(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049993
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】日射遮蔽装置
(51)【国際特許分類】
E06B 9/24 20060101AFI20230403BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
E06B9/24 Z
E06B5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160097
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 悠太
(72)【発明者】
【氏名】伊東 亜矢子
(72)【発明者】
【氏名】浅野 翔平
(57)【要約】
【課題】太陽からの日射光の直接的な取り込みを低減し、室内に柔らかい光線を取り込むことができる日射遮蔽装置を提供する。
【解決手段】日射遮蔽装置10は、建物1の室内から開口した開口部3の少なくとも一部を覆い、建物の室内に向かう日射光を遮蔽する。日射遮蔽装置10は、建物1の外部からの日射光を遮蔽する複数の遮蔽部13と、複数の貫通孔14が形成された複数の透光部15と、を備えている。そして、遮蔽部13と透光部15は、水平方向に沿って延在するとともに、上下方向に交互に並設されており、遮蔽部13は、透光部15から外部に向かって下方に傾斜した傾斜板状部16aを有する。日射遮蔽装置10は、水平方向に沿って山折りおよび谷折りされた折板11により形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の室内から開口した開口部の少なくとも一部を覆い、前記建物の室内に向かう日射光を遮蔽する日射遮蔽装置であって、
前記建物の外部からの日射光を遮蔽する複数の遮蔽部と、
複数の貫通孔が形成された複数の透光部と、を備えており、
前記遮蔽部と前記透光部は、水平方向に沿って延在するとともに、上下方向に交互に並設されており、
前記遮蔽部は、前記透光部から外部に向かって下方に傾斜した傾斜板状部を有することを特徴とする日射遮蔽装置。
【請求項2】
前記傾斜板状部は、下側に位置する前記傾斜板状部で日射光を上方に向けて反射させ、反射した反射光を、上側に位置する前記傾斜板状部の裏面で、室内に向けてさらに反射させるように、配置されていることを特徴とする請求項1に記載の日射遮蔽装置。
【請求項3】
前記日射遮蔽装置は、水平方向に沿って山折りおよび谷折りされた折板により形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の日射遮蔽装置。
【請求項4】
前記折板には、水平方向に沿って形成された複数の山状部が、上下方向に間隔を空けて形成されており、
前記山状部の上面に、前記遮蔽部が形成されており、
前記山状部同士の間と前記山状部の下面に、前記透光部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の日射遮蔽装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日射遮蔽装置に係り、例えば、建物の室内から開口した開口部の少なくとも一部を覆い、室内に向かう日射光を遮蔽する日射遮蔽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の種の技術として、折板からなる外壁により屋内と屋外とが仕切られる建物に用いられる換気採光構造がある。この換気採光構造は、折板の一部として、屋内の空気を屋外に強制的に吐き出し或いは屋外の空気を屋内に強制的に吸い込むための有孔折板を有している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の日射遮蔽装置では、換気のための有孔折板の貫通孔は、直射光を遮ることができず、有孔折板に向かう日射光を、貫通孔を介して直接的に採り込んでしまう。このため、貫通孔を通過した日射光により、室内側においてまぶしさを感じることがあった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、日射光の直接的な取り込みを低減し、室内に柔らかい光線を取り込むことができる日射遮蔽装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題に鑑みて、本発明の日射遮蔽装置は、建物の室内から開口した開口部の少なくとも一部を覆い、前記建物の室内に向かう日射光を遮蔽する日射遮蔽装置であって、前記建物の外部からの日射光を遮蔽する複数の遮蔽部と、複数の貫通孔が形成された複数の透光部と、を備えており、前記遮蔽部と前記透光部は、水平方向に沿って延在するとともに、上下方向に交互に並設されており、前記遮蔽部は、前記透光部から外部に向かって下方に傾斜した傾斜板状部を有することを特徴とする。
