロック係合部であって、前記回転方向に沿ってそれぞれ延びるとともに前記軸方向に互いに隣接して配置された複数のロック用突起をそれぞれ含む複数のロック係合部と、
前記複数のロック係合部のうち前記回転方向において互いに隣接するロック係合部同士の間に前記軸方向に延びるように前記スピンドル内周面にそれぞれ配置され、前記軸方向から見て前記複数のロック係合部に対して径方向外側に窪んだ形状をそれぞれ有する複数のロック凹部と、
を有するものを準備することと、を含み、
前記位相調整工程は、前記軸方向から見て前記一方のスピンドルの前記複数の挿入係合部が前記他方のスピンドルの前記複数のロック凹部にそれぞれ合致しかつ前記一方のスピンドルの前記複数の挿入凹部が前記他方のスピンドルの前記複数のロック係合部にそれぞれ合致した状態である挿入可能状態となるように、前記上スピンドルと前記下スピンドルとの位相を合わせることを含む、請求項3に記載のタイヤ試験機の精度検査方法。
【請求項5】
前記タイヤ挟持工程は、
前記複数の挿入係合部が前記回転方向において前記複数のロック係合部にそれぞれ対向する位置まで、前記一方のスピンドルの前記挿入部を前記軸方向に沿って前記他方のスピンドルの前記内部空間に挿入する挿入工程と、
前記他方のスピンドルの前記複数のロック係合部の前記複数のロック用突起が前記一方のスピンドルの前記複数の挿入係合部の前記複数の係合突起とそれぞれ係合することで、前記一のタイヤの幅に応じて前記上スピンドルと前記下スピンドルとを前記軸方向において相対的に位置決めするように、前記下スピンドルを前記上スピンドルに対して相対回転させる位置決め工程と、
前記上スピンドル、前記一のタイヤおよび前記下スピンドルが一体で回転可能なように、前記一のタイヤの内部にエアを充填するエア充填工程と、
を含む、請求項4に記載の、タイヤ試験機の精度検査方法。
【請求項6】
前記準備工程は、
前記一のスピンドルとして、前記複数の挿入係合部の前記複数の係合突起が、前記回転方向に進むにつれて前記軸方向における一の方向に傾斜するように前記回転中心軸を中心とした螺旋形状を有しているものを準備することと、
前記他のスピンドルとして、前記複数のロック係合部の前記複数のロック用突起が、前記回転方向に進むにつれて前記一の方向に傾斜するように前記回転中心軸を中心とした螺旋形状であって前記回転方向に沿って前記複数の係合突起と係合可能な螺旋形状を有しているものを準備することと、
を含み、
前記位相調整工程は、前記位置決め工程において前記複数の係合突起の螺旋形状と前記複数のロック用突起の螺旋形状とが互いに係合することで前記一のタイヤの幅に応じて前記上スピンドルと前記下スピンドルとが前記軸方向において相対的に位置決めされるように、前記軸方向から見て前記一方のスピンドルの前記複数の挿入係合部と前記他方のスピンドルの前記複数のロック凹部との位相を合わせることを含む、請求項5に記載のタイヤ試験機の精度検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに所定の試験を行うためのタイヤ試験機の精度検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤのユニフォミティなどを測定するタイヤ試験機が知られている。当該タイヤ試験機は、タイヤを上下方向に延びる回転中心軸回りに回転可能に支持するスピンドルと、スピンドルの回転中心軸と平行な回転中心軸回りに回転可能であり且つタイヤの外周面に当接可能とされた回転ドラムと、回転ドラムに加わる荷重を計測可能なロードセルとを有する。また、スピンドル側にロードセルを有する装置も存在する。
【0003】
スピンドルに装着されたタイヤに空気が充填されタイヤの外周面に回転ドラムが押し付けられると、タイヤがスピンドルによって回転され、ロードセルがタイヤの荷重変動データを計測する。計測された荷重変動データに基づいて、タイヤの均一性(ユニフォミティ)が評価される。スピンドルは、上スピンドルと下スピンドルとを有する。タイヤをスピンドルに装着する際には、タイヤサイズに応じた上リムおよび下リムがタイヤの両側面にそれぞれ装着され、これらのリムを介してスピンドルがタイヤを回転可能に支持する。
【0004】
特許文献1には、上記のようなタイヤ試験機(タイヤユニフォミティ機)の精度検査方法が開示されている。当該方法では、まず、移送装置により一のタイヤをテストゾーンに搬入し、上スピンドルと下スピンドルとを軸方向に接近させて前記タイヤを挟持し、スピンドルを回転させて1回目のタイヤユニフォミティを測定する。その後、スピンドルの回転を停止させ、両スピンドルを離間させ、移送装置によって前記タイヤを回転しないようにテストゾーンから搬出し待機位置に待機させる。次に、両スピンドルを接当させた状態で所定角度だけ回転させスピンドルの位相をずらした後、両スピンドルを離間させ、待機位置の前記タイヤをテストゾーンに再び搬入する。その後、両スピンドルによって前記タイヤを再び挟持し、2回目のタイヤユニフォミティを測定する。このように、1本のタイヤについてn回のタイヤユニフォミティを測定し、m本のタイヤについて同様にn回のタイヤユニフォミティを測定することで、合計n×mのタイヤユニフォミティデータを得て、タイヤ試験機の精度が検証される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6-17854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された技術では、1本のタイヤについてタイヤとスピンドルとの位相を変えて試験を行う度に、タイヤを試験位置から搬出し再び試験位置に搬入する作業や、タイヤの軸位置を試験位置に合わせる作業が発生するため、タイヤ試験機の精度検査に多くの時間を要するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、一のタイヤを試験位置から搬出することなく、スピンドルとタイヤとの位相を変えて試験機の精度検査を行うことが可能なタイヤ試験機の精度検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によって提供されるのは、所定のタイヤ試験位置においてタイヤの回転中心軸が上下方向に延びる姿勢である水平姿勢とされた前記タイヤを前記回転中心軸回りに回転させ前記タイヤに所定の試験を行うタイヤ試験機の精度検査方法である。当該精度検査方法は、準備工程と、搬入工程と、第1受け渡し工程と、タイヤ挟持工程と、試験工程と、上スピンドル離間工程と、下スピンドル回転工程と、第2受け渡し工程と、繰り返し工程と、解析工程とを備える。前記準備工程では、前記タイヤ試験機として、前記水平姿勢とされたタイヤを前記タイヤ試験位置を通るように水平方向に搬送可能な搬送部と、前記タイヤが前記回転中心軸回りに回転可能なように前記タイヤ試験位置において前記水平姿勢とされた前記タイヤの下側部分を支持する下スピンドルと、前記タイヤ試験位置において前記水平姿勢とされた前記タイヤの上側部分を支持する上スピンドルとを有するものを準備する。前記搬入工程では、前記搬送部によって一のタイヤを前記タイヤ試験位置に搬入する。前記第1受け渡し工程では、前記搬送部を前記下スピンドルに対して上下方向に相対移動させ、前記一のタイヤを搬送部から前記下スピンドルに受け渡す。タイヤ挟持工程では、前記上スピンドルを前記下スピンドルに対して相対的に下降させ、前記下スピンドルおよび前記上スピンドルによって前記一のタイヤを挟持する。前記試験工程では、前記下スピンドルと前記一のタイヤと前記上スピンドルとを一体で回転させ、前記一のタイヤに前記試験を行い、試験データを取得する。前記上スピンドル離間工程では、前記上スピンドルを前記下スピンドルに対して相対的に上昇させ、当該上スピンドルを前記タイヤから離間させる。前記下スピンドル回転工程では、前記下スピンドルを前記上スピンドルに対して所定の角度、相対回転させる。前記第2受け渡し工程では、前記搬送部を前記下スピンドルに対して上下方向に相対移動させ、前記一のタイヤを前記下スピンドルから前記搬送部に受け渡す。前記繰り返し工程では、前記一のタイヤに対して予め設定された試験回数だけ前記試験を行うように、前記第1受け渡し工程、前記タイヤ挟持工程、前記試験工程、前記上スピンドル離間工程、前記下スピンドル回転工程および前記第2受け渡し工程を、順に繰り返す。前記解析工程では、前記繰り返し工程を経て取得された前記試験回数分の前記試験データに基づいて、前記タイヤ試験機の精度を解析する。
【0009】
本方法によれば、1本のタイヤについてタイヤと各スピンドルとの位相を変えて試験を行う度に、タイヤをタイヤ試験位置から搬出し再びタイヤ試験位置に搬入する作業や、タイヤの軸位置をタイヤ試験位置に頻繁に合わせる作業が発生しないため、タイヤ試験機の精度検査に要する時間を低減することが可能となる。
【0010】
上記の方法において、前記第1受け渡し工程の前に、前記上スピンドルと前記下スピンドルとの位相を所定の特定位相に合わせる位相調整工程を更に備え、前記繰り返し工程は、前記一のタイヤに対して予め設定された試験回数だけ前記試験を行うように、前記位相調整工程、前記第1受け渡し工程、前記タイヤ挟持工程、前記試験工程、前記上スピンドル離間工程、前記下スピンドル回転工程および前記第2受け渡し工程を、順に繰り返すことを含むものでもよい。
【0011】
本方法によれば、上スピンドルと下スピンドルとの位相を合わせた状態で、各タイヤに対して複数回の試験を行うことが可能になるため、スピンドルとタイヤとの位相に着目した精度ばらつきを解析することができる。また、上下スピンドルの間隔をタイヤの幅に応じて設定するために、上スピンドルと下スピンドルのとの位相を合致させる必要がある場合でも、各スピンドルとタイヤとの位相を異ならせることで、タイヤ試験機の精度検査を行うことができる。
【0012】
上記の方法において、前記準備工程は、前記下スピンドルおよび前記上スピンドルのうちの一方のスピンドルとして、前記下スピンドルおよび前記上スピンドルのうちの前記一方のスピンドルとは異なる他方のスピンドルに挿入される挿入部であって当該挿入部の外周面を構成する挿入外周面を含み前記回転中心軸を中心とした円柱状の挿入部を有するものを準備することと、前記他方のスピンドルとして、前記回転中心軸の軸方向において前記一方のスピンドルの前記挿入部に対向する開口部と当該開口部を通じて前記挿入部を受け入れ可能な内部空間とをそれぞれ画定する円筒状のスピンドル内周面と、前記スピンドル内周面の少なくとも一部を構成し、前記一方のスピンドルを前記軸方向において拘束するように前記内部空間に挿入された前記挿入部をロックすることが可能なロック部とを有するものを準備することと、を含むものでもよい。
【0013】
本方法によれば、他方のスピンドルの内部空間に一方のスピンドルの挿入部を挿入し、ロック部によって挿入部をロックすることで、下スピンドルと上スピンドルとの相対位置を容易に拘束することができる。
【0014】
