(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049975
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】固体電解質及びその製造方法、並びに全固体リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0562 20100101AFI20230403BHJP
【FI】
H01M10/0562
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160060
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(71)【出願人】
【識別番号】504300088
【氏名又は名称】国立大学法人北海道国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 久男
(72)【発明者】
【氏名】脇谷 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】坂元 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】川口 昂彦
(72)【発明者】
【氏名】大野 智也
(72)【発明者】
【氏名】平井 慈人
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ06
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ02
5H029HJ02
(57)【要約】
【課題】イオン伝導率が高いLiLaZrO系の固体電解質及びその製造方法、並びに全固体型リチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】Li7-yLa3Zr2-(x+y)HfxWy-zMzO12(Mは、Mo及びVの少なくとも1つを示し、xは、0<x≦1.0、yは、0<y≦0.2、zは、0≦z≦0.2を満足する)を含む、固体電解質及びその製造方法、並びに全固体型リチウムイオン二次電池である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Li7-yLa3Zr2-(x+y)HfxWy-zMzO12(Mは、Mo及びVの少なくとも1つを示し、xは、0<x≦1.0、yは、0<y≦0.2、zは、0≦z≦0.2を満足する)を含む、固体電解質。
【請求項2】
xが、0<x≦0.5を満足する、請求項1に記載の固体電解質。
【請求項3】
yが、0<y≦0.05を満足する、請求項1又は請求項2に記載の固体電解質。
【請求項4】
正極と、負極と、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の固体電解質とを備える、全固体型リチウムイオン二次電池。
【請求項5】
液相法による請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の固体電解質の製造方法であって、
Hf及びWを含むZr前駆体を得る工程と、
La前駆体を得る工程と、
Li前駆体を得る工程と、
前記Zr前駆体と、前記La前駆体とを反応させて、ZrLa前駆体を得る工程と、
前記ZrLa前駆体と、前記Li前駆体とを反応させて、前駆体反応物を得る工程と、
前記前駆体反応物に加熱処理を施す工程と
を含む、固体電解質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電解質及びその製造方法、並びに全固体リチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、例えば、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコン、タブレット端末等のモバイル機器等の様々な用途で広く用いられている。全固体型リチウムイオン二次電池は、固体電解質を用いているため、発火の危険がない等のメリットがあり、開発が行われている。全固体型リチウムイオン二次電池は、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-272344号公報
【特許文献2】特開2016-040767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
