(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049907
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】車両用内装材
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20230403BHJP
B60R 7/04 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
B60R13/02 B
B60R7/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159925
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】杉本 彩
【テーマコード(参考)】
3D022
3D023
【Fターム(参考)】
3D022CA07
3D022CC19
3D022CD12
3D022CD14
3D022CD17
3D022CD19
3D022CD21
3D022CD29
3D022CD30
3D023BA01
3D023BB25
3D023BD27
3D023BD32
3D023BE06
3D023BE10
3D023BE31
(57)【要約】
【課題】基材に対して弾性材を端末部からはがれにくくした車両用内装材を提供する。
【解決手段】車両用内装材1は、複数のリブ13を有する基材6と、リブ13に対応する位置を端末部15とし、少なくともリブ13間に充填されて基材6と一体的に成形された弾性材7と、を備える。収縮によって弾性材7が基材6のリブ13を加え込み、基材6に対して弾性材7が端末部15からはがれにくくなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリブを有する基材と、
前記リブに対応する位置を端末部とし、少なくとも前記リブ間に充填されて前記基材と一体的に成形された弾性材と、
を備えることを特徴とする車両用内装材。
【請求項2】
弾性材は、発泡材からなる
ことを特徴とする請求項1記載の車両用内装材。
【請求項3】
弾性材の少なくとも一部を覆う表皮体を備える
ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用内装材。
【請求項4】
車両用のコンソールボックスの蓋体である
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の車両用内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に対して弾性体が積層された車両用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両の内装材として、合成樹脂製などの基材に対して、クッション性を持たせるためのウレタン製などの弾性材を有し、弾性材とともに基材の表面側が表皮体により覆われたものがある。弾性材は、基材に対して、インサート成形などにより一体的に成形されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-143782号公報 (第8-10頁、
図1-6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基材と弾性材との接触面が一定の場合、基材と弾性材とが一体的にインサート成形された中間体について、基材と弾性材との接着力が弱くなりやすく、弾性材が端末部からめくれ上がりやすい。そのため、この構成では、表皮体によって中間体を覆う際に基材と弾性材との境目に浮き上がりが生じ、外観が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、基材に対して弾性材を端末部からはがれにくくした車両用内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の車両用内装材は、複数のリブを有する基材と、前記リブに対応する位置を端末部とし、少なくとも前記リブ間に充填されて前記基材と一体的に成形された弾性材と、を備えるものである。
【0007】
請求項2記載の車両用内装材は、請求項1記載の車両用内装材において、弾性材は、発泡材からなるものである。
【0008】
請求項3記載の車両用内装材は、請求項1または2記載の車両用内装材において、弾性材の少なくとも一部を覆う表皮体を備えるものである。
【0009】
請求項4記載の車両用内装材は、請求項1ないし3いずれか一記載の車両用内装材において、車両用のコンソールボックスの蓋体であるものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の車両用内装材によれば、収縮によって弾性材が基材のリブを加え込み、基材に対して弾性材が端末部からはがれにくくなる。
【0011】
請求項2記載の車両用内装材によれば、請求項1記載の車両用内装材の効果に加えて、成形後の弾性材の収縮が大きく、弾性材をより強固に基材に食いつかせることができる。
【0012】
請求項3記載の車両用内装材によれば、請求項1または2記載の車両用内装材の効果に加えて、車両用内装材の意匠性を向上できる。
【0013】