上記の方法において、前記準備工程は、前記一方のスピンドルとして、前記挿入部が、前記回転中心軸の軸方向にそれぞれ延びるとともに前記タイヤの回転方向に互いに間隔をおいて配置され前記挿入外周面の一部をそれぞれ構成する複数の挿入係合部であって、前記回転方向に沿ってそれぞれ延びるとともに前記軸方向に互いに隣接して配置された複数の係合突起をそれぞれ含む複数の挿入係合部と、前記複数の挿入係合部のうち前記回転方向において互いに隣接する挿入係合部同士の間に前記軸方向に延びるようにそれぞれ配置され前記挿入外周面の一部をそれぞれ構成する複数の挿入凹部であって、前記軸方向から見て前記複数の挿入係合部に対して径方向内側に窪んだ形状をそれぞれ有する複数の挿入凹部と、を有するものを準備することと、前記他方のスピンドルとして、前記ロック部が、前記スピンドル内周面において前記軸方向にそれぞれ延びるとともに前記回転方向に互いに間隔をおいて配置された複数のロック係合部であって、前記回転方向に沿ってそれぞれ延びるとともに前記軸方向に互いに隣接して配置された複数のロック用突起をそれぞれ含む複数のロック係合部と、前記複数のロック係合部のうち前記回転方向において互いに隣接するロック係合部同士の間に前記軸方向に延びるように前記スピンドル内周面にそれぞれ配置され、前記軸方向から見て前記複数のロック係合部に対して径方向外側に窪んだ形状をそれぞれ有する複数のロック凹部と、を有するものを準備することとを含み、前記位相調整工程は、前記軸方向から見て前記一方のスピンドルの前記複数の挿入係合部が前記他方のスピンドルの前記複数のロック凹部にそれぞれ合致しかつ前記一方のスピンドルの前記複数の挿入凹部が前記他方のスピンドルの前記複数のロック係合部にそれぞれ合致した状態である挿入可能状態となるように、前記上スピンドルと前記下スピンドルとの位相を合わせることを含むものでもよい。
【0015】
本方法によれば、一方のスピンドルの挿入部が有する複数の挿入係合部と複数の挿入凹部と、他方のスピンドルのロック部が有する複数のロック係合部と複数のロック凹部とによって、下スピンドルと上スピンドルとの軸方向における相対位置を容易に設定することができる。特に、挿入部の挿入係合部には複数の係合突起が軸方向に隣接して配置される一方、ロック部のロック係合部には複数のロック用突起が軸方向に隣接して配置されているため、互いの突起の係合位置を軸方向において異ならせることで、タイヤの幅に応じて両スピンドルの間隔を容易に変更することが可能となる。
【0016】
上記の方法において、前記タイヤ挟持工程は、前記複数の挿入係合部が前記回転方向において前記複数のロック係合部にそれぞれ対向する位置まで、前記一方のスピンドルの前記挿入部を前記軸方向に沿って前記他方のスピンドルの前記内部空間に挿入する挿入工程と、前記他方のスピンドルの前記複数のロック係合部の前記複数のロック用突起が前記一方のスピンドルの前記複数の挿入係合部の前記複数の係合突起とそれぞれ係合することで、前記一のタイヤの幅に応じて前記上スピンドルと前記下スピンドルとを前記軸方向において相対的に位置決めするように、前記下スピンドルを前記上スピンドルに対して相対回転させる位置決め工程と、前記上スピンドル、前記一のタイヤおよび前記下スピンドルが一体で回転可能なように、前記一のタイヤの内部にエアを充填するエア充填工程と、を含むものでもよい。
【0017】
本方法によれば、一方のスピンドルの挿入部を他方のスピンドルの内部空間に挿入したのち他方のスピンドルを一方のスピンドルに対して相対的に回転させることで上スピンドルと下スピンドルとの間隔を容易に固定することができる。
【0018】
上記の方法において、前記準備工程は、前記一のスピンドルとして、前記複数の挿入係合部の前記複数の係合突起が、前記回転方向に進むにつれて前記軸方向における一の方向に傾斜するように前記回転中心軸を中心とした螺旋形状を有しているものを準備することと、前記他のスピンドルとして、前記複数のロック係合部の前記複数のロック用突起が、前記回転方向に進むにつれて前記一の方向に傾斜するように前記回転中心軸を中心とした螺旋形状であって前記回転方向に沿って前記複数の係合突起と係合可能な螺旋形状を有しているものを準備することと、を含み、前記位相調整工程は、前記位置決め工程において前記複数の係合突起の螺旋形状と前記複数のロック用突起の螺旋形状とが互いに係合することで前記一のタイヤの幅に応じて前記上スピンドルと前記下スピンドルとが前記軸方向において相対的に位置決めされるように、前記軸方向から見て前記一方のスピンドルの前記複数の挿入係合部と前記他方のスピンドルの前記複数のロック凹部との位相を合わせることを含むものでもよい。
【0019】
本方法によれば、位相調整工程において、前記一方のスピンドルの複数の挿入係合部と他方のスピンドルの複数のロック凹部との位相を合わせておくことで、内部空間に対する挿入部の挿入位置とあいまって、下スピンドルと上スピンドルとの間隔をタイヤの幅に応じて精度良く調整することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、一のタイヤを試験位置から搬出することなく、スピンドルとタイヤとの位相を変えて試験機の精度検査を行うことが可能なタイヤ試験機の精度検査方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機の平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機の背面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機の側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機の上スピンドルに上リムが支持された状態の側面図である。
図5】本発明の一変形実施形態に係るタイヤ試験機のロックピースの平面図である。
図6】本発明の一変形実施形態に係るタイヤ試験機のロックピースの側断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機のロックピースの斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機の下スピンドルおよび上スピンドルに下リムおよび上リムがそれぞれ支持された状態の側断面図である。
図9】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機の昇降ユニットの上方斜視図である。
図10図9の昇降ユニットの一部を拡大した拡大斜視図である。
図11】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機の昇降ユニットの下方斜視図である。
図12図11の昇降ユニットの一部を拡大した拡大斜視図である。
図13】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機のブロック図である。
図14】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機のユニフォミティ試験のフローチャートである。
図15】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機のユニフォミティ試験においてタイヤが下スピンドルに支持された様子を示す断面図である。
図16】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機のユニフォミティ試験において上スピンドルが下スピンドルに挿入された様子を示す断面図である。
図17】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機においてタイヤが回転可能に支持された様子を示す断面図である。
図18】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機の精度検査のフローチャートである。
図19】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機の精度検査においてタイヤが下スピンドルから脱離された様子を示す断面図である。
図20】本発明の変形実施形態に係るタイヤ試験機の上スピンドルに上リムが支持された状態の側面図である。
図21】本発明の変形実施形態に係るタイヤ試験機のロックピースの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のタイヤ試験機1の一実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。図1図2および図3は、本実施形態に係るタイヤ試験機1の平面図、背面図および側面図である。なお、以後の各図面では、タイヤ試験機1によって搬送されるタイヤTを基準に、前後、上下および左右の各方向が示されているが、当該方向は本発明に係るタイヤ試験機の精度検査方法、タイヤ試験機の使用態様を限定するものではない。
【0023】
タイヤ試験機1は、本体フレーム1Sと、スピンドル2と、タイヤ搬送機構3と、回転ドラム4と、昇降ユニット50と、マーキングユニット60と、不図示のドラム移動機構およびロードセル4Lと、を備える。タイヤ試験機1は、所定のタイヤ試験位置PにおいてタイヤT(図15参照)のタイヤ回転中心軸CL(回転中心軸)が上下方向に延びる姿勢である水平姿勢とされた前記タイヤTを前記タイヤ回転中心軸CL回りに回転させ前記タイヤTに所定の試験を行う。
【0024】
本体フレーム1Sは、タイヤ試験機1の略中央部に配置されており、その内部にタイヤ試験位置Pが形成されている。また、本体フレーム1Sは、スピンドル2を回転可能に支持する。本体フレーム1Sは、下フレーム100(図3)と、ベースフレーム101(図2)と、アッパーフレーム102(図2)と、を有する。
【0025】
スピンドル2は、タイヤ試験位置Pにおいて上下方向に延びる基準回転中心軸2S回りにタイヤTを回転可能に支持する。スピンドル2は、下スピンドル21(他方のスピンドル、第2スピンドル)と、上スピンドル22(一方のスピンドル、第1スピンドル)と、を有する(図2図3)。下スピンドル21は、下フレーム100に回転可能に支持されている。
【0026】
タイヤ搬送機構3は、平面視でタイヤ試験位置Pを通るように水平な搬送方向D1に沿って配設されており、水平姿勢とされたタイヤTをタイヤ試験位置Pに搬入することが可能である一方、タイヤTをタイヤ試験位置Pから搬送方向D1に沿って搬出することが可能とされている。
【0027】
回転ドラム4は、本体フレーム1Sのベースフレーム101に回転可能に支持されている。回転ドラム4は、タイヤ搬送機構3で搬送されるタイヤTの搬送方向D1とほぼ直交する方向(左右方向)において、タイヤ試験位置P(スピンドル2)に所定の間隔をおいて対向して配置されている。この回転ドラム4は、スピンドル2の基準回転中心軸2Sと平行な方向(上下方向)に延びる回転中心軸回りに回転自在とされた円筒状の部材であり、その外周面にはタイヤTが走行する模擬路面4A(外周面)が形成されている。模擬路面4AがタイヤTの外周面に当接することで、回転ドラム4がタイヤTに従動して回転する。回転ドラム4の側方にはこの回転ドラム4を水平方向に押し動かす不図示のドラム移動機構が設けられており、ドラム移動機構は、回転ドラム4をタイヤTに対して接近および離脱することができる。