全固体型リチウムイオン二次電池に備えられる固体電解質は、イオン伝導率が高いことが求められている。このようなニーズに対応するため、種々の材料系でイオン伝導率が高い固体電解質を製造するための技術が求められているが、そのような技術が十分でないのが現状である。
【0005】
本開示は、このような状況を鑑みてなされたものであり、本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、イオン伝導率が高いLiLaZrO系の固体電解質を提供することである。
また、本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記固体電解質を備えた全固体型リチウムイオン二次電池を提供することである。
また、本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記固体電解質の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の態様を含む。
<1> Li7-yLa3Zr2-(x+y)HfxWy-zMzO12(Mは、Mo及びVの少なくとも1つを示し、xは、0<x≦1.0、yは、0<y≦0.2、zは、0≦z≦0.2を満足する)を含む、固体電解質。
<2> xが、0<x≦0.5を満足する、<1>に記載の固体電解質。
<3> yが、0<y≦0.05を満足する、<1>又は<2>に記載の固体電解質。
<4> 正極と、負極と、<1>~<3>のいずれか1つに記載の固体電解質とを備える、全固体型リチウムイオン二次電池。
<5> ゾル-ゲル法による<1>~<3>のいずれか1つに記載の固体電解質の製造方法であって、
液相法による<1>~<3>のいずれか1つに記載の固体電解質の製造方法であって、
Hf及びWを含むZr前駆体を得る工程と、
La前駆体を得る工程と、
Li前駆体を得る工程と、
Zr前駆体と、La前駆体とを反応させて、ZrLa前駆体を得る工程と、
ZrLa前駆体と、Li前駆体とを反応させて、前駆体反応物を得る工程と、
前駆体反応物に加熱処理を施す工程と
を含む、固体電解質の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、イオン伝導率が高いLiLaZrO系の固体電解質が提供される。
また、本開示の他の実施形態によれば、上記固体電解質を備えた全固体型リチウムイオン二次電池が提供される。
また、本開示の他の実施形態によれば、上記固体電解質の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示に係る固体電解質及びその製造方法、並びに全固体リチウムイオン二次電池の詳細を説明する。
【0009】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、各成分の含有量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において、「工程」という語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0010】
<固体電解質>
本開示に係る固体電解質は、Li7-yLa3Zr2-(x+y)HfxWy-zMzO12(Mは、Mo及びVの少なくとも1つを示し、xは、0<x≦1.0、yは、0<y≦0.2、zは、0≦z≦0.2を満足する)を含む。
【0011】
現在、研究開発が行われている多くの全固体型リチウムイオン二次電池の固体電解質は、固相法を用いて作製されているものが多い。そのような固体電解質として、例えば、Li(リチウム)と、La(ランタン)と、Zr(ジルコニウム)と、O(酸素)を少なくとも含む、ガーネット型結晶構造のものが知られている。具体的には、例えば、Li7La3Zr2O12(LiLaZrO系であり、以下、「LLZ」と呼ぶことがある)が挙げられ、イオン電導率が低い正方晶である。
【0012】
例えば、特許文献2に記載されているLLZ-Sr系固体電解質は、固相法により製造されている。固相法による製造の際には、焼結により粒成長させるため、作製される固体電解質の粒子が大きくなる(例えば、粒径が10μm~数百μm程度となる)。そのため、固相法で作製された固体電解質を用いて全固体型リチウムイオン二次電池を構成すると、固体電解質の充填密度を十分に上げることができない。その結果、固体電解質におけるリチウムイオン伝導パスを効果的に増やすことができず、全固体型リチウムイオン電池のイオン伝導性を十分に向上させることができない。更に、硫化物型固体電解質などの安定性を高めるには酸化物型固体電解質で表面を被覆する必要があるが、緻密で薄いコーティングを硫化物型固体電解質や活物質表面に被覆した複合化は固相法では困難である。