【0007】
前記のごとく構成された本発明の日射遮蔽装置では、遮蔽部の傾斜板状部の上面に入射された日射光の一部は、上方に向かって反射し、反射した光は、透光部の複数の貫通孔を通過して、室内に入射される。このようにして、遮蔽部で室内に直接向かう日射光を遮蔽しつつこれを反射させ、反射した光を建物の開口部から室内に入射させることができる。
【0008】
好ましい態様としては、前記傾斜板状部は、下側に位置する前記傾斜板状部で日射光を上方に向けて反射させ、反射した反射光を、上側に位置する前記傾斜板状部の裏面で、室内に向けてさらに反射させるように、配置されている。
【0009】
この態様によれば、遮蔽部に到達する日射光を下側の傾斜板状部で上方に向けて反射させ、反射した光(反射光)は、上側の傾斜板状部の裏面でさらに反射されるため、室内に向かう日射光の光量を抑えることができる。なお、遮蔽部として水平方向に延在する傾斜板状部を、有孔平板の上下方向に間隔を空けて形成してもよい。
【0010】
また、本発明の好ましい態様としては、前記日射遮蔽装置は、水平方向に沿って山折りおよび谷折りされた折板により形成されている。この態様によれば、日射遮蔽装置を折板で形成することにより、よりシンプルな形状でかつ軽量な日射遮蔽装置を得ることができる。
【0011】
さらに、本発明の好ましい態様としては、前記折板には、水平方向に沿って形成された複数の山状部が、上下方向に間隔を空けて形成されており、前記山状部の上面に、前記遮蔽部が形成されており、前記山状部同士の間と前記山状部の下面に、前記透光部が形成されている。
【0012】
この態様によれば、遮蔽部の上面に入射された日射光の一部は、上方に向かって反射し、反射した光は、透光部の複数の貫通孔を通過して、室内に入射される。さらに、遮蔽部の上面に入射された日射光のうち、鉛直方向に反射した光は、山状部の下面を通過した後、上側の傾斜板状部の下面で反射し、室内に入射される。このようにして、より柔らかな光を、建物の開口部から室内に入射することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、太陽からの日射光の直接的な取り込みを低減し、室内に柔らかい光線を取り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る日射遮蔽装置の一実施形態と開口部との関係を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す日射遮蔽装置を形成する折板を示し、(a)は上方から見た斜視図、(b)は下方から見た斜視図である。
【
図3】
図2(a)に示す折板のA-A線断面図である。
【
図4】
図1に示す日射遮蔽装置を建物の開口部に設置する状態を示す分解斜視図である。
【
図5】
図4に示す日射遮蔽装置を固定枠で建物に固定した状態の分解斜視図である。
【
図6】
図3に示す折板に日射光が照射されたときの作用を示す説明図である。
【
図7】(a)および(b)は、それぞれ式(1)、式(2)を導くための説明図である。
【
図8】(a)、(b)、(c)は、それぞれ本発明に係る日射遮蔽装置の他の実施形態の折板を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る日射遮蔽装置の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る日射遮蔽装置と開口部との関係を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す日射遮蔽装置を形成する折板を示し、(a)は上方から見た斜視図、(b)は下方から見た斜視図である。
図3は、
図2(a)に示す折板のA-A線断面図であり、
図4は、
図1に示す日射遮蔽装置を建物の開口部に設置する状態を示す分解斜視図である。
図5は、
図4に示す日射遮蔽装置を固定枠で建物に固定した状態の分解斜視図である。
【0016】
図1~5において、本実施形態の日射遮蔽装置10は、建物の室内から開口した開口部の少なくとも一部を覆い、建物の室内に向かう日射光を遮蔽する装置である。すなわち、日射遮蔽装置10は、太陽から降り注がれる強烈な日射光の一部を遮蔽して、室内に取り込まれる日射光の光量を抑制することで、室内のまぶしさを低減し、室内を快適な室温に保つ機能を有する装置である。
【0017】
