(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049915
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子
(51)【国際特許分類】
C08J 9/18 20060101AFI20230403BHJP
C08F 220/14 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
C08J9/18 CEY
C08F220/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159937
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(71)【出願人】
【識別番号】000155366
【氏名又は名称】株式会社木村鋳造所
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基理人
(72)【発明者】
【氏名】田村 充宏
(72)【発明者】
【氏名】上田 有一
(72)【発明者】
【氏名】菅野 利猛
(72)【発明者】
【氏名】高原 明弘
(72)【発明者】
【氏名】福尾 太志
(72)【発明者】
【氏名】気田 悠作
【テーマコード(参考)】
4F074
4J100
【Fターム(参考)】
4F074AA48A
4F074AB01
4F074AB02
4F074BA37
4F074BA38
4F074BA95
4F074CA34
4F074CA38
4F074CA42
4F074CA49
4F074DA02
4F074DA22
4F074DA23
4F074DA59
4J100AL03P
4J100AL03Q
4J100DA01
4J100DA25
4J100EA13
(57)【要約】
【課題】内部融着性および鋳造性に優れた発泡成形体を効率よく提供し得る、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を提供する。
【解決手段】メタクリル酸メチル単位およびアクリル酸エステル単位を含み、特定のガラス転移温度を有する基材樹脂と、発泡剤とを含む発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子であり、発泡性に優れるとともに、発泡性が低くかつ加熱後の収縮抑制性に優れる発泡粒子を提供し得る、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成単位としてメタクリル酸メチル単位およびアクリル酸エステル単位を含む基材樹脂と、発泡剤とを含み、以下(a)~(d)を満たす、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子:
(a)前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を100℃の水蒸気で300秒間加熱して得られるメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子の嵩密度(A)が0.0285g/cm3以下である;
(b)前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を発泡してなるメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子100cm3を100℃の水蒸気で30秒間加熱後、25℃で1分間放置して得られるメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子の体積(B)が140cm3以下である;
(c)前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を発泡してなるメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子100cm3を100℃の水蒸気で180秒間加熱後、25℃で1分間放置して得られるメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子の体積(C)が160cm3超である;および
(d)前記基材樹脂のガラス転移温度が114.5℃以上である。
【請求項2】
前記基材樹脂の重量平均分子量は、22.0万~31.0万である、請求項1に記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
【請求項3】
構成単位としてメタクリル酸メチル単位およびアクリル酸エステル単位を含む基材樹脂と、発泡剤とを含み、
前記基材樹脂の重量平均分子量は22.0万~31.0万であり、
前記基材樹脂のガラス転移温度は114.5℃以上である、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
【請求項4】
前記アクリル酸エステル単位はアクリル酸ブチル単位である、請求項1~3の何れか1項に記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
【請求項5】
前記基材樹脂において、
前記メタクリル酸メチル単位および前記アクリル酸エステル単位の合計量100重量部に対する、(a)前記メタクリル酸メチル単位の含有量は97.0重量部より多く99.0重量部以下であり、(b)前記アクリル酸エステル単位の含有量は1.0重量部以上3.0重量部未満である、請求項1~4の何れか1項に記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
金属鋳造を行うとき、発泡成形体で作製した模型を鋳造砂に埋没し、当該発泡成形体に対して溶融金属を流し込んで発泡成形体と金属とを置換することにより、鋳物を鋳造する消失模型鋳造法(フルモールド法)が知られている。フルモールド法では、メタクリル酸メチル系重合体の発泡成形体が、鋳造時の残渣低減の観点から、使用されている。また、鋳物用の発泡成形体は大型のブロック成形体から切削加工したものが多く用いられている。
【0003】
メタクリル酸メチル系重合体の発泡成形体を製造するための発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子として幾つかの技術が知られている。
【0004】
特許文献1には、メタクリル酸エステル成分と、特定のアクリル酸エステル成分とを各々特定量含有し、ガラス転移温度が112~125℃である発泡性アクリル系樹脂粒子が開示されている。
【0005】
特許文献2には、メタクリル酸メチル単位およびアクリル酸エステル単位を各々特定量含有し、平均粒径が0.6~1.0mmであり、粒径の変動係数が20%以下である発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子が開示されている。
【0006】
特許文献3には、メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとを、各々特定量含むアクリル系モノマーを懸濁重合することによって得られる発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法が開示されている。
【0007】
特許文献4には、メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルと多官能性単量体とを各々特定量重合してなる発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-183111
【特許文献2】WO2020/203537
【特許文献3】特開2018-135407
【特許文献4】WO2016/047490
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述のような従来技術は、メタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体の内部融着性、鋳造性および生産効率の観点から、改善の余地がある。
【0010】
以上のような状況に鑑み、本発明の一実施形態の目的は、内部融着性および鋳造性に優れたメタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体を効率よく提供し得る、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
〔1〕構成単位としてメタクリル酸メチル単位およびアクリル酸エステル単位を含む基材樹脂と、発泡剤とを含み、以下(a)~(d)を満たす、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子:
(a)前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を100℃の水蒸気で300秒間加熱して得られるメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子の嵩密度(A)が0.0285g/cm3以下である;
(b)前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を発泡してなるメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子100cm3を100℃の水蒸気で30秒間加熱後、25℃で1分間放置して得られるメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子の体積(B)が140cm3以下である;
(c)前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を発泡してなるメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子100cm3を100℃の水蒸気で180秒間加熱後、25℃で1分間放置して得られるメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子の体積(C)が160cm3超である;および
(d)前記基材樹脂のガラス転移温度が114.5℃以上である。
〔2〕前記基材樹脂の重量平均分子量は、22.0万~31.0万である、〔1〕に記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
〔3〕構成単位としてメタクリル酸メチル単位およびアクリル酸エステル単位を含む基材樹脂と、発泡剤とを含み、
前記基材樹脂の重量平均分子量は22.0万~31.0万であり、
前記基材樹脂のガラス転移温度は114.5℃以上である、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
〔4〕前記アクリル酸エステル単位はアクリル酸ブチル単位である、〔1〕~〔3〕の何れか1つに記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
〔5〕前記基材樹脂において、
前記メタクリル酸メチル単位および前記アクリル酸エステル単位の合計量100重量部に対する、(a)前記メタクリル酸メチル単位の含有量は97.0重量部より多く99.0重量部以下であり、(b)前記アクリル酸エステル単位の含有量は1.0重量部以上3.0重量部未満である、〔1〕~〔4〕の何れか1つに記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、内部融着性および鋳造性に優れたメタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体を効率よく提供し得る、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0015】
本明細書において、「発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子」を「発泡性樹脂粒子」と称する場合もあり、「メタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子」を「発泡粒子」と称する場合もあり、「メタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体」を「発泡成形体」と称する場合もある。
【0016】
〔1.本発明の一実施形態の技術的思想〕
内部融着性に劣るメタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体は、当該メタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体の切削に伴い、メタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体の切削面からメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子が脱落するなど、加工性に劣るものである。
【0017】
