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特開2023-50041情報処理装置、情報処理方法、プログラムおよび記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050041
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/04 20060101AFI20230403BHJP
   A42B 3/30 20060101ALI20230403BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20230403BHJP
   H04R 7/12 20060101ALI20230403BHJP
   G10K 15/00 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
H04R3/04
A42B3/30
H04R1/00 318D
H04R1/00 310F
H04R7/12 Z
G10K15/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160194
(22)【出願日】2021-09-29
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】田上 宣昭
(72)【発明者】
【氏名】河内 洋人
(72)【発明者】
【氏名】三ツ井 哲也
【テーマコード(参考)】
3B107
5D016
5D017
5D220
【Fターム(参考)】
3B107CA02
3B107EA08
3B107EA13
3B107EA19
5D016AA07
5D017AC17
5D220AA02
5D220AA03
5D220AB01
5D220DD03
(57)【要約】
【課題】騒音下において、音情報を確実に運転者に伝達する情報処理装置を提供する。
【解決手段】ヘルメットの内部に出力された調整用信号の音の周波数特性を算出する周波数特性算出部50と、ヘルメットの内部に出力された音が走行騒音に埋もれてしまう第1の周波数帯域が減衰され、かつ、ヘルメットの内部に出力された音が走行騒音に埋もれにくい第2の周波数帯域が強調される特徴を持つ目標周波数特性と、周波数特性算出部50において算出された周波数特性とを比較して調整パラメータを設定するパラメータ設定部60と、パラメータ設定部60により設定された調整パラメータに基づいてヘルメットの内部に出力される音の周波数特性を調整する調整部20と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメットの内部に出力された調整用信号の音の周波数特性を算出する周波数特性算出部と、
前記ヘルメットの内部に出力された音が走行騒音に埋もれてしまう第1の周波数帯域が減衰され、かつ、前記ヘルメットの内部に出力された音が前記走行騒音に埋もれにくい第2の周波数帯域が強調される特徴を持つ目標周波数特性と、前記周波数特性算出部において算出された前記周波数特性とを比較して調整パラメータを設定するパラメータ設定部と、
前記パラメータ設定部により設定された前記調整パラメータに基づいて、前記ヘルメットの内部に出力される音の周波数特性を調整する調整部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
音信号に基づいた振動子の振動が前記ヘルメットに伝達されることにより、前記ヘルメットの内部に音が出力されることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第1の周波数帯域が300Hz以下であり、前記第2の周波数帯域が1KHz以上であることを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
周波数特性算出部と、パラメータ設定部と、調整部とを備えた情報処理装置における情報処理方法であって、
前記周波数特性算出部が、ヘルメットの内部に出力された調整用信号の音の周波数特性を算出する第1の工程と、
前記パラメータ設定部が、前記ヘルメットの内部に出力された音が走行騒音に埋もれてしまう第1の周波数帯域が減衰され、かつ、前記ヘルメットの内部に出力された音が前記走行騒音に埋もれにくい第2の周波数帯域が強調される特徴を持つ目標周波数特性と、前記周波数特性算出部において算出された前記周波数特性とを比較して調整パラメータを設定する第2の工程と、
前記調整部が、前記パラメータ設定部により設定された前記調整パラメータに基づいて、前記ヘルメットの内部に出力される音の周波数特性を調整する第3の工程と、を備える情報処理方法。