まず、本実施形態の日射遮蔽装置10を設置する建物について説明する。建物1は、室内と外部とを仕切る外壁パネル2を有している。外壁パネル2は、木質パネル、コンクリートパネル、鉄骨で枠組みした外壁パネル等、適宜のパネルを用いることができる。外壁パネル2には、室内から外部に連通し開口する開口部3が形成されている。開口部3は太陽光を室内に取り込むことができる。開口部3にはアルミニウム枠等の窓枠4が固定されており、窓枠4にはガラス5が嵌め込まれている。建物1を構成する外壁パネル2の外表面には、日射遮蔽装置10の固定枠12をブラケット等で固定するための固定穴6が形成されている。
【0018】
日射遮蔽装置10は、建物1の外部からの日射光の一部を遮蔽するための折板11からなる遮蔽板材を固定枠12に固定して形成されている。折板11は、複数の遮蔽部13と、複数の貫通孔14が形成された複数の透光部15と、を備えており、日射光の一部を遮蔽する機能を有している。本実施形態では、折板11は同じ形状のものが4枚使用され、日射遮蔽装置10は4枚の折板11A、11B、11C、11Dが固定枠12にビスやボルト等で固定されて構成される。
【0019】
折板11の複数の遮蔽部13と、複数の貫通孔14が形成された複数の透光部15は、水平方向に沿って延在するとともに、上下方向に交互に並設されている。遮蔽部13は透光部15から外部に向かって下方に傾斜した傾斜板状部16aを有している。傾斜板状部16aの詳細については、後述する。
【0020】
折板11は、厚さが0.5~1mm程度の鋼板等の金属板材を水平方向に沿って、交互に山折りおよび谷折りされ、山状部16と谷状部17とが形成されている。山状部16は、台形状に建物の外部に向かって突出する形状である。
図3に示すように、山状部16は、上方の透光部15から外部に向かって下方に傾斜した傾斜板状部16aと、これに連続する頂部16bと、これに連続し室内に向かって下方に傾斜した傾斜板状部16cと、を有している。本実施形態の折板11では、3つの山状部16と3つの谷状部17が交互に形成されている。
【0021】
傾斜板状部16aと傾斜板状部16cは、遮蔽部13の上下に配置され、同じ傾きで反対方向に形成され、その傾斜角度αは、7.5~22.5°の範囲にあることが好ましい。谷状部17は平板上に形成され、上下方向に山状部16と交互に形成され、すべての谷状部17は同一平面上に形成される。頂部16bの谷状部17からの高さHは、たとえば、10~30mm程度が好ましい。本実施形態では、頂部16bと谷状部17とは平行に形成されている。
【0022】
前記した遮蔽部13は、山状部16の傾斜板状部16aと頂部16bにわたって形成されている。透光部15は、下方の傾斜板状部16cと谷状部17にわたって形成されている。透光部15には複数の貫通孔14が形成されている、本実施形態では、たとえば、下方の傾斜板状部16cには、3列に水平方向に沿って多数の貫通孔14aが形成され、谷状部17には、4列に水平方向に沿って多数の貫通孔14bが形成されている。貫通孔14の直径は、適宜設定できるが、直径5mm~20mm程度が好ましい。
【0023】
折板11は、前記のように3つの山状部16と3つの谷状部17とを有する形状に設定されている。折板11の最上部には上部に次の折板11を連結するための平面接続部16dが形成されている。折板11の最下部には下方に位置する折板11の山状部16と連結するための傾斜接続部16eが形成されている。傾斜接続部16eの角度は、山状部16の傾斜板状部16cと同じ角度に設定され、平面接続部16dは谷状部17と接合する平坦面に形成されている。
【0024】
日射遮蔽装置10は、複数の遮蔽部13と複数の透光部15とを有する折板11を固定枠12に固定することにより形成されている。このような状態で、日射遮蔽装置10は、建物1の外壁パネル2に形成された開口部3に合わせて固定されている。
【0025】
具体的には、ガラス5が嵌め込まれた固定枠(窓枠)4の外周側に、固定枠12が位置するように位置合わせし、4つのブラケット12aを介してボルトやアンカーで、固定枠12が、外壁パネル2に固定されている。本実施形態では、固定枠12で囲まれた開口部3の全面を日射遮蔽装置10で覆う構成であるが、開口部3の一部分を覆うように構成してもよい。
【0026】
日射遮蔽装置10の折板11は、水平方向に沿って複数の山状部16が形成されており、複数の山状部16は上下方向に間隔を空けて形成されている。複数の山状部16の間隔に、複数の谷状部17が形成されており、折板11は、複数の山状部16と複数の谷状部17とが交互に形成されている。
【0027】
折板11の山状部16の上面に遮蔽部13が形成され、本実施形態では、山状部16の傾斜板状部16aと頂部16bにわたって遮蔽部13が形成されている。さらに、折板11には、山状部16同士の間、すなわち谷状部17と、山状部16の下面、すなわち下方の傾斜板状部15cにわたって、透光部15が形成されている。