【0028】
ロードセル4L(荷重測定器)は、回転ドラム4の回転中心軸の上下延長線上にそれぞれ配置され(図1には上側のみ示している)、回転ドラム4がタイヤTから受ける荷重を測定する。ロードセル4Lは、回転ドラム4を本体フレーム1Sに支持するために用いられており、回転ドラム4の上部と下部とに1つずつ配備され、回転ドラム4に作用する軸垂直方向の荷重を測定する。すなわち、本実施形態に係るタイヤ試験機1は、不図示のボールねじ及びモーターの組合せを用いて、回転ドラム4をスピンドル2に近接させ、回転ドラム4の模擬路面4AにタイヤTを接触させつつタイヤ回転時の荷重変動をロードセル4Lで計測することで、タイヤTの均一性を評価するタイヤユニフォミティマシンとして構成されている。
【0029】
タイヤ搬送機構3は、ベルトコンベア式の構造からなる。タイヤ搬送機構3は、搬入コンベア7と、搬送コンベア8と、搬出コンベア9と、搬入フレーム7Sと、搬出フレーム9Sと、を有する。図1では、タイヤTが後側(上流側)から前側(下流側)に向かって搬送される。
【0030】
搬入コンベア7は、タイヤTをタイヤ試験位置Pに向かって搬送する。搬入コンベア7によって搬送されたタイヤTは、搬送コンベア8の上流側部分に受け渡される。搬送コンベア8は、搬入コンベア7からタイヤTを受け入れるとともに、タイヤTをタイヤ試験位置Pに搬入する。搬送コンベア8は、後記の制御部90によって制御されることで、タイヤTをタイヤ試験位置Pにおいて一時停止させる。その後、タイヤTに所定の試験が施されると、搬送コンベア8は、タイヤTを更に下流側に搬送する。搬送コンベア8によって搬送されたタイヤTは、搬出コンベア9に受け渡される。搬出コンベア9は、搬送コンベア8からタイヤTを受け入れるとともに、タイヤTを更に下流側に搬送する。
【0031】
なお、搬入コンベア7、搬送コンベア8および搬出コンベア9は、タイヤ搬送機構3が有する不図示の駆動部によって周回駆動される。更に、搬送コンベア8は、前記駆動部に含まれる不図示のエアシリンダよって昇降可能とされている。タイヤ試験位置Pに搬入されたタイヤTは、搬送コンベア8の下降によって下スピンドル21に受け渡される。図3では、搬送コンベア8が最も下方の下方位置に移動した状態が示されている。搬送コンベア8が最も上方の上方位置に移動されると、搬送コンベア8は搬入コンベア7および搬出コンベア9と同じ高さに配置され、タイヤTを搬送可能となる。また、搬入コンベア7、搬送コンベア8および搬出コンベア9は、タイヤTの外径よりも狭い間隔で互いに並んで配置された一対のベルトから構成されている。また、上記のように、搬送コンベア8の昇降(上下移動)によって、タイヤTの受け渡しが実行可能なように、搬送コンベア8の一対のベルトの間隔は、下スピンドル21の外径よりも広く設定されている。
【0032】
搬入フレーム7Sは、搬入コンベア7を周回可能に支持しており、搬出フレーム9Sは、搬出コンベア9を周回可能に支持している。また、搬出フレーム9Sは、タイヤ試験位置Pにおける試験結果に応じてタイヤTに所定のマーキングを施すマーキングユニット60(図3)を支持している。
【0033】
昇降ユニット50(図2)は、上スピンドル22を昇降可能かつ回転可能に支持する。昇降ユニット50は、図2のアッパーフレーム102の前後一対のガイドフレーム102Aに沿って上下に移動することが可能である。なお、昇降ユニット50の詳細な構造については後記で説明する。
【0034】
図4は、本実施形態に係るタイヤ試験機1の上スピンドル22に上リム62が支持された状態の側面図である。図5図6および図7は、本実施形態に係るタイヤ試験機1のロックピース250の平面図、側断面図および斜視図である。図8は、本実施形態に係るタイヤ試験機1の下スピンドル21および上スピンドル22に下リム61および上リム62がそれぞれ支持された状態の側断面図である。
【0035】
下スピンドル21は、前記水平姿勢とされたタイヤTのうち下側に位置するビード部である下ビード部に装着される下リム61を保持することが可能な下保持フランジ210A(図8)(下保持部)を有し、前記下リム61を介してタイヤTが基準回転中心軸2S周りに回転可能なようにタイヤTを支持する。
【0036】
上スピンドル22は、前記水平姿勢とされたタイヤTのうち上側に位置するビード部である上ビード部に装着される上リム62を保持することが可能な上保持フランジ221(図8)(上保持部)を有し、前記上リム62を介してタイヤTが基準回転中心軸2S周りに回転可能なようにタイヤTを支持する。
【0037】
なお、タイヤTがタイヤ試験位置Pに配置されると、タイヤTのタイヤ回転中心軸CLがスピンドル2の基準回転中心軸2Sと合致する。タイヤ試験機1は、タイヤ試験位置Pにおいて試験を受けるタイヤTのサイズ(外径、内径、幅)、形状などに応じて、複数種の下リム61および上リム62を有しており、各タイヤTに応じて適切な下リム61および上リム62がタイヤ試験位置Pに配置される。
【0038】
上スピンドル22は、上スピンドル基端部220(図4)と、上保持フランジ221と、下スピンドル21に挿入される挿入部222と、ガイドピース223と、上スピンドル係合部224と、を有する。
【0039】
上スピンドル基端部220は、上スピンドル22の基端部(上端部)を構成する円柱形状を有している。なお、図11に示すように、上スピンドル基端部220は、昇降ユニット50に接続されている。
【0040】
上保持フランジ221は、上スピンドル基端部220の下端に接続されており、リング状の上リム62を保持する機能を有している。
【0041】
挿入部222は、上保持フランジ221に下方から接続されている。挿入部222は、挿入外周面222S(図4)を含み、基準回転中心軸2S(タイヤ回転中心軸CL)を中心とした円柱形状を有している。なお、図8に示すように、挿入部222がリング状の上リム62の内部に挿通されることで、上リム62が上保持フランジ221に到達し保持される。
【0042】
ガイドピース223は、挿入部222の下端部に複数のボルトVによって固定されており(図8)、挿入部222とともに下スピンドル21の後記の内部空間Sに挿入される。
【0043】
上スピンドル係合部224(図4)は、挿入部222の挿入外周面222Sの上下方向における略中央部に配置されている。上スピンドル係合部224は、複数の挿入係合部224Aと、複数の挿入凹部224Bとを有する。
【0044】
複数の挿入係合部224Aは、基準回転中心軸2Sの軸方向にそれぞれ延びるとともにタイヤTの回転方向に互いに間隔をおいて配置され、挿入外周面222Sの一部をそれぞれ構成する。複数の挿入係合部224Aは、前記回転方向に沿ってそれぞれ延びるとともに前記軸方向に互いに隣接して配置された複数の係合突起224ASをそれぞれ含む。複数の挿入係合部224Aにおける複数の係合突起224ASは、上スピンドル22の回転方向(図4の矢印参照)に進むにつれて前記軸方向における一の方向(上方向)に傾斜するように基準回転中心軸2Sを中心とした螺旋形状を有している。
【0045】
一方、複数の挿入凹部224Bは、複数の挿入係合部224Aのうち前記回転方向において互いに隣接する挿入係合部224A同士の間に前記軸方向に延びるようにそれぞれ配置され、挿入外周面222Sの一部を構成する。複数の挿入凹部224Bは、前記軸方向から見て複数の挿入係合部224Aに対して径方向内側に窪んだ形状をそれぞれ有する。なお、上記の複数の係合突起224AS間に形成された空間(溝)の両端部は、隣接する挿入凹部224Bによって画定される空間(くぼみ)にそれぞれ連通している。
【0046】
更に、図8に示すように、挿入部222は、エア導入部225A、複数のエア供給部225Bを有する。エア導入部225Aは、後記のエア供給機構55に連通しており、エア供給機構55からタイヤT内(タイヤ内部空間)に供給するエアを受け入れる。複数のエア供給部225Bは、エア導入部225Aに連通し、エア導入部225Aから放射状に延びている。各エア供給部225Bは、前記タイヤ内部空間に連通し、エアを供給する。なお、エア導入部225Aおよび複数のエア供給部225Bは、タイヤ内部空間にエアが充分に充填された際に、タイヤTの破裂を防止するため、過剰なエアを排出させる排出部としても機能し、これらの周辺には前記エアの排出を制御する不図示の制御弁が配置されている。
【0047】
下スピンドル21(図8)は、円筒状のスピンドル本体210と、スピンドル本体210に固定されたリング状のロックピース250(ロック部)と、を有する。スピンドル本体210は、円筒状の本体内周面210Sを有する。また、ロックピース250は、円筒状のピース内周面250S(図5図8)を有する。本体内周面210Sおよびピース内周面250Sは、円筒状のスピンドル内周面21S(図8)を構成する。スピンドル内周面21Sは、前記軸方向において上スピンドル22の挿入部222に対向する開口部X(図8)と当該開口部Xを通じて挿入部222を受け入れ可能な内部空間Sとをそれぞれ画定する。なお、スピンドル内周面21Sの内径は、挿入部222の外径よりも僅かに大きく設定されている。
【0048】
本実施形態では、スピンドル本体210は、円筒状の下保持フランジ210Aと、円筒状の下スピンドル本体部210Bとを含み、上下二分割構造を有している。図8に示すように、下保持フランジ210Aおよび下スピンドル本体部210Bは、複数のボルトVによって互いに連結されている。下保持フランジ210Aは、下リム61を下方から保持する下保持部として機能する。下保持フランジ210Aの上側部分は、下保持フランジ210Aの下側部分よりも小さな外径を有する。リング形状を有する下リム61の中心に円筒状の下保持フランジ210Aの上側部分が挿通されることで、下保持フランジ210Aの下側部分(フランジ部分)が下リム61を保持する。
【0049】
ロックピース250(図8)は、下保持フランジ210Aと下スピンドル本体部210Bとの間に介在するように配置され、前述のようにそのピース内周面250Sがスピンドル内周面21Sの一部を構成している。ロックピース250は、上スピンドル22を前記軸方向において拘束するように、前記内部空間Sに挿入された上スピンドル22をロックすることが可能とされている。なお、ロックピース250は、スピンドル本体210と一体で基準回転中心軸2S周りに回転する。
【0050】
ロックピース250は、複数のロック係合部250Aと、複数のロック凹部250Bとを有する(図5乃至図7)。なお、本実施形態では、前述の複数の挿入係合部224Aおよび複数の挿入凹部224Bと、複数のロック係合部250Aおよび複数のロック凹部250Bとの数はすべて同じである。
【0051】