また、メタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体の主な使用用途として、金属鋳造時の鋳物用途が挙げられる。鋳物として用いる場合に、メタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体には、特に鋳造性が求められる。
【0018】
本発明者らが検討したところ、特許文献1~5に開示された発泡性樹脂粒子を用いて得られる発泡成形体は、内部融着性、鋳造性および生産効率の観点から、改善の余地がある。
【0019】
以上のような状況に鑑み、内部融着性および鋳造性に優れたメタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体を効率よく提供し得る、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を提供することを目的として、本発明者は、鋭意検討を行った。
【0020】
本発明者は、鋭意検討の結果に以下の点を見出し、本発明を完成するに至った:(a)発泡速度(発泡性)に優れる発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子はメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子を効率よく提供し得、その結果、メタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体を効率よく提供し得ること、(b)発泡速度が遅くかつ加熱後の収縮が小さいメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子は内部融着性に優れるメタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体を提供し得ること、および(c)基材樹脂のガラス転移温度が高い発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子は、鋳造性に優れるメタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体を提供し得ること。
【0021】
〔2.発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子〕
本発明の一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子は、構成単位としてメタクリル酸メチル単位およびアクリル酸エステル単位を含む基材樹脂と、発泡剤とを含み、以下(a)~(d)を満たす、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子である:
(a)前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を100℃の水蒸気で300秒間加熱して得られるメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子の嵩密度(A)が0.0285g/cm3以下である;
(b)前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を発泡してなるメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子100cm3を100℃の水蒸気で30秒間加熱後、25℃で1分間放置して得られるメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子の体積(B)が140cm3以下である;
(c)前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を発泡してなるメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子100cm3を100℃の水蒸気で180秒間加熱後、25℃で1分間放置して得られるメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子の体積(C)が160cm3超である;および
(d)前記基材樹脂のガラス転移温度が114.5℃以上である。
【0022】
「本発明の一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子」を、以下「本発泡性樹脂粒子」と称する場合もある。
【0023】
本発泡性樹脂粒子を公知の方法により発泡することにより、発泡粒子を提供できる。本発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子を公知の方法により型内成形することにより、発泡成形体を提供できる。
【0024】
本発泡性樹脂粒子は、前記構成を有するため、内部融着性および鋳造性に優れる発泡成形体を、効率的に提供できるという利点を有する。
【0025】
本発泡性樹脂粒子は、当該発泡性樹脂粒子を特定の条件で発泡して得られる発泡粒子の嵩密度(A)が0.0285g/cm3以下であるである。嵩密度(A)が小さいほど、高嵩倍率の発泡粒子が得られることを意図し、すなわち発泡性樹脂粒子が発泡性に優れることを意図する。発泡性に優れる発泡性樹脂粒子は、当該発泡性樹脂粒子を用いて発泡粒子を製造するときの製造時間および製造コストを削減できる。それ故、本発泡性樹脂粒子は、効率よく発泡粒子を提供でき、その結果、効率よく発泡成形体を提供できる、という利点を有する。
【0026】
本発泡性樹脂粒子は、当該発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子の体積(B)が140cm3以下である。体積(B)は、発泡粒子が一定時間内に発泡する度合いを示しており、発泡粒子の発泡速度を反映し得る。体積(B)が小さいほど、発泡粒子の発泡速度が遅いことを意図し、発泡粒子の発泡性が低いことを意図する。発泡性が低い発泡粒子は、当該発泡粒子を用いる型内成形において、金型内部の中心部の発泡粒子まで蒸気が十分に行きわたることにより、内部融着性に優れる発泡成形体を提供できる。それ故、本発泡性樹脂粒子は、内部融着性に優れる発泡成形体を提供できる、という利点を有する。
【0027】
本発泡性樹脂粒子は、当該発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子の体積(C)が160cm3超である。体積(C)は、加熱後の発泡粒子の収縮の度合いを示している。体積(C)が大きいほど、発泡粒子が加熱後に収縮しにくいことを意図し、発泡粒子が収縮抑制性に優れることを意図する。収縮抑制性に優れる発泡粒子は、当該発泡粒子を用いる型内成形中、または型内成形で得られる発泡成形体において、発泡成形体内部の発泡粒子同士の接着(融着)が維持され易く、その結果、内部融着性に優れる発泡成形体を提供できる。それ故、本発泡性樹脂粒子は、内部融着性に優れる発泡成形体を提供できる、という利点を有する。
【0028】
本発泡性樹脂粒子は、基材樹脂のガラス転移温度が114.5℃以上である。本発明者らは、鋭意検討の過程において、発泡性樹脂粒子の基材樹脂のガラス転移温度が114.5℃以上である場合、驚くべきことに、当該発泡性樹脂粒子を用いてなる発泡成形体が鋳造性に優れるという知見を独自に見出した。すなわち、本発泡性樹脂粒子は、鋳造性に優れる発泡成形体を提供できる、という利点を有する。
【0029】
発泡性樹脂粒子の発泡は、「一次発泡」ともいえる。それ故、発泡性樹脂粒子の発泡速度および発泡性は、それぞれ、一次発泡の発泡速度および発泡性ともいえる。一方、発泡粒子の発泡は、「二次発泡」ともいえる。それ故、発泡粒子の発泡速度および発泡性は、それぞれ、二次発泡の発泡速度および発泡性ともいえる。
【0030】
(基材樹脂)
基材樹脂は、発泡性樹脂粒子における発泡剤および後述する外添剤以外の部分ともいえ、発泡性樹脂粒子を実質的に構成する部分ともいえる。本発泡性樹脂粒子が含む基材樹脂は、構成単位として、メタクリル酸メチル単位およびアクリル酸エステル単位を含む。本明細書において、「メタクリル酸メチル単位」とは、メタクリル酸メチル単量体に由来する構成単位であり、「アクリル酸エステル単位」とは、アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位である。本明細書において、「単量体」の表記は省略する場合がある。故に、本明細書において、例えば、単に「メタクリル酸メチル」および「アクリル酸エステル」と表記した場合は、それぞれ、「メタクリル酸メチル単量体」および「アクリル酸エステル単量体」を意図する。
【0031】
本発泡性樹脂粒子が含む基材樹脂では、メタクリル酸メチル単位およびアクリル酸エステル単位の合計量100重量部に対する、(a)メタクリル酸メチル単位の含有量は97.0重量部より多く99.0重量部以下であり、かつアクリル酸エステル単位の含有量は1.0重量部以上3.0重量部未満であることが好ましく、(b)メタクリル酸メチル単位の含有量は97.0重量部より多く98.5重量部以下であり、かつアクリル酸エステル単位の含有量は1.5重量部以上3.0重量部未満であることがより好ましく、(c)メタクリル酸メチル単位の含有量は97.0重量部より多く98.0重量部以下であり、かつアクリル酸エステル単位の含有量は2.0重量部以上3.0重量部未満であることがさらに好ましく、(d)メタクリル酸メチル単位の含有量は97.5重量部であり、かつアクリル酸エステル単位の含有量は2.5重量部であることが特に好ましい。発泡性樹脂粒子の基材樹脂におけるメタクリル酸メチル単位の含有量、およびアクリル酸エステル単位の含有量が、各々上述した範囲内である場合、当該発泡性樹脂粒子は、内部融着性および鋳造性に優れる発泡成形体を効率的に提供できるという利点を有する。より具体的に、基材樹脂において、メタクリル酸メチル単位およびアクリル酸エステル単位の合計量100重量部に対するアクリル酸エステル単位の含有量が1.0重量部以上である場合、発泡性樹脂粒子の発泡性が優れる傾向がある。基材樹脂において、メタクリル酸メチル単位およびアクリル酸エステル単位の合計量100重量部に対するアクリル酸エステル単位の含有量が3.0重量部以下である場合、(a)発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子の収縮抑制性が優れる傾向、および(b)基材樹脂のガラス転移温度が114.5℃以上となる傾向があるため、最終的に得られる発泡成形体の鋳造性が優れる傾向がある。
【0032】
本発明の一実施形態に係るアクリル酸エステル単位としては、アクリル酸メチル単位、アクリル酸エチル単位、アクリル酸プロピル単位、アクリル酸ブチル単位などが挙げられる。アクリル酸エステル単位としては、アクリル酸ブチル単位が特に好ましい。当該構成によると、発泡性および成形性(例えば、発泡粒子の収縮抑制性)に優れる発泡性樹脂粒子を提供できる。なお、アクリル酸ブチル単位は、基材樹脂のガラス転移温度を低下させる効果が大きく、鋳造性の改善効果が高い。
【0033】
本発泡性樹脂粒子の基材樹脂は、架橋剤に由来する構成単位(以下、架橋剤単位とも称する)を含んでいてもよい。本発泡性樹脂粒子の基材樹脂が架橋剤単位を含む場合、(a)発泡性樹脂粒子は発泡性に優れ、(b)当該発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子は発泡性が低く、かつ収縮抑制性が良好となり、さらに(c)当該発泡粒子を型内成形してなる発泡成形体は内部融着性に優れ、かつ燃焼時の残渣が少なくなることから鋳造性に優れる、という利点を有する。また、構成単位として架橋剤に由来する構成単位を含む基材樹脂を含む発泡性樹脂粒子は、製造過程において分子量を調整しやすいという利点も有する。
【0034】
架橋剤としては、例えば、ラジカル反応性を示す官能基を2つ以上有する化合物が挙げられる。ラジカル反応性を示す官能基を2つ以上有する化合物の中でも、架橋剤としては、官能基を2つ有する二官能性単量体を用いることが好ましい。換言すれば、本発泡性樹脂粒子の基材樹脂は、架橋剤に由来する構成単位として、二官能性単量体に由来する構成単位である二官能性単量体単位を含むことが好ましい。当該構成によると、(a)発泡性樹脂粒子は発泡性により優れ、(b)当該発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子は発泡性がより低く、かつ収縮抑制性により優れ、さらに(c)当該発泡粒子を型内成形してなる発泡成形体は内部融着性に優れ、かつ燃焼時の残渣がより少なくなることから鋳造性により優れる、という利点を有する。
【0035】
二官能性単量体としては、例えば、(a)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコールまたは当該エチレングリコールのオリゴマーの、両末端水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの、(b)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(例えば1,6-ヘキサンジオールジアクリレートなど)、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の2価のアルコールの水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの、(c)ジビニルベンゼン等のアルケニル基を2個有するアリール化合物、等があげられる。二官能性単量体としては、分子量の調整のしやすさから、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意図する。例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートは、ヘキサンジオールジアクリレートおよび/またはヘキサンジオールジメタクリレートと意図する。