【0028】
前記の如く構成された本実施形態の日射遮蔽装置10の作用について、
図6を参照して説明する。日射遮蔽装置10を構成する折板11は、前記のように、建物1の外部からの日射光を遮蔽する複数の遮蔽部13と、複数の貫通孔14が形成された複数の透光部15と、備えている。遮蔽部13と透光部15は、水平方向に沿って延在するとともに、上下方向に交互に並設されており、遮蔽部13は、透光部15から外部に向かって下方に傾斜した傾斜板状部16aを有するものである。
【0029】
このため、夏至等の太陽のように、高い位置からの日射光L1が複数の遮蔽部13に当たると、傾斜板状部16aで上方に向けて反射される。この反射光は、上部に位置する山状部16の下方の傾斜板状部16cの複数の貫通孔14aを貫通し、折板11の内部に入る。そして、傾斜板状部16aの裏面で反射され、ガラス5を通過して室内に到達する。室内に取り込まれた反射光は、傾斜板状部16aで反射されるとともに、傾斜板状部16aの裏面でさらに反射されて散乱し、室内に取り込まれるため、柔らかな光を、建物1の開口部3から室内に入射させることができる。
【0030】
また、冬至等の太陽のように、低い位置からの日射光L2が複数の遮蔽部13に当たると、傾斜板状部16aで斜め上方に向けて反射される。この反射光は、谷状部17に形成された複数の貫通孔14bを貫通し、ガラス5を通過して室内に到達する。このようにして室内に取り込まれた反射光は、傾斜板状部16aで反射されるとともに、貫通孔14bを通過するため、柔らかな光を、建物1の開口部3から室内に入射させることができる。この結果、室内に到達する日射光のまぶしさを低減できる。
【0031】
ここで、
図4に戻り、発明者らは、山状部16の傾斜板状部16aの角度α、谷状部17の長さW、山状部16の高さHに関して、折板11の最適な形状について検討した。この検討に当たり、太陽の高度が高い高太陽高度をa1とし、太陽の高度が低い低太陽高度をa2とし、a1>a2を前提に、それぞれ75°~45°の範囲について検討を行った。
【0032】
この際に、以下に示す式(1)、式(2)を用いて、W/Hの比率のシミュレーションを行う。
α=45°-a1/2・・・(1)
W=H×(tan(a2)-tan(45°-a1/2))・・・(2)
【0033】
ここで、式(1)は、傾斜板状部16aにおいて入射した高太陽高度a1の日射光L1を、鉛直方向に反射させる条件となる式であり、
図7(a)を参照して導出することができる。具体的には、高太陽高度a1において、傾斜板状部16aを反射した日射光L1は、鉛直方向に沿って反射光L1aとして反射させれば、上側の傾斜板状部16aの裏面に確実に反射させることができる。この結果、高太陽高度a1の日射光L1であっても、この日射光L1から室内に柔らかな光を導くことができる。このような反射光L1aを得るための関係として、式(1)を導出する。
【0034】
まず、
図7(a)に示すように、傾斜板状部16aに対して、日射光L1の入射角(a1+α)と反射光L1aの反射角度Aとは等しい。一方、傾斜板状部16aの法線P2と日射光L1との成す角度と、傾斜板状部16aの法線P2と反射光L1aとの成す角度も等しい。
【0035】
ここで、傾斜板状部16aと傾斜板状部16aの法線P2の法線のなす角度は90°であり、水平線P1と、鉛直方向に反射する反射光L1aとの成す角度も90°である。このような関係から、傾斜板状部16aの法線P2と日射光L1との成す角度が、傾斜板状部16aの傾斜角度αとなる。傾斜板状部16aの法線P2と日射光L1との成す角度は、(45°-a1/2)であることから、傾斜角度αは、式(1)で表すことができる。
【0036】
ここで、高太陽高度a1を75°~45°とした場合、(1)式にこの範囲を代入すると、傾斜角度αは、7.5~22.5°となり、この範囲であるであれば、日射光L1を鉛直方向から外側に反射させ易くなる。したがって、傾斜角度αは、この範囲であることが好ましい。
【0037】
式(2)は、低太陽高度a2の日射光L2が遮蔽部13に照射され、これよりも下側の透光部15に日射光L2が直接照射されない条件となる式であり、
図7(b)を参照して導出することができる。具体的には、低太陽高度a2において、頂部16bの下端から谷状部17の下端までの距離L3は、H×tan(2a)である。また、式(1)より、16cの鉛直方向の長さは、tan(45°-a1/2)である。これらの値から谷状部17の幅Wを算出するための式(2)を導出することができる。
【0038】
上記の式(2)を変形すると、式(3)の如く表すことができる。
W/H=(tan(a2)-tan(45°-a1/2))・・・(3)
【0039】