複数のロック係合部250Aは、スピンドル内周面21Sにおいて前記軸方向にそれぞれ延びるとともに前記回転方向に互いに間隔をおいて配置されている。複数のロック係合部250Aは、前記回転方向に沿ってそれぞれ延びるとともに前記軸方向に互いに隣接して配置された複数のロック用突起250AS(図6)をそれぞれ含む。複数のロック係合部250Aの複数のロック用突起250ASは、下スピンドル21の回転方向に進むにつれて上方向(前記一の方向)に傾斜するように基準回転中心軸2Sを中心とした螺旋形状であって、前記回転方向に沿って複数の挿入係合部224Aにおける複数の係合突起224ASと係合可能な螺旋形状を有している。換言すれば、上記の複数の係合突起224ASおよび複数のロック用突起250ASは、基準回転中心軸2Sを中心として所定のリードで形成されたねじの一部(ねじノコ歯)からなる。
【0052】
一例として、前記リードが2分の1ピッチであり、複数の挿入凹部224Bおよび複数のロック凹部250Bがそれぞれ周方向において6か所ずつ配置されている場合、複数の挿入係合部224Aと複数のロック係合部250Aとが係合している状態で、下スピンドル21を180度回転させると、下リム61と上リム62との間隔(リム幅)を4分の1ピッチだけ変更することができる。一方、リードが1ピッチであり、複数の挿入凹部224Bおよび複数のロック凹部250Bがそれぞれ周方向において8か所ずつ配置されている場合、複数の挿入係合部224Aと複数のロック係合部250Aとが係合している状態で、下スピンドル21を90度回転させると、下リム61と上リム62との間隔(リム幅)を4分の1ピッチだけ変更することができる。
【0053】
複数のロック凹部250Bは、前記複数のロック係合部250Aのうち前記回転方向において互いに隣接するロック係合部250A同士の間に前記軸方向に延びるように前記スピンドル内周面21Sにそれぞれ配置され、前記軸方向から見て前記複数のロック係合部250Aに対して径方向外側に窪んだ形状をそれぞれ有する(図5)。
【0054】
なお、ロック係合部250Aの内径は、前述の挿入凹部224Bの外径よりも大きくかつ挿入係合部224Aの外径よりも小さく、ロック凹部250Bの内径は、前述の挿入係合部224Aの外径よりも大きく設定されている。これらの大きさの相互関係は、エア供給機構55によりタイヤ内部空間に供給されたエアによって、上スピンドル22および下スピンドル21に生じる大きな軸方向の力に耐えうるように設定される。
【0055】
図9は、本実施形態に係るタイヤ試験機1の昇降ユニット50の上方斜視図であり、図10は、図9の昇降ユニット50の一部を拡大した拡大斜視図である。図11は、本実施形態に係るタイヤ試験機1の昇降ユニット50の下方斜視図であり、図12は、図11の昇降ユニット50の一部を拡大した拡大斜視図である。
【0056】
図9図10を参照して、昇降ユニット50は、昇降ブラケット510と、被ガイドフレーム511と、前後一対の斜めフレーム512と、ベースプレート515と、一対の上スピンドル回転位相センサ516と、前後左右4つのオフセット調整ねじ517と、エア供給機構55と、を有する。また、前述の上スピンドル22は、上スピンドル基端部220(図4)に接続された上スピンドルフランジ227(図10)を更に有する。
【0057】
昇降ブラケット510、被ガイドフレーム511、前後一対の斜めフレーム512は、上スピンドル22を昇降させるフレームを構成する。昇降ブラケット510は、前後および左右方向に延びる矩形形状を有している。昇降ブラケット510の前後方向の中央部には、板状のブラケット中央部510Aが配置されている。被ガイドフレーム511は、昇降ブラケット510の右側の側縁から上方に立設されており、前後および上下方向に延びる矩形形状を有している。被ガイドフレーム511は、アッパーフレーム102の一対のガイドフレーム102Aによって上下に移動(昇降)可能に支持されている。前後一対の斜めフレーム512は、昇降ブラケット510と被ガイドフレーム511とを互いに接続し、昇降ユニット50の剛性を維持している。
【0058】
ベースプレート515は、昇降ブラケット510のブラケット中央部510A上に載置された部材であって、円板状の部分と円筒状の部分(ベースプレートボス部515S)とを有する。ベースプレート515の中心は基準回転中心軸2Sに合致する。なお、図11図12に示すように、ブラケット中央部510Aにはベースプレート515の外径よりも小さな内径を有する円形の開口部が形成されており、当該開口部を通じてベースプレート515の中央部分(ベースプレートボス部515S)が下方に延びるように露出している。
【0059】
上スピンドルフランジ227は、上スピンドル22の挿入部222と一体で基準回転中心軸2S周りに回転可能な部材である。上スピンドルフランジ227は、図10に示すように、ベースプレート515上に載置されており、上スピンドルフランジ227の中心は基準回転中心軸2Sと合致する。上スピンドルフランジ227には、周方向に沿って等間隔に4つの孔部227Aが開口されている。孔部227Aは、上スピンドルフランジ227を上下方向に貫通するように形成されている。一方、前述のベースプレート515には、前記孔部227Aにそれぞれ挿入可能な4つのベースプレートピン(不図示)が上方に突出するように配設されている。
【0060】
4つのベースプレートピンが4つの孔部227Aにそれぞれ挿入されると、上スピンドルフランジ227を含む上スピンドル22の基準回転中心軸2S周りの回転が昇降ブラケット510によって阻止される。一方、上スピンドル22の上スピンドルフランジ227がベースプレート515に対して相対的に上方に移動し、4つのベースプレートピンが4つの孔部227Aからそれぞれ脱離されると、上スピンドルフランジ227を含む上スピンドル22が基準回転中心軸2S周りに自由回転可能とされる。
【0061】
4つのオフセット調整ねじ517は、ベースプレート515の外周面を径方向内側に向かって付勢するようにブラケット中央部510Aに配設されている。各オフセット調整ねじ517の締め込み量を調整することで、上スピンドルフランジ227を含む上スピンドル22のオフセット量を調整することが可能となる。
【0062】
一対の上スピンドル回転位相センサ516(図10)は、上スピンドル22(タイヤT)の回転方向に沿って間隔をおいて配置され、ベースプレート515上に固定されたブラケット516Sに支持されている。一方、前述の上スピンドルフランジ227は、その外周部に配設された被検知部229を有する。被検知部229は、L字状の板金部材であり、上スピンドルフランジ227の外周部近傍において上方に延びる部分を有する。上スピンドルフランジ227が上スピンドル22とともに基準回転中心軸2S周りに回転すると、一対の上スピンドル回転位相センサ516が被検知部229を検知することで、上スピンドルフランジ227の回転および位相を検知することができる。一例として、上スピンドル回転位相センサ516は、検知光を発光する発光部と、前記検知光の反射光を受光する受光部とを含む。
【0063】
エア供給機構55は、不図示の圧縮機から延びており、上スピンドルフランジ227および上スピンドル基端部220の円筒内部を通じて、前述のエア導入部225Aにエアを供給する。すなわち、エア供給機構55は、上スピンドル22および下スピンドル21が上リム62および下リム61を介してタイヤTを支持した状態で、上リム62、タイヤTおよび下リム61によって画定される空間であるタイヤ内部空間にエアを充填することが可能とされている。
【0064】
図11乃至図12を参照して、昇降ユニット50は、昇降検知センサ518と、センサブラケット518Aとを更に有する。また、ベースプレート515のうち一対の上スピンドル回転位相センサ516に隣接する位置には、ベースプレート515が部分的に切り欠かれた形状のベースプレート切欠き部515Aが形成されている。昇降検知センサ518は、ベースプレート切欠き部515A内に配置されるように、センサブラケット518Aによって支持されている。センサブラケット518Aは、その先端部で昇降検知センサ518を支持し、その基端部は、ブラケット中央部510Aの下面部に固定されている。昇降検知センサ518は、上スピンドルフランジ227の下面部を検知可能なセンサであり、上スピンドルフランジ227のベースプレート515に対する相対的な昇降を検知する。なお、他の実施形態において、センサブラケット518Aの基端部は、ベースプレート515に固定されてもよい。この場合、4つのオフセット調整ねじ517によってベースプレート515のオフセット位置が微調整されても、昇降検知センサ518が上スピンドルフランジ227の下面部を安定して検知することができる。
【0065】
図13は、本実施形態に係るタイヤ試験機1のブロック図である。タイヤ試験機1は、制御部90と、複数のタイヤ検知センサ91と、入力部92と、下スピンドル回転駆動部93と、上スピンドル昇降駆動部94と、下スピンドル回転位相センサ95と、を更に備える。
【0066】
複数のタイヤ検知センサ91は、タイヤ搬送機構3によって搬送されるタイヤTの搬送路中にそれぞれ配置されており、タイヤTの搬送位置を検知する。各タイヤ検知センサ91がタイヤTを検知すると、所定の検知信号が制御部90に入力される。
【0067】
入力部92は、タイヤTに対して所定の試験が行われるにあたって、各種の指令情報を制御部90に入力するものであり、作業者によって操作される操作部やディスプレイを含む。
【0068】
下スピンドル回転駆動部93は、下スピンドル21に回転駆動力を入力するものであって、下スピンドル21と上スピンドル22とのロック係合時およびタイヤTに対する試験時に下スピンドル21を基準回転中心軸2S周りに回転させる駆動部である。下スピンドル回転駆動部93は、油圧または電力で駆動する不図示のモーターやギヤを含む。
【0069】
上スピンドル昇降駆動部94は、昇降ユニット50を通じて上スピンドル22を下スピンドル21に対して相対的に昇降させる駆動部である。上スピンドル昇降駆動部94は、油圧または電力で駆動する不図示のモーターやギヤを含む。図9の上側には、上スピンドル昇降駆動部94を構成する軸受513が示されている。軸受513には送りねじが軸支され、不図示の電気モーター、減速機およびエンコーダ等に接続される。本実施形態では、送りねじとしてボールねじが用いられているが、台形ねじといった他の種類のねじであってもよい。また、適宜、カップリング等の機械要素部品が用いられてもよい。更に、電気モーターの代わりに、油圧モーターや油圧シリンダといった油圧による駆動力と、エンコーダやリニアセンサといった測定装置とを組み合わされて、用いられてもよい。
【0070】
下スピンドル回転位相センサ95は、下フレーム100に装着されており、下スピンドル21の回転および位相を検知することができる。このため、下スピンドル21には、下スピンドル回転位相センサ95によって検知される不図示の被検知部が設けられている。