【0036】
本発泡樹脂粒子における二官能性単量体単位の含有量は、メタクリル酸メチル単位およびアクリル酸エステル単位の合計含有量100重量部対して0.05重量部以上0.15重量部以下が好ましく、0.08重量部以上0.13重量部がより好ましい。前記構成によると、(a)発泡性樹脂粒子は発泡性にさらに優れ、(b)当該発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子は発泡性がさらに低く、かつ収縮抑制性にさらに優れ、さらに(c)当該発泡粒子を型内成形してなる発泡成形体は内部融着性にさらに優れ、かつ燃焼時の残渣がさらに少なくなることから鋳造性により優れるという利点を有する。
【0037】
本発泡性樹脂粒子の基材樹脂は、構成単位として、さらに、芳香族系単量体に由来する構成単位(芳香族系単位)を含有していても良い。芳香族系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、t-ブチルスチレンおよびクロルスチレン等の芳香族ビニル化合物等が挙げられる。本発泡性樹脂粒子の基材樹脂が芳香族系単位を含む場合、強度に優れる発泡成形体を得ることができる。
【0038】
一方、燃焼時の残渣の少ない発泡成形体を得る観点から、本発泡性樹脂粒子に含まれる、芳香族系単量体に由来する構造(例えば芳香環)の量はできる限り少ないことが好ましい。具体的に、本発泡性樹脂粒子の基材樹脂が含む芳香族系単位の量はできる限り少ないことが好ましい。例えば、発泡性樹脂粒子の基材樹脂が含む芳香族系単位の量は、基材樹脂100重量部に対して、2.5重量部以下が好ましく、2.5重量部未満がより好ましく、2.0重量部以下がより好ましく、1.5重量部以下がより好ましく、1.0重量部以下がさらに好ましく、0重量部が特に好ましい。すなわち、本発泡性樹脂粒子の基材樹脂は、芳香族系単位を含有しないことが特に好ましい。
【0039】
なお、基材樹脂に含まれる構成単位の種類および量は、基材樹脂の重合(例えば後述する共重合工程)で使用する単量体混合物に含まれる単量体の種類および量と同じである(但し、重合転化率が100%である場合)。
【0040】
(発泡剤)
本発泡性樹脂粒子に含まれる発泡剤は、特に限定されない。発泡剤としては、例えば、(a)プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、ネオペンタン等の炭素数3以上5以下の炭化水素である脂肪族炭化水素類、および(b)ジフルオロエタン、テトラフルオロエタン等のオゾン破壊係数がゼロであるハイドロフルオロカーボン類、等の揮発性発泡剤があげられる。これらの発泡剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用しても何ら差し支えない。
【0041】
本発泡性樹脂粒子において、基材樹脂100重量部に対する、発泡剤の含有量は、5重量部~12重量部が好ましく、7重量部~10重量部がより好ましい。当該構成によると、十分な発泡性を有する発泡性樹脂粒子を提供でき、かつ重厚な重合設備が不要となる、という利点を有する。
【0042】
(その他の添加剤)
本発泡性樹脂粒子は、基材樹脂および発泡剤に加えて、さらに任意でその他の添加剤を含んでいてもよい。上記その他の添加剤としては、気泡調整剤、溶剤、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、熱線輻射抑制剤、顔料、染料および帯電防止剤などが挙げられる。
【0043】
溶剤および可塑剤については、下記〔3.発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法〕の項にて詳述する。発泡性樹脂粒子における溶剤および可塑剤の含有量については、後述する溶剤および可塑剤の使用量と同じ量であってもよい。
【0044】
(気泡調整剤)
気泡調整剤としては、例えば、(a)メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等の脂肪族ビスアマイド、および(b)ポリエチレンワックス、などが挙げられる。基材樹脂100重量部に対する、気泡調整剤の含有量は、0.01重量部~0.50重量部であることが好ましい。
【0045】
(重量平均分子量)
本発泡性樹脂粒子が含む基材樹脂の重量平均分子量は、22.0万~31.0万であることが好ましく、23.0万~31.0万であることがより好ましく、24.0万~30.0万であることがさらに好ましい。当該構成によると、驚くべきことに、(a)発泡性樹脂粒子は発泡性が良好となり、(b)当該発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子は発泡性が低く、かつ収縮抑制性が良好となり、さらに(c)当該発泡粒子を型内成形してなる発泡成形体は内部融着性に優れる、という利点を有する。本発明者は、鋭意検討の結果、基材樹脂におけるメタクリル酸メチル単位の量およびアクリル酸エステル単位の量を調節することに加えて、重量平均分子量を31.0万以下とすることにより、驚くべきことに、内部融着性に優れる発泡成形体を効率的に提供することができるという新規知見を得た。
【0046】
本明細書では、以下の方法により測定して得られる重量平均分子量を、発泡性樹脂粒子が含む基材樹脂の重量平均分子量とする:(1)発泡性樹脂粒子0.02gをテトラヒドロフラン(以下、「THF」と略す場合がある)20mlに溶解させる;(2)その後、得られる溶解液中のゲル成分をろ過する;(3)次いで、THFに可溶な成分(すなわちろ液)のみを試料として、ゲルパーミェーションクロマトグラフ(GPC)を用いて、GPC測定を行う;(4)GPC測定により得られるGPC測定チャートから、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を算出する。なお、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)はポリスチレン換算の相対値である。
【0047】
基材樹脂の重量平均分子量は、基材樹脂の重合(共重合)過程で使用する単量体の組成(種類および量)、連鎖移動剤の種類および量、重合温度および時間、開始剤の種類および量、並びに架橋剤の種類および量などを変更することで、調節できる。
【0048】
(ガラス転移温度)
本発泡性樹脂粒子が含む基材樹脂のガラス転移温度は114.5℃以上である。当該構成により、本発泡性樹脂粒子は、鋳造性に優れる発泡成形体を提供できる、という利点を有する。鋳造性により優れる発泡成形体を提供できることから、前記ガラス転移温度は、114.6℃以上が好ましく、114.8℃以上がより好ましく、115.0℃以上が特に好ましい。鋳造性の観点からはガラス転移温度は高いほど好ましく、その上限値は特に限定されないが、前記ガラス転移温度は、例えば150.0℃以下である。
【0049】
本明細書では、以下の方法により測定して得られるガラス転移温度を、発泡性樹脂粒子が含む基材樹脂のガラス転移温度とする:(1)発泡性樹脂粒子を150℃で30分間乾燥処理して得られる樹脂を試料とする;(2)当該試料4mgをアルミ容器に入れた後、アルミ容器に圧縮機を用いてアルミの蓋を取り付け、測定サンプルを得る;(3)当該測定サンプルについて、DSC測定機(例えば、日立製DSC7000X)を用いて、50℃から150℃まで昇温(昇温速度10℃/分)し、150℃から50℃まで降温(降温速度10℃/分)し、再度50℃から150℃まで昇温(昇温速度10℃/分)する;(4)2回目の昇温時に得られるDSC曲線を用いてガラス転移温度を算出する。なお、ここでのガラス転移温度はJIS K7121に定められた中間点ガラス転移温度を意図する。
【0050】
基材樹脂のガラス転移温度は、基材樹脂の重合(共重合)過程で使用する単量体の組成(種類および量)を変更することで、調節できる。
【0051】
発泡性樹脂粒子を用いて製造された発泡粒子において、当該発泡性樹脂粒子の構造は変化するが、発泡性樹脂粒子の組成は変化しない。また、発泡粒子を用いて製造された発泡成形体において、当該発泡粒子の構造は変化するが、発泡粒子の組成は変化しない。それ故、発泡粒子または発泡成形体の重量平均分子量およびガラス転移温度を、当該発泡粒子または発泡成形体、の原料である発泡性樹脂粒子が含む基材樹脂の重量平均分子量およびガラス転移温度と見做すことができる。なお、発泡粒子または発泡成形体の重量平均分子量は、上述した発泡性樹脂粒子の基材樹脂の重量平均分子量の測定方法において、「発泡性樹脂粒子」を「発泡粒子」または「発泡成形体」に置き換えた測定方法により、測定できる。また、発泡粒子または発泡成形体のガラス転移温度は、上述した発泡性樹脂粒子の基材樹脂のガラス転移温度の測定方法において、「発泡性樹脂粒子」を「発泡粒子」または「発泡成形体」に置き換えた測定方法により、測定できる。
【0052】
(体積平均粒子径)
本発泡性樹脂粒子の体積平均粒子径は0.5mm~1.4mmであることが好ましく、0.6mm~1.2mmであることがより好ましく、0.6mmより大きく1.0mm以下であることがより好ましく、0.7mm~0.9mmであることがより好ましい。当該体積平均粒子径が0.5mm以上である場合、発泡性樹脂粒子は、発泡時の発泡性が低下する虞および/またはブロッキングが増加する虞がない。当該体積平均粒径が1.4mm以下である場合、発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子の発泡性が高くなりすぎる虞がなく、当該発泡粒子を用いる成形のときに成形体表面がゆっくりと形成されることで発泡成形体内部まで蒸気が入る。その結果、発泡成形体内部の融着性が良好となる。本明細書において、発泡性樹脂粒子の体積平均粒子径とは、粒度分析計(例えば画像処理方式ミリトラックJPA粒度分析計)を用いて、発泡性樹脂粒子の粒径を体積基準で測定し、得られた結果を累積分布で表示し、体積累積50%となる粒径とする。
【0053】
なお、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を篩い分けして、粒子径0.5mm~1.4mmの発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を分取する場合がある。この場合、分取された発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の体積平均粒子径は、0.5mm~1.4mmの範囲内となる。
【0054】
(発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の発泡性)
本発泡性樹脂粒子は、前記の嵩密度(A)が0.0285g/cm3以下であり、発泡性に優れるものである。発泡粒子を効率的に(例えばより短時間で)提供でき、その結果、発泡成形体を効率的に(例えばより短時間で)提供できることから、嵩密度(A)は、0.0260g/cm3以下が好ましく、0.0250g/cm3以下がより好ましく、0.0222g/cm3以下が特に好ましい。嵩密度(A)は小さいほど好ましく、その下限値は特に限定されないが、嵩密度(A)は少なくとも0.0000g/cm3を超える。また、嵩密度(A)の測定に使用する発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子は、その表面にブロッキング防止剤を塗布したものであってもよい。
【0055】
本明細書において、発泡粒子の嵩密度は、以下(1)~(4)を順に実施して得られた値とする:(1)一定量の発泡粒子(例えば、嵩密度(A)の測定過程で得られた発泡粒子全量)の重量を測定する;(2)当該発泡粒子の全量を1000cm3のメスシリンダーへ入れる;(3)メスシリンダーの目盛から、発泡粒子の体積を測定する;(4)以下の式により、発泡粒子の嵩密度を算出する;
嵩密度(g/cm3)=発泡粒子の重量(g)/発泡粒子の体積(cm3)。
【0056】
また、嵩密度(A)の測定に使用する発泡性樹脂粒子の重量を予め測定しておき、得られた発泡粒子の重量としてもよい。嵩密度(A)の測定に使用する発泡性樹脂粒子の重量は、例えば10gである。
【0057】
嵩密度(A)の測定における発泡性樹脂粒子の発泡方法の一例を、以下(1)~(3)に示す:(1)発泡性樹脂粒子を一定量(例えば10g)量り取り、当該発泡性樹脂粒子の表面にブロッキング防止剤を塗布する;(2)当該発泡性樹脂粒子を、吹き出し口を有する蒸し器に投入する;(3)100℃の水蒸気を蒸し器に供給し、発泡性樹脂粒子を300秒間加熱することにより発泡粒子を得る。
【0058】