式(3)を用いて、高太陽高度a1、低太陽高度a2を変数として、式(3)に代入し、解析を行うと、W/Hの比率は、最大で「3.600」、最小で「0.586」の範囲で、直射する太陽光が建物1の室内に取り込まれない範囲であることがわかった。
【0040】
したがって、前記したW/H=0.586~3.600の範囲で折板11の形状を設定することにより、高太陽高度、低太陽高度の場合でも、室内に日射光が直射され難くなる。
【0041】
以上、詳述したように、本実施形態の日射遮蔽装置10によれば、折板11に形成された複数の遮蔽部13と、複数の貫通孔14を形成した複数の透光部15とを備え、透光部15から外部に向かって下方に傾斜した傾斜板状部16aを有することにより、太陽からの日射光(直射光)を効率よく防ぎ、室内に柔らかい光線を取り込むことができる。また、構成を簡単にすることができ、重量の増加を防ぎ、コストダウンが可能となる。
【0042】
つぎに、本発明の他の実施形態について、
図8を参照して説明する。
図8(a)、(b)、(c)は、それぞれ本発明に係る日射遮蔽装置の他の実施形態の要部断面図である。なお、この実施形態は前記した実施形態に対し、折板の複数の遮蔽部の形状と、複数の透光部の形状が異なることを特徴とする。そして、他の実質的に同等の構成については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0043】
図8において、(a)に示す日射遮蔽装置10の折板11Eは、上方の傾斜板状部16aと、下方の傾斜板状部15cの角度が急峻で、先端の頂部が無い形状となっている。このため、折板11Eの山状部16Aは台形状でなく、先端が尖った三角形状の山状部となっている。この折板11Eは、山状部16Aと複数の貫通孔14が形成された谷状部17とが交互に配置され、水平方向に延在している。
【0044】
この実施形態の折板11Eでも、上方の傾斜板状部16aに日射光が照射されると、反射光は上方に向けて反射され、下方の傾斜板状部16cの複数の貫通孔14を通過して折板11Eの内部に入り、上方の傾斜板状部16aの裏面でさらに反射される。このように、折板11Eに照射される日射光は、2度反射されるため、まぶしさが軽減された光を室内に取り込むことができる。また、水平方向に沿って山折りおよび谷折りされた折板11に、複数の遮蔽部13と、複数の貫通孔14を形成した透光部15とを形成しているため、構造をシンプルにでき、軽量でコストダウンが可能な日射遮蔽装置10を得ることができる。
【0045】
図8(b)に示す日射遮蔽装置10の折板11Fは、上方の傾斜板状部16aと、先端が円弧状の頂部とが連続して遮蔽部13が構成され、下方の傾斜板状部16cと平板状の谷状部17が連続して透光部15が形成されている。このため、山状部16Bは、先端が丸まった三角形状の山状部となっている。この折板11Fも、山状部16Bと複数の貫通孔14が形成された透光部15とが上下方向に交互に配置され、水平方向に延在している。
【0046】
図8(c)に示す日射遮蔽装置10の折板11Gは、上方の傾斜板状部16aと、先端が平坦面の頂部16bとが連続して遮蔽部13が構成され、山状部16Cの下面16gは傾斜していない平坦面で形成され、下面16gが平坦な台形状の山状部となっている。この折板11Gも、山状部16Cと複数の貫通孔14が形成された透光部15とが上下方向に交互に配置され、水平方向に延在している。
【0047】
これらの日射遮蔽装置10の折板11F、11Gの場合も、上方の傾斜板状部16aに日射光が照射されると、反射光は上方に向けて反射され、下方の傾斜板状部16cに形成された複数の貫通孔14、下面16gに形成された複数の貫通孔14を通過して折板11E、11Gの内部に入り、上方の傾斜板状部16aの裏面でさらに反射される。このように、折板11E、11Gに照射される日射光は、2度反射されるため、まぶしさが軽減された光を室内に取り込むことができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更を行うことができる。本発明は、或る実施形態の構成を他の実施形態の構成に追加したり、或る実施形態の構成を他の実施形態と置換したり、或る実施形態の構成の一部を削除したりすることができる。
【0049】
例えば、開口部3には窓枠4を介してガラス5が嵌め込まれた例を示したが、ガラスがない単なる開口でもよく、引き違いの障子が装着された開口部でもよい。
【符号の説明】
【0050】
1:建物、3:開口部、5:ガラス、10:日射遮蔽装置、11,11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G:折板、12:固定枠、13:遮蔽部、14,14a,14b:貫通孔、15:透光部、16:山状部、16a:傾斜板状部、16c:傾斜板状部(山状部の下面)、17:谷状部(山状部同士の間)