【請求項5】
周波数特性算出部と、パラメータ設定部と、調整部とを備えた情報処理装置における情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記周波数特性算出部が、ヘルメットの内部に出力された調整用信号の音の周波数特性を算出する第1の工程と、
前記パラメータ設定部が、前記ヘルメットの内部に出力された音が走行騒音に埋もれてしまう第1の周波数帯域が減衰され、かつ、前記ヘルメットの内部に出力された音が前記走行騒音に埋もれにくい第2の周波数帯域が強調される特徴を持つ目標周波数特性と、前記周波数特性算出部において算出された前記周波数特性とを比較して調整パラメータを設定する第2の工程と、
前記調整部が、前記パラメータ設定部により設定された前記調整パラメータに基づいて、前記ヘルメットの内部に出力される音の周波数特性を調整する第3の工程と、を備える情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項6】
周波数特性算出部と、パラメータ設定部と、調整部とを備えた情報処理装置における情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な非一過性の記録媒体であって、
前記周波数特性算出部が、ヘルメットの内部に出力された調整用信号の音の周波数特性を算出する第1の工程と、
前記パラメータ設定部が、前記ヘルメットの内部に出力された音が走行騒音に埋もれてしまう第1の周波数帯域が減衰され、かつ、前記ヘルメットの内部に出力された音が前記走行騒音に埋もれにくい第2の周波数帯域が強調される特徴を持つ目標周波数特性と、前記周波数特性算出部において算出された前記周波数特性とを比較して調整パラメータを設定する第2の工程と、
前記調整部が、前記パラメータ設定部により設定された前記調整パラメータに基づいて、前記ヘルメットの内部に出力される音の周波数特性を調整する第3の工程と、を備える情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン等の携帯端末からの音楽やナビゲーションの音声案内を聞くためのスピーカや、ツーリングを行う仲間同士間のコミュニケーションを取るためのインターカム等をヘルメットに装着し、二輪車の走行を楽しむ人が増加している。
ここで、ヘルメットを装着した運転者に対して音情報を伝達する技術としては、例えば、ヘルメット内部にスピーカを配設し、音情報を運転者に伝達する技術等が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2019-151510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ヘルメットを装着した運転者に対して音情報を伝達する装置では、走行中の風切り音やエンジン音等の騒音により、音情報が聞こえにくくなるという課題が一例として挙げられる。
【0005】
本発明は、上述の一例として挙げられた課題に鑑みてなされたものであり、騒音下において、音情報を確実に運転者に伝達する情報処理装置、情報処理方法、プログラムおよび記録媒体を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ヘルメットの内部に出力された調整用信号の音の周波数特性を算出する周波数特性算出部と、前記ヘルメットの内部に出力された音が走行騒音に埋もれてしまう第1の周波数帯域が減衰され、かつ、前記ヘルメットの内部に出力された音が前記走行騒音に埋もれにくい第2の周波数帯域が強調される特徴を持つ目標周波数特性と、前記周波数特性算出部において算出された前記周波数特性とを比較して調整パラメータを設定するパラメータ設定部と、前記パラメータ設定部により設定された前記調整パラメータに基づいて、前記ヘルメットの内部に出力される音の周波数特性を調整する調整部と、を備える情報処理装置である。
【0007】
また、請求項4に記載の発明は、周波数特性算出部と、パラメータ設定部と、調整部とを備えた情報処理装置における情報処理方法であって、前記周波数特性算出部が、ヘルメットの内部に出力された調整用信号の音の周波数特性を算出する第1の工程と、前記パラメータ設定部が、前記ヘルメットの内部に出力された音が走行騒音に埋もれてしまう第1の周波数帯域が減衰され、かつ、前記ヘルメットの内部に出力された音が前記走行騒音に埋もれにくい第2の周波数帯域が強調される特徴を持つ目標周波数特性と、前記周波数特性算出部において算出された前記周波数特性とを比較して調整パラメータを設定する第2の工程と、前記調整部が、前記パラメータ設定部により設定された前記調整パラメータに基づいて、前記ヘルメットの内部に出力される音の周波数特性を調整する第3の工程と、を備える情報処理方法である。