請求項4記載の車両用内装材によれば、請求項1ないし3いずれか一記載の車両用内装材の効果に加えて、クッション性及び外観に優れるコンソールボックスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は本発明の第1の実施の形態の車両用内装材の基材を示す斜視図、(b)は同上車両用内装材の(a)のI-I相当位置の断面図、(c)は(b)のII-II相当位置の中間体の断面図である。
【
図2】同上車両用内装材を備えるコンソールボックスを示す斜視図である。
【
図3】同上車両用内装材の製造工程の一部を示す断面図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態の車両用内装材の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図2において、1は車両用内装材を示す。本実施の形態において、車両用内装材1は、例えば自動車などの車両用の収納装置であるコンソールボックス2に用いられる蓋体である。つまり、車両用内装材1は、車体側に取り付けられる本体部3の開口を開閉可能となっている。
【0017】
車両用内装材1は、本体部3の開口を閉塞した状態でアームレストを兼ねている。例えば、車両用内装材1は、本体部3に回動可能あるいはスライド可能に支持される。また、車両用内装材1は、本体部3に対し、ロック機構4により開口を閉塞した状態にロックされる。
【0018】
なお、コンソールボックス2は、車両の前席すなわち運転席と助手席との間に位置するセンタコンソールの一部を構成し、車両用内装材1が本体部3に対して上下に回動するものを例に挙げて説明する。以下、前後方向、両側方向及び上下方向などの方向は、コンソールボックス2を車体に取り付けた状態を基準として説明し、図中では矢印FR方向を前方向、矢印RR方向を後方向、矢印L方向を左方向、矢印Rを右方向、矢印Uを上方向、矢印Dを下方向とする。コンソールボックス2は、車両のセンタコンソールやインストルメントパネルなどの内装用として用いられる。図示される例では、車両用内装材1は四角形状に形成されているが、これに限られず、配置位置の形状や所望の意匠などに応じた任意の形状としてよい。
【0019】
車両用内装材1は、
図1(b)に示すように、基材6と、弾性材7と、表皮体8と、が互いに重ねられて配置されている。そして、車両用内装材1は、表皮体8側を乗員側、手前側、表側あるいは意匠側とし、基材6側を反乗員側、背後側、裏側として配置される。
【0020】
図1(a)ないし
図1(c)に示す基材6は、合成樹脂などの部材により形成されている。基材6は、弾性材7よりも硬質の部材により形成されている。基材6は、基材本体部10を備える。基材本体部10は、基材6のうち、最大部分をなす主体部である。本実施の形態において、基材本体部10は、略四角形状に形成されている。図示される例では、基材本体部10は、前後方向に長手状で、左右方向に狭い長方形状となっている。基材本体部10は、上側に凸となるように三次元形状などに湾曲していてもよい。
【0021】
また、基材本体部10の両側部には、側壁部11が連なっている。本実施の形態において、側壁部11は、基材本体部10の長辺すなわち左右の側縁部に連なって形成されている。側壁部11は、基材本体部10に対し、下方に延出されている。側壁部11は、基材本体部10の両側部全体に亘り連なっている。好ましくは、側壁部11は、基材本体部10から側方へと徐々に拡大されるように傾斜されている。
【0022】
図示される例では、各側壁部11の側部つまり先端部には、フランジ部12が連なっている。フランジ部12は、側壁部11に対し、基材本体部10とは反対側の側部に連なっている。フランジ部12は、側壁部11から側方に延出されている。本実施の形態において、フランジ部12は、側壁部11の下端部から側方に突出する。フランジ部12は、側壁部11の側部全体に亘り連なっている。
【0023】
また、基材6には、複数のリブ13が形成されている。リブ13は、基材6の端末部、すなわち基材6の外形の端縁近傍に位置する。本実施の形態では、リブ13は、基材6の長手方向の一端部、及び、両側部にそれぞれ形成されている。図示される例では、リブ13は、基材本体部10の長手方向の一端部である前端部、及び、両側部のフランジ部11にそれぞれ形成されている。リブ13は、基材6の弾性材7側、つまり表面側に突出しており、弾性材7に食い込んでいる。リブ13は、互いに等間隔、または、略等間隔に離れて位置する。なお、本実施の形態では、リブ13の間隔は10mmに設定されているが、その限りではなく、基材6の材質や後述する弾性材7の原料や発泡率などに応じて適宜変更が可能である。
【0024】
基材6(基材本体部10)の前端部に位置するリブ13aは、前後方向、及び、上下方向に延びて形成され、左右方向に互いに離れて位置する。
【0025】
基材6の両側部(フランジ部12)に位置するリブ13bは、両側方向すなわち左右方向、及び、上下方向に延びて形成され、前後方向に互いに離れて位置する。本実施の形態において、リブ13bは、側壁部11の外側面とフランジ部12とに亘り形成されている。
【0026】
弾性材7は、弾性を有する部材からなる。好ましくは、弾性材7は、クッション性を有するウレタンなどの発泡材からなる。すなわち、弾性材7は、軟質の発泡ポリウレタン樹脂を微細発泡させた、いわゆるウレタンフォームなどが好ましい。弾性材7は、リブ13に対応する位置を外縁部すなわち端末部15とし、少なくともリブ13間に充填されて基材6と一体成形されている。本実施の形態において、弾性材7は、基材6の外側面の全体または略全体を覆って配置される。端末部15は、基材6のフランジ部12の先端部に面一状に隣接して位置する。