【0013】
これに対して、本開示に係る固体電解質は、ゾル-ゲル法(液相法)により合成されており、イオン電導率が高い立方晶を多く含んでいる。ゾル-ゲル法による低温合成により、自由エネルギーが高い状態を維持した結晶を作ることができるため、準安定状態で結晶化させ、立方晶を得ることができる。更に、液相法前駆体であるため、固体電解質や活物質表面へのナノコーティングが可能になり、優れた全固体型電池の創製に繋がる。
【0014】
また、本開示に係る固体電解質は、Li7La3Zr2O12にHfをドープすることにより、Zrとの置換を行い、また、イオン電導性を高めている。更に、本開示に係る固体電解質は、Li7La3Zr2O12にWをドープすることにより、原子価制御を行い、イオン伝導性を高めている。
【0015】
以上のように、本開示に係る固体電解質は、ゾル-ゲル法による立方晶の形成、HfドープによるZrの置換、更にWドープによる原子価制御により、高いイオン伝導率を有している。また、溶液状前駆体であることからナノコーティングも可能であり、高いイオン伝導率と電子伝導性を併せ持つ被膜を実現できると期待される。
【0016】
Li7-yLa3Zr2-(x+y)HfxWy-zMzO12(以下、「LLZO」と呼ぶことがある)において、Mは、Mo及びVの少なくとも1つである。また、zは、0≦z≦0.2を満足する。Mは、電荷補償の観点から、LLZOに導入され得る元素である。結晶学的安定性等の観点から、zの上限は0.1であることが好ましい。
また、MがMo及びVである場合、結晶学的安定性やイオン伝導性等の観点から、MoとVとのモル比は、1:2~1:3であることが好ましく、1:3~1:5であることがより好ましい。
【0017】
xは、0<x≦1.0を満足する。結晶学的安定性やイオン伝導性等の観点から、xの上限は0.5であることが好ましい。
【0018】
yは、0<y≦0.2を満足する。結晶学的安定性とイオン伝導性等の観点から、yの上限は0.05であることがより好ましい。
【0019】
固体電解質は、10-4S/m以上の高いイオン伝導率を有しており、全固体型リチウムイオン電池に好適に用いることができる。
【0020】
<全固体型リチウムイオン二次電池>
本開示に係る全固体型リチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、本開示係る固体電解質とを備える。
【0021】
負極材料として、例えば、金属リチウム、リチウムイオンを放出・吸蔵可能な炭素質材料、LiAl及びLiZn等のリチウム含有合金、InSb及びCu-In-Sn等のインジウム含有合金、Li4Ti5O12及びWO2等の酸化物、La3Ni2Sn7等のランタン等-ニッケル系合金等が挙げられる。
【0022】
集電体の材質及び形状については特に限定されず、集電体の材料としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼、ポーラスメタル(発泡メタル)及びカーボンペーパーが挙げられる。集電体の形状としては、特に限定されず、例えば、箔状、穴開け箔状及びメッシュ状が挙げられる。
【0023】
負極は、例えば、リチウムイオン二次電池用負極材料、有機結着剤、溶剤又は水等の溶媒、及び必要により増粘剤、導電助剤、従来知られている炭素系負極材料等を混合した塗布液を調製し、この塗布液を集電体に付与(塗布)した後、溶剤又は水を乾燥し、加圧成形して負極材層を形成することにより得られる。一般に、有機結着剤及び溶媒等と混練して、シート状、ペレット状等の形状に成形される。塗布駅に含まれる上記材料としては、公知のものを用いることができる。
【0024】
正極材料は、リチウムイオンをドーピング又はインターカレーション可能な化合物であればよく、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、及びマンガン酸リチウム(LiMnO2)、並びにそれらの複合物が挙げられる。
【0025】
正極は、負極において上述したのと同様の方法で作製することができる。
【0026】