【0008】
また、請求項5に記載の発明は、周波数特性算出部と、パラメータ設定部と、調整部とを備えた情報処理装置における情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記周波数特性算出部が、ヘルメットの内部に出力された調整用信号の音の周波数特性を算出する第1の工程と、前記パラメータ設定部が、前記ヘルメットの内部に出力された音が走行騒音に埋もれてしまう第1の周波数帯域が減衰され、かつ、前記ヘルメットの内部に出力された音が前記走行騒音に埋もれにくい第2の周波数帯域が強調される特徴を持つ目標周波数特性と、前記周波数特性算出部において算出された前記周波数特性とを比較して調整パラメータを設定する第2の工程と、前記調整部が、前記パラメータ設定部により設定された前記調整パラメータに基づいて、前記ヘルメットの内部に出力される音の周波数特性を調整する第3の工程と、を備える情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0009】
また、請求項6に記載の発明は、周波数特性算出部と、パラメータ設定部と、調整部とを備えた情報処理装置における情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な非一過性の記録媒体であって、前記周波数特性算出部が、ヘルメットの内部に出力された調整用信号の音の周波数特性を算出する第1の工程と、前記パラメータ設定部が、前記ヘルメットの内部に出力された音が走行騒音に埋もれてしまう第1の周波数帯域が減衰され、かつ、前記ヘルメットの内部に出力された音が前記走行騒音に埋もれにくい第2の周波数帯域が強調される特徴を持つ目標周波数特性と、前記周波数特性算出部において算出された前記周波数特性とを比較して調整パラメータを設定する第2の工程と、前記調整部が、前記パラメータ設定部により設定された前記調整パラメータに基づいて、前記ヘルメットの内部に出力される音の周波数特性を調整する第3の工程と、を備える情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例に係る情報処理装置の構成を示す図である。
図2】本発明の実施例に係る情報処理装置が装着されたヘルメット内部の騒音レベルの特性を例示した図である。
図3】本発明の実施例に係る情報処理装置において算出された、ヘルメット内部に出力された音の周波数特性、目標周波数特性および補正量を例示した図である。
図4】本発明の実施例に係る情報処理装置の処理フローを示す図である。
図5】本発明の応用例に係る情報処理装置の構成を示す図である。
図6】本発明の応用例に係る情報処理装置の処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係る情報処理装置は、ヘルメットの内部に出力された調整用信号の音の周波数特性を算出する周波数特性算出部と、ヘルメットの内部に出力された音が走行騒音に埋もれてしまう第1の周波数帯域が減衰され、かつ、ヘルメットの内部に出力された音が走行騒音に埋もれにくい第2の周波数帯域が強調される特徴を持つ目標周波数特性と、周波数特性算出部において算出された周波数特性とを比較して調整パラメータを設定するパラメータ設定部と、パラメータ設定部により設定された調整パラメータに基づいてヘルメットの内部に出力される音の周波数特性を調整する調整部と、を備えている。
すなわち、ヘルメットを装着した運転者に音情報を伝達する情報処理装置では、ヘルメット内部に調整用信号の音を出力したときに収音した音の周波数特性と、目標周波数特性とを比較し、ヘルメット内部に出力する音の周波数特性を調整する調整パラメータを算出し、調整部に当該調整パラメータを設定する。
調整パラメータを設定するときに目標となる目標周波数特性は、ヘルメット内部に出力された音が走行騒音に埋もれてしまい聞くことが困難な第1の周波数帯域を減衰し、ヘルメット内部に出力された音が走行騒音に埋もれずに聞くことが可能な第2の周波数帯域を強調する特徴を有する。
これにより、走行騒音に埋もれずに聞くことが可能な周波数帯域の音が強調されるように、ヘルメット内部に出力される音が調整されるため、走行騒音下において、音情報を確実に運転者に伝達することができる。
また、ヘルメット内部に出力される音の周波数特性は、ヘルメットの形状、スピーカの種類、性能、取り付け位置等により大きく変化する。