一例として、下スピンドル回転位相センサ95は、検知光を発光する発光部と、前記検知光の反射光を受光する受光部とを含む。
【0071】
制御部90は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成されている。また、制御部90には、前述のタイヤ検知センサ91、上スピンドル回転位相センサ516、昇降検知センサ518、入力部92、下スピンドル回転位相センサ95、タイヤ搬送機構3、下スピンドル回転駆動部93、上スピンドル昇降駆動部94およびエア供給機構55などが電気的に接続されている。制御部90は、前記CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、タイヤ搬送制御部901、下スピンドル回転制御部902、上スピンドル昇降制御部903、エア供給制御部904、記憶部905、精度検査指令部906および判定部907をそれぞれ機能させる。
【0072】
タイヤ搬送制御部901は、タイヤ搬送機構3に備えられた前述の駆動部を制御することで、搬入コンベア7、搬送コンベア8および搬出コンベア9によってタイヤTを搬送する。また、タイヤ搬送制御部901は、搬送コンベア8の昇降動作を制御することで、搬送コンベア8を前述の上方位置と下方位置との間で昇降させることで、タイヤTを搬送コンベア8と下スピンドル21との間で受け渡す。
【0073】
下スピンドル回転制御部902は、下スピンドル回転駆動部93を制御することで、下スピンドル21を基準回転中心軸2S周りに回転させる。下スピンドル21と上スピンドル22とをロックする際には、上スピンドル22の回転が阻止された状態で、下スピンドル回転制御部902が下スピンドル21を回転させる。一方、タイヤTに所定の試験を行う際には、上スピンドル22の回転が許容された状態で、下スピンドル回転制御部902が下スピンドル21と上スピンドル22とを一体で回転させる。
【0074】
上スピンドル昇降制御部903は、上スピンドル昇降駆動部94を制御することで、昇降ユニット50(上スピンドル22)の昇降動作を制御する。
【0075】
エア供給制御部904は、エア供給機構55を制御することで、タイヤTの内部空間にエアを充填する作業を実行する。
【0076】
記憶部905は、タイヤ搬送制御部901、下スピンドル回転制御部902、上スピンドル昇降制御部903およびエア供給制御部904によって参照される各種の制御パラメータなどを記憶している。
【0077】
精度検査指令部906は、後記のタイヤ試験機1の精度検査を実行するために、制御部90内の各機能部に指令信号を入力する。
【0078】
判定部907は、精度検査指令部906が実行する精度検査における各種の判定処理を実行する。
【0079】
<ユニフォミティ試験について>
図14は、本実施形態に係るタイヤ試験機1のユニフォミティ試験のフローチャートである。図15は、タイヤ試験機1のユニフォミティ試験においてタイヤTが下スピンドル21に支持された様子を示す断面図である。図16は、タイヤ試験機1のユニフォミティ試験において上スピンドル22が下スピンドル21に挿入された様子を示す断面図である。図17は、タイヤ試験機1においてタイヤTが下スピンドル21に回転可能に支持された様子を示す断面図である。
【0080】
タイヤTに対するユニフォミティ試験が実行されるにあたって、図15に示すように、予め下リム61および上リム62が下スピンドル21および上スピンドル22にそれぞれ保持され、上スピンドル22が下スピンドル21に対して上方に移動された状態とされる。この際、上スピンドル22の上スピンドルフランジ227では、被検知部229(図10)が一対の上スピンドル回転位相センサ516によって検知された状態であり、4つの孔部227Aにベースプレート515の4つのベースプレートピンがそれぞれ挿入されることで、上スピンドルフランジ227を含む上スピンドル22は基準回転中心軸2S周りの特定の回転位置においてその回転が阻止されている。
【0081】
一方、下スピンドル回転制御部902は、上スピンドル22が上記の特定の回転位置に配置されていることに対応して、前記軸方向から見て上スピンドル22の複数の挿入係合部224Aが下スピンドル21の複数のロック凹部250Bにそれぞれ合致しかつ上スピンドル22の複数の挿入凹部224Bが下スピンドル21の複数のロック係合部250Aにそれぞれ合致した状態である挿入可能状態となるように、予め下スピンドル21の回転位置を調整している。この際、下スピンドル回転位相センサ95が下スピンドル21の被検知部を検知することで、下スピンドル21の回転位置を調整することができる。
【0082】
搬入コンベア7(図1)の上流側端部にタイヤTが載置されると、タイヤ搬送制御部901が搬入コンベア7および搬送コンベア8の周回を制御することによってタイヤTがタイヤ試験位置Pに搬入される(図14のステップS1)。この際、タイヤTのタイヤ回転中心軸CLがスピンドル2の基準回転中心軸2Sと合致するように、搬送コンベア8の周回が停止される。その後、タイヤ搬送制御部901が搬送コンベア8を下降させると、搬送コンベア8から下スピンドル21にタイヤTが受け渡される(図14のステップS2)。タイヤTは、下スピンドル21に保持された下リム61上に載置される(図15)。
【0083】
次に、上スピンドル昇降制御部903が、昇降ユニット50とともに上スピンドル22を下降させることで(図14のステップS3)、上保持フランジ221に保持された上リム62と下保持フランジ210Aに保持された下リム61との間隔がタイヤTの幅に応じて設定された所定の間隔となるように、上スピンドル22の挿入部222を下スピンドル21の内部空間Sの特定位置まで挿入する(図16)。
【0084】
なお、本実施形態では、図4に示すように、上スピンドル係合部224の挿入係合部224Aの係合突起224ASは、ロックピース250のロック係合部250Aのロック用突起250AS(図6)よりも多くの段数を有しており、最大で16段階のタイヤTの幅に対応可能とされている。また、前述のように、複数の係合突起224ASおよび複数のロック用突起250ASが、基準回転中心軸2Sを中心として所定のリードで形成されたねじの一部(ねじノコ歯)からなることによって、下リム61と上リム62との間隔(リム幅)を4分の1ピッチで更に変更することができる。
【0085】
また、図16に示される状態では、複数の挿入係合部224A(図4)が、基準回転中心軸2Sを中心とする径方向において複数のロック凹部250B(図5)にそれぞれ対向している。
【0086】
次に、下スピンドル回転制御部902が下スピンドル21を図4の矢印方向に回転させることで、複数の挿入係合部224Aが基準回転中心軸2Sを中心とする径方向において複数のロック係合部250Aに対向(嵌合)させ、下スピンドル21と上スピンドル22とをロックする(図14のステップS4)(スピンドルロック)。具体的に、下スピンドル回転制御部902が上スピンドル22を基準回転中心軸2S周りに30度回転させる。この結果、下スピンドル21の複数のロック係合部250Aの複数のロック用突起250ASが、軸方向に互いに隣接するロック用突起250ASの間の空間に上スピンドル22の複数の挿入係合部224Aの複数の係合突起224ASを前記回転方向に沿ってそれぞれ受け入れ、複数の係合突起224ASとそれぞれ係合する。この係合によって、上スピンドル22の上保持フランジ221と下スピンドル21の下保持フランジ210Aとを前記軸方向において相対的に位置決めすることが可能となり、下リム61と上リム62との間隔が固定される。
【0087】
なお、このように下リム61と上リム62との間隔が試験の対象となるタイヤTの幅に応じて設定された状態では、図16に示すように、タイヤTの上面部と上リム62の外周部に形成された上リムフランジ62F(図4参照)との間にはわずかな隙間Kが形成されている。
【0088】
次に、エア供給制御部904がエア供給機構55を制御し、エアの充填作業を実施する(図14のステップS5)(タイヤインフレーション)。具体的に、エア供給制御部904は、上スピンドル22および下スピンドル21が上リム62および下リム61を介してタイヤTを支持した状態で、上リム62、タイヤTおよび下リム61によって画定される空間であるタイヤ内部空間にエア供給機構55を通じてエアを充填する。この結果、図17に示すように、タイヤTが膨らみ、前述の隙間K(図16)が埋められる。この際、タイヤTの上ビード部および下ビード部は、前記エアによって上リム62および下リム61にそれぞれ密着する。なお、タイヤ内部空間の圧力は不図示の圧力計によって検出され、所定の設定空気圧に至るまで充填作業が行われる。
【0089】
次に、上スピンドル昇降制御部903が上スピンドル昇降駆動部94を制御して、昇降ユニット50を図17の下降量H(一例として25mm)だけ下降させる(図14のステップS6)。上スピンドルフランジ227を含む上スピンドル22の上下方向の位置は、上スピンドル係合部224とロックピース250との係合によって阻止されているため、上記のように昇降ユニット50が下降すると、図10において、上スピンドルフランジ227がベースプレート515に対して相対的に上昇する(浮き上がる)。この際、上スピンドルフランジ227の下面部が昇降検知センサ518から上方に離間し、昇降検知センサ518の出力信号が変化することで、昇降ユニット50が下降量Hだけ下降したことが検出される。この結果、上スピンドルフランジ227の4つの孔部227Aが、ベースプレート515の4つのベースプレートピンから脱離し、上スピンドルフランジ227を含む上スピンドル22が基準回転中心軸2S周りに自由回転可能となる(上スピンドル22の開放)。
【0090】
図17に示す状態で、下スピンドル回転制御部902が下スピンドル21を回転させると、下リム61および上リム62に挟持されたタイヤTが、下スピンドル21および上スピンドル22と一体で基準回転中心軸2S周りに回転する。そして、前述のように回転ドラム4がタイヤTに押圧されることで、タイヤTのユニフォミティ試験を実行することができる(図14のステップS7)。なお、この際、前記タイヤ内部空間に充填されたエアによって上スピンドル22および下スピンドル21には、上リム62および下リム61を介して大きな軸方向の力が付与される。この結果、複数の係合突起224ASと複数のロック用突起250ASとの間に付与される接触面圧によって下スピンドル21と上スピンドル22との基準回転中心軸2S周りの相対回転が抑止された状態で、下スピンドル21と上スピンドル22とが一体で回転することが可能となる。なお、タイヤTに対する試験実行中は、一対の上スピンドル回転位相センサ516の検知信号は無視される。
【0091】