【0027】
弾性材7には、基材6の過半を覆う一般部17と、基材6のリブ13間に充填される充填部18とが一体的に形成されている。一般部17は、基材6の基材本体部10の外側面から側壁部11の外側面に亘る部分を覆う。充填部18は、弾性材7の端末部15の一部をなし、リブ13a間及びリブ13b間に充填されてリブ13a,13bに食いついている。
【0028】
表皮体8は、車両用内装材1の意匠面を構成する部材である。表皮体8は、弾性材7よりも厚みが薄いシート状に形成されている。本実施の形態において、表皮体8は、薄膜状に形成されている。表皮体8は、少なくとも弾性材7の表面全体を覆って配置されている。表皮体8は、皮革により形成されていてもよいし、合成樹脂などにより形成されていてもよい。
【0029】
そして、車両用内装材1を製造する際には、
図3及び
図4に示す成形型20を用い、予め別途成形された基材6を成形型20にセットして弾性材7を一体成形する、インサート成形が用いられる。
【0030】
成形型20は、一方の型22と他方の型23とを有する。一方の型22は、基材6がセットされる被セット部25を有する。本実施の形態において、被セット部25は、基材6の形状に応じて形成された凸部である。また、一方の型22は、位置合わせ部26を被セット部25の外方に有する。他方の型23は、被セット部25と対向する凹部28を有する。また、他方の型23には、一方の型22の位置合わせ部26と突き当てられる位置合わせ部29を凹部28の外方に有する。一方の型22と他方の型23とは、位置合わせ部26,29の位置で互いに突き当てられた状態で固定され、被セット部25(被セット部25にセットされた基材6)と凹部28との間に空間部(キャビティ)が構成される。その他、成形型20は、車両用内装材1(
図1(b))の必要な形状に応じて、スライドコアなどを備えていてもよい。
【0031】
成形型20を開き、基材6を一方の型22の被セット部25にセットした状態で位置合わせ部26,29を突き当てて成形型20を型締めし、被セット部25と凹部28との間の空間部に、合成樹脂原料Rをミキサ部により攪拌混合して射出すると、溶融樹脂原料REが発泡を伴いながら基材6と凹部28との間に充填され、弾性材7として基材6に積層される。
【0032】
このとき、溶融樹脂原料REは、リブ13を包むように発泡する。
【0033】
この後、成形型20が冷却されることで、
図1(c)に示すように、弾性材7はリブ13を挟む位置でリブ13に食いつく方向(矢印X)に収縮し、基材6と固着される。弾性材7が固化した後、成形型20を開き、中間体が成形型20から脱型される。中間体からばりなどを除去した後、表皮体8を取り付けて車両用内装材1が完成する。
【0034】
なお、表皮体8は、上記中間体に対して接着や縫製などにより後工程で取り付けてもよいし、表皮体8を基材6とともに成形型20の他方の型23の凹部28にセットして、基材6と表皮体8との間の空間に弾性材7を充填するようにしてもよい。
【0035】
このように、第1の実施の形態によれば、基材6に設けた複数のリブ13に対応する位置を端末部15として、少なくともリブ13間に充填して弾性材7を基材6と一体的に成形することで、収縮によって弾性材7が基材6のリブ13をくわえ込み、基材6に対して弾性材7が端末部15からはがれにくくなる。特に、基材6と弾性材7とは、化学反応を用いた接着ではなく、リブ13への食いつきを利用した構造的な固着となるため、材質同士の相性に影響を受けにくく、基材6に使用できる材質の幅が広がる。
【0036】
また、弾性材7を発泡材により構成することで、成形後の弾性材7の収縮が大きく、弾性材7をより強固に基材6に食いつかせることができる。
【0037】
弾性材7の少なくとも一部を表皮体8で覆うことで、車両用内装材1の意匠性を向上できる。
【0038】
そして、この車両用内装材1を車両用のコンソールボックス2の蓋体として用いることで、クッション性及び外観に優れるコンソールボックス2を提供できる。
【0039】
なお、上記の第1の実施の形態において、
図5に示す第2の実施の形態のように、リブ13を基材6の端縁、例えばフランジ部12に沿うように形成しても、収縮した弾性材7がリブ13に食いつくことにより、基材6に対して弾性材7が端末部15からはがれにくくなるなど、上記の第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0040】
上記の各実施の形態において、リブ13は、基本的に基材6の周縁部に形成しているが、これに限らず、基材6の中央部などに位置していてもよい。この場合でも、このリブ13を形成した位置が弾性材7の端末部15となっていれば、同様の作用効果を奏することができる。
【0041】
また、車両用内装材は、コンソールボックスの蓋体(コンソールリッド)に限らず、任意の車両用の内装材として用いてよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、車両の車室に備えられるコンソールボックスの蓋体などとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 車両用内装材
2 コンソールボックス
6 基材
7 弾性材
8 表皮体
13 リブ
15 端末部