本発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子は、前記体積(B)が140cm3以下であり、発泡性が低いものである。内部融着性により優れる発泡成形体を提供できることから、体積(B)は、138cm3以下が好ましく、135cm3以下がより好ましく、130cm3以下が特に好ましい。体積(B)は小さいほど好ましく、その下限値は特に限定されないが、体積(B)は少なくとも100cm3を超える。
【0059】
ここで、本発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子の体積(B)の測定方法は特に限定されるものではないが、例えば以下(1)~(6)を順に行う方法が挙げられる:(1)本発泡性樹脂粒子を嵩倍率60倍に発泡し、嵩倍率60倍の発泡粒子を調製する;(2)当該発泡粒子100cm3を量り取り、蒸し器(例えば吹き出し口を有する蒸し器)に投入する;(3)100℃の水蒸気を蒸し器に供給し、発泡粒子を30秒間加熱する;(4)加熱後、発泡粒子を蒸し器から取り出し、25℃にて1分間放置する:(5)発泡粒子を1000cm3のメスシリンダーへ入れる;(6)メスシリンダーの目盛から、発泡粒子の体積(B)を測定する。
【0060】
本発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子は、前記体積(C)が160cm3超であり、収縮抑制性に優れるものである。内部融着性により優れる発泡成形体を提供できることから、体積(C)は、165cm3以上が好ましく、168cm3以上がより好ましく、170cm3以上が特に好ましい。
【0061】
ここで、本発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子の体積(C)の測定方法は特に限定されるものではないが、例えば以下(1)~(6)を順に行う方法が挙げられる:(1)本発泡性樹脂粒子を嵩倍率60倍に発泡し、嵩倍率60倍の発泡粒子を調製する;(2)当該発泡粒子100cm3を量り取り、蒸し器(例えば吹き出し口を有する蒸し器)に投入する;(3)100℃の水蒸気を蒸し器に供給し、発泡粒子を180秒間加熱する;(4)加熱後、発泡粒子を蒸し器から取り出し、25℃にて1分間放置する:(5)発泡粒子を1000cm3のメスシリンダーへ入れる;(6)メスシリンダーの目盛から、発泡粒子の体積(C)を測定する。
【0062】
本明細書において、発泡粒子の嵩倍率は、以下(1)~(3)を順に実施して得られた値とする:(1)発泡粒子10gを量り取り、1000cm3のメスシリンダーへ入れる;(2)メスシリンダーの目盛から、10gの発泡粒子の体積を測定する;(3)以下の式により、発泡粒子の嵩倍率を算出する;
嵩倍率(倍)=発泡粒子の体積(cm3)/10g。
【0063】
本明細書において、発泡粒子の嵩倍率は、発泡倍率ともいえる。また、嵩倍率の単位は、実際には上述の式に基づきcm3/gであるが、本明細書では、便宜上、嵩倍率の単位を「倍」と表記する。
【0064】
体積(B)および体積(C)の測定に用いる嵩倍率60倍の発泡粒子の製造方法としては、特に限定されないが、例えば以下(1)~(3)を順に行う方法が挙げられる:(1)発泡性樹脂粒子を加圧式の発泡機(例えば大開工業社製のBHP)に投入する;(2)蒸気吹き込み圧0.10MPa~0.16MPa、かつ発泡機内圧力0.005MPa~0.030MPaの条件にて発泡機内に蒸気(例えば水蒸気)を吹き込み、発泡性樹脂粒子を加熱する;(3)前記(2)により、所望の発泡倍率(例えば嵩倍率60倍)に至るまで発泡性樹脂粒子の発泡を行い、発泡粒子を得る。なお、体積(B)および体積(C)の測定に用いる嵩倍率60倍の発泡粒子の、製造に使用する発泡性樹脂粒子は、篩い分けにより粒子径0.5mm~1.4mmの発泡性樹脂粒子とされたものであってもよい。
【0065】
(変形例1)
本発明者は、内部融着性および鋳造性に優れたメタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体を効率よく提供し得る、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を提供することを目的として鋭意検討する過程で、さらに以下の知見も独自に見出した:(i)発泡性樹脂粒子の基材における、アクリル酸エステル単位の含有量が多いほど、当該発泡性樹脂粒子の発泡速度が増加し、すなわち発泡性に優れ、その結果、発泡粒子および発泡成形体を効率良く提供できること;(ii)一方、発泡性樹脂粒子の基材における、アクリル酸エステル単位の含有量が多いほど、当該発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子を成形してなる発泡成形体が鋳造性に劣ること、(iii)発泡性樹脂粒子の基材における、アクリル酸エステル単位の含有量が多すぎる(一定の値を超える)場合、当該発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子の発泡速度が速くなり、かつ加熱後の発泡粒子の収縮が大きくなり、その結果、当該発泡粒子が提供する発泡成形体は内部融着性に劣ること、(iv)発泡性樹脂粒子の基材における、アクリル酸エステル単位の含有量が少ないほど、当該発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子の発泡速度が遅くなること、(v)一方、発泡性樹脂粒子の基材における、アクリル酸エステル単位の含有量が少なすぎる(一定の値を下回る)場合、当該発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子の発泡速度が遅くなりすぎることにより、成形過程で発泡粒子が十分に膨らまず、その結果、当該発泡粒子が提供する発泡成形体は内部融着性に劣ること。すなわち、基材樹脂におけるメタクリル酸メチル単位とアクリル酸エステル単位との比率(換言すれば、基材樹脂のガラス転移温度)を調節するのみでは、内部融着性および鋳造性に優れたメタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体を効率よく提供し得る、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を提供することはできなかった。
【0066】
そこで、本発明者らは、さらに鋭意検討を行った。その結果、メタクリル酸メチル単位とアクリル酸エステル単位とを含む基材樹脂のガラス転移温度のみならず、基材樹脂の重量平均分子量を調節することにより、上記課題を達成できることを新規に見出し、本発明の別の一実施形態を完成するに至った。具体的、本発明者らは、以下の新規知見を見出した:発泡性樹脂粒子が含む基材樹脂の重量平均分子量を特定の範囲内とし、かつガラス転移温度を一定温度以上とすることにより、内部融着性および鋳造性に優れた発泡成形体を効率よく提供し得る、発泡性樹脂粒子を提供できること;また、発泡性樹脂粒子が含む基材樹脂の重量平均分子量を特定の範囲内とし、かつガラス転移温度を一定温度以上とすることにより、(a)発泡性に優れる発泡性樹脂粒子であるともに、(b)当該発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子の発泡速度は遅く、かつ(c)当該発泡粒子は加熱後の収縮が小さい、発泡性樹脂粒子を提供できること。
【0067】
すなわち、本発明の別の一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子は、以下のような構成を有する:構成単位としてメタクリル酸メチル単位およびアクリル酸エステル単位を含む基材樹脂と、発泡剤とを含み、前記基材樹脂の重量平均分子量は22.0万~31.0万であり、前記基材樹脂のガラス転移温度は114.5℃以上である、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
【0068】
本発明の別の一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子は、上述した構成を有するため、(a)発泡性に優れ、かつ(b)発泡性が低く、かつ収縮抑制性に優れる発泡粒子を提供できるという利点を有する。また、上述した構成を有する構成を有する発泡性樹脂粒子は、内部融着性および鋳造性に優れた発泡成形体を効率良く提供できるという利点を有する。
【0069】
本発明の別の一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子にかかるその他の態様は、適宜、上述の記載を援用する。
【0070】
(変形例2)
本発泡性樹脂粒子は、内部融着性に優れた発泡成形体を提供できる。発泡成形体の内部融着性は、発泡成形体を破断して得られる破断面における、発泡粒子の界面以外で破断している当該発泡粒子の割合によって評価できる。例えば、本発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子を、成形してなる発泡成形体を破断して得られる当該発泡成形体の破断面において、当該破断面を構成している全発泡粒子(100%)に対する、前記発泡粒子の界面以外で破断している当該発泡粒子の割合(D)が85%以上である場合、発泡成形体は内部融着性に優れるといえる。
【0071】
すなわち、本発明の別の一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子は、以下のような構成を有する:構成単位としてメタクリル酸メチル単位およびアクリル酸エステル単位を含む基材樹脂と、発泡剤とを含み、以下(a)~(e)を満たす発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子:
(a)前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を100℃の水蒸気で300秒間加熱して得られるメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子の嵩密度(A)が0.0285g/cm3以下である;
(b)前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を発泡してなるメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子100cm3を100℃の水蒸気で30秒間加熱後、25℃で1分間放置して得られるメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子の体積(B)が140cm3以下である;
(c)前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を発泡してなるメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子100cm3を100℃の水蒸気で180秒間加熱後、25℃で1分間放置して得られるメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子の体積(C)が160cm3超である; (d)前記基材樹脂のガラス転移温度が114.5℃以上である;かつ
(e)前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を発泡してなるメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子を、成形してなるメタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体を破断して得られる当該メタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体の破断面において、メタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子の界面以外で破断している当該メタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子の割合(D)が90%以上である。
【0072】
ここで、本発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子を、型内成形してなる発泡成形体の破断面における割合(D)の測定方法は特に限定されるものではないが、例えば以下(1)~(4)を順に行う方法が挙げられる:(1)発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子を、金型(例えば、長さ2000mm、幅1000mmおよび厚さ525mmの成形空間を有する金型)を使用して型内成形し、発泡成形体を調製する;(2)発泡成形体が厚さ方向で均等に5分割されるように、熱線スライサーを用いて、発泡成形体の厚さ方向に対して垂直に発泡成形体を切断する;(3)5分割した内の真ん中の1つ(切断前の発泡成形体の厚さ方向210mm~315mmの部分)について、厚さ方向に垂直な面を、長さ方向の中央部で幅方向に沿って折り曲げ発泡成形体を破断する;(4)得られた破断面を目視で観察し、破断面を構成している全粒子および粒子界面以外で破断している発泡粒子を計測し、以下式に基づき割合(D)を算出する;