タイヤTに対する試験終了後は、上記とは逆の手順で実行される。すなわち、昇降ユニット50が上スピンドル22に対して相対的に上昇し、上スピンドル22の回転が拘束されると(図14のステップS8)、エア供給制御部904がエア供給機構55を制御し、タイヤ内部空間に充填されたエアが開放される(ステップS9)。また、上スピンドル22の回転が阻止された状態で、下スピンドル回転制御部902が下スピンドル21を図4の矢印の反対方向に回転させることで、複数の挿入係合部224Aが複数のロック係合部250Aから周方向に脱離し、下スピンドル21と上スピンドル22とのロックが解除される(図14のステップS10)。また、昇降ユニット50によって上スピンドル22が上昇され、挿入部222が下スピンドル21の内部空間Sから脱離する(図14のステップS11)。その後、搬送コンベア8が上昇し、タイヤTが下スピンドル21から搬送コンベア8に受け渡され再び搬送コンベア8上に載置される(図14のステップS12)。そして、タイヤTが搬送コンベア8および搬出コンベア9によってタイヤ試験位置Pから搬出され(図14のステップS13)、マーキングユニット60がタイヤTに所定のマーキングを付与する。この結果、タイヤTに対するユニフォミティ試験が終了する。
【0092】
なお、前述のように被検知部229の先端部は上下方向に延びる形状を有している(図13)。このため、上スピンドルフランジ227がベースプレート515に対して浮き上がった状態でも、一対の上スピンドル回転位相センサ516が被検知部229を検知することができる。この構成によって、上記のようにタイヤTに対する試験が終了したのち、上スピンドルフランジ227を含む上スピンドル22を再び特定の回転位置に配置する際に、一対の上スピンドル回転位相センサ516が被検知部229を検知することができる。したがって、一対の上スピンドル回転位相センサ516が被検知部229を検知した状態で、上スピンドル昇降制御部903が上スピンドル昇降駆動部94を制御して、昇降ユニット50を前記下降量Hだけ上昇させると、上スピンドルフランジ227の4つの孔部227Aに、ベースプレート515の4つのベースプレートピンが嵌合し、上スピンドルフランジ227を含む上スピンドル22の基準回転中心軸2S周りの回転が阻止される。この状態で、下スピンドル回転制御部902が下スピンドル回転駆動部93を制御して、下スピンドル21を30度回転させた後、上スピンドル22を下スピンドル21に対して上昇させ上スピンドル22を内部空間Sから抜き出すことが可能となる。
【0093】
<タイヤ試験機の精度検査について>
上記のようなタイヤ試験機1では、定期的に精度検査が実行される。本実施形態では、10本(M=10)のタイヤTのそれぞれに対して、10回(N=10)ずつユニフォミティ試験を順に実行し、最終的にN×M=100個のデータが取得される。そして、この100個のデータから公知の統計的解析手法に基づいて、データのばらつき範囲が算出され、当該ばらつき範囲が所定の閾値以下であることをもって、測定精度の確認が行われる。本実施形態では、一のタイヤTについて、タイヤTと下スピンドル21および上スピンドル22との回転位相を変化させながら10回のユニフォミティ試験が実行される。この際、10回の試験中に、一のタイヤTの前後方向における位置がタイヤ試験位置Pに維持されることで、上記の精度検査を短時間で実行することが可能となる。以下に、このような本実施形態における精度検査について詳述する。
【0094】
図18は、本実施形態に係るタイヤ試験機1の精度検査のフローチャートである。図19は、タイヤ試験機1の精度検査においてタイヤTが下スピンドル21から脱離された様子を示す断面図である。入力部92(図13)には、作業者が精度検査の実行を指令するための指令ボタンが配置されている。作業者が当該指令ボタンを押すと、通常のユニフォミティ試験から精度試験に切り換えられ、精度検査指令部906が精度試験の実行を開始する。
【0095】
精度試験が開始されると、1本目のタイヤTが、前述のユニフォミティ試験と同様に搬入コンベア7および搬送コンベア8によって、タイヤ試験位置Pに搬入される(図18のステップS21)。次に、下スピンドル回転制御部902が下スピンドル回転位相センサ95の検知結果を参照しながら、下スピンドル21の位相(回転位置)を上スピンドル22の位相に合わせるように、下スピンドル21を回転させる(ステップS22)。この際、タイヤTは、搬送コンベア8上に配置されているため、回転しない。
【0096】
次に、タイヤ搬送制御部901が搬送コンベア8を下降させ、タイヤTが搬送コンベア8から下スピンドル21に受け渡される(図18のステップS23)。その後、ユニフォミティ試験のための試験前動作が実行される(ステップS24)。なお、当該試験前動作は、図14のステップS3からステップS6までの動作と同様である。次に、図14のステップS7と同様に、1本目のタイヤTに対する1回目のユニフォミティ試験が実行される(ステップS25)。次に、試験後動作が実行される。なお、当該試験後動作は、図14のステップS8からステップS11までの動作と同様である。試験後動作が終了すると、上スピンドル22は、タイヤTの上方に離間した位置に配置されている一方、タイヤTは、下リム61を介して下スピンドル21に支持されている。
【0097】
次に、精度検査指令部906が下スピンドル回転制御部902に対して、下スピンドル21の回転指令信号を入力する。この結果、下スピンドル回転制御部902が下スピンドル回転駆動部93を制御して、下スピンドル21を基準回転中心軸2S回りに36度回転させる(図18のステップS27)。なお、この際の下スピンドル21の回転方向は、ユニフォミティ試験時の下スピンドル21の回転方向でも良いし、その反対方向でも良い。ただし、一のタイヤTについて実行される精度検査中、ステップS27における下スピンドル21の回転方向は同じに設定される。また、上記では、下スピンドル21が36度回転される態様にて示したが、下スピンドル21は他の角度分だけ回転されてもよい。この場合、N回(10回)の試験において、下スピンドル21とタイヤTとの位相が重複しないように上記の角度が設定されることが望ましい。なお、ステップS27では、下スピンドル21に支持されているタイヤTも下スピンドル21と一体で回転する。
【0098】
次に、タイヤ搬送制御部901がタイヤ搬送機構3を制御し、搬送コンベア8を上昇させる(図18のステップS28)。この結果、タイヤTが下スピンドル21から搬送コンベア8に受け渡される(図19)。
【0099】
次に、判定部907(図13)が、前記一のタイヤTに対する現在の試験回数Nを判定する(図18のステップS29)。ここで、現在の試験回数N<10の場合(ステップS29でNO)、ステップS22以降の処理が繰り返される。一方、10≦Nの場合(ステップS29でYES)、ステップS28でタイヤTを支持している搬送コンベア8が、タイヤTをタイヤ試験位置Pから搬出する(ステップS30)。
【0100】
次に、判定部907が、現在のタイヤ本数Mを判定する(図18のステップS31)。ここで、M<10の場合(ステップS31でNO)、新たなタイヤTについて、ステップS21以降の処理が実行される。一方、10≦Mの場合(ステップS31でYES)、10本のタイヤTに対する精度検査がすべて終了し、前述のように、ばらつき範囲が解析される。
【0101】
なお、一のタイヤTについてステップS29で判定部907がNOと判定した場合、次にステップS22において、下スピンドル21の位相を上スピンドル22の位相に合わせるように、下スピンドル回転制御部902が下スピンドル21を回転させる。本実施形態では、前述のように、上スピンドル22の挿入部222が下スピンドル21の内部空間Sに挿入可能なように、特に、複数の上スピンドル係合部224が複数のロック凹部250Bに嵌合するように、下スピンドル21の位相が調整される。
【0102】
複数の係合突起224ASおよび複数のロック用突起250ASは、基準回転中心軸2Sを中心として所定のリードで形成されたねじの一部(ねじノコ歯)からなる。このため、タイヤTの幅に応じて下リム61と上リム62との間隔を設定するためには、複数の上スピンドル係合部224と複数のロック凹部250Bとの周方向における位置は、一義的に決定される。したがって、ステップS22において、下スピンドル回転制御部902が下スピンドル21の位相を上スピンドル22の位相に合致させると、10回の試験において、下スピンドル21と上スピンドル22とは常に同じ回転位置でロックされることになる。
【0103】
一方、各回の試験後、ステップS27において、下スピンドル21およびタイヤTが上スピンドル22に対して相対的に36度回転したのち、次のステップS22で下スピンドル21の位相が上スピンドル22の位相に合致するため、試験毎に、下スピンドル21および上スピンドル22とタイヤTとの相対的な回転位置(位相)が異なるように設定される。したがって、10回の試験を通じて、スピンドル2に対してタイヤTの位相を36度ずつ変化させながら、10個の試験データを取得することができる。この結果、10本のタイヤTのそれぞれについて、タイヤ試験機1におけるばらつきデータを効率的に取得することができる。
【0104】
なお、図18において、2回目以降の試験におけるステップS22は、本発明の位相調整工程に相当する。ここで、前回の試験時のステップS27において一の回転方向に下スピンドル21を所定の角度(たとえば36度)回転させた場合(順回転)、次のステップS22では、下スピンドル21および上スピンドル22の位相を戻すために、下スピンドル21を前記所定の角度だけ逆回転させればよい。また、前記位相を戻すために、下スピンドル21を360度から前記所定の角度を差し引いた角度だけ順回転させてもよい。なお、前記所定の角度が180度未満の場合には、サイクルタイムを低減するために、上記の逆回転の態様が採用されることが好ましい。
【0105】
<タイヤ試験機1の精度検査方法>
上記のように説明したタイヤ試験機1における精度検査には、以下のような精度検査方法が含まれている。当該精度検査方法は、所定のタイヤ試験位置PにおいてタイヤTの回転中心軸CLが上下方向に延びる姿勢である水平姿勢とされた前記タイヤTを回転中心軸CL回りに回転させ、タイヤTに所定の試験を行うタイヤ試験機1の精度検査方法である。当該精度検査方法は、少なくとも、準備工程と、搬入工程と、第1受け渡し工程と、タイヤ挟持工程と、試験工程と、上スピンドル離間工程と、下スピンドル回転工程と、第2受け渡し工程と、繰り返し工程と、解析工程とを含む。
【0106】
前記準備工程では、タイヤ試験機1として、タイヤTが回転中心軸CL回りに回転可能なように前記水平姿勢とされたタイヤTの下側部分を支持する下スピンドル21と、タイヤTが回転中心軸CL回りに回転可能なように前記水平姿勢とされたタイヤTの上側部分を支持する上スピンドル22と、前記水平姿勢とされたタイヤTをタイヤ試験位置Pを通るように水平方向に搬送可能な搬送コンベア8(タイヤ搬送機構3)と、を有するものを準備する。
【0107】
前記搬入工程では、搬送コンベア8によって一のタイヤTをタイヤ試験位置Pに搬入する。
【0108】
前記第1受け渡し工程では、搬送コンベア8を下スピンドル21に対して上下方向に相対移動させ、前記一のタイヤTを搬送コンベア8から下スピンドル21に受け渡す。