全固体型リチウムイオン二次電池の製造方法としては、例えば、まず正極と負極の2つの電極を、セパレータを介して捲回する。得られたスパイラル状の捲回群を電池缶に挿入し、予め負極の集電体に溶接しておいたタブ端子を電池缶底に溶接する。得られた電池缶に電解液を注入し、更に予め正極の集電体に溶接しておいたタブ端子を電池の蓋に溶接し、蓋を絶縁性のガスケットを介して電池缶の上部に配置し、蓋と電池缶とが接した部分をかしめて密閉することによって電池を得る。
【0027】
全固体型リチウムイオン二次電池の形態は、特に限定されず、ペーパー型電池、ボタン型電池、コイン型電池、積層型電池、円筒型電池、角型電池等の全固体型リチウムイオン二次電池が挙げられる。
【0028】
<固体電解質の製造方法>
本開示に係る固体電解質の製造方法は、液相法(ゾル-ゲル法)による固体電解質の製造方法であり
Hf及びWを含むZr前駆体を得る工程と、
La前駆体を得る工程と、
Li前駆体を得る工程と、
Zr前駆体と、La前駆体とを反応させて、ZrLa前駆体を得る工程と、
ZrLa前駆体と、Li前駆体とを反応させて、前駆体反応物を得る工程と、
前駆体反応物に加熱処理を施す工程と
を含む。
【0029】
本開示に係る固体電解質の製造方法は、上記前駆体に含まれる不要な有機分子が少なく前駆体溶液中で好ましい酸素配位多面体構造を形成するので、低温合成が可能である。具体的には、Zrアルコキシドの反応を制御して、重合度の高いZrO6八面体構造を溶液中で生成し、Laイオンと酸素を介して共重合することにより、低温合成が可能となる。
【0030】
[Hf及びWを含むZr前駆体を得る工程]
本工程では、Hf及びWを含むZr前駆体を得る。
【0031】
ジルコニウムテトライソプロポキシド、塩化ハフニウム(IV)、及び塩化タングステン(VI)をアルコールに加えて得られた混合物を還流する。
アルコールとして、例えば、1-ブタノール、イソブタノール、2-メトキシエタノール、2-アミノエタノール等が挙げられる。
還流条件は用いる溶媒などで決まるが、例えば、100℃~135℃の温度で、1時間~5時間還流を行ってよい。
【0032】
次いで、カルボン酸を還流後の前駆体溶液に加え、撹拌してキレート化させる。
カルボン酸として、例えば、酢酸、ギ酸、シュウ酸等が挙げられる。
撹拌条件は特に限定されず、例えば、0℃~50℃の温度で、1時間~5時間撹拌を行ってよい。
【0033】
次いで、水を撹拌後の前駆体溶液に加え、撹拌及び反応させる。以上のようにして、Hf及びWを含むZr前駆体が得られる。
【0034】
[La前駆体を得る工程]
硝酸ランタン六水和物を乾燥して硝酸ランタンを得る。
乾燥条件は特に限定されず、例えば、150℃~200℃の温度で、2時間~10時間乾燥を行ってよい。
【0035】
硝酸ランタンをアルコールに加えて得られた混合物を撹拌する。
アルコールとして、例えば、エタノール、プロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、2-メトキシエタノール、2-アミノエタノール等が挙げられる。
撹拌条件は特に限定されず、例えば、80℃~135℃の温度で、1時間~5時間撹拌を行ってよい。
以上のようにして、La前駆体が得られる。
【0036】
[Li前駆体を得る工程]
リチウムをアルコキシアルコールに加えて得られた混合物を還流する。
アルコキシアルコールとして、例えば、2-メトキシメタノール、2-アミノエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
還流条件は溶媒などにより決定されるが特に限定されず、例えば、120℃~150℃の温度で、1時間~10時間還流を行ってよい。以上のようにして、Li前駆体が得られる。
【0037】
[ZrLa前駆体を得る工程]
Zr前駆体と、La前駆体とを混合して得られた混合物を撹拌及び反応させる。
撹拌条件は用いる溶媒や溶質濃度などで決まるが特に限定されず、例えば、110℃~135℃の温度で、1時間~10時間撹拌を行ってよい。以上のようにして、ZrLa前駆体を得る。
【0038】
[前駆体反応物を得る工程]
本工程では、ZrLa前駆体と、Li分前駆体とを混合及び反応させて、前駆体反応物を得る。
リチウム及びジルコニウムのモル比は、7:2であってよいが、加熱過程でのリチウムイオンが揮発して減少するという観点から、リチウムの物質量は、ジルコニウムの物質量に対して過剰であることが好ましく、例えば、10:2(リチウムが40%過剰)であってよい。
【0039】
[前駆体反応物に加熱処理を施す工程]
本工程では、前駆体反応物に加熱処理を施す。ここでいう「加熱処理」は、前駆体反応物の乾燥、及び上記乾燥後の焼成を含む。