割合(D)(%)=破断面のうち粒子界面以外で破断している粒子数/破断面を構成している粒子数×100。
【0073】
割合(D)の測定に用いる発泡成形体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば以下(1)~(8)を順に行う方法が挙げられる:(1)発泡性樹脂粒子を加圧式の発泡機(例えば大開工業社製のBHP)に投入する;(2)蒸気吹き込み圧0.10MPa~0.16MPa、かつ発泡機内圧力0.005MPa~0.030MPaの条件にて発泡機内に蒸気(例えば水蒸気)を吹き込み、発泡性樹脂粒子を加熱する;(3)前記(2)により、所望の発泡倍率(例えば嵩倍率60倍)に至るまで発泡性樹脂粒子を発泡する;(4)得られた発泡粒子を常温(例えば25℃)下で3日間放置し、嵩倍率60倍の発泡粒子を得る;(5)金型(例えば、長さ2000mm、幅1000mmおよび厚さ525mmの成形空間を有する金型)を有する成形機(例えばダイセン製のPEONY-205DS)に嵩倍率60倍の発泡粒子を充填する;(6)蒸気吹き込み圧0.15MPa~0.25MPaにて金型内に蒸気(例えば水蒸気)を吹き込み、金型内の圧力が0.030Mpa~0.060MPaの条件下で、発泡圧力が0.070MPa~0.080MPaとなるまで真空吸引加熱による型内成形を行い、発泡粒子同士を融着させる;(7)発泡圧力が0.070MPa~0.080MPaに到達した後、80℃~110℃の金型内に1000秒間放置し、その後、発泡成形体を取り出す;(8)取り出した発泡成形体を60℃にて3日間放置し、発泡成形体を得る。なお、割合(D)の測定に用いる発泡成形体の製造に使用する発泡性樹脂粒子は、篩い分けにより粒子径0.5mm~1.4mmの発泡性樹脂粒子とされたものであってもよい。
【0074】
割合(D)は、融着率ともいえる。内部融着性により優れることから、割合(D)は、85%以上であることが好ましい。
【0075】
〔3.発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法〕
本発泡性樹脂粒子の製造方法としては、特に限定されず、例えば水性懸濁液中で単量体混合物の重合を行う懸濁重合が挙げられる。
【0076】
本発泡性樹脂粒子の製造方法の好ましい態様としては、例えば次のような方法が挙げられる:メタクリル酸メチル単量体およびアクリル酸エステル単量体を含む単量体混合物を共重合する共重合工程と、得られた共重合体に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程とを含み、前記共重合工程は、(a)前記単量体混合物100重量部に対して0.08重量部~0.20重量部の第1の難水溶性無機塩の存在下、単量体混合物の共重合を開始する開始工程と、(b)前記開始工程後、重合転化率が35%~70%の時点で、前記単量体混合物100重量部に対して0.08重量部~0.50重量部の第2の難水溶性無機塩を、反応混合物中に添加する添加工程と、を含み、前記共重合工程にて得られる前記共重合体の重量平均分子量は22.0万~31.0万であり、ガラス転移温度は114.5℃以上である、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法。
【0077】
本明細書において、「難水溶性無機塩」とは、25℃の水に対する溶解度が0.1mg/ml以下である無機塩を意図する。
【0078】
上述した本発泡性樹脂粒子の製造方法の好ましい態様もまた、本発明の一実施形態である。以下、上述した本発泡性樹脂粒子の製造方法の好ましい態様、すなわち本発明の一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法について説明する。なお以下に詳説した事項以外は、適宜、〔2.発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子〕の項の記載を援用する。また、以下、共重合工程で得られる共重合体(基材樹脂ともいえる)を単に「樹脂粒子」と称する場合もある。また、本明細書において、「本発明の一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法」を「本製造方法」と称する場合もある。
【0079】
本発明の一実施形態における「水性懸濁液」とは、攪拌機等を用いて、単量体液滴および/または樹脂粒子を、水または水溶液中に分散させた状態の液体を指す。水性懸濁液中には、(a)水溶性の界面活性剤および単量体が溶解していても良く、また(b)水に不溶の分散剤、重合開始剤、連鎖移動剤、架橋剤、気泡調整剤、難燃剤、溶剤等が単量体と共に分散していても良い。
【0080】
水性懸濁液中の、単量体および重合体(メタクリル酸メチル系樹脂であり、共重合体ともいう)と、水または水溶液と、の重量比は、得られるメタクリル酸メチル系樹脂/水または水溶液の比として、1.0/0.6~1.0/3.0が好ましい。なお、ここで言及する「水溶液」とは、水と、メタクリル酸メチル系樹脂以外の成分とからなる溶液を意図する。
【0081】
本発明の一実施形態に係る共重合工程は、単量体混合物100重量部に対して0.08重量部~0.20重量部の第1の難水溶性無機塩の存在下、単量体混合物の共重合を開始する開始工程を含む。開始工程は、例えば、(a)水、(b)メタクリル酸メチル単量体およびアクリル酸エステル単量体を含む単量体混合物、(c)単量体混合物100重量部に対して0.08重量部~0.20重量部の第1の難水溶性無機塩、および任意で(d)架橋剤、重合開始剤、界面活性剤、難水溶性無機塩以外の分散剤、連鎖移動剤、気泡調整剤、難燃剤など、を含む水性懸濁液を用いて、単量体混合物の共重合を開始する工程である。
【0082】
本明細書において、「開始工程前」、すなわち「重合反応の開始前」を「重合初期」と称する場合もある。開始工程において水性懸濁液に配合(添加)される第1の難水溶性無機塩、および任意で配合される重合開始剤などは、重合初期に使用される物質(原料)といえる。
【0083】
開始工程において、第1の難水溶性無機塩は、分散剤として機能し得る。開始工程すなわち重合初期において使用する第1の難水溶性無機塩としては、例えば、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ハイドロキシアパタイト、カオリンなどが挙げられる。
【0084】
また、本発明の一実施形態に係る開始工程において、(a)ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子、および/または(b)α-オレフィンスルホン酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダなどのアニオン系界面活性剤を、第1の難水溶性無機塩と併用してもよい。
【0085】
本発明の一実施形態に係る開始工程において使用する第1の難水溶性無機塩としては、樹脂粒子および/または単量体の液滴の保護力の観点から、第三リン酸カルシウムが好ましい。開始工程は、液滴の分散安定性の観点から、第1の難水溶性無機塩である第三リン酸カルシウムおよびアニオン系界面活性剤であるα-オレフィンスルホン酸ソーダの存在下、単量体混合物の共重合を開始する工程であることが好ましい。
【0086】
本発明の一実施形態に係る開始工程は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.08重量部~0.20重量部、より好ましくは0.10重量部~0.19重量部、の第1の難水溶性無機塩の存在下、単量体混合物の共重合を開始する工程であることが好ましい。単量体混合物100重量部に対して0.08重量部以上の第1の難水溶性無機塩の存在下単量体混合物の共重合を開始する場合、得られる発泡性樹脂粒子の体積平均粒子径が大きくなりすぎる虞がない。単量体混合物100重量部に対して0.20重量部以下の第1の難水溶性無機塩の存在下単量体混合物の共重合を開始する場合、発泡性樹脂粒子の微粒子が多く発生する虞がない。すなわち、上述の範囲内の量の第1の難水溶性無機塩の存在下、単量体混合物の共重合を開始することにより、所望の体積平均粒子径を有する発泡性樹脂粒子を収率よく得ることができる。
【0087】
本発明の一実施形態に係る開始工程において、水溶性高分子および/またはアニオン系界面活性剤を第1の難水溶性無機塩と併用する場合について説明する。この場合、水溶性高分子および/またはアニオン系界面活性剤の水性懸濁液中の濃度としては、単量体混合物の濃度を基準(1000000ppm)として、30ppm~100ppmが好ましい。
【0088】
共重合工程は、開始工程後、重合転化率が35%~70%の時点で、単量体混合物100重量部に対して0.08重量部~0.50重量部の第2の難水溶性無機塩を、反応混合物中に添加する添加工程を含むことが好ましい。
【0089】
本明細書において、「開始工程後」、すなわち「重合反応の開始後」を「重合途中」と称する場合もある。添加工程において、反応混合物中に添加される第2の難水溶性無機塩は、重合途中に使用される物質(原料)といえる。
【0090】
本発明の一実施形態に係る共重合工程において、単量体混合物の重合(共重合)が懸濁重合で行われる場合、添加工程における反応混合物は、水性懸濁液ともいえる。
【0091】
本発明の一実施形態に係る添加工程において、第2の難水溶性無機塩は、分散剤として機能し得る。添加工程すなわち重合途中において使用する第2の難水溶性無機塩としては、第1の難水溶性無機塩として既に例示した物質が挙げられる。第2の難水溶性無機塩としては、第三リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイトおよびカオリンからなる群から選択される1種以上であることが好ましく、第三リン酸カルシウムであることがより好ましい。当該構成によると、分散剤の添加(追加)以降の樹脂粒子同士の合一を防ぐことができ、目的の(所望の)体積平均粒子径の発泡性樹脂粒子が容易に得られるという利点を有する。
【0092】
添加工程は、開始工程後、重合転化率が35%~70%の時点で、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.08重量部~0.50重量部、より好ましくは0.10重量部~0.50重量部、より好ましくは0.10重量部~0.40重量部、さらに好ましくは0.10重量部~0.30重量部、特に好ましくは0.10重量部~0.20重量部、の第2の難水溶性無機塩を、反応混合物中に添加する工程であることが好ましい。添加工程において、単量体混合物100重量部に対して0.08重量部以上の第2の難水溶性無機塩を反応混合物中に添加する場合、得られる発泡性樹脂粒子の体積平均粒子径が大きくなりすぎる虞がない。添加工程において、単量体混合物100重量部に対して0.50重量部以下の第2の難水溶性無機塩を反応混合物中に添加する場合、難水溶性無機塩の使用量が過剰とならず、生産コストを削減できる。すなわち、添加工程において、上述の範囲内の量の第2の難水溶性無機塩を反応混合物中に添加することにより、所望の体積平均粒子径を有する発泡性樹脂粒子を、低い生産コストで得ることができる。
【0093】
添加工程では、好ましくは重合転化率が35%~70%の時点で、より好ましくは重合転化率が35%~60%の時点で、さらに好ましくは重合転化率が40%~50%の時点で第2の難水溶性無機塩を反応混合物中に添加することが好ましい。添加工程において、重合転化率が35%以上の時点で第2の難水溶性無機塩を反応混合物中に添加する場合、得られる発泡性樹脂粒子の体積平均粒子径が小さくなりすぎる虞がない。添加工程において、重合転化率が70%以下の時点で第2の難水溶性無機塩を反応混合物中に添加する場合、得られる発泡性樹脂粒子の体積平均粒子径が大きくなりすぎる虞がない。すなわち、添加工程において、重合転化率が上述の範囲内の時点で第2の難水溶性無機塩を反応混合物中に添加する場合、所望の体積平均粒子径を有する発泡性樹脂粒子を容易に得ることができる。本明細書における重合転化率の測定方法については、下記実施例にて詳述する。
【0094】
本発明の一実施形態に係る共重合工程は、重合温度を変化させて少なくとも2段階で実施されることが好ましい。重合温度が異なる2つの共重合工程を、便宜上、以下、第1共重合工程および第2共重合工程と称する。共重合工程は、重合温度が異なる連続した第1共重合工程および第2共重合工程を含むことが好ましいともいえる。
【0095】
本発明の一実施形態に係る共重合工程は、例えば、(a)70℃~90℃の重合温度で、かつ低温分解型の重合開始剤を用いて実施される第1共重合工程と、(b)当該第1共重合工程に連続して実施され、第1共重合工程よりも高い重合温度(例えば90℃~110℃)で、かつ高温分解型の重合開始剤を用いて実施される第2共重合工程と、を含むことが好ましい。共重合工程では、上述した第1共重合工程において主要な重合反応が行われ、上述した第2共重合工程において残存する単量体を低減させることが好ましい。なお、(i)第1共重合工程の温度が70℃以上90℃未満であり、かつ第2共重合工程の温度が90℃~110℃であってもよく、(ii)第1共重合工程の温度が70℃~90℃であり、かつ第2共重合工程の温度が90℃超110℃以下であってもよい。
【0096】