【0109】
タイヤ挟持工程では、上スピンドル22を下スピンドル21に対して相対的に下降させ、下スピンドル21および上スピンドル22によって前記一のタイヤTを挟持する。
【0110】
前記試験工程では、下スピンドル21と前記一のタイヤTと上スピンドル22とを一体で回転させ、前記一のタイヤTに前記試験を行い、試験データを取得する。
【0111】
前記上スピンドル離間工程では、上スピンドル22を下スピンドル21に対して相対的に上昇させ、当該上スピンドル22をタイヤTから離間させる。
【0112】
前記下スピンドル回転工程では、下スピンドル21を上スピンドル22に対して所定の角度、相対回転させる。
【0113】
前記第2受け渡し工程では、搬送コンベア8を下スピンドル21に対して上下方向に相対移動させ、前記一のタイヤTを下スピンドル21から搬送コンベア8に受け渡す。
【0114】
前記繰り返し工程では、前記一のタイヤTに対して予め設定された試験回数だけ前記試験を行うように、前記第1受け渡し工程、前記タイヤ挟持工程、前記試験工程、前記上スピンドル離間工程、前記下スピンドル回転工程および前記第2受け渡し工程を、順に繰り返す。
【0115】
そして、前記解析工程では、前記繰り返し工程を経て取得された前記試験回数分の前記試験データに基づいて、タイヤ試験機1の精度を解析する。
【0116】
このような精度検査方法によれば、1本のタイヤTについてタイヤTとスピンドル2との位相を変えて試験を行う度に、タイヤTをタイヤ試験位置Pから搬出し再びタイヤ試験位置Pに搬入する作業や、タイヤTの軸位置をタイヤ試験位置Pに頻繁に合わせる作業が発生しないため、タイヤ試験機1の精度検査に要する時間を低減することが可能となる。
【0117】
また、本実施形態では、前記精度検査方法は、前記第1受け渡し工程の前に、上スピンドル22と下スピンドル21との位相を所定の特定位相に合わせる位相調整工程を更に備える。前記繰り返し工程は、前記一のタイヤTに対して予め設定された試験回数だけ前記試験を行うように、前記位相調整工程、前記第1受け渡し工程、前記タイヤ挟持工程、前記試験工程、前記上スピンドル離間工程、前記下スピンドル回転工程および前記第2受け渡し工程を、順に繰り返すことを含む。
【0118】
このような精度検査方法によれば、上スピンドル22と下スピンドル21との位相を合わせた状態で、各タイヤTに対して複数回の試験を行うことが可能になるため、スピンドル2とタイヤTとの位相に着目した精度ばらつきを解析することができる。また、上下リムの間隔をタイヤTの幅に応じて設定するために、上スピンドル22と下スピンドル21のとの位相を合致させる必要がある場合でも、スピンドル2とタイヤTとの位相を異ならせることで、タイヤ試験機1の精度検査を行うことができる。
【0119】
また、本実施形態では、前記準備工程は、第1準備工程と、第2準備工程とを含む。第1準備工程では、下スピンドル21および上スピンドル22のうちの一方のスピンドルとして、下スピンドル21および上スピンドル22のうちの前記一方のスピンドルとは異なる他方のスピンドルに挿入される挿入部222であって、当該挿入部222の外周面を構成する挿入外周面222Sを含み回転中心軸CLを中心とした円柱状の挿入部222を有するものを準備する。また、第2準備工程では、前記他方のスピンドルとして、前記軸方向において前記一方のスピンドルの挿入部222に対向する開口部Xと当該開口部Xを通じて挿入部222を受け入れ可能な内部空間Sとをそれぞれ画定する円筒状のスピンドル内周面21Sと、スピンドル内周面21Sの少なくとも一部を構成し、前記一方のスピンドルを軸方向において拘束するように内部空間Sに挿入された挿入部222をロックすることが可能なロックピース250(ロック部)とを有するものを準備する。
【0120】
このような精度検査方法によれば、他方のスピンドルの内部空間Sに一方のスピンドルの挿入部222を挿入し、ロックピース250によって挿入部222をロックすることで、下スピンドル21と上スピンドル22との相対位置を容易に拘束することができる。
【0121】
また、本実施形態では、前記準備工程の第1準備工程は、前記一方のスピンドルとして、挿入部222が複数の挿入係合部224Aと複数の挿入凹部224Bとを有するものを準備することを含む。複数の挿入係合部224Aは、回転中心軸CLの軸方向にそれぞれ延びるとともにタイヤTの回転方向に互いに間隔をおいて配置され挿入外周面222Sの一部をそれぞれ構成する複数の挿入係合部224Aであって、前記回転方向に沿ってそれぞれ延びるとともに前記軸方向に互いに隣接して配置された複数の係合突起224ASをそれぞれ含む。また、複数の挿入凹部224Bは、前記複数の挿入係合部224Aのうち前記回転方向において互いに隣接する挿入係合部224A同士の間に前記軸方向に延びるようにそれぞれ配置され挿入外周面222Sの一部をそれぞれ構成する複数の挿入凹部224Bであって、軸方向から見て複数の挿入係合部224Aに対して径方向内側に窪んだ形状をそれぞれ有する。
【0122】
また、前記準備工程の第2準備工程では、前記他方のスピンドルとして、ロックピース250が複数のロック係合部250Aと複数のロック凹部250Bとを有するものを準備する。複数のロック係合部250Aは、スピンドル内周面21Sにおいて軸方向にそれぞれ延びるとともに前記回転方向に互いに間隔をおいて配置された複数のロック係合部250Aであって、前記回転方向に沿ってそれぞれ延びるとともに前記軸方向に互いに隣接して配置された複数のロック用突起250ASをそれぞれ含む。複数のロック凹部250Bは、複数のロック係合部250Aのうち前記回転方向において互いに隣接するロック係合部250A同士の間に前記軸方向に延びるようにスピンドル内周面21Sにそれぞれ配置され、前記軸方向から見て前記複数のロック係合部250Aに対して径方向外側に窪んだ形状をそれぞれ有する。
【0123】
また、前記位相調整工程は、前記軸方向から見て前記一方のスピンドルの複数の挿入係合部224Aが前記他方のスピンドルの前記複数のロック凹部250Bにそれぞれ合致しかつ前記一方のスピンドルの前記複数の挿入凹部224Bが前記他方のスピンドルの前記複数のロック係合部250Aにそれぞれ合致した状態である挿入可能状態となるように、上スピンドル22と下スピンドル21との位相を合わせることを含む。
【0124】
このような精度検査方法によれば、一方のスピンドルの挿入部222が有する複数の挿入係合部224Aと複数の挿入凹部224Bと、他方のスピンドルのロックピース250が有する複数のロック係合部250Aと複数のロック凹部250Bとによって、下スピンドル21と上スピンドル22との軸方向における相対位置を容易に設定することができる。特に、挿入部222の挿入係合部224Aには複数の係合突起224ASが軸方向に隣接して配置される一方、ロックピース250のロック係合部250Aには複数のロック用突起250ASが軸方向に隣接して配置されているため、互いの突起の係合位置を軸方向において異ならせることで、タイヤTの幅に応じて上リム62と下リム61との間隔を容易に変更することが可能となる。
【0125】
また、本実施形態では、前記タイヤ挟持工程は、挿入工程と、位置決め工程と、エア充填工程とを含む。挿入工程では、複数の挿入係合部224Aが前記回転方向において前記複数のロック係合部250Aにそれぞれ対向する位置まで、前記一方のスピンドルの前記挿入部222を前記軸方向に沿って前記他方のスピンドルの前記内部空間Sに挿入する。
【0126】
前記位置決め工程では、前記他方のスピンドルの複数のロック係合部250Aの複数のロック用突起250ASが前記一方のスピンドルの複数の挿入係合部224Aの複数の係合突起224ASとそれぞれ係合することで、前記一のタイヤTの幅に応じて上スピンドル22と下スピンドル21とを前記軸方向において相対的に位置決めするように、下スピンドル21を上スピンドル22に対して相対回転させる。また、エア充填工程では、上スピンドル22、前記一のタイヤTおよび下スピンドル21が一体で回転可能なように、前記一のタイヤTの内部にエアを充填する。
【0127】
このような精度検査方法によれば、上スピンドル22の挿入部222を下スピンドル21の内部空間Sに挿入したのち下スピンドル21を上スピンドル22に対して相対的に回転させることで上スピンドル22と下スピンドル21との間隔を容易に固定することができる。
【0128】
また、本実施形態では、前記準備工程は、前記一のスピンドルとして、複数の挿入係合部224Aの複数の係合突起224ASが、前記回転方向に進むにつれて軸方向における一の方向に傾斜するように回転中心軸CLを中心とした螺旋形状を有しているものを準備することと、前記他のスピンドルとして、複数のロック係合部250Aの複数のロック用突起250ASが、前記回転方向に進むにつれて前記一の方向に傾斜するように回転中心軸CLを中心とした螺旋形状であって前記回転方向に沿って複数の係合突起224ASと係合可能な螺旋形状を有しているものを準備することとを含む。また、前記位相調整工程は、前記位置決め工程において複数の係合突起224ASの螺旋形状と複数のロック用突起250ASの螺旋形状とが互いに係合することで前記一のタイヤTの幅に応じて上スピンドル22と下スピンドル21とが前記軸方向において相対的に位置決めされるように、前記軸方向から見て前記一方のスピンドルの複数の挿入係合部224Aと他方のスピンドルの複数のロック凹部250Bとの位相を合わせることを含む。
【0129】
このような精度検査方法によれば、位相調整工程において、前記一方のスピンドルの複数の挿入係合部224Aと他方のスピンドルの複数のロック凹部250Bとの位相を合わせておくことで、内部空間Sに対する挿入部222の挿入位置とあいまって、下スピンドル21と上スピンドル22との間隔をタイヤTの幅に応じて精度良く調整することができる。
【0130】
また、本実施形態では、下スピンドル回転駆動部93は、前記タイヤ内部空間に充填されたエアによって上リム62および下リム61を介して複数の係合突起224ASと複数のロック用突起250ASとの間に付与される接触面圧によって下スピンドル21と上スピンドル22との基準回転中心軸2S周りの相対回転が抑止された状態で、下スピンドル21と上スピンドル22とを一体で回転させる。
【0131】
このような構成によれば、上スピンドル22と下スピンドル21とをロックさせることが可能な下スピンドル回転駆動部93の駆動力を利用して、上スピンドル22と下スピンドル21とを一体で回転させタイヤTに対して所定の試験を行うことが可能となる。
【0132】
また、本実施形態では、複数のロック係合部250Aおよび複数のロック凹部250Bは、ピース内周面250Sにそれぞれ形成されている。
【0133】
このような構成によれば、複数のロック係合部250Aおよび複数のロック凹部250Bがロックピース250に形成されているため、スピンドル本体210の本体内周面210Sにロック用突起250ASを設ける必要がなく、スピンドル本体210の加工コストを低減することができる。