【0040】
乾燥条件は特に限定されず、例えば、120℃~200℃の温度で、例えば、1時間~10時間加熱することにより乾燥を行ってよい。乾燥は、温度を変化させて、数段階(例えば、2段階)で行ってもよい。
【0041】
次いで、乾燥して得られた乾燥物を焼成する。これにより、固体電解質を得ることができる。
焼成条件は特に限定されず、例えば、500℃~800℃の温度で、例えば、1時間~10時間焼成してよい。
【実施例0042】
以下、実施例を挙げて本開示をより具体的に説明する。但し、本開示は、これらの実施例に限定されない。
【0043】
<実施例1>
以下のようにして、リチウムイオン二次電池用負極材料を作製した。
【0044】
[Hf及びWを含むZr前駆体を得る工程]
本工程では、Hf及びWを含むZr前駆体を得る。
【0045】
ジルコニウムテトライソプロポキシド、塩化ハフニウム(IV)、及び塩化タングステン(VI)を1-ブタノールに加えて得られた混合物を118℃で3時間還流した。
【0046】
次いで、酢酸を還流後の前駆体に加え、2時間撹拌した。
【0047】
次いで、水を撹拌後の前駆体に加え、5時間撹拌した。以上のようにして、Hf及びWを含むZr前駆体を得た。
【0048】
[La前駆体を得る工程]
硝酸ランタン六水和物を150℃で2時間乾燥して無水硝酸ランタンを得た。
【0049】
無水硝酸ランタンを1-ブタノールに加えて得られた混合物を5℃で2時間撹拌した。以上のようにして、La前駆体を得た。
【0050】
[Li前駆体を得る工程]
リチウムを1-ブタノールに2分間浸漬し、リチウム表面の酸化膜を取り除いた。
【0051】
リチウムを2-メトキシメタノールに加えて得られた混合物を125℃で5時間還流した。以上のようにして、Li前駆体を得た。
【0052】
[ZrLa前駆体を得る工程]
Zr前駆体と、La前駆体とを混合して得られた混合物を60℃で2時間撹拌した。以上のようにして、ZrLa前駆体を得た。
【0053】
[LLZO前駆体溶液(前駆体反応物)を得る工程]
ZrLa前駆体と、Li前駆体とを混合して、5℃で12時間撹拌した。以上のようにして、LLZO前駆体溶液を得た。
リチウム及びジルコニウムのモル比は、10:2(リチウムが40%過剰)であった。
【0054】
[LLZO前駆体溶液(前駆体反応物)に加熱処理を施す工程]
LLZO前駆体溶液を大気中で乾燥した。加熱は2段階で行い、1段階目では、125℃で2時間加熱し、2段階目では、175℃で2時間加熱した。
【0055】
次いで、乾燥して得られた乾燥物を700℃で焼成した。以上のようにして、実施例1の固体電解質を得た。
【0056】
実施例1の固体電解質について、ブルカー社製のX線回折装置「D8」を用いてXRD測定を行ったところ、LLZOに基づく回折が見られ、700℃という低温で固体電解質の作製に成功していることが確認された。
また、蛍光XRDの測定結果から、実施例1の固体電解質が、Li7-yLa3Zr2-(x+y)HfxWy-zMzO12(x=0.225、y=0.025、z=0)の組成を有することが確認された。
【0057】
実施例1の固体電解質について、上記X線回折装置によりリートベルト解析を行ったところ、79%が立方晶であることが確認された。
【0058】
<イオン伝導率の評価>
実施例1の固体電解質について、以下の要領でイオン伝導率を測定した。
【0059】
得られた固体電解質粒子のイオン伝導率は、Liイオン導電性を付与したポリアクリル酸(以下、Li-PAA)水溶液と合成した粉末を混合して厚膜を作製し、厚膜のナイキストプロットを測定してLLZO固体電解質粉末のイオン伝導率を測定した。
すなわち、水酸化リチウム水溶液5mlにポリアクリル酸水溶液をpH7になるまで加え、24時間撹拌し混合することで、Li-PAA水溶液を調製した。合成した粉末とLi-PAA溶液を混合してメノウ乳鉢でLi-PAA水溶液中の水が完全に揮発するまで混合を行った。混合試料が完全に粉末状になったことを確認してから、蒸留水を2滴加えスラリー状になるまで混合を続けた。
Li-PAAとLLZO粉末の混合スラリーを銅箔上に垂らし、アプリケーターを用いて塗布した。塗布したスラリーを室温で10分間乾燥させた。その後、乾燥機を用いて105℃で2時間、120℃で1時間乾燥させて厚膜を作製した。
得られた厚膜のナイキストプロットを0.01Hz~7MHzまで測定して円弧を解析した。その結果、実施例1の固体電解質は、2.75×10-4S/mと高いイオン伝導率を有していた。