重合開始剤としては、一般に熱可塑性重合体の製造に用いられるラジカル発生型重合開始剤を用いることができる。代表的なラジカル発生型重合開始剤としては、例えば、(a)過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、イソプロピル-t-ブチルパーオキシカーボネート、過安息香酸ブチル、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーピバレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-アミルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネートなどの有機過酸化物、および(b)アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物、が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0097】
上述したラジカル発生型重合開始剤のうち、(a)過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーピバレート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスジメチルバレロニトリルは低温分解型の重合開始剤であり、(b)t-ブチルパーオキシベンゾエート、イソプロピル-t-ブチルパーオキシカーボネート、過安息香酸ブチル、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-アミルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンおよびt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネートは高温分解型の重合開始剤である。
【0098】
重合開始剤の使用量は、第1共重合工程における使用量と第2共重合工程における使用量とを合計して、例えば、単量体混合物100重量部に対して0.1重量部~0.5重量部以下が好ましい。当該構成によると、発泡性に優れる発泡性樹脂粒子が得られる。
【0099】
本発明の一実施形態に係る開始工程は、(a)第1の難水溶性無機塩、低温分解型の重合開始剤および高温分解型の重合開始剤の存在下、単量体混合物の共重合を開始する工程であってもよく、(b)第1の難水溶性無機塩および低温分解型の重合開始剤の存在下、単量体混合物の共重合を開始する工程であってもよい。開始工程が第1の難水溶性無機塩および低温分解型の重合開始剤の存在下単量体混合物の共重合を開始する工程である場合、高温分解型の重合開始剤は、開始工程後すなわち重合途中に、反応混合物(水性懸濁液)中に添加されてもよい。
【0100】
開始工程は、70℃~90℃または70℃以上90℃未満の重合温度で実施(開始)されてもよい。開始工程が70℃~90℃または70℃以上90℃未満の重合温度で単量体混合物の共重合を開始する工程である場合、開始工程後すなわち重合途中に、重合温度を重合開始時よりも高い温度(例えば90℃超110℃以下または90℃~110℃)に変更してもよい。
【0101】
本発明の一実施形態に係る共重合工程において、連鎖移動剤を使用することが好ましい。連鎖移動剤としては、特に限定されず、メタクリル酸メチル系樹脂の重合に用いられる周知の物質を使用できる。連鎖移動剤としては、例えば、(a)アルキルメルカプタン類、チオグリコール酸エステル類等の単官能連鎖移動剤、および(b)多価アルコール(例えばエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ソルビトール等)の水酸基をチオグリコール酸または3-メルカプトプロピオン酸でエステル化した多官能性連鎖移動剤、があげられる。アルキルメルカプタン類としては、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタンおよびt-ドデシルメルカプタンなどが挙げられる。連鎖移動剤としては、分子量制御が容易であることから、n-ドデシルメルカプタンが好ましい。
【0102】
共重合工程において使用する連鎖移動剤の使用量を変更することにより、得られる発泡性樹脂粒子の分子量を調節することができる。連鎖移動剤の使用量は、例えば、単量体混合物100重量部に対して0.100重量部以上0.500重量部未満が好ましく、0.200重量部~0.400重量部がより好ましく、0.250重量部~0.300重量部がさらに好ましい。
【0103】
本発明の一実施形態に係る発泡剤含浸工程では、共重合工程にて得られた共重合体であるメタクリル酸メチル系樹脂粒子に発泡剤を含浸させることにより、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を得ることができる。
【0104】
本発明の一実施形態に係る発泡剤含浸工程は任意の時点で行われることが可能であり、例えば、第2共重合工程と共に行われるか、または第2共重合工程の後に行われ得る。
【0105】
本発明の一実施形態に係る発泡剤含浸工程は、単量体から共重合体への重合転化率が80%~95%の時点で、得られた共重合体に発泡剤を含浸させることが好ましい。重合転化率が80%以上の時点で共重合体に発泡剤を含浸させる場合、発泡剤が共重合体の内部へ適度に含浸されるため、共重合体の軟化による共重合体同士の凝集が生じる虞が無く、製造収率が良好となる。重合転化率が95%以下の時点で共重合体に発泡剤を含浸させる場合、発泡剤が共重合体の内部まで十分に含浸されるため、得られる発泡性樹脂粒子を発泡させてなる発泡粒子に二重の気泡構造(硬芯)が形成される虞がない。その結果、当該発泡粒子を型内成形することにより、表面品質に優れる発泡成形体を得ることができる。
【0106】
本発明の一実施形態に係る発泡剤含浸工程において、共重合体であるメタクリル酸メチル系樹脂粒子に含浸させる発泡剤の量(使用量)は、好ましい態様を含み、〔2.発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子〕の(発泡剤)の項にて記載した、発泡性樹脂粒子における発泡剤の含有量と同じである。当該構成によると、十分な発泡性を有する発泡性樹脂粒子が得られるとともに、発泡剤含浸工程において共重合体の凝集を引き起こすことなく、安全に発泡性樹脂粒子を製造できる。
【0107】
本発明の一実施形態に係る発泡剤含浸工程において、共重合体に発泡剤を含浸させるときの処理温度(含浸温度とも称する。)および処理時間(含浸時間とも称する。)は特に限定されない。
【0108】
本発明の一実施形態に係る発泡剤含浸工程において、発泡剤を共重合体に含浸させるときの含浸温度は、95℃~120℃以下が好ましく、100℃~117℃以下がより好ましい。含浸温度が95℃以上である場合、発泡剤が共重合体の内部まで十分に含浸されるため、得られる発泡性樹脂粒子を発泡させてなるメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子に二重の気泡構造(硬芯)が形成される虞がない。その結果、当該発泡粒子を型内成形することにより、表面品質に優れる発泡成形体が得られる。含浸温度が120℃以下である場合、重合機内の圧力が高くなりすぎないため、大きな圧力に耐え得る重装備な含浸設備を必要とすることなく、均一な気泡構造を有する発泡粒子を提供し得る発泡性樹脂粒子を得ることができる。
【0109】
強度に優れる発泡成形体を提供し得る発泡性樹脂粒子を得るために、本製造方法において、共重合体の調製に芳香族系単量体(例えば、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、t-ブチルスチレンおよびクロルスチレン等の芳香族ビニル化合物)を使用してもよい。
【0110】
一方、燃焼時の残渣の少ない発泡成形体を提供し得る発泡性樹脂粒子を得るために、本製造方法において、芳香族単量体の使用量は少ない程好ましい。本製造方法において、単量体混合物100重量部中の芳香族系単量体の含有量は、2.5重量部以下が好ましく、2.5重量部未満がより好ましく、2.0重量部以下がより好ましく、1.5重量部以下がより好ましく、1.0重量部以下がさらに好ましく、0重量部が特に好ましい。すなわち、本製造方法における単量体混合物は、芳香族系単量体を含有しないことが特に好ましい。
【0111】
本製造方法において、さらに溶剤を使用してもよい。溶剤としては、沸点50℃以上のもの化合物が好ましく、例えば、(a)トルエン、へキサン、ヘプタン等のC6以上(炭素数6以上)の脂肪族炭化水素、及び(b)シクロヘキサン、シクロオクタン等のC6以上の脂環族炭化水素、などが挙げられる。溶剤としては、発泡性に優れる発泡性樹脂粒子を得る上で、トルエンおよび/またはシクロヘキサンが好ましい。
【0112】
溶剤の使用量は、特に限定されないが、単量体100重量部に対して1.5重量部以上3.0重量部以下含まれることが好ましい。溶剤の使用量が当該範囲内である場合、発泡性に優れる発泡性樹脂粒子が得られ、かつ、当該発泡性樹脂粒子を発泡させてなる発泡粒子を用いて、内部融着性に優れる発泡成形体を得ることができる。
【0113】
本製造方法において、溶剤を使用する時宜は特に限定されず、共重合工程、発泡剤含浸工程または共重合工程と発泡剤含浸工程との両方において使用できる。溶剤を反応混合物(水性懸濁液)中に添加するタイミングとしては、発泡剤を樹脂粒子へ含浸させる直前(すなわち発泡剤含浸工程の直前)に反応混合物中に添加するか、または、発泡剤と同時に反応混合物中に添加することが好ましい。
【0114】
本製造方法において、さらに可塑剤を使用してもよい。可塑剤としては、沸点200℃以上の高沸点可塑剤が好ましく、例えば、(a)ステアリン酸トリグリセライド、パルミチン酸トリグリセライド、ラウリン酸トリグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等の脂肪酸グリセライド、(b)ヤシ油、パーム油、パーム核油等の植物油、(c)ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート等の脂肪族エステル、及び(d)流動パラフィン、シクロヘキサン等の有機炭化水素、等があげられる。
【0115】
可塑剤の使用量、および可塑剤を使用する時宜は特に限定されず、適宜設定すればよい。
【0116】
上述した共重合工程および発泡剤含浸工程を経て得られた発泡性樹脂粒子の表面に、脂肪酸金属塩、融着促進剤および帯電防止剤などを塗布してもよい。すなわち、本製造方法は、発泡剤含浸工程にて得られた発泡性樹脂粒子の表面に脂肪酸金属塩、融着促進剤および帯電防止剤などを塗布する塗布工程をさらに有していてもよい。発泡性樹脂粒子の表面に塗布される脂肪酸金属塩、融着促進剤および帯電防止剤などを、「外添剤」と称する場合もある。
【0117】
発泡性樹脂粒子の表面に脂肪酸金属塩を塗布することにより、発泡粒子の製造過程での発泡性樹脂粒子および/または発泡粒子同士の互着(以下、ブロッキングという)を抑制するという利点を有する。脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム等が挙げられる。これら脂肪酸金属塩は1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。基材樹脂に含まれるメタクリル酸メチル単位との親和性、ブロッキング防止効果、および発泡成形体の融着性の観点から、脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸マグネシウムが好ましく、ステアリン酸亜鉛が特に好ましい。
【0118】
発泡性樹脂粒子の表面に融着促進剤を塗布することにより、発泡性樹脂粒子の表面にブロッキング防止剤を塗布する場合であっても成形時の融着性を確保できるという利点を有する。融着促進剤としては、(a)ラウリン酸トリグリセライド、ステアリン酸トリグリセライド、リノール酸トリグリセライド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドなどの脂肪酸トリグリセライド、(b)ラウリン酸ジグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、リノール酸ジグリセライドなどの脂肪酸ジグリセライド、(c)ラウリン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、リノール酸モノグリセライドなどの脂肪酸モノグリセライド、および(d)ヒマシ硬化油などの植物油、等が挙げられる。これら融着促進剤は1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。基材樹脂に含まれるメタクリル酸メチル単位との親和性、および融着促進効果に優れることから、融着促進剤としては、ヒマシ硬化油およびステアリン酸トリグリセライドが好ましく、ヒマシ硬化油が特に好ましい。
【0119】