そのため、パラメータ設定部は、ヘルメットの内部に出力された音の周波数特性と、目標周波数特性とを比較して、調整パラメータを設定する。
これにより、ヘルメットの形状、スピーカの種類、性能、取り付け位置等の違いがあっても、ユーザ毎に最適な音質調整を行うことができる。
【0012】
<実施例>
図1から図4を用いて、本実施例に係る情報処理装置1について説明する。
【0013】
<情報処理装置1の構成>
図1を用いて、本実施例に係る情報処理装置1の構成について説明する。
情報処理装置1は、音声情報生成部10と、調整部20と、振動子30と、マイク40と、周波数特性算出部50と、パラメータ設定部60と、を含んで構成されている。
情報処理装置1は、音情報に基づいた振動子30の振動をヘルメットに伝達し、携帯端末装置100からの音情報をユーザに伝達する装置である。
【0014】
音声情報生成部10は、例えば、BT(Bluetooth)を用いて携帯端末装置100と接続し、携帯端末装置100からの音信号を受信して、その音信号を調整部20に出力する。
ここで、携帯端末装置100としては、例えば、スマートフォン、タブレット、携帯音楽プレーヤ等を例示することができる。
また、音声情報生成部10が受信する音信号としては、例えば、携帯端末装置100で再生された音楽や、携帯端末装置100にインストールされたナビゲーションアプリからのルート案内音声等を例示することができる。
また、音声情報生成部10は後述する周波数特性算出部50において周波数特性を算出するとき、周波数特性算出部50の指示に従い、調整用信号を調整部20に出力する。
【0015】
調整部20は、音声情報生成部10から受信した音信号の周波数特性を調整する。
具体的には、調整部20は、後述するパラメータ設定部60から受信した調整パラメータに基づいて、音声情報生成部10から受信した音信号の周波数特性を変更する処理を実行し、当該音信号を振動子30に出力する。
【0016】
振動子30は、調整部20から入力された音信号に基づいた振動を発生する。
振動子30が発生させた音信号に基づいた振動を、ヘルメットに伝達させることにより、ヘルメット内部に音が放射される。
なお、振動子30は、発生させた振動をヘルメットに伝達できる位置に配置する必要があるため、振動子30は情報処理装置1とは別体として構成されていてもよい。
【0017】
マイク40は、例えば、ヘルメットの内部に配置されたマイクであり、振動子30の振動によりヘルメット内部に放射された音を収音し、周波数特性算出部50に送信する。
【0018】
周波数特性算出部50は、音声情報生成部10から調整用信号を出力させ、マイク40において収音した調整用信号の音の周波数特性を算出し、算出した周波数特性をパラメータ設定部60に送信する。
なお、調整用信号は、周波数特性算出部50の指示に従い、音声情報生成部10から出力される構成を例示したが、携帯端末装置100、または、調整部20から調整用信号が出力される構成であってもよい。
【0019】
パラメータ設定部60は、ヘルメットの内部に出力された音が走行騒音に埋もれてしまう第1の周波数帯域が減衰され、かつ、ヘルメットの内部に出力された音が走行騒音に埋もれにくい第2の周波数帯域が強調される特徴を持つ目標周波数特性と、周波数特性算出部50において算出された周波数特性とを比較して、調整部20に設定する調整パラメータを算出する。
具体的には、パラメータ設定部60は、周波数特性算出部50から受信した周波数特性と目標周波数特性との比較を行い、調整部20に設定する調整パラメータを決定する。
【0020】
ここで、調整パラメータを決定するときの目標値となる目標周波数特性について説明する。
図2に示すように、二輪車の走行時に発生する騒音の周波数特性は、周波数が低いほど騒音レベルが大きくなっている。
このような騒音下では、低い周波数帯域の音は、振動子30を大きく振動させて音を大きくしたとしても、騒音レベルが非常に大きいために、ユーザが音情報を聞き取ることは非常に困難である。
一方、このような騒音下でも、高い周波数帯域では、振動子30を大きく振動させて音を大きくすれば、ユーザが音情報を聞き取ることが可能である。
上述した騒音下における音情報の聞き取り可否状況から、図3(a)の点線に示すように、目標周波数特性は、低い周波数帯域(第1の周波数帯域)の音を減衰させ、高い周波数帯域(第2の周波数帯域)の音を増幅させる特徴を有する。
つまり、走行騒音より大きな音を出力できない周波数帯域(第1の周波数帯域)では、音を減衰させるように調整パラメータを決定し、調整部20において音を調整する。