【0134】
更に、本実施形態では、基準回転中心軸2Sを中心としたリング形状を有する単一のロックピース250が備えられており、複数のロック係合部250Aおよび複数のロック凹部250Bは、前記単一のロックピース250のピース内周面250Sにそれぞれ形成されている。
【0135】
このような構成によれば、ロックピース250が複数の部材から構成される場合と比較して、複数のロック用突起250ASの位置精度を向上させることが可能となる。
【0136】
また、本実施形態では、下スピンドル21に備えられたロックピース250に対して、上スピンドル22の挿入部222を相対的に回転させることで、下スピンドル21と上スピンドル22とのロックおよび当該ロックの解除を行うことができる。この際、ロックピース250は、互いに分離可能な下保持フランジ210Aと下スピンドル本体部210Bとの間に配置されているため、ロックピース250の上面部および下面部には、それぞれリング状のシール部材J(図8)が配置されているが、ロックピース250を駆動する駆動機構が下スピンドル21のスピンドル本体210を径方向に貫通するように配置される他の技術と比較して、シール部材Jの数および構造を簡易にすることが可能となる。なお、ロックピース250の装着後に下保持フランジ210Aと下スピンドル本体部210Bとを完全に接合する場合には、上記のシール部材Jを省略することも可能である。また、ロックピース250と挿入部222との相対的な回転によって、下スピンドル21と上スピンドル22とのロックおよび当該ロックの解除を行うため、上記のような他の技術と比較して、タイヤ試験機1の部品点数を少なくすることが可能でありタイヤ試験機1の故障を低減することが可能となる。
【0137】
また、本実施形態では、前述のように、上記の複数の係合突起224ASおよび複数のロック用突起250ASは、基準回転中心軸2Sを中心として所定のリードで形成されたねじの一部(ねじノコ歯)からなる。
【0138】
このため、挿入部222の上スピンドル係合部224とロックピース250との軸方向における相対位置だけではなく、互いの周方向における相対位置(回転位置)に応じても、下リム61と上リム62との間隔を調整することができるため、細かいリム幅の設定が可能となる。なお、上記のねじ構造では、複数の挿入係合部224Aおよび複数のロック係合部250Aがそれぞれ一つの連続した仮想螺旋形状に沿って配置されてもよいし、軸方向に沿って互いに間隔をおいて配置される複数の仮想螺旋形状に沿って配置されてもよい。
【0139】
以上、本発明の一実施形態に係るタイヤ試験機1の精度検査方法について説明したが、本発明はこれらの形態に限定されるものではなく、以下のような変形実施形態が可能である。
【0140】
(1)上記の実施形態では、上スピンドル係合部224の挿入係合部224Aに形成された複数の係合突起224ASおよびロックピース250のロック係合部250Aに形成された複数のロック用突起250ASは、基準回転中心軸2Sを中心として所定のリードで形成されたねじの一部(ねじノコ歯)からなる態様に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図20は、本発明の変形実施形態に係るタイヤ試験機の上スピンドル22に上リム62が支持された状態の側面図である。図21は、本変形実施形態に係るタイヤ試験機のロックピース250Mの側断面図である。
【0141】
本変形実施形態では、複数の係合突起224ASは、前記軸方向と直交する方向(水平方向)に延びるように配置されている。具体的に、上スピンドル係合部224の挿入係合部224Aに形成された係合突起224ASおよびロックピース250のロック係合部250Aに形成されたロック用突起250ASがいずれも基準回転中心軸2Sと直交する方向に延びている(通常ノコ歯)。
【0142】
このような構成では、先の実施形態のように、上スピンドル係合部224とロックピース250との互いの周方向における相対位置(回転位置)に応じて、下リム61と上リム62との間隔を調整することはできないが、互いの軸方向における相対位置に基づいて、下リム61と上リム62との間隔を調整することが可能である。
【0143】
また、本変形実施形態では、上スピンドル係合部224の挿入係合部224Aに形成された係合突起224ASおよびロックピース250のロック係合部250Aに形成されたロック用突起250ASがいずれも基準回転中心軸2Sと直交する方向に延びているため、タイヤ内部空間にエアが充填された際に、下スピンドル21および上スピンドル22に付与される軸力をロック用突起250ASおよび係合突起224ASで安定して受けることが可能となる。
【0144】
(2)また、上記の実施形態では、上スピンドル22が挿入部222を有し、下スピンドル21が円筒状の内部空間Sを有する態様にて説明したが、図8の上下を反転する構造、すなわち、上スピンドル22が円筒状の内部空間Sを有し、下スピンドル21が挿入部222を有する態様でもよい。なお、上記の実施形態のように、下スピンドル21に円筒状の内部空間Sが形成され、上スピンドル22に円柱状の挿入部222が形成されている場合、下スピンドル21の上下方向における長さが短くなる。このため、下スピンドル21との間で下リム61の受け渡しを行う搬送コンベア8の高さを低くすることが可能となり、タイヤ搬送機構3の搬送路の高さを同様に低く設定することが可能となる。
【0145】
(3)また、上記の実施形態では、下スピンドル21がスピンドル本体210に装着されるロックピース250を有し、当該ロックピース250に複数のロック係合部250Aおよび複数のロック凹部250Bが形成される態様にて説明したが、下スピンドル21はロックピース250を有することなく、スピンドル本体210の本体内周面210Sに直接、複数のロック係合部250Aおよび複数のロック凹部250Bが形成されるものでもよい。
【0146】
(4)また、上記の実施形態では、上スピンドルフランジ227を含む上スピンドル22が一対の上スピンドル回転位相センサ516によって検知される特定の回転位置において上スピンドル22の回転が阻止された状態で、下スピンドル21と上スピンドル22との係合が行われる態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上スピンドル22が基準回転中心軸2S周りの任意の回転位置に配置された状態で、その回転が阻止され、下スピンドル21と上スピンドル22との係合が行われるものでもよい。すなわち、前述の一対の上スピンドル回転位相センサ516に代えて、回転検知部として上スピンドル22の回転軸に配置された不図示のエンコーダが、上スピンドル22の特定部分の基準回転中心軸2S周りの回転位置を検知する。また、上スピンドル22の回転が停止されると、上スピンドル22に機械的に接触するブレーキ機構などが回転阻止部として上スピンドル22の回転を阻止する。そして、下スピンドル回転駆動部93は、前記回転阻止部によって上スピンドル22の回転が阻止された状態で、前記軸方向から見て上スピンドル22の複数の挿入係合部224Aが下スピンドル21の複数のロック凹部250Bにそれぞれ合致しかつ上スピンドル22の複数の挿入凹部224Bが下スピンドル21の複数のロック係合部250Aにそれぞれ合致するように、前記エンコーダの検知結果に応じて下スピンドル21を基準回転中心軸2S周りに回転させればよい。
【0147】
このような構成によれば、上スピンドル22を特定の回転位置に停止させることなく、リム幅を調整するために下スピンドル21のロックピース250と上スピンドル22の上スピンドル係合部224との回転方向における位置合わせを容易に行うことができる。
【0148】
更に、この場合、上スピンドル昇降駆動部94は、前記回転阻止部によって上スピンドル22の回転が阻止されかつ前記複数の挿入係合部224Aが前記複数のロック凹部250Bにそれぞれ合致し前記複数の挿入凹部224Bが前記複数のロック係合部250Aにそれぞれ合致した状態で、上スピンドル22の挿入部222を下スピンドル21の内部空間Sの特定位置まで相対的に挿入することが可能である。また、下スピンドル回転駆動部93は、前記回転阻止部によって上スピンドル22の回転が阻止されかつ挿入部222が内部空間Sの前記特定位置まで挿入された状態で、複数の挿入係合部224Aの複数の係合突起224ASと複数のロック係合部250Aの複数のロック用突起250ASとが互いに係合するように、下スピンドル21を基準回転中心軸2S周りに回転させることが可能である。
【0149】
このような構成によれば、上スピンドル22を特定の回転位置に停止させることなく、上スピンドル22の挿入部222を下スピンドル21の内部空間Sに容易に挿入し、上スピンドル係合部224とロックピース250とを互いに係合させることができる。このため、上スピンドル22と下スピンドル21とを軸方向および回転方向において順に相対移動させ両スピンドルをロックすることが可能となるため、ロック時における上スピンドル22および下スピンドル21の互いの連れ回りを防止することができる。なお、この場合においても、上記と同様の構造によって下スピンドル21の回転が阻止された状態で、上スピンドル22の回転によって上スピンドル係合部224とロックピース250とを互いに係合させるものでもよい。また、挿入部222が内部空間Sに挿入されるために、下スピンドル21が上スピンドル22に対して昇降されるものでもよい。すなわち、本発明では、下スピンドル21および上スピンドル22から「一方のスピンドル」、「他方のスピンドル」が選択的に設定されてもよく、同様に、「第1スピンドル」、「第2スピンドル」が選択的に、すなわち上記の実施形態とは逆に設定されてもよい。
【符号の説明】
【0150】
1 タイヤ試験機
1S 本体フレーム
2 スピンドル
21 下スピンドル(他方のスピンドル、第2スピンドル)
210 スピンドル本体
210S 本体内周面
21S スピンドル内周面
22 上スピンドル(一方のスピンドル、第1スピンドル)
222 挿入部
222S 挿入外周面
223 ガイドピース
224 上スピンドル係合部
224A 挿入係合部
224AS 係合突起
224B 挿入凹部
250 ロックピース(ロック部)
250A ロック係合部
250AS ロック用突起
250B ロック凹部
250S ピース内周面
2S 基準回転中心軸
3 タイヤ搬送機構
4 回転ドラム
4A 模擬路面
50 昇降ユニット
61 下リム
62 上リム
90 制御部
901 タイヤ搬送制御部
902 下スピンドル回転制御部
903 上スピンドル昇降制御部
904 エア供給制御部
905 記憶部
906 精度検査指令部
907 判定部
93 下スピンドル回転駆動部
94 上スピンドル昇降駆動部
95 下スピンドル回転位相センサ
CL タイヤ回転中心軸
P タイヤ試験位置
S 内部空間
T タイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21