発泡性樹脂粒子の表面に帯電防止剤を塗布することにより、原料送流時における静電気による阻害を抑制することができる、および発泡粒子がサイロに付着することを抑制することができるという利点を有する。帯電防止剤としては、一般的に使用される、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)ドデシルアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)テトラデシルアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)ヘキサデシルアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)オクタデシルアミン、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシテトラデシル)アミン、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシヘキサデシル)アミン、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシオクタデシル)アミン、N-ヒドロキシプロピル-N-(2-ヒドロキシテトラデシル)アミン、N-ヒドロキシブチル-N-(2-ヒドロキシテトラデシル)アミン、N-ヒドロキシペンチル-N-(2-ヒドロキシテトラデシル)アミン、N-ヒドロキシペンチル-N-(2-ヒドロキシヘキサデシル)アミン、N-ヒドロキシペンチル-N-(2-ヒドロキシオクタデシル)アミン、N,N-ビス(2―ヒドロキシエチル)ドデシルアミン、N,N-ビス(2―ヒドロキシエチル)テトラデシルアミン、N,N-ビス(2―ヒドロキシエチル)ヘキサデシルアミン、N,N-ビス(2―ヒドロキシエチル)オクタデシルアミン等の1アミノ2ヒドロキシ化合物、グリセリン、脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が挙げられる。これら帯電防止剤は1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。帯電防止性能が最も良好であるため、帯電防止剤としては、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンが特に好ましい。
【0120】
〔4.メタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子〕
〔2.発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子〕の項に記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、または〔3.発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法〕の項に記載の製造方法により製造された発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、を発泡してなる発泡粒子もまた、本発明の一実施形態である。
【0121】
「本発明の一実施形態に係るメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子」を、以下「本発泡粒子」と称する場合もある。
【0122】
本発泡性樹脂粒子は、一般的な発泡方法によって、発泡粒子とすることができる。具体的には、例えば以下の(1)~(3)の操作を順に行うことにより、メタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子を得ることができる:(1)発泡性樹脂粒子を加圧式の発泡機(例えば大開工業社製のBHP)に投入する;(2)蒸気吹き込み圧0.10MPa~0.16MPa、かつ発泡機内圧力0.005MPa~0.030MPaの条件にて発泡機内に蒸気(例えば水蒸気)を吹き込み、当該発泡性樹脂粒子を加熱する;(3)前記(2)により、所望の発泡倍率(例えば嵩倍率60倍)に至るまで発泡性樹脂粒子の発泡を行い、発泡粒子を得る。
【0123】
発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の発泡は、当該発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子から後述するメタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体を得るために、予備的に行う発泡ともいえる。そのため、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の発泡は、「予備発泡」と称される場合もあり、メタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子を「メタクリル酸メチル系予備発泡粒子」と称する場合もある。発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の発泡に用いる発泡機(例えば嵩密度(A)の測定に用いる発泡機)を「予備発泡機」と称する場合もある。
【0124】
本発泡粒子は、上述した構成を有するため、前記体積(B)が140cm3以下であり、それ故、発泡速度が遅いものである。また、本発泡粒子は、上述した構成を有するため、前記体積(C)が160cm3超であり、それ故、収縮抑制性に優れるものである。すなわち、本発泡粒子は、内部融着性および鋳造性に優れる発泡成形体を提供できる、という利点を有する。
【0125】
本発泡粒子に関して、上述した事項以外は、適宜、〔2.発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子〕および〔3.発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法〕の項の記載を援用する。
【0126】
〔5.メタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体〕
〔4.メタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子〕の項に記載のメタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子を型内成形してなる発泡成形体もまた、本発明の一実施形態である。
【0127】
「本発明の一実施形態に係るメタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体」を、以下「本発泡成形体」と称する場合もある。
【0128】
本発泡粒子は、一般的な型内成形方法によって成形することにより、発泡成形体とすることができる。具体的には、例えば以下の(1)~(3)の操作を順に行うことにより、発泡成形体を得ることができる:(1)金型を有する成形機(例えばダイセン製のPEONY-205DS)に発泡粒子を充填する;(2)蒸気吹き込み圧0.15MPa~0.25MPaにて金型に蒸気(例えば水蒸気)を吹き込み、金型内の圧力が0.030Mpa~0.060MPaの条件下で、発泡圧力が0.070MPa~0.080MPaとなるまで真空吸引加熱による型内成形を行い、発泡粒子同士を融着させる;(3)発泡圧力が0.070MPa~0.080MPaに到達した後、80℃~110℃の金型内に1000秒間放置し、その後、発泡成形体を取り出ことにより、発泡成形体を得る。
【0129】
本発泡成形体は、上述した構成を有するため、内部融着性および鋳造性に優れるものである。特に、本発泡成形体は、前記(D)が85%以上であることが好ましい。これらの結果、本発泡成形体は、消失模型として好適に使用できる。
【0130】
本発泡成形体の鋳造性の評価方法については、下記の実施例にて詳述する。なお、フルモールド法では鋳物の表面に残渣欠陥が集まりやすいため、一般に、加工代を付け、製品寸法より大きくした発泡成形体を用いて鋳造を行う。鋳造後は鋳物について切削加工を行い、鋳物から加工代ごと残渣欠陥を除去する。この時、残渣欠陥が大きい場合は、鋳物から残渣欠陥を除去しきれないことがある。鋳物に残渣欠陥がある場合は強度等の機械的性質が影響を受け、鋳物が短期間の使用で破損する恐れがあるため好ましくない。鋳物の残渣欠陥がない場合、これらの問題が解消されるため、効率よく耐久性の良い鋳物を提供することができる。
【0131】
本発泡成形体に関して、上述した事項以外は、適宜、〔2.発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子〕、〔3.発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法〕および〔4.メタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子〕の項の記載を援用する。
【0132】
〔6.消失模型〕
〔5.メタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体〕の項に記載のメタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体を含む消失模型もまた、本発明の一実施形態である。
【0133】
本発明の一実施形態に係る消失模型は、内部融着性および鋳造性に優れるため、様々な金属鋳造に好適に利用できる。
【実施例0134】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明の一実施形態をより詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0135】
(発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の重合転化率)
重合中に水性懸濁液のサンプリングを行い、当該水性懸濁液をろ過した。ろ紙上に残った樹脂成分の重量を計量し、得られた重量を加熱前重量とした。次いで、当該樹脂成分に重合禁止剤を加えた後150℃で30分樹脂成分を加熱することで揮発成分を除去した。その後、得られた樹脂成分の重量を計量し、得られた重量を加熱後重量とした。下記式を用いて重合転化率を算出した。
重合転化率(%)=加熱後重量/加熱前重量×100。
【0136】
(ガラス転移温度)
以下の方法により測定して得られたガラス転移温度を、発泡性樹脂粒子が含む基材樹脂のガラス転移温度とした:(1)発泡性樹脂粒子を150℃で30分間乾燥処理して得られた樹脂を試料とした;(2)当該試料4mgをアルミ容器に入れた後、アルミ容器に圧縮機を用いてアルミの蓋を取り付け、測定サンプルを得た;(3)当該測定サンプルについて、DSC測定機(日立製DSC7000X)を用いて、50℃から150℃まで昇温(昇温速度10℃/分)し、150℃から50℃まで降温(降温速度10℃/分)し、再度50℃から150℃まで昇温(昇温速度10℃/分)した;(4)2回目の昇温時に得られるDSC曲線を用いてガラス転移温度を算出した。なお、ここでのガラス転移温度はJIS K7121に定められた中間点ガラス転移温度を意図する。
【0137】
(重量平均分子量)
以下の方法により測定して得られる重量平均分子量を、発泡性樹脂粒子が含む基材樹脂の重量平均分子量とした:(1)発泡性樹脂粒子0.02gをTHF20mlに溶解させた;(2)その後、得られた溶解液中のゲル成分をろ過した;(3)次いで、THFに可溶な成分(すなわちろ液)のみを試料として、ゲルパーミェーションクロマトグラフ(GPC)を用いて、以下の条件にてGPC測定を行った;(4)GPC測定により得られるGPC測定チャートから、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を算出した。なお、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)はポリスチレン換算の相対値である。
<GPC測定の条件>
測定装置:東ソー社製、高速GPC装置 HLC-8220
使用カラム:東ソー社製、SuperHZM-H×2本、SuperH-RC×2本
カラム温度:40℃、移動相:THF(テトラヒドロフラン)
流量:0.35ml/分、注入量:10μl
検出器:RI。
【0138】
(発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の発泡性)
以下(1)~(6)を順に行い、発泡性樹脂粒子の嵩密度(A)を算出した:(1)発泡性樹脂粒子を10g量り取り、当該発泡性樹脂粒子の表面にブロッキング防止剤を塗布した;(2)当該発泡性樹脂粒子を、吹き出し口を有する蒸し器に投入した;(3)100℃の水蒸気を蒸し器に供給し、発泡性樹脂粒子を300秒間加熱することにより発泡粒子を得た;(4)得られた発泡粒子を1000cm3のメスシリンダーへ入れた;(5)メスシリンダーの目盛から、発泡粒子の体積(cm3)を測定した;(6)以下の式により、発泡粒子の嵩密度を算出した;
嵩密度(g/cm3)=10(g)/発泡粒子の体積(cm3)。
【0139】
下記の基準に基づき、得られた嵩密度(A)から発泡性樹脂粒子の発泡性を評価した。
〇(良好):嵩密度(A)が0.0285g/cm3以下
×(不良):嵩密度(A)が0.0285g/cm3より大きく0.0333g/cm3以下
××(非常に不良):嵩密度(A)が0.0333g/cm3を超える。
【0140】
(メタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子の発泡性)
発泡性樹脂粒子を篩い分けして粒子径0.5mm~1.4mmの発泡性樹脂粒子を分取した。分取した発泡性樹脂粒子を用いて、以下(1)~(3)を順に行い、嵩倍率60倍の発泡粒子を得た:(1)発泡性樹脂粒子を加圧式の発泡機である大開工業社製のBHPに投入した;(2)蒸気吹き込み圧0.10MPa~0.16MPa、かつ発泡機内圧力0.005MPa~0.030MPaの条件にて発泡機内に水蒸気を吹き込み、発泡性樹脂粒子を加熱した;(3)前記(2)により、嵩倍率60倍に至るまで発泡性樹脂粒子の発泡を行い、嵩倍率60倍の発泡粒子を得た。
【0141】
得られた発泡粒子を用いて、以下の(1)~(5)を順に実施し、発泡粒子の体積(B)を測定した:(1)嵩倍率60倍の発泡粒子100cm3を量り取り、吹き出し口を有する蒸し器に投入した;(2)100℃の水蒸気を蒸し器に供給し、発泡粒子を30秒間加熱した;(3)加熱後、発泡粒子を蒸し器から取り出し、25℃にて1分間放置した:(4)発泡粒子を1000cm3のメスシリンダーへ入れた;(5)メスシリンダーの目盛から、発泡粒子の体積(B)を測定した。下記の基準に基づき、得られた体積(B)から発泡粒子の発泡性を評価した。なお、体積(B)が小さいほど、すなわち発泡粒子の発泡性が低いほど、高い評価とした。
○(良好):体積(B)が140cm3以下
×(不良):体積(B)が140cm3超150cm3未満
××(非常に不良):体積(B)が150cm3以上。
【0142】
(メタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子の収縮抑制性)
前記(メタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子の発泡性)の項に記載の方法により、嵩倍率60倍の発泡粒子を得た。得られた発泡粒子を用いて、以下の(1)~(5)を順に実施し、発泡粒子の体積(C)を測定した:(1)嵩倍率60倍の発泡粒子100cm3を量り取り、吹き出し口を有する蒸し器に投入した;(2)100℃の水蒸気を蒸し器に供給し、発泡粒子を180秒間加熱した;(3)加熱後、発泡粒子を蒸し器から取り出し、25℃にて1分間放置した;(4)発泡粒子を1000cm3メスシリンダーへ入れた;(5)メスシリンダーの目盛から、発泡粒子の体積(C)を測定した。下記の基準に基づき、得られた体積(C)から発泡粒子の収縮抑制性を評価した。
○(良好):体積(C)が160cm3超
×(不良):体積(C)が155cm3超160cm3以下
××(非常に不良):体積(C)が155cm3以下。
【0143】
(メタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体の内部融着性)
発泡性樹脂粒子を篩い分けして粒子径0.5mm~1.4mmの発泡性樹脂粒子を分取した。
【0144】
分取した発泡性樹脂粒子を用いて、以下の(1)~(8)を順に実施し、発泡成形体を得た:(1)発泡性樹脂粒子を加圧式の発泡機である大開工業社製のBHPに投入した;(2)蒸気吹き込み圧0.10MPa~0.16MPa、かつ発泡機内圧力0.005MPa~0.030MPaの条件にて発泡機内に水蒸気を吹き込み、発泡性樹脂粒子を加熱した;(3)前記(2)により、嵩倍率60倍に至るまで発泡性樹脂粒子を発泡した;(4)得られた発泡粒子を常温(25℃)下で3日間放置し、嵩倍率60倍の発泡粒子を得た;(5)長さ2000mm、幅1000mmおよび厚さ525mmの金型を有する成形機(ダイセン製のPEONY-205DS)に嵩倍率60倍の発泡粒子を充填した;(6)蒸気吹き込み圧0.15MPa~0.25MPaにて金型内に水蒸気を吹き込み、金型内の圧力が0.030Mpa~0.060MPaの条件下で、発泡圧力が0.070MPa~0.080MPaとなるまで真空吸引加熱による型内成形を行い、発泡粒子同士を融着させた;(7)発泡圧力が0.070MPa~0.080MPaに到達した後、80℃~110℃の金型内に1000秒間放置し、その後、発泡成形体を取り出した;(8)取り出した発泡成形体を60℃にて3日間放置し、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体は、長さ2000mm、幅1000mmおよび厚さ525mmであった。
【0145】
得られた発泡成形体を用いて、以下(1)~(3)を順に行い、当該発泡成形体の破断面における割合(D)を測定した:(1)発泡成形体が厚さ方向で均等に5分割されるように、熱線スライサーを用いて、発泡成形体の厚さ方向に対して垂直に発泡成形体を切断した;(2)5分割した内の真ん中の1つ(切断前の発泡成形体の厚さ方向210mm~315mmの部分)について、厚さ方向に垂直な面を、長さ方向の中央部で幅方向に沿って折り曲げ発泡成形体を破断した;(3)得られた破断面を目視で観察し、破断面を構成している全粒子および粒子界面以外で破断している発泡粒子を計測し、以下式に基づき割合(D)を算出した;
割合(D)(%)=破断面のうち粒子界面以外で破断している粒子数/破断面を構成している粒子数×100。
【0146】
得られた割合(D)に基づき、以下の基準で発泡成形体の内部融着性を評価した。
○(優れる):割合(D)が85%以上
×(不良):割合(D)が75%以上85%未満
××(非常に不良):割合(D)が75%未満。
【0147】
(メタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体の鋳造性)
発泡成形体の鋳造性を、以下の方法で測定および評価した:(1)発泡粒子を用いて縦2000mm×横1000mmx厚み500mmの発泡成形体を製造した;(2)得られた発泡成形体を加工して発泡模型(消失模型)を製造した:(3)得られた発泡模型を用いてフルモールド法にて鋳物の製造(鋳造)を行った。ここで、注湯材質はFCD700とした;(4)得られた鋳物の表面にショットブラストを行い、鋳造時に使用した鋳物砂の除去を行った;(5)その後、得られた鋳物について、底面を除く鋳肌を10mm切削加工した;(6)次いで、得られた鋳物について、残渣等の鋳造欠陥が鋳物中央部にあるか否かを、目視および磁粉探傷試験の実施により確認した。得られた結果に基づき、以下の基準で鋳造性の評価を行った。
【0148】
(鋳造性の評価)
メタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体の鋳造性を以下の基準で評価した。
〇(優れる):鋳物に残渣欠陥がない場合
×(不良):鋳物に残渣欠陥がある場合
××(非常に不良):鋳物に多数の残渣欠陥がある場合
(実施例1)
撹拌機付き6Lオートクレーブに、水150重量部、第1の難水溶性無機塩として第三リン酸カルシウム0.15重量部、α-オレフィンスルホン酸ソーダ0.0075重量部、NaCl0.3重量部、ラウロイルパーオキサイド0.08重量部、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.1重量部、架橋剤として1,6-ヘキサンジオールジアクリレート0.1重量部、連鎖移動剤としてn-ドデシルメルカプタン0.265重量部および紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール0.026重量部を仕込み、第1の難水溶性無機塩を含む混合液を調製した。その後、当該混合液中に、トルエン1.0重量部と、単量体混合物としてメタクリル酸メチル97.5重量部およびアクリル酸ブチル2.5重量部と、を仕込み、水性懸濁液を調製した。次いで、水性懸濁液の温度を80℃に昇温して重合を開始し、すなわち開始工程を実施した。重合開始から1時間45分経過後(開始工程後)、重合転化率を測定したところ40%~50%であった。重合開始から1時間45分経過後(開始工程後)、第2の難水溶性無機塩として第三リン酸カルシウム0.10重量部を反応混合物(水性懸濁液)中に添加し、添加工程を実施した。上述した開始工程および添加工程は、第1共重合工程ともいえる。
【0149】
その後さらに2時間35分経過後、第三リン酸カルシウム0.24重量部、シクロヘキサン1.5重量部および発泡剤としてノルマルリッチブタン(ノルマルリッチブタンにおける、ノルマルブタンとイソブタンとの重量比(ノルマルブタン/イソブタン)は70/30である。)9重量部を水性懸濁液中に仕込んだ。その後、水性懸濁液の温度を101℃に昇温した。次いで、水性懸濁液の温度を101℃にて10時間保持することにより、共重合および共重合体への発泡剤の含浸(共重合工程(第2共重合工程ともいえる)および発泡剤含浸工程)を行った。その後、水性懸濁液を冷却した。水性懸濁液の冷却後、得られた生成物を洗浄、脱水および乾燥することにより発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を得た。
【0150】
得られた発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を、目開き0.500mmおよび1.400mmの篩で篩い分けした。かかる操作により、粒子径0.500mm~1.400mmの発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を採取した。
【0151】
次いで、得られた発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の表面に、脂肪酸金属塩としてステアリン酸亜鉛0.20重量部、および融着促進剤としてヒマシ硬化油0.05重量部を塗布した。
【0152】
続いて、上述の方法に従い、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の発泡性、メタクリル酸メチル系樹脂発泡粒子の発泡性および収縮抑制性、並びに、メタクリル酸メチル系樹脂発泡成形体の内部融着性および鋳造性を評価した。評価結果は表1に示した。
【0153】
(実施例2)
n-ドデシルメルカプタンの配合量を0.300重量部に変更した以外は、実施例1と同じ操作をし、表面にステアリン酸亜鉛およびヒマシ硬化油が塗布された、粒子径0.500mm~1.400mmの発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を得た。各評価項目を実施例1と同じ方法で評価した。評価結果は表1に示した。
【0154】
(比較例1)
使用した単量体混合物をメタクリル酸メチル95.0重量部およびアクリル酸ブチル5.0重量部に、並びにn-ドデシルメルカプタンの配合量を0.240重量部に変更した以外は、実施例1と同じ操作をし、表面にステアリン酸亜鉛およびヒマシ硬化油が塗布された、粒子径0.500mm~1.400mmの発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を得た。各評価項目を実施例1と同じ方法で評価した。評価結果は表1に示した。
【0155】
(比較例2)
使用した単量体混合物をメタクリル酸メチル96.5重量部およびアクリル酸ブチル3.5重量部に、並びにn-ドデシルメルカプタンの配合量を0.240重量部に変更した以外は、実施例1と同じ操作をし、表面にステアリン酸亜鉛およびヒマシ硬化油が塗布された、粒子径0.500mm~1.400mmの発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を得た。各評価項目を実施例1と同じ方法で評価した。評価結果は表1に示した。
【0156】
(比較例3)
n-ドデシルメルカプタンの配合量を0.240重量部に変更した以外は、実施例1と同じ操作をし、表面にステアリン酸亜鉛およびヒマシ硬化油が塗布された、粒子径0.500mm~1.400mmの発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を得た。各評価項目を実施例1と同じ方法で評価した。評価結果は表1に示した。
【0157】
(比較例4)
n-ドデシルメルカプタンの配合量を0.330重量部に変更した以外は、実施例1と同じ操作をし、表面にステアリン酸亜鉛およびヒマシ硬化油が塗布された、粒子径0.500mm~1.400mmの発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を得た。各評価項目を実施例1と同じ方法で評価した。評価結果は表1に示した。
【0158】
(比較例5)
使用した単量体混合物をメタクリル酸メチル97.0重量部およびアクリル酸ブチル3.0重量部に、並びにn-ドデシルメルカプタンの配合量を0.250重量部に変更した以外は、実施例1と同じ操作をし、粒子径0.500mm~1.400mmの発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を得た。各評価項目を実施例1と同じ方法で評価した。評価結果は表1に示した。
【0159】
本発明の一実施形態によると、内部融着性に優れた発泡成形体を効率よく提供し得る、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を提供できる。そのため、本発明の一実施形態は、フルモールド法により金属鋳造を行うときの消失模型として好適に利用できる。