一方、ヘルメット内に出力する音の音量を走行騒音より大きく出力することで、ユーザが音情報を聞くことができる周波数帯域(第2の周波数帯域)では、音を増幅するように調整パラメータを決定し、調整部20において音を調整する。
ここで、図3(a)の点線で示した目標周波数特性は一例であり、300Hz以下の周波数帯域(第1の周波数帯域)の音を減衰し、1KHz以上の周波数帯域(第2の周波数帯域)の音を増幅する特性となっている。
なお、パラメータ設定部60が実行するパラメータ調整の処理の詳細は、後述する。
【0021】
<パラメータ設定部60の処理>
図4を用いて、パラメータ設定部60の処理のフローについて説明する。
【0022】
パラメータ設定部60は、ユーザから音声調整を実行する旨の指示があったか否かを判定する。
ここで、音声調整の実行指示は、例えば、携帯端末装置100のユーザ操作により行われる。
パラメータ設定部60は、図示しない情報処理装置1の通信部を介して、上述したユーザ操作の結果を携帯端末装置100から取得する。
ユーザから音声調整を実行する旨の指示がないと判定した場合(ステップS100の「NO」)には、待機モードに移行する。
一方で、ユーザから音声調整を実行する旨の指示があったと判定した場合(ステップS100の「YES」)には、処理をステップS110に移行させる。
【0023】
ユーザから音声調整を実行する旨の指示があったと判定した場合(ステップS100の「YES」)には、音声情報生成部10に対して調整用信号を調整部20に出力する指示を行い、振動子30を振動させる(ステップS110)。
【0024】
周波数特性算出部50から周波数特性を取得し、取得した周波数特性と目標周波数特性とを比較し、調整パラメータを算出する(ステップS120)。
【0025】
算出した調整パラメータを調整部20に送信する(ステップS130)。
ここで、ステップS120において実行される、調整パラメータの算出方法について説明する。
パラメータ設定部60は、ヘルメットの内部に出力された調整用信号の音の周波数特性(図3(a)の実線)を周波数特性算出部50から取得し、目標周波数特性(図3(a)の点線)との差に基づいて、図3(b)に示すような周波数毎の補正量を算出する。
パラメータ設定部60は、周波数毎の補正量に基づいて、調整部20に設定する調整パラメータを決定し、当該調整パラメータを調整部20に送信する。
【0026】
パラメータ設定部60は、音声情報生成部10からの調整用信号の出力を停止させ(ステップS140)、処理を終了させる。
【0027】
本実施例に係る情報処理装置1は、ヘルメットの内部に出力された調整用信号の音の周波数特性を算出する周波数特性算出部50と、ヘルメットの内部に出力された音が走行騒音に埋もれてしまう第1の周波数帯域が減衰され、かつ、ヘルメットの内部に出力された音が走行騒音に埋もれにくい第2の周波数帯域が強調される特徴を持つ目標周波数特性と、周波数特性算出部50において算出された周波数特性とを比較して調整パラメータを設定するパラメータ設定部60と、パラメータ設定部60により設定された調整パラメータに基づいてヘルメットの内部に出力される音の周波数特性を調整する調整部20と、を備えている。
すなわち、ヘルメットを装着した運転者に音情報を伝達する情報処理装置1では、ヘルメット内部に出力した調整用信号の音の周波数特性と目標周波数特性とを比較し、ヘルメット内部に出力する音の周波数特性を調整する調整パラメータを決定する。
また、調整パラメータを決定するときに、周波数特性の目標値となる目標周波数特性は、ヘルメット内部に出力された音が走行騒音に埋もれてしまい聞くことが困難な第1の周波数帯域が減衰され、ヘルメット内部に出力された音が走行騒音に埋もれずに聞くことが可能な第2の周波数帯域が強調される特徴を有する。
これにより、走行騒音に埋もれずに聞くことが可能な周波数帯域の音が強調されるように、調整部20において調整されるため、走行騒音下においても、音情報を確実に運転者に伝達することができる。
また、走行騒音に埋もれて聞くことが困難な第1の周波数帯域の音を強調しても、運転者は聞くことが困難なため、第1の周波数帯域の音は減衰するように調整する。
これにより、振動子30の第1の周波数帯域の振動が小さくなるため、振動子30を振動させるための電力を低減することができる。
【0028】
また、本実施例に係る情報処理装置1は、音信号に基づいた振動子30の振動をヘルメットに伝達して、ヘルメットの内部に音を出力する。
ヘルメット表面の硬さ等の影響により、低い周波数の振動子の振動がヘルメットに伝達しにくいため、ヘルメット内部に放射される低い周波数の音の音量を大きくすることが困難である。
そのため、騒音下では、低い周波数帯域の音が走行騒音に埋もれやすくなり、ユーザが音情報を聞くことが困難となる。
音信号に基づいた振動子30の振動をヘルメットに伝達して、ヘルメットの内部に音を出力する情報処理装置1では、走行騒音に埋もれてしまい聞くことが困難な周波数帯域(第1の周波数帯域)が、300Hz以下の周波数に設定され、走行騒音に埋もれずに聞くことが可能な周波数帯域(第2の周波数帯域)が、1KHz以上の周波数に設定される。
これにより、ヘルメットの内部に出力される音が、走行騒音に埋もれずに聞くことが可能な第2の周波数帯域(1KHz以上の周波数)の音が強調されるように調整パラメータが決定されるため、走行騒音下においても、音情報を確実に運転者に伝達することができる。
また、走行騒音に埋もれて聞くことが困難な第1の周波数帯域(300Hz以下の音)の音を強調するように調整しても、ユーザは音を聞くことが困難なため、第1の周波数帯域の音は減衰するように調整する。
これにより、振動子30の第1の周波数帯域の振動が小さくなるため、振動子30を振動させるための電力を低減することができる。
さらに、二次電池を電源として動作する情報処理装置1の場合には、消費電力が低減されるため、より長い時間、情報処理装置1を稼動させることができる。
また、ヘルメット内部に出力される音の周波数特性は、ヘルメットの形状、スピーカの種類、性能、取り付け位置等により大きく変化する。
そのため、パラメータ設定部60は、ヘルメットの内部に出力された音の周波数特性と、目標周波数特性とを比較して、調整パラメータを設定する。
これにより、ヘルメットの形状、スピーカの種類、性能、取り付け位置等の違いがあっても、ユーザ毎に最適な音質調整を行うことができる。
【0029】
<応用例>
図5および図6を用いて、本応用例に係る情報処理装置1Aについて説明する。
【0030】
<情報処理装置1Aの構成>
図5を用いて、情報処理装置1Aの構成について説明する。
情報処理装置1Aは、音声情報生成部10と、調整部20と、振動子30と、マイク40と、周波数特性算出部50Aと、パラメータ設定部60Aと、を含んで構成されている。
なお、実施例1と同一の符号を付す構成要素については、同様の機能を有することから、その詳細な説明は省略する。
【0031】
周波数特性算出部50Aは、マイク40により収音した走行騒音の周波数特性を算出し、算出した周波数特性をパラメータ設定部60Aに送信する。
また、周波数特性算出部50Aは、音声情報生成部10から調整用信号を出力させ、マイク40において収音した調整用信号の音の周波数特性を算出し、算出した周波数特性をパラメータ設定部60Aに送信する。
【0032】
パラメータ設定部60Aは、周波数特性算出部50Aから受信した走行騒音の周波数特性に基づいて、目標周波数特性を決定する。
また、パラメータ設定部60Aは、調整用信号に基づいて振動子30を振動させたときの音の周波数特性と、周波数特性算出部50Aから受信した走行騒音の周波数特性に基づいて決定した目標周波数特性と、を比較して、調整部20に設定する調整パラメータを算出する。
なお、パラメータ設定部60Aの処理の詳細については、以下に説明する。
【0033】
<パラメータ設定部60Aの処理>
図6を用いて、パラメータ設定部60Aの処理の詳細について説明する。
【0034】
パラメータ設定部60Aは、ユーザから音声調整を実行する旨の指示があったか否かを判定する。
ユーザから音声調整を実行する旨の指示がないと判定した場合(ステップS100の「NO」)には、待機モードに移行する。
一方で、ユーザから音声調整を実行する旨の指示があったと判定した場合(ステップS100の「YES」)には、処理をステップS110に移行させる。
【0035】
ユーザから音声調整を実行する旨の指示があったと判定した場合(ステップS100の「YES」)には、ユーザに対して走行時の騒音測定の実行指示を行う(ステップS200)。
例えば、ユーザに対して、指定の速度で走行するように指示し、マイク40を用いて、走行中の騒音を取得する。
【0036】
走行時の騒音測定が完了したか否かを判定する(ステップS210)。
走行時の騒音測定が完了したと判定した場合(ステップS210の「YES」)には、処理をステップS220に移行させる。
一方で、走行時の騒音測定が完了していないと判定した場合(ステップS210の「NO」)には、待機モードに移行する。
なお、走行時の騒音測定が完了したが否かは、例えば、携帯端末装置100の現在位置情報を取得し、その位置情報の変化から速度を算出し、指定の速度で走行したか否かを判定する。
【0037】
走行時の騒音測定が完了したと判定した場合(ステップS210の「YES」)には、マイク40において取得した騒音に基づいて、目標周波数特性を決定する(ステップS220)。
具体的には、パラメータ設定部60Aは、例えば、周波数特性算出部50Aから取得した走行時の騒音の周波数特性において、騒音レベルが所定の騒音レベルより大きい周波数帯域(騒音に埋もれて音情報を聞くことが困難な周波数帯域)および、所定の騒音レベルより小さい周波数帯域(騒音に埋もれずに音情報を聞くことが可能な周波数帯域)を決定する。
なお、上述した、騒音に埋もれて音を聞くことが困難な周波数帯域を決定するための所定の騒音レベルと、騒音に埋もれずに音を聞くことが可能な周波数帯域を決定するための所定の騒音レベルとは、それぞれ異なる値の騒音レベルを設定して、周波数帯域を決定してもよい。
走行騒音に基づいて決定された、音が騒音に埋もれて聞くことが困難な周波数帯域(第1の周波数帯域)では、音を減衰させ、音が騒音に埋もれずに聞くことが可能な周波数帯域(第2の周波数帯域)では、音を増幅させるように目標周波数特性を決定する。
【0038】
音声情報生成部10に対して調整用信号を調整部20に出力する指示を行い、振動子30を振動させる(ステップS110)。
【0039】
周波数特性算出部50Aから調整用信号をヘルメット内部に出力したときの音の周波数特性を取得し、取得した周波数特性とステップS220において決定した目標周波数特性とを比較し、調整パラメータを算出する(ステップS230)。
【0040】
算出した調整パラメータを調整部20に送信する(ステップS130)。
【0041】
パラメータ設定部60Aは、音声情報生成部10からの調整用信号の出力を停止させ(ステップS140)、処理を終了させる。
【0042】
本応用例に係る情報処理装置1Aでは、実際に走行したときに発生する騒音をマイク40おいて収音し、その騒音の周波数特性に基づいて、パラメータ設定部60Aが、目標周波数特性を設定する。
走行中にユーザが聞こえる騒音は、ヘルメットの構造、形状、エンジン型式、エンジン排気量等により異なるため、実際に走行した時に発生する騒音を取得し、各ユーザに最適な目標周波数特性を決定する。
これにより、ユーザ毎に最適な目標周波数特性(第1の周波数帯域および第2周波数帯域)を決定することができるため、ユーザに対して音情報を確実に伝達することができる。
【0043】
<その他の実施例>
上述した情報処理装置1、1Aでは、振動子30の振動を用いて音を伝達する構成を例示したが、ヘルメット内部に配設されたスピーカやインナーイヤースピーカ等を用いて音を伝達する構成であってもよい。
なお、上述したスピーカを用いて音情報を伝達する場合には、スピーカの音声出力性能に合わせて目標周波数特性(第1の周波数帯域および第2の周波数帯域の値)を決定する。
具体的には、走行時に取得した騒音レベルが所定の騒音レベルより大きい周波数帯域(第1の周波数帯域)では、音を減衰させ、所定の騒音レベルより小さい周波数帯域(第2の周波数帯域)では、音を増幅するように目標周波数特性を決定する。
これにより、スピーカから出力された音が、走行騒音に埋もれずに聞くことが可能な第2の周波数帯域の音が強調されるように調整部20において調整されるため、走行騒音下においても、音情報を確実に運転者に伝達することができる。
【0044】
また、上述した情報処理装置1の周波数特性算出部50およびパラメータ設定部60の処理を、携帯端末装置100において処理するようにしてもよい。
具体的には、携帯端末装置100は、調整用信号を音声情報生成部10に送信し、マイク40において収音した音を取得する。
携帯端末装置100は、取得した音から算出した周波数特性と、目標周波数特性とを比較して調整パラメータを決定し、調整部20に調整パラメータを送信する。
これにより、情報処理装置1の処理負荷が減少するため、消費電力を低減することができる。
さらに、二次電池を電源として動作する情報処理装置1の場合には、消費電力が低減されるため、より長い時間、情報処理装置1を稼動させることができる。
さらに、周波数特性算出部50およびパラメータ設定部60の処理が無くなるため、情報処理装置1に搭載されたCPUおよびメモリは、より安価な部品で構成することができ、情報処理装置1のコストダウンを図ることができる。
【0045】
以上、この発明の実施例につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1;情報処理装置
1A;情報処理装置
10;音声情報生成部
20;調整部
30;振動子
40;マイク
50;周波数特性算出部
60;パラメータ設定部
60A;パラメータ設定部
100;携帯